JP4353754B2 - 昆虫への遺伝子導入ベクターおよび遺伝子産物製造法 - Google Patents

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本発明は、昆虫細胞への遺伝子導入ベクターおよびそのベクターを用いて遺伝子導入された昆虫細胞、昆虫組織、昆虫を用いた外来タンパク質の製造方法に関する。さらに、本発明で得られる組換えカイコが産生した外来タンパク質を含む絹糸に関する。
遺伝子組換え技術を用いた外来タンパク質の生産は、様々な産業に利用されている。その宿主として主に大腸菌、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが用いられている。しかし、あらゆる外来タンパク質を効率よく生産できる宿主は開発されておらず、目的とするタンパク質ごとに生産系を構築することが必要であり、個々の宿主における外来タンパク質生産技術においてさらなる技術革新が望まれている。
大腸菌などの細菌または酵母の系では、翻訳後修飾に問題があり、タンパク質を十分機能する形で合成できないことがある。また、動物細胞は、タンパク質を機能する形で合成できることが多いが、一般的に増殖させるのが困難で産生量も低く経済的ではない。
一方、昆虫または昆虫細胞を用いた遺伝子組み換えタンパク質の生産では、酵素や生理活性を持つ有用タンパク質等が、比較的安価に量産でき、動物に近いタンパク質の翻訳後修飾が得られることが知られている。具体的には、外来タンパク質遺伝子を組み込んだバキュロウイルスを、昆虫または昆虫細胞に感染させる方法で、外来タンパク質が比較的安価に量産が可能であり、医薬品として製品化された生理活性タンパク質も知られている(特開昭61-9288号公報、特開昭61-9297号公報)。
しかし、従来の昆虫または昆虫細胞を用いた組換えタンパク質の生産技術では、外来遺伝子の導入に組換えウイルスを用いることから、安全性の点から、その不活性化や封じ込めが必要であるという課題がある。また、組換えウイルスをカイコに接種する方法では、組換えウイルスの接種が煩雑であり、目的とする外来タンパク質が体液中に産生されるため、目的の組換えタンパク質をカイコ体液由来の大量の夾雑タンパク質から精製することが必要であった。このため高純度な組換えタンパク質を得ることが困難であるという課題があった。
一方、近年、昆虫染色体への外来遺伝子の組換えが試みられ、核多核体病ウイルスの一種であるAutographa californica nuclear polyhedrosis virus (AcNPV)のDNAを用いて、カイコフィブロインL鎖遺伝子にクラゲ緑色蛍光タンパク質遺伝子を付加した融合遺伝子を、相同組み換えにより、カイコ染色体上に導入し、発現させる方法が開発され(Genes Dev.,13,511-516,1999)、その技術を用いたヒト・コラーゲン遺伝子を導入したカイコおよびその製造方法が開示されている(特開2001-161214号公報)。
また最近、外来遺伝子を、鱗翅目昆虫由来のトランスポゾンであるpiggyBacを用いてカイコ染色体へ安定に導入し、その外来遺伝子がコードするタンパク質を発現させる方法が、クラゲ緑色蛍光タンパク質をモデルとして研究され、交配により子孫へと遺伝子が安定に伝わることも確認された(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)。
しかし、上記のAcNPVを用いた昆虫染色体への外来タンパク質遺伝子の導入方法では、組換えバキュロウイルス(AcNPV)を用いることから、組換えウイルスの不活化や封じ込めの課題が依然として残っている。次に、トランスポゾンpiggyBacを用いた例では、緑色蛍光タンパク質は、産生量が十分ではなく、かつ、カイコ全身に産生されるため、発現させた組換え型緑色蛍光タンパク質を高純度な形で回収するためには、高度な精製技術を必要とすることから、経済的に問題があった。
すなわち、このような昆虫細胞を宿主とした外来タンパク質の生産技術においては、組換えバキュロウイルスの不活化や封じ込めが必要であったり、カイコを用いた場合など大量の夾雑タンパク質が存在する体液から目的タンパク質を精製することが困難である、目的タンパク質の発現量が少ないなど、いくつかの課題がある。
特開昭61-9288号広報 特開昭61-9297号広報 特開2001-161214号広報
Genes Dev.,13,511-516,1999 Nature Biotechnology 18,81-84,2000
昆虫を用いた組換え型タンパク質の生産技術は、精力的に研究されているが、外来タンパク質遺伝子を組み込んだ組換えバキュロウイルスの不活化や封じ込めの必要があり、また、組換えウイルスの接種が煩雑であるなどの課題がある。また、組換えバキュロウイルスを用いたカイコにおける外来タンパク質の生産では、大量の夾雑物を含む体液より目的タンパク質を抽出、精製することが困難であるという課題があった。
カイコ染色体に外来タンパク遺伝子を導入する組換えタンパク質の製造技術の検討が行われているが、目的の外来タンパク質の生産量は低く、また、カイコ体液から目的タンパク質を精製することが困難であるという課題もある。
本発明は、こうした状況に鑑み、組換えバキュロウイルスを用いる必要がなく、かつ、目的タンパク質の精製を容易にすることができる昆虫用の遺伝子工学材料を提供すると同時に、その遺伝子工学材料を利用した外来タンパク質の製造方法を提供することを課題としている。
本発明者らは、カイコ絹糸腺特に後部絹糸腺が、絹タンパク質の70〜80%を占めるフィブロインを大量に生産し、かつ、絹糸腺細胞外へ分泌する点に着目し、鋭意検討した結果、絹糸腺で発現するプロモーターの下流にフィブロインH鎖遺伝子の第1イントロンを含む5'末端部分の3'末端側に外来タンパク質遺伝子の5'末端側をアミノ酸フレームが一続きなるように連結した遺伝子カセットを絹糸腺細胞に導入することで、外来タンパク質の産生量が飛躍的に向上することを見出した。
また、外来タンパク質遺伝子の3'側にフィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分をアミノ酸フレームが一続きとなるように連結した融合遺伝子を絹糸腺で発現するプロモーター制御下で発現させた時に、外来タンパク質が絹糸腺細胞の外に大量に分泌生産されることを見出した。また、外来タンパク質遺伝子の5'側にフィブロインH鎖遺伝子の第1イントロンを含む5'末端部分のDNA配列を、3'側にフィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分のDNA配列を、それぞれアミノ酸フレームが一続きになるように設計した遺伝子カセットを作製し、この遺伝子カセットを染色体に導入した組換えカイコを作製したところ、この組換えカイコが、絹糸中に目的タンパク質を大量に産生していることを見出した。
すなわち、本発明者らは、フィブロインH鎖遺伝子の5'末端部分のDNA配列と3'末端部分のDNA配列を外来タンパク質遺伝子に融合させた発現用遺伝子カセットを絹糸腺細胞などに導入することで、大量の外来タンパク質を絹糸腺細胞内、絹糸腺細胞外、および絹糸に産生させることに成功し、組換えバキュロウイルスを用いることなく、また、絹糸腺を利用して外来タンパク質生産を生産させることにより、精製を容易にする外来タンパク質生産技術を確立することができた。
本発明は、以下の遺伝子カセット、ベクターなど昆虫での外来タンパク質生産に利用可能な遺伝子工学材料、形質転換体、その形質転換体を用いた外来タンパク質の製造方法および外来タンパク質を含む絹糸に関する。
1)(1)絹糸腺で発現するプロモーターと、
(2)前記(1)の下流に連結された、フィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分を外来タンパク質構造遺伝子の5’側に融合させた遺伝子と、
を含む外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
2)(1)絹糸腺で発現するプロモーターと、
(2)前記(1)の下流に連結された、終止コドンを含まない外来タンパク質構造遺伝子の3’側にフィブロインH鎖遺伝子の3’末端部分を融合させた遺伝子と、
を含む外来タンパク質の発現用遺伝子カセット;あるいは(1)絹糸腺で発現するプロモーターと、(2)前記(1)の下流に連結された、フィブロインH鎖遺伝子の3’末端部分の3’側に外来タンパク質構造遺伝子を融合させた遺伝子と、を含む外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
3)(1)絹糸腺で発現するプロモーターと、
(2)前記(1)の下流に連結された、終止コドンを含まない外来タンパク質構造遺伝子の5’側にフィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分を融合させ且つ前記構造遺伝子の3’側にフィブロインH鎖遺伝子の3’末端部分を融合させた遺伝子と、
を含む外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
4)前記フィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分が、フィブロインH鎖遺伝子の第1エキソン、第1イントロン、第2エキソンの一部を含むことを特徴とする1)又は3)に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
5)前記フィブロインの第1エキソンと第2エキソンを合わせた部分が、フィブロインH鎖遺伝子の分泌シグナル遺伝子領域であることを特徴とする4)の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
6)(1)絹糸腺で発現するプロモーターと、(2)前記(1)の下流に連結された、フィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分が、配列番号1又は配列番号2に示すDNAであることを特徴とする5)に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
7)前記1)〜6)のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、該外来タンパク質の発現用遺伝子カセットに含まれる(1)絹糸腺プロモーターおよび/または(2)フィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分が実質的に同等の機能を有する範囲において1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
8)前記1)〜7)のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、該外来タンパク質の発現用遺伝子カセットに含まれる(1)絹糸腺プロモーター部分および/または(2)フィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分に代えて、該部分とストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子であって、該部分と実質的に同等の機能を有する遺伝子を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
9)前記フィブロインH鎖遺伝子の3’末端部分が、システインをコードするコドンを少なくとも一つ含むことを特徴とする2)または3)記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
10)前記フィブロインH鎖遺伝子の3’末端部分が、配列番号3に示すDNAであることを特徴とする2)、3)、9)のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
11)前記10)に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、前記フィブロインH鎖遺伝子の3’末端部分が、実質的に同等の機能を有する範囲において、1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
12)前記10)または11)に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、前記フィブロインH鎖遺伝子の3’末端部分にかえて、前記フィブロインH鎖遺伝子の3’末端部分とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、実質的に同等の機能を有することを特徴とする遺伝子を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
13)前記絹糸腺で発現するプロモーターが、フィブロインH鎖遺伝子のプロモーター、フィブロインL鎖遺伝子のプロモーター及びセリシン遺伝子のプロモーターのうちから選ばれる少なくとも一つのプロモーターであることを特徴とする1)から12)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
14)該外来タンパク質発現遺伝子カセットの下流に、フィブロインH鎖遺伝子のポリA付加領域、フィブロインL鎖遺伝子のポリA付加領域およびセリシン遺伝子のポリA付加領域のうちから選ばれる少なくとも一つのポリA付加領域が存在することを特徴とする1)から13)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
15)前記1)〜14)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットの両側に、1対のピギーバック(piggyBac)トランスポゾンの逆位反復配列が存在することを特徴とする昆虫細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセット。
16)前記1)〜14)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを含むことを特徴とする昆虫細胞用発現ベクター。
17)前記15)に記載の昆虫細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセットを含むことを特徴とする昆虫細胞用遺伝子導入ベクター。
18)前記16)または17)に記載の昆虫細胞用遺伝子導入ベクターを昆虫細胞へ導入することを特徴とする外来タンパク質の製造方法。
19)昆虫細胞が鱗翅目昆虫由来であることを特徴とする18)に記載の外来タンパク質の製造方法。
20)昆虫細胞がカイコガ(Bombyx mori)由来であることを特徴とする19)に記載の外来タンパク質の製造方法。
21)昆虫細胞がカイコガ(Bombyx mori)の絹糸腺細胞であることを特徴とする20)に記載の外来タンパク質の製造方法。
22)ピギーバック(piggyBac)トランスポゼースのDNA転移活性を利用して、該外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを染色体に組み込んだ組換えカイコを作製し、得られた組換えカイコの絹糸腺または絹糸に外来タンパク質を産生させた後、その絹糸腺または絹糸から外来タンパク質を回収することを特徴とする18)に記載の外来タンパク質の製造方法。
23)昆虫細胞用遺伝子導入ベクターと、ピギーバック(piggyBac)トランスポゼースを産生するDNAもしくはRNAを同時にカイコ卵にマイクロインジェクションすることによって該外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを染色体に組み込んだ組換えカイコを作製することを特徴とする22)に記載の外来タンパク質製造方法。
24)前記1)〜14)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットが染色体に導入されており、かつ、絹糸腺または絹糸に外来タンパク質を産生する能力を持つ組換えカイコ。
25)前記24)に記載の組換えカイコが産生する外来タンパク質を含む絹糸。
26)以下の(a)又は(b)のポリヌクレオチド:
(a)配列番号2の第1−4111位塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(b)塩基配列(a)において1若しくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換を有する塩基配列からなり、絹糸腺組織で外来遺伝子の発現を増大させることを特徴とするポリヌクレオチド。
27)配列番号2の第1−4111位塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ絹糸腺組織で外来遺伝子の発現を増大させることを特徴とするポリヌクレオチド。
28)前記26)または27)に記載のポリヌクレオチドを用いることを特徴とする絹糸腺組織で外来遺伝子の発現を増大させる方法。
29)前記26)または27)に記載のポリヌクレオチドの3’側に、フィブロインH鎖遺伝子のプロモーターが連結され、且つその3’側に外来タンパク質構造遺伝子が連結された外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
30)前記29)に記載の遺伝子カセットの両側に、1対のピギーバック(piggyBac)トランスポゾンの逆位反復配列が存在することを特徴とする昆虫細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセット。
31)前記30)に記載の遺伝子導入用遺伝子カセットが染色体に導入されており、かつ絹糸腺又は絹糸に組換えタンパク質を産生する能力をもつ組換えカイコ。
32)前記31)に記載の組換えカイコが産生する外来タンパク質を含む絹糸。
33)前記24)または31)に記載の組換えカイコが産生する外来タンパク質(ただしGFPを除く)を含む絹糸。
フィブロインH鎖遺伝子の5'末端部分のDNA配列と3'末端部分のDNA配列を外来タンパク質遺伝子に融合させた発現用遺伝子カセットを絹糸腺細胞などに導入することで、大量の外来タンパク質を絹糸腺細胞内、絹糸腺細胞外、さらには絹糸にまで産生させることが可能となった。この新手法により、組換えバキュロウイルスを用いることなく、絹糸腺を利用して外来タンパク質生産を生産させることで精製の容易な外来タンパク質生産技術を確立した。
本発明において、「外来タンパク質の発現用遺伝子カセット」とは、昆虫細胞に導入された場合その外来タンパク質構造遺伝子がコードするタンパク質が発現されるために必要なDNAのセットをいう。この外来タンパク質発現カセットは、外来タンパク質構造遺伝子とその遺伝子の発現を促進するプロモーターを含む。通常はさらに、ターミネーター、ポリA付加領域を含み、好ましくはプロモーター、外来タンパク質構造遺伝子、ターミネーター、ポリA付加領域の全てを含む。さらにプロモーターとの間に外来タンパク質構造遺伝子に結合した分泌シグナル遺伝子を含んでいてもよい。ポリA付加配列との間にも任意の遺伝子配列を連結しても良い。また人工的に設計、合成された遺伝子配列を連結することもできる。
また、「遺伝子導入用遺伝子カセット」とは、両側に1対のピギーバック(piggyBac)トランスポゾンの逆位反復配列を有する外来タンパク質の発現用遺伝子カセットであり、かつ、ピギーバック(piggyBac)トランスポゼーズの作用により昆虫細胞染色体へ導入されるDNAセットをいう。本発明において、「昆虫細胞用発現ベクター」とは外来タンパク質の発現用遺伝子カセットまたは遺伝子導入用遺伝子カセットを含み、昆虫細胞に導入された際に、外来タンパク質を発現させるために必要なDNAのセットをいう。また、本発明において、「昆虫細胞用遺伝子導入ベクター」とは外来タンパク質の発現用遺伝子カセットまたは遺伝子導入用遺伝子カセットを含み、両端に1対のピギーバックトランスポゾンの逆位反復配列を有し、かつ、ピギーバックトランスポゼースの作用により昆虫細胞染色体へ導入されるDNAセットをいう。
本発明において使用されるDNAを取得する方法に特に制限はない。既知の遺伝子情報に基づき、PCR(polymerase chain reactiion)法を用いて必要な遺伝子領域を増幅取得する方法、既知の遺伝子情報に基づきゲノムライブラリーやcDNAライブラリーより相同性を指標としてスクリーニングする方法などが挙げられる。本発明においては、これらの遺伝子は遺伝的多型性や変異剤などを用いた人為的変異処理による変異型も含む。遺伝的多型性とは遺伝子上の自然突然変異により遺伝子の塩基配列が一部変化しているものをいう。
外来タンパク質発現カセットにおけるプロモーターは特に限定されないが、外来タンパク質遺伝子の発現を促進する活性の高いものが好ましい。例えば、特開平6-261770や特開昭62-285787に記載されているショウジョウバエの熱ショックタンパク質遺伝子のプロモーターやカイコアクチン遺伝子のプロモーター(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)などが挙げられるが、フィブロインH鎖遺伝子のプロモーター(GenBank登録番号V00094の塩基番号255〜574番目、GenBank登録番号AF226688の塩基番号62118〜62437番目)、フィブロインL鎖遺伝子のプロモーター(Gene, 100:151-158:GenBank登録番号M76430)、セリシン遺伝子のプロモーター(GenBank登録番号AB007831の塩基番号599〜1656番目)などカイコ絹糸腺細胞中で高い転写促進活性を有するプロモーターが好適である。
また、フィブロインH鎖遺伝子プロモーターおよびその上流領域(GenBank登録番号AF226688の塩基番号57444〜62437番目)を用いることで高い転写促進がみられる。こうした遺伝子の転写活性を促進する領域は、種々の方法により改変されても、その基本的な活性を保持することが十分に認識されている。遺伝子の転写活性を促進するプロモーター及びその上流領域に、実質的に同等の機能を有する範囲において、人為的、自然発生的のいずれを問わず、1または2以上の塩基の付加または欠失、もしくは他の塩基への置換を生じたDNAを用いることもできる。
「1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換」とは、基本となる塩基配列に比較して1または2以上の塩基が付加または欠失、もしくは1または2以上の塩基が他の塩基に置換といった変異が存在するが、基本となる無変異配列と同等の機能を保持していることを意味する。この場合の実質的に同等の機能とは、カイコ絹糸腺細胞中での高い転写活性や転写促進活性を表す。具体的には、5令2日目のカイコ後部絹糸腺もしくは中部絹糸腺において、変異配列をもつ組換えカイコでの外来タンパク質遺伝子の転写量が、カイコアクチン遺伝子もしくはフィブロインH鎖遺伝子もしくはフィブロインL鎖遺伝子もしくはセリシン遺伝子の転写量のいずれかとくらべて0.1〜1倍の範囲内にあることが、ノーザン解析により確認されることを示す。
好ましくはフィブロインH鎖遺伝子の転写量と比較して、0.1〜1倍の範囲内にあることが望ましい。転写量の比較には、BIORAD社製モレキュラーイメージャーFXProを用いることで、アマシャムファルマシア社製Gene Images Random-Prime Labelling and Detection Systemで標識、検出したシグナルを、定量的に検出、比較することができる。このとき、外来タンパク質遺伝子検出プローブと、カイコアクチン遺伝子もしくはフィブロインH鎖遺伝子もしくはフィブロインL鎖遺伝子もしくはセリシン遺伝子検出プローブの検出感度が同程度になるよう、あらかじめプローブ量、ハイブリダイズ条件、検出条件を確定する。その条件を用い、外来タンパク質遺伝子検出プローブと、比較するカイコアクチン遺伝子もしくはフィブロインH鎖遺伝子もしくはフィブロインL鎖遺伝子もしくはセリシン遺伝子検出プローブを混合しハイブリダイズ、検出、比較を行う。
1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換の手段は自体は公知であり、例えば、ランダム変異導入法、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて行うことができる。例えば亜硫酸水素ナトリウムを用いた化学的な処理によりシトシン塩基をウラシル塩基に置換する方法や、マンガンを含む反応液中でPCRを行い、DNA合成時のヌクレオチドの取り込みの正確性を低くする方法、部位特異的変異導入のための市販されている各種キットを用いることもできる。
例えばサムブルック等編[モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル 第2版]コールドスプリングハーバーラボラトリー、1989、村松正實編[ラボマニュアル遺伝子工学]丸善株式会社、1988、エールリッヒ、HE.編[PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用]ストックトンプレス、1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができる。
また、同じく実質的に同等の機能を有する範囲において、これらのプロモーター及びその上流領域の相同配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを用いることもできる。1本鎖DNAは相同性の程度によって相手鎖とハイブリダイズする。このとき、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーをより厳密に設定することによって、より相同性の高い配列を特定することができる。ストリンジェント条件は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程における塩濃度(ホルムアミド等)の濃度、温度条件によって規定される。詳しくは、米国特許No.6,100,037に詳しく記載されている。このようなストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションスクリーニングによって特定されるDNAは、相同性のレベルにおいて70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
「外来タンパク質構造遺伝子」とは、遺伝子を発現させようとする宿主細胞が有しない遺伝子のことであり、宿主細胞が本来産生しないタンパク質をコードしている遺伝子のことであり、特に限定されない。産業的価値から考えて、ヒトやほ乳類が産生するタンパク質、例えば、成長ホルモン、サイトカイン、増殖因子および細胞骨格タンパク質の遺伝子などが挙げられる。また、微生物、植物または昆虫などが産生する酵素や種々タンパク質の遺伝子なども本発明の範囲に含まれる。
本発明における外来タンパク質発現用遺伝子カセットにおいて、フィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分は、プロモーターによる外来タンパク質の発現を増強する作用を有するDNA配列であり、フィブロインH鎖遺伝子の第1エキソンと第1イントロン全長またはその一部および第2エキソンの一部を含むDNA配列である。本発明においてフィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分が、組換え個体において後部絹糸腺での遺伝子の発現、転写を促進することが明らかとなった。こうした遺伝子の転写活性を促進する領域は、種々の方法により改変されても、その基本的な活性を保持することが十分に認識されている。
遺伝子の転写活性を促進するフィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分に、実質的に同等の機能を有する範囲において、人為的、自然発生的のいずれを問わず、1または2以上の塩基の付加または欠失、もしくは他の塩基への置換を生じたDNAを用いることもできる。「1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換」とは、基本となる塩基配列に比較して1または2以上の塩基が付加または欠失、もしくは1または2以上の塩基が他の塩基に置換といった変異が存在するが、基本となる無変異配列と同等の機能を保持していることを意味する。
この場合の実質的に同等の機能とは、カイコ絹糸腺細胞中で高い転写促進活性を表す。1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換の手段は自体は公知であり、例えば、ランダム変異導入法、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて行うことができる。例えば亜硫酸水素ナトリウムを用いた化学的な処理によりシトシン塩基をウラシル塩基に置換する方法や、マンガンを含む反応液中でPCRを行い、DNA合成時のヌクレオチドの取り込みの正確性を低くする方法、部位特異的変異導入のための市販されている各種キットを用いることもできる。
例えばサムブルック等編[モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル 第2版]コールドスプリングハーバーラボラトリー、1989、村松正實編[ラボマニュアル遺伝子工学]丸善株式会社、1988、エールリッヒ、HE.編[PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用]ストックトンプレス、1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができる。この場合の実質的に同等の機能とは、カイコ絹糸腺細胞中での高い転写活性や転写促進活性を表す。
具体的には、5令2日目のカイコ後部絹糸腺もしくは中部絹糸腺において、変異配列をもつ組換えカイコでの外来タンパク質遺伝子の転写量が、カイコアクチン遺伝子もしくはフィブロインH鎖遺伝子もしくはフィブロインL鎖遺伝子もしくはセリシン遺伝子の転写量のいずれかとくらべて0.1〜1倍の範囲内にあることが、ノーザン解析により確認されることを示す。好ましくはフィブロインH鎖遺伝子の転写量と比較して、0.1〜1倍の範囲内にあることが望ましい。
転写量の比較には、BIORAD社製モレキュラーイメージャーFXProを用いることで、アマシャムファルマシア社製Gene Images Random-Prime Labelling and Detection Systemで標識、検出したシグナルを、定量的に検出、比較することができる。このとき、外来タンパク質遺伝子検出プローブと、カイコアクチン遺伝子もしくはフィブロインH鎖遺伝子もしくはフィブロインL鎖遺伝子もしくはセリシン遺伝子検出プローブの検出感度が同程度になるよう、あらかじめプローブ量、ハイブリダイズ条件、検出条件を確定する。その条件を用い、外来タンパク質遺伝子検出プローブと、比較するカイコアクチン遺伝子もしくはフィブロインH鎖遺伝子もしくはフィブロインL鎖遺伝子もしくはセリシン遺伝子検出プローブを混合しハイブリダイズし、検出、比較を行う。
また、同じく実質的に同等の機能を有する範囲において、フィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分の相同配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを用いることもできる。1本鎖DNAは相同性の程度によって相手鎖とハイブリダイズする。このとき、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーをより厳密に設定することによって、より相同性の高い配列を特定することができる。ストリンジェント条件は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程における塩濃度(ホルムアミド等)の濃度、温度条件によって規定される。詳しくは、米国特許No.6,100,037に詳しく記載されている。このようなストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションスクリーニングによって特定されるDNAは、相同性のレベルにおいて70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
この第2エキソンの3'側に外来タンパク質構造遺伝子の5'側をアミノ酸フレームが一続きとなるように融合させることによって、外来タンパク質の産生量を向上させることができるが、第2エキソン部分を長くしすぎると目的とする外来タンパク質のN末端側に余分なアミノ酸残基が付加されるため、目的とする外来タンパク質の構造や活性が失われる場合もあるので、目的に応じて適切な長さとすることが必要である。
多くの場合、第2エキソン部分は、フィブロインH鎖遺伝子の分泌シグナル遺伝子の直後もしくは数アミノ酸残基までとすることで好適な結果を得ることができる。また、フィブロインH鎖プロモーターの5’側上流領域、すなわち5.5kbp上流領域中にはプロモーター活性を増強する領域があると考えられるので、この領域を付加することで、目的タンパク質である外来タンパク質の発現量の増大が期待できる。
カイコフィブロインH鎖構造遺伝子および周辺領域の遺伝子構造はすでに公知となっている(Nucleic acid research.28, 2413-2419, 2000 / Genebank AF226688)。また細胞抽出液を用いた一時的な転写アッセイ系を用いた解析により、転写開始点(配列番号2においては第4971位)からおよそ238塩基上流(-238と記載:配列番号2においては第4733位)までの領域が絹糸腺組織での効率的な転写に重要であることが指摘されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80, 7442-7446, 1983 / Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 9522-9526, 1986)。
しかしこれまではフィブロインH鎖遺伝子の転写開始点から約860塩基上流(-860と記載:配列番号2においては第4111位)よりさらに上流領域が絹糸腺組織での転写を効率的に促進することを明らかにした例はない。本発明において、フィブロインH鎖遺伝子の転写開始点から約860塩基上流(-860)よりさらに上流領域について検討、解析し、フィブロインH鎖遺伝子の転写開始点から約860塩基上流よりさらに上流の領域が絹糸腺組織での転写を効率的に促進し、絹糸腺組織内での外来の組換えタンパク質の産生量を向上させることが明らかとなり、さらには絹糸中への外来の組換えタンパク質の産生量をも向上させることが明らかとなった。具体的には、配列番号2における第1-4111位までの塩基配列が、絹糸腺組織での転写を効率的に促進し、絹糸腺組織内での外来の組換えタンパク質の産生量を向上させ、さらには絹糸中への外来の組換えタンパク質の産生量をも向上させることを見出した。
この領域を付加することで、目的タンパク質である外来タンパク質の発現量の増大が期待できる。フィブロインH鎖プロモーターの5’側上流領域、すなわち5.5kbp上流領域において、プロモーター活性を増強する塩基配列として、好ましくは配列番号2の第1-4674位塩基配列からなるポリヌクレオチド(AF226688の塩基番号57444〜62117番目に相当)が用いられる。さらに好ましくは配列番号2の第1-4111位塩基配列からなるポリヌクレオチド(AF226688の塩基番号57444〜61554番目に相当)が用いられる。
配列番号2の第1-4111位塩基配列からなるポリヌクレオチドが、実質的に同等の機能を有する範囲において、人為的、自然発生的のいずれを問わず、1または2以上の塩基の付加または欠失、もしくは他の塩基への置換を生じたDNAを用いることもできる。「1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換」とは、基本となる塩基配列に比較して1または2以上の塩基が付加または欠失、もしくは1または2以上の塩基が他の塩基に置換といった変異が存在するが、基本となる無変異配列と同等の機能を保持していることを意味する。
この場合の実質的に同等の機能とは、配列番号2の第1-4111位塩基配列からなるポリヌクレオチドが、絹糸腺組織もしくは後部絹糸腺組織で外来遺伝子の発現を増大させる効果を持つことを表す。絹糸腺組織もしくは後部絹糸腺組織で外来遺伝子の発現を増大させる効果は、転写活性を促進することで、連結された遺伝子由来のタンパク質産生量を増大させる効果として観察される。具体的には、ポリヌクレオチドを用いない場合と比較し、5令期4日目のカイコ後部絹糸腺において、連結された遺伝子由来のタンパク質産生量が少なくとも2倍以上増大する効果を表す。
タンパク質産生量の比較には、BIORAD社製モレキュラーイメージャーFXProを用いることで、アマシャムファルマシア社製ECL Western Blotting Detection Systemで検出した外来タンパク質由来のシグナルを検出、比較することができる。
1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換の手段は自体は公知であり、例えば、ランダム変異導入法、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて行うことができる。例えば亜硫酸水素ナトリウムを用いた化学的な処理によりシトシン塩基をウラシル塩基に置換する方法や、マンガンを含む反応液中でPCRを行い、DNA合成時のヌクレオチドの取り込みの正確性を低くする方法、部位特異的変異導入のための市販されている各種キットを用いることもできる。
例えばサムブルック等編[モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル 第2版]コールドスプリングハーバーラボラトリー、1989、村松正實編[ラボマニュアル遺伝子工学]丸善株式会社、1988、エールリッヒ、HE.編[PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用]ストックトンプレス、1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができる。
また、同じく実質的に同等の機能を有する範囲において、配列番号2の第1-4111位塩基配列からなるポリヌクレオチドがストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを用いることもできる。1本鎖DNAは相同性の程度によって相手鎖とハイブリダイズする。このとき、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーをより厳密に設定することによって、より相同性の高い配列を特定することができる。ストリンジェント条件は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程における塩濃度(ホルムアミド等)の濃度、温度条件によって規定される。詳しくは、米国特許No.6,100,037に詳しく記載されている。このようなストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションスクリーニングによって特定されるDNAは、相同性のレベルにおいて70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
フィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分は、外来タンパク質をカイコ絹糸腺で産生させる場合に、外来タンパク質を絹糸腺細胞の外に大量に分泌させる効果を有するDNA配列である。この絹糸への分泌シグナルであるフィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分を3'側に融合させた外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを染色体に導入した組換えカイコは、その絹糸中に外来タンパク質を産生することが可能である。また、フィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分は、外来タンパク質遺伝子の上流、下流、外来タンパク質遺伝子中のいずれに存在してもよい。
この部分には、少なくともシステイン残基が一つ存在しており、フィブロインH鎖遺伝子の3'末端をそのまま利用した場合、システイン残基はフィブロインH鎖タンパクのカルボキシル末端から20番目に位置することになる。このシステインは、フィブロインL鎖とジスルフィド結合で結合する役割を有している。フィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分のDNA配列の長さは、フィブロインL鎖とのジスルフィド結合の形成を阻害することがない限り特に制限はない。フィブロインH鎖は、3'末端から約100塩基以上上流には、DNAの繰り返し配列が続いているため、この上流部分のDNA配列は制限酵素で任意の長さに切断したり加工することが困難である。
従って、遺伝子工学的手法の容易さからは、フィブロインH鎖3'末端部分は、フィブロインH鎖遺伝子の繰り返しDNA配列が終了した3'側の約100塩基対が好適に使用できる。また、フィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分が長いと外来タンパク質のカルボキシル末端にフィブロインH鎖タンパク質のカルボキシル末端由来のアミノ酸が多く結合することになり、目的とする外来タンパク質の構造や活性が失われる場合がある。従って、目的とするタンパク質によっては、フィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分のDNA配列は、できる限り短くすることが必要となる場合がある。
本発明においてフィブロインH鎖3'末端部分が外来タンパク質を絹糸に分泌させる効果を持つタンパク質をコードする領域であることが明らかとなった。フィブロインH鎖3’末端部分に、実質的に同等の機能を有する範囲において、人為的、自然発生的のいずれを問わず、1または2以上の塩基の付加または欠失、もしくは他の塩基への置換を生じたDNAを用いることもできる。
「1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換」とは、基本となる塩基配列に比較して1または2以上の塩基が付加または欠失、もしくは1または2以上の塩基が他の塩基に置換といった変異が存在するが、基本となる無変異配列と同等の機能を保持していることを意味する。この場合の実質的に同等の機能とは、フィブロインH鎖3’末端部分から作られたタンパク質領域が、外来タンパク質を絹糸に分泌させる効果を持つことを表す。
外来タンパク質を絹糸に分泌させる効果の測定については、BIORAD社製モレキュラーイメージャーFXProを用いることで、アマシャムファルマシア社製ECL Western Blotting Detection Systemで検出した外来タンパク質由来のシグナルを検出、比較することで測定できる。
1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換の手段は自体は公知であり、例えば、ランダム変異導入法、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて行うことができる。例えば亜硫酸水素ナトリウムを用いた化学的な処理によりシトシン塩基をウラシル塩基に置換する方法や、マンガンを含む反応液中でPCRを行い、DNA合成時のヌクレオチドの取り込みの正確性を低くする方法、部位特異的変異導入のための市販されている各種キットを用いることもできる。
例えばサムブルック等編[モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル 第2版]コールドスプリングハーバーラボラトリー、1989、村松正實編[ラボマニュアル遺伝子工学]丸善株式会社、1988、エールリッヒ、HE.編[PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用]ストックトンプレス、1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができる。
また、同じく実質的に同等の機能を有する範囲において、フィブロインH鎖3’末端部分の相同配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを用いることもできる。1本鎖DNAは相同性の程度によって相手鎖とハイブリダイズする。このとき、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーをより厳密に設定することによって、より相同性の高い配列を特定することができる。ストリンジェント条件は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程における塩濃度(ホルムアミド等)の濃度、温度条件によって規定される。詳しくは、米国特許No.6,100,037に詳しく記載されている。このようなストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションスクリーニングによって特定されるDNAは、相同性のレベルにおいて70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
ポリA領域についても特に制限はないが、フィブロインH鎖、フィブロインL鎖、セリシンなど絹糸腺で大量に発現しているタンパク質遺伝子のポリA領域が好適に使用できる。
本発明におけるベクターとは、環状DNA構造または線状DNA構造を有するものをいう。特に、大腸菌内でも複製可能で、かつ、環状DNA構造を持つベクターが好適に使用できる。このベクターには、形質転換体の選抜を容易にする目的で、抗生物質耐性遺伝子、クラゲ由来蛍光緑色タンパク質遺伝子などマーカー遺伝子を組み込んでおくこともできる。
本発明で使用する昆虫細胞とは特に限定されるものではないが、好ましくは鱗翅目昆虫、より好ましくはカイコガ(Bombyx mori)由来細胞、さらに好ましくはカイコ絹糸腺細胞またはカイコガ(Bombyx mori)の卵に含まれる細胞である。絹糸腺細胞においては、フィブロインタンパク質の合成が盛んで、かつ、取り扱いが容易なカイコ5令幼虫の後部絹糸腺細胞が好適である。
昆虫細胞へ外来タンパク質の発現用遺伝子カセットおよびベクターを導入する方法には、特に制限はない。昆虫培養細胞への導入方法としては、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーションによる方法、リポソームを用いる方法、遺伝子銃を用いる方法、マイクロインジェクションする方法などを用いることができるが、カイコ絹糸腺細胞への導入においては、例えばカイコ5令幼虫の体内から取り出した後部絹糸腺組織に対して遺伝子銃を用いることによって簡便に遺伝子を導入することが可能である。
遺伝子銃による後部絹糸腺への遺伝子導入は、例えば、外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを含むベクターをコーティングした金粒子を、バイオラッド社のパーティクルガン(型番:PDS−1000/He)を用いて、寒天プレートなどに固定した後部絹糸腺へ、1,100〜1,800psiのHeガス圧で噴射させることによって可能である。
カイコガ(Bombyx mori)の卵に含まれる細胞に遺伝子を導入する場合には、マイクロインジェクションする方法が好適である。ここで卵にマイクロインジェクションを行う場合、卵中の細胞に直接マイクロインジェクションする必要はなく、卵中にマイクロインジェクションするだけで遺伝子を導入することが可能である。
本発明の「遺伝子導入用遺伝子カセット」を有するベクターをカイコガ(Bombyx mori)の卵にマイクロインジェクションすることで、本発明の「外来タンパク質の発現用遺伝子カセット」が染色体に導入された組換えカイコを取得することが可能である。例えば、田村らの方法(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)に従って、「遺伝子導入用遺伝子カセット」を有するベクターとカイコアクチンプロモーター制御下にピギーバック(PiggyBac)トランスポゼーセス遺伝子を配置したプラスミドを、同時にカイコガの卵にマイクロインジェクションし、孵化した幼虫を飼育し、得られた成虫(G0)を群内で掛け合わせて次世代(G1)カイコ幼虫を得る。
組換えカイコは、このG1世代において通常1〜2%の頻度で出現する。組換えカイコの選抜は、G1世代カイコの組織の一部からDNAを取り出し、外来タンパク質遺伝子を基に設計したプライマーを用いてPCRによって行うことができる。または、予め「遺伝子導入用遺伝子カセット」内に、カイコ細胞で発現可能なプロモータ下流に連結した緑色蛍光タンパク質(例えば、GFPおよびその類縁体)をコードする遺伝子を導入しておけば、G1世代のカイコ、例えば1令幼虫について紫外線下で緑色蛍光を発する個体を選抜することで組換えカイコの選抜が容易に行える。
緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を連結する、カイコ細胞で発現可能なプロモーターとして、たとえば特開平6−261770や特開昭62−285787に記載されているショウジョウバエの熱ショックタンパク質遺伝子のプロモーターやカイコアクチン遺伝子のプロモーター(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)、ショウジョウバエの視神経で発現することが知られている3xP3プロモーターなどが挙げられる。好ましくはカイコアクチン遺伝子のプロモーター(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)もしくは3xP3プロモーターが用いられる。
そのほかに、カイコ細胞で発現可能なプロモーターとして、カイコ絹糸腺細胞中で高い転写促進活性を有するプロモーター、たとえばフィブロインH鎖遺伝子のプロモーター(GenBank登録番号V00094の塩基番号255〜574番目、GenBank登録番号AF226688の塩基番号62118〜62437番目)、フィブロインL鎖遺伝子のプロモーター(Gene, 100:151-158:GenBank登録番号M76430)、セリシン遺伝子のプロモーター(GenBank登録番号AB007831の塩基番号599〜1656番目)を選択することも可能である。
しかし、本発明に従って、カイコ絹糸腺細胞中で高い転写促進活性を有するプロモーターを緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子に連結した場合、カイコ絹糸腺細胞中で緑色蛍光タンパク質が大量に生産されることから、絹糸腺および絹糸中に、目的外来蛋白質に加えて緑色蛍光蛋白質が産生される。この場合、目的外来タンパク質を絹糸線および絹糸から精製、回収する時に、緑色蛍光蛋白質は、きょう雑タンパク質として、目的外来タンパク質の精製、回収を困難にする。また、緑色蛍光タンパク質が絹糸の物性に、強伸度の低下など望まない性質を与える可能性が考えられる。
また、「外来タンパク質の発現用遺伝子カセット」が染色体に導入された組換えカイコを取得する目的で、「遺伝子導入用遺伝子カセット」を有するベクターをカイコガ(Bombyx mori)の卵にマイクロインジェクションするにあたり、ピギーバック(PiggyBac)トランスポゼーセスタンパク質を同時にマイクロインジェクションすることによっても、上記と同様にして組換えカイコを取得することが可能である。
ピギーバック(PiggyBac)トランスポゾンとは両端に13塩基対の逆位配列と、内部に約2.1k塩基対のORFを有するDNAの転位因子である。本発明において使用されるピギーバック(PiggyBac)トランスポゾンは特に限定されないが、例えばTrichoplusia ni cell line TN-368、Autographa californica NPV(AcNPV)、Galleria mellonea NPV(GmMNPV)由来のものを用いることができる。好ましくはTrichoplusia ni cell line TN-368由来ピギーバック(PiggyBac)の一部を持つプラスミドpHA3PIGとpPIGA3GFP(Nature biotechnology 18,81-84,2000)を用いて、その遺伝子およびDNA転移活性を有するピギーバックトランスポゼースを調製することができる。
本発明で用いられる遺伝子組換えカイコとは、外来タンパク質遺伝子がカイコ染色体に導入されたカイコのことであり、そのカイコ染色体DNAを常法に従って制限酵素処理したのち、常法に従って標識した外来タンパク質遺伝子をプローブとしてサザンブロッティングを行う時、ポジティブなシグナルを与えるカイコのことである。外来タンパク質遺伝子が導入される染色体上の遺伝子座位は、カイコの発生、分化、成長を阻害しない部位であればに特に制限はない。組換えカイコは、その絹糸腺細胞、絹糸腺内腔、および、絹糸中に外来タンパク質を産生する能力を有している。また、組換えカイコは、正常に発育し、交配が可能であり、導入された外来タンパク質遺伝子を安定に保有し、かつ子孫に伝えることが可能である。
従って、組換えカイコを継代し頭数を増やすことで、外来タンパク質の生産量を容易にスケールアップすることが可能である。交配において、野生型のカイコと交配させることで、外来タンパク質の産生量を向上させることも可能である。この場合、目的の外来タンパク質遺伝子が導入されたカイコを適宜選抜しながら継代していく必要が生じる。この場合、任意の組織から得られた細胞のDNAを用いて、組換えカイコ選抜に使用したマーカー遺伝子や外来タンパク質遺伝子存在や構造を、PCR、サザンブロッティング法などで解析することで、容易に組換えカイコの遺伝子を継承した子孫を判別することが可能である。
本発明の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを導入された昆虫細胞やカイコ絹糸腺は、それぞれ培養に適した培養液で培養することで、その培養上清や細胞中に外来タンパク質を産生することが可能である。例えば、本発明の発現用遺伝子カセットを導入されたカイコ卵巣由来細胞であるBmN細胞は、TC−100培地(ファーミンジェン社製)で、27℃で培養することで、培養3から4日で、目的とする外来タンパク質を産生する。また、カイコ後部絹糸腺は、例えば5令幼虫から無菌的に摘出したのち、インセクト・グレース培地中で、25℃で培養することで、外来タンパク質を産生する。絹糸腺でタンパク産生を行う場合は、培地中の溶存酸素濃度を高く維持することが好適であり、また、培地中に蓄積する低分子のタンパク質合成を阻害する因子を、例えば、限外濾過膜などで除去しながら培養することが好適であり、長時間のタンパク合成が可能となる。
本発明のフィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分を融合させた外来タンパク遺伝子を導入した絹糸腺は、目的の外来タンパク質を培養上清に大量に産生することが可能である。絹糸腺培養上清中の夾雑タンパク質は、ほぼフィブロインのみであることから、絹糸腺培養上清からの目的タンパク質の精製が容易であり、その結果、高純度な目的タンパク質を得ることが可能となる。
本発明で得られる組換えカイコは、通常のカイコと同様に飼育が可能であり、通常の条件で飼育することで外来タンパク質を産生させることが可能である。目的とする外来タンパク質に応じて、特に5令時期の培養温度、湿度、給餌条件などを最適化することで、外来タンパク質の産生量を向上させることも可能である。
本発明のフィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分を融合させた外来タンパク遺伝子を導入した組換えカイコは、その繭中に目的とする外来タンパク質を大量に産生することが可能となる。得られた繭から、目的外来タンパク質を容易に精製、回収することが可能となる。また、産生させた外来タンパク質の機能によっては、得られた外来タンパク質を含む絹糸を、各種の産業用途で、そのままの形態、または、一部加工した形態で利用することができる。
本発明で得られる組換えカイコの絹糸腺または繭糸より、適当な抽出操作によって、外来タンパク質を得ることができる。外来タンパク質を、絹糸腺または繭糸から抽出するために使用する溶媒については特に制限はないが、多くの場合、水溶媒系が好ましい。抽出に使用する水溶液は、外来タンパク質の抽出を促進させるために適切な溶質を含むことが可能である。例えば、リン酸などの無機酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸や、食塩、尿素、塩酸グアニジン、塩化カルシウムなどの塩類、エタノール、メタノール、アセトニトリル、アセトンなどの極性有機溶媒などが挙げられる。また、抽出溶液のpHも特に限定はなく、目的とする外来タンパク質の機能を失活させないpHであれば、任意のpHを用いることができる。
抽出された外来タンパク質を、単離・精製するための方法に特に限定はなく、通常の蛋白質の精製方法を用いることができる。例えば、目的とする有用蛋白質が本来有する機能を指標としながら、シリカゲル担体、イオン交換性担体、ゲル濾過担体、キレート性担体、色素担持担体等を用いたクロマトグラフィーや、限外濾過、ゲル濾過、透析、塩析等による脱塩、濃縮を組み合わせることによって精製し単離することができる。例えば、ネコインターフェロン-ωは、ネコインターフェロン-ωの遺伝子を導入したカイコの絹糸腺または繭糸を、20mMリン酸緩衝液(pH7.0)をホモジナイズして得られる可能性画分に回収することができる。さらに、得られた抽出液を、例えばブルーセファロース担体に吸着させ、洗浄後、塩類を含む緩衝液で溶出することにより、ネコインターフェロン-ωの純度を上げることができる。
このように製造されたサイトカイン類は、従来の他の製造方法で製造されたサイトカインと同様に、医薬用途や各種の測定、診断用途に用いることができる。この場合、各種添加剤を加えた混合物として使用してもよい。また、サイトカイン類を発現したカイコの組織、もしくは繭糸は、そのまま、もしくは加工して、医療用または衣料用の繊維として用いることができる。また、酵素類を発現した組換えカイコの組織もしくは絹糸は、そのまま酵素反応に使用することも可能である。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
実施例1. Bombyx mori genomic DNAの調製
5齢3日目のカイコを解剖し、後部絹糸腺組織を取り出した。1×SSCで洗浄した後、DNA 抽出バッファー(50mM Tris-HCl pH8.0, 1mM EDTA pH8.0, 100mM NaCl)200μlを加えた。Proteinase K(final 200μg/ml)を加えて組織をグラインダーで充分すりつぶし、更にDNA抽出バッファーを350μl、10%SDS 60μlを加え混合後、50℃ 2時間保温した。Tris-HCl飽和フェノール pH8.0 500μlを加え10分混合後、10,000rpm 5分 4℃にて遠心分離し上清を回収した。
上清に等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加え混合後、遠心分離した。再度フェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコールを加え、遠心分離後上清を回収した。等量のクロロフォルム/イソアミルアルコール(24:1)を加え混合後、遠心分離した上清に再度クロロフォルム/イソアミルアルコールを加え、遠心分離後上清を回収した。得られた上清に1/10量の3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)を加え混合し、更に2.5倍量の冷エタノールを加え-80℃にて30分静置後、15,000rpm 10分 4℃にて遠心分離しgenomic DNAを沈殿させた。70%エタノールでDNAの沈殿を洗浄した後、風乾させた。RNase入り滅菌水で100μg/mlとなるように溶解、希釈しgenomic DNA溶液を調製した。
実施例2. 遺伝子の調製
用いた遺伝子は既知の配列を利用して、その両端配列のプライマーを作製し、適当なDNAソースを鋳型としてPCRを行うことにより取得した。プライマーの端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
フィブロインH鎖プロモーター(GeneBank登録番号AF226688の塩基番号62118〜62437番目:以下P領域)は、Bombyx mori genomic DNAを鋳型に、プライマー4(配列番号4)とプライマー5(配列番号5)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
フィブロインH鎖プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域(GeneBank登録番号AF226688の塩基番号62118〜63513番目:以下HP領域)は、Bombyx mori genomic DNAを鋳型に、プライマー4(配列番号4)とプライマー10(配列番号10)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
フィブロインH鎖上流プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン領域(GeneBank登録番号AF226688の塩基番号57444〜62927番目:以下HUP領域)は、Bombyx mori genomic DNAを鋳型に、プライマー12(配列番号12)とプライマー13(配列番号13)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
ネコインターフェロンーω遺伝子(GeneBank登録番号S62636の塩基番号9〜593番目:以下IC領域)はネコインターフェロンーω遺伝子をコードするバキュロウイルスrBNV100を鋳型にプライマー6(配列番号6)とプライマー7(配列番号7)の2種類のプライマーを用いてPCRにより取得した。rBNV100は、例えばE.Coli(pFeIFN1)(微工研条寄第1633号)から抽出したプラスミドからネコインターフェロンーωの遺伝子を切り出して、カイコのクローニングベクター(T.Horiuchiら、Agric.Biol.Chem.,51,1573-1580,1987)に連結して作製した組換えプラスミドとカイコ多核体病ウイルスDNAとを、カイコ樹立細胞にコ・トランスフェクションして作製することができる。
フィブロインH鎖ポリAシグナル領域(GeneBank登録番号AF226688の塩基番号79201〜79995番目:以下A領域)は、Bombyx mori genomic DNAを鋳型に、プライマー8(配列番号8)とプライマー9(配列番号9)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
フィブロインH鎖C末端領域遺伝子・フィブロインH鎖ポリAシグナル領域(GeneBank登録番号AF226688の塩基番号79099〜79995番目:以下HA領域)は、Bombyx mori genomic DNAを鋳型に、プライマー11(配列番号11)とプライマー9(配列番号9)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
β-ガラクトシダーゼ(β-gal)遺伝子は、pβgal-Basic vector(Clontech社)を鋳型に、プライマー16(配列番号16)とプライマー17(配列番号17)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
PCRはKODplus(東洋紡(株)製)を用いて添付のプロトコールに従って行った。すなわち、それぞれの鋳型を、Bombyx mori genomic DNAの場合には100ng,、Bombyx mori 後部絹糸腺 cDNAおよびpβgal-Basic vectorの場合には10ng加え、各プライマーを50pmol、添付の10×PCRバッファーを10μl、1mM MgCl2、0.2mM dNTPs、2単位KODplusとなるように各試薬を加え、全量100μlとする。DNAの変性条件を94℃,15秒、プライマーのアニーリング条件を55℃,30秒、伸長条件を68℃,60秒〜300秒の条件でPerkin-Elmer社のDNAサーマルサイクラーを用い、30サイクル反応させた。
これらの反応液を1%アガロースゲルにて電気泳動し、それぞれP領域では約0.3kbp、HP領域では約1.4kbp.、HUP領域では約5.5kbp.、IC領域では約580bp.、A領域では約0.8bp、HA領域では約0.9bp、β-gal遺伝子では約3.2kbpのDNA断片を常法に従って抽出、調製した。これらのDNA断片をポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造(株)製)によりリン酸化した後、HincIIで切断後脱リン酸化処理したpUC19ベクターに宝酒造(株)のDNA Ligation Kit Ver.2を用いて16℃、終夜反応を行い、連結した。これらを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体にPCR断片が挿入されていることを、得られたコロニーを前述と同じ条件でPCRすることによって確認し、PCR断片の挿入されたプラスミドを常法によって調製した。これらのプラスミドをシークエンスすることにより、得られた断片がそれぞれの遺伝子の塩基配列であることを確認した。
実施例3. β-ガラクトシダーゼ発現用プラスミドの作製
実施例2で調製したβ-gal遺伝子を持つプラスミドをSal IとHind IIIにより切断し、ここにフィブロインH鎖プロモーターを持つプラスミドからSal IとHind IIIにより切り出した約0.3kbp.断片(P領域)を挿入した。さらにこれをBamH Iにより切断し、ここにフィブロインH鎖ポリAシグナル領域を持つプラスミドからBamH Iにより切り出した約0.8kbp.断片(A領域)を挿入し、得られたβ-gal遺伝子を持つプラスミドをQIAGEN Plasmid Maxi Kitを用い、添付のプロトコールに従って精製した。得られたプラスミドをpPgalAと名付け、PCRおよびシークエンスにより目的のプラスミドであることを確認した。
同様に実施例2で調製したβ-gal遺伝子を持つプラスミドをSal IとHind IIIにより切断し、ここにフィブロインH鎖プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域を持つプラスミドからSal IとHind IIIにより切り出した約1.4kbp.断片(HP領域)を挿入した。さらにこれをBamH Iにより切断し、ここにフィブロインH鎖C末端領域・フィブロインH鎖ポリAシグナル領域を持つプラスミドからBamH Iにより切り出した約0.9kbp.断片(HA領域)を挿入し、得られたβ-gal遺伝子を持つプラスミドをQIAGEN Plasmid Maxi Kitを用い、添付のプロトコールに従って精製した。得られたプラスミドをpHPgalHAと名付け、PCRおよびシークエンスにより目的のプラスミドであることを確認した。
実施例4. 遺伝子導入用プラスミドの作製
遺伝子導入用プラスミドにはpigA3GFP(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)を利用した。すなわち、米国特許第6218185号に開示されるプラスミドp3E1.2よりtransposaseをコードする領域を取り除き、その部分にA3プロモーター(GenBank登録番号U49854の塩基番号1764〜2595番目)およびpEGFP-N1ベクター(Clontech社製)由来のGFPおよびSV40由来ポリA付加配列(GenBank登録番号U55762の塩基番号659〜2578番目)を挿入したベクターがpigA3GFPであり、このベクターは独立行政法人農業生物資源研究所から分与可能である。そのA3プロモーターの上流側にあるXho I部位を平滑化しネコインターフェロン−ω遺伝子の発現カセットを挿入した。
本実施例における遺伝子発現カセットの構成は、フィブロインH鎖プロモーター・ネコインターフェロンーω・フィブロインH鎖ポリAシグナル領域(P・IC・A)、もしくはフィブロインH鎖プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域・ネコインターフェロンーω・フィブロインH鎖C末端領域・フィブロインH鎖ポリAシグナル領域(HP・IC・HA)、もしくはフィブロインH鎖上流プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域・ネコインターフェロンーω・フィブロインH鎖C末端領域・フィブロインH鎖ポリAシグナル領域(HUP・IC・HA)もしくはフィブロインH鎖プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域・ネコインターフェロンーω・フィブロインH鎖ポリAシグナル領域(HP・IC・A)である。
以下に具体的な方法を示す。
P・IC・Aコンストラクトの作製は以下の手法により行った。実施例2で調製したネコインターフェロンーω(IC領域)を持つプラスミドをSal IとHind IIIにより切断し、ここにフィブロインH鎖プロモーターを持つプラスミドからSal IとHind IIIにより切り出した約0.3kbp.断片(P領域)を挿入した。さらにこれをBamH Iにより切断し、ここにフィブロインH鎖ポリAシグナル領域を持つプラスミドからBamH Iにより切り出した約0.8kbp.断片(A領域)を挿入した。このP・IC・Aを持つプラスミドをAsc Iで切断し、切り出した約1.7kbp断片を宝酒造(株)T4 DNA Polymeraseにより平滑化したものと、Xho Iで切断後平滑化、脱リン酸化処理したpigA3GFPとを連結し、P・IC・A遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトを作製した。その手法を図1及び図2に示す。
HP・IC・HAコンストラクトの作製は以下の手法により行った。実施例2で調製したネコインターフェロンーω(IC領域)を持つプラスミドをSal IとHind IIIにより切断し、ここにフィブロインH鎖プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域を持つプラスミドからSal IとHind IIIにより切り出した約1.4kbp.断片(HP領域)を挿入した。
さらにこれをBamH Iにより切断し、ここにフィブロインH鎖C末端領域・フィブロインH鎖ポリAシグナル領域を持つプラスミドからBamH Iにより切り出した約0.9kbp.断片(HA領域)を挿入した。このHP・IC・HAを持つプラスミドをAsc Iで切断し、切り出した約2.9kbp断片を宝酒造(株)T4 DNA Polymeraseにより平滑化したものと、Xho Iで切断後平滑化、脱リン酸化処理したpigA3GFPとを連結し、HP・IC・HA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトを作製した。その手法を図3及び図4に示す。
HUP・IC・HAコンストラクトの作製は以下の手法により行った。HP・IC・HAコンストラクト1ngをテンプレートにプライマー14(配列番号14)とプライマー15(配列番号15)の2種類のプライマーを用いたPCRにより、フィブロインH鎖第一イントロン・第二エキソン領域・ネコインターフェロンーω・フィブロインH鎖C末端領域・フィブロインH鎖ポリAシグナル領域約2.1kbp.を取得した。
これをXho IとSph Iにより切断し、ここにフィブロインH鎖上流プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロンを持つプラスミドからXho IとSph Iにより切り出した約5.5kbp.断片(HUP領域)を挿入した。このHUP・IC・HAを持つプラスミドをAsc Iで切断し、切り出した約7.6kbp断片を宝酒造(株)T4 DNA Polymeraseにより平滑化したものと、Xho Iで切断後平滑化、脱リン酸化処理したpigA3GFPとを連結し、HUP・IC・HA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトを作製した。その手法を図5及び図6に示す。
HP・IC・Aコンストラクトの作製は以下の手法により行った。実施例2で調製したネコインターフェロンーω(IC領域)を持つプラスミドをSal IとHind IIIにより切断し、ここにフィブロインH鎖プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域を持つプラスミドからSal IとHind IIIにより切り出した約1.4kbp.断片(HP領域)を挿入した。
さらにこれをBamH Iにより切断し、ここにフィブロインH鎖ポリAシグナル領域を持つプラスミドからBamH Iにより切り出した約0.8kbp.断片(A領域)を挿入した。このHP・IC・Aを持つプラスミドをAsc Iで切断し、切り出した約2.8kbp断片を宝酒造(株)T4 DNA Polymeraseにより平滑化したものと、Xho Iで切断後平滑化、脱リン酸化処理したpigA3GFPとを連結し、HP・IC・A遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトを作製した。その手法を図7及び図8に示す。
P・IC・A遺伝子導入用コンストラクト、HP・IC・HA遺伝子導入用コンストラクト、HUP・IC・HA遺伝子導入用コンストラクト、HP・IC・A遺伝子導入用コンストラクトをQIAGEN Plasmid Maxi Kitを用い、添付のプロトコールに従って精製した。
実施例5. カイコ絹糸腺でのβ-ガラクトシダーゼの発現
直径1.6umの金粒子を100%エタノールで洗浄滅菌し、滅菌蒸留水中に懸濁(60mg/ml)した。カイコ絹糸腺へのβ-gal遺伝子発現カセットの導入は、遺伝子銃を用いて行った。すなわち、金粒子50ul(0.3mg)、実施例3で得られた発現用プラスミドpPgalA もしくはpHPgalHA 10ugと、2.5M塩化カルシウム50ul、0.1Mスペルミジン20ulを順々に混合し、室温で30分間放置した後に遠心分離でpHgalCがコーティングされた金粒子を回収した。
得られた金粒子を70%エタノールで2回洗浄後、100%エタノール50ul中に分散した。マイクロキャリアー上に10ulの金粒子懸濁液を載せて、乾燥させた。遺伝子銃は、BIO-RAD製 PDS-1000/Heを用いた。5令3日目のカイコ幼虫から摘出した後部絹糸腺を、PBSで軽く2度洗浄後、1%寒天プレート上に設置し、1,100psiの圧力でDNAをコーティングした金粒子を噴射させた。DNA導入後、絹糸腺を20mlグレース・インセクト培地に移し、25℃で2日間培養した。培養後、培養上清および絹糸腺細胞を回収し、β-galの発現を確認した。
発現の確認はウエスタン解析により行った。絹糸腺細胞をPBS中でホモジナイズし細胞内容物を抽出した。培養上清および細胞抽出液を、共に総タンパク質濃度が1.0mg/mlになるように調整し、これらをサンプルとしてSDS-PAGEを行った。メンブレンにブロッティング後、ECL PlusTM Western blotting Kit (アマシャムファルマシア社製)を用い、添付のプロトコールに従ってβ-galタンパク質の検出を行った。すなわち、ブロッティングしたメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク・0.1%Tween20・PBS)中で4℃終夜ブロッキングした。
メンブレンをTPBS(0.1%Tween20・PBS)で2回洗浄し、TPBSで1000倍希釈した抗β-galタンパク質抗体(シグマ社製)で室温1時間処理した。メンブレンをTPBSで2回洗浄し、更にTPBSで5分間3回洗浄した。その後TPBSで10000倍希釈した後、HRPラベル抗ラビットIgG抗体で室温1時間処理した。メンブレンをTPBSで2回洗浄し、更にTPBSで5分間3回洗浄した後、ECL PlusTM Western blotting Detection System(アマシャムファルマシア社製)の検出試薬(溶液A+溶液B)を加えた。発光をHyperfilmTMECLTM に露光、現像した。シグナルの比較には、BIORAD社製モレキュラーイメージャーFXProを用いた。
pHPgalHAを導入した絹糸腺細胞および培養上清にのみβ-galタンパク質が検出されたことから、細胞内でのタンパク質の合成もしくは遺伝子の発現にフィブロインH鎖プロモーター以外の領域すなわちフィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域が重要な役割を果たしている事が明らかとなった。また細胞外への分泌も確認された。この結果を図9に示す。
実施例6. 遺伝子組換えカイコの作製
実施例4に記載の遺伝子導入用プラスミドとピギーバックトランスポゼースタンパク質を生産するDNA(pHA3PIG)を各200μg/ml含んだ0.5mMリン酸バッファー(pH7.0)・5mMKCl溶液を調製し、3〜20nlを産卵後4時間以内のカイコ卵500個に対してマイクロインジェクションした。pHA3PIG(Nature biotechnology 18,81-84,2000 農業生物資源研究所より分与可能)は、ピギーバックトランスポゾンの一方の逆位反復配列と5’フランキング領域、トランスポゼース遺伝子のリーダー配列を欠いており、その代わりにカイコアクチン遺伝子の5’フランキング領域とリーダー配列が組み込まれている。pHA3PIGはアクチンプロモーターの働きによりピギーバックトランスポゼースタンパク質を作る機能を持つが、ピギーバックトランスポゾンの一方の逆位反復配列が欠損しているため自身のDNAは転移しない。
そのカイコ卵より孵化した幼虫を飼育し、得られた成虫(G0)を群内で掛け合わせ得られた次世代(G1)をクラゲ緑色蛍光タンパク質の蛍光を観察することにより、クラゲ緑色蛍光タンパク質遺伝子が染色体へ導入されたカイコをスクリーニングした。その結果、クラゲ緑色蛍光タンパク質の働きにより蛍光を発する遺伝子組換えカイコが得られた。
実施例7. ウエスタン解析による絹糸腺組織中の組換えタンパク質の発現解析
非形質転換カイコ、形質転換カイコ(HP・IC・A形質転換カイコ、HP・IC・HA形質転換カイコ、HUP・IC・HA形質転換カイコ)の後部絹糸腺組織を回収し、組織中でのネコインターフェロンωの発現をウエスタン解析により調べた。カイコ後部絹糸腺を100mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中でホモジナイズし、遠心分離後上清を回収しサンプルとし、ECL PlusTM Western blotting Kit (アマシャムファルマシア社製)を用い、添付のプロトコールに従ってネコインターフェロンの検出を行った。すなわち、ブロッティングしたメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク・0.1%Tween20・PBS)中で4℃終夜ブロッキングした。
メンブレンをTPBS(0.1%Tween20・PBS)で2回洗浄し、TPBSで1000倍希釈した抗ネコインターフェロン抗体で室温1時間処理した。メンブレンをTPBSで2回洗浄し、更にTPBSで5分間3回洗浄した。その後TPBSで10000倍希釈した後、HRPラベル抗ラビットIgG抗体で室温1時間処理した。メンブレンをTPBSで2回洗浄し、更にTPBSで5分間3回洗浄した後、ECL PlusTM Western blotting Detection System(アマシャムファルマシア社製)の検出試薬(溶液A+溶液B)を加えた。発光をHyperfilmTMECLTM に露光、現像した。シグナルの比較には、BIORAD社製モレキュラーイメージャーFXProを用いた。
その結果非形質転換カイコおよびP・IC・Aコンストラクト導入形質転換カイコの後部絹糸腺組織からはシグナルが検出されなかったのに対し、HP・IC・Aコンストラクト、HP・IC・HAコンストラクトおよびHUP・IC・HAコンストラクト導入形質転換カイコの絹糸腺組織からはシグナルが検出された。本実験の結果から、カイコ後部絹糸腺細胞内でのタンパク質の合成もしくは遺伝子発現の飛躍的な向上に、フィブロインH鎖プロモーター以外の領域すなわちフィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域が重要な役割を果たしている事が再確認された。この結果を図10に示す。
フィブロインH鎖の5’末端プロモーター領域5.5kbpとネコインターフェロン遺伝子とフィブロインH鎖の3’末端を含むHUP・IC・HA遺伝子カセットを含む形質転換カイコにおけるネコインターフェロンの後部絹糸腺組織内での蓄積量は、フィブロインH鎖の5’末端プロモーター領域とネコインターフェロン遺伝子とフィブロインH鎖の3’末端を含むHP・IC・HA遺伝子カセットを含む形質転換カイコにおけるネコインターフェロンの後部絹糸腺組織内での蓄積量より高かった。H鎖5’末端上流領域に、タンパク質産生量を向上させる遺伝子領域があると考えられる。
実施例8. ウエスタン解析による絹糸中の組換えタンパク質の測定
次に絹糸への外来タンパク質すなわちネコインターフェロンωの分泌を調べた。
非形質転換カイコ、形質転換カイコ(HP・IC・A遺伝子導入形質転換カイコ、HP・IC・HA遺伝子導入形質転換カイコ、HUP・IC・HA遺伝子導入形質転換カイコ)の繭を各10mg量り採り、60%LiSCN4mlを加え攪拌後、終夜室温に静置し繭を溶解した。これを8M尿素・2%SDS・5%2-メルカプトエタノールで10培希釈したものをサンプルとし、、ECL PlusTM Western blotting Kit (アマシャムファルマシア社製)を用い、添付のプロトコールに従ってネコインターフェロンの検出を行った。その結果をモレキュラーイメージャー(BioRad社製)を用いてシグナル強度を測定し、濃度既知のネコインターフェロンのシグナル強度と比較しタンパク質含量を測定した。
その結果非形質転換カイコおよびHP・IC・A遺伝子導入形質転換カイコの繭からはシグナルが検出されなかったのに対し、HP・IC・HA遺伝子導入形質転換カイコおよびHUP・IC・HA遺伝子導入形質転換カイコの繭からはシグナルが検出され、ネコインターフェロンタンパク質が絹糸中へと分泌されていることが確認できた。またその含量はHP・IC・HA形質転換カイコでは約0.8〜2.0%であり、HUP・IC・HA形質転換カイコでは約1.8〜5.4%であった。これはカイコ一頭当たりの重量に換算すると0.4〜2mgであった。
本実験の結果から、後部絹糸腺細胞内で合成されたタンパク質の絹糸への分泌には、フィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分が重要な役割を果たしている事が明らかとなった。この結果を図11に示す。フィブロインH鎖の5’末端プロモーター領域5.5kbpとネコインターフェロン遺伝子とフィブロインH鎖の3’末端を含むHUP・IC・HA遺伝子カセットを含む形質転換カイコにおけるネコインターフェロンの産生量は、フィブロインH鎖の5’末端プロモーター領域とネコインターフェロン遺伝子とフィブロインH鎖の3’末端を含むHP・IC・HA遺伝子カセットを含む形質転換カイコにおけるネコインターフェロンの産生量より高かった。H鎖5’末端上流領域に、タンパク質産生量を向上させる遺伝子領域があると考えられる。
実施例9. ELISA法による絹糸中の組換えタンパク質の測定
絹糸中のネコインターフェロンωの定量をELISA法により行った。
非形質転換カイコ、形質転換カイコ(HP・IC・A遺伝子導入形質転換カイコ、HP・IC・HA遺伝子導入形質転換カイコ、HUP・IC・HA遺伝子導入形質転換カイコ)の繭を各10μg量り採り、60%LiSCN4mlを加え攪拌後、終夜室温に静置し繭を溶解した。これをPBSで8倍もしくは16倍に希釈し、マイクロタイタープレートにアプライした。スタンダードとして濃度既知のネコインターフェロンをPBSで順次希釈し用いた。
その結果絹糸中のネコインターフェロンωはHP・IC・A遺伝子導入形質転換カイコでは検出されず、HP・IC・HA遺伝子導入形質転換カイコでは約1.1〜2.2%であり、HUP・IC・HA遺伝子導入形質転換カイコでは約1.0〜4.9%であった。
フィブロインH鎖遺伝子の5'末端部分のDNA配列と3'末端部分のDNA配列を外来タンパク質遺伝子に融合させた発現用遺伝子カセットを絹糸腺細胞などに導入することで、大量の外来タンパク質を絹糸腺細胞内、絹糸腺細胞外、さらには絹糸にまで産生させることが可能となった。この新手法により、組換えバキュロウイルスを用いることなく、絹糸腺を利用して外来タンパク質生産を生産させることで精製の容易な外来タンパク質生産技術を確立した。
図1は、P・IC・A遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトの作製手法(前半)を示す図である。 図2は、P・IC・A遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトの作製手法(後半)を示す図である。 図3は、HP・IC・HA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトの作製手法(前半)を示す図である。 図4は、HP・IC・HA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトの作製手法(後半)を示す図である。 図5は、HUP・IC・HA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトの作製手法(前半)を示す図である。 図6は、HUP・IC・HA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトの作製手法(後半)を示す図である。 図7は、HP・IC・A遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトの作製手法(前半)を示す図である。 図8は、HP・IC・A遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトの作製手法(後半)を示す図である。 図9は、培養カイコ絹糸腺でのβ-ガラクトシダーゼの発現を、ウエスタン解析により解析した図であり、電気泳動を示す図面代用写真である。細胞内でのタンパク質の合成もしくは遺伝子の発現にフィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域が重要な役割を果たしている事が明らかとなった。また細胞外への分泌も確認された。 図10は、カイコ絹糸腺組織での組換えタンパク質の発現を、ウエスタン解析により解析した図であり、電気泳動を示す図面代用写真である。カイコ後部絹糸腺細胞内での組換えタンパク質発現の飛躍的な向上に、フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域が重要な役割を果たしている事が再確認された。また、フィブロインプロモーター上流領域約5.5kbpにタンパク質産生量を向上させる遺伝子領域があることが明らかとなった。 図11は、絹糸への組換えタンパク質の産生をウエスタン解析により解析した図であり、電気泳動を示す図面代用写真である。絹糸腺細胞内で合成されたタンパク質の絹糸への分泌には、フィブロインH鎖遺伝子の3'末端部分が重要な役割を果たしている事が明らかとなった。また、フィブロインプロモーター上流領域約5.5kbpにタンパク質産生量を向上させる遺伝子領域があることが再確認された。また、フィブロインプロモーター上流領域約5.5kbpにタンパク質産生量を向上させる遺伝子領域があることが再確認された。

Claims (18)

  1. 配列番号1または配列番号2に示すDNAを外来タンパク質構造遺伝子の5’側に融合させた遺伝子を含む外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
  2. 前記外来タンパク質構造遺伝子の3’側に配列番号3に示すDNAを融合させたことを特徴とする、請求項1に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
  3. 請求項1または2に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、該外来タンパク質の発現用遺伝子カセットに含まれる配列番号1または配列番号2に示すDNAがカイコ絹糸腺細胞中での転写促進活性を有する範囲において1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
  4. 請求項1または2に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、該外来タンパク質の発現用遺伝子カセットに含まれる配列番号1または配列番号2に示すDNAに代えて、該DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、カイコ絹糸腺細胞中での転写促進活性を有する遺伝子を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
  5. 請求項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、前記配列番号3に示すDNAが、外来タンパク質を絹糸に分泌させる機能を有する範囲において、1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
  6. 請求項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、前記配列番号3に示すDNAにかえて、前記配列番号3に示すDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、外来タンパク質を絹糸に分泌させる機能を有する遺伝子を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
  7. 該外来タンパク質発現遺伝子カセットの下流に、フィブロインH鎖遺伝子のポリA付加領域、フィブロインL鎖遺伝子のポリA付加領域およびセリシン遺伝子のポリA付加領域のうちから選ばれる少なくとも一つのポリA付加領域が存在することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットの両側に、1対のピギーバック(piggyBac)トランスポゾンの逆位反復配列が存在することを特徴とする昆虫細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセット。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを含むことを特徴とする昆虫細胞用遺伝子発現ベクター。
  10. 請求項に記載の昆虫細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセットを含むことを特徴とする昆虫細胞用遺伝子導入ベクター。
  11. 請求項記載の昆虫細胞用遺伝子発現ベクターまたは請求項10に記載の昆虫細胞用遺伝子導入ベクターを昆虫細胞へ導入することを特徴とする外来タンパク質の製造方法。
  12. 昆虫細胞が鱗翅目昆虫由来であることを特徴とする請求項11に記載の外来タンパク質の製造方法。
  13. 昆虫細胞がカイコガ(Bombyx mori)由来であることを特徴とする請求項12に記載の外来タンパク質の製造方法。
  14. 昆虫細胞がカイコガ(Bombyx mori)の絹糸腺細胞であることを特徴とする請求項12または13に記載の外来タンパク質の製造方法。
  15. ピギーバック(piggyBac)トランスポゼースのDNA転移活性を利用して、前記外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを染色体に組み込んだ組換えカイコを作製し、得られた組換えカイコの絹糸腺または絹糸に外来タンパク質を産生させた後、その絹糸腺または絹糸から外来タンパク質を回収することを特徴とする請求項11に記載の外来タンパク質の製造方法。
  16. 昆虫細胞用遺伝子導入ベクターと、ピギーバック(piggyBac)トランスポゼースを産生するDNAもしくはRNAを同時にカイコ卵にマイクロインジェクションすることによって前記外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを染色体に組み込んだ組換えカイコを作製することを特徴とする請求項15に記載の外来タンパク質製造方法。
  17. 請求項1〜のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットが染色体に導入されており、かつ、絹糸腺または絹糸に外来タンパク質を産生する能力を持つ組換えカイコ。
  18. 請求項17に記載の組換えカイコから絹糸を回収することによる、外来タンパク質を含む絹糸の製造方法
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