JP4352740B2 - インクジェットプリンタ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、搬送方向に搬送される記録媒体が停止している際に、記録ヘッドを搭載したキャリッジを走査方向に移動させ、このとき、記録ヘッドのノズルの吐出口から、ピエゾ素子等の吐出手段によって前記記録媒体に向けてインクを吐出し、着弾させることで、記録媒体上に画像を形成するシリアル方式のインクジェットプリンタが知られている。
【０００３】
ところで、インクジェットプリンタは、画像を構成する画素毎の濃度、即ち、一画素に対して吐出されるべきインクの液滴数を変化させることによって、形成画像の階調を表現するようになっている。
そして、上記階調の表現に係る画像処理方法として、入力された画像の画像データの階調を補正して、出力画像データの階調特性を適正化する方法が一般的に知られており（例えば、特許文献１参照。）、この画像処理方法が、近年、インクジェットプリンタに適用されている。具体的には、インクジェットプリンタにおいては、例えば、図７に示すように、画像データの入力レベルに応じてトーンカーブによる階調補正を行うことにより、画像データの階調特性を最適化して、当該インクジェットプリンタからの画像の出力濃度レベルを調節するようになっている。これにより、記録画像を階調性の豊かな高精細なものとすることができる。
【０００４】
【特許文献１】
特許第２９６３０４６号公報
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記インクジェットプリンタにあっては、記録ヘッドからのインク吐出をキャリッジが走査方向に往動する際だけでなく、前記キャリッジが走査方向に復動する際にも行うようになっており、これにより、高速度での画像形成を実現可能となっている。
しかしながら、上記のように高速度で画像形成を行うインクジェットプリンタにあっては、キャリッジの走査方向に対しての一回の走査において、ピエゾ素子がその作動に伴って温度変化するために、インク吐出開始時におけるインク吐出量と、インク吐出開始から所定時間経過後におけるインク吐出量が変化してしまい、記録媒体上に着弾したインク滴のドット径にバラつきが生じて、記録画像の画質が低下してしまうといった問題がある。また、この問題は、特に、例えばカラー画像を形成可能となるように、複数色のインクの各々に対応した複数の記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタにおいて、顕著となっている。
【０００６】
また、上記特許文献１等の画像処理方法をインクジェットプリンタに適用しても、上記の画像処理方法は、インク吐出開始時におけるインク吐出量と、インク吐出開始から所定時間経過後におけるインク吐出量、即ち、インク吐出開始からの経過時間に応じたインク吐出量の変化を考慮したものとなっていないことから、記録画像を高精細なものとすることは困難となっている。
【０００７】
さらに、記録ヘッドの温度変化に基づいて、当該記録ヘッドのインク吐出量を制御するインクジェットプリンタも知られているが、このようなインクジェットプリンタは、記録ヘッドの温度データを吐出手段からのインク吐出量にフィードバックする制御を行う構成となっているため、記録ヘッドユニット及び制御部の構成が複雑となり、インクジェットプリンタの製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【０００８】
本発明の課題は、シリアル方式のインクジェットプリンタであって、画像情報の階調特性の最適化を行うことができ、その結果、プリンタの製造コストの上昇を抑制して高精細な画像の形成を行うことができるインクジェットプリンタを提供することである。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
請求項１に記載の発明は、記録媒体に向けてインクを吐出口から吐出するための吐出手段を有する記録ヘッドがキャリッジに搭載され、当該キャリッジが走査方向に移動する際に、前記吐出手段によって前記吐出口からインクを吐出し、前記記録媒体上に着弾させることで画像を形成するインクジェットプリンタであって、
インクは、光硬化型インクであり、
前記キャリッジには、前記記録ヘッドが走査方向に並んで複数配設されるとともに、前記記録媒体上に着弾したインクに対して光を照射する光照射部が、前記複数の記録ヘッドよりも前記キャリッジの走査方向の下流側に配置され、
前記キャリッジの走査方向に対しての一走査における、前記吐出口によるインク吐出の開始時からの経過時間に応じて、前記画像の画像情報の階調の補正量が規定された時間補正情報、及び前記複数の記録ヘッドの各々に対応する、前記記録媒体上にインクが着弾してから光が照射されるまでの時間に基づいて、前記画像情報の階調の補正量が規定された光照射時間補正情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記時間補正情報に基づいて、前記画像情報の階調を補正するとともに、前記記憶手段に記憶された前記光照射時間補正情報に基づいて、前記画像情報の階調を前記記録ヘッドごとに補正する階調補正手段と、
前記階調補正手段により階調が補正された前記画像情報に基づいて、前記吐出口によるインク吐出量を制御するインク吐出量制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【００１０】
請求項１に記載の発明によれば、吐出口によるインク吐出の開始の際に、吐出手段の駆動に伴う温度変化に起因して当該インク吐出の開始時から経過した所定時間内において変化するインク吐出量を考慮して、画像情報の階調を補正することができるので、画像情報の階調特性を最適化することができる。従って、階調が補正された画像情報に基づいて、記録ヘッドの吐出口のインク吐出量を制御することにより、記録媒体上に着弾したインク滴のドット径が、前記インク吐出の開始時からの経過時間に応じてバラつかず、高精細な画像の形成を行うことができる。
また、インクは、光硬化型インクであり、キャリッジには、記録ヘッドの吐出口から記録媒体上に吐出され着弾したインクに対して光を照射する光照射部が搭載されている。さらに、画像情報の階調の補正量が規定された光照射時間補正情報に基づいて、画像情報の階調を記録ヘッドごとに補正することができる。即ち、光硬化型のインクを用いて記録媒体上に画像の形成を行い、形成された画像に光を照射することで当該画像の記録を行う構成であっても、複数の記録ヘッドの各々に対応する、記録媒体上にインクが着弾してから光が照射されるまでの時間を考慮して、画像情報の階調を補正することができ、画像情報の階調特性を最適化することができる。従って、階調が補正された画像情報に基づいて、記録ヘッドの吐出口のインク吐出量を制御することにより、記録媒体上に着弾したインクが光の被照射により硬化する際に、インク滴のドット径が記録ヘッドごとにバラつかず、高精細な画像の記録を行うことができる。
また、従来のように、記録ヘッドの温度データを吐出手段からのインク吐出量にフィードバックする制御を行う必要がなくなるため、記録ヘッドユニットの構成を簡略化でき、インクジェットプリンタの製造コストの上昇を抑制することができる。
【００１１】
請求項２に記載の発明は、請求項１に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記時間補正情報は、前記キャリッジの走査方向に対する一走査において、前記吐出口の前記インク吐出の開始位置に対する、前記インク吐出の開始から所定時間経過後における当該吐出口のインク吐出位置に係る位置情報と、前記キャリッジの移動速度に係る移動速度情報とによって規定されていることを特徴としている。
【００１２】
請求項２に記載の発明によれば、請求項１に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、時間補正情報は、キャリッジの走査方向に対する一走査において、吐出口のインク吐出の開始位置に対する、インク吐出の開始から所定時間経過後における当該吐出口のインク吐出位置に係る位置情報と、キャリッジの移動速度に係る移動速度情報とによって規定されている。従って、位置情報及び移動速度情報に基づいて、時間補正情報を容易に規定することができることとなって、高精細な画像の形成を行うインクジェットプリンタの構成を従来に比べて簡略化することができる。
【００１３】
請求項３に記載の発明は、請求項１又は２に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記時間補正情報は、前記記録ヘッドのインク吐出に基づく形成画像のうち、前記インク吐出の開始時点において形成される画像の階調値と、前記インク吐出の開始から所定時間経過した時点において形成される画像の階調値とが異なるように、前記画像情報の階調の補正量が規定されていることを特徴としている。
【００１４】
請求項３に記載の発明によれば、時間補正情報は、記録ヘッドのインク吐出に基づく形成画像のうち、インク吐出の開始時点において形成される画像の階調値と、インク吐出の開始から所定時間経過した時点において形成される画像の階調値とが異なるように、画像情報の階調の補正量が規定されているので、請求項１又は２に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【００１５】
請求項４に記載の発明は、請求項１〜３の何れか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記記憶手段は、前記画像情報の階調補正に係る階調補正テーブルを記憶し、
前記階調補正手段は、前記階調補正テーブルに基づき階調が補正された前記画像情報の階調を、前記時間補正情報に基づいて補正することを特徴としている。
【００１６】
請求項４に記載の発明によれば、請求項１〜３に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、階調補正手段は、画像情報の階調補正に係る階調補正テーブルに基づき階調が補正された画像情報の階調を、時間補正情報に基づいて補正することができるので、画像情報の階調をさらに適正に補正することができる。
【００１７】
請求項５に記載の発明は、請求項１〜４の何れか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記記憶手段は、前記記録媒体の構成材料に基づき前記画像情報の階調の補正量が規定された記録媒体補正情報を記憶し、
前記階調補正手段は、前記記憶手段に記憶された前記記録媒体補正情報に基づいて、前記画像情報の階調を補正することを特徴としている。
【００１８】
請求項５に記載の発明によれば、請求項１〜４に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、階調補正手段は、記録媒体の構成材料に基づき画像情報の階調の補正度合が規定された記録媒体補正情報に基づいて、画像情報の階調を補正することができるので、記録媒体の構成材料によって、当該記録媒体の表面エネルギー等が異なり、記録状態が異なる場合であっても、画像情報の階調を適正に補正することができ、画像情報の階調特性をさらに最適化することができる。
【００１９】
請求項６に記載の発明は、請求項１〜５の何れか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記記憶手段は、インクの物性に基づき前記画像情報の階調の補正量が規定されたインク物性補正情報を記憶し、
前記階調補正手段は、前記記憶手段に記憶された前記インク物性補正情報に基づいて、前記画像情報の階調を補正することを特徴としている。
【００２０】
請求項６に記載の発明によれば、請求項１〜５に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、階調補正手段は、インクの物性に基づき画像情報の階調の補正量が規定されたインク物性補正情報に基づいて、画像情報の階調を補正することができるので、インクの物性によって、記録媒体に対する記録状態が異なる場合であっても、画像情報の階調を適正に補正することができ、画像情報の階調特性をさらに最適化することができる。
【００２５】
請求項７に記載の発明は、請求項１〜６の何れか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
インクは、紫外線硬化型インクであり、
前記光照射部は、紫外線を照射することを特徴としている。
【００２６】
請求項７に記載の発明によれば、インクは紫外線硬化型インクであり、光源は紫外線を照射するように構成されたインクジェットプリンタであるので、請求項１〜６の何れか一項に記載の発明と同等の効果を得ることができる。
【００２７】
請求項８に記載の発明は、請求項７に記載のインクジェットプリンタにおいて、
インクは、カチオン重合系のインクであることを特徴としている。
【００２８】
請求項８に記載の発明によれば、請求項７に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、インクはカチオン重合系のインクである。即ち、カチオン重合系のインクは、ラジカル重合系のインクに比べて、紫外線に対する感度が高く且つ酸素による重合反応の阻害が少ないので、記録媒体上に吐出されたインクの硬化に必要な照度を低減させることができる。
【００２９】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
図１は、本発明を適用した一実施の形態として例示するインクジェットプリンタを概略的に示した図である。
【００３０】
図１に示すように、インクジェットプリンタ１００は、記録媒体Ｐを搬送経路に沿って搬送する搬送機構１と、搬送機構１により搬送される記録媒体Ｐを上面にて吸引し支持するプラテン２と、プラテン２に支持された記録媒体Ｐの記録面に画像を記録する画像記録部３と、これらを統括的に制御する制御部４（図３参照）とを備えて構成されている。
【００３１】
搬送機構１は、プラテン２よりも記録媒体Ｐの搬送方向Ｘの上流側に配設され、所定幅を有する長尺な記録媒体Ｐが巻回された元巻きローラ１１と、元巻きローラ１１とプラテン２との間に配設され、元巻きローラ１１から送られる記録媒体Ｐを案内するための４つの上流側従動ローラ１２ａ〜１２ｄと、プラテン２よりも搬送方向Ｘの下流側に配設され、元巻きローラ１１から送られる記録媒体Ｐを巻き取るための巻き取りローラ１３と、プラテン２と巻き取りローラ１３との間に配設され、画像記録部３にて画像記録された記録媒体Ｐを案内するための４つの下流側従動ローラ１４ａ〜１４ｄと、巻き取りローラ１３を回転駆動させる搬送モータ等の駆動源（図示略）とを備えている。
このような構成の搬送機構１は、制御部４の制御下にて、駆動源の駆動により巻き取りローラ１３を回転させることにより、記録媒体Ｐを搬送方向Ｘに間欠的に搬送可能となっている。
【００３２】
ここで、本実施の形態に用いられる記録媒体Ｐとしては、通常のインクジェットプリンタに適用される普通紙，再生紙，光沢紙等の各種紙，各種布地，各種不織布，樹脂，金属，ガラス等の材質からなる記録媒体Ｐが適用可能である。また、記録媒体Ｐの形態としては、ロール状、カットシート状、板状等が適用可能である。
特に、上記実施の形態で用いられる記録媒体Ｐとして、所謂軟包装に用いられる透明又は不透明な非吸収性の樹脂製フィルムが適用できる。樹脂製フィルムの具体的な樹脂の種類として、ポリエチレンテレフタレート，ポリエステル，ポリオレフィン，ポリアミド，ポリエステルアミド，ポリエーテル，ポリイミド，ポリアミドイミド，ポリスチレン，ポリカーボネート，ポリ-ρ-フェニレンスルフィド，ポリエーテルエステル，ポリ塩化ビニル，ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が適用可能であり、さらには、これら樹脂の共重合体、これら樹脂の混合物、これら樹脂を架橋したもの等も適用可能である。中でも、樹脂製フィルムの樹脂の種類として、延伸したポリエチレンテレフタレート，ポリスチレン，ポリプロピレン，ナイロンのいずれかを選択するのが、樹脂製フィルムの透明性・寸法安定性・剛性・環境負荷・コスト等の面で好ましく、２μｍ以上１００μｍ以下（好ましくは、６μｍ以上５０μｍ以下）の厚みを有する樹脂製フィルムを用いるのが好ましい。また、樹脂製フィルムの支持体の表面にコロナ放電処理、易接着処理等の表面処理を施してもよい。さらに、上記実施の形態に用いられる記録媒体Ｐとして、樹脂により表面を被覆した各種紙，顔料を含むフィルム，発泡フィルム等の不透明な公知の記録媒体Ｐも適用可能である。
【００３３】
プラテン２は、例えば略水平に配置されており、プラテン２の上面で所定範囲の記録媒体Ｐの下面（記録面の側と反対側となる面）を図示しない吸引手段の駆動により吸引して支持する。
また、プラテン２の上方には、画像記録部３が設けられている。
【００３４】
次に、画像記録部３について図２を参照して詳細に説明する。
ここで、図２は、画像記録部３の要部構成を示した側面図である。
図２に示すように、画像記録部３は、光として紫外線が照射されることで硬化する性質を有するインクをノズルの吐出口から記録媒体Ｐの記録面に向けて吐出する記録ヘッド３１と、記録面に吐出され着弾したインクに紫外線を照射する光照射部３２と、これら記録ヘッド３１と光照射部３２とを搭載支持するキャリッジ３３と、走査方向Ｙに沿って延在するキャリッジレール３４とを備えている。
【００３５】
キャリッジ３３は、キャリッジレール３４に案内されながら走査方向Ｙに移動可能となっている。キャリッジ３３の移動方向は、駆動源（図示略）の回転方向に従って変更され、これによりキャリッジ３３は走査方向Ｙに往復移動する。また、画像記録時において、キャリッジ３３は記録媒体Ｐが停止している際に走査方向Ｙに往動、復動又は往復移動し、このとき、記録ヘッド３１及び光照射部３２が作動して記録媒体Ｐに画像を記録する。すなわち、画像記録部３によりシリアル方式にて画像記録が行われる。
なお、本発明における走査方向Ｙは、記録媒体Ｐの搬送方向Ｘに直交する方向、つまり記録媒体Ｐの幅方向となっている。
【００３６】
記録ヘッド３１は、インクジェットプリンタ１００で使用される４色（例えば、イエロー（Ｙ）、マゼンタ（Ｍ）、シアン（Ｃ）、ブラック（Ｋ））のインクに対応して４つ設けられており、これら４つの記録ヘッド３１ａ〜３１ｄが走査方向Ｙに沿って、図２における右側から左側に向かって並んで配置されている。各記録ヘッド３１は、その下面に記録媒体Ｐの搬送方向Ｘに複数のノズル（図示略）の吐出口（図示略）が略一列に形成されたノズル面が設けられ、このノズル面が画像記録時においてプラテン２上を搬送される記録媒体Ｐの記録面に対向するように配置されている。
【００３７】
また、各記録ヘッド３１は、その内部にピエゾ素子（圧電素子）等の吐出手段３１１（図３参照）が設けられている。そして、複数の記録ヘッド３１、…は、吐出手段３１１の作動により各吐出口からインク滴を別個に吐出し、記録媒体Ｐ上に着弾させることによって画像を形成する。
【００３８】
また、記録ヘッド３１ａ〜３１ｄは、濃度階調法によって画像の階調を表現するようになっている。ここで、濃度階調法とは、画像を構成する画素毎の濃度、即ち、一画素に対して吐出されるべきインクの液滴数を変化させる方法である。つまり、記録ヘッド３１ａ〜３１ｄの吐出口からのインク吐出量の変化に基づいて、記録媒体Ｐ上の形成画像の階調が変化することとなる。また、画像の階調表現を、例えば、ディザ法や誤差拡散法などの面積階調法の手法と組み合わせることで行うようにしても良い。
【００３９】
ここで、本実施の形態に用いられる「インク」について説明する。
本実施の形態で用いられるインクは、特に、「光硬化技術−樹脂・開始剤の選定と配合条件及び硬化度の測定・評価−（技術協会情報）」に記載の「光硬化システム（第４章）」の「光酸・塩基発生剤を利用する硬化システム（第１節）」、「光誘導型交互共重合（第２節）」等に適合するインクが適用可能であり、通常のラジカル重合により硬化するものであってもよい。
具体的に、本実施の形態に用いられるインクは、光としての紫外線の被照射により硬化する性質を具備する紫外線硬化性インクであり、主成分として、少なくとも重合性化合物（公知の重合性化合物を含む。）と、光開始剤と、色材とを含むものである。ただし、本実施の形態に用いるインクとして、上記「光誘導型交互共重合（第２節）」に適合するインクを用いる場合には、光開始剤は除外されてもよい。
上記光硬化性インクは、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるが、その両系のインクが本実施の形態に用いられるインクとしてそれぞれ適用可能であり、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクを本実施の形態に用いられるインクとして適用してもよい。
しかしながら、酸素による重合反応の阻害が少ない又は無いカチオン重合系インクのほうが機能性・汎用性に優れるため、本実施の形態では、特に、カチオン重合系インクを用いている。
なお、本実施の形態に用いられるカチオン重合系インクは、具体的に、少なくともオキセタン化合物，エポキシ化合物，ビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物と、光カチオン開始剤と、色材とを含む混合物であり、上記の通り、紫外線の被照射により硬化する性質を具備するものである。
【００４０】
光照射部３２は、複数の記録ヘッド３１ａ〜３１ｄをキャリッジ３３の走査方向Ｙに挟むように２つ配置されている。即ち、図２におけるブラック（Ｋ）のインクに対応する記録ヘッド３１ａの右側及びイエロー（Ｙ）のインクに対応する記録ヘッド３１ｄの左側に、光照射部３２ａ、３２ｂが配置されている。
【００４１】
また、各光照射部３２は、紫外線を照射可能な例えば複数の光源（図示略）を備えており、画像記録時において、記録ヘッド３１から記録媒体Ｐの記録面に吐出されたインクにより形成された画像に対して、記録ヘッド３１よりもキャリッジ３３の走査方向Ｙの下流側に配置された光照射部３２から紫外線を照射するようになっている。具体的には、キャリッジ３３が走査方向Ｙに往動、即ち、キャリッジ３３が図２における右方向に移動する際に、記録面上に形成された画像に対して、図２におけるキャリッジの左端に配設された光照射部３２ｂから紫外線を照射する一方で、キャリッジ３３が走査方向Ｙに復動、即ち、キャリッジ３３が図２における左方向に移動する際に、記録面上に形成された画像に対して、図２におけるキャリッジ３３の右端に配設された光照射部３２ｂから紫外線を照射するようになっている。
これにより、記録面上にて画像が硬化し、この記録面に対する画像の記録が行われる。
【００４２】
なお、上記光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、発光ダイオード並びに半導体レーザ等が適用可能なっている。
【００４３】
次に、制御部４について図３〜図５を参照して詳細に説明する。
ここで、図３は、制御部４の要部構成を示す機能ブロック図である。また、図４（ａ）は、階調補正テーブルｃ１を示す図であり、図４（ｂ）は、記録媒体補正データｃ６に基づく、記録媒体Ｐの構成材料と、画像データの補正係数との対応を示す図であり、図５（ａ）は、時間補正データｂ２に基づく、インク吐出位置と、画像データの補正係数との対応を示す図であり、図５（ｂ）は、光照射時間補正データｂ３に基づく、記録ヘッド３１ａ〜３１ｄの位置と、画像データの補正係数との対応を示す図である。
【００４４】
図３に示すように、制御部４は、ＣＰＵ（Central Processing Unit）４ａ、ＲＡＭ（Random Access Memory）４ｂ、ＲＯＭ（Read Only Memory）４ｃ、インターフェイス（Ｉ／Ｆ）４ｄ等から構成されており、インターフェイス４ｄを介して、搬送機構１、プラテン２、画像記録部３等が電気的に接続されている。
【００４５】
ＲＯＭ４ｃは、インクジェットプリンタ１００の各部の動作に関する各種制御プログラム（図示省略）、階調補正テーブルｃ１、階調補正プログラムｃ２、時間補正データ算出プログラムｃ３、インク吐出量制御プログラムｃ４、位置データ算出プログラムｃ５等が記憶されている。
ここで、階調補正テーブルｃ１は、記録媒体Ｐ上に記録される画像の画像データの階調補正に係る階調補正特性データを有している。階調補正特性データとは、具体的には、例えば、図４（ａ）に示すように、画像データに含まれる各画素の赤、緑、青成分の輝度を示す所定ビット数のＲＧＢデータの入力画像信号レベル（入力値）と、これら入力画像信号レベルに応じて階調補正されたＹＭＣＫデータのＤ／Ａ入力レベル（出力値）とを対応付けたものである。なお、本実施の形態では、入力画像信号レベルを、０〜２５５の濃度レベルで表現するものとし、Ｄ／Ａ入力レベルを、白レベルが０．０となり、黒レベルが１．０となるような濃度レベルで表現するものとする。
【００４６】
また、ＲＯＭ４ｃは、上記各種プログラムの実行に係る制御データ（図示省略）、移動速度データｃ６、記録媒体補正データｃ７、インク物性補正データｃ８等の各種のデータを記憶している。
ここで、移動速度データｃ６は、キャリッジ３３の移動速度に係るデータである。
また、記録媒体補正データｃ７は、記録媒体Ｐの構成材料に基づいて、画像データの階調の補正量が規定されたデータである。具体的には、記録媒体補正データｃ７は、例えば、図４（ｂ）に示すように、記録媒体Ｐの構成材料（例えば、構成材料Ａ〜Ｄ）に応じて所定の補正係数（例えば、構成材料Ａに対応する補正係数１．００、構成材料Ｂに対応する補正係数０．９５、構成材料Ｃに対応する補正係数０．７５構成材料Ｄに対応する補正係数０．９０）が規定されている。さらに、インク物性補正データｃ８は、図示は省略するが、インクの物性に基づき画像データの階調の補正量が規定されたデータである。
【００４７】
ＲＡＭ４ｂは、電力が供給されている間だけ入力されたデータを複数記憶可能に構成されており、ＣＰＵ４ａによる作業領域と、記録媒体Ｐ上に対する画像の記録を指示するための画像データ、位置データｂ１、時間補正データｂ２、光照射時間補正データｂ３等を記憶する記憶領域などが備えられている。
【００４８】
ここで、画像データは、例えば、有線、無線を問わず所定の通信手段を介して当該インクジェットプリンタ１００に接続された制御装置等から入力されたものであっても良いし、また、例えば光ディスク等の所定の記憶媒体に記録され、所定の読取装置によって読み取られたものであっても良い。
【００４９】
また、位置データｂ１は、画像データに基づき算出され、キャリッジ３３の走査方向Ｙに対する一走査毎に、当該キャリッジ３３の一走査における、吐出口のインク吐出開始位置（０レベル）と、このインク吐出開始位置に対する、インク吐出の開始から所定時間経過後における前記吐出口のインク吐出位置に係るデータである（図５（ａ）参照）。なお、本実施の形態においては、吐出口のインク吐出開始位置が０となり、インク吐出終了位置が２５５となるように、２５６レベルでインク吐出位置を表現している。
さらに、時間補正データｂ２は、位置データｂ１及び移動速度データｃ６に基づき算出され、キャリッジ３３の走査方向Ｙに対しての一走査における、記録ヘッド３１の吐出口によるインク吐出の開始時からの経過時間に基づいて、画像データの階調の補正量が規定されたデータである。即ち、例えば、図５（ａ）に示すように、時間補正データｂ２は、キャリッジ３３の走査方向Ｙに対する一走査における、吐出口によるインク吐出の開始位置（０レベル）を含み、インク吐出の開始から所定時間経過した時点における吐出口の各インク吐出位置と、各インク吐出位置における画像データの階調の補正係数との対応が規定されている。具体的には、例えば、インク吐出開始位置（０レベル）において、補正係数が０．８００となり、２５５レベルのインク吐出位置において、補正係数が１．０００となるように規定されている。
【００５０】
加えて、光照射時間補正データｂ３は、複数の記録ヘッド３１ａ〜３１ｄの各々に対応する、記録媒体Ｐ上にインク滴が着弾してから紫外線が照射されるまでの時間に基づいて、画像データの階調の補正量が規定されたデータである。即ち、例えば、図５（ｂ）に示すように、光照射時間補正データｂ３は、光照射部３２に対する記録ヘッド３１の位置に応じて所定の補正係数が規定されており、補正係数はキャリッジ３３の往動時と復動時とで異なっている。具体的には、ブラック（Ｋ）のインクの記録ヘッド３１ａ、シアン（Ｃ）のインクの記録ヘッド３１ｂ、マゼンタ（Ｍ）のインクの記録ヘッド３１ｃ及びイエロー（Ｙ）のインクの記録ヘッド３１ｄの各々に対応する補正係数は、キャリッジ３３の往動時においては、順に、１．００、０．９５、０．９０及び０．８７となっており、キャリッジ３３の復動時においては、上記と反対に、０．８７、０．９０、０．９５及び１．００となっている。
【００５１】
ＣＰＵ４ａは、ＲＯＭ４ｃに格納されている各種プログラムの中から指定されたプログラムを、ＲＡＭ４ｂ内の作業領域に展開して、当該プログラムに従った各種処理を実行する。
具体的には、ＣＰＵ４ａは、階調補正プログラムｃ２を実行することで、画像データの階調を補正する階調補正処理を実行可能となっており、この階調補正処理において、階調補正手段として、時間補正データｂ１に基づき、画像データの階調をインク吐出の開始時からの経過時間に応じて補正する。具体的には、ＣＰＵ４ａは、階調補正テーブルｃ１の階調補正特性データに基づき階調が補正された画像データの階調を、記録ヘッド３１からのインク吐出に基づいて記録媒体Ｐ上に形成される画像のうち、インク吐出の開始時点において形成される画像の階調値と、インク吐出の開始から所定時間経過した時点において形成される画像の階調値とが異なるように、補正する。
なお、上記時間補正データｂ２は、ＣＰＵ４ａが、時間補正データ算出手段として、時間補正データ算出プログラムｃ３を実行することで、位置データｂ１及び移動速度データｃ６に基づいて算出されるようになっている。ここで、位置データは、ＣＰＵ４ａが、位置データ算出手段として、位置データ算出プログラムｃ５を実行することで、画像データに基づいて算出されるようになっている。
【００５２】
さらに、階調補正処理において、ＣＰＵ４ａは、時間補正データｂ２に基づき階調が補正された画像データの階調を、記録媒体補正データｃ７に基づいて補正する。
また、階調補正処理において、ＣＰＵ４ａは、記録媒体補正データｃ７に基づき階調が補正された画像データの階調を、インク物性補正データｃ８に基づいて補正する。
【００５３】
さらに、階調補正処理において、ＣＰＵ４ａは、インク物性補正データｃ８に基づき階調が補正された画像データの階調を、光照射時間補正データｂ３に基づいて、複数の記録ヘッド３１ａ〜３１ｄの各々によるインク吐出に基づき形成される画像の階調値が各々異なるように補正する。
なお、光照射時間補正データｂ３は、例えば、ＣＰＵ４ａが、複数の記録ヘッド３１ａ〜３１ｄの各々の光照射部３２に対する位置に係る位置データ及び移動速度データｃ６に基づいて、所定の演算を行うことによって算出可能となっている。
【００５４】
また、ＣＰＵ４ａは、画像形成時において、インク吐出量制御手段として、インク吐出量制御プログラムｃ４を実行することにより、光照射時間補正データｂ３に基づき階調が補正された画像データに基づいて、複数の記録ヘッド３１ａ〜３１ｄの吐出口から吐出されるインク吐出量、即ち、一画素に対して吐出されるべきインク液滴数を制御するようになっている。
【００５５】
次に、制御部４の制御下における階調補正処理について、図６を参照して説明する。
ここで、図６は、階調補正処理を説明するためのフローチャートである。
【００５６】
先ず、ユーザによる所定の操作に基づいて、記録媒体Ｐに対する画像の記録が指示されると、ＣＰＵ４ａは、画像の画像データに対する階調補正処理を実行する。即ち、ＣＰＵ４ａは、先ず、階調補正プログラムｃ２を実行して、ＲＯＭ４ｃに記憶されている階調補正テーブルｃ１を読み出して、ＲＡＭ４ｂの所定の作業領域に展開する（ステップＳ１）。そして、ＣＰＵ４ａは、階調補正テーブルｃ１の階調補正特性データに基づいて、ＲＡＭ４ｂに記憶されている画像データを、その入力画像信号レベルに応じたＤ／Ａ入力レベルに階調補正する。これにより、画像データをＲＧＢデータからＹＭＣＫデータに変換する。
【００５７】
次に、ＣＰＵ４ａは、階調補正テーブルｃ１に基づき階調が補正された画像データの階調を、時間補正データｂ１に基づいて補正する（ステップＳ２）。
具体的には、先ず、ＣＰＵ４ａは、位置データ算出手段として、ＲＯＭ４ｃから位置データ算出プログラムｃ５を読み出して実行し、ＲＡＭ４ｂに記憶されている画像データに基づいて、位置データｂ１を算出する。
なお、算出された位置データｂ１は、ＣＰＵ４ａの制御下にてＲＡＭ４ｂの記憶領域の所定領域に一旦記憶される。
【００５８】
次に、ＣＰＵ４ａは、時間補正データ算出手段として、ＲＯＭ４ｃから時間補正データ算出プログラムｃ３を読み出して実行し、位置データｂ１及び移動速度データｃ６に基づいて、時間補正データｂ２を算出する。
なお、算出された時間補正データｂ２は、ＣＰＵ４ａの制御下にてＲＡＭ４ｂの記憶領域の所定領域に一旦記憶される。
【００５９】
続けて、ＣＰＵ４ａは、時間補正データｂ２に基づいて所定の演算を行うことにより、階調補正テーブルｃ１に基づき階調が補正された画像データの階調を、インク吐出開始位置にて形成される画像の階調値が、インク吐出の開始から所定時間経過した時点のインク吐出位置にて形成される画像の階調値よりも大きくなるように補正する。
【００６０】
次に、ＣＰＵ４ａは、ＲＯＭ４ｃから記録媒体補正データｃ７を読み出して、この記録媒体補正データｃ７に基づいて所定の演算を行うことにより、前記時間補正データｂ２に基づき階調が補正された画像データの階調を補正する（ステップＳ３）。
続けて、ＣＰＵ４ａは、ＲＯＭ４ｃからインク物性補正データｃ８を読み出して、このインク物性補正データｃ８に基づいて所定の演算を行うことにより、前記記録媒体補正データｃ７に基づき階調が補正された画像データの階調を補正する（ステップＳ４）。
【００６１】
次に、ＣＰＵ４ａは、ＲＯＭ４ｃから光照射時間補正データｂ３を読み出して、この光照射時間補正データｂ３に基づいて所定の演算を行うことにより、前記インク物性補正データｃ８に基づき階調が補正された画像データの階調を補正する（ステップＳ５）。
上記のように、ＣＰＵ４ａは、階調補正処理を行うことによって、画像データの階調特性を最適化することができる。
【００６２】
そして、ＣＰＵ４ａは、階調が最適化された画像データに対して誤差拡散処理等の所定の処理を施す制御を行った後、インク吐出量制御手段として、所定の処理が施された画像データに基づいて、記録ヘッド３１ａ〜３１ｄのノズルの吐出口のインク吐出量、即ち、一画素に対して吐出されるべきインク液滴数を制御する。
【００６３】
以上のように、本実施の形態のインクジェットプリンタ１００によれば、記録ヘッド３１の吐出口によるインク吐出の開始の際に、吐出手段３１１の駆動に伴う温度変化に起因して当該インク吐出の開始時から経過した所定時間内において変化するインク吐出量を考慮して、即ち、記録ヘッド３１からのインク吐出に基づく形成画像のうち、インク吐出の開始時点において形成される画像の階調値と、インク吐出の開始から所定時間経過した時点において形成される画像の階調値とが異なるように、画像データの階調を補正することができることとなって、画像データの階調特性を最適化することができる。従って、階調が補正された画像データに基づいて、記録ヘッド３１の吐出口のインク吐出量を制御することにより、記録媒体Ｐ上に着弾したインク滴のドット径が、前記インク吐出の開始時からの経過時間に応じてバラつかず、高精細な画像の形成を行うことができる。
また、従来のように、記録ヘッド３１の温度データを吐出手段３１１からのインク吐出量にフィードバックする制御を行う必要がなくなるため、画像記録部３の構成を簡略化でき、インクジェットプリンタ１００の製造コストの上昇を抑制することができる。
【００６４】
さらに、ＣＰＵ４ａは、位置データｂ１及び移動速度データｃ６によって、時間補正データｂ２が規定されているので、インクジェットプリンタ１００の記録モード等の違いによりキャリッジ３３の移動速度が異なる場合であっても、位置データｂ１及び移動速度データｃ６に基づいて時間補正データｂ２を容易に算出することができる。従って、高精細な画像の形成を行うインクジェットプリンタ１００の構成を従来に比べて簡略化することができる。
【００６５】
また、ＣＰＵ４ａは、階調補正テーブルｃ１に基づき階調が補正された画像データの階調を、時間補正データｂ２に基づいて補正することができるので、画像データの階調をさらに適正に補正することができる。
さらに、ＣＰＵ４ａは、時間補正データｂ２に基づき階調が補正された画像データの階調を、記録媒体補正データｃ７に基づいて補正することができるので、記録媒体Ｐの構成材料によって、当該記録媒体Ｐの表面エネルギー等が異なり、記録状態が異なる場合であっても、画像データの階調を適正に補正することができ、画像データの階調特性をさらに最適化することができる。
加えて、ＣＰＵ４ａは、記録媒体補正データｃ７に基づき階調が補正された画像データの階調を、インク物性補正データｃ８に基づいて補正することができるので、インクの物性によって、記録媒体Ｐに対する記録状態が異なる場合であっても、画像データの階調を適正に補正することができ、画像データの階調特性をさらに最適化することができる。
【００６６】
また、ＣＰＵ４ａは、インク物性補正データｃ８に基づき階調が補正された画像データの階調を、光照射時間補正データｂ３に基づいて記録ヘッド３１ごとに補正することができる。即ち、記録媒体Ｐ上に着弾したインク滴のドット径が変化するような性質を有するインク及び記録媒体Ｐを用いて画像記録を行う場合であっても、複数の記録ヘッド３１、…の各々に対応する、記録媒体Ｐ上にインクが着弾してから紫外線が照射されるまでの時間を考慮して、画像データの階調を補正することができるので、画像データの階調特性を最適化することができる。従って、階調が補正された画像データに基づいて、記録ヘッド３１の吐出口のインク吐出量を制御することにより、記録媒体Ｐ上に着弾したインクが紫外線の被照射により硬化する際に、インク滴のドット径が記録ヘッド３１ごとにバラつかず、高精細な画像の記録を行うことができる。
【００６７】
また、インクとして、カチオン重合系インクを用いているので、ラジカル重合系インクに比べて、紫外線に対する感度が高く且つ酸素による重合反応の阻害が少ないので、記録媒体Ｐ上に吐出されたインクの硬化に必要な光照射部３２からの紫外線の照度を低減させることができる。
【００６８】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、時間補正データｂ２を、ＣＰＵ４ａが、時間補正データ算出プログラムｃ３を実行することで、位置データｂ１及び移動速度データｃ６に基づいて算出するような構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、時間補正データｂ２をＲＡＭ４ｂやＲＯＭ４ｃ等の記憶手段に予め記憶しておくような構成であっても良い。
また、位置データｂ１を、ＣＰＵ４ａが、位置データ算出プログラムｃ５を実行することで、画像データに基づいて算出するような構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、上記時間補正データｂ２の場合と同様に、位置データｂ１をＲＡＭ４ｂやＲＯＭ４ｃ等の記憶手段に予め記憶しておくような構成であっても良い。
【００６９】
さらに、上記実施の形態では、ＣＰＵ４ａは、階調補正手段として、階調補正テーブルｃ１に基づいて階調が補正された画像データの階調を補正するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、階調補正テーブルｃ１を用いずに、画像データの階調を直接補正するような構成であっても良い。
また、ＣＰＵ４ａは、階調補正手段として、記録媒体補正データｃ７に基づいて画像データの階調補正を行うか否か、また、インク物性補正データｃ８に基づいて画像データの階調補正を行うか否か、また、光照射時間補正データｂ３に基づいて画像データの階調補正を行うか否かのそれぞれは、適宜任意に変更可能となっている。さらに、本発明にあっては、時間補正データｂ２に基づいた画像データの階調補正、記録媒体補正データｃ７に基づいた画像データの階調補正、インク物性補正データｃ８に基づいた画像データの階調補正、また、光照射時間補正データｂ３に基づいた画像データの階調補正の順序は、適宜任意に変更可能となっているのは勿論のことである。
【００７０】
また、上記実施の形態に用いられるインク（ラジカル重合系インク，カチオン重合系インク及びハイブリッド型インクを含む。）は、紫外線の被照射により硬化するものであるが、必ずしもこれには限定されず、紫外線以外の光の被照射により硬化するものであっても良い。ここでいう「光」とは、広義の光であって、紫外線、電子線、Ｘ線、可視光線、赤外線等の電磁波を含むものである。つまり、上記実施の形態に用いられるインクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光で重合性化合物どうしの重合反応を開始させる光開始剤とが適用されても良い。紫外線以外の光で硬化する光硬化型のインクを上記実施の形態に用いる場合は、その光を照射する光源を本発明に係る光照射部として適用する必要がある。
【００７１】
さらに、上記実施の形態では、ブラック（Ｋ）、シアン（Ｃ）、マゼンタ（Ｍ）及びイエロー（Ｙ）のインクの各々に対応させた記録ヘッド３１ａ〜３１ｄを備えるようにしたが、すくなくとも一つの記録ヘッド３１を備える構成であれば、記録ヘッド３１の数及び記録ヘッド３１から吐出されるインクの色はともに、適宜任意に変更可能なっている。
【００７２】
また、上記実施の形態において、画像は、キャリッジ３３の走査方向Ｙに対する一走査の際に、記録ヘッド３１の吐出口による連続的なインク吐出により形成される連続した画像であっても良いし、前記一走査の途中で、吐出口によるインク吐出が一旦停止することにより形成される分割された画像であっても良い。なお、画像が分割された画像である場合には、吐出口によるインク吐出が停止する毎にインク吐出の開始位置が規定されるため、時間補正データｂ２は、各インク吐出開始位置に対応させて、当該インク吐出開始位置におけるインク吐出の開始時からの経過時間に応じて、画像データの階調の補正量が規定されることとなる。また、搬送機構１によって、プラテン２上を複数の記録媒体Ｐを略並行して搬送するような構成のインクジェットプリンタにおいても、上記の分割された画像の場合と同様に、時間補正データｂ２は、各々のインク吐出開始位置におけるインク吐出の開始時からの経過時間に応じて、画像データの階調の補正量が規定されることとなる。
【００７３】
【発明の効果】
請求項１に記載の発明によれば、吐出口によるインク吐出の開始の際に、吐出手段の駆動に伴う温度変化に起因して当該インク吐出の開始時から経過した所定時間内において変化するインク吐出量を考慮して、画像情報の階調を補正することができるので、画像情報の階調特性を最適化することができる。従って、階調が補正された画像情報に基づいて、記録ヘッドの吐出口のインク吐出量を制御することにより、記録媒体上に着弾したインク滴のドット径が、前記インク吐出の開始時からの経過時間に応じてバラつかず、高精細な画像の形成を行うことができる。
さらに、光硬化型のインクを用いて記録媒体上に画像の形成を行い、形成された画像に光を照射することで当該画像の記録を行う構成であっても、複数の記録ヘッドの各々に対応する、記録媒体上にインクが着弾してから光が照射されるまでの時間を考慮して、画像情報の階調を補正することができ、画像情報の階調特性を最適化することができる。従って、階調が補正された画像情報に基づいて、記録ヘッドの吐出口のインク吐出量を制御することにより、記録媒体上に着弾したインクが光の被照射により硬化する際に、インク滴のドット径が記録ヘッドごとにバラつかず、高精細な画像の記録を行うことができる。
また、従来のように、記録ヘッドの温度データを吐出手段からのインク吐出量にフィードバックする制御を行う必要がなくなるため、記録ヘッドユニットの構成を簡略化でき、インクジェットプリンタの製造コストの上昇を抑制することができる。
【００７４】
請求項２に記載の発明によれば、位置情報及び移動速度情報に基づいて、時間補正情報を容易に規定することができることとなって、高精細な画像の形成を行うインクジェットプリンタの構成を従来に比べて簡略化することができる。
【００７５】
請求項３に記載の発明によれば、時間補正情報は、記録ヘッドのインク吐出に基づく形成画像のうち、インク吐出の開始時点において形成される画像の階調値と、インク吐出の開始から所定時間経過した時点において形成される画像の階調値とが異なるように、画像情報の階調の補正量が規定されているので、請求項１又は２に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【００７６】
請求項４に記載の発明によれば、画像情報の階調補正に係る階調補正テーブルに基づき階調が補正された画像情報の階調を、時間補正情報に基づいて補正することができるので、画像情報の階調をさらに適正に補正することができる。
【００７７】
請求項５に記載の発明によれば、記録媒体の構成材料に基づき画像情報の階調の補正度合が規定された記録媒体補正情報に基づいて、画像情報の階調を補正することができるので、記録媒体の構成材料によって、当該記録媒体の表面エネルギー等が異なり、記録状態が異なる場合であっても、画像情報の階調を適正に補正することができ、画像情報の階調特性を最適化することができる。
【００７８】
請求項６に記載の発明によれば、インクの物性に基づき画像情報の階調の補正量が規定されたインク物性補正情報に基づいて、画像情報の階調を補正することができるので、インクの物性によって、記録媒体Ｐに対する記録状態が異なる場合であっても、画像情報の階調を適正に補正することができ、画像情報の階調特性を最適化することができる。
【００８１】
請求項７に記載の発明によれば、インクは紫外線硬化型インクであり、光源は紫外線を照射するように構成されたインクジェットプリンタであるので、請求項１〜６の何れか一項に記載の発明と同等の効果を得ることができる。
【００８２】
請求項８に記載の発明によれば、カチオン重合系のインクは、ラジカル重合系のインクに比べて、紫外線に対する感度が高く且つ酸素による重合反応の阻害が少ないので、記録媒体上に吐出されたインクの硬化に必要な照度を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明を適用した一実施の形態として例示するインクジェットプリンタを概略的に示した図である。
【図２】図１のインクジェットプリンタの画像記録部の要部構成を示した側面図である。
【図３】図１のインクジェットプリンタの制御部の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図４】図１のインクジェットプリンタによる階調補正処理に係る、画像補正テーブルと、記録媒体補正データの各々の情報内容を具体的に示した図である。
【図５】図１のインクジェットプリンタによる階調補正処理に係る、時間補正データと、光照射時間補正データとの各々の情報内容を具体的に示した図である。
【図６】図１のインクジェットプリンタによる階調補正処理を説明するためのフローチャートである。
【図７】従来の入力画像データの階調補正を説明するための入力レベルと出力濃度レベルとの対応を示す図である。
【符号の説明】
１００ インクジェットプリンタ
３１、３１ａ〜３１ｄ 記録ヘッド
３１１ 吐出手段
３２ 光照射部
４ 制御部
４ａ ＣＰＵ（階調補正手段、インク吐出量制御手段）
４ｂ ＲＡＭ（記憶手段）
４ｃ ＲＯＭ（記憶手段）
ｂ１ 位置データ（位置情報）
ｂ２ 時間補正データ（時間補正情報）
ｂ３ 光照射時間補正データ（光照射時間補正情報）
ｃ１ 階調補正テーブル
ｃ２ 階調補正プログラム
ｃ４ インク吐出量制御プログラム
ｃ６ 移動速度データ（移動速度情報）
ｃ７ 記録媒体補正データ（記録媒体補正情報）
ｃ８ インク物性補正データ（インク物性補正情報）
Ｙ 走査方向

Claims (8)

1. 記録媒体に向けてインクを吐出口から吐出するための吐出手段を有する記録ヘッドがキャリッジに搭載され、当該キャリッジが走査方向に移動する際に、前記吐出手段によって前記吐出口からインクを吐出し、前記記録媒体上に着弾させることで画像を形成するインクジェットプリンタであって、
   インクは、光硬化型インクであり、
   前記キャリッジには、前記記録ヘッドが走査方向に並んで複数配設されるとともに、前記記録媒体上に着弾したインクに対して光を照射する光照射部が、前記複数の記録ヘッドよりも前記キャリッジの走査方向の下流側に配置され、
   前記キャリッジの走査方向に対しての一走査における、前記吐出口によるインク吐出の開始時からの経過時間に応じて、前記画像の画像情報の階調の補正量が規定された時間補正情報、及び前記複数の記録ヘッドの各々に対応する、前記記録媒体上にインクが着弾してから光が照射されるまでの時間に基づいて、前記画像情報の階調の補正量が規定された光照射時間補正情報を記憶する記憶手段と、
   前記記憶手段に記憶された前記時間補正情報に基づいて、前記画像情報の階調を補正するとともに、前記記憶手段に記憶された前記光照射時間補正情報に基づいて、前記画像情報の階調を前記記録ヘッドごとに補正する階調補正手段と、
   前記階調補正手段により階調が補正された前記画像情報に基づいて、前記吐出口によるインク吐出量を制御するインク吐出量制御手段と、
   を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
2. 請求項１に記載のインクジェットプリンタにおいて、
   前記時間補正情報は、前記キャリッジの走査方向に対する一走査において、前記吐出口の前記インク吐出の開始位置に対する、前記インク吐出の開始から所定時間経過後における当該吐出口のインク吐出位置に係る位置情報と、前記キャリッジの移動速度に係る移動速度情報とによって規定されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
3. 請求項１又は２に記載のインクジェットプリンタにおいて、
   前記時間補正情報は、前記記録ヘッドのインク吐出に基づく形成画像のうち、前記インク吐出の開始時点において形成される画像の階調値と、前記インク吐出の開始から所定時間経過した時点において形成される画像の階調値とが異なるように、前記画像情報の階調の補正量が規定されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
4. 請求項１〜３の何れか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
   前記記憶手段は、前記画像情報の階調補正に係る階調補正テーブルを記憶し、
   前記階調補正手段は、前記階調補正テーブルに基づき階調が補正された前記画像情報の階調を、前記時間補正情報に基づいて補正することを特徴とするインクジェットプリンタ。
5. 請求項１〜４の何れか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
   前記記憶手段は、前記記録媒体の構成材料に基づき前記画像情報の階調の補正量が規定された記録媒体補正情報を記憶し、
   前記階調補正手段は、前記記憶手段に記憶された前記記録媒体補正情報に基づいて、前記画像情報の階調を補正することを特徴とするインクジェットプリンタ。
6. 請求項１〜５の何れか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
   前記記憶手段は、インクの物性に基づき前記画像情報の階調の補正量が規定されたインク物性補正情報を記憶し、
   前記階調補正手段は、前記記憶手段に記憶された前記インク物性補正情報に基づいて、前記画像情報の階調を補正することを特徴とするインクジェットプリンタ。
7. 請求項１〜６の何れか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
   インクは、紫外線硬化型インクであり、
   前記光照射部は、紫外線を照射することを特徴とするインクジェットプリンタ。
8. 請求項７に記載のインクジェットプリンタにおいて、
   インクは、カチオン重合系のインクであることを特徴とするインクジェットプリンタ。

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