JP4350215B2 - 転写部材及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写部材及び画像形成装置に関し、特に、第1の像担持体上に形成されたトナー像を第2の像担持体上に静電的に転写させ画像形成物を得る電子写真方式の画像形成装置で転写ベルト又は中間転写ベルトとして使用される転写部材及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、感光ドラム上に記録情報に応じて光変調されたレーザビーム光を照射し、電子写真プロセスによって感光体の静電潜像を現像し、転写紙に画像を転写する記録装置を複数個有し、転写部材により転写紙を各記録装置に順次搬送しながら各色画像を重畳転写してカラー画像を形成可能なカラー画像形成装置が提案されている。
【0003】
図1は、転写部材として転写ベルトを用いた画像形成装置の一例の概略図である。
【0004】
図1に示された画像形成装置は、色分解像重ね合せ転写方式のカラー画像形成装置の一つの型式として、複数の感光体に夫々異なる色のトナー像を形成し、この各感光体に順次接触して搬送される1枚の転写材に位置合わせして、各感光体上のトナー像を転写し、フルカラー画像を得るようにしたものである。
【0005】
図1に示された画像形成装置は、装置本体320内の上部に電子写真プロセス手段として4つの画像形成部I,II,III,IVを並設しており、各画像形成部I〜IVは、像担持体としての感光ドラム301Y,301M,301C,301BK、一次帯電器としての一次帯電ローラ302Y,302M,302C,302BK、露光部303Y,303M,303C,303BK、現像器304Y,304M,304C,304BK及びクリーナ305Y,305M,305C,305BKを含んで構成されている。尚、現像器304Y,304M,304C,304BKにはそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)のトナーが収容されている。
【0006】
又、上記画像形成部I〜IVの下方には転写装置310が設けられており、該転写装置310は、駆動ローラ311と従動ローラ312及びテンションローラ313の間に張設された無端状の転写ベルト314と、各画像形成部I〜IVの感光ドラム301Y,301M,301C,301BKにそれぞれ対向して配置された転写帯電器315を含んで構成されている。
【0007】
他方、装置本体320内の底部には、記録媒体として複数枚の記録紙Pを積層収容して成るカセット306が設置されており、該カセット306内の記録紙Pは給紙ローラ307によって1枚ずつ送り出され、搬送ガイド308を経てレジストローラ309まで搬送される。
【0008】
そして、装置本体320内の上記記録紙Pの搬送方向下流側には分離帯電器316及び定着器317が配設されており、装置本体320の外には排紙トレイ318が取り付けられている。
【0009】
そして、各画像形成部I〜IVにおいては、感光ドラム301Y,301M,301C,301BKが図示矢印方向に所定の速度で回転駆動され、これらは一次帯電ローラ302Y,302M,302C,302BKによってそれぞれ一様に帯電処理される。このように帯電処理された各感光ドラム301Y,301M,301C,301BKに対して画像情報に応じた露光が露光部303Y,303M,303C,303BKによってなされると、各感光ドラム301Y,301M,301C,301BKには静電潜像が形成され、各静電潜像は各現像器304Y,304M,304C,304BKによって現像されてイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びブラックトナー像としてそれぞれ顕像化される。
【0010】
一方、前述のようにカセット306から搬送ガイド308を経てレジストローラ309まで搬送された記録紙Pは、レジストローラ309によってタイミングを合されて転写装置310に送り出され、該転写装置310の転写ベルト314に吸着されてこれと共に移動して各画像形成部I〜IVを通過し、その過程で該記録紙Pには転写帯電器315の作用によってイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びブラックトナー像が重ねて転写される。
【0011】
そして、上述のように各カラートナー像の転写を受けた記録紙Pは、分離帯電器316によって除電されて転写ベルト314から分離された後、定着器317に搬送されてカラートナー像の加熱定着を受け、最後に装置本体320から排出されて排紙トレイ318上に積載される。
【0012】
前記転写ベルトによるカラー画像形成装置は、転写紙を各記録装置に順次搬送しながら各色画像を重畳転写するため、1行程でカラー画像が形成されるので、画像出力時間が速いという利点がある。
【0013】
また、一方、中間転写体を使用した画像形成装置は、カラー画像情報や多色画像情報の複数の成分色画像を順次積層転写してカラー画像や多色画像を合成再現した画像形成物を出力するカラー画像形成装置や多色画像形成装置、又はカラー画像形成機能や多色画像形成機能を具備させた画像形成装置として有効である。
【0014】
図2は、中間転写体として中間転写ベルトを用いた画像形成装置の一例の概略図である。
【0015】
図2は電子写真プロセスを利用したカラー画像形成装置(複写機またはレーザービームプリンター)である。中間転写ベルト20には中抵抗のシームレスベルトを使用している。
【0016】
1は第1の画像担持体として繰り返し使用される回転ドラム型の電子写真感光体(以下感光ドラムと記す)であり、反時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。
【0017】
感光ドラム1は回転過程で、1次帯電器2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段3(カラー原稿画像の色分解・結像露光光学系、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系等)による画像露光を受けることにより目的のカラー画像の第1の色成分像(例えばイエロー色成分像)に対応した静電潜像が形成される。
【0018】
次いで、その静電潜像が第1の現像器(イエロー色現像器41)により第1色であるイエロートナーYにより現像される。この時第2〜第4の現像器(マゼンタ色現像器42、シアン色現像器43、ブラック色現像器44)の各現像器は作動−オフになっていて感光ドラム1には作用せず、上記第1色のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0019】
中間転写ベルト20は時計方向に感光ドラム1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0020】
感光ドラム1上に形成担持された上記第1色のイエロートナー画像が、感光ドラム1と中間転写ベルト20とのニップ部を通過する過程で、1次転写ローラ62から中間転写ベルト20に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写ベルト20の外周面に順次中間転写(1次転写)されていく。
【0021】
中間転写ベルト20に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光ドラム1の表面は、クリーニング装置13により清掃される。
【0022】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次中間転写ベルト20上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。
【0023】
63は2次転写ローラで、2次転写対向ローラ64に対応し平行に軸受させて中間転写ベルト20の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0024】
感光ドラム1から中間転写ベルト20への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスは、トナーとは逆極性(+)でバイアス電源29から印加される。その印加電圧は例えば+100V〜2kVの範囲である。
【0025】
感光ドラム1から中間転写ベルト20への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程において、2次転写ローラ63は中間転写ベルト20から離間することも可能である。
【0026】
中間転写ベルト20上に転写された合成カラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写に際し、2次転写ローラ63が中間転写ベルト20に当接されると共に、給紙ローラ11から転写材ガイド10を通って、中間転写ベルト20と2次転写ローラ63との当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送され、2次転写バイアスが電源28から2次転写ローラ63に印加される。この2次転写バイアスにより中間転写ベルト20から第2の画像担持体である転写材Pへ合成カラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着器15へ導入され加熱定着される。
【0027】
転写材Pへの画像転写終了後、中間転写ベルト20にはクリーニング用帯電部材7が当接され、感光ドラム1とは逆極性のバイアスを印加することにより、転写材Pに転写されずに中間転写ベルト20上に残留しているトナー(転写残トナー)に感光ドラム1と逆極性の電荷が付与される。ここにおいて、26はバイアス電源である。
【0028】
前記転写残トナーが感光ドラム1とのニップ部及びその近傍において感光ドラム1に静電的に転写され、中間転写体がクリーニングされる。
【0029】
前述の中間転写ベルトを用いた画像形成装置を有するカラー電子写真装置と従来の技術である転写ドラム上に第2の画像担持体を張り付けまたは吸着せしめ、そこへ第1の画像担持体上から画像を転写する画像形成装置を有したカラー電子写真装置、例えば特開昭63−301960号公報中で述べられたごとき転写装置とを比較する。前者の場合は、第2の画像担持体である転写材になんら加工、制御(例えばグリッパーに把持する、吸着する、曲率をもたせる等)を必要とせずに中間転写ベルトから画像を転写することができるため、封筒、ハガキ、ラベル紙等、薄い紙(40g/m2 紙)から厚い紙(200g/m2 紙)まで、幅の広狭、長さの長短、あるいは厚さの厚薄によらず、第2の画像担持体を多種多様に選択することができる。
【0030】
このような利点のため、すでに市場においては転写ベルトや中間転写ベルトを用いたカラー複写機、カラープリンター等が販売され始めている。
【0031】
中間転写体若しくは転写部材に用いられるベルト及びチューブの製造方法はすでに種々知られている。例えば、特開平10−63115号公報、特開平5−269849号公報では、シートをつなぎ合わせて円筒形状とし、ベルトを得る方法が開示されている。又、特開平5−345368号公報では、押し出し成形による半導電性ベルトの製造方法が開示されている。更に、特開平9−269674号公報では、円筒基体に多層の塗工被膜を形成し、最終的に基体を除くことにより、ベルトを得る方法が開示されている。また一方、特開平5−77252号公報では、遠心成形法によるシームレスベルトが開示されている。上述の方法にはそれぞれ一長一短があり、本発明者等が真に希求している方法ではない。例えば、シートを繋ぎ合わせる方法はつなぎ目の段差及び引張り強度の低下が問題となる。又、押し出し成形では100μm以下の薄層ベルトの製造はかなりの困難を有し、たとえ可能であったとしても厚みムラ、それに影響を受ける電気抵抗ムラが生じやすくなる。又、キャスト成形、塗工、遠心成形法など溶剤を使用する方法は、塗布液の製造−塗布成形−溶剤の除去等、工数、コストが増すものである。更に、溶剤の回収など環境に影響を及ぼす事項も含んでいる。
【0032】
また一方、中間転写体の転写効率の向上、中間転写体表面へのトナー付着防止、電気抵抗の安定性向上、および画質向上を目的とする、多層構造の中間転写体が開示されている。
【0033】
例えば、特開平8−50419号公報では、ポリカーボネート樹脂層の上にエピクロルヒドリン層を有する2層構造の中間転写ベルトが開示されている。また、特開平1−273075号公報では、ウレタンゴム層とポリテトラフルオロエチレン層の2層構造が開示されている。また、特開平3−192282号公報では、ポリエステル層とポリエチレン層からなる中間転写ベルトが開示されている。
【0034】
上記の中間転写体は、全て異種の材料の層を積層したものであるため、繰り返しの長期使用によって密着性を失い層間剥離を生じる場合がある。特に、表面エネルギーの低いシリコーン系又はフッ素系の層とそれ以外の層の組合わせの場合は、その傾向が著しい。
【0035】
また、従来、本発明者らは、熱収縮チューブを被覆収縮せしめ中間転写体の最上層に用いることを開示したが、このチューブと下層との密着性は、チューブの収縮力のみに依存しているため、長期間使用すると密着性が低下し、上層チューブのシワや寄れが生じ、それが転写性に影響を与えることが判明した。
【0036】
また、他方、特開平3−192282号公報では、表層を下層より高抵抗とした、2層の中間転写ベルトが開示されているが、これは最表層が抵抗制御剤を含まずまったく抵抗制御がなされていない樹脂であるため、適度なリークサイトが存在しない。そのため、長時間くり返し使用すると、ベルト表面のチャージアップの発生や、低温低湿下での部分的な高抵抗化により、転写性にムラが生じたり、異常放電による画質劣化をまねくことになる。
【0037】
また、特開平5−96648号公報や前述の特開平8−50419号公報では、やはり表層を下層より高抵抗化した2層のベルト、チューブが開示されている。これらは表層に導電剤を含んでおり、表層から下層になるにつれ導電剤含量が増える構成となっている。そのため、ベルト全体として剛性が増し、特にベルトを張架するプーリーやローラーに接触する最下層の部分が、ベルト表面より剛性、硬度が増加し、屈曲性や、柔軟性が最も要求されるまさにその部分が、最も柔軟性に劣るという結果となっており、これらベルト、チューブは長期の耐久性を維持出来ない。
【0038】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、前述の問題を解決した、新規な転写部材及び画像形成装置を提供することを課題としている。
【0039】
本発明は、帯電工程、画像露光工程、転写工程を有する画像形成装置において、該転写工程において転写効率が極めて高い転写部材を使用した画像形成装置を提供することを課題としている。
【0041】
また、本発明は、画像の微小部分の転写不良の発生しない、所謂中抜け画像のない、均一均質の画像品質が達成される転写部材及び画像形成装置を提供することを課題としている。
【0042】
また、本発明は、広範な温湿度環境下において、繰り返し使用による苛酷な耐久使用を行っても特性に変化がなく、初期と同様な特性を維持し得る転写部材及び画像形成装置を提供することを課題としている。
【0043】
また、本発明は、有機感光体に悪影響を与えない転写部材及び画像形成装置を提供することを課題としている。
【0044】
また、本発明は、多層構成のベルトを成形した場合でも、使用中に層間剥離のない転写部材及び画像形成装置を提供することを課題としている。
【0045】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明においては、電子写真方式の画像形成装置で転写ベルト又は中間転写ベルトとして使用される転写装置用の転写部材において、
該転写部材が最表層と下層を有し、かつ、
該最表層が、ポリカーボネート樹脂、該ポリカーボネート樹脂100部に対して8部の導電性カーボンブラック、及び、該ポリカーボネート樹脂100部に対して1部の酸化防止剤を含有し、かつ、
該下層が、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、該ポリフェニレンエーテル樹脂100部に対して2.1部のステアリン酸モノグリセライドを含有し、かつ、
該最表層は該下層より体積抵抗が高く、かつ、
該最表層の抵抗制御剤の含有量が該下層の抵抗制御剤の含有量より多く、かつ、
該最表層に含有される抵抗制御剤が該導電性カーボンブラックであり、かつ、
該下層に含有される抵抗制御剤が該ステアリン酸モノグリセライドである
ことを特徴とする転写部材が提供される。
【0047】
また、本発明においては、帯電工程、画像露光工程および転写工程を有する電子写真プロセスによって画像形成を行う画像形成装置において、該転写工程で上記に記載の転写部材が使用されることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0050】
【発明の実施の形態】
本発明の転写ベルトは従来の2層構成ベルトとはまったく異なった構成を有し、その結果、従来品と比較して3〜4倍の高耐久性を得ることができる。
【0051】
すなわち、従来技術において、表層を下層より高抵抗化する場合、前述のごとく、下層に含有する導電剤は上層よりは増量する構成となっている。
【0052】
例えば、同一の樹脂を用い、2層構成のベルトを製造する場合、表層は導電剤を含まないか、又は下層より少ない含有量とし、表層の高抵抗化を計る。下層の導電剤含量を上層より多くして、下層は表層より低い抵抗値を持つこととする。
【0053】
この導電剤含有量の異なる各層を単独で取り出し、その機械的特性である伸び、引張り強度、曲げ強度、100%モジュラス、ヤング率等を測定することができる。この時、導電剤含有量の差が上記の機械的特性に影響し、導電剤含有量の多い層の曲げ強度、伸び、100%モジュラスは低下する。導電剤添加の有無、量によっては、数倍、場合によっては10倍以上の差が生ずる。
【0054】
本発明の転写部材は主としてベルトとして使用されるため、図1、図2に示すように、何本かのプーリー、ローラーに張架回転する。ベルトの最下層の曲げ強度や伸びが小さい場合は、プーリーやローラーの曲率にそってベルトが柔軟に変形回転し移動する際に必要以上の負荷を強いることとなる。短時間の使用では実質的弊害は発生しないが、数100時間以上の使用においては、下層がくり返し変形に耐えられず、ヒビ割れ、クラック、端部亀裂、などが発生する。この現象は、ベルト表面では見られず、下層を構成する裏面に発生するものである。そのため、実使用上見落としがちとなり、さらに劣化が進むと層間剥離、又は層間の部分的ハガレが生じ、重大欠陥へと発展する。
【0055】
本発明者らはこれらの実験的経験を踏まえ、最表層は高抵抗を維持するが、下層は最表層より導電剤含有量が少なく、最表層より抵抗が低い構成を見い出した。このように、本発明においては、最表層より下層の導電剤量が少ないため、くり返し使用が行われる耐久性評価において好ましい結果が得られる。
【0056】
多層構成の場合、この最表層に対して導電剤を減少せしめた層が最表層より下層側にあれば、本発明の目的を達成できるが、好ましくは、最表層の直下の層、及び/又は、最下層に存在する場合、より長い寿命を維持することが出来る。この理由は十分解明されていないが、最も変形量の大きい位置である最下層に存在する柔軟な層、又、剛性の高い層の下に存在し、曲げ変形を容易にせしめる層により機能を発揮していると推定される。
【0057】
抵抗制御剤として導電剤を使用する場合、最表層の導電剤含量と下層の導電剤含量の比(重量比)は1:0.8〜0.01、好ましくは1:0.7〜0.01、より好ましくは1:0.6〜0.01の範囲にある。
【0058】
以下に本発明の製造方法の一態様を説明する。ただし、それにより本発明が何ら制限を受けるものではない。
【0059】
図3は、本発明に係る成形装置である。本装置は、押し出し機、押し出しダイス、気体吹き込み装置より成る。図3は、2層構成ベルト成形用に2基の押し出し機100及び110を具備している。
【0060】
次に、単層の中間転写体の製造方法について述べる。まず、成形用樹脂、導電剤、添加剤等を、所望の処方に基づき、予め予備混合後、混練分散させた成形用原料は、押し出し機100に具備したホッパー120に投入される。押し出し機100においては、成形用原料が後工程でのベルト成形が可能となる溶融粘度となり、また原料相互が均一分散するように、設定温度及び押し出し機スクリュー構成が選択される。
【0061】
成形用原料は、押し出し機100中で溶融混練され、溶融体となり押し出しダイス140に供給される。押し出しダイス140は、気体導入路150が配設されており、気体導入路150により空気等が押し出しダイス140に吹き込まれることにより、押し出しダイス140を通過した溶融体は径方向に拡大膨張する。吹き込まれる気体としては、空気以外に、窒素、二酸化炭素、アルゴン等が挙げられる。
【0062】
膨張した成形体は、冷却リング160により冷却されつつ上方向に引き上げられる。この時、寸法安定ガイド170の間を通過することにより最終的な形状寸法180が決定される。更に、これを所望の巾に切断することにより、本発明の中間転写ベルト190を得ることができる。
【0063】
本発明における、押し出し成形比とは、押し出しダイス140の口径と押し出しダイスを通過し口径が拡大膨張した形状寸法180との口径比をいう。
【0064】
すなわち、押し出し成形比=成形後のベルト口径/押し出しダイス口径である。
【0065】
前述の説明は、単層ベルトに関してであったが、2層の場合は、図3に示すように、更に押し出し機110を配置し、押し出し機100の混練溶融体と押し出し機110の混練溶融体とを同時に2層用の押し出しダイス140へ送り込み、2層同時に拡大膨張させ2層ベルトを得る。本発明によれば、2層以上の層構成も当然可能であり、3層以上の時は、層数に応じ相応に押し出し機及び押し出しダイスを準備すればよい。
【0066】
図5、図6及び図7は、2層及び3層構成の転写又は中間転写ベルトの部分断面図である。このように本発明によれば、単層のみならず、多層構成の転写ベルトを一段工程で、かつ短時間に寸法精度良く成形することができる。短時間で多層成形できるということは、大量生産及び低コスト生産が可能であることを十分示唆するものである。
【0067】
また、本発明は、とりわけ異種の層を積層する際に有効である。一般に、上層にフッ素、シリコーンを含有した低表面エネルギー層とそれ以外の層を積層する場合、層間の密着性が悪い。しかし、本発明により上層と下層の密着性を維持強化せしめ、ベルトとしての耐久性を増すことができる。
【0068】
転写ベルト、中間転写ベルトの電気抵抗値及びベルト内の電気抵抗値の一様性は、転写ベルト、中間転写ベルトの性能を維持する上で非常に重要な因子である。当該ベルトの電気抵抗値が高すぎる場合は、1次転写時及び2次転写時に十分な転写電界を与えることができず転写不良となる。一方、低すぎる場合は、部分的な放電が生じ、やはり転写電界を形成することができない。また、ベルト内の抵抗が不均一であると、前述と同様に部分的な放電すなわち、リークが発生し、1次、2次転写時に印加した電流はそこから逃げ、必要な転写電界を得ることができない。
【0069】
また、最表層の高抵抗化は、転写時にトナー粒子の異常転写である、トナー飛散、文字部の部分的転写抜け、非画像部へのトナー飛び(カブリ現象)を防ぐために必須である。
【0070】
転写部材の体積抵抗は通常100〜1014Ω・cmであり、表面抵抗は通常100〜1017Ω/□である。
【0071】
転写部材の周方向における体積抵抗の最大値は最小値の1.1倍以上、100倍以下であり、転写部材の周方向における表面抵抗の最大値は最小値の1.1倍以上、100倍以下である。
【0072】
転写部材の長手方向における体積抵抗の最大値は最小値の1.1倍以上、100倍以下であり、転写部材の長手方向における表面抵抗の最大値は最小値の1.1倍以上、100倍以下である。
【0073】
転写部材である転写ベルト、中間転写ベルトの全体抵抗は、中抵抗領域である104 〜1015Ω・cm(体積抵抗)であるが、最表層は108〜1017Ω・cmの高抵抗を維持する。これにより、転写時にトナーの転移を効率よくかつ方向性良く行うことが出来る。そのため、下層の体積抵抗としては1〜1012Ω・cm、好ましくは102 〜1011Ω・cmである。最表層は当然前述の下層より高抵抗化しなければならない。全体抵抗と各層の体積抵抗の関係については、最表層のみの体積抵抗はベルトの全体抵抗より高く維持しつつ、ベルトとしては下記に述べるように好ましい範囲に入らなければならない。
【0074】
本発明の転写部材を中間転写ベルトに用いた場合、全体抵抗として1015Ω・cmを越えると、中間転写ベルトは明らかに高抵抗化し、転写効率に悪影響が生じる。また、104 Ω・cm未満であると、中間転写ベルトの耐圧性が低下し、中間転写ベルトに1次又は2次転写時に500〜2,000Vの高電圧が印加された場合、絶縁破壊を発生し易くなる。例えば、中間転写ベルトの最表層に50μm以下の微小なピンホールが生じた場合でさえも、この最表層が108 Ω・cm未満であると、容易にリーク、絶縁破壊が発生してしまう。
【0075】
さらに、本発明の製造方法においては、押し出し成形比の大小によりベルト内の電気抵抗値の均一性は著しく影響を受ける。押し出し成形比は通常0.5〜3.0である。押し出し成形比が3.0を越えると、押し出しダイスを通過後拡大膨張する工程で、拡大率が大きすぎる場合、引き上げ方向(軸方向)及び周方向に電気抵抗のムラが生じる。特に、周方向に瞬時に大きく拡大されるため、電気抵抗ムラは周方向に大きくなる。
【0076】
そのため押し出し成形比を2.8以下にすることで良い結果が得られる。
【0077】
尚、空気の吹き込みを行なう場合は、押し出し成形比は通常1.05〜3.00である。押し出し成形比が1.05以下であると、押し出し成形速度と、空気吹き込み量、及び速度のバランスを取ることが微妙に難しく、ベルトの形状寸法の不安定性やベルトの厚み方向にムラが発生しやすくなる。このベルト厚みは、やはり電気抵抗値に影響を与える因子であり、厚みの不均一はベルト内の一様性にとって不利である。押し出し成形比を1.05以下として成形したい場合は、図3に示すような製造方法では不可能であり、図4に示すような成形製造方法を用いる必要がある。
【0078】
図4は、本発明にかかる別の中間転写体の製造方法の概念図である。ホッパー120に投入された成形用原料は、押し出し機100を通過する過程で均一分散された溶融体となり、押し出しダイス141から押し出される。押し出されたベルト内面が内部冷却マンドレル165に接触しつつ又は非接触の状態で冷却され、該成形体は所望寸法180に整えられ、中間転写ベルト190が得られる。
【0079】
押し出し成形比は、以下のように求めることができる。
【0080】
押し出し成形比=成形後のベルト口径/押し出しダイス口径
また、さらに、本発明の転写部材の電気抵抗値は、前述のようなマクロ的な全体としての値を確保すると共に、以下に詳述するベルト全面にわたる精密な電気抵抗の関係を満たして、ベルト全領域での均一な転写性、高画質を得ることができる。
【0081】
すなわち、図3の製造方法においては、急激に周方向に拡大膨張するため、特にベルト周方向の体積抵抗、表面抵抗の一方又は両方は、その最大値が最小値の100倍以内にすることが必要である。これらを達成するためには、本発明に用いられる樹脂や添加剤と抵抗制御剤との相溶性、抵抗制御剤の量、及び分散加工時の工程条件、更に図3及び図4に示されるベルト製造時の各工程条件を詳細に検討することにより、上記の範囲に収めることができる。
【0082】
本発明における体積抵抗と表面抵抗は、単に測定条件の違いばかりではなく、全く個別の電気特性を示すものである。すなわち、中間転写体に印加される電圧/電流が厚み方向に加えられた場合、中間転写体の電荷の移動は、主に中間転写体の内部構造の物性、換言すれば、中間転写体の層構造や添加剤、抵抗制御剤の種類や分散状態によって決定され、その結果として、中間転写体の表面電位や除電速度等が決まる。一方、中間転写体の表面のみで電荷の授受が行われているように電圧/電流が加えられた場合、中間転写体の内部構造や層構造には殆ど依存せず、表面における添加剤、抵抗制御剤の存在割合によってのみ帯電、除電が決まる。
【0083】
また一方、本発明の転写部材に処方される抵抗制御剤量は本発明の製造方法と不可分の関係にある。抵抗制御剤量が30重量%を越えると、同時に処方される樹脂がどんなに延伸、拡大が可能な柔軟な樹脂であっても、押し出し機を通過後、塑性的な溶融体となり、所望の拡大膨張を行うことができない。また、仮に成形できたとしても量が多いため抵抗制御剤粒子に起因するブツ、フィッシュアイや穿孔が頻発する。
【0084】
しかるに本発明の製造方法では、成形用原料に対して抵抗制御剤量を30重%以下とすることは必須であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは21重量%以下である。特に抵抗制御剤としてイオン電導性、及び電子電導性のものを単独で使用する場合、又は併用する場合、イオン電導性抵抗制御剤は分散性に優れる反面、湿度依存性が大きいため多量に使用することはできない。又、電子電導性抵抗制御剤は前述のように本発明の中間転写ベルトの製造方法において電気抵抗の一様性に著しく影響を与える。そのため本発明においては、成形用原料に対してイオン電導性抵抗制御剤としては0.05〜10重量%、電子電導性抵抗制御剤は1〜30重量%を、それぞれ単独、又は併用して用いることが好ましい。
【0085】
成形後の転写ベルトや中間転写ベルトの厚みの範囲は45〜300μmであり、好ましくは50〜270μm、より好ましくは55〜260μmである。図3の製造方法では、押し出しダイスより押し出しされた混練溶融体が急激に拡大膨張するため、電気抵抗の制御性と相俟って成形体の厚みはある程度制限を受ける。300μm以上の厚みでは、均一な拡大膨張が得がたく、電気抵抗の均一性に難が生じやすい。同時に厚みが厚い分、膜厚の均一性は得にくくなる。更にこの膜厚を有するベルトを中間転写体として用いる場合、かなりの剛性と、乏しい柔軟性のため円滑な走行性を妨げ、ベルト走行中に撓み、寄りなどが生じやすくなる。45μm以下の厚みでは、中間転写体としての引張り強度の低下、ベルトを張架回転させる耐久性試験中に弛緩が生じ、徐々に発生する伸び等、実用上問題がある。
【0086】
45μm以下のベルトによる製造は、薄層であるため電気抵抗の安定性などが期待できるので、対応は可能であるが、上記の実用上の問題より適しない。
【0087】
図3〜図4の押し出しダイスのダイギャップの厚みより、最終の中間転写ベルト190の厚みは小さくなければならない。これは、押し出し時の中間転写ベルトの表面の平滑性と厚みの均一性(中間転写ベルトの電気特性に影響を与える因子)を確保するために必須である。その範囲は、ダイスのダイギャップに対し99/100〜1/100である。1/100以下になると、押し出し圧が高くなり、円滑な押し出しが困難となる。
【0088】
本発明の転写部材に用いられる各層の主たる材料である樹脂としては、例えば、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、等からなる群より選ばれる1種類を単独で使用したり、または2種類以上を併用することが出来る。ただし、上記材料に限定されるものではない。
【0089】
本発明に用いる転写部材は、転写不良、中抜け画像が生じない程度の硬度が必要であり、その好ましい範囲は60°〜100°、より好ましくは70°〜100°、更に好ましくは73°〜100°であり、その測定方法はJIS−Aの方式に従うものとする。
【0090】
次に本発明の転写部材の電気抵抗値を調整するための抵抗制御剤のうち、電子電導性抵抗制御剤としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化スズ被覆酸化チタン、酸化スズ、酸化スズ被覆硫酸バリウム、チタン酸カリウム、アルミニウム金属粉末、ニッケル金属粉末等が挙げられる。また、イオン電導性抵抗制御剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエステルアミド、エチレンオキシド−エピハロヒドリン共重合体、メトキシポリエチレングリコールアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0091】
本発明の転写部材の抵抗値の測定方法は、以下の通りである。
(1)中間転写ベルトを図8に示したように張架し、中間転写ベルト20を2本の金属ローラ202及び203で挟み、直流電源、適当な抵抗値を持つ抵抗器205、電位差計206をつなぐ。
(2)駆動ローラ200にて中間転写ベルト表面の移動速度が100〜300mm/秒になるようにベルトを駆動する。
(3)直流電源から100V〜1kVの範囲内で電圧を回路に印加し、抵抗器の両端の電位差Vrを電位差計206にて読む。なお、測定時の雰囲気は、気温、23±5℃、湿度50±10%RHとする。
(4)得られた電位差Vrから、回路に流れる電流値Iを求める。
(5)中間転写ベルトの抵抗値=印加電圧/電流値I
なお、図8において、200は駆動ローラ、201は金属ローラ、204は直流電源、205は抵抗器、206は電位差計である。
【0092】
また、第一の画像担持体としては、少なくとも最外層にポリテトラフルホロエチレン(PTFE)微粉末を含有する感光ドラムを用いると、より高い一次転写効率が得られるために好ましい。これは、PTFE微粉末を含有することにより、感光ドラム最外層の表面エネルギーが低下し、トナーの離型性が向上するためと考えられる。
【0093】
次に、本発明における体積抵抗及び表面抵抗について述べる。
<測定器>
抵抗計:超高抵抗計R8340A(アドバンステスト社製)
試料箱:超高抵抗測定用試料箱TR42(アドバンステスト社製)
但し、主電極は直径25mm、ガード・リング電極は内径41mm、外径49mmとする。
<サンプル>
ベルトを直径56mmの円形に切断する。切断後、片面全面にはPt−Pd蒸着膜からなる電極を設け、もう一方の面にはPt−Pd蒸着膜からなる直径25mmの主電極と内径38mm、外径50mmのガード電極を設ける。Pt−Pd蒸着膜は、マイルドスパッタE1030(日立製作所製)で蒸着操作を2分間行うことにより得られる。蒸着操作を終了したものを試料サンプルとする。
<測定条件>
測定雰囲気:23℃/湿度55%。
(試料は予め23℃/湿度55%の雰囲気に12時間以上放置しておく)
測定モード:プログラムモード5
(ディスチャージ10秒、チャージ及びメジャー30秒)
印加電圧:1〜1000(V)
印加電圧は、本発明の画像形成装置で使用される中間転写体及び転写部材に印加される電圧の範囲の一部である1〜1000Vの間で任意に選択できる。また、サンプルの抵抗値、厚み、絶縁破壊強さ等に応じて、上記印加電圧の範囲において、使用される印加電圧を適宜変えることができる。また、前記印加電圧の何れか一点の電圧で測定された複数箇所の体積抵抗及び表面抵抗が本発明の抵抗範囲に含まれていることを確認する。
【0094】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明する。実施例中の「部」は重量部である。
【0095】
実施例1
最表層の材料として、
ポリカーボネート樹脂 100部
導電性カーボンブラック 8部
酸化防止剤 1部
下層の材料として、
ポリフェニレンエーテル樹脂 100部
ステアリン酸モノグリセライド 2.1部
上記のそれぞれ2種の配合を2軸の押し出し混練機で混練せしめ、所望の電気抵抗になるように、抵抗制御剤、添加剤を十分にバインダー中に均一分散させ、1〜2mmの粒径の混練物とした。
【0096】
次に、図3に示される成形装置を用い、本発明の転写部材である中間転写ベルトを得た。
【0097】
1軸押し出し機100のホッパー120へ前記最表層用混練物を投入し、設定温度200〜250℃の範囲に調節して押し出すことにより最表層溶融体とした。また、1軸押し出し機110のホッパー130へ前記下層用の混練物を投入し、溶融せしめ、下層用溶融体とした。
【0098】
前記2種の溶融体は、引き続いて直径110mm、最表層のダイギャップ65μm、下層のダイギャップ100μmに設定された円筒状2層用押し出しダイス140に導かれた。
【0099】
更に、そこで気体導入路150より空気を吹き込み拡大膨張させ、最終的な形状寸法として、直径140mm、最表層及び下層の厚みをそれぞれ35μm、80μm、全体の肉厚を115μmとした。更に、ベルト巾230mmで切断し、中間転写ベルトを得た。これを中間転写ベルト1とする。
【0100】
この時、中間転写ベルト1の電気抵抗は、7.4×1010Ωであった。また、前述の電気抵抗測定装置を用い、1,000V印加して、図9に示すように、上記の中間転写ベルト1について周方向に4ケ所、各位置での軸方向に2ケ所、計8ケ所の位置で測定を行い、ベルト内の表面抵抗及び体積抵抗のバラツキを測定した。測定した8点の表面抵抗値、及び体積抵抗値は、それぞれ、8.2×1010〜5.6×1011Ω/□、4×1010〜1.1×1011Ω・cmの範囲に含まれるものであった。8ケ所の測定値のバラツキはこのように1桁以内に収まっていた。同様の位置での肉厚測定のバラツキは、115±20μmの範囲であった。中間転写ベルト1を目視観察すると、表面にはブツ、フィッシュアイ等の異物、成形不良は見られなかった。各層の体積抵抗を表1に示す。
【0101】
この中間転写ベルト1を図1に示されるフルカラー電子写真装置に装着し、80g/m2 紙にフルカラー画像をプリントし、以下のように転写効率を定義して、転写効率の測定を行った。
【0102】
1次転写効率(感光ドラムから中間転写ベルトへの転写効率)=(中間転写ベルト上の画像濃度)/(感光ドラム上の転写残画像濃度+中間転写ベルト上の画像濃度)。
【0103】
2次転写効率(中間転写ベルトから紙への転写効率)=(紙上の画像濃度)/(紙上の画像濃度+中間転写ベルト上の転写残画像濃度)
本実施例では、感光ドラム1として、最外層にPTFE微粉末を含有する有機感光ドラム(OPC感光ドラム)を用いた。そのため、高い1次転写効率が得られた。1次転写効率、2次転写効率はそれぞれ95%、92%であった。
【0104】
なお、中間転写ベルトのクリーニング方式は、クリーニング用帯電部材に1×108 Ωの抵抗を持つ弾性ローラを用いた1次転写同時クリーニング方式とし、フルカラー画像6万枚の連続プリントを行った。ベルトの駆動は円滑な動きを示し、初期よりベルトの抵抗不均一に起因する画像濃度ムラもなく、6万枚繰り返し使用の耐久性試験後もベルトの永久伸びに起因する色ズレやクリーニング不良のない良好な画像を得ることができた。更に、表面にトナーのフィルミングもなく、ヒビ割れ、削れ及び摩耗が生ずることなく、初期と同様の表面性のままであった。また、層間の密着性も十分であり、剥離等は全く発生しなかった。
【0105】
参考例2
最表層の材料として、
第1層
ポリフッ化ビニリデン樹脂 100部
導電性カーボンブラック 9部
最表層の直下の層の材料として、
第2層
テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体 100部
エチレンオキシド−エピハロヒドリン共重合体 2.5部
さらにその下層の材料として、
第3層
ポリエチレンテレフタレート樹脂 100部
導電性酸化スズ 5部
過塩素酸リチウム 1.2部
上記各層の配合物をそれぞれ2軸の押し出し混練機で混練分散し、均一な混練物を得た。次に、直径118mmの3層押し出しダイス140(ダイギャップはそれぞれ第1層=45μm、第2層=60μm、第3層=80μm)を用い、実施例1と同様に成形し、直径142mm、肉厚120μm(第1層、第2層、第3層のそれぞれの厚みは30μm、40μm、50μm)の中間転写ベルト2を得た。
【0106】
この中間転写ベルト(2)の電気抵抗ムラは1桁以内、また肉厚ムラは1/2〜1/31μmであった。
【0107】
この中間転写ベルト(2)の電気抵抗は7.6×1011Ωであった。各層の体積抵抗を表1に示す。
【0108】
次に、実施例1と同様にして、5万枚のフルカラー画像を繰り返し複写テストを行ったが、ベルトの伸びに起因する色ズレもなく、良好な転写効率から得られる高画像濃度を維持し、中抜け画像も発生しなかった。この時の1次転写効率、2次転写効率は、それぞれ95%、93%であった。5万枚後のベルト表面にトナーのフィルミング(filming)は見られず、更にヒビ割れ、折れ曲り、キズも発生しなかった。5万枚後も層間の剥離は見られず良好であった。
【0109】
実施例3
図4に示すような、直径340mm、最表層用ダイギャップ50μm、下層用ダイギャップ100μmを有する2層用スパイラルダイよりなる押し出しダイス141を具備した押し出し機100に、実施例1の最表層用混練物をホッパー120より供給し、又、図4に図示されていない、押し出し機100の延長線上に具備したホッパー121より、下層用混練物を供給した。押し出し機の温度設定を200〜250℃の範囲で、円筒状に共押し出しして成形された2層構成のベルトは、冷却用マンドレル165により冷却されつつ延伸され、次に切断後所望の転写ベルト(1)を得た。この転写ベルト(1)は直径310mm、巾300mm、肉厚120±12μm(最表層厚み、下層厚みはそれぞれ35μm、85μmを中心としている)であり、電気抵抗としては、1.2×109 Ωであった。図9に示す転写ベルト内の8点の表面抵抗値は、2.5×109 〜9.4×1010Ω/□の範囲の値となった。又、8点の体積抵抗値は、8.4×108 〜1.1×1010Ω・cmの値となり、それぞれの値のバラツキは2桁以内に収まっていた。転写ベルト(1)の目視観察によると、表面にはブツ、フィッシュアイ等の異物、成形不良はみられなかった。
【0110】
次に図1に示されるフルカラー電子写真装置を用いて画質及び耐久性の評価を行った。
【0111】
本実施例では、感光ドラム1として、最外層にPTFEの微粉末を含有する有機感光ドラム(OPC感光ドラム)を用いた。そのため、95%という高い転写効率が得られた。
【0112】
初期よりベルトの抵抗不均一に起因する画像濃度ムラもなく、5万枚耐久性試験後も該ベルトの永久伸びに起因する色ズレやクリーニング不良のない良好な画像を得ることができた。更に、耐久性試験中に発生する転写ベルト表面汚染による、トナーのフィルミングもなく、ヒビ割れ、削れ及び摩耗が生ずることなく、初期と同様の表面性のままであった。また積層部での層間ハガレもなかった。
【0113】
比較例1
実施例1の最表層のみを直径45mmでダイギャップの厚さ500μmの単層押し出しダイス140を用いたこと以外は、実施例1と同様にして成形し、形状寸法として直径140mmの中間転写ベルト(3)を得た。中間転写ベルト(3)の電気抵抗は、一応、2.4×1010Ωであったが、抵抗測定中の抵抗値が収束せず不安定であった。
【0114】
更に、ベルト内の抵抗値のバラツキは3桁以上であり、部分的に低抵抗部と高抵抗部が存在していた。肉厚は、平均値として150μmを狙っていたが、最小値104μm、最大値193μmと肉厚ムラとしてはバラツキの大きいものであった。
【0115】
実施例1と同様に複写テストを行ったが、電気抵抗ムラに起因すると思われる部分的な転写不良、画像濃度薄、(特に2色重ね合わせ時に著しい)画像の微妙な転写抜け等が初期から発生した。5万枚耐久性試験を行ったが、画質は初期レベルより徐々に悪化して行った。
【0116】
また、3万枚耐久性試験後の時点から、ベルト端部から数カ所細かいヒビが発生し、耐久性試験が進むにつれヒビの数が増すとともにヒビが成長し、5万枚後はこれ以上の使用は破断のおそれのあるレベルとなった。
【0117】
比較例2
ポリエチレン樹脂 30部
塩化ビニル樹脂 70部
導電性カーボンブラック 18部
酸化防止剤 0.5部
上記の配合物を2軸の押し出し混練機で均一に混練させ、下層用混練物を得た。更に、最表層混練物、及び中間転写ベルトの成形装置及び製造方法も実施例1と同様にして、直径160mmの中間転写ベルト(3)を得た。
【0118】
各層の体積抵抗を表1に示す。
【0119】
次に、実施例1と同様に5万枚の耐久性試験を行った。初期は色ズレ、画像に問題はなかったが、3万枚終了前後からベルト表面、及び端部にヒビが発生し、それがベルト走行に影響を与え、2色重ね時に100μmオーダーでの色ズレが発生した。
【0120】
4万枚後には、ベルトのヒビ割れに起因したと思われる放電ムラや、画像不良が認められた。
【0121】
【表1】
【0122】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、帯電工程、画像露光工程、転写工程を有する画像形成装置において使用される転写部材として、転写効率が高い、中抜け画像がない、広範な温湿度下において耐久性に優れているものが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】転写部材として転写ベルトを用いた画像形成装置の一例の概略図
【図2】中間転写体として中間転写ベルトを用いた画像形成装置の一例の概略図
【図3】本発明に係る成形装置の概略図
【図4】本発明に係る別の中間転写体の成形装置の概要図
【図5】2層構成中間転写ベルトの部分断面図
【図6】3層構成中間転写ベルトの部分断面図
【図7】3層構成中間転写ベルトの全体断面図
【図8】転写部材の抵抗値の測定概要図
【図9】転写ベルトの電気抵抗測定点を示す概要図
【符号の説明】
1 感光ドラム
2 1次帯電器
3 像露光手段
10 転写材ガイド
11 給紙ローラ
15 定着器
20 中間転写ベルト
100、110 押し出し機
120、130 ホッパー
140 押し出しダイス
150 気体導入路
180 最終的な形状寸法
501、601、701 第1の層
502、602、702 第2の層
603、703 第3の層
Claims (2)
- 電子写真方式の画像形成装置で転写ベルト又は中間転写ベルトとして使用される転写装置用の転写部材において、
該転写部材が最表層と下層を有し、かつ、
該最表層が、ポリカーボネート樹脂、該ポリカーボネート樹脂100部に対して8部の導電性カーボンブラック、及び、該ポリカーボネート樹脂100部に対して1部の酸化防止剤を含有し、かつ、
該下層が、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、該ポリフェニレンエーテル樹脂100部に対して2.1部のステアリン酸モノグリセライドを含有し、かつ、
該最表層は該下層より体積抵抗が高く、かつ、
該最表層の抵抗制御剤の含有量が該下層の抵抗制御剤の含有量より多く、かつ、
該最表層に含有される抵抗制御剤が該導電性カーボンブラックであり、かつ、
該下層に含有される抵抗制御剤が該ステアリン酸モノグリセライドである
ことを特徴とする転写部材。 - 帯電工程、画像露光工程および転写工程を有する電子写真プロセスによって画像形成を行う画像形成装置において、該転写工程で請求項1に記載の転写部材が使用されることを特徴とする画像形成装置。
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