JP4348047B2 - 変異アルカリプロテアーゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗剤用酵素として有用な変異アルカリプロテアーゼに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
洗剤用のアルカリプロテアーゼは、洗浄力の向上に不可欠な成分であり、工業用酵素として最も生産量の多いプロテアーゼの中で重要な役割を果たしてきている。現在用いられている洗剤用アルカリプロテアーゼは、バチルス属細菌に由来し、ズブチリシンファミリーに属するものであるが、中でも最適反応pHを11以上に有している高アルカリプロテアーゼ(ClassI−S2に分類され(Siezenら, Protein Eng., 4, 719-737, 1991)、更にズブチリシンに分類されるアルカリプロテアーゼの中でhighalkaline proteaseとして細分される(SiezenとLeunissen, Protein Sci., 6, 501-523,1997))であるサビナーゼ、カンナーゼ(ノボザイム)、マキサカル(ジェネンコア)、ブラップ(ヘンケル)及びKAP(花王)等が近年その主力となっている。
【0003】
ところが、これらの高アルカリプロテアーゼを含むズブチリシンは、洗浄剤に配合されることもある酸化剤に対して非常に感受性が高いという問題があった。これに対しては、酸化剤に対する感受性が、酵素の活性中心の一つである221位(ズブチリシンBPN’におけるアミノ酸番号)のセリン残基に隣接する222位のメチオニンが酸化されることに基づくものであることが解明され(Stauffer and Etson, J. Biol. Chem., 244, 5333-5338, 1969)、222位のメチオニン残基を非酸化性のアミノ酸残基に置換した酸化剤耐性能を有する変異ズブチリシンが開発され(特願昭59−129928号)、デュラザイム(ノボザイム)、マキサぺム(ジェネンコア)といった酵素が上市されている。
【0004】
しかしながら、このようにズブチリシンの222位のメチオニンを他のアミノ酸に置換した場合には、当該位置が活性中心に隣接することから比活性が極端に低下するという新たな問題が生じており(Estellら, J. Biol. Chem., 260, 6518-6521, 1985)、酸化剤耐性能を有し且つある程度の比活性を保持する酵素は、未だ見出されていないのが現状である。
【0005】
従って、本発明は、比活性が極端に低下することなく、酸化剤耐性を有する変異アルカリプロテアーゼを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、日本における酸化剤の洗剤への配合量が欧米諸国に比べ低濃度であるためズブチリシンの222位のメチオニンを他のアミノ酸に置換しなくても、ある程度の酸化剤耐性が獲得できれば、洗剤中での保存安定性等を増強できると考え、高アルカリプロテアーゼの特性を維持しつつ新たに酸化剤耐性が獲得された酵素の探索を行った結果、特定のアミノ酸配列を有する高アルカリプロテアーゼの特定位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異体が、比活性の著しい低下を伴うことなく酸化剤耐性を有していることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、配列番号1に示すアミノ酸配列と90%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有する高アルカリプロテアーゼについて、配列番号1の211位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異アルカリプロテアーゼ、及びそれをコードする遺伝子を提供するものである。
【0008】
また本発明は、該遺伝子を含有するベクター、該ベクターを含有する形質転換体を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の変異アルカリプロテアーゼは、配列番号1で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有する高アルカリプロテアーゼを変異の対象となるプロテアーゼ(以下、「親アルカリプロテアーゼ」ともいう)とし、当該配列番号1の211位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換してなるものであり、これらは野生型の変異体或いは人為的に変異を施した変異体であってもよい。
【0010】
親アルカリプロテアーゼである配列番号1に示すアミノ酸配列と90%以上の相同性を示すアルカリプロテアーゼとしては、野生型又は野生型の変異体であってもよく、その性質としては、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が28〜31kDaであることが好ましく、等電点電気泳動法による等電点がpH8.5以上であることが好ましく、カゼインを基質とした場合に最適反応pHがpH10.5〜12.5、最適反応温度が40〜60℃であることが好ましい。また、セリンプロテアーゼの阻害剤であるPMSFやDFPにより失活し、過酸化水素のような酸化剤に対し感受性が高いことが好ましい。
特に、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量が28−30kDa、等電点電気泳動法による等電点がpH10.5以上、カゼインを基質とした場合に最適反応pHがpH12.3付近、最適反応温度が55℃であり、更にセリンプロテアーゼの阻害剤であるPMSFやDFPにより失活し、過酸化水素のような酸化剤に対して特定の条件下において速やかに失活する高アルカリプロテアーゼであるのが好ましい。
【0011】
親アルカリプロテアーゼである「配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する高アルカリプロテアーゼ」としては、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するK−16(KAP)[バチルス エスピー KSM−K16(FERM BP−3376)由来、Hakamadaら, J. Ferment. Bioeng., 78, 105-108, 1994]が挙げられ、これと90%以上の相同性を有する高アルカリプロテアーゼとしては、更に95%以上、特に97%以上の相同性を有するものが好ましく、例えばNo.221(バチルス エスピー 221由来、Takamiら,Biosci. Biotechnol. Biochem., 56, 1455-1460, 1992)、サビナーゼ(バチルス レンタス由来、Betzelら,J. Mol. Biol., 223, 427-445, 1992)、PB92(バチルス エスピーPB92由来、Laanら, Appl.Environ. Microbiol., 57, 901-909, 1991)等のSiezenらによりClass I−S2、さらにズブチリシンの中でhighalkaline proteaseに細分されるズブチリシン亜種等が挙げられる。尚、アミノ酸配列の相同性はGENETYX−WINのマキシマムマッチングやサーチホモロジー等のプログラム(ソフトウェア開発)により計算することができる。
【0012】
上記配列番号1で示される親アルカリプロテアーゼの211位におけるアミノ酸残基はロイシンであり、配列番号1で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有する親アルカリプロテアーゼにおいては、配列番号1の211位に相当する位置のアミノ酸残基は、ロイシン、プロリン、アルギニン、リジンのいずれかであるものが好ましく、特にロイシンであるものが好ましい。
【0013】
従って、配列番号1で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有する親アルカリプロテアーゼの中で好ましいものとしては、上述した酵素学的性質を有するもの(段落〔0010〕)及び/又は配列番号1に示すアミノ酸配列と好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上の相同性を示すものであって、更に配列番号1の211位に相当する位置のアミノ酸残基が上記(段落〔0012〕)のものであるプロテアーゼが挙げられ、特に当該酵素学的性質を有し(段落〔0010〕)、配列番号1に示すアミノ酸配列と好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上の相同性を示すものであり、且つ配列番号1の211位に相当する位置のアミノ酸残基が上記(段落〔0012〕)のものであるプロテアーゼが好ましい。
【0014】
そして、本発明の変異アルカリプロテアーゼは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼを親アルカリプロテアーゼとする場合には、当該211位のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したものであり、配列番号1で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するプロテアーゼ(配列番号1で示されるアルカリプロテアーゼを除く)を親アルカリプロテアーゼとする場合には、配列番号1の211位に相当する位置のいずれかのアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したものである。
【0015】
斯かる他のアミノ酸残基としては、グルタミン酸、バリン、アスパラギン酸、セリン、イソロイシン、システイン、ヒスチジン、メチオニン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、トリプトファン、アラニン及びフェニルアラニンから選ばれたものであるが、好ましくはグルタミン酸、バリン、アスパラギン酸、セリン、イソロイシン、システイン、ヒスチジンであり、特にグルタミン酸、バリン、アスパラギン酸であるのが好ましい。
【0016】
また、「相当する位置のアミノ酸残基」を特定する方法としては、例えばリップマン−パーソン法等の公知のアルゴリズムを用いてアミノ酸配列を比較し、各アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の相同性を与えることにより行うことができる。プロテアーゼのアミノ酸配列をこのような方法で整列させることにより、アミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、相同アミノ酸残基の各プロテアーゼにおける配列中の位置を決めることが可能である(図1)。相同位置は、三次元構造中で同位置に存在すると考えられ、対象のプロテアーゼの特異的機能に関して類似した効果を有することが推定できる。
【0017】
配列番号1に示す高アルカリプロテアーゼ(K−16(KAP))の211位に相当する位置及びアミノ酸番号の具体例を、例えば前述したプロテアーゼNo.221、サビナーゼ、プロテアーゼPB92について示せば、No.221では、211位(ロイシン)、サビナーゼでは211位(ロイシン)、PB92では211位(ロイシン)である。
【0018】
また、本発明の変異アルカリプロテアーゼには、上記211位又はこれに相当する位置のいずれかのアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したもののみならず、アルカリプロテアーゼ活性を失わない限り、該アミノ酸配列中の他の位置において1〜数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたものも包含する。
【0019】
本発明変異アルカリプロテアーゼの製造は、親アルカリプロテアーゼに対して目的の変異を導入すればよく、例えば以下の方法により行われる。
すなわち、クローニングにより取得された親アルカリプロテアーゼ(例えば配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼ)をコードする遺伝子(配列番号2)に対して置換(以下、「変異」ともいう)を施し、得られた変異遺伝子を含むプラスミドを用いて適当な宿主菌を形質転換し、組換え菌を培養することで培養物から本発明変異アルカリプロテアーゼを採取することができる。
尚、野生型高アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子のクローニングは、ショットガン法、PCR法など一般的な方法により得ることができる。
【0020】
親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子に変異を導入する方法としては、エラープロンPCR法や部位特異的変異法などを用いることができる。例えば市販されているSite-Directed Mutagenesis System Mutan-Super Express Km kit (Takara)等を使用できる。
変異を導入した遺伝子は、宿主菌体内で複製維持が可能であり、当該遺伝子を安定に保持できるベクターに組込まれ、この組換えプラスミドを用いて宿主菌を形質転換すればよい。
【0021】
ここで用いることのできるベクターとしては、大腸菌を宿主菌とする場合、pUC18、pBR322、pHY300PLK(ヤクルト本社)等が挙げられ、枯草菌を宿主菌とする場合、pUB110、pHSP64(Sumitomoら, Biosci. Biotechnol. Biochem., 59, 2172-2175, 1995)、pHA64(特願平8−323050号)、pHY300PLK等が挙げられる。
【0022】
宿主菌を形質転換するには、プロトプラスト法、コンピテントセル法、エレクトロポレーション法等を用いることができる。宿主菌としてはバチルス属(枯草菌)等のグラム陽性細菌、大腸菌等のグラム陰性細菌、ストレプトマイセス属等の放線菌、サッカロマイセス属等の酵母あるいはアスペルギルス属等のカビを用いることができる。
【0023】
得られた形質転換株は、資化しうる炭素源、窒素源、生育や酵素生産に必要な金属塩、ビタミン、ミネラル等を含む培地を用いて適当な条件下で培養すればよく、得られた培養物から一般的な方法により当該酵素変異体を採取、精製を行い、凍結乾燥、噴霧乾燥、結晶化等により必要な形態を得ることができる。
【0024】
かくして得られる本発明の変異アルカリプロテアーゼは、親アルカリプロテアーゼに対して比活性が極端に低下することなく酸化剤耐性が増強されている。ここで、「比活性が極端に低下することなく」とは、親アルカリプロテアーゼの相対比活性を100%とした場合に、相対比活性が4.0%以下にはならないことをいい、「酸化剤耐性が増強される」とは、当該変異アルカリプロテアーゼを適当量の過酸化水素を含む50mMホウ酸緩衝液(pH10)中に添加し、30℃、15分間恒温した後、過剰な過酸化水素を除去し、合成基質法により残存活性を測定した場合、同様に処理した親アルカリプロテアーゼの残存活性に比べ高い値を示すことをいう。
そして、斯かる変異アルカリプロテアーゼは、段落〔0010〕に記載の親アルカリプロテアーゼの性質を保持しているものが特に好ましい。
【0025】
【実施例】
実施例1 高アルカリプロテアーゼ遺伝子の変異体の作製
K−16プロテアーゼをコードする遺伝子(配列番号2)を組込んだプラスミドpHY6416[pHY300PLKにバチルス エスピー KSM−64株由来のアルカリセルラーゼ遺伝子のプロモーター領域(Sumitomoら, Biosci. Biotechnol. Biochem., 59, 2172-2175, 1995)とその下流にK−16をコードする構造遺伝子を結合させたプラスミド]を鋳型にし、プロモーター領域からK−16プロテアーゼをコードする遺伝子に対しエラープロンPCR法を用いてランダム変異を導入した。変異処理を施した遺伝子をEcoRIとBamHIで処理し、同様に処理しておいたpHY300PLKへ組込んだ。これらの組換えプラスミドを用いて枯草菌Bacillussubtilis ISW1214 株を形質転換した(ChangとCohen, Mol. Gen. Genet., 168,111-115, 1979)。形質転換株を3%ポリペプトンS(日本製薬)、0.5%酵母エキス(Difco)、1%魚肉エキス(和光純薬)、0.15%リン酸2カリウム、0.02%硫酸マグネシウム7水和物、4%マルトース、15μg/mLテトラサイクリン(Sigma)から成る液体培地(PM培地)で30℃、48時間、好気的に振盪培養を行った。培養上清のプロテアーゼを用いて酸化剤耐性試験を行い、野生型酵素より酸化剤耐性能の向上した変異体を生産している形質転換株を選抜した。
【0026】
実施例2 変異点の確認
実施例1で取得した酸化剤耐性が増強した高アルカリプロテアーゼ変異体をコードする遺伝子の塩基配列を決定するために選抜された形質転換株からHigh pure plasmid isolation kit(ロッシュ:suspension bufferにはリゾチームを添加した)を用いてプラスミドを回収した。適当なプライマー、BigDye DNA Sequencing kit(アプライド バイオシステム)並びにDNAシークエンサー(377型、アプライド バイオシステム)を用いて塩基配列を決定した。
その結果、酸化剤耐性が増強した変異体は、配列番号1に示すアミノ酸配列において211位のロイシンがセリンに置換されていることが明らかになった。
【0027】
実施例3 部位特異的変異法
次に、211位のロイシンをセリン以外のアミノ酸に置換するために部位特異的変異を行った。部位特異的変異の導入方法はODA法(Hashimoto-Gotoh ら, Gene, 152, 271-276, 1995)を基にしてSite-directedMutagenesis System Mutan-Super Express Km kit(Takara)のプロトコールに準じて行った。鋳型DNAとしてプラスミドpHY6416を用いた。また、プラスミドpHY6416の約1.9kbを増幅できるリン酸化プライマーを用いて、PCRは2回に分けて行った。1回目のPCRは、プライマー1(配列番号3)と変異導入用のプライマー2〜15(配列番号4−17)を用い、反応条件は、94℃において2分間鋳型を変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で3分間を1サイクルとしてこれを30サイクル行った。HighPure PCR Product Purification kit (ロッシュ)を用いて約1.9kbの増幅PCR産物を精製した。得られた精製PCR産物をプライマーの代わりに添加して2回目PCRを行った。反応条件は、94℃において2分間鋳型を編成させた後、94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で7分間を1サイクルとしてこれを28サイクル行った。得られたPCR産物を精製し、DNALigation kit ver. 2(Takara)にて自己閉環させた反応溶液でBacillus subtilis ANA-1(Leeら,Appl. Environ. Microbiol., 60, 3764-3773, 1994)を形質転換した。K16プロテアーゼの211位を各種アミノ酸に改変した遺伝子を導入したプラスミドを保持する形質転換株は、PM培地にて培養を行った。
【0028】
実施例4 変異体の精製
各変異体の培養液を遠心分離(8000×g、15分間、5℃)し、得られた上清液を脱イオン水にて希釈した後、予め1mM塩化カルシウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)にて平衡化しておいたSuperQカラム(2.5×8cm;東ソー)へ添着した。全ての変異体は非吸着画分として得られ、これを限外濾過(YM3メンブレン;アミコン)により加水濃縮をおこなった。得られた濃縮液を予め1mM塩化カルシウムを含む10mMホウ酸緩衝液(pH9.5)にて平衡化しておいたCM−Bio−GelAカラム(1.5×10cm;バイオラッド)へ添着した。同緩衝液でカラムを洗浄後、100mMまでの塩化カリウムによる濃度勾配溶出法により、吸着したタンパク質を溶出した。プロテアーゼ活性画分は50mM塩化カリウムの濃度付近に溶出し、これを集めて限外濾過(YM3メンブレン)により加水濃縮を行った。得られた各変異体はSDS−電気泳動により、分子量約29kDaの均一なタンパク質であった。以上の精製により得られた各変異体の野生型酵素に対する相対比活性を表1に示した。
【0029】
実施例5 変異体の酸化剤耐性評価
精製した各変異体及び野生型酵素を0.05〜1.0%の過酸化水素が含まれる50mMホウ酸緩衝液(pH10)中にて30℃、15分間恒温した。その後、過剰の過酸化水素を除去するためにカタラーゼを添加した。この反応液の一部を用いて合成基質法による活性測定を行った。尚、過酸化水素を添加せずに同様の処理を行った各酵素の残存活性値を100%とし、過酸化水素添加系における残存活性をその相対値として示した。
表2に示すように高濃度の過酸化水素の存在下においてもそれぞれの変異体の残存活性は野生型酵素のそれを大きく上回っており、酸化剤耐性の増強が認められた。
【0030】
一連の活性測定に用いた合成基質法は以下のように行った。即ち、50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)、2mM塩化カルシウム、2.5mM合成基質(N-succinyl-Ala-Ala-Pro-Phe-p-nitroanilide: Sigma)から成る反応液を30℃、5分間恒温した後、酵素液を加え10分間反応を行った(全量0.5mL)。反応停止には5%(w/v)クエン酸を2mL加え、攪拌後、420nmにおける吸光度を測定した。酵素1単位(unit)は、上記反応条件下において1分間に1μmolのp-nitroanilineを生成する量とした。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】
本発明の変異アルカリプロテアーゼは、酸化剤に対して安定であることから、酸化剤配合の衣料用洗剤、自動食器洗浄機用洗剤中などでも安定に保存され、充分な効力を発揮できる。
【0034】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するプロテアーゼのアミノ酸配列を整列させた図である。
Claims (5)
- 配列番号1に示すアミノ酸配列からなる高アルカリプロテアーゼについて、配列番号1の211位のアミノ酸残基を、グルタミン酸、バリン、アスパラギン酸、セリン、イソロイシン、システイン、ヒスチジン、メチオニン、スレオニン、グルタミン及びアスパラギンから選ばれるアミノ酸残基に置換した、親アルカリプロテアーゼに比べて酸化剤耐性が増強した変異アルカリプロテアーゼ。
- 請求項1記載の変異アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子。
- 請求項2記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
- 請求項3記載の組換えベクターを含有する形質転換体。
- 宿主が微生物である請求項4記載の形質転換体。
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