車両は、走行するためにエンジン及びクラッチ並びにトランスミッションを備えている。而して、従来のエンジン及びクラッチ並びにトランスミッションにおける動力伝達構造の模式図の一例は図5に示され、図中、1はエンジン、2はクラッチ、3はトランスミッションである。
エンジン1のクランクシャフト4の先端側にはフライホイール5が外嵌、固定されており、トランスミッション3のインプットシャフト6の後端側には、クラッチカバー7を備えたクラッチディスク8が外嵌固定されている。而して、クラッチ機構2は、フライホイール5、クラッチカバー7、クラッチディスク8等により形成されている。
クラッチカバー7は図示されていないフェーシングが取付けられたクラッチプレートを介し、フライホイール5に対し断続されるようになっている。すなわち、クラッチペダルを踏んでいない場合には、クラッチカバー7とフライホイール5は連結されてエンジン1の動力はトランスミッション3に伝達され、クラッチペダルを踏み込んだ場合には、クラッチカバー7とフライホイール5は離脱されてエンジン1の動力はトランスミッション3に伝達されないようになっている。
インプットシャフト6の先端部には、アウトプットシャフトであるメインシャフト9の後端部が軸受10を介して回転自在に支持されて両シャフト6,9は直列状に配置されている。メインシャフト9の先端部には、カップリング11等を介してプロペラシャフト12が接続されており、プロペラシャフト12には、ディファレンシャルギヤ等を介してホイールが接続されている。
インプットシャフト6の先端側にはギヤ13aが一体的に設けられる共に、メインシャフト9には、複数のギヤ13b,13c,13d,13e,13fがニードルベアリングを介して外嵌されている。
又、インプットシャフト6及びメインシャフト9と平行に配設したカウンタシャフト14には、対応するギヤ13a,13b,13c,13d,13fと噛み合う複数のギヤ15a,15b,15c,15d,15fがスプライン結合されていると共に、中間シャフト16に取付けられたアイドラギヤ17eに噛み合うギヤ15eがスプライン結合されている。アイドラギヤ17eはギヤ13eに噛み合うようになっている。而して、ギヤ13a,13b,13c,13d,13e,13f及びギヤ15a,15b,15c,15d,15e,15f並びにアイドラギヤ17eによりギヤ群が形成されている。
メインシャフト9には、図示してないが、シフタスリーブが軸線方向へ摺動可能に外嵌された複数のハブがスプライン結合されており、シフトレバーを操作することにより、シフタスリーブが各ハブの軸線方向へ摺動して、何れかのギヤ13a,13b,13c,13d,13e,13fに対し連結されるようになっている。
而して、インプットシャフト6のギヤ13aがメインシャフト9のシフタスリーブと連結されると、エンジン1のクランクシャフト4からの動力は、クラッチ機構2からインプットシャフト6に伝達され、インプットシャフト6から直接メインシャフト9に伝達されるようになっている。
又、ギヤ13b,13c,13d,13fがメインシャフト9のシフタスリーブと連結されると、エンジン1のクランクシャフト4からの動力は、クラッチ機構2からインプットシャフト6に伝達され、インプットシャフト6のギヤ13aからカウンタシャフト14のギヤ15aに伝達され、カウンタシャフト14のギヤ15b,15c,15d,15fの何れかからメインシャフト9の対応するギヤ13b,13c,13d,13fに伝達され、ギヤ13b,13c,13d,13fの何れかからメインシャフト9に伝達されるようになっている。
更に、ギヤ13eがメインシャフト9のシフタスリーブと連結されると、クランクシャフト4からカウンタシャフト14に伝達された動力は、ギヤ15eからアイドラギヤ17eを介してギヤ13eに伝達され、ギヤ13eからメインシャフト9に伝達し得るようになっている。
メインシャフト9に伝達された動力は、カップリング11、プロペラシャフト12を介してホイールへ伝達され、車両は変速段数に対応して、所定の速度で前進し、或は後退し得るようになっている。
而して、図5の動力伝達構造の場合、例えば、トランスミッション3のギヤ13f,15fは前進第1段用、ギヤ13e,アイドラギヤ17e,ギヤ15eは後退用、ギヤ13d,15dは前進第2段用、ギヤ13c,15cは前進第3段用、ギヤ13b,15bは前進第4段用、インプットシャフト6のギヤ13aとメインシャフト9のシフタスリーブに対する連結は前進第5段用であるが、トランスミッション3の変速段数やギヤ群の配置は図示の例の他に種々のものがある。
上記動力伝達構造においては、通常の車両の走行時には、クラッチペダルが踏込まれていない場合は、クラッチ機構2のフライホイール5とクラッチカバー7とは連結されている。このため、エンジン1のクランクシャフト4からの動力は、クラッチ機構2からインプットシャフト6へ伝達され、シフトレバーの切換え位置、すなわち、変速段数に対応した各ギヤの選択に伴う動力伝達経路でメインシャフト9に伝達され、カップリング11からプロペラシャフト12を介してホイールに伝達される。その結果、車両はギヤの変速段数に対応した速度で前進走行し、或は後退走行する。
車両の前進走行中に1段階上或は下の速度に変速を行う場合には、クラッチペダルを踏込んで、シフトレバーを変速段数に対応した位置に切換える。このため、クラッチ機構2のフライホイール5とクラッチカバー7が離脱されると共に、メインシャフト9にスプライン結合された所定のハブのシフタスリーブが摺動して、当該シフタスリーブと所定のギヤ13a,13b,13c,13d,13fの何れかが連結状態となる。
このため、クラッチペダルの踏込みを徐々に解除すると、クラッチ機構2のフライホイール5とクラッチカバー7が徐々に連結され、エンジン1のクランクシャフト4からの動力は、クラッチ機構2、インプットシャフト6、ギヤ13aに伝達される。ギヤ13aに伝達された動力は、シフタスリーブから直接メインシャフト9に伝達されるか、或は、ギヤ13aからギヤ15a、カウンタシャフト14、ギヤ15b,15c,15d,15fの何れか、対応するギヤ13b,13c,13d,13fの何れか、ギヤ13b,13c,13d,13fの何れかが連結されたシフタスリーブを経てメインシャフト9に伝達される。メインシャフト9に伝達された動力は、カップリング11からプロペラシャフト12に伝達されてホイールが駆動され、車両は前進走行する。
車両を後退させる場合には、一旦車両を停止させたうえ、クラッチペダルを踏込み、シフトレバーを後退に切換える。このため、クラッチ機構2のフライホイール5とクラッチカバー7が離脱されると共に、メインシャフト9にスプライン結合された所定のハブのシフタスリーブが摺動して、当該シフタスリーブとギヤ13eが連結状態となる。
このため、クラッチペダルの踏込みを徐々に解除すると、クラッチ機構2のフライホイール5とクラッチカバー7が徐々に連結され、エンジン1のクランクシャフト4からの動力は、上述したようにしてカウンタシャフト14に伝達され、カウンタシャフト14から、ギヤ15e、アイドラギヤ17e、ギヤ13e、ギヤ13eが連結されたシフタスリーブを経てメインシャフト9に伝達され、メインシャフト9に伝達された動力は、カップリング11からプロペラシャフト12に伝達されてホイールが駆動され、車両は後退走行する。
図5の動力伝達構造において、車両の走行中に変速を行う場合には、クラッチ機構2が離脱されるため、ホイールへの動力の伝達が中断し、一時的に車速が低下して車両が円滑に変速されないため、運転者は違和感を覚えるという問題がある。
そこで、本件発明者は車両の通常の走行中の変速時における車速の低下を構造簡単で安価な装置により防止するようにして、運転者が違和感を感じないようにした動力伝達構造を提供することを目的として、2003年8月5日付けで特許出願を行った(特願2003−286518号)。
而して、特願2003−286518号明細書で開示した動力伝達構造は図6〜図9に示されており、図中、図5に示すものと同一のものには同一の符合が付してある。当該出願に係る動力伝達構造においては、図6に示すように、トランスミッション3のカウンタシャフト14等と平行に回転可能なサブシャフト18が配設されており、サブシャフト18の軸線方向におけるクラッチ機構2側端部にはギヤ19が外嵌、固定され、プロペラシャフト12側端部には、プーリ20が外嵌、固定されている。
クランクシャフト4のクラッチ機構2側端部近傍には、ギヤ21が外嵌、固定されており、ギヤ21とギヤ19との間には、中間シャフト22に外嵌、固定されてギヤ21,19と噛み合うアイドラギヤ23が配設されている。
メインシャフト9のトランスミッションケース3a外部に突出した端部には、図7に示すように、メインシャフト9の先端に設けた凹所に嵌合した軸受24を介してアウトプットシャフト25が回転自在に支持されて両シャフト9,25は直列状に配置されており、アウトプットシャフト25の先端部には、カップリング11等を介してプロペラシャフト12が接続されており、プロペラシャフト12には、ディファレンシャルギヤ等を介してホイールが接続されている。
メインシャフト9とアウトプットシャフト25の連結部には、メインシャフト9とアウトプットシャフト25とを断続させるためのクラッチ機構26が配設され、アウトプットシャフト25には、可変速プーリ機構本体27及び加圧シリンダ機構28を備えた可変速プーリ機構29が配置されている。
クラッチ機構26の詳細は図7、図8に示されている。すなわち、メインシャフト9のトランスミッションケース3aからアウトプットシャフト25側へ突出した端部には、フランジ9aが一体的に取付けられ、フランジ9aには、アウトプットシャフト25のメインシャフト9側端部近傍を包囲すると共にアウトプットシャフト25が側板30aを軸線方向へ貫通するよう、断面形状が鍔付きハット状のクラッチカバー30が横向き状態に取付けられている。
鍔付きハット状のクラッチカバー30内には、アウトプットシャフト25の外周に対し間隔を置いて遊嵌された環状のプレッシャプレート31が収納されており、プレッシャプレート31とクラッチカバー30の側板30aとの間には、プレッシャプレート31をフランジ9a側へ付勢するよう、複数のプレッシャスプリング32が設けられている。
フランジ9aとプレッシャプレート31との間には、アウトプットシャフト25の外周に対し間隔を置いて、複数の環状のディスク33が遊嵌されており、ディスク33の軸線方向両端面には、図示してないがフェーシングが装着されている。ディスク33の外径はプレッシャプレート31の外径よりも小径に形成されている。又、アウトプットシャフト25外周に形成したスプライン部25aには、クラッチカバー30内に位置するようボス34が嵌合されており、ボス34の外周とディスク33にはメンブレン状のドライブプレート35が接続されている。
フランジ9aには、円周方向へ所定の間隔で複数のエア室36が設けられており、エア室36には摺動可能なプッシュピストン37が嵌入されている。プッシュピストン37はアウトプットシャフト25と平行で、エア室36から突出する先端は、ディスク33の外周外側を経てプレッシャプレート31のディスク33側の面に当接されている。
フランジ9aには、エア室36に連通すると共に、径方向外方へ延在して外側部に開口するエア導入孔70が穿設されている。又、フランジ9aの外周には、フランジ9aが回転しても回転しないようにしたエア導入リング38が嵌合されており、エア導入リング38の内周には、エア導入孔70に連通するようにした環状のエア導入溝38aが形成されている。エア導入溝38aにはエア導入リング38の外周に接続した管路39からのエアAを導入し得るようになっている。
トランスミッションケース3aには、クラッチカバー30やエア導入リング38を包囲するようにした円筒状のケース3bが、アウトプットシャフト25に対し略同心状に固設されている。ケース3bの端部はクラッチカバー30の側板30aよりもトランスミッションケース3aから離反する側に位置している。而して、アウトプットシャフト25のスプライン部25aには、プーリ本体40が外嵌されており、プーリ本体40外周部のケース3b側の面は、ケース3bの先端に配置したスラストワッシャ又はころ軸受等の支持手段41により支持されるようになっている。
又、アウトプットシャフト25のスプライン部25aには、プーリ本体40よりもトランスミッションケース3aから離反する側に位置してプーリ本体40と対向配置されると共に軸線方向へ摺動し得るよう、プーリ本体42が外嵌されている。
プーリ本体40,42により一個のプーリ43が形成され、プーリ本体40,42外周側の対向部は断面形状が、略V形状に形成されるようになっている。而して、プーリ本体40,42により形成されるプーリ43の断面V形状の溝及び前記プーリ20の断面V形状の溝には無端状のVベルト44が巻掛けられている。
プーリ本体40,42の軸心側には、プーリ本体40,42と略同心状に凹孔40a,42aが互に対向するよう穿設され、凹孔40a,42aには、アウトプットシャフト25に巻装されたリターンスプリング45が収納されて、弾撥力によりプーリ本体40,42間のV形状の溝の間隔Wが広がる側へ、プーリ本体42を付勢し得るようになっている。而して、プーリ本体40,42、リターンスプリング45により、可変速プーリ機構本体27が形成されている。
可変速プーリ機構本体27を基準として、クラッチ機構26の反対側には、加圧シリンダ機構28のシリンダケーシング46が、ケース47に固設されるよう設置されており、可変速プーリ機構本体27と加圧シリンダ機構28により可変速プーリ機構29が形成されている。而して、シリンダケーシング46の中心部には、アウトプットシャフト25が回転に支障なきよう貫通されている。
シリンダケーシング46には、アウトプットシャフト25の軸心を基準として、同心円上に位置するよう、複数のオイル室48が穿設されており、オイル室48には、摺動可能なプッシュピストン49が嵌入されている。プッシュピストン49はアウトプットシャフト25と平行で、オイル室48から突出する先端は、プーリ本体42の背面に設けた凹部42bに嵌入されてその底部に当接されている。
プーリ20,43に巻掛けられたVベルト44の長手方向中途部には、図9に詳細に示すように、Vベルト44に張力を付与するための張力付与装置50が配設されている。すなわち、ブラケットに枢支したレバー51には、プーリ20,43と平行になるよう、アイドラプーリ52が枢支されており、エアシリンダ53に前後進可能に嵌入されたピストン54にはピストンロッド55が接続され、ピストンロッド55の先端はレバー51の中間部に枢着されている。
而して、エアシリンダ53のヘッド側に形成したエア室53aにはエアAを導入することにより、ピストン54を介してピストンロッド55を突出する方向へ押圧し得るようになっており、エアシリンダ53のロッド側に形成した室53bには、ピストン54を介してピストンロッド55を後退する方向へ付勢するため、リタンスプリング56が収納されている。
又、図6中、57はシフトレバー、58はクラッチペダル、59はクラッチペダル58の踏込み開始検出スイッチ、60はクラッチペダル58の踏込み完了検出スイッチ、61はトランスミッション3におけるシフタスリーブのシフト位置検出スイッチ、62はアウトプットシャフト25の回転数から車速を検出するようにした車速センサ、63は制御コンピュータである。
而して、シフトレバー57からは切換え信号V1を、踏込み開始検出スイッチ58からは踏込み開始信号V2を、踏込み完了検出スイッチ60からは踏込み完了信号V3を、シフト位置検出スイッチ61からはシフト位置信号V4,V5を、車速センサ62からは車速信号V6を、夫々、制御コンピュータ63に与え得るようになっている。
64はエアタンク、65はエアタンク64からのエアAを図7に示すクラッチ機構26のエア室36に送給する管路39の中途部に設けられた電磁弁、66はエアタンク64からのエアAを図9に示す張力付与装置50のエアシリンダ53におけるエア室53aに送給する管路67の中途部に設けられた電磁弁である。
而して、制御コンピュータ63からの指令信号V7により電磁弁65が、指令信号V8により電磁弁66が夫々切換えられるようになっている。又、制御コンピュータ63からの指令信号V9によりオイルポンプ68が駆動し得るようになっており、オイルポンプ68からのオイルOは管路69から図7に示す加圧シリンダ機構28のオイル室48に導入し得るようになっている。
上記動力伝達構造においては、変速を行わない通常の車両の走行時には、クラッチ機構2は連結されており、エンジン1の動力は、クランクシャフト4からクラッチ機構2を経てインプットシャフト6に伝達され、インプットシャフト6からシフトレバー57の切換え位置に対応した変速段数における所定のギヤの組合わせにより、所定の動力伝達経路を経てメインシャフト9に伝達される。
又、エンジン1の動力はクランクシャフト4に取付けたギヤ21、中間シャフト22、ギヤ19を経て常時サブシャフト18を回転させ、サブシャフト18の回転によりプーリ20が回転されている。
一方、オイルポンプ68からは加圧シリンダ機構28のオイル室48にオイルOが供給されていないため、オイル室48内の圧力は低下している。このため、プーリ本体42はリターンスプリング45の弾撥力により押圧されてプーリ本体40から離反している。
又、電磁弁66はエアAを張力付与装置50におけるエアシリンダ53のエア室53aに供給し得ないように切換わっており、エア室53a内の圧力は低下している。このため、ピストン54はリタンスプリング56の弾撥力により押圧されてピストンロッド55が後退している。従って、アイドラプーリ52はVベルト44から離反しており、Vベルト44には張力が付与されておらず、プーリ20の回転によりVベルト44が連れ回ってもVベルト44からプーリ43に動力が伝達されることはない。
更に、電磁弁65はエアAをクラッチ機構26のエア室36に供給し得ないよう切換わっており、エア室36内の圧力は低下している。このため、プレッシャプレート31はプレッシャスプリング32の弾撥力により押圧されてディスク33をメインシャフト9のフランジ9aに押付けており、クラッチ機構26は連結されている。従って、メインシャフト9に伝達された動力は、フランジ9a、ディスク33、ドライブプレート35、ボス34からアウトプットシャフト25に伝達されるようになっている。
このため、通常の車両の走行時には、上述したようにしてメインシャフト9に伝達された動力は、メインシャフト9からクラッチ機構26を介してアウトプットシャフト25に伝達され、アウトプットシャフト25からカップリング11、プロペラシャフト12を経てホイールに伝達される。その結果、車両はギヤの変速段数に対応した速度で前進走行する。
なお、アウトプットシャフト25の回転によりプーリ43も回転するが、上述したようにVベルト44からプーリ43へは動力が伝達されないようになっているため、プーリ43が回転しても何等支障はない。
上記動力伝達構造において車両の前進走行中に1段階上或は下の速度に変速を行う場合には、クラッチペダル58を踏込んで、シフトレバー57を変速段数に対応した位置に切換える。このため、クラッチ機構2は離脱されてエンジン1のクランクシャフト4の動力はインプットシャフト6に伝達されないようになり、メインシャフト9の回転速度は低下する。又、クラッチ機構2が離脱されても、エンジン1の動力はクランクシャフト4から上述の経路でサブシャフト18へ伝達されている。
又、シフトレバー57の切換えにより、シフトレバー57からの切換え信号V1、踏込み開始検出スイッチ59により検出した踏込み開始信号V2、踏込み完了検出スイッチ60により検出した踏込み完了信号V3、シフト位置検出スイッチ61により検出したシフト位置信号V4,V5、車速センサ62により検出した車速信号V6が、夫々、制御コンピュータ63に与えられる。
又、制御コンピュータ63からは指令信号V7,V8が電磁弁65,66に与えられて電磁弁65,66が切換えられると共に、指令信号V9がオイルポンプ68に与えられてオイルポンプ68が駆動される。このため、エアタンク64からのエアAは管路39からエア導入溝38a、エア導入孔70を経てクラッチ機構26のエア室36に導入され、空気圧によりプッシュピストン37が押出され、プレッシャプレート31はプレッシャスプリング32の弾撥力に打ち勝って、ディスク33から離反する。従って、クラッチ機構26は離脱されてメインシャフト9とアウトプットシャフト25は切離された状態となる。
又、オイルポンプ68からのオイルOは管路69から加圧シリンダ機構28のオイル室48に導入されて油圧によりプッシュピストン49を突出させ、プーリ本体42はリターンスプリング45の弾撥力に打ち勝ってプーリ本体40側に押圧される。このため、プーリ本体40,42の間隔Wが変更されてプーリ43のベルト作動径は変速段数に対応した速比となるよう所定の直径に調整される。
更に、エアタンク64のエアAは管路67からエアシリンダ53のエア室53aに導入されてピストン54をリタンスプリング56の弾撥力に打ち勝って前進させるため、ピストンロッド55が突出してレバー51が回動し、アイドラプーリ52がVベルト44に押付けられて、Vベルト44には張力が付与される。従って、上述の経路でサブシャフト18に伝達された動力は、Vベルト44からプーリ43を経てアウトプットシャフト25に伝達され、アウトプットシャフト25からカップリング11、プロペラシャフト12を経てホイールに伝達される。
変速が完了すると、クラッチ機構2は完全に連結され、又、電磁弁65が切換わることによりクラッチ機構26のエア室36にはエアAは供給されなくなる。このため、プレッシャスプリング32の弾撥力によりプレッシャプレート31がディスク33側に押圧されてディスク33がプレッシャプレート31とフランジ9aとの間に強固に挟持されることにより、クラッチ機構26が連結され、メインシャフト9とアウトプットシャフト25が連結される。
又、オイルポンプ68からのオイルOは加圧シリンダ機構28のオイル室48に供給されなくなるため、可変速プーリ機構本体27におけるリターンスプリング45の弾撥力によりプーリ本体42がプーリ本体40から離反して、プーリ本体40,42間のV形状の溝の間隔Wが広がると共に、電磁弁66が切換わることにより、張力付与装置50におけるエアシリンダ53のエア室53aにエアAが供給されなくなって、リタンスプリング56の弾撥力によりアイドラプーリ52がVベルト44から離反する。このため、クランクシャフト4からギヤ21、中間シャフト22、ギヤ19を経てサブシャフト18に伝達されたエンジン1からの動力は、アウトプットシャフト25には伝達されない。
従って、車両は通常の走行状態に戻り、エンジン1からの動力は、クランクシャフト4から、クラッチ機構2を経てインプットシャフト6へ伝達され、シフトレバーの切換え位置、すなわち、変速段数に対応した各ギヤの選択に伴う動力伝達経路でメインシャフト9、クラッチ機構26を経てアウトプットシャフト25に伝達され、アウトプットシャフト25からカップリング11、プロペラシャフト12を介してホイールに伝達される。その結果、車両はギヤの変速段数に対応した速度で前進走行する。
なお、変速操作の度にエンジンからの動力性能が低下するのを防止するようにした動力伝達構造の先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1の装置においては、内燃機関の始動は発進クラッチを接続し、トッグクラッチの係合により遊星ギア機構をロックしてモータとクランクシャフトを直結した状態で行われるが、そうした始動が不能なときは、発進クラッチを一旦切断した状態でモータにより変速機入力軸を回転させ、慣性エネルギをチャージした後に発進クラッチを再接続して、再び始動を行うようにしている。
特開2003−146114号公報
以下、本発明を図面を参照しつつ説明する。
図1〜図4は本発明の実施の形態の一例で、基本的な構成は図6〜図9に示す動力伝達構造と略同一である。図中、図6〜図9に示すものと同一のものには同一の符合が付されている。而して、本図示例の特長とするところは、サブシャフト18を軸線方向中途部において分割して、第一、第二のサブシャフト18a,18bを設け、サブシャフト18aの軸線方向においてアイドラギヤ23側端部にギヤ19を外嵌、固定し、サブシャフト18bの軸線方向においてプーリ43側端部にプーリ20を外嵌、固定し、第一、第二のサブシャフト18aを動力分離用のクラッチ機構71により断続し得るようにしたことである。サブシャフト18a,18bの分割位置は、できるだけギヤ19に近接した位置とする。
クラッチ機構71及びその近傍の詳細は図2に示されている。すなわち、一端側にギヤ19が外嵌、固設されたサブシャフト18aのサブシャフト18b側端部近傍は、ケース72a内底部に立設した仕切り板72bに取付けられた軸受73に回転可能に支持されており、サブシャフト18aのサブシャフト18b側端部には、断面形状がコ字状で中空円筒状のドライブフランジ74が、サブシャフト18aから離反する側において開口するよう、一体的に固設されている。
サブシャフト18aのサブシャフト18b側端部には、凹部75が穿設され、凹部75に内嵌したブッシュ又はころ軸受等の支持体76には、サブシャフト18bの端部が嵌入されている。
サブシャフト18bのサブシャフト18a側端部近傍には、軸線方向へ所定の間隔で複数(図示例では3枚)のクラッチディスク77が、ドライブフランジ74内に収納されるよう外嵌されて、サブシャフト18bのスプライン78にスプライン結合されており、クラッチディスク77の外周側両面にはフェーシング79が取付けられている。
各クラッチディスク77の間には、サブシャフト18bに対し同心状で且つサブシャフト18bの外周から所定の間隔が形成されるようにした中間プレート80が配置されており、中間プレート80の外周は、ドライブフランジ74の円筒部74a内周に形成したスプライン81にスプライン結合されている。
クラッチ機構71を挟んで仕切り板72bとは反対側には、中心部に貫通孔が形成されてケース72aに一体的に立設したブラケット72cが配置されており、貫通孔の内周部には、中心部に貫通孔が形成された環状のシリンダ本体82が取付けられている。シリンダ本体82の貫通孔中心部にはサブシャフト18bが挿通されている。又、円筒部74aのシリンダ本体82側端部には、シリンダ本体82の外側部がボルト締結されている。
シリンダ本体82には、円周方向へ所定の間隔で複数のオイル室83が形成されており、オイル室83にはプッシュピストン84が、サブシャフト18bと平行な方向へ進退動可能に嵌入されている。プッシュピストン84先端のオイル室83からクラッチディスク77側へ突出した端部には、フェーシング79の径方向の幅よりも大径のピストンヘッド84aが一体的に設けられており、ピストンヘッド84aは、サブシャフト18aから最も離反した側にあるクラッチディスク77のシリンダ本体82側の面に取付けたフェーシング79に当接し得るようになっている。
ブラケット72cの貫通孔内周部には、環状のオイル導入孔85が形成されており、ブラケット72cに穿設したオイル導入孔86はオイル導入孔85に連通され、シリンダ本体82の外周部には、オイル導入孔85からのオイルOをオイル室83に導入し得るようにしたオイル導入孔87が穿設されている。而して、オイル導入孔86に導入されたオイルOは、オイル導入孔85、オイル導入孔87を経てオイル室83に供給され、プッシュピストン84を対向するフェーシング79に押圧させることにより、全てのフェーシング79、中間プレート80、クラッチディスク77をドライブフランジ74のフランジ74b側に強固に押圧し得るようになっている。斯かるフェーシング79、中間プレート80、クラッチディスク77のフランジ74b側への押圧により、クラッチ機構71は連結し得るようになっている。
プッシュピストン84には、シリンダ本体82のオイル室83内周に形成した環状溝に嵌合されたシール88が外嵌されている。シール88の断面形状は図3に示すように、略菱形状で、内周側頂部はプッシュピストン84の外周に当接してオイル室83からオイルOが漏洩しないようになっていると共に、エアシリンダ53に油圧が供給されてプッシュピストン84が、フェーシング79、中間プレート80、クラッチディスク77を押圧するよう、図4の矢印方向へ移動した際には、シール88の内周側頂部は、図4に示すように、摩擦力によりプッシュピストン84に引張られて、変形するようになっている。
又、オイル室83内の油圧が低下した場合には、変形したシール88の頂部内周部が元の位置に復帰する際に生じる復元力により、プッシュピストン84は僅かに後退してフェーシング79から離反し、フェーシング79、中間プレート80、クラッチディスク77の押圧が解除されることにより、クラッチ機構71は離脱し得るようになっている。なお、図1中、89は制御コンピュータ63からの指令V10により駆動し得るようにしたオイルポンプであり、オイルポンプ89からはクラッチ機構71のオイル室83へオイルOを供給し得るようになっている。
次に、上記図示例の作動について説明する。
上記動力伝達構造においては、変速を行わない通常の車両走行時には、クラッチ機構2は連結されてメインシャフト9とアウトプットシャフト25は連結されており、エンジン1の動力は、クランクシャフト4からクラッチ機構2を経てインプットシャフト6に伝達され、インプットシャフト6からシフトレバー57の切換え位置に対応した変速段数における所定のギヤの組合わせにより、所定の動力伝達経路を経てメインシャフト9に伝達される。
又、変速を行わない通常の車両走行時におけるクラッチ機構26、可変速プーリ機構本体27、加圧シリンダ機構28、張力付与装置50の作動は図6〜図9において説明した場合と同様で、クラッチ機構26は連結され、プーリ本体42はプーリ本体40から離反しており、アイドラプーリ52はVベルト44から離反している。
このため、通常の車両の走行時には、上述したようにしてメインシャフト9に伝達された動力は、メインシャフト9からクラッチ機構26を介してアウトプットシャフト25に伝達され、アウトプットシャフト25からカップリング11、プロペラシャフト12を経てホイールに伝達される。その結果、車両はギヤの変速段数に対応した速度で前進走行する。
一方、制御コンピュータ63からは上述のごとくオイルポンプ89に指令信号V10は与えられず、従って、オイルポンプ89は停止している。このため、クラッチ機構71におけるシリンダ本体82のオイル室83にはオイルOは供給されず、プッシュピストン84は後退して、フェーシング79から離反し、フェーシング79、中間プレート80、クラッチディスク77の押圧が解除されており、従って、クラッチ機構71は離脱している。
又、クランクシャフト4から中間シャフト22を介してギヤ19に伝達されたエンジン1からの動力は、サブシャフト18aに伝達されてサブシャフト18aを回転させる。しかし、動力分離用のクラッチ機構71は離脱されているため、サブシャフト18bには動力は伝達されず、サブシャフト18b、プーリ20、Vベルト44は駆動されることはない。従って、通常の車両の走行時には、サブシャフト18b及びプーリ20はエンジン出力に負荷として作用することがなく、動力に無駄が発生することがない。従って、動力の有効利用を図ることができ、省エネルギを図ることができる。
上記動力伝達構造において車両の前進走行中に1段階上或は下の速度に変速を行う場合には、クラッチペダル58を踏込んで、シフトレバー57を変速段数に対応した位置に切換える。このため、クラッチ機構2は離脱されてエンジン1のクランクシャフト4の動力はインプットシャフト6に伝達されないようになり、メインシャフト9の回転速度は低下する。又、クラッチ機構2が離脱されても、エンジン1の動力はクランクシャフト4から上述の経路でサブシャフト18aへは伝達されている。
又、シフトレバー57の切換えにより、シフトレバー57からの切換え信号V1、踏込み開始検出スイッチ59により検出した踏込み開始信号V2、踏込み完了検出スイッチ60により検出した踏込み完了信号V3、シフト位置検出スイッチ61により検出したシフト位置信号V4,V5、車速センサ62により検出した車速信号V6が、夫々、制御コンピュータ63に与えられる。
更に、制御コンピュータ63からは指令信号V7,V8が電磁弁65,66に与えられて電磁弁65,66が切換えられると共に、指令信号V9がオイルポンプ68に与えられてオイルポンプ68が駆動される。このため、図6〜図9の場合と同様にして、エアタンク64からクラッチ機構26のエア室36にエアAが供給されることにより、プッシュピストン37が突出してクラッチ機構26が離脱し、その結果、メインシャフト9からアウトプットシャフト25へは動力は伝達されなくなる。
又、オイルポンプ68から加圧シリンダ機構28のオイル室48にオイルOが供給されることにより、プッシュピストン49が突出してプーリ43の作動径は変速段数に対応した速比となるよう所定の直径に調整される。更に、張力付与装置50におけるエアシリンダ53のエア室53aにエアAが供給されることにより、ピストンロッド55が突出して、アイドラプーリ52がVベルト44に押付けられて、Vベルト44に所定の張力を付与する。
更に又、本図示例では、オイルポンプ89からのオイルOは、オイル導入孔86、オイル導入孔85、オイル導入孔87を経てクラッチ機構71におけるシリンダ本体82のオイル室83に供給され、プッシュピストン84が突出して、フェーシング79、中間プレート80、クラッチディスク77は、プッシュピストン84のピストンヘッド84aとドライブフランジ74のフランジ74bの間に強固に挟持された状態となり、クラッチ機構71が連結される。このため、サブシャフト18aに伝達された動力は、クラッチ機構71からサブシャフト18bを経てプーリ20に伝達され、プーリ20からVベルト44、プーリ43を経てアウトプットシャフト25に伝達され、アウトプットシャフト25からカップリング11、プロペラシャフト12を経てホイールに伝達される。
従って、車両の変速時にクラッチ機構2が離脱されても、ホイールへの動力の伝達が中断せず、現車速が維持される結果、一時的に車速が低下することを防止することができる。このため、車両の変速を円滑に行うことができ、運転者は違和感を覚えることがなく、快適に運転を行うことができる。
変速が完了すると、クラッチ機構2は完全に連結され、又、電磁弁65が切換わることによりクラッチ機構26のエア室36にはエアAは供給されなくなる。このため、プレッシャスプリング32の弾撥力によりプレッシャプレート31がディスク33側に押圧されてディスク33がプレッシャプレート31とフランジ9aとの間に強固に挟持されることにより、クラッチ機構26が連結され、メインシャフト9からアウトプットシャフト25へ動力が伝達されるようになる。
又、オイルポンプ68からのオイルOは加圧シリンダ機構28のオイル室48に供給されなくなるため、可変速プーリ機構本体27におけるリターンスプリング45の弾撥力によりプーリ本体42がプーリ本体40から離反して、プーリ本体40,42間のV形状の溝の間隔Wが広がると共に、電磁弁66が切換わることにより、張力付与装置50におけるエアシリンダ53のエア室53aにエアAが供給されなくなって、リタンスプリング56の弾撥力によりアイドラプーリ52がVベルト44から離反する。
更に、オイルポンプ89からのオイルOはクラッチ機構71におけるシリンダ本体82のオイル室83に供給されなくなるため、シール88の復元力によりプッシュピストン84は後退してピストンヘッド84aはフェーシング79から離反し、フェーシング79、中間プレート80、クラッチディスク77の押圧は解除されてクラッチ機構71は解除される。従って、上述のようにしてサブシャフト18aに伝達された動力はサブシャフト18bには伝達されない。このため、車両は再び通常の走行に戻り、上述したように、サブシャフト18及びプーリ20はエンジン出力に負荷として作用することがなく、動力に無駄が発生することがなく、前述したように、動力の有効利用を図ることができ、省エネルギを図ることができる。
なお、本発明の動力伝達構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。