JP4347451B2 - 微生物を検出するための方法及びその方法を実施するのに適するカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般に、バクテリア、酵母菌、カビ等の微生物を検出するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微生物を検出するには、監視すべき環境から得られた微生物を培養基の層を収容した培養トレー(以下、単に「トレー」とも称する)内に入れ、そのトレーを培養器に入れて、微生物を裸眼に見えるコロニー(群体)の形に発育させるための所要の温度で所要時間培養し、微生物を計数し、同定することができるようにする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、培養基層上に受容された微生物の発育、従ってその計数及び同定のための条件を改善することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この目的のために、本発明は、微生物の検出において、第1チャンバーに臨む(面する)第1端面と、第2チャンバーに臨む(面する)、第1端面とは反対側の第2端面を有する培養基層を収容した培養トレーを使用する工程と、第1チャンバー内に第2チャンバー内の圧力より高い圧力を創出する工程を含むことを特徴とする微生物検出方法を提供する。
【0005】
培養基層の両端面間に存在する圧力差が、培養基層の含水量が不均一になったとき、培養基層内の液体を拡散させて含水量、特に微生物を受容している表面の含水量を再均一化させることを可能にする。
【0006】
本発明は、微生物の発育にとって有害な、従って、微生物の計数及び同定を困難にする結果となる、培養基層の不均質を排除又は大幅に減少させることを可能にする。
【0007】
本発明の好ましい実施形態においては、前記第1チャンバーを流体密とするトレーを設け、第1チャンバー内に第2チャンバー内の圧力より高い圧力を創出する前記工程(高圧創出工程)は、この流体密の第1チャンバーを閉鎖する工程を含む。
【0008】
第1チャンバー内に高い圧力を創出する前記工程は、流体密の第1チャンバーを閉鎖したときチャンバー内に捕捉されている空気のある程度の圧縮の結果として、及び、又は、培養器の温度より低い温度下に置かれていた流体密の第1チャンバーが培養器内に装入されてチャンバー内の温度が上昇したときチャンバー内に捕捉されている空気が膨張する結果として生じる圧力上昇を利用することによって特に容易に好便に実施することができる。
【0009】
他の好ましい実施形態においては、本発明の方法は、前記高圧創出工程の前に、前記培養基層の第2端面に空気ジェットを吹きつける工程を含む。空気ジェット吹きつけ工程は、空気中に存在する微生物を培養基層にぶつけて付着させるために空気分析装置内で行われる。
【0010】
空気ジェットは培養基層にクレーター(衝撃によるくぼみ)を発生させるとともに、培養基層を乾燥させるので、高圧創出工程は、空気ジェット吹きつけ工程の後に実施する方が有利である。培養基層の、空気ジェットを吹きつけられた端面とは反対側の端面を加圧することによって、液体を乾燥されている端面に向けて拡散させるので、培養基層の再均質化を促進することができる。
【0011】
更に他の好ましい実施形態においては、本発明の方法は、前記高圧創出工程の前に、前記培養基層の第1端面に所定容量の再水和溶液を添加する工程を含む。再水和溶液は加圧作用によって培養基層中で拡散する性質があるが、再水和溶液の添加は、後に前記高圧創出工程が実施されたとき、第1チャンバー内の高圧が再水和溶液の培養基層中での拡散を重力作用だけによる場合より著しく促進するので、培養基層がある程度乾燥してしまっている場合特に有利である。
【0012】
再水和溶液は、単なる水であってもよく、あるいは、栄養物質及び、又は特定の染料を添加した水であってもよい。第1チャンバー内の高圧によって促進される再水和溶液の拡散は、それに添加されている栄養物質及び、又は染料を一緒に培養基層中に分配する。
【0013】
かくして、最初に基準培養基を装入されているトレーを用いて、特定の微生物を選択的に計数及び同定することを可能にする特定の培養基を得るためにその基準培養基の特性を改変することができる。
【0014】
更に他の好ましい実施形態においては、本発明に使用される培養トレーは、グリッド(格子)を有するものとし、そのグリッドにその平面に平行に培養基層を塗布することができる。そのようなグリッドの存在は、培養基層のための支持フレームを提供する上で特に有利である。(培養基層の両端面はそれぞれチャンバーに臨む(面する又は露呈する)ようにしなければならないので、培養基層の保持を端面に頼ることはできない。)
【0015】
本発明は、又、微生物を培養するためのカートリッジに関する。本発明による培養カートリッジは、グリッドと、グリッドの平面に対して横断方向に向けられグリッドを囲繞する環状壁から成る本体と、グリッドの平面に平行に被覆された培養基層、好ましくは寒天培養基のようなゲル状又は自立(自己保形性)培養基の層を有し、上述した本発明の方法を実施するのに適するようにするために、前記本体は、前記環状壁とグリッドとの間に、内部側(半径方向内方)に突条を画定する厚肉部分を有する中実環体を含むことを特徴とする。
【0016】
この厚肉突条は、内部側(半径方向内方)に存在するので、たとえ培養基層が若干収縮してその周縁が本体の環状壁から分離したとしても、培養基層によって被覆されたままに留まる。
突条が培養基層によって被覆されたままであり、環体が中実であるから、培養基層の周縁と本体との間に流体を通すような間隙が生じることがなく、従って、本体内の、培養基層の各端面側に存在する空間が互いに流体密状態に分離される。それによって、培養基層の両端面間に圧力差を設定することを可能にする。
【0017】
本発明の好ましい特徴によれば、カートリッジの製造及び本発明の方法の実施の簡略化と便宜のために、
(a)カートリッジは、培養基層の第1端面が位置する側に流体密チャンバーを画定するために前記本体に嵌着させることができるようになされた着脱自在のベースを有する。好ましくは、このベースは、本体の環状壁の外周面に嵌合させ、ベースの内表面を環状壁の、該ベースのある側と同じ側の端面に接触させる。又、好ましくは、本体とベースは、成形プラスチックで形成し、ベースの方が本体より高い可撓性を有するものとする。
(b)カートリッジは、培養基層の第2端面が面している、外部に連通するチャンバーを画定するために前記本体に嵌着させることができるようになされた着脱自在のカバーを有する。好ましくは、このカバーは、本体に嵌合させたとき、カバーの内外間に連通を設定する少なくとも1つの穴を有する。又、好ましくは、カバーは、本体の環状壁の外周面に嵌合させ、カバーの内表面を環状壁の、該カバーのある側と同じ側の端面に接触させる。好ましくは、本体とカバーは、成形プラスチックで形成し、カバーの方が本体より高い可撓性を有するものとする。
【0018】
本発明の他の好ましい実施形態においては、培養が完了したとき、コロニーの計数をし易くするために、前記グリッドは、方形の網目を有するものとし、随意選択として、培養基層とは対照的な色とすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施形態に関連して説明するが、本発明は、ここに例示した実施形態の構造及び形状に限定されるものではない。
図示のカートリッジ1は、本体2と、培養基層3と、フィルム4と、カバー5と、ベース6を有する。本体2は、比較的剛性の成形プラスチック材で形成され、グリッド7と、グリッド7の平面に対して横断方向に向けられ、グリッドを囲繞する環状壁8を有する。グリッド7は、図1にみられるようにこの例では断面円形のストランドによって形成され、方形の(即ち、図2にみられるように4辺が同じ長さの)網目を有する。
【0020】
グリッド7の周縁は、内部側に、即ちグリッドに近い側(半径方向内方)に、突条10を画定する厚肉部分を有する中実環体9によって壁8に連結されている。中実環体9の厚肉は、この例ではベース6に面する側にのみ存在する。(換言すれば、フィルム4に面する側には凸部は存在しない。)
【0021】
環状壁8は、一定の厚みを有し、総体的に断面円形の短い筒の形を有している。壁8の、フィルム4のある側と同じ側の端面と環体9との間の長さは、対応する(壁8のフィルム側の端面と環体9との間に存在する)培養基層3の厚さのほぼ半分に相当する所定の長さであり、壁8の、ベース6のある側と同じ側の端面と環体9との間の長さは、対応する(壁8のベース側の端面と環体9との間に存在する)培養基層3の厚さのほぼ2倍に相当する長さである。
【0022】
培養基は、ゲル状培養基、又は、自立性であり、このカートリッジ内に形成することができる培養基であることが好ましい。例えば、寒天系培養基であれば、任意のものでよい。
【0023】
壁8の外周面から複数の耳片11が側方に突設されている。各耳片11と壁8の、フィルム4のある側の端面との間の距離は正確に同じである。各耳片11には複数の孔が穿設されている。この例では、耳片11は4個設けられ、各耳片には、後述する目的のために、3つの孔が穿設されているが、耳片11及び孔の個数は必要に応じて決定することができる。
【0024】
フィルム4は、可撓性の流体密のプラスチック材で形成され、最初は、丸いコーナーを有する正方形であり、正方形の各辺は、壁8の外周面の直径より相当に長い。フィルム4を覆ってカバー5が装着されると、フィルム4の各コーナーは、操作者が握りやすい突片(図1の左端及び右端参照)を形成する。
【0025】
カバー5は、半剛性のプラスチック材で形成され、従って本体2のプラスチック材よりは高い可撓性を有する。カバー5は、ボウルの形を有し、その側壁は、断面円形の直径の異なる2つの筒状部分12A,12Bと、両筒状部分に対して横断方向に延長し両者を連結する環状部分13から成る。
【0026】
筒状部分12Aは、壁8の外径よりごく僅かに大きい内径を有し、壁8との間にフィルム4を挟みつけて壁8の周りに壁8を若干締めつけるようにして嵌合する。
【0027】
筒状部分12Bは、筒状部分12Aより小さい内径を有し、両者の内表面が環状部分13の環状表面によって結合されている。環状部分13の環状表面の寸法は、壁8の、フィルム4のある側の端面の環状表面に対応しており、カバー5を本体2に押し被せて壁8の端面に当接させたときフィルム4を壁8のこの端面に密着させることができるようになされている。
【0028】
カバー5は、その側壁の筒状部分12Bに対して横断方向に延長し筒状部分12Bの内表面に周縁を結合された平坦な壁によって形成されたパネル14によって閉鎖されている。パネル14は、環状部分13に連結された筒状部分12Bの端部からかなり離れたところに位置する。筒状部分12Bの一部分は、パネル14を越えて突出し、自由端となっており、その自由端部部にこの例では4つの凹部15が形成されている。パネル14には、筒状部分12Bとの結合部のところで各凹部15の中央部とそれぞれ同じ高さのところにこの例では4つの、後述する目的のための小さい穴16が形成されている。
【0029】
ベース6は、カバー5と同様に半剛性のプラスチック材で形成され、カバー5と同様にボウルの形を有し、その側壁は、断面円形の直径の異なる2つの筒状部分17A,17Bと、両筒状部分に対して横断方向に延長し両者を連結する環状部分18から成る。筒状部分17Aは、壁8の外径に対応する内径を有し、その内表面を壁8の外表面に密着させて嵌合させることができる。
【0030】
筒状部分17Aの端部には、図1の右端及び図5に示されるように壁8の耳片11を受容するための凹部が形成されている。
【0031】
筒状部分17Bは、筒状部分17Aより小さい内径を有し、両者の内表面が環状部分18の環状表面によって結合されている。環状部分18の環状表面は、壁8のベース6側の端面に当接し密着するようになされている。
【0032】
ベース6は、その側壁の筒状部分17Bに対して横断方向に延長し筒状部分17Bの、環状部分18に連結された端部とは反対側の端部に連結された、内側に凸面状表面を有するパネル19によって閉鎖されている。
【0033】
ベース6を本体2に押し被せて、壁8の耳片11を筒状部分17Aの凹部に嵌合させ、環状部分18を壁8の端面に当接させると、本体2とベース6の間に流体密シールが設定される。
【0034】
ただし、ベース6は、該ベースの筒状部分17Aの端部に形成された凹部ではなく、凹部と凹部の間の凸部が本体2の環状壁8の耳片11に対峙するような角度位置に位置決めすることもでき、この位置では、ベース6は、その筒状部分17Aの凹部と凹部の間の凸部の自由端が本体2の耳片11に当接する位置にまでしか本体2に押し被せることができない。この位置では、壁8の外周に該壁のベース6側の自由端から所定の長さに亘って切り込まれた、後述する目的のための小さいスロット20がベース6によって完全には覆われないので(筒状部分17Aが壁8を囲繞する高さは、スロット20の高さ方向の長さより低い)、カートリッジの内部がそれらのスロット20を通して外部大気と連通する。ベース6をこの位置に位置決めする目的は、後述する。
【0035】
以下に、カートリッジ1の製造方法及び滅菌方法を説明する。
まず最初に、フィルム4を本体2の上面を覆って壁8の対応する端面に被せ、本体2に嵌着させる。それによって、カバー5の側壁の筒状部分12Aの内表面がフィルム4を覆って壁8の端面を越えて摺動しフィルム4を壁8の外周面に沿って引張るのでフィルム4を緊張させる。このフィルム嵌着操作が終了した時点では、フィルム4は、壁8の外周面と筒状部分12Aの内表面との間、及び、壁8の端面と、筒状部分12Aと12Bの間の環状表面との間に挟持される。小穴16の存在により、フィルム4の両面間にフィルム4を変形させるような圧力差が生じることがない。このように緊張され、カバー5によって挟みつけられたフィルム4は、壁8に密封接触する。
【0036】
次に、ベース6をその筒状部分17Aの端部に形成された凹部と凹部の間の凸部が耳片11に当接する位置にまで、即ち、壁8の外周のスロット20がベース6によって完全には覆われない位置にまで本体2に押し被せる。
【0037】
次いで、カートリッジをETOのような滅菌用ガスを入れたチャンバー内に入れる。滅菌用ガスは、カバー5の穴16及び壁18のスロット20を通ってカートリッジ内に進入する。
【0038】
滅菌操作が終ったならば、無菌状態下での作業でベース6を外し、本体2とフィルム4とカバー5から成る組立体を上下逆にし、筒状部分12Bの、パネル14より上に位置する部分によって形成される一種の三脚台の上に支持させる。次いで、予め液状になるように加熱しておいた培養基を本体2とフィルム4によって画定されるボウル内へ注ぎ入れ、図3に示されるようにグリッド7を覆う。この培養基を冷却した後、ベース6をその筒状部分17Aの凹部が耳片11と対向するように位置決めし、ベース6を完全に押し込む。
【0039】
カートリッジ1のこの状態は、図1に示されている。この状態では、培養基層3は、外部との接触から遮断されているので、完全に無菌状態に保持される。
【0040】
環体9の突条10は、フィルム4に面する側には何らの突出部も有していないので、培養基を注入したとき培養基がフィルム4と環体9の間の空間を満たすのを妨害しない。
【0041】
突条10は、環体9の内部側に存在するので、たとえ培養基層3が若干収縮してその周縁が本体2の環状壁8から分離したとしても、培養基層3によって被覆されたままに留まる。従って、培養基層3が収縮しても、本体2の内側の、培養基層3の両端面側に存在する空間と空間の間に流体密シールの破れが生じない。
【0042】
この流体密シールと、本体2とカバー5との間の流体密シールとにより、培養基層3の、フィルム4によって画定される表面とは反対側の端面に対面する空間が、流体密チャンバーを形成し、そのチャンバー内に以下に説明するように所定の超過圧力を設定することができる。
【0043】
このカートリッジ1は、図4に部分的に示される微生物投与装置21を用いて空気のサンプルの分析を実施するように設計されている。微生物投与装置21は、空気サンプル中に存在する微生物を培養基層3の、フィルム4によって画定される表面上に投与するための装置である。
【0044】
装置21は、そらせ板23を装着した流線形スリーブ22を有し、そらせ板23の周りに空気流を吸引タービン(図示せず)に向けて送るための導管又は通路24を形成している。
【0045】
スリーブ22の端部には着脱自在の網25が装着されている。網25は、カバー5及びフィルム4が除去されたカートリッジ1の耳片11の端部を受容するための切欠き22’(図5)を備えている。網25は、フィルム4によって画定される培養基層3の表面に正対面する中央壁26を有し、その中央壁26に多数のパーフォレーション(細孔)が形成されている。
【0046】
装置21の吸引タービン(図示せず)が作動されると、外部空気が図4に矢印で示されるように中央壁26のパーフォレーションを通して吸入され、そらせ板23の端部はベース6によって閉鎖されているので、空気は導管24を通して吸引タービンに向けて吸引される。
【0047】
培養基層3と有孔壁26の間の空気の流れは、有孔壁26の各パーフォレーションに対応する細い空気ジェットの形で生じる。これらの空気ジェットは、培養基層3にぶつかり、培養基層3にぶつかった空気中に存在する微生物は、その衝撃によって培養基層3上に固定される。
【0048】
培養基層3と網25の有孔壁26との間の離隔間隔は、本発明に従って製造されるどのカートリッジにも再現される(同じ)幾何学的特徴を有しているので、培養基層3の表面を形成するためにフィルム4を使用することにより、この表面の、本体2に対する位置関係を正確に固定することを可能にし、本体2の、有孔壁26に対する位置関係は、カートリッジをその耳片11を介してスリーブ22に固定することによってどのカートリッジにも同じ精度で再現されるので、吸引タービンの1回転毎に吸入される空気流の量が、どのカートリッジにおいても実質的に同じであり、従って、吸引タービンの回転速度を一定とした場合、空気が培養基層3にぶつかる速度は一定であり、吸引タービンの回転数を一定とした場合、吸入される空気の容量も一定である。
【0049】
カートリッジ1の耳片11と、それらを受容するスリーブ22の端部の切欠き22’との協同により、カートリッジを調心し、カートリッジの軸方向の位置決めを行う。各耳片11の自由端は湾曲している(図2)が、耳片11の端部だけが切欠き22’に受容される。
【0050】
次に、耳片11を導管24を横切って跨らせるが、耳片11に形成された、この例では3つの孔が吸引タービンへの空気の通過を許す。
【0051】
カートリッジ1とそらせ板23とは、そらせ板23の内側を締め切るのに十分な僅かなクリアランスをもって嵌合させる。即ち、カートリッジのベース6の筒状部分17Bの外径は、そらせ板23の端部の内径より小さくされており、ベース6の筒状部分17Bをそらせ板23の内側に嵌着させる。それによって、そらせ板23の内側は空気流に対して閉鎖される。
【0052】
所要容量の空気が吸入されたならば、網25を装置21から外し、カバー5を再びカートリッジ1に嵌着し、カートリッジ1を装置21から取り出す。
【0053】
その後は、培養基層3に吹きつけられた微生物を慣用の態様で培養すればよい。即ち、カートリッジ1を培養器の中に入れて所定温度(例えば、32.5°C±2〜5°C)に所要時間(例えば、2日間)加熱する。カバー5に形成されている穴16がコロニーの発育に必要な、カートリッジ1の内外間のガス交換、特に、有酸素空気の交換を可能にする。
【0054】
微生物の培養を行うには、カートリッジ1を上下逆にすることが好ましい。即ち、カートリッジをカバー5の側壁の筒状部分12Bの、パネル14より上に位置する部分によって形成される一種の三脚台の上に支持させる(図6参照)。その場合、筒状部分12Bの凹部15が空気の循環を可能にし、パネル14が培養基層3の上にではなく、下に位置するので、周知の態様でカバー5の結露現象を防止する。
【0055】
培養基層3と、壁8と、ベース6によって画定される空間27は、流体密チャンバーを構成するので、ベース6が閉鎖されたとき、チャンバー27内に取り込まれた空気は、僅かな超過圧力とされており、培養器の温度は原則的にチャンバー27内の空気の初期温度より高いので、カートリッジ1が培養器内に入れられたときは、チャンバー27内の空気が加熱されて膨張するので、更なる超過圧力が創生される。
【0056】
一方、チャンバー27内には超過圧力が存在するのに対して、培養基層3と、壁8と、カバー5によって画定される空間28は、特に穴16を通して外部と通じているので、培養基層3の両端面間に圧力差が存在する。この圧力差が、培養基層3、特に、装置21によって空気ジェットを吹きつけられた培養基層3の表面の再均質化を助成する。
【0057】
実際、培養基層3のこの表面に吹きつけられた空気ジェットは、その表面にクレーターを形成し、培養基の栄養価を低下させる若干の乾燥を惹起する。この乾燥は、かなりの乾燥量であり、例えば、培養基層3に含有される合計34gの水のうちサンプルとして採取された空気1m3当たり2gの水が失われるのが普通であると推定される。
【0058】
空気ジェットを吹きつけられた培養基層の表面を再水和するために培養基層3中に残留している水だけに依存せず、図6に示されるように培養基層3の、空気ジェットを吹きつけられた表面とは反対側の表面に若干量の再水和溶液29を投与することができる。
【0059】
再水和溶液の投与をするには、ベース6を外し、ピペット30を用いて所要量の再水和溶液29(カートリッジ1の重量を計量することによって測定された脱水量の例えば80又は90%に相当する量の再水和溶液)を培養基層の表面に塗布する。
【0060】
再水和溶液は、重力だけでなく、流体密チャンバー27内の超過圧力によってそれを塗布された培養基層の表面とは反対側の表面即ち空気ジェット吹きつけ表面にまで到達する。この超過圧力は、液体、特に再水和溶液29の培養基層3内での拡散を助成する。
【0061】
空気ジェット吹きつけ表面の再水和は、空気ジェットの衝撃によって生じたクレーターを消滅する。クレーターの消滅は、コロニーの発育に有利であり、従って、微生物の同定を容易にするのみならず、表面が平滑であるということは、微生物の計数を容易にし、更に細かい同定分析を必要とするコロニーの継代培養をも助成する。
【0062】
再水和溶液は、必要に応じて、水だけとしてもよく、培養基層の微生物の選択的同定又は生育を可能にする栄養物質及び、又は特定の染料を添加した水とすることもできる。
【0063】
グリッド7の網目を正方形とすることは、コロニーが発育した表面のサイズを測る尺度を与えてくれるので有利であり、1つの網目の面積を例えば1cm2とすることができる。培養基が透明である場合、グリッド7は見やすくするために色つきとすることが好ましく、本体2は、例えば黒色のプラスチックで成形することができる。カバー5は、カートリッジ1を閉じたまま読取りを行うことができるように、透明とすることが好ましい。
【0064】
もちろん、本発明によるカートリッジは、例えば、液体の汚染度を測定するためなどの他の種類の分析にも適用することができる。その場合、最初にフィルム4によって画定されている培養基層3の表面にメンブレンを被せ、そのメンブレンを通して所要量の被分析液を適用する。
【0065】
又、ここには図示されていない変型例として、フィルム4なしで培養トレーを使用することができる。その場合、フィルム4の代わりに、カートリッジの製造及び保管のためにのみ利用されるカバーを使用し、そのカバーを、カートリッジの使用中は、上述したカバー5と同じタイプのカバーに代えることができる。
【0066】
以上、本発明を実施形態に関連して説明したが、本発明は、ここに例示した実施形態の構造及び形状に限定されるものではなく、いろいろな実施形態が可能であり、いろいろな変更及び改変を加えることができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明によるカートリッジの立断面図である。
【図2】図2は、図1のカートリッジの、カバー、フィルム及び培養基層を除去して示す平面図である。
【図3】図3は、図1のカートリッジの上下逆にした、ベースを除く立断面図である。
【図4】図4は、空気サンプルを採取し、その空気サンプル中に存在する微生物のための培養基層に空気サンプルを吹きつけるための装置内に嵌着させた本発明のカートリッジの立断面図であり、カートリッジのカバー及びフィルムは除去されている。
【図5】図5は、カートリッジの耳片が図4の空気分析装置に係合する態様を示す立断面図である。
【図6】図6は、再びカバーを装着され、培養基層上に所定量の再水和溶液を適用するためにベースを除去されて上下逆にされたカートリッジの立断面図である。
【符号の説明】
1 カートリッジ
2 本体
3 培養基層
4 フィルム
5 カバー
6 ベース
7 グリッド
8 環状壁
9 中実環体
10 突条
11 耳片
16 穴
27 第1チャンバー
28 第2チャンバー
29 再水和溶液
Claims (7)
- 培養基層上で培養した微生物の検出方法において、
第1端面と、該第1端面とは反対側の第2端面とを有する培養基層を収容し、前記第1端面が位置する側の第1チャンバーと、前記第2端面が位置する側の流体密の第2チャンバーと、を有するカートリッジを使用する工程と、
前記培養基層の第2端面上で微生物を培養する工程と、
前記第1端面を再水和する工程と、
前記第1チャンバーを閉鎖し、かくして該第1チャンバー内に前記第2チャンバー内の圧力より高い圧力を創出する工程と、
を含む微生物検出方法。 - カートリッジは、第1チャンバーを流体密とするトレーである請求項1に記載の微生物検出方法。
- 高圧創出工程の前に、培養基層の第2端面に空気ジェットを吹きつける工程を含む請求項1又は2に記載の微生物検出方法。
- 再水和が、培養基層の第1端面に所定容量の再水和溶液を投与する工程を含む請求項1の微生物検出方法。
- 再水和溶液として水を用いる請求項4に記載の微生物検出方法。
- 再水和溶液は、水と、栄養物質と染料から成る群から選択された1種類以上の添加物質から成る請求項4に記載の微生物検出方法。
- カートリッジはグリッドを有し、培養基層は、該グリッドにその平面に平行に被覆されている請求項1に記載の微生物検出方法。
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