JP4347107B2 - 磁気的免疫反応測定のための試験容器およびその製造方法 - Google Patents
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Description
一般的に磁気的免疫診断方法においては、外部磁界を印加して磁気マーカーを磁化する。試験容器に0.1T(テスラ)の磁界をかけた場合に、試験容器自体が磁化されてしまうことは避けられない。このため試験容器自体から検出される磁気信号が多いと、この試験容器から検出される磁気信号と抗原−抗体結合反応を生じたときに磁気マーカーから検出される磁気信号との識別ができなくなり、免疫反応の検出が不可能となってしまう。
磁気マーカーを用いた磁気的免疫反応診断方法によれば、被測定物質が1pg以下であっても検出可能である。図1の関係から0.3pgの被測定物質を使用した場合の磁気マーカーから得られる磁気信号は約20pT(20×10-12テスラ)であることがわかる。したがって、ノイズとなる試験容器自体の残留磁気量が20pT以上となると、測定すべき磁気マーカーから検出される磁気信号が、試験容器自体の残留磁気信号で埋もれてかき消されてしまい、双方の判別ができなくなる。この結果、免疫反応の検出が不可能となってしまう。
モノマー
モノマー、たとえばメタクリル酸メチルの製造方法は、金属含有触媒を用いない方法であれば特に制限はなく、一般に知られている方法により製造することができる。たとえば、アセトンシアンヒドリン法(ACH法)、イソブチレン法などが好適である。
ポリマー
精製したモノマー、たとえばメタクリル酸メチルを重合して、得られるポリマーPMMAのSQUIDにより測定される残留磁気量が15pT以下の条件を満たすように、金属との接触の機会のない重合方法であれば、公知の重合方法を適宜選択できる。
試験容器の製造方法・・・シートの成形
本発明においては、まずシート状の板材を製造したのち、これを真空及び/又は圧空成形により試験容器とする。シート状の板材の製造には、公知の各種成形方法を用いることができる。具体的には、ガラス板キャスト成形法、連続キャスト成形法、押出し成形法等がある。キャスト成形法(鋳込み重合法)においては、モノマーに連鎖移動剤および重合開始剤を調合しモノマー配合剤とした後、モノマー配合剤を加熱して粘稠なシラップ状のものとした。その後モノマー配合剤を2枚の強化ガラス板で挟んだ型の中に流し込み重合する。重合後、シートである板状のポリマーを得る。また、連続キャスト成形法では、連続キャスト板は予備重合されたシラップをステンレス製の連続ベルトに注入し重合して得られる。押出成形法では、押出成形工程において、懸濁重合で得られたビーズ又は連続塊重合で得られたペレットが押出機のスクリュー、シリンダー、スクリーン、ダイス等の鋼材と接触するため成型シート中への金属の混入が予想された。しかし、射出成形と比べて成形品にかかる圧力が1桁低いためか、金属の混入は検出されなかった。押出機のスクリーンに付着しているアクリルポリマーを検査したが金属の検出を見なかった。
保護フィルム
一般にアクリル樹脂製シートには、紙もしくはポリマーの保護フィルムが貼り付けられている。その目的は傷つき防止と汚れの防止のためである。本発明において被覆することがある保護フィルムは、金属等の不純物の付着を防止することを目的とするうえで大いに異なる。保護フィルムは、ポリマーシートの表裏のいずれか一方、又は両方に付着させ、真空及び/又は圧空成形し磁気的免疫反応測定用の試験容器とする。成形後も試験容器から保護フィルムを剥がすことなく、そのまま磁気的免疫反応測定時まで保護フィルムを試験容器上に維持し、測定直前に剥離して測定に供することにした。
ポリエチレンフィルムには、汎用の粘着タイプのフィルム及びホットメルトタイプのフィルムが使用できる。本フィルムには、分子量1000〜2000の低分子量のポリエチレンあるいは分子量400〜500のワックスが使用できる。さらに、粘着成分としてエチレン酢酸ビニルを含んでいても良い。
粘着タイプでは加熱して圧力がかかると、シートに粘着剤が移行する上、移行した粘着剤に埃などが付きやすくなる恐れがあるため、剥がしやすく移行の無いホットメルトタイプのフィルムがより好ましい。
試験容器の製造方法・・・試験容器の成形/真空及び/又は圧空成形
ガラス板キャスト成形法および押出成形法で得られたシートから試験容器を作製する。
真空及び/又は圧空成形には各種方式を使用できる。圧力函に加熱軟化したシートの周辺をクランプし、雌型に加熱軟化したシートを真空で押し付け雌型の形状に賦形する雌型方式、雄型に加熱軟化したシートを真空で押し付け雄型の形状に賦形する雄型方式、さらに成形の初期段階でプラグアシストによる賦形を行なった後、雌型で真空引きするプラグアシスト方式等が使用できる。さらに、本発明においては、図4に示す真空圧空成形機を用いて、雌型方式を採用するとともに、下方からの圧力函の真空引きと上方からの風圧による加圧を同時に行う方式を採用した。
磁気的免疫反応測定測定用の試験容器としての適用性を詳しく調べた。アクリル樹脂及び高圧法ポリエチレンが使用できるが、高圧法ポリエチレンは強度や抗体との結合性については十分でないことがわかる(表1)。したがって、アクリル樹脂のほうが好ましい。
試験容器の作製
ガラス板を用いてキャスト成形したアクリル樹脂シート(株式会社クラレ製パラグラス、寸法400×400、厚み0.8mm)、押出成形法によるアクリル樹脂シート(株式会社クラレ製コモグラス、寸法400mm×400mm、厚み1.0mm)を用意し、それぞれ両面にポリエチレンフィルムを貼着した。
さらに、SQUIDを用いた免疫反応測定においては、磁気マーカーと結合した試料を磁化した後、SQUIDセンサーを接近させ残留磁気の測定を行った。この際、SQUIDセンサーを容器下方、試験容器の試料収容凹部の底面ごしに接近させる。この位置関係は、センサーを上方から試験容器の試料収容凹部に挿入して接近させることは装置の設計上困難であるため、供される試料との距離をより短くするために最も好適な位置関係である。
SQUIDセンサーと供せられる試料との距離によって磁気信号の強度が変化する。このため、SQUIDセンサーと供せられる試料との距離は近いほうが好ましく、試験容器試料収容凹部の底面の厚さを0.1〜1.0mmとすると、良好な測定結果をもたらすものであるとわかった。SQUIDセンサーと供せられる試料との間の距離が大きくなるにしたがい、磁気信号が急激に減少する。急激に減少する閾値は、1mmである。したがって、底面の厚みが高くなると、測定が不可能になる。また、試験容器の試料収容用凹部の底面の厚さが0.1mmよりも薄くなると、容器としての剛性が確保できない。
最後に、シート保護フィルムを付着させて真空圧空成型を行って得た成形品(試験容器)のSQUIDセンサーによる残留磁気量を測定した結果を表4に示す。成形品として得た試験容器の具体的形状を一例として図5に示す。
したがって、本発明においては、試験容器材料の残留磁気量を15pT以下としたことばかりでなく、成形後の試験容器においても、残留磁気量が15pT以下であった。したがって、磁気的免疫測定装置において、被測定物質が微量であって測定すべき磁気マーカーから検出される磁気信号が、微弱であっても、試験容器自体の雑音として発生される残留磁気信号で、測定値が埋もれてかき消されることがない。
SQUIDによる免疫反応測定
図6に装置構成を示す。磁界を検出するSQUIDセンサーは高温超伝導体を用いて作製され、その大きさは3 mm x 6 mmである。SQUIDセンサーは液体窒素に冷却する必要がある。そのため、サファイア棒を介した伝導冷却により冷却する。装置の周辺環境の温度(室温)との熱的遮断は、真空断熱による。また、センサーと供される試料との間を近接させるため、窒素容器の上面を薄いサファイア窓としている。この構成により室温の試料を測定できる。
試料の作製
図7に実験に用いた試料の概略図を示す。IgEの検出試料は以下の手順により作製した。最初に反応容器底面にブロック材(Block A)をコートした。次に、固定用抗体を付着させた。この後にIgEの入った希釈溶液を200μl入れ、IgEと固定抗体を結合させた。この結合の後に溶液を捨て、その後、磁気マーカー付きの検出用抗体の入った溶液を200μl入れた。検出用抗体とIgEを結合させた後に溶液を捨て、試料を充分に洗浄して、未結合の磁気マーカーを除去した。この手順により、IgEに結合した磁気マーカーのみが残ることになる。したがって磁気マーカーからの磁気信号を測定すれば、IgEの量を検出することができる。
測定
IgEと結合させた時点では磁気マーカーは磁気信号を発生しない。このため外部から1 kG程度の磁界を印加し、磁気マーカーに残留磁気を発生させた。残留磁気による磁化Mから信号磁界Bsが発生し、この磁界をSQUIDセンサーで測定した。信号磁界Bsを測定するため、試料の入った反応容器を電動スライダーにのせて、容器を50 mm/sで移動させた。この間SQUIDセンサーは固定されている。
Claims (2)
- 磁性金属含有量が30ppb以下であり、かつ磁界0.1T、試料からSQUIDセンサーとの距離が1.5mmの条件下で磁界を印加した時の残留磁気量が15pT以下であるポリマーをシート状に成形し、
該シートの表裏いずれか一方、もしくは両方をプラスチックフィルムで被覆し、
その後該シートを真空および/または圧空成形により成形し、底面の厚さを0.1〜1.0mmとすることを特徴とする磁気的免疫反応測定用試験容器を製造する方法。 - 該プラスチックフィルムが粘着剤を含まない、ホットメルトタイプの接着層を有しているものである、請求項1に記載の磁気的免疫反応測定用試験容器を製造する方法。
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