JP4514675B2 - 診断用容器 - Google Patents

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この発明は、抗原・抗体反応を利用して抗体または抗原(以下、検体と云う)を測定する免疫系の分析において使用される診断用容器に関し、詳細には、所要の処理を施すことで抗原が保持される診断用容器内を親水性とし、更にこの応用により該診断用容器内における検体吸着の駆動力を任意に制御した診断用容器に関する。殊にSQUIDセンサによって、定量化が可能な磁気マーカーを用いた免疫診断をなす免疫反応測定法に殊に好適に使用し得る診断用容器に関するものである。
病原菌やガン細胞、DNAの遺伝子解析または環境有害物質等の測定、所謂バイオ計測の分野において、免疫反応を用いて測定すべきバイオ物質(例えば抗原)と、これと選択的に結合する検査試薬(例えば二次抗体)との結合を測定することで、該抗原等の種類と量との計測がなされている。公知の免疫系の検査法としては、下記の[非特許文献1]に記載の如く、測定すべき抗原や当該抗原を捕捉する抗体、すなわち検体を直接または間接的に発光物質、ラジオアイソトープその他の標識化物質(以下、マーカーと云う)で標識化した検体(以下、標識化検体と云う)の発光量や放射線量を計測し、分析・診断する方法が一般的に採用されている。そして殊にマーカーとして酵素を用いると共に、固相化された抗原または抗体を用いる、所謂エンザイムノアッセイ(ELISA)法や、サンドイッチ法(二重抗原決定基法)と呼ばれる方法が、その高い感度および精度故に多用されている。
シンプル免疫学 株式会社南江堂(2001年2月15日)
そして感度等については、高いほど極少量の検体を測定し得るため利用価値が高く、具体的には病気の初期診断がより早期に可能となり、感度向上のため各種の方法が提案されている。その中でも不均一法の1つである前述のELISA法は、検出感度が高く、測定手順も確立されている標準的な方法であり、試料の調整法や抗原抗体反応の測定法等により競合法または非競合法といった分類がなされ、該非競合法が主に使用されている。
そして前記診断用容器に検体を固相化する方法は、下記の[非特許文献2]に記載の如く、その底面にアミノ基等の官能基を導入して検体と共有結合をさせる共有結合法と、該容器自体の疎水性相互作用を利用する物理吸着法とに大別される。前記共有結合法は、比較的低分子量の検体(バイオ物質)に対して強固な結合を維持できる反面、診断用容器底面に付与される官能基の安定性維持に手間を要する等の問題があり、使用上の簡便さの点で物理吸着法が一般的である。なお疎水性相互作用とは、下記の[非特許文献3]に記載の如く、殊に血液の主成分である水のもつ特異的な化学現象を利用したもの、すなわち診断用容器の材質が発現する疎水性と、免疫反応を用いて測定すべき検体に結合する固相化タンパク質の持つ疎水基とが引き合う現象を利用している。
新生化学実験講座12 株式会社京化学同人(1992年2月5日) 吸着の化学 産業図書株式会社(1995年5月30日)
この診断用容器としては、前記標識化検体を検出する方法により、形状、内容積または材質等が異なり、夫々に好適な容器が上市されている。このような診断用容器は、例えば図34に示す如く、底面を有する円筒形状で、その内容積が0.3〜1.0ml程度のセルを8〜96セル(図34では96セル)以上並べた集合体として構成されている。またこの円筒形状のセルが角筒形状等であっても採用可能である。このような構成の診断用容器の採用により、発光色素または蛍光色素等の、所謂光学系マーカー等が付与された標識化検体からの信号が、該容器の上部方向または下部方向に設置される各種センサによって効率よく測定される。
しかし前述した共有結合法において検体を吸着する駆動力となる各種官能基や、物理吸着法において検体を吸着する駆動力となる疎水性相互作用は、夫々診断用容器の全域に存在または発現するため、直接的な測定に供される各種マーカーも該容器の全域に拡散してしまう。すなわち測定に供される診断用容器底面に吸着されるマーカーの量が相対的に減少してしまうことになり、殊に病気の初期診断等をなしえる極低濃度状態の検体によっては、検出効率が著しく低下する問題があった。
このような問題を解決する手段として、以下の3つの方法が挙げられる。すなわち、
例えば図35に示す如く、(a)診断用容器の所定部位(底面(図35(a)参照)または側面(図35(b)参照))にマスキング加工を行ない、その後に容器材質との反応性が高い薬品による化学処理([非特許文献4]参照)により各種官能基を導入した後に該マスキングを取り除く方法や、下記の[特許文献1]に記載される如く、(b)診断用容器の所定部位に、該容器材質と異なる性質の素材をセル内面にコーティングする方法や、(c)診断用容器の所定部位、ここでは底面および側面を夫々異なる性質の素材から作製し、これを接合させる方法([非特許文献5]参照:非特許文献5においてはガラスおよびポリスチレン樹脂)である。これら各方法の採用により、診断用容器の内面に、共有結合性の高い部分と疎水性の強い部分とを共存させ、該容器側面へ検体吸着を少なくし、かつ該容器底面への検体吸着力を高めた容器の製造がなされていた。
ペプチド合成の基礎と実験 丸善株式会社(昭和60年1月20日) 特開2001−201506号公報 NUNC(カタログ)2002−2003
しかし(a)化学処理法では、診断用容器内面に僅かなヒビや傷が存在する場合、該処理を行なう薬品の浸み込み等による影響を排除するための、洗浄等の後処理に要するコストが問題となる。また(b)コーティング法では、形成されるコーティング層と診断用容器内面との密着性が不安があり、測定の再現性等に問題がある。更に(c)接合法では、診断用容器内から検体液漏れの畏れがある。
ところでバイオ物質である抗原等の測定に用いるマーカーとしては、以下の[特許文献2]〜[特許文献6]に記載されるように、厳密な管理を要求されるラジオアイソトープより、使い勝手のよい発光、すなわち光学的マーカー等が多様されている。このような光学的手法は、マーカーが予め付加されたを検査試薬である二次抗体等を抗原に結合させて、そのマーカーからの光量を測定することで抗原量の算出を行なうものである。しかしこの光学的手法においては、数pg(ピコグラム)の抗原測定が限界であり、数pg以下の極微量しか抗原が存在しない局所または血中に対する検査においては要求される感度水準には応えられない問題も内在していた。
特許2532670号公報 特開2000−304749号公報 特開平11−508031号公報 特開平9−243641号公報 特開平9−184841号公報
一般に抗原の測定限界は、(α)測定に際して使用される診断用容器に対して一定量の抗原を投入した場合に、該容器が捕捉し得る抗原の量と、(β)マーカーの検出限界とによって決定される。(α)抗原の捕捉量は、診断用容器に対して固相化し得る一次抗体の数、すなわち診断用容器の単位面積当たりの一次抗体の量で略決定される。一般的な診断用容器の場合、100nmに1〜100個程度の一次抗体が固相化されている疎らな状態であり、効率的な捕捉が可能な状態とは云えなかった。
また(β)は、マーカーの検出機構および方法における最低測定感度(感度水準)に略依存している。そして感度水準を向上させる手段の1つとして、超伝導状態で出現する磁束の量子化(量子効果)を利用するSQUID(Superconducting Quantum Interference Device)センサによって、定量化が可能な磁気マーカーを用いた免疫診断をなす免疫反応測定法(以下、SQUID・磁気マーカー測定法と云う)が、以下の[特許文献7]、[特許文献8]、[非特許文献6]および[非特許文献7]に記載される如く、開発途上にある。このSQUID・磁気マーカー測定法は、具体的には粒子径が20〜40nmの磁性微粒子を内包したポリマーからなる磁気マーカーを抗体に付加させて標識化された抗体(標識化検体)と、測定されるバイオ物質である抗原とを抗原抗体反応で結合させ、該磁気マーカーからの微弱な磁気的な信号をSQUIDセンサにより測定し、抗原量を算出するものである。また感度水準を更に増強させるために、ビオチンと呼ばれる補酵素を抗体に付加したビオチン化抗体と、このビオチンと特異的に反応するアビジンと呼ばれる糖蛋白質および磁気マーカーを予め結合させたアビジン・磁気マーカーの結合物とを反応させて、SQUIDセンサによって検出・測定する手段も知られている。
特開2004−157072号公報 特開2001−33455号公報 円福敬二「SQUIDを用いた抗原−抗体反応計測」、応用物理、70巻1号48頁(2001年) 円福敬二「SQUIDを用いたバイオ免疫診断」、低温工学、38巻9号469〜476頁(2003年)
このSQUID・磁気マーカー測定法は、従来の吸光度計および光学系マーカーを使用した測定法に比べて100倍以上の感度を有するため、抗原等の血液等の検体含有溶液中での存在量が光学系の測定方法の1/100といった微量であっても検出できることが確認されている。また従来の測定方法においては、抗原と標識化された抗体とを反応させた後に未結合抗体の洗浄が必要であったが、SQUID・磁気マーカー測定法では、未結合の磁気マーカーは血清等の被検査溶液中でブラウン運動をなし、個々の磁気マーカーの磁気信号が相殺されてSQUIDセンサに検知されなくなる。このためSQUIDセンサは、抗原に結合した磁気マーカーのみからの磁気信号を検出することとなり、前述の洗浄を省略でき、測定に関する手間を少なくし得る利点もある。
ところでSQUID・磁気マーカー測定法で抗原は、磁気マーカーの磁気信号を検出することで測定されるため、該磁気信号の強度(感度水準)は抗原に結合した磁気マーカーの量に比例する。従って微量の抗原を高感度かつ高速に検出・測定するためには、微弱な磁気信号の検出・測定が必要とされる。すなわち従来比100倍以上の感度水準を確保するためには、従来比1/100以下となる磁気マーカー(が結合した標識化抗体)からの磁気信号(シグナル)を検出・測定可能とするだけでなく、診断用容器も含め外部から生ずる磁気異常信号(ノイズ)の量も1/100以下にする必要がある。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る診断用容器は、
固相化された一次抗体に抗原を捕捉させ、更に標識マーカーによって標識化された二次抗体を該抗原に捕捉させることで、該抗原を定量化する各種免疫測定法に使用される有機系材料からなる診断用容器において、
前記有機系材料として、シクロオレフィン系樹脂を使用し、
その波長が100〜300nmの範囲にある紫外光を所要時間照射することで、前記診断用容器における少なくとも容器内表面の所要領域は、有機系材料の炭素に関わる結合が切断され、当該切断箇所が酸素と結合して生成したカルボキシル基および/またはカルボニル基で覆われていることを特徴とする。
従って、請求項1に係る発明によれば、その波長が100〜300nmの範囲にある紫外光を所要時間照射することで、診断用容器に形成されるカルボキシル基および/またはカルボニル基の生成と、その量を増大とをなし、これにより抗原等の検体を測定する免疫系の分析に使用される診断用容器に、該抗原等を特異的に捕捉する一次抗体をペプチド結合によってより多く結合させてその感度水準を向上させ得る。また、有機系材料として、シクロオレフィン系樹脂を使用することで、SQUIDセンサによって定量化が可能な磁気マーカーを用いた高感度な免疫診断をなす免疫反応測定法にも好適に使用し得る。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記紫外光が照射される所要領域に任意のパターンを施して遮光することで、該パターンによって遮光された部位に形成される疎水性領域と、それ以外の部位に形成され、前記カルボキシル基および/またはカルボニル基で覆われた共有結合性領域とが併存した状態となっていることを要旨とする。従って、請求項2に係る発明によれば、より少量の検体を高感度に測定し得る。
請求項に記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記容器内表面をなす容器側部領域は、照射される前記紫外光を受けるように形成されていることを要旨とする。従って、請求項に係る発明によれば、任意に形成される疎水性領域および共有結合性領域のパターンをより精密なものとし得る。
請求項に記載の発明は、請求項1〜の何れか一項に記載の発明において、前記紫外光として、その波長が100〜200nmの範囲にある真空紫外光が使用されることを要旨とする。従って、請求項に係る発明によれば、より効率的に共有結合性領域を形成し得る。
請求項に記載の発明は、請求項記載の発明において、前記真空紫外光として、特定波長だけの連続的散乱発光をなすエキシマランプ光が使用されることを要旨とする。従って、請求項に係る発明によれば、より広範な範囲に均質な処理をなし得る。
請求項に記載の発明は、請求項記載の発明において、前記真空紫外光として、特定波長だけの間欠的収束発光をなすエキシマレーザー光が使用されることを要旨とする。従って、請求項に係る発明によれば、単一の波長により効率的かつ安定的に共有結合性領域を形成し得る。
請求項に記載の発明は、請求項1〜の何れか一項に記載の発明において、前記有機系材料は、磁界0.1T、試料からSQUIDセンサまでの距離1.5mm以下の条件下で磁界を印加した際の残留磁気量が15pT以下であることを要旨とする。従って、請求項に係る発明によれば、磁気マーカーを用いた免疫反応測定をより高感度になし得る。
請求項に記載の発明は、請求項記載の発明において、前記有機系材料は、磁性金属の含有量が30ppb以下であることを要旨とする。従って、請求項に係る発明によれば、磁気マーカーを用いた免疫反応測定をより高感度になし得る。
請求項に記載の発明は、請求項1〜の何れか一項に記載の発明において、前記診断用容器において試料が保持される容器底部領域の厚さは、0.1〜1.0mmの範囲であることを要旨とする。従って、請求項に係る発明によれば、磁気マーカーを用いた免疫反応測定をより高感度になし得る。
本発明に係る診断用容器によれば、検体の感度水準を向上させ得る。
次に本発明に係る診断用容器につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本願の発明者は、抗原等を特異的に捕捉する一次抗体(固定用抗体)を、CO−NHの、所謂ペプチド結合により診断用容器の内表面(一次抗体が固相化される内表面)に固相化するに際して、予め診断用容器に対して所要の処理を実施することで、診断用容器の内表面により多数の一次抗体が結合・固相化され、検体の感度水準が向上された診断用容器が得られることを知見したものである。また診断用容器に対する処理を実施するに先立ち、所要領域を任意のパターンで遮光することで、該パターンで形成される疎水性領域と、それ以外の共有結合性領域とを併存させ得るため、少量の検体の感度水準を向上させることも確認した。
更にその材質として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂またはシクロオレフィン系樹脂から選択された一種類または二種類以上の樹脂を使用することで、マーカーとして発光または蛍光色素を用いた一般的な検体測定方法の測定感度を好適に向上させる診断用容器を作製し得る。
またその材質をシクロオレフィン系樹脂とすることで、ペプチド結合の一方をなし、診断用容器に形成されるカルボキシル基および/またはカルボニル基(親水性)の経時的な減少や、該樹脂自体が備える疎水性の低下を抑制し、そこに結合・固相化される一次抗体量を長期間に亘って維持し得ることも併せて知見した。更に診断用容器の材質として、蒸留可能でかつ重合後に重合に使用した触媒の除去が可能な特性を有するシクロオレフィン系樹脂を採用することで、一次抗体の増加による感度水準の向上と、診断用容器に由来する磁気ノイズの低減とをなし得るため、検出限界が大きく向上しているSQUID・磁気マーカー測定において、より精密な測定をなし得ることも知見した。なお以下の実施例においては、SQUID・磁気マーカー測定法に好適に採用し得る診断用容器を基本的に説明しつつ、適宜、光学的マーカーを使用した測定に使用される診断用容器についての説明をする。
実施例に係る診断用容器20は、図1に示す如く、一般的に用いられる形状で、かつ処分容易性の高いプラスチック製の容器(図1(a)参照)であり、少なくとも所要領域(後述)の材質として、C−Cの炭素−炭素結合やH−Cの水素−炭素結合といった炭素に関わる結合を有する有機系材料が使用されている。そしてその容器内表面22には、抗原agを捕捉する一次抗体ab1がイオン結合、水素結合または共有結合によって固相化されている。そしてこの一次抗体ab1に抗原agが捕捉され、更に予め磁気マーカー(標識マーカー)Mで標識化された二次抗体ab2がこの抗原agに対して捕捉されている(図1(b)参照)。なお実際の抗原(検体)測定に使用される部分は、診断用容器20に供給される、例えば血液等の検体含有物質(以下、試料Sと云う)の総容量に対応した部分、具体的には容器底部領域22a(本実施例では容器底部)と容器側部領域22b(本実施例では容器側面)とからなる容器内表面22の一部だけであり、説明上、本実施例においては当該部位を所要領域と呼称する。なお図1に示す形状の他、既出の図34の如き診断用容器も使用し得る。
そして診断用容器20の深さは1〜10mmの範囲であることが望まれ,好適にはその上限が5mm以下、より好適には3mm以下(後述[0069])であることが望まれる。これは後述([0059])する処理において、最も好適に使用されるエキシマランプ(後述[0066])から発光される真空紫外光の有効照射距離に依存している。すなわち診断用容器20の深さが10mmを超えると、容器内表面22に固相化される一次抗体ab1が減少して検体の感度水準も低下してしまう。
本発明に係る診断用容器20に使用される材質としては、前述の如く、炭素に関わる結合を有する有機系材料、例えばポリエチレン樹脂(PE樹脂)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、アクリロニトリルスチレン共重合樹脂(AS樹脂)、メタクリル酸メチル(アクリル)樹脂(PMMA樹脂)、ポリアミド樹脂(PA樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、セルロースアセテート樹脂(CA樹脂)またはシクロオレフィン系樹脂(CO樹脂)等の熱可塑性樹脂が推奨される。これは一般的な免疫測定である光学系マーカーの使用を許容し、使用後の安全な処理を可能とする物性、すなわち光透過性を持つと共に、焼却処分が可能な物性(灰化できないガラスや毒性のあるガスを生じさせるハロゲン系や硫黄含有系の樹脂ではない)を有する樹脂である。またこの材質を用いる部位についても、診断用容器20の全体である必要はなく、試料Sを保持して抗原agを捕捉すべき所要領域だけでよい。しかし実際には、単一の樹脂から製造されている。
そして所要領域には、(後述[0059])の紫外光照射による表面改質処理(以下、紫外光処理と云う)により、抗原agを捕捉する一次抗体ab1が多数結合し得るように、多数のカルボキシル基および/またはカルボニル基が生成されている。このカルボキシル基および/またはカルボニル基が生成する場合、これらの官能基を形成する酸素によって親水性も向上する([実験4]参照)。
また有機系材料としては、ASDM D570に準拠して測定した水温23℃の純水中に24時間放置した後の吸水率(以下、単に吸水率と云う)が0.02%以下であるものが好適である。これは吸水率が0.02%を超えることで発生する現象([0045]参照)を抑制して、紫外光処理による効果、すなわちカルボキシル基および/またはカルボニル基といった一次抗体ab1の診断用容器20表面への結合数(言い換えれば、親水性)を長期間保持するための要件となっている。本発明に係るシクロオレフィン系樹脂は、所謂アルカン系物質であって高い疎水性を備えているため、その吸水率は基本的に0.01%未満であるが、その官能基にも左右される。具体的には図2に示されているR、Rの種類によって略決定され、ここに親水性の官能基、すなわち極性を持った官能基が結合するとその吸水率が0.02%を超えてしまう。
一般に紫外光処理を実施すると、官能基が活性化されてそのエネルギー水準の向上し、これに伴って診断用容器20の表面のエネルギーポテンシャルも高まって不安定化する。このような不安定状態は、経時的に安定状態へと向かうが、下記の[非特許文献8]に記載される如く、このときに働く熱力学的力によって有機系材料の基本骨格が回転して生成した官能基が該有機系材料の内部に潜り込んでしまい、見かけ上、その表面、すなわち診断用容器20表面から官能基(カルボキシル基および/またはカルボニル基)が減少してしまう。この有機系材料の基本骨格の回転の度合いは、分子の移動容易性によって決定されると考えられる。
プラズマ材料科学ハンドブック 株式会社オーム社(平成4年9月25日)
一方、吸水率が0.02%を超えると、その分子骨格は吸湿によって膨潤して緩みを発生させる。この場合、一次抗体ab1との結合に関わるカルボキシル基および/またはカルボニル基といった官能基が動き易く、すなわち分子の移動容易性が大きくなる。その結果、診断用容器20をなす有機系材料の基本骨格の回転の度合いが大きくなり、診断用容器20表面から官能基が減少してしまう。すなわち紫外光処理によって活性の高まった診断用容器20が、数ヶ月以内の短時間で変質して処理以前の状態に戻ってしまい、処理直後の活性が高く、より多くの一次抗体ab1を結合・固相化した状態を安定的に維持できくなってしまう([実験3]参照)。
また有機系材料としては、前述の[0041]および[0043]の観点から、殊にシクロオレフィン系樹脂の採用が好適である。シクロオレフィン系樹脂とは、シクロオレフィンポリマー(以下、COPと云う)と、シクロオレフィンコポリマー(以下、COCと云う)に分類される。そして、例えば下記の[非特許文献9]に記載の如くCOPは、原料であるジシクロペンタジエン(DCPD)を、単量化して得たシクロペンタジエン(CPD)が合成される、図2に示す構造を有するノルボルネン系モノマー(以下、NBと云う)を、(イ)開環メタセシス重合した後に残存二重結合を水素化する、(ロ)末端に極性基を付加重合させたNBを開環メタセシス重合した後に残存二重結合を水素化する、といった所謂開環重合法で合成されるホモポリマーである。COCは、NBとプロピレン等のアルケン化合物であって末端に二重結合を有するα−オレフィンとの付加共重合体(コポリマー)である。
透明ポリマーの屈折率制御(日本化学会編)学会出版センター(1998年)
シクロオレフィン系樹脂が本願発明に殊に好適である理由を、以下説明する。前述した如く、磁気マーカーMの検出限界が高くかつ測定を容易に実施し得るSQUID・磁気マーカー測定法では、(A)磁気ノイズ、すなわち診断用容器20の磁気汚染が小さい方がよい。更に診断用容器20には、透明性、剛性、耐薬品性、成形性および処分容易性といった、(B)一般的物性が求められることは云うまでもない。殊にSQUIDセンサの使用に際しては、下記の[非特許文献10]および[非特許文献11]に記載されるように、磁気マーカー(標識マーカー)Mから発せられる磁気信号は空間的に大きく分布するため、該磁気信号に関連する感度水準および測定安定性は、例えば図3に示すような構造のSQUID計測装置50に使用される診断用容器20とSQUIDセンサとの距離(D)および診断用容器20の形状に夫々依存することが確認されている。具体的には、SQUIDセンサと診断用容器内20に保持される試料Sとの距離(D)を出来るだけ接近させると共に、その距離Dを測定中に常に一定とする必要がある。この条件は、(B−1)試料Sが保持される診断用容器20における容器底部領域22aの板厚さを薄くし、更に(B−2)診断用容器20全体の反り等の変形をなくすことで達成される。
平成15年度地域新生コンソーシアム研究開発事業「磁気ナノマーカーを用いた超高感度免疫検査システムの開発」成果報告書(平成16年3月) Kenji ENPUKU 、Shigenori HAMAOKA et al.「Magentic marker and high Tc superconducting quantum interference device for biological immunoassays」IEICE Trans.Electron.Vol.88-C(電子情報通信学会英文誌C)(2005年1月)
(A)診断用容器20の磁気ノイズは、診断用容器20自体の残留磁気と、外部磁場および機械ノイズ等の環境要因とが原因となっている。環境要因については磁気シールド等の対策によって解決可能であるが、診断用容器20自体に関しては環境要因の如き解決手法が適用できず、その材質、材料作製プロセスおよび成形法等を考慮する必要がある。なお本発明のSQUID計測装置50を使用した測定におけるSQUIDセンサと、診断用容器20内に捕捉され、磁気マーカーMによって標識化された二次抗体ab2、すなわち試料Sとの距離(D)は、感度水準の維持のために2mm以下に、実際の測定においては更なる感度水準の達成のため1.5mm以下とされている
そしてこの磁界0.1T、試料SからSQUIDセンサまでの距離(D)1.5mm以下の条件下で、例えば抗原agとしてヒトIL8を使用した場合の、SQUID・磁気マーカー測定法が目的とする数pg以下の検出限界(感度水準)を達成する磁気信号の強度は、下記の[実験8]から約20ピコテスラ(pT:20×10−12T)であることが確認された。ここから、磁気信号測定時に許容される診断用容器20を含めた外部から生ずる磁気ノイズは20pT以下であるため、診断用容器20から生ずる磁気ノイズが15pT程度以下であることが要求される。なお磁気ノイズとは、残留磁気量、すなわち磁気汚染を指すものである。
一般に診断用容器20の材質としては、ガラス系材料と高分子系材料とが挙げられ、前述の磁気ノイズの点ではガラス系材料の採用が好適であるが、本願発明においては高分子系材料を採用している。高分子系材料の場合、(A)診断用容器20の磁気ノイズは、(A−1)殆どの重合工程において触媒や配合材料として使用される金属化合物の存在、(A−2)所要の診断用容器20形状への成形に際して、金属との接触に由来する金属成分の混入によって発生している。従って選択され得る材質としては、下記の[実験9]から明らかな通り、シクロオレフィン系樹脂、アクリル樹脂および高圧法ポリエチレンが挙げられる。これらはモノマー時における蒸留による金属不純物の除去および重合完了後の触媒(金属成分)の除去が可能であったり、その製造方法上、金属触媒が不要となるためである。
外部磁場や機械ノイズ等の環境要因を完全に排除できた場合、診断用容器20に求められる15pT以下の磁気ノイズを達成する金属の量は、下記の[実験10]から30ppb以下であることが確認された。またこの[実験10]は、殊に強い残留磁気特性を示すことが知られている、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)等の周期律表における第4周期第8族元素の酸化物について実施されている。
そして診断用容器20には、(B)一般的物性、すなわち透明性、剛性、耐薬品性、成形性および処分容易性、殊に容器底部領域22aの薄い板厚および反りのない状態を達成するため、一定以上の剛性および成形性が要求され、この点からポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂、フッ素系化合物含有樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂またはアクリル樹脂が好適である。また一方で、前述の如く、対象物が抗原ag(バイオ物質)であるため、安全確実な処分を考慮し、診断用容器20は焼却等による高温減容処分が可能であることが求められる。この他、高温処理時に塩素ガスや、フッ素化ガス等の有害ガスが発生するポリ塩化ビニル等の塩素含有樹脂およびポリフッ化ビニリデン等のフッ素系化合物含有樹脂や、(A)磁気ノイズの点で優れているガラス系材料は、高温による減容が困難なため、夫々好適な材質とはなり得ない。更にポリフッ化ビニリデンの如きフッ素系化合物含有樹脂等は、流動性が低いため成形性が悪いという問題がある。
すなわちこれら(A)および(B)を考慮すると、シクロオレフィン系樹脂またはアクリル樹脂が、本発明に係る診断用容器20の好適な材質といえる。しかしアクリル樹脂は、前述の吸水率が0.3%と高く、診断用容器20としての初期的な性能は高いものの、下記の[実験3]に示す如く、時間の経過によってその性能が劣化(悪化)するため、例えば長期間に亘る保存等は困難である。しかし紫外光処理された本発明に係るアクリル樹脂性の診断用容器20は、従来のアクリル樹脂性の診断用容器に比較してカルボキシル基および/またはカルボニル基の量が増大しているため、より高い一次抗体ab1の結合・固相化作用がなされ、その利用価値は高い。なおアクリル樹脂製の診断用容器20は、シクロオレフィン系樹脂製の容器に比較して、機械的強度が弱く、アルコール等の有機溶媒に対する耐性が低い。
なお本実施例に係るシクロオレフィン系樹脂の吸水率は、(A)および(B)の各要件を備えているアクリル樹脂の0.3%に比較して、1/30の0.01%と大きく下回った値であるため、前述した経時的に発生する不利益な官能基の減少はほぼ皆無である。また(A)磁気ノイズの点から、SQUID・磁気マーカー測定法に使用する診断用容器20には採用し得ないが、その吸水率が0.01%以下のポリプロピレン樹脂または0.1%以下のポリスチレン樹脂は、(C)一般的物性(成形性)も良好であり、一般的な光学系の免疫測定法には好適に採用し得る。
この他、前述のSQUIDセンサと試料Sとの距離(D)を達成するため、診断用容器20において試料Sが保持される容器底部領域22aの厚さを0.1〜1.0mmの範囲とすることが好適である。この厚さが0.1mm未満であると、診断用容器20の剛性の確保が困難となって選択した材質に関係なく、診断用容器20全体の反り等の変形を抑制し得なくなり、一方、1.0mmを超えると、電動スライダによって常に移動状態にある診断用容器20とSQUIDセンサとの間の間隔が小さくなり、測定安全性に問題が生じる。そしてその厚さが0.1〜1.0mmの範囲であれば、SQUID・磁気マーカー測定法において正確なデータ採取が可能なことも確認されている。
(製造および処理方法)
次に本実施例に係る診断用容器の製造および処理方法の一例を説明する。具体的には、診断用容器20を成形する原料であるシクロオレフィン系樹脂を準備する。そしてこれを、例えば図1に示すような好適に試料Sを保持し得る所要形状の診断用容器20に成形し、その後、所要領域の紫外光処理を実施すればよい。
基本的に本発明に係る診断用容器20は、従来の光学系マーカーを使用したマーカー測定法においては一般的な成形方法での製造が可能である。しかし、より検出限界の高いSQUID・磁気マーカー測定法での使用では、前述の金属の混入と、容器底部領域22aの厚さおよび診断用容器20全体の変形を考慮しなければならない。すなわち原料の準備、成形および紫外光処理の何れの段階でも、シクロオレフィン系樹脂と各種金属とが直接接触しないように、例えば各種部材をセラミック等の非金属物質でコーティングしたり、加熱手段としてセラミックヒーターを使用する必要がある。また成形方法については、単一工程で診断用容器20が成形できるが、成形機内が高温(180〜280℃)、高圧(1600〜2200kg/cm)状態にあり、原料とスクリュー、シリンダーおよび金型等とが接触・摩擦する射出成形は不向きである。一方、加熱重合に相当の時間を要し、工業的大量生産が困難であるが、原料を直接、シリコーンまたはガラス製の型中に注型して成形を行なうキャスト成形(鋳込み重合法)や、これを連続的に行なう連続キャスト成形法は、原料と金属との接触を防止し得るため、下記の[実験11]から明らかなように、採用可能である。また原料がスクリュー、シリンダー、スクリーンおよびダイス等の鋼材と接触する押出成形法は、その接触による汚染水準は射出成形と比べて成形品に掛かる圧力が極めて低いため、金属の混入は殆どなく採用し得ることが確認されている。
またシクロオレフィン系樹脂から、成形が容易なシート状物を押出成形法によって成形し、その後、真空圧空成形法により診断用容器20を得るようにしてもよい。この際、真空圧空成形法に使用される成形用金型の材質や、押出成形法に使用されるダイスおよびスクリューの材質として非磁性金属であるアルミニウムを採用し、更にその表面をアルマイト、セラミックまたはフッ素系物質でコーティング加工等するとより好適である。また真空圧空成形の際には、水分、金属分および油分をより完全に除去するとより好適である。
前述の各成形法等により、例えば図1(a)に示す形状とされた診断用容器20は、少なくともその所要領域に、抗原agを捕捉する一次抗体ab1を所要領域に多数結合させるための処理が施される。具体的には、その波長が100〜300nmの範囲にある遠紫外光または真空紫外光、好適には100〜200nmの範囲にある真空紫外光の所要時間に亘る照射である。この紫外光処理により、有機系材料である診断用容器20の容器内表面22には、組成内に存在する、例えばC−Cの炭素−炭素結合やH−Cの水素−炭素結合といった炭素に関わる結合が切断され、近傍空間にある酸素と結合してカルボキシル基および/またはカルボニル基が生成される。そして生成したカルボキシル基および/またはカルボニル基により所要領域が覆われた状態に表面改質(変性)される。なお炭素と酸素の結合は、紫外光の照射によって酸素がラジカル化(活性化)した、所謂協奏反応場の形成により容易になされる。
このような紫外光の採用は、診断用容器20の所要領域の化学結合に直接的かつ均一に影響を与え、しかも安全かつ安定であり、更にコストも廉価な方法である。一般に紫外光は400nm〜300nm程度までの波長の可視光線に近い近紫外光、C−H、C−C結合のような弱い結合を切断するエネルギーを持つ波長300nm〜200nmの遠紫外光、C=C、C=Oのような強い結合も切断するエネルギーを持つ波長200nm〜100nmの真空紫外光に大別される。その中で近紫外光はエネルギーレベルが低く、診断用容器20をなす樹脂の変性には不向きである。また遠紫外光は診断用容器20をなす樹脂表面組成の変性に適しているが、分単位の時間が必要とされ、また後述([0062])する酸素ラジカルの生成能力も低い。
一般に診断用容器20をなす有機物材料の表面への官能基の導入は、該材料の化学結合を切断し、同時に切断された部分にカルボキシル基またはアミノ基等の所望の官能基の付与によってなされる。そして前述のC−C結合や、H−C結合は、その結合エネルギーが夫々84Kcal/mol、81Kcal/molであり、300nm以下の遠紫外光または真空紫外光による光量子プロセスによって直接的な切断が可能である。なおここで光量子プロセスとは、原子間結合を光子のみによる作用で直接的に切断するプロセスを指す。この波長が100nmより小さいと、処理を施す所要領域に与えられるエネルギーが大きくなり過ぎて、所要領域に生成したカルボキシル基および/またはカルボニル基が剥離または劣化し、一次抗体ab1と結合しなくなる問題を引き起こす。一方、300nmを超えると、本発明で云う有機系材料、所謂アルカン化合物のC−C結合およびH−C結合を切断するまでには至らず、カルボキシル基および/またはカルボニル基が生成しない。
このようにその波長が100〜300nmの範囲にある遠紫外光または真空紫外光は、その照射により本発明に係る有機系材料の表面を活性化(表面に位置する分子を励起)して、カルボキシル基および/またはカルボニル基を生成するため、シクロオレフィン系樹脂に限らずその効果が期待できる。またその表面にカルボキシル基および/またはカルボニル基が生成する場合、これらの官能基を形成する酸素によって親水性も向上する([実験4]参照)。この親水性の向上によって、血液等の水系溶液に存在する低分子量検体の測定実施がより好適となる効果が期待できる。このような点に鑑み、空気中の酸素を活性化し酸素をラジカル化させると同時に短い波長で有機物材料の骨格を切断し、該材料表面で協奏反応を起こしてカルボキシル基および/またはカルボニル基を形成させる遠紫外光または真空紫外光、殊に真空紫外光の使用が有効であるとの結論に達した。なお真空紫外光は、一般に半導体業界や医療機器業界で表面洗浄や殺菌等に活用されている。
またその照射時間は、120秒以下に、好適には15〜120秒の範囲に設定されている。この時間が15秒未満であると実質的な効果が得られず、120秒を超えると所要領域に生成したカルボキシル基および/またはカルボニル基が表層劣化を起こして脱落し、一次抗体ab1との結合性が低下する。
紫外光の光源としては、低圧水銀ランプや、フッ化アルゴン(ArF)等の希ガスとハロゲンガスとの混合気体を発光種とする希ガスハライドレーザーや、キセノンガス(Xe)やフッ素ガス(F)等の希ガスやハロゲンガスを発光種とする希ガスエキシマレーザーまたはハロゲンガスエキシマレーザー(以下この2つを併せて、単にエキシマレーザーと云う)或いは希ガスエキシマランプまたはハロゲンガスエキシマランプ(以下この2つを併せて、単にエキシマランプと云う)([非特許文献12および13]参照)がある。なおエキシマとは、アルゴン、クリプトン等の希ガスと塩素、フッ素などのハロゲンの混合ガスに高電圧放電を加えた際に発生するArK、XeFなどの励起状態でのみ存在する分子を指す。
パワーレーザーの技術 オーム社(平成11年10月30日) レーザー化学 化学同人(2003年1月10日)
ここで低圧水銀ランプは、185nmの真空紫外光を発生させる連続点灯可能な光源であり、かつ有効照射距離も最大100mmと長く([非特許文献14]参照)、本発明においては適応性が高い。しかしランプの発熱量が高く、ランプ表面からの輻射熱で被照射物は100℃以上の高温になる場合もある。本発明に係る診断用容器20は、前述の如く、光学系マーカー等の測定を考えてその厚みが薄くものが好適であるが、この場合、熱変形を起こす畏れがある。
USHIO(会社案内) (2005年2月)
これに対し、例えばXe(キセノン)等の不活性ガスを使用し、特定波長(Xeは波長172nm)だけの発光をなすエキシマ光源では、前述の問題は生じない。またエキシマ光源には、(1)単一の波長の発生し、必要とされる紫外光エネルギーだけを効率よく安定的に照射でき、(2)赤外線を発生しないため、診断用容器20に照射に係る発熱が殆どなく、熱による変形を抑制し得る低温処理が可能、(3)電力から光へのエネルギー変換効率が高い(172nmの変換率10%)、といった利点が挙げられる。この他、クリプトン・フッ素(KrF)およびアルゴン・フッ素(ArF)のエキシマ光源は、夫々248nmおよび193nmの波長の紫外光を発生させる。なお下記の非特許文献15に記載の如く、キセノンエキシマランプの172nm光は、クリプトンエキシマランプの146nm光より波長が長いため減衰率が低く、このため有効照射距離は約2倍の10mmと長く、殊に本発明のような一定の高さを有する診断用容器に紫外光処理には有用である。
株式会社 エム.デイ.エキシマ カタログ(2004年4月)
更にエキシマ光源を使用する場合、(1)単一の波長を発生し、必要とされる紫外光エネルギーだけを効率よく安定的に照射できるため、その照射量(照射時間)と、診断用容器20の容器内表面22のカルボキシル基および/またはカルボニル基の生成量との間には、強い比例関係が成り立っており、照射時間だけの調整により容易にカルボキシル基および/またはカルボニル基の生成量、すなわち容器内表面22に結合させる一次抗体ab1の量を制御し得る([実験4]参照)。これは一定量の試料Sを使用する条件において、捕捉する抗原ag、すなわち二次抗体ab2、更には磁気マーカーMの量を制御し得ることを意味する。なおカルボキシル基またはカルボニル基の生成量については、紫外光の照射時間が長くなる程、カルボニル基に水酸基が付加したカルボキシル基の生成量が優勢になり、例えばシクロオレフィン系樹脂の場合、波長172nmのXe(キセノン)エキシマ光の120秒照射で、その殆どがカルボキシル基となることが確認されている(図8および図9参照)。また紫外光の波長や、照射時間によって、カルボキシル基の生成量と、カルボニル基の生成量とを制御することも可能である。
ここでエキシマ光源は、前述の如く、レーザー光とランブ光とに分類される。レーザー光は、レーザーによって発生した光であり、エキシマにおいては、例えば半導体等の微細加工に用いられており、間欠的収束する特徴を有する光である。これに対してランプ光は、連続的散乱する特徴を有する光である。何れの光であっても、その波長は同一であって、前述の(1)〜(3)の特徴を備え、本発明に係る診断用容器の処理に使用し得る。なおレーザー光においては、その設備が大型となり、また間欠的(パルス)な収束光であるため、診断用容器20の如き一定の処理面積に対して、均質照射を安価に実施する用途の好適な実施には必ずしも向かない。これに対してランプ光は連続的な散乱光であるため、より広範な範囲の均質な処理に好適に利用し得る。
しかしエキシマランプ光は出力が低く、発光される真空紫外光の有効照射距離は、前述の如く、最大10mm未満と短いため、光源であるランプと処理すべき診断用容器20との距離は1〜3mm程度の範囲内にする必要がある。なおこの距離が5mmを超えると、急速に表面改質効果が悪化し、以下の各実験(後述[0069]〜)においては、この距離を2mmとしている。一般にエキシマランプ光に限らず、光源ランプから放射された光は拡散により、該光源からの距離の二乗に反比例して照度は下がる。殊に波長172nmのエキシマ光は、酸素原子に対する吸収断面積が高いため、前述の如き数値となってしまう([非特許文献16]参照)。
エキシマVUV/O3洗浄装置 工業調査会(電子材料7月号別冊)
この他、表面改質に係る処理方法として、一般的には薬品処理またはプラズマ処理が挙げられる。しかし化学的安定性が高い、例えばシクロオレフィン系樹脂の如き有機系材料は、アクリル樹脂等のように高濃度NaOH水溶液等での薬品処理によって、容易にカルボキシル基等の官能基を生成させることは困難であって、本発明に係る処理方法には向かない。100℃以上とした高温下処理では、カルボキシル基等の官能基を生成させ得るが、時間を要する、手間が煩雑化する、熱によって診断用容器20形状に変形を生じるといった問題がある。また、例えば下記の[非特許文献17]に記載の如く、プラズマ処理の場合は処理時間は短く(20分程度)できるものの、バッチ処理のため大量生産には不向きであり、また真空条件下での運用が必要であるため、装置自体が高価であり、またイオン化されたプラズマを処理を必要とする部分に精度よく照射することも困難である。更に電子ビームを使う表面改質技術もあるが、装置が高価である上に管理が厳しい放射線を使用するため、実用には適しない。
プラズマ重合 株式会社東京化学同人(1986年9月10日)
このように製造された診断用容器20は、その容器内表面22に一次抗体ab1、抗原agおよび標識マーカーMで標識化された二次抗体ab2が供給され、最終的には抗原agに捕捉された磁気または光学系マーカーMで標識化された二次抗体ab2の量を、光学的または磁気的等の各種方法により高感度で測定し得る。
(変更例)
前述の実施例においては、診断用容器20の表面にカルボキシル基および/またはカルボニル基が生成された状態、すなわち診断用容器20の表面に結合させる一次抗体ab1において結合に供される官能基がアミノ基である場合を説明している。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、診断用容器20の表面に結合させる一次抗体ab1において結合に供される官能基がカルボキシル基またはカルボニル基の場合であってもよい。この場合、診断用容器20の表面にアミノ基が存在する必要があるが、例えば[非特許文献4]に記載されるような公知の方法、例えばジアミン等でアミノ化処理をする2段法を利用する等して、診断用容器20に前述の処理で生成されているカルボキシル基および/またはカルボニル基をベースとして、この上に複数のアミノ基を有する物質を結合させることでなされている。
(別の実施例)
前述の実施例に係る診断用容器20は、所要の紫外光処理により、少なくとも所要領域にカルボキシル基および/またはカルボニル基が生成された状態となっていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち前述の紫外光処理を実施するに先立ち、前記所要領域に紫外光を遮断(遮光)し得る任意のパターン(この別の実施例では、容器底部領域22aだけを遮光した)を施し、該パターン領域においては紫外光処理を回避して診断用容器20の物性による疎水性を発現させ、該パターン領域外においては紫外光処理によるカルボキシル基および/またはカルボニル基を生成させてもよい。ここで遮光処理は、紫外光処理に使用される光源からの光を充分に遮断し得る物質を用いた任意パターンのマスキングで実施されており、この他公知の方法も採用し得る。
このような一連の処理の実施により、例えば図4に示すような検体の吸着をなす診断用容器20が得られる。この診断用容器20においては、(一)容器内表面22のうち遮光がなされた部位である容器底部領域22aでは、該診断用容器20をなす有機系材料が通常に有する疎水性による疎水性相互作用によって検体が吸着される疎水性領域HAが形成される。そして(二)遮光がなされなかった部位である容器側部領域22bでは、紫外光処理により生成したカルボキシル基および/またはカルボニル基による共有結合によって検体が吸着される共有結合性領域CAが形成される。すなわち任意のパターンで疎水性領域HAおよび共有結合性領域CAが併存した診断用容器20の作製をなし得る。ここで疎水性領域HAでは物理吸着によって、共有結合性領域CAでは共有結合によって夫々検体の吸着がなされることは云うまでもない。また遮光パターンを逆にして、容器側部領域22bにだけ遮光を施して、容器側部領域22bを疎水性領域HAとし、容器底部領域22aを共有結合性領域CAとしてもよい。
このような一連の処理がなされる診断用容器20については、何れの部位であっても紫外光処理を実施し得る形状となっている必要がある。このため前述の実施例の一例として述べた底面を有する円筒形状(図34参照)または角筒形状の如き形状、容器側部領域22bに紫外光処理をなし得ないため不適当である。従って、その容器側部領域22b内側が、上方からの紫外光処理に係る照射光を受け得るようになっている、例えば図5に示す逆円錐台形状(図5(a)参照)、逆角錐台(図5(b)参照)または逆円錐球(図5(c)参照)或いは半球形状(図5(d)参照)の採用が好適である。なお(図5(d)に記載の半球形状以外の形状の場合、明確に容器底部および容器側面が存在しないが、基本的に検体を吸着してSQUIDの如き測定に供する部位およびそれ以外の部位の一方が、疎水性領域HA、他方が共有結合性領域CAとなっていれば、該検体の測定感度を向上させ得る。従って、測定に供する部位が診断用容器における容器底部領域22aであり、それ以外の部位が容器側部領域22bであると考えればよい。また容器側部領域22bを疎水性領域HAとした診断用容器の場合には、容器側部領域22bに紫外光処理を施す必要がないので、図34に係る形状の診断用容器でも採用可能である。
従ってこの別の実施例においては、1つの診断用容器20において、その容器底部領域22aだけを、所望の検体を吸着するに相応しい状態とし得るため、診断用容器20に保持される試料S中に含まれる全ての検体を、容器底部領域22aだけ、すなわちより狭い範囲だけに選択的に吸着させ得る。このため少量の検体を測定に供する場合には、高感度な測定が可能となる
ところでインターロイキン(IL)や、イムノグロブリン(Ig)のような分子量が数万以上の、所謂高分子量検体(バイオ物質)と、ビオチンヒドラジドの如き低分子量検体(バイオ物質)とでは、下記の[非特許文献18および19]に記載の如く、免疫測定における挙動が全く異なることが、ELISA法等の研究成果から広く知られている。この点から、この別の実施例に係る診断用容器20は、その容器内表面22に対する紫外光処理の実施およびそれに先立つ遮光処理によって、その分子量が異なる多様な検体の何れも好適に吸着させ得る。なおELISA法で通常用いられている疎水性相互作用によって吸着される検体用に診断用容器とするためには、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂またはシクロオレフィン系樹脂等の疎水性の高い、すなわち純水接触角の高い合成樹脂の採用が望ましい。
免疫生物学 株式会社南江堂(2003年10月15日) Surface and Interfacial Aspects of Biomedical Polymers:Volume2 Protein Adsorption(PLENUM PUBLISHING COROPRATION N.Y 1985発行)
なお疎水性相互作用の観点からも、有機系材料としてASDM D570に準拠して測定した水温23℃の純水中に24時間放置した後の吸水率が0.1%以下であるものが好適であることが確認されている。これは吸水率が0.1%を超えると、診断用容器20の容器内表面22における親水性が高まって疎水性が低下し、その結果、疎水性相互作用による一次抗体ab1の吸着・固相化性が弱くなってしまうためである。従って、疎水性相互作用を発現させる診断用容器についても、その材質として吸水率が低いシクロオレフィン系樹脂の採用が好適である。またシクロオレフィン系樹脂の親水性は、基本的に図2に示されているR、Rの種類によって略決定され、ここに親水性の官能基、すなわち極性を持った官能基が結合するとその吸水率が0.1%を超えてしまうことがある。またこの吸水率は、時間の経過と共に大きくなるものであるため、該吸水率が0.1%を超えてしまうものは経時的変化により疎水性相互作用が劣化してしまう。一例として、その吸水率が0.3%程度と高いアクリル樹脂を、診断用容器20の材質として採用する場合、経時的変化により疎水性相互作用が大きく劣化することが知られている。
この他、紫外光処理に係る光源としてエキシマランプを使用した場合、エキシマランプ光の距離による表面改質効果の急速な減少を利用して診断用容器20を作製することも可能である。この診断用容器20は、図6に示す如く、その容器側部領域22bの上側ほど多数のカルボキシル基が生成されて強い親水性が発現し、容器底部領域22aに近ずく程、カルボキシル基生成量が減少し、親水性も低下した、所謂傾斜的な機能を有すものとなる。なお図6において、官能基(カルボキシル基および/またはカルボニル基等)を示すハッチングの濃淡は、該官能基の量の多少を表している。
(実験例)
以下に本発明に係る方法で処理された診断用容器の各種物性、例えばカルボキシル基等の量、磁気ノイズおよび一次抗体の捕捉量(度合い)、すなわち標識化された二次抗体の捕捉量等についての実験例を示す。なお本発明に係る診断用容器は、この実験例に限定されるものではない。
(実験1) 本発明に係る処理の時間と生成するカルボキシル基量とについて
測定例1−1〜1−4および基準例に係るシクロオレフィン系樹脂((商品名 ZEONEX 480R:日本ゼオン製)からなる試験片(縦60mm×横30mm×厚さ1.0mm)を作製し、これに波長172nmのXe(キセノン)エキシマランプ光(光源:無電極Xe封入エキシマランプ(商品名 MEB500:エム・ディ・エキシマ製))を、処理面とエキシマランプとの距離2mm、光源固定、処理対象物の移動速度1m/分、空気中照射との条件で、下の表1に記載の条件(照射時間)で照射することで表面改質処理を実施した。そして測定例1−1〜1−4および基準例に係る試験片に存在するカルボキシル基量(nMol/cm)を、以下に記す方法によって定量すると共に、赤外分光(IR)スペクトルチャート(商品名 FT−700:日本分光製)よって赤外線吸収度(ΔT1(%)およびΔT2(%))を測定した。図7、図8および図9は、夫々基準例(エキシマ光照射なし)、測定例1−2(照射30秒)および測定例1−4(照射120秒)の試験片に係るIRスペクトルチャートである。
なおIRスペクトルにおいて、ΔT1(%)はメチレン基(C−H)の伸縮振動の吸収する2820cm−1のデータであり、ΔT2(%)はカルボニル基(>C=O)の伸縮振動を吸収する1710cm−1近傍のデーターであり、夫々の吸光度がメチレン基またはカルボニル基の存在量と比例するものとなっている。また各測定例における定量されたカルボキシル基量については、エキシマ光照射なしの基準例をブランクとして、エキシマ光照射だけによって増加したカルボキシル基量と、該基準例を基準としてカルボキシル基量の増加倍率とを算出すると共に、ΔT2(%)/ΔT1(%):吸光度比、すなわちエキシマ光照射によって変化(ΔT1(%)はメチレン基は減少、ΔT2(%)はカルボニル基は増加)する一次抗体の結合容易性を算出している。
Figure 0004514675
(カルボキシル基量の定量方法)
(1)各測定例に係る試験片を、縦30mm×横10mm×厚さ1mmの大きさの定量片に切断加工し、100mlのナスフラスコに予め調整した精製シクロヘキサン50mlと精製t−ブタノールとの混合液内に浸漬し、ここにN、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)0.05mgを加え、温度0℃、2時間の条件で撹拌後、P−ニトロフェノールを0.50g加え、室温で12時間撹拌した。
(2)その後、定量片をナスフラスコから取り出し、メタノールで5回洗浄することで、該定量片上の未反応P−ニトロフェノールを取り除き、その後 乾燥させた。
(3)乾燥させた定量片を100mlのナスフラスコに入れ、その中に4%アンモニア水20mlを加え、室温で12時間撹拌した後、アンモニアと反応した上澄み中のP−ニトロフェノール(モル吸光度係数ε=18000)の400nmにおける吸光度によりカルボキシル基の定量を行なった。なお定量は予め作成しておいた検量線を用いて行なった。
(実験1の結果)
この結果を上記の表1に併記する。この表から(化学的に定量したカルボキシル基量と、光学的に測定したカルボニル基量)から、処理により生成されたカルボキシル基量は、エキシマ光の照射時間に略比例していることが確認された。
(実験2) カルボキシル基量の経時的変化について(シクロオレフィン系樹脂)
実験1でエキシマ光照射30秒の処理を施した測定例1−2に係る試験片につき、室温3ヵ月放置後に測定例2として、赤外線吸光度(ΔT1(%)、ΔT2(%)およびΔT2(%)/ΔT1(%))を実験1と同様に測定・算出した。なお図10は、測定例2(照射30秒、3ヶ月経過後)の試験片に係るIRスペクトルチャートである。
(実験2の結果)
この結果を下の表2に示すと共に、参考として実験1の測定例1−2の結果を併記する。この表2の数値、すなわちΔT2(%)/ΔT1(%)の絶対比較で変化が見られないことより、シクロオレフィン系樹脂に関してエキシマ光による処理が経時的安定性を備えていることが確認された。
Figure 0004514675
(実験3) カルボキシル基量の経時的変化について(アクリル樹脂)
同一のアクリル樹脂からなる試験片(平板:縦60mm×横30mm×厚さ10mm)を3枚準備し、試作したベルジャー式プラズマ発生装置内にランダムに載置し、気圧を0.1torrに減圧して酸素に置換した状態下で、出力200W、時間10分間の条件で酸素プラズマ処理を実施し、診断用容器の表面にカルボキシル基を導入した。そして各試験片を夫々2分割し、実験1で説明した「カルボキシル基量の定量方法」により、一方は処理直後のカルボキシル基量(nMol/cm)を定量し、他方は2ヶ月間室内放置後にカルボキシル基量(nMol/cm)を定量した。そして定量された数値から、2ヶ月経過時点でのカルボキシル基量の減衰率(%:(2ヶ月放置後カルボキシル基量−処理直後カルボキシル基量)/処理直後カルボキシル基量)を算出すると共に、この数値の平均をとった。
(実験3の結果)
この定量結果を下記の表3に示す。この結果から、平板に導入されたカルボキシル基量は2ヵ月後には半減していることが確認された。
Figure 0004514675
(実験4) 本発明の処理法に係る時間と親水性とについて(1)
上述の実験1でなされた本発明に係る処理(波長172nmのXe(キセノン)封入エキシマランプを使用したエキシマ光照射)を、上市されている複数の樹脂製品から選択されたシクロオレフィン系樹脂2種、アクリル樹脂およびポリプロピレン樹脂に対して、下記の表4に示した時間実施した後、水に対する接触角を測定した。またシクロオレフィン系樹脂の1つであるCOP(測定例4−1)およびアクリル樹脂(測定例4−3)については、併せて各処理時間における吸光度(ここで吸光度とは、405nmの吸光度から、バックグランドの吸光度を引いた数値である)についても測定した。ここで吸光度は、COPを押出成形法によって厚さ1.0mmの板状部材62とし、この上に光学法で多用されるポリスチレン樹脂からなる円筒部材64を載置して、図11に示す形状の試験容器60を夫々作製し、以下の手順に従って抗原(バイオ物質)の板状部材62への吸着性を測定し、この吸着性から親水性を評価した。なお照射時間以外の各条件は実験1に準ずる。また各樹脂および使用した各測定機器並びに吸光度の測定方法は下記する。更に図12〜図15は、夫々測定例4−3:アクリル樹脂に係る未処理(エキシマ光照射なし)、測定例4−3:アクリル樹脂に係る照射30秒処理後、測定例4−4:ポリプロピレン樹脂に係る未処理(エキシマ光照射なし)および測定例4−4:ポリプロピレン樹脂に係る照射30秒処理後のIRスペクトルチャートである。
(使用した樹脂)
・測定例4−1:COP(商品名 ZEONEX 480R:日本ゼオン製)
・測定例4−2:COC(商品名 TOPAS 6013S:ポリプラスチックス製)
・測定例4−3:アクリル樹脂(商品名 コモグラス:クラレ製)
・測定例4−4:ポリプロピレン樹脂(商品名 グランドポリプロJ227TPP:グランドポリマー製)
(使用した測定機器)
・接触角計(商品名 Face接触角計Model CA−DT:協和界面科学製)
・吸光度計:マイクロプレートリーダー(商品名 Soft MAX Pro:日本モレキュラーデバイス製)
(吸光度の測定方法)
(1)予め試験前のセル(円筒部材64内に画成される空間)の吸光度を測定しブランク値を求める。
(2)10mg/mLの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、WSCと云う)を、PBS、PH5.8(以下、PBS5.8と云う)10mLに溶解させて調製する。
(3)(2)で調整したWSC溶液100μLをセル内に入れ、温度37℃、時間2時間の条件で放置する。
(4)未反応のWSCを250μLのPBS5.8で3回洗浄する。
(5)100μg/mLのビオチンヒドラジドをPBS5.8に溶解して調製する。
(6)セル内にビオチンヒドラジド溶液を100μL分注し、プレートシールして温度37℃、時間2時間の条件で放置して反応を進行させ、未反応分を捨てる。
(7)セル内を250μLのPBS(pH7.4)に界面活性剤(商品名 Tween20:atlas powders製)を0.05%混合した溶液(以下、tPBSと云う)で3回洗浄する。
(8)PBS(pH7.4)で4倍に希釈したブロッキング材(商品名 ブロックエース(大日本製薬製)に、界面活性剤(商品名 Tween20:atlas powders製)を0.05%混合した溶液250μLを入れ、温度37℃、時間1時間の条件で放置する。
(9)250μLのtPBSで3回洗浄する。
(10)tPBSで5000倍に希釈した 西洋わさびペルオキシナーゼ結合ストレプトアビジン(以下、HRPと云う(商品名 P0397:DAKO製))を200μL入れ、温度37℃、時間1時間の条件で放置する。
(11)250μLのtPBSで3回洗浄する。
(12)発色基質液ABTSのA溶液とB溶液とを等量混合し、室温下に放置して液温を室温としておく。
(13)セル内に発色基質液ABTS等量混合溶液を100μL入れて混合する。
(14)温度37℃、時間1時間の条件で放置し、反応停止液を100μL加える。
(15)30分以内に、405nmの吸光度を、上記した吸光度計で計測して反応性を評価する。なおここで測定した吸光度405nmは、HRPと結合した発色基質液ABTSを測定するものである。
Figure 0004514675
(実験4の結果)
得られた接触角を上記の表4に示す。この結果から、シクロオレフィン系樹脂に対して60秒程度のエキシマ光照射を実施することで、アクリル樹脂と同等の接触角とし得ることが確認された。すなわちアルカン系物質であるシクロオレフィン系樹脂は、化学構造的に疎水性が高く、従って親水性が小さいため、前述した如く、実際の抗原等の測定に実績のあるアクリル樹脂製の診断用容器の代替素材としては使用が困難であったが、本発明に係る処理を実施することで、これが可能となることが確認された。また照射時間を長くすることで水に対する接触角は更に低下して、親水性が増すことも併せて確認された。
また測定例4−3:アクリル樹脂および測定例4−4:ポリプロピレン樹脂に係るIRスペクトルチャートから、キセノンエキシマランプの使用による172nmの真空紫外光によって、シクロオレフィン系樹脂以外の樹脂にも容易にカルボキシル基を生成し得ることが確認された。
(実験5) 実験1〜4で測定されたエキシマ光処理(照射)時間、吸光度比、カルボキシル基量および接触角の相互関係について
実験1〜4で得られたエキシマ光処理(照射)時間、吸光度比、カルボキシル基量および接触角について、図16にエキシマ光処理(照射)時間と吸光度比との関係を、図17にエキシマ光処理(照射)時間とカルボキシル基量との関係を、図18に吸光度比とカルボキシル基量との関係を、図19にカルボキシル基量と接触角との関係を夫々グラフとして纏めた。
(実験5の結果)
各グラフ図を纏めた結果、図16よりエキシマ光照射時間とIR測定法で計測したカルボキシル基量との間には、明確な相関関係があることが見出され、更に図17よりエキシマ光照射時間とカルボキシル基量との間にも明確な相関関係が確認された。また図18より吸光度比とカルボキシル基量とにも比例関係があることが確認され、図19のカルボキシル基量と接触角との間にも比例関係が確認された。ここからエキシマ光照射による診断用容器表面のカルボキシル基の生成量の確認・測定に、測定が容易な接触角やIR測定法で、手順が煩雑な化学定量法の代用が可能であるとことが判明した。
(実験6) 本発明に係る処理の時間と親水性とについて(2)
上述の実験1でなされた本発明に係る処理(実験1と同じ光源を使用したエキシマ光照射)を、上市されている複数の樹脂製品から選択されたポリエチレンテレフタレート樹脂(商品名 NEH−2050:ユニチカ製(測定例6−1および6−2))およびポリカーボネート樹脂(商品名 タフロンA1900:出光石化製(測定例6−3および6−4))を用いて、図20に示すような4個の逆円錐台形状の容器内表面(図5(a)左側参照;内容積350μL)を矩形樹脂平面上に備える測定例6−1〜6−4に係る診断用容器を作製し、これに対して(容器底面に対して垂直となるように)、下記の表5に示した時間実施した後、吸光度を測定し、容器底面および診断用容器最上面(計測値を安定させるため、診断用容器最上面と同一高さ(5mm)の位置に同素材の樹脂板を載置して同様の紫外光処理を施し、その接触角を使用)の水に対する接触角を測定した。ここで吸光度および親水性の測定は、前述の実験4と同様の手順および装置で実施した。なお処理に係る照射時間および処理対象物(診断用容器)の移動速度(本実験6では17.5cm/秒)以外の各条件は実験1に準じる。また実験実施時の環境条件は気温23℃、湿度50%であった。
Figure 0004514675
なお診断用容器の移動速度(17.5cm/秒)は、前述の[非特許文献16]から以下のように算出される。すなわち本実験6において使用される診断用容器の深さは5mmであるので、光源と該診断用容器の最上面との距離を2mmとした場合、該光源と容器底面との距離は7mmになる。このように光源からの距離が7〜9mmなら、その照度は2mmの距離の照度の30%程度にまで減衰すると計算される。従って、紫外光処理に係る照射時間も距離が2mm時の3倍以上にする必要があると計算され、ここから前述の移動速度が算出された。
(実験6の結果)
この結果を上記の表5に示す。この結果から、ポリカーボネート樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂の何れもエキシマ光を照射することで、未照射の場合と比べて吸光度が高く、かつ接触角が小さくなっており、これによりエキシマ光により診断用容器の表面が活性化されて多量のカルボキシル基が生成され、ビオチンの吸着性が向上したことが確認された。また紫外光処理により、表面改質された診断用容器では、ビオチンヒドラジドの如き低分子量検体(バイオ物質)の吸着性が高いことも確認された。
(実験7) 本発明に係る処理における遮光(マスキング)の有無による時間と親水性とについて
診断用容器の材質としてシクロオレフィン系樹脂の1つであるCOP(商品名 ZEONEX480R:日本ゼオン製)を用い、下記の表6に示した処理時間および遮光条件(マスキング位置)に従って、図21に示すような2個の逆円錐台形状の容器内表面(図5(a)右側参照;内容積350μL)が矩形樹脂平面に陥設された測定例7−1〜7−4に係る診断用容器を作製し、これにに対して(容器底面に対して垂直となるように)、紫外光処理を実験6と同様に実施し、かつ同様の測定を実施した。
Figure 0004514675
(実験7の結果)
この結果を上記の表6に示す。この結果から、シクロオレフィン系樹脂はエキシマ光を照射しなければ、シクロオレフィン系樹脂自体が有する高疎水性(高接触角)により、ビオチンヒドラジドのような低分子量検体(バイオ物質)は殆ど吸着せず、反対に親水化(低接触角化)すれば吸着量が約8.5倍になることが確認された。また物理吸着(疎水性相互作用)による高分子量検体(バイオ物質)または共有結合による低分子量検体(バイオ物質)の吸着部位をを自在に制御し得ることを併せて確認した。
(実験8) SQUID・磁気マーカー測定法による測定限界について
図1(a)に示す形状の診断用容器(セル)を、アクリル樹脂を材質としてキャスト成形法および真空圧空成形法によって準備し、この容器内表面に以下説明する一般的な方法によって、ヒトIL8(抗原)を捕捉させ、これを磁気マーカーによって標識化してSQUID測定に供し、その際のヒトIL8の重さと、磁気信号との関係を観察した。
(ヒトIL8(抗原)の診断用容器への捕捉、二次抗体および磁気マーカーの付与方法)
(1)pH7.4のリン酸緩衝溶液(以下、PSBと云う)に界面活性剤(商品名 Tween20:atlas powders製)を0.05%混合した溶液(以下、tPBSと云う)を調製する。
(2)IL8モノクロナール抗体(商品名 MAB208:R&Dsystems製)の100μg/mL濃度の溶液100μLをセル内に入れ、温度4℃、時間12時間の条件で放置する。
(3)セル内から未反応抗体溶液を捨てる。
(4)ブロッキング材(商品名 ブロックエース:大日本製薬製)の0.1%tPBS溶液を作製し、セル内に200μL加えて、室温、時間1時間の条件で放置する。
(5)セル内から未反応ブロッキング剤(溶液)を捨て、tPBS溶液で3回洗い流す。
(6)所定量のヒトIL8(商品名 091−04331:WAKO製)を、pH7.4のPBS溶液に所定量溶解し、セル内に100μL分注し、プレートシール(密封)して室温、時間1時間の条件で放置して抗体(IL8モノクロナール抗体)と反応させる。
(7)セルのシールを剥がし、αIL8ポリクロナール抗体(商品名 AF208:R&D systems製)と磁気マーカーとを予め結合させた標識化抗体50μL(濃度0.1mg/mlのPBS、PH7.4)を加え、プレートシール後、30分放置し、抗原(ヒトIL8)と磁気マーカーが付与された抗体(αIL8ポリクロナール抗体)を反応させる。なお磁気マーカーの作製方法については下に記す。
(8)診断用容器に0.1Tの磁場をかけ、磁気マーカー内のフェライト粒子を磁化する。
(9)SQUID計測装置(図3参照)により、診断用容器の残留磁気を測定し、検量線を用いて抗原量を算出する。
なお上記工程(7)に記載したαIL8ポリクロナール抗体(商品名 AF208:R&D systems製)と磁気マーカーとを予め結合させた標識化抗体は[特許文献8]の記載の内容に準拠して調整した。
(磁気マーカーの作製方法)
メタノール10mLに、マイクロモノマーとしてのポリビニルピロリドン(0.004〜0.04mg範囲内の一定量)にフェライト(Fe)微粒子0.05gを加え、超音波照射し、更に攪拌を実施した後に遠心分離を行なうことによってポリビニルピロリドンを吸着したフェライト微粒子を作製し、次いでテトラヒドロフラン(THF)5mLに、N−アクロイル−L−グルタミン酸0.20g(フェライト微粒子に吸着したポリビニルピロリドンのビニル基量の100倍量)と、0〜100倍量の架橋剤トリ(アクロイルオキシ)アミン塩酸塩とを溶解させて準備溶液とし、これに粒子1g当たりに0.2gのポリビニルピロリドンを吸着したフェライト微粒子0.018gと、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)0.01gとを加え、温度35℃、時間10時間の条件で攪拌し、更に遠心分離(5回繰り返し)を実施して磁気マーカーを得た。
(実験8の結果)
SQUID・磁気マーカー測定法による測定限界についての結果を図22に示す。この図22から、SQUID・磁気マーカー測定法が目的とする数pg以下の検出限界(感度水準)を達成する磁気信号(B)の強度は20pT程度であることが確認された。
(実験9) 磁気ノイズと材質とについて
下記の測定例9−1〜9−10および参考測定例の各材質を、該材質に好適な加工法によって厚さ1.0mmの板状物とし、これを超純水中で超音波洗浄してその表面に付着している磁気汚染物質を取り除き、乾燥後、板状物とSQUIDセンサとの距離を1.5mmに保つ条件で移動させ、磁気信号の最大値と最小値との差をもって磁気ノイズ値とするSQUID測定を実施した。なお磁気信号の計測にあたっては、予め板状物に0.1Tの磁界をかけて磁化している。この結果を下記の表7に示す。
Figure 0004514675
(使用した材質)
測定例9−1:アクリル樹脂(商品名 コモグラス:クラレ製)
測定例9−2:ポリカーボネート樹脂(商品名 タフロンA1900:出光石化製)
測定例9−3:ポリアミド樹脂(商品名 UBEナイロン12 3014B:宇部興産製)
測定例9−4:ポリプロピレン樹脂(商品名 グランドポリプロJ227TPP:グランドポリマー製)
測定例9−5:ポリスチレン樹脂(商品名 GPPS HF55:PSジャパン製)
測定例9−6:ポリフッ化ビニリデン(商品名 KFポリマー:呉羽化学工業製)
測定例9−7:COP(商品名 ZEONEX 480R:日本ゼオン製)
測定例9−8:COP(商品名 ZEONEX 1060R:日本ゼオン製)
測定例9−9:COC(商品名 TOPAS 6013S:ポリプラスチックス製)
測定例9−10:COC(商品名 TOPAS 6015S:ポリプラスチックス製)
参考測定例:ガラス
(実験9の結果)
表7に記載された結果から、シクロオレフィン系樹脂およびアクリル樹脂が、素材として磁気ノイズが少なく、(A)磁気ノイズの観点からは本発明に採用し得ることが確認された。なお測定例9−1〜9−3および9−7〜9−10と、参考測定例とについては、その磁気信号のパターンを図23〜図30に示す。
(実験10) 磁気ノイズと(磁性)金属の含有量とについて
材質として、上市されている複数の樹脂製品から選択されたシクロオレフィン系樹脂2種およびアクリル樹脂1種についての測定例10−1〜10−5に係る下記の試料を、図1に示す診断用容器の形状とし、図3に示す装置50によりSQUID測定(診断用容器に磁界0.1Tをかけた場合の残留磁気量(磁気信号B(pT:センサと診断用容器との距離:1.5mm))を行なった。そして各測定例に係る診断用容器について元素分析を行ない、鉄、コバルトおよびニッケルの含有量(ppb)を調べた。この結果を下記の表8に示す。なお測定例10−4および10−5については同一の材質を用い、ここに鉄製のカッターによる切り傷を意図的に形成することで、該カッターとの接触に由来する金属を付着させた。
Figure 0004514675
(使用した材質)
測定例10−1:COP(商品名 ZEONEX 480R:日本ゼオン製)
測定例10−2:COC(商品名 TOPAS 6015S:ポリプラスチックス製)
測定例10−3〜10−5:アクリル樹脂(商品名 コモグラス:クラレ製)
(実験10の結果)
上記の表8に記載された結果から、15pT以下の磁気ノイズを達成する金属の量(含有量)は、30ppb以下であることが確認された。
(実験11) キャスト成形法、押出成形法および射出成形法で得られたシート状物の磁気ノイズ等の物性について
図1(a)に示す形状をなす厚さ0.4mmの診断用容器を、実験9の測定例9−2に係るアクリル樹脂を材質としてキャスト成形法(と真空圧空成形法)、押出成形法(と真空圧空成形法)および射出成形法によって作製し、磁気ノイズおよび厚み精度の2点を、◎:良好、○:使用に耐える、×:使用不可、で評価し、その結果を下記の表9に示す。なお磁気ノイズは、実験2と同様の方法で測定して10pT以下を◎、10〜15pTを○、15pTを超えた場合を×とし、厚さ精度については、汎用のマイクロメータにより厚さを測定して、そのばらつき(3σ)が0.05未満を◎、0.05〜0.10を○、0.10を超える場合を×として評価し、更に磁気ノイズおよび厚さ精度から総合的な評価を◎:良好、○:使用に耐える、×:使用不可で評価した。またキャスト成形法および押出成形法は、シート状物を成形する方法であり、シート状物とされたアクリル樹脂は、最終的には真空圧空成形法によって診断用容器形状に成形されている。
Figure 0004514675
(実験11の結果)
上記の表9から、キャスト成形法(と真空圧空成形法)および押出成形法(と真空圧空成形法)で診断用容器を作製した場合、磁気ノイズおよび厚み精度の双方とも良好であり、本発明に係る診断用容器の製造に好適であることが確認された。
(実験12) 本発明に係るシクロオレフィン系樹脂からなる診断用容器を使用した場合の、抗原(量(pg))と、(正味)磁気信号(量(B))との関係について
下記の表10に示す所定量としたヒトIL8(抗原)を、シクロオレフィン系樹脂から作製した本発明に係る診断用容器を使用して、測定例12−1〜12−3に係る診断用容器を準備し、これに実験8と同様の処理を実施して、SQUID・磁気マーカー測定法により抗原量を算出した。なお磁気信号測定条件は、以下の通りである。
・診断用容器の容器底部の厚さ0.4mm
・診断用容器の回転ブレ0.1mm
・SQUIDセンサと容器底面との距離Dは1.5mm
・SQUID計測装置本体からの磁気ノイズは10pT
Figure 0004514675
(実験12の結果)
結果を上の表10に記し、更に夫々のその磁気信号のパターンを図31〜図33に示す。この結果から、実際の抗原等の測定に対して高い感度水準を発現し、実用性があることが確認された。
本発明の好適な実施例に係る表面改質された診断用容器を示す(a)斜視図と、(b)標識化された二次抗体を結合させた診断用容器の断面図である。 本発明の診断用容器に好適に使用される材質であるシクロオレフィン系樹脂の原料であるノルボルネン系モノマーの化学構造を示す図である。 本発明の診断用容器によって抗原を好適に測定するSQUID・磁気マーカー測定法に使用されるSQUID測定装置の一例を示す概略図である。 紫外光の遮光によるマスキングによって、共有結合性領域および疎水性領域の双方を併存させる診断用容器を概略的に示す断面図である。 本発明に係る診断用容器として好適に使用し得る形状を例示した概略図である。 紫外光処理の光源として、エキシマランプを使用した場合に、その容器表面に傾斜的にカルボキシル基および/またはカルボニル基が生成した診断用容器を概略的に示す断面図である。 実験1の本発明に係る処理の時間と生成するカルボキシル基の量との関係を示す基準例に係るIRスペクトルチャートのパターン図である。 実験1の本発明に係る処理の時間と生成するカルボキシル基の量との関係を示す測定例1−2に係るIRスペクトルチャートのパターン図である。 実験1の本発明に係る処理の時間と生成するカルボキシル基の量との関係を示す測定例1−4に係るIRスペクトルチャートのパターン図である。 実験2の本発明に係る処理の時間と生成するカルボキシル基の量との関係を示す測定例2に係るIRスペクトルチャートのパターン図である。 実験4において本発明に係る処理を実施した樹脂の接触角(親水性:疎水性)を測定・評価する試験容器を示す概略図である。 実験4の測定例4−3におけるエキシマ光照射時間ゼロの場合に生成するカルボキシル基の量を示す基準例に係るIRスペクトルチャートのパターン図である。 実験4の測定例4−3におけるエキシマ光照射時間30秒の場合に生成するカルボキシル基の量を示す基準例に係るIRスペクトルチャートのパターン図である。 実験4の測定例4−4におけるエキシマ光照射時間ゼロの場合に生成するカルボキシル基の量を示す基準例に係るIRスペクトルチャートのパターン図である。 実験4の測定例4−4におけるエキシマ光照射時間30秒の場合に生成するカルボキシル基の量を示す基準例に係るIRスペクトルチャートのパターン図である。 実験5で纏められたエキシマ光処理(照射)時間と吸光度比との関係を示すグラフ図である。 実験5で纏められたエキシマ光処理(照射)時間とカルボキシル基量との関係を示すグラフ図である。 実験5で纏められた吸光度比とカルボキシル基量との関係を示すグラフ図である。 実験5で纏められたカルボキシル基量と接触角との関係を示すグラフ図である。 実験6で使用される診断用容器を示す概略図である。 実験7で使用される診断用容器を示す概略図である。 実験8に係るSQUID・磁気マーカー測定法によるヒトIgEの重さと磁気信号との関係で、その測定限界の一例を示すグラフ図である。 実験9の磁気ノイズと材質との関係を示す測定例9−1に係る磁気信号のパターン図である。 実験9の磁気ノイズと材質との関係を示す測定例9−2に係る磁気信号のパターン図である。 実験9の磁気ノイズと材質との関係を示す測定例9−3に係る磁気信号のパターン図である。 実験9の磁気ノイズと材質との関係を示す測定例9−7に係る磁気信号のパターン図である。 実験9の磁気ノイズと材質との関係を示す測定例9−8に係る磁気信号のパターン図である。 実験9の磁気ノイズと材質との関係を示す測定例9−9に係る磁気信号のパターン図である。 実験9の磁気ノイズと材質との関係を示す測定例9−10に係る磁気信号のパターン図である。 実験9の磁気ノイズと材質との関係を示す参考測定例に係る磁気信号のパターン図である。 実験12の抗原量と磁気信号との関係を示す測定例12−1に係る磁気信号のパターン図である。 実験12の抗原量と磁気信号との関係を示す測定例12−2に係る磁気信号のパターン図である。 実験12の抗原量と磁気信号との関係を示す測定例12−3に係る磁気信号のパターン図である。 従来技術に係る診断用容器の一例を示す概略斜視図である。 従来技術に係る診断用容器に遮光をなすマスキングを施した様子を示す状態図である。
符号の説明
20 診断用容器、22 容器内表面、22a 容器底面、22b 容器側部領域
ab1 一次抗体、ab2 二次抗体、ag 抗原、CA 共有結合性領域
HA 疎水性領域、S 試料

Claims (9)

  1. 固相化された一次抗体(ab1)に抗原(ag)を捕捉させ、更に標識マーカー(M)によって標識化された二次抗体(ab2)を該抗原(ag)に捕捉させることで、該抗原(ag)を定量化する各種免疫測定法に使用される有機系材料からなる診断用容器(20)において、
    前記有機系材料として、シクロオレフィン系樹脂を使用し、
    その波長が100〜300nmの範囲にある紫外光を所要時間照射することで、前記診断用容器(20)における少なくとも容器内表面(22)の所要領域は、有機系材料の炭素に関わる結合が切断され、当該切断箇所が酸素と結合して生成したカルボキシル基および/またはカルボニル基で覆われている
    ことを特徴とする診断用容器。
  2. 前記紫外光が照射される所要領域に任意のパターンを施して遮光することで、該パターンによって遮光された部位に形成される疎水性領域(HA)と、それ以外の部位に形成され、前記カルボキシル基および/またはカルボニル基で覆われた共有結合性領域(CA)とが併存した状態となっている請求項1記載の診断用容器。
  3. 前記容器内表面(22)をなす容器側部領域(22b)は、照射される前記紫外光を受けるように形成されている請求項1または2記載の診断用容器。
  4. 前記紫外光として、その波長が100〜200nmの範囲にある真空紫外光が使用される請求項1〜の何れか一項に記載の診断用容器。
  5. 前記真空紫外光として、特定波長だけの連続的散乱発光をなすエキシマランプ光が使用される請求項記載の診断用容器。
  6. 前記真空紫外光として、特定波長だけの間欠的収束発光をなすエキシマレーザー光が使用される請求項記載の診断用容器。
  7. 前記有機系材料は、磁界0.1T、試料(S)からSQUIDセンサまでの距離1.5mm以下の条件下で磁界を印加した際の残留磁気量が15pT以下である請求項1〜の何れか一項に記載の診断用容器。
  8. 前記有機系材料は、磁性金属の含有量が30ppb以下である請求項記載の診断用容器。
  9. 前記診断用容器(20)において試料(S)が保持される容器底部領域(22a)の厚さは、0.1〜1.0mmの範囲である請求項1〜の何れか一項に記載の診断用容器。
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