JP4345902B2 - 車椅子用シートの車両搭載装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は車載を可能にした車椅子に関し、より詳細には車椅子を車台とシート部分に分離可能とし、シート部分を車載可能とした車椅子用シートの車両搭載装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自力で歩行困難な車椅子利用者が自動車等の車両に乗り込むに際しては介助者の補助が必要であり、その作業にあたっては利用者を一旦抱き上げなくてはならなかった。よって、これを行うことのできる介助者は限られ、又、多大の労力を要した。そのため、車椅子ごと車両内に搭載する試みもなされていたが、例えば電動車椅子のように多大の重量を有するものを車室内に搭載するためには、相応の動力リフターが必要となり、又、車両自体も車椅子をそのまま収容可能な大きな車室を有する例えばワゴン車などの特殊なものを要する問題を生じた。更に、この場合には構造上、車椅子を運転者等の他の搭乗者のシートと併設することができず、これらのシートと離れた場所(例えば、ワゴン車の場合ではリアーゲート付近)に設置せざるを得ず利用者に疎外感を与える問題も生じた。
【0003】
以上の問題を解消するために、車椅子の車台部分に対しシート部分を着脱自在とし、このシート部分のみを車両に搭載する発明が従来公知であった(例えば、特開平5−85239、特開平10−258084、特開昭55−8796、実公平3−175、特公平4−67458、特公平4−67459、特公平4−67460等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の何れの発明においても車台部分に対しシート部分を着脱自在とし、このシート部分のみを車両に搭載する機構が複雑であった。又、車椅子に対してシートを固定するための任意操作によるロック装置については考慮されていても、操作ミスや故障などの何らかの理由によりロックが外れ車椅子からシート部分が脱落してしまう事故についての安全対策については考慮されていなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は以上の従来技術の問題転に鑑みて創作されたものであり、簡易な機構及び操作によりシート部分の車椅子及び車両への着脱を可能にすると共に、シート部分の脱落事故を完全に防止した車椅子用シートの車両搭載装置を提供することを目的とする。
【0006】
即ち、この発明の車両搭載装置は車台部分に対しシート部分を着脱自在とした車椅子と、シート部分を着脱自在とした車両上のシートレールからなる車椅子用シートの車両搭載装置にして、車両上のシートレールと同様な走行面を有する車台上のシートレールと、これらのシートレール上を走行可能なシート底部の走行部材を備え、車両上のシートレールはその端部が車室内より車室外に変位自在とすると共に、車台上のシートレールはその地上高を可変する機構を有することによりその端部を車室外に変位した車両上のシートレールと突き合わせ可能とし、両者には突き合わせ状態の固定及び解除を行うロック手段を設けると共に、それぞれのシートレール上にシートが位置する際にシートレールに対しシートの固定及び固定解除を行うロック手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
又、それぞれのシートレール上にシートが位置する際にシートレールに対しシートの固定及び固定解除を行うロック手段に関し、車両上のシートレール及び車台上のシートレールに対しシートを定位置で固定するロック手段を設けると共に、走行部材の端部に下記(イ)の構成よりなる脱落防止手段を設けた発明も開示する。
(イ)先端にシートレール上を転動すべき車輪を設けると共に中途に下方突出部を設けたレバー部材を走行部材の端部に上下揺動自在に設け、シートレール端には上記のレバー部材の車輪がシートレール端を過ぎて下方に落下した際に中途の下方突出部先端が落ち込む孔を設けた構成よりなる脱落防止手段。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。図9はこの発明の車両搭載装置の全体を示す図である。この発明の車両搭載装置は車椅子Hと自動車等の車両C側に設けられる車両上のシートレール32の組み合わせにより構成される。
【0009】
車椅子9はタイヤ2を有する車台1とこの車台に対して着脱自在に設けられるシートSから構成される。そして、この発明においてはシートSの底部に設けた走行部材20を車台1上のシートレール10に対して走行自在とすることにより着脱手段としている。尚、シートSは車両用のシートと同等のクッション、ヘッドレスト、強度を持ったものを採用している。
【0010】
車台上のシートレール10は車台の左右に一対配されるものであり、利用者により任意の高さに調節される複数個の昇降部材3を介して車台1上に載置される。このシートレール10は後記するシートSの走行部材20がその前後の車輪21、22をもって走行可能とするために、下方に走行面10Aを有すると共に、これらの車輪が上方向に離脱しないように上方に庇状の規制面10Bを有する断面横向きコ字状をなし、走行部材が端部より離脱できるように少なくとも一端が開放された構成よりなる(特に図2参照)。
【0011】
走行部材20は上記の一対のシートレール10の間隔に対応してシートSの底部に一対垂設されるものであり、前後にはシートレール上を走行するための車輪21、22が設けられる(図4、11参照)。
【0012】
一方、車両C上のシートレール32はシートSの走行部材20が走行可能なように、前記の車台上のシートレール10と同様の形状のものが同様の間隔をもって車両C上に一対配される。この発明においては、車両C上のシートレール32はそこに装着されたシートSを車室内において他のシートと同列に配置可能とするために通常は車室内の定位置に位置し、シートの着脱時にその端部が車室外に変位する構成としている。この実施例においては車両C上のシートレール32をベース部材30上に固定すると共に、このベース部材を車両Cの車室内の床面に対して回動自在とし、この場合、ベース部材の回動の中心31を車室の外側方向にして、前後端に偏心させることにより、車両上のシートレールの端部を車室内より車室外に変位自在とする手段としている(図12乃至14参照)。尚、図示しないがこの場合、ベース部材30には車両に対する所定位置において固定されるための固定手段が設けられる。又、この車両上のシートレールは助手席、後部座席、運転席のどこに取り付けてもよく、この実施例では後部座席の右側に取り付けたものを想定している。
【0013】
以上の構成から明らかなように、図9乃至14に示すようにこの発明においては車台1上のシートレール10と車両C上のシートレール32はその端部同士を突き合わせて連結することにより、その上をシートSの走行部材20が自在に走行可能となる。そして、この場合、車台1上のシートレール10と車両C上のシートレール32を突き合わせ状態で固定するためのロック手段、何れかのシートレール上に走行部材20を固定するためのロック手段、シートレールからの走行部材の脱落を防止する手段が設けられるものであり、これらがこの発明の特徴部分となる。以下、これらの手段について順次説明する。
【0014】
図中符号12及び34は車台1上のシートレール10と車両C上のシートレール32を突き合わせ状態で固定するためのロック手段である(特に、図6乃至8参照)。このロック手段は車台1上のシートレール10の端部に設けられる開閉鉤13と車両C上のシートレール32の端部の側方に突設されるピン34から構成されるものであり、図示しないコントロールワイヤーにより操作される可動部14の揺動により開口が広狭する開閉鉤13により、シートレール10とシートレール32の突き合わせ状態においてピン34が掴持されて両シートレールは結合状態でロックされる(図8の状態)。尚、可動部14は図示しないバネにより常に閉止方向に付勢される。又、開閉鉤13は車両C上のシートレール32に、ピン34は車台1上のシートレール10に設けられてもよいことは勿論である。このロック手段のその余の作用の詳細は後記する。
【0015】
図中符号29及び11、33は車台1上のシートレール10と車両C上のシートレール32の何れかにシートSの走行部材20を固定するためのロック手段である(特に、図1乃至4、10乃至14参照)。このロック手段はシートSの走行部材20の両側から進退する一対のピン29と、走行部材のシートレールに対する固定位置においてこのピンが貫通すべき、車台1上の一対のシートレール10の側面に設けられた孔11及び同じく車両C上のシートレール32の側面に設けられた孔33から構成されるものであり、ピン29を何れかのシートレールの孔に挿入することによりシートはシートレールに対して固定される。尚、この実施例においてはピン29は走行部材20の側面に貫通したスリーブ28内に進退自在に収容されると共にバネ29Aにより進出方向に付勢され、更にコントロールワイヤー31により退出方向に引き寄せられる構成としている。このロック手段のその余の作用の詳細は後記する。
【0016】
図中符号23及び15A、15B、35は車台1上のシートレール10又は車両C上のシートレール32からのシートSの走行部材20の脱落を防止する手段である(特に、図1乃至5参照)。この脱落防止手段は先端にシートレール10又は32上を転動すべき車輪25を設けると共に中途に下方突出部26を設けたレバー部材23を走行部材20の端部に上下揺動自在に設け、シートレール端には上記のレバー部材の車輪がシートレール端を過ぎて下方に落下した際に中途の下方突出部先端が落ち込む孔15A、15B、35を設けた構成よりなる。この揺動部材23は軸24により走行部材20の側面端部に揺動自在に設けられると共に、バネ27により先端の車輪25がシートレール10又は32の走行面10A又は32Aに当接するように付勢される。そして、この揺動部材23はシートSの一対の走行部材20の一方の後方(図10におけるA方向)と他方の前方(図10におけるB方向)に設けられ、これに対応して車台1上の一対のシートレール10の一方の後方に孔15Aが、同じく他方の前方に孔15Bが、車両C上の一対のシートレール32の一方の前方に孔35が設けられる。この脱落防止手段のその余の作用の詳細は後記する。
【0017】
以上の構成よりなるこの発明の車両搭載装置の使用方法及び作用は次の通りである。
▲1▼車椅子使用時には、シートSはその走行部材20が車椅子Hの車台1上のシートレール10に装着されると共に、走行部材のピン29がシートレールの孔11に挿通されてロック状態を保っている(図1、2、6、9、10、12の状態)。
▲2▼シートSを車両C上のシートレール32に装着するには、先ず車両C上のベース部材30を回動してその上に設けられたシートレールの端部を車室内より車室外に変位させる(図12参照)。次いで、図示しない操作部材により昇降部材3を昇降させることにより車椅子Hの車台1上のシートレール10の高さを車両C上のシートレール32のそれと一致させる。
▲3▼上記の作業が完了した時点で、車椅子Hのタイヤ2の図示しないブレーキを解除して、車椅子を移動させることにより車台1上のシートレール10の端部を車両C上のシートレール32の端部に突き当てる。この場合、先ず、車両C上のシートレール32の側方に突出したピン34が、車台1上のシートレール10の端部の開閉鉤13の開口に位置すると共にそこに設けられた可動部14を押し拡げて内部に進入し(図7の状態)、進入後は可動部14を開放しない限り引き抜き不能となり(図8の状態)、両シートレールは結合状態でロックされる。又、この場合、車椅子Hのタイヤ2のブレーキが再び作動して、車椅子自体の移動も禁止される。
▲4▼上記の作業が完了した時点で、シートSの走行部材のピン29を図示しない操作部材によりシートレールの孔11から退出させることによりロック状態を解除し、シートSを車台1上のシートレール10から車両C上のシートレール32に向かって手で押す等の手段により走行させる(図3、4、8、11、13の状態)。
▲5▼シートSが車両C上のシートレール32上に完全に移動した時点で、走行部材のピン29をシートレールの孔33に挿通してロックする。
▲6▼上記の作業が完了した時点で、車椅子Hのタイヤ2のブレーキを解除すると共に、シートレール10の端部の開閉鉤13の開口に位置する可動部14を開放して、車台1上のシートレール10の端部を車両C上のシートレール32の端部より引き離す。次いで、車両C上のベース部材30を回動してその上に設けられたシートレールの端部を車室外より車室内の定位置に変位させる(図14参照)。
▲7▼シートSを車両Cから車椅子Hに戻すには以上と逆の操作を行えばよい。
【0018】
以上の過程において、仮に車台1上のシートレール10と車両C上のシートレール32が結合していない状態で、シートSの走行部材20のロックが解除された場合は、図5に示すように脱落防止手段が作用することとなる。即ち、走行部材20の端部がシートレール端より外に離脱しようとした時点でその端部に設けられたレバー部材23の先端の車輪25が走行面を失って前方に落下し、その結果、その後方の下方突出部26の先端がシートレールの走行面10Aの孔15A(シートSが車台1上のシートレール10の後方から脱落しようとした場合)又は15B(同じく、前方から脱落しようとした場合)、又はシートレールの走行面32Aの孔35(同じく、車両C上のシートレール32の前方から脱落しようとした場合)に落ち込んで、走行部材20がシートレールにロックされることとなる。尚、この実施例においてはシートSが車両C上のシートレール32の後方から脱落する場面は想定し得ないので、それに対応した脱落防止手段は設けていない。
【0019】
【発明の効果】
以上の構成よりなるこの発明の車椅子用シートの車両搭載装置は次の特有の効果を奏する。
▲1▼車台上のシートレールと車両上のシートレールを突き合わせて連結して、その上をシートを走行させることにより、シートを車両に搭載するので、構造が極めて簡素であり、又、動力リフターを要さずとも人力により利用者をシートに載せたまま車両に乗降させることが可能となる。
▲2▼車両用のシートと同等のクッション、ヘッドレスト、強度を持ったシートを車椅子と車両の間で装着可能としているので、従来技術のように車椅子をそのまま車両に搭載した場合に比し、衝突事故時の安全性が高く、又、乗り心地も良い。
▲3▼実施例において詳述したように、車台上のシートレールと車両上のシートレールを突き合わせ状態で固定するためのロック手段、何れかのシートレール上に走行部材を固定するためのロック手段、シートレールからの走行部材の脱落を防止する手段の三重の安全装置を備えているので、事故が皆無の車両搭載装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールと車両上のシートレール部分の要部を内側から観察した一部切り欠き側面図。
【図2】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールの要部を内側から観察した斜視図。
【図3】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールと車両上のシートレール部分の要部を内側から観察した一部切り欠き側面図。
【図4】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールと車両上のシートレール部分の要部を内側から観察した一部切り欠き側面図。
【図5】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールの要部を内側から観察した一部切り欠き側面図。
【図6】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールと車両上のシートレール部分の要部を外側から観察した一部切り欠き側面図。
【図7】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールと車両上のシートレール部分の要部を外側から観察した一部切り欠き側面図。
【図8】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールと車両上のシートレール部分の要部を外側から観察した一部切り欠き側面図。
【図9】 この発明の車両搭載装置の全体の側面図。
【図10】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレール部分の一部切り欠き平面図。
【図11】 この発明の車両搭載装置の全体の側面図。
【図12】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールと車両上のシートレール部分の要部の一部切り欠き平面図。
【図13】 この発明の車両搭載装置の車台上のシートレールと車両上のシートレール部分の要部の一部切り欠き平面図。
【図14】 この発明の車両搭載装置の車両上のシートレール部分の一部切り欠き平面図。
【符号の説明】
H 車椅子
S シート
H 車両
1 車台
10 車台上のシートレール
20 走行部材
32 車両上のシートレール
Claims (3)
- 車台部分に対しシート部分を着脱自在とした車椅子と、シート部分を着脱自在とした車両上のシートレールからなる車椅子用シートの車両搭載装置にして、車両上のシートレールと同様な走行面を有する車台上のシートレールと、これらのシートレール上を走行可能なシート底部の走行部材を備え、車両上のシートレールはその端部が車室内より車室外に変位自在とすると共に、車台上のシートレールはその地上高を可変する機構を有することによりその端部を車室外に変位した車両上のシートレールと突き合わせ可能とし、両者には突き合わせ状態の固定及び解除を行うロック手段を設けると共に、それぞれのシートレール上にシートが位置する際にシートレールに対しシートの固定及び固定解除を行うロック手段を設け、さらに走行部材の端部に下記(イ)の構成よりなる脱落防止手段を設けた車椅子用シートの車両搭載装置。
(イ)先端にシートレール上を転動すべき車輪を設けると共に中途に下方突出部を設けたレバー部材を走行部材の端部に上下揺動自在に設け、シートレール端には上記のレバー部材の車輪がシートレール端を過ぎて下方に落下した際に中途の下方突出部先端が落ち込む孔を設けた構成よりなる脱落防止手段。 - 車両上のシートレール端部の側方にピンを突設すると共に、車椅子の車台上のシートレール端部にこのピンを掴持可能な開閉鉤を設け、この開閉鉤の開閉による車両上のシートレール端部と車台上のシートレール端部の突き合わせ状態の固定及び解除を行うロック手段とした請求項1記載の車椅子用シートの車両搭載装置。
- 車両上のシートレールをベース部材上に固定すると共に、このベース部材は車両の車室内の床面に対して回動自在とし、この場合、ベース部材の回動の中心を車室の外側方向にして、前後端に偏心させることにより、車両上のシートレールの端部を車室内より車室外に変位自在とする手段とした請求項1又は2に記載の車椅子用シートの車両搭載装置。
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