JP4345718B2 - 常時噛合い式スタータ - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンのリングギヤにピニオンが常時噛み合っている常時噛合い式スタータに関する。
従来、エンジンを始動するスタータでは、エンジンの始動時に発生する衝撃トルクやエンジンからの急激なトルク変動を緩和するための衝撃吸収装置を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
上記の衝撃吸収装置は、ゴム等の弾性体から成る緩衝部材を有し、この緩衝部材を介して遊星歯車減速装置に用いられるインターナルギヤ(内歯歯車)の回転を規制している。これにより、例えば、エンジン始動時に発生する衝撃トルクがインターナルギヤに加わると、緩衝部材がインターナルギヤに押されて周方向に撓む(圧縮変形)ことで、インターナルギヤの回転が許容されて衝撃トルクが吸収される。
特開2004−190647号公報
ところで、スタータのピニオンがエンジンのリングギヤに常時噛み合っている常時噛合い式スタータでは、例えば、エンジン始動時にエンジンが逆転した時、あるいは車両自体の慣性が加わるエンスト時等に非常に大きな衝撃トルクが作用する。
しかし、従来の衝撃吸収装置は、スタータ自体を保護することが目的であり、また、エンジン始動後は、ピニオンがリングギヤから離脱するため、エンスト時等に発生する過大な衝撃トルクに対して、エンジン側の部品(例えば、リングギヤに内蔵されるクラッチ)を保護するだけの衝撃吸収能力を有しておらず、その必要もなかった。
これに対し、衝撃緩衝装置の衝撃吸収能力は、緩衝部材の撓みバネ定数によって左右されるため、全圧縮時のトルクを下げずに、緩衝部材の撓み代を十分に確保できれば、バネ定数を下げることにより、衝撃吸収能力を向上できる。ところが、特許文献1に記載された従来の構成では、緩衝部材を配置するスペースに制限があるため、緩衝部材の全圧縮時のトルクを確保しつつ、バネ定数を下げることは、極めて困難である。従って、従来の衝撃吸収装置だけでは、エンジンの乗り越しトルクより過大な衝撃トルクを吸収することは困難であり、エンジン側の部品を保護することもできない。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、衝撃吸収能力を大幅に向上させると共に、一定以上の過大な衝撃トルクをカットできる常時噛合い式スタータを提供することにある。
(請求項1の発明)
本発明の常時噛合い式スタータは、減速装置よりピニオン側に設けられ、トルク伝達時に生じる衝撃を吸収する衝撃吸収装置と、この衝撃吸収装置よりモータ側に設けられ、設定トルク以上の過大トルクが加わった時に、内蔵する回転ディスクがスリップすることにより、過大トルクの伝達を遮断するトルクリミッタとを備え、衝撃吸収装置は、衝撃が加わると回転方向に撓む緩衝部材を有し、この緩衝部材がトルクの伝達経路に直列に複数段配置されており、全ての緩衝部材が撓むことによって吸収できる最大トルクが、エンジンのクランキング時に発生する最大クランキングトルクより大きく、且つトルクリミッタの設定トルクより小さく設定され、トルクリミッタは、設定トルクがエンジンの乗り越しトルクより大きく設定されていることを特徴とするスタータ。
上記の構成によれば、緩衝部材がトルクの伝達経路に直列に複数段配置されるので、従来の衝撃吸収装置(緩衝部材が一段)と比較して、全圧縮時のトルクを下げずに、衝撃吸収装置全体のバネ定数を下げることができる。その結果、従来の衝撃吸収装置より高い衝撃吸収能力を得ることができると共に、衝撃吸収能力の向上に伴って、クランキング時に発生するピニオンとリングギヤとの歯打ち音を低減できるので、クランキング時の静音性を向上できる。
更に、エンジンの乗り越しトルクより過大な衝撃トルクは、トルクリミッタによりカットされる。この様に、衝撃吸収能力の向上と過大な衝撃のカットを実施することにより、過大な衝撃からスタータ自体を保護できるだけでなく、エンジン側の部品(例えば、リングギヤに内蔵されるクラッチ)を保護することもできる。
(請求項2の発明)
本発明の常時噛合い式スタータは、減速装置よりピニオン側に設けられ、トルク伝達時に生じる衝撃を吸収する衝撃吸収装置と、この衝撃吸収装置よりモータ側に設けられ、設定トルク以上の過大トルクが加わった時に、内蔵する回転ディスクがスリップすることにより、過大トルクの伝達を遮断するトルクリミッタとを備え、衝撃吸収装置は、衝撃が加わると回転方向に撓む緩衝部材を有し、この緩衝部材がトルクの伝達経路に直列に複数段配置されており、全ての緩衝部材が撓むことによって吸収できる最大トルクが、モータの最大出力時に発生するトルクより大きく、且つロックトルク以下に設定され、トルクリミッタは、設定トルクがエンジンの乗り越しトルクより大きく設定されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、緩衝部材がトルクの伝達経路に直列に複数段配置されるので、従来の衝撃吸収装置(緩衝部材が一段)と比較して、衝撃吸収装置全体のバネ定数を下げることができる。その結果、従来の衝撃吸収装置より高い衝撃吸収能力を得ることができると共に、衝撃吸収能力の向上に伴って、クランキング時に発生するピニオンとリングギヤとの歯打ち音を低減できるので、クランキング時の静音性を向上できる。
更に、エンジンの乗り越しトルクより過大な衝撃トルクは、トルクリミッタによりカットされる。この様に、衝撃吸収能力の向上と過大な衝撃のカットを実施することにより、過大な衝撃からスタータ自体を保護できるだけでなく、エンジン側の部品(例えば、リングギヤに内蔵されるクラッチ)を保護することもできる。
(請求項3の発明)
請求項1または2に記載した常時噛合い式スタータにおいて、衝撃吸収装置は、減速装置と出力軸との間、あるいは出力軸とピニオンとの間に配置されていることを特徴とする。本発明の衝撃吸収装置は、緩衝部材がトルクの伝達経路に直列に複数段配置されるので、径方向に体格が増大することはない。このため、減速装置と出力軸との間、あるいは出力軸とピニオンとの間に衝撃吸収装置をコンパクトに配置できる。
(請求項4の発明)
請求項1〜3に記載した何れかの常時噛合い式スタータにおいて、衝撃吸収装置は、緩衝部材が合成ゴムであり、その合成ゴムの最大圧縮率が50%以下で使用されることを特徴とする。
合成ゴムの一般的な最大圧縮率は、耐久性を考慮して通常20〜30%であるが、スタータの衝撃吸収装置に用いた場合、実際に使用される時間が極めて短時間であるため、最大圧縮率が50%以下であれば、緩衝部材(合成ゴム)の信頼性を維持できる。
(請求項5の発明)
請求項1〜4に記載した何れかの常時噛合い式スタータにおいて、減速装置は、電機子軸に設けられる太陽歯車と、この太陽歯車と同心に配置されて回転可能に設けられた内歯歯車と、両歯車に噛み合う遊星歯車とで構成される遊星歯車減速装置であり、内歯歯車がトルクリミッタを介して回転規制されていることを特徴とする。
これにより、トルクリミッタの設定トルクを超える過大トルクが減速装置に作用すると、トルクリミッタに内蔵された回転ディスクがスリップすることにより、減速装置の内歯歯車の回転が許容されて、過大トルクの伝達が遮断される。
(請求項6の発明)
請求項1〜5に記載した何れかの常時噛合い式スタータは、エンジンの停止および再始動を自動制御するエンジン自動停止/再始動システムに用いられることを特徴とする。
エンジン自動停止/再始動システムを搭載する車両は、同システムを搭載していない車両と比較して、エンジンの始動回数、つまりスタータの始動回数が大幅に増加し、エンジンを再始動する度にピニオンとリングギヤとの歯打ち音が発生する。
これに対し、本発明の常時噛合い式スタータは、衝撃吸収能力の向上によってクランキング時の歯打ち音を低減できるので、始動回数の多いエンジン自動停止/再始動システムに用いることが好適であり、乗員に与える不快感を低減または解消できる。
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
図1は常時噛合い式スタータ1の要部断面を含む側面図である。
実施例1に示すスタータ1は、アイドルストップシステムに適用される。
アイドルストップシステムは、例えば、車両が交差点で信号ストップあるいは渋滞等で停車した時に、エンジン2(図2参照)を自動停止させ、その後、所定の発進操作(例えば、運転者がブレーキペダルを離した時)に応答して、エンジン2を自動的に再始動させる周知のエンジン自動停止/再始動システムであり、図2に示すアイドルストップ用のECU3によって制御される。
上記のスタータ1は、電機子軸4に回転力を発生するモータ5と、このモータ5の通電回路に設けられるメイン接点6(図2参照)を開閉する電磁スイッチ7と、電機子軸4の回転を減速する減速装置8と、この減速装置8を介して電機子軸4に連結される出力軸9と、この出力軸9に支持され、エンジン2のリングギヤ10に常時噛み合わされたピニオン11と、過大トルクの伝達を遮断するトルクリミッタ12と、エンジン始動時等に生じる衝撃トルクを緩和する衝撃吸収装置13等より構成される。
モータ5は、ヨークの内周に永久磁石(界磁コイルでも良い)を配置して構成される界磁と、この界磁の内側に回転自在に配置される電機子(図示せず)とを備え、界磁に発生する電磁力によって電機子に回転力を発生する周知の直流電動機である。
電磁スイッチ7は、図2に示す様に、スタータリレー14を介してバッテリ15から通電されるソレノイド7aを内蔵し、このソレノイド7aへの通電によって発生する電磁力を利用してメイン接点6を開閉する。なお、スタータリレー14は、最初のエンジン始動を行う時に、運転者が始動スイッチ16(図2参照)をST位置に投入することで、リレーコイル14aに通電されて閉作動するが、エンジン2の再始動時には、ECU3を通じてリレーコイル14aに通電される。
減速装置8は、モータ5の電機子軸4に形成された太陽歯車8aと、以下に記載するトルクリミッタ12を介して回転規制される内歯歯車8bと、両歯車8a、8bに噛み合う遊星歯車8cとで構成される周知の遊星歯車減速装置8であり、電機子軸4の回転速度を遊星歯車8cの公転速度まで減速する。
出力軸9は、モータ5の電機子軸4と同一軸線上に配置され、一端側が軸受17を介してフロントハウジング18に回転自在に支持され、他端側が減速装置8を介して電機子軸4に連結されている。
ピニオン11は、出力軸9の外周に軸受19を介して相対回転可能に嵌合すると共に、衝撃吸収装置13を介して出力軸9に連結されている。
トルクリミッタ12は、フロントハウジング18に回転規制されたセンタプレート20と、このセンタプレート20に摩擦力によって回転規制され、且つ減速装置8の内歯歯車に連結された回転ディスク21と、この回転ディスク21をセンタプレート20に押圧して前記摩擦力を発生させる皿ばね22等より構成される。このトルクリミッタ12は、摩擦力によって静止する回転ディスク21の静止トルク(設定トルク)を超える過大トルクが内歯歯車8bに加わると、回転ディスク21が摩擦力に抗して滑る(回転する)ことにより、内歯歯車8bの回転を許容して、過大トルクの伝達を遮断する。このトルクリミッタ12の設定トルクは、エンジン始動時の乗り越しトルクより大きく設定されている。
衝撃吸収装置13は、出力軸9の外周にピニオン11側から減速装置8側へ順に配置される4つのケース23〜26と、各ケース23〜26の間にそれぞれ挿入される緩衝部材27とで構成される。
ケース23は、ピニオン11の後端側に設けられた円筒部11aの外周にセレーション嵌合して、ピニオン11に対し相対回転不能に連結されている。
ケース26は、出力軸9の外周にセレーション嵌合する円筒ボス部26Aを有し、出力軸9に対し相対回転不能に連結されている。
ケース24とケース25は、ケース26に設けられた円筒ボス部26Aの外周に軸受を介して相対回転可能に配置されている。
緩衝部材27は、図3(a)に示す様に、ブロック状の主塊部27aと、架橋部27bを介して主塊部27aに連結された副塊部27cとを有し、耐油性の合成ゴム(例えばNBR)により一体成形されている。この緩衝部材27は、軸方向に隣合う各ケース23〜26間にそれぞれ3個ずつ挿入され、各ケース23〜26に設けられた突起部(以下に説明する)に保持されて、所定の位置に配置される。
ここで、ケース25とケース26との間に挿入される緩衝部材27の配置例を図3および図4を参照して説明する。
ケース26の前面(反減速装置側の面)には、図3(a)に示す様に、複数の突起部(第1突起部26a〜第6突起部26f)が軸方向に突出して放射状に設けられており、第6突起部26fと第1突起部26aとの間、第2突起部26bと第3突起部26cとの間、および第4突起部26dと第5突起部26eとの間にそれぞれ緩衝部材27が収容される。
一方、図3(b)に示す様に、ケース26の前面に対向するケース25の後面にも複数の突起部(第1突起部25a〜第6突起部25f)が軸方向に突出して放射状に設けられており、図4(a)に示す様に、第1突起部25a、第3突起部25c、および第5突起部25eが、それぞれ緩衝部材27の主塊部27aと副塊部27cとの間に挿入される。また、ケース25の第2突起部25bは、ケース26の第1突起部26aと第2突起部26bとの間に挿入され、ケース25の第4突起部25dは、ケース26の第3突起部26cと第4突起部26dとの間に挿入され、ケース25の第6突起部25fは、ケース26の第5突起部26eと第6突起部26fとの間に挿入される。
図4(a)に示すセット状態からケース25に衝撃トルクが作用すると、図4(b)に示す様に、ケース25がケース26に対して図示反時計方向(矢印方向)へ回転する。この時、ケース26の第6突起部26fとケース25の第1突起部25aとの間、ケース26の第2突起部26bとケース25の第3突起部25cとの間、およびケース26の第4突起部26dとケース25の第5突起部25eとの間で、それぞれ緩衝部材27の主塊部27aが圧縮されることにより、衝撃が緩和される。
また、ケース25とケース26との相対回転角が所定値に達すると、言い換えると、緩衝部材27(主塊部27a)の圧縮率が所定値に達すると、図4(b)に示す様に、ケース25の第2突起部25b、第4突起部25d、および第6突起部25fが、それぞれケース26の第1突起部26a、第3突起部26c、および第5突起部26eに当接することで、それ以上の相対回転が阻止される。
なお、緩衝部材27は、ケース25とケース26との相対回転が阻止された状態、つまり、ケース25の第2突起部25b、第4突起部25d、および第6突起部25fが、それぞれケース26の第1突起部26a、第3突起部26c、および第5突起部26eに当接するまで相対回転した状態で、合成ゴムの圧縮率が50%以下に設定されている。言い換えると、50%を超えて圧縮されることはない。
その後、ケース25に作用していたトルクが解放されると、それまで圧縮されていた緩衝部材27(主塊部27a)の反力により、図4(b)に示す状態から、ケース25が逆回転(図示反矢印方向に回転)して、図4(a)に示すセット状態へ復帰する。
上記の構成(緩衝部材27の配置)および動作は、ケース25とケース24との間、およびケース24とケース23との間でも同じである。従って、ピニオン11に連結されるケース23と出力軸9に連結されるケース26との間には、ケース26とケース25との間に許容される相対回転角と、ケース25とケース24との間に許容される相対回転角と、ケース24とケース23との間に許容される相対回転角とを合計した相対回転角が与えられることになる。
この衝撃吸収装置13は、全ての緩衝部材27が撓むことによって吸収できる最大トルクが、エンジン2のクランキング時に発生する最大クランキングトルクより大きく、且つトルクリミッタ12の設定トルクより小さく設定されている。
次に、上記スタータ1の作動を説明する。
スタータリレー14を介して電磁スイッチ7のソレノイド7aに通電されると、メイン接点6が閉じてモータ5に通電されるため、電磁力の作用で電機子に回転力が発生する。 電機子の回転は、減速装置8を介して出力軸9に伝達され、さらに出力軸9からピニオン11に伝達されてリングギヤ10を回転駆動する。この時、大きな慣性エネルギを持ったエンジン2を始動させるため、ピニオン11からリングギヤ10にトルクが伝達される際に衝撃トルクが発生する。この衝撃トルクは、ピニオン11と出力軸9との間に設けられた衝撃吸収装置13によって吸収される。
エンジン2の始動により、スタータリレー14が開制御されてソレノイド7aへの通電が停止すると、メイン接点6が開いてモータ5への通電が停止され、電機子の回転が停止する。なお、エンジン始動後は、例えば、リングギヤ10に内蔵される一方向クラッチ(図示せず)の働きにより、エンジン2の回転がリングギヤ10に伝達されることはなく、その結果、スタータ1がエンジン2によって回されることはない。
また、エンジン始動時にエンジン2が逆転した場合、あるいはエンストした場合等に、エンジン2の乗り越しトルクより過大な衝撃トルクが発生すると、先ず衝撃吸収装置13の緩衝部材27が所定の圧縮率まで圧縮する、つまり、ケース23とケース26との間に許容される相対回転角が最大になるまで緩衝部材27が圧縮した後、トルクリミッタ12に内蔵された回転ディスク21が滑ることにより、一定値以上の衝撃トルクがカットされる。
(実施例1の効果)
一般に、衝撃トルクの発生時における運動をモデル化すると、下記の(1)式で表すことができる。
Figure 0004345718
上記の(1)式によれば、衝撃トルクは、スタータ1とエンジン2との回転数の差に比例し、スタータ1のねじり剛性の平方根に比例し、スタータ1とエンジン2の慣性モーメントの影響を受ける。つまり、スタータ1とエンジン2との回転数の差を小さくし、スタータ1のねじり剛性を小さくし、スタータ1とエンジン2の慣性モーメントを小さくすることが、衝撃トルクの低減に繋がる。
しかし、スタータ1とエンジン2との回転数の差、及びスタータ1とエンジン2の慣性モーメントは、モータ5の立ち上がり特性や体格、ピストン及びシリンダ等のエンジン本体の構造、フライホイール及びリングギヤ10の体格等々で決定し、いずれも、スタータ1やエンジン2の構造及び性能に影響する部分であり、変更は容易ではない。
一方、スタータ1のねじり剛性は、エンジン始動に必要な剛性があれば良く、過大な衝撃トルクを緩衝するために、スタータ内部のトルク伝達経路に緩衝部材27を設けることで変更可能であり、スタータ1のモータ仕様やエンジン部品に影響を与えることはない。 これに対し、実施例1に記載したスタータ1は、トルク伝達経路に緩衝部材27を直列三段に配置した衝撃吸収装置13を備えている。このスタータ1のねじり剛性Ksは、下記の(2)式によって定義することができる。
Figure 0004345718
上記の如く、トルク伝達経路に緩衝部材27を直列三段に配置したことにより、スタータ1のねじり剛性を下げることができるため、衝撃吸収能力が大幅に向上する。その結果、エンジン始動時等に発生する衝撃トルクを大幅に低減できる。また、衝撃吸収能力の向上に伴って、クランキング時に発生するピニオン11とリングギヤ10との歯打ち音を低減でき、クランキング時の静音性を向上できる。
更に、エンジン2の乗り越しトルクより過大な衝撃トルクは、トルクリミッタ12によりカットされるので、過大な衝撃からスタータ自体を保護できるだけでなく、エンジン側の部品(例えば、リングギヤ10に内蔵されるクラッチ)を保護することもできる。
図5は緩衝部材27の最大撓みトルクとの関係を示すモータ5の特性図である。
実施例1では、衝撃吸収装置13の最大トルク(緩衝部材27が撓むことによって吸収できる最大トルク)が、エンジン2のクランキング時に発生する最大クランキングトルクより大きく、トルクリミッタ12の設定トルクより小さく設定される例を記載したが、この実施例2では、図5に示す様に、モータ5の最大出力時に発生するトルクより大きく、且つロックトルク以下に設定されている。
エンジン2のクランキング時に必要なトルクは、一般的にモータ5の最大出力時に発生するトルクより小さいため、衝撃吸収装置13の最大トルクは、モータ5の最大出力時に発生するトルクとロックトルクとの間で設定すれば良い。これにより、実質的に実施例1と同様の効果を得ることができる。すなわち、衝撃吸収能力の向上により、エンジン始動時に発生する衝撃トルクを大幅に低減でき、且つエンジン2の乗り越しトルクより過大な衝撃トルクは、トルクリミッタ12によりカットされるので、過大な衝撃からスタータ自体を保護できるだけでなく、エンジン側の部品(例えば、リングギヤ10に内蔵されるクラッチ)を保護することもできる。
(変形例)
実施例1では、衝撃吸収装置13の緩衝部材27に合成ゴムを用いているが、合成ゴム以外の弾性体(例えば、ねじりコイルバネ)を使用することもできる。
また、実施例1では、ピニオンと出力軸9との間に衝撃吸収装置13を配置しているが、出力軸9と減速装置8との間に衝撃吸収装置13を配置することもできる。
更に、実施例1では、衝撃吸収装置13の緩衝部材27をトルク伝達経路に直列三段に配置した例を記載したが、必ずしも三段に配置する必要はなく、直列二段、あるいは直列四段以上に配置することも可能である。
スタータの要部断面を含む側面図である。 スタータの電気回路図である。 (a)衝撃吸収装置の一段を構成する一方のケースの平面図、(b)他方のケースの平面図である。 (a)衝撃吸収装置のセット状態を示す平面図、(b)同装置の作動時の平面図である。 緩衝部材の最大撓みトルクとの関係を示すモータの特性図である。
符号の説明
1 常時噛合い式スタータ
4 電機子軸
5 モータ
8 減速装置(遊星歯車減速装置)
8a 太陽歯車
8b 内歯歯車
8c 遊星歯車
9 出力軸
10 リングギヤ
11 ピニオン
12 トルクリミッタ
13 衝撃吸収装置
21 回転ディスク
27 緩衝部材

Claims (6)

  1. 電機子軸に回転力を発生するモータと、
    前記電機子軸の回転を減速する減速装置と、
    この減速装置を介して前記電機子軸に連結される出力軸と、
    この出力軸に支持されると共に、エンジンのリングギヤに常時噛み合わされ、前記出力軸の回転が伝達されて前記リングギヤを駆動するピニオンと、
    前記減速装置より前記ピニオン側に設けられ、トルク伝達時に生じる衝撃を吸収する衝撃吸収装置と、
    この衝撃吸収装置より前記モータ側に設けられ、設定トルク以上の過大トルクが加わった時に、内蔵する回転ディスクがスリップすることにより、過大トルクの伝達を遮断するトルクリミッタとを備えた常時噛合い式スタータであって、
    前記衝撃吸収装置は、衝撃が加わると回転方向に撓む緩衝部材を有し、この緩衝部材がトルクの伝達経路に直列に複数段配置されており、全ての前記緩衝部材が撓むことによって吸収できる最大トルクが、前記エンジンのクランキング時に発生する最大クランキングトルクより大きく、且つ前記トルクリミッタの設定トルクより小さく設定され、
    前記トルクリミッタは、前記設定トルクが前記エンジンの乗り越しトルクより大きく設定されていることを特徴とする常時噛合い式スタータ。
  2. 電機子軸に回転力を発生するモータと、
    前記電機子軸の回転を減速する減速装置と、
    この減速装置を介して前記電機子軸に連結される出力軸と、
    この出力軸に支持されると共に、エンジンのリングギヤに常時噛み合わされ、前記出力軸の回転が伝達されて前記リングギヤを駆動するピニオンと、
    前記減速装置より前記ピニオン側に設けられ、トルク伝達時に生じる衝撃を吸収する衝撃吸収装置と、
    この衝撃吸収装置より前記モータ側に設けられ、設定トルク以上の過大トルクが加わった時に、内蔵する回転ディスクがスリップすることにより、過大トルクの伝達を遮断するトルクリミッタとを備えた常時噛合い式スタータであって、
    前記衝撃吸収装置は、衝撃が加わると回転方向に撓む緩衝部材を有し、この緩衝部材がトルクの伝達経路に直列に複数段配置されており、全ての前記緩衝部材が撓むことによって吸収できる最大トルクが、前記モータの最大出力時に発生するトルクより大きく、且つロックトルク以下に設定され、
    前記トルクリミッタは、前記設定トルクが前記エンジンの乗り越しトルクより大きく設定されていることを特徴とする常時噛合い式スタータ。
  3. 請求項1または2に記載した常時噛合い式スタータにおいて、
    前記衝撃吸収装置は、前記減速装置と前記出力軸との間、あるいは前記出力軸と前記ピニオンとの間に配置されていることを特徴とする常時噛合い式スタータ。
  4. 請求項1〜3に記載した何れかの常時噛合い式スタータにおいて、
    前記衝撃吸収装置は、前記緩衝部材が合成ゴムであり、その合成ゴムの最大圧縮率が50%以下で使用されることを特徴とする常時噛合い式スタータ。
  5. 請求項1〜4に記載した何れかの常時噛合い式スタータにおいて、
    前記減速装置は、前記電機子軸に設けられる太陽歯車と、この太陽歯車と同心に配置されて回転可能に設けられた内歯歯車と、両歯車に噛み合う遊星歯車とで構成される遊星歯車減速装置であり、前記内歯歯車が前記トルクリミッタを介して回転規制されていることを特徴とする常時噛合い式スタータ。
  6. 請求項1〜5に記載した何れかの常時噛合い式スタータは、
    エンジンの停止および再始動を自動制御するエンジン自動停止/再始動システムに用いられることを特徴とする常時噛合い式スタータ。
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