JP4345425B2 - クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素遺伝子 - Google Patents

クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素遺伝子 Download PDF

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Description

本発明は、医薬、農薬、及び強誘電性液晶などに使用される光学活性化合物またはその中間体の合成において、有用なキラルビルディングブロックと成りうる光学活性クロロヒドリン、光学活性3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、光学活性ヒドロキシカルボン酸、およびその対掌体アルキルエステルの製造において有用な生体触媒であるヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素(Hydroxy Carboxylic ester Hydrolase: EnHCHと略す)、それをコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターにより形質転換された形質転換体及びその形質転換体を用いた該酵素の製造方法に関する。更に該酵素及び該形質転換体を用いた光活性体の製造方法に関する。
光学活性化合物の製法としては、対応する光学活性出発物質から目的物へ変換する化学的合成法のほか、対応するラセミ体を光学分割剤で処理して光学活性体に分割する方法が一般的であるが、最近、微生物または酵素を用いて不斉還元や不斉加水分解反応を利用する生物学的方法により光学活性体を分離する方法が報告されている。
光学活性4−クロロ−3−ヒドロキシカルボン酸エステルの製法としては、サンタニエロ(E. Santaniello)らが、4−クロロ−3−オキソブタン酸エチルからパン酵母を用いた不斉還元法によるS体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製法を報告している(非特許文献1)。また、高橋らも、4−クロロ−3−オキソブタン酸エチルの微生物を用いた不斉還元により光学活性4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製法を報告している(特許文献1)。
酵素を用いた製法では、ピーターズら(Peters et al.)はロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)のカルボニルリダクターゼを用いた不斉還元法によりメチル3−オキソブタン酸あるいは4−クロロ−3−オキソブタン酸エチルからのS体3−ヒドロキシブタン酸メチルおよびR体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの製法を報告している(非特許文献2、3)。さらに、清水らはスポロボロマイセス・サルモニカラー(Sporoboromyces salmonicolor)AKU4429株のアルデヒドリダクターゼを用いたR体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの不斉還元法による製法を報告している(非特許文献4、5)。
しかし、これら微.生物あるいは酵素を用いる不斉還元法によるプロキラルβ−ケトエステル体からの光学活性β−ヒドロキシエステル体の生産法においては、その反応に高価なNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)あるいはNADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)等の補酵素を必要とし、さらにその酸化体から再度還元体へ変換する反応を必要とするためグルコースオキシダーゼあるいは蟻酸デヒドロゲナーゼ等の酵素を別途必要とするうえ、その反応工程が律速反応となるなどの観点から工業的製法とは言い難い。
光学活性3−ヒドロキシブタン酸エステルの製法としては、酵母(非特許文献6)やハロバクテリアハロビウム(Halobacterium halobium)(非特許文献7)などの微生物を用いたアセト酢酸エステルからの不斉還元法によるS体3−ヒドロキシブタン酸エステルの製法が知られている。しかし、この場合も反応に高価なNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)あるいはNADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)等の補酵素を必要とする。
また、上記のハロバクテリア ハロビウム(Halobacterium halobium)をラセミ体3−ヒドロキシブタン酸エステルに作用させた場合、カルボン酸エステル加水分解反応によりR体3−ヒドロキシブタン酸エステルが残存することが報告されている。しかし、立体選択的なエステル分解活性を有する微生物を用いたラセミ体3−ヒドロキシブタン酸エステルからの高光学純度のS体3−ヒドロキシブタン酸エステルの製法は知られていない。
光学活性2−ヒドロキシブタン酸エステルの製法としては、リパーゼを用いた2級アルコールのエステル交換反応による2−ヒドロキシヘキサデカン酸エステルや2−ヒドロキシテトラコサン酸エステルからの製法が知られている(非特許文献8)。しかしながら、カルボン酸エステルの加水分解反応による光学活性2−ヒドロキシブタン酸エステルの製法は知られていない。
また、光学活性乳酸の微生物あるいは酵素を利用した製法としては、乳酸菌を用いたグルコースからの発酵法(非特許文献9、10)やシュードモナス(Pseudomonas)属の微生物を用いた2−ハロプロピオン酸からの脱ハロゲン化酵素による製法(非特許文献11)が知られている。しかしながら、カルボン酸エステルを立体選択的に加水分解することによる光学活性乳酸エステルや乳酸の製法は知られていない。
また、光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸エステルの酵素を利用した製法としては、各種自然界由来のプロテアーゼ、リパーゼ(特許文献2、3)、エステラーゼ(特許文献4)を用いたラセミ体からの立体選択的加水分解による製法が知られている。しかしながら、R体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸メチルを高光学純度で得る製法はない。また高価な酵素を購入しなければならない。
このような理由で、分離した菌株を培養し、高性能な酵素を安価にかつ大量に生産し、光学活性ヒドロキシカルボン酸およびその対掌体アルキルエステルの簡便な製造に応用することが強く望まれていた。
また、該酵素の遺伝子をクローニングできれば、遺伝子工学の手法を用いて該酵素を安価で大量に製造することが可能となるので、該酵素をコードする遺伝子をクローニングすることが強く望まれていた。
このような点を解決するものとして、既に本発明者らは立体選択的エステル加水分解反応をもたらすエンテロバクター属に属する細菌であるEnterobacter sp.DS-S-75株(FERM BP−5494)を土壌より分離し、ラセミ体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルのようなクロロヒドリンに微生物菌体あるいはその菌体産生物を作用させ、立体選択的脱クロル化およびエステル加水分解反応により、S体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを光学活性3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンに変換し、残存するもう一方のR体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを同時に回収する方法を見出している(特許文献5及び6、非特許文献12)。
次いで、上記微生物菌体反応の基質特異性について研究をすすめた結果、該微生物が広くヒドロキシカルボン酸エステルを立体選択的に加水分解する性質を発見するに至った(特許文献7)。さらに、研究をすすめた結果、該菌体内から上記微生物菌体反応に関与する不斉加水分解酵素(EnHCH)の精製に成功し、これをコードするEnHCH遺伝子を取得することに成功した。
特開昭61−146191号公報 国際公開第01/92553号パンフレット 国際公開第01/92554号パンフレット 特開2002−171994号公報 特開平9−47296号公報 米国特許第5,776,766号明細書 特願平13−391726号明細書 サンタニエロら(E. Santaniello et al.)著、ジャーナル・オブ・ケミカル・リサーチ(J.Chem. Research)、1984年、p132−133 ピーターズら(J.Peters et al.)著、アプライド・マイクロバイオロジー・バイオテクノロジー(Appl. Microbiol. Biotechnol.)、1992年、第38巻、p.334−340 ゼリンスキーら(T.Zelinski et al.)著、ジャーナル・オブ・バイオテクノロジー(J.Biotechnol.)、1994年、第33巻、p.283−292 清水ら著、バイオテクノロジー・レター(Biotechnol. Lett.)、1990年、第12巻、p.593−596 清水ら著、アプライド・マイクロバイオロジー・バイオテクノロジー(Appl. Microbiol. Biotechnol.)、1990年、第56巻、p.2374−2377 ハムダニら(Hamdani et al.)著、テトラヘドロン:アシンメトリー(Tetrahedron:Asymmetery)、1991年、第2巻、p.867−870 エーラー及びゼーバッハ(Ehrler and Seebach)著、ヘルベチカ・キミカ・アクタ(Helv. Chim. Acta,)、1989年、第72巻、p.793−799 須貝ら著、有機合成化学会誌、1995年、第53巻、p.48−58 ブリン(Brin)著、 バイオケミカル・プレパレーション(Biochem. Prepn.)、1953年、第3巻、p.61 アンダーセン及びグリーブス(Andersen and Greaves)著、インダストリアル・エンジニアリング・ケミストリー(Ind. Eng. Chem.)、1942年、第34巻、p.34 左右田ら(Soda et al.)著、バイオデグラデーション(Biodegradation)、1995年、第6巻、p.223−227 鈴木ら著、エンザイム・アンド・マイクロバイアル・テクノロジー(Enzyme and Microb. Technol.)、1999年、第24巻、p.13−20
組換えDNAの手法を用いて立体識別性が向上し、微生物の触媒能力を従来と比較して飛躍的に増大することができ、光学活性体を大量生産することができるクロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素(EnHCH)及びその遺伝子を提供する。また、該遺伝子を含むベクター、形質転換体、及び該酵素を用いる光学活性体の製造方法も提供する。また、形質転換体で安定に遺伝子発現させるEnHCHのシグナルペプチドをコードする遺伝子も提供する。
本発明によれば、下記の塩基配列:
(a)配列番号1に記載の塩基配列、
(b)配列番号1に記載の塩基配列において、1から複数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であってクロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、又は
(f)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
のいずれかの塩基配列からなる遺伝子が提供される。
また、本発明によれば、下記のアミノ酸配列:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列、又は
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列
のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質が提供される。
また、本発明によれば、本発明の形質転換体を用いた休止菌体反応のための、配列番号7のアミノ酸配列からなるシグナルペプチドが提供される。
また、本発明によれば、配列番号8の塩基配列からなるシグナルペプチドをコードするDNAが提供される。
また、本発明によれば、本発明の遺伝子を含むベクターが提供される。好ましくは、ベクターは、シグナルペプチドをコードするDNAを含み、さらに好ましくは、プラスミドpKK−EnHCH1である。
また、本発明によれば、上記のベクターを含む形質転換体が提供される。好ましくは、宿主は、大腸菌であり、より好ましくは、大腸菌JM109株又はDH5α株である。
また、本発明によれば、本発明の遺伝子又はタンパク質を用いることを含む、本発明のタンパク質の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、本発明のタンパク質、形質転換体を用いた光学活性体の製造方法が提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明によれば、下記の塩基配列:
(a)配列番号1に記載の塩基配列、
(b)配列番号1に記載の塩基配列において、1から複数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(c)配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であってクロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、又は
(f)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
のいずれかの塩基配列からなる遺伝子に関する。
本明細書において「1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されている」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の数のアミノ酸が欠失、付加または置換されていることを意味する。本明細書において「1から複数個の塩基が欠失、付加または置換されている」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の数の塩基が欠失、付加または置換されていることを意味する。
本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる」とは、DNA又はRNAなどの核酸をプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られる核酸を意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY., 1989. 以後 "モレキュラークローニング第2版" と略す)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられ、相同性は、例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上である。
本明細書において、「クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素」とは、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、分子量は、75.0kDaであり、分子量37.5kDaのサブユニットのホモ二量体であり、等電点は、6.7である。
本明細書において「クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性」とは、
式〔1〕:
Figure 0004345425
(式中、R1はC1〜C4のアルキル基である。)
に示すようなラセミ体クロロヒドリンを立体選択的に脱クロルおよび加水分解して、式〔2〕:
Figure 0004345425

に示すS体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを生成し、R体クロロヒドリンを残存させる。また、下記式〔3〕:
Figure 0004345425
(式中、R1はC1〜C4のアルキル基であり、R2は、メチル基またはベンジル基であり、R2が、メチル基のときは、mが0のときnは0または1であり、mが1のときnは0である。R2がベンジル基のとき、mが0でありnは1である。)
に示すような、ラセミ体ヒドロキシカルボン酸エステルを立体選択的に加水分解して、光学活性ヒドロキシカルボン酸を生成し、その対掌体エステルを残存させる。さらに下記式〔4〕:
Figure 0004345425
(式中、R1は、C1〜C4のアルキル基である。)
に示すような、ラセミ体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸エステルを立体選択的に加水分解して、R体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸エステルを残存させる作用をいう。
また、本発明の遺伝子の取得方法は特に限定されない。本明細書中に開示した配列番号1に記載の塩基配列又は配列番号2に記載のアミノ酸配列の情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いて当該遺伝子が存在することが予測されるDNAライブラリーをスクリーニングすることにより目的の遺伝子を単離することができる。
具体的には、本発明の配列番号1に示すEnHCH遺伝子は、例えばエンテロバクター属に属する微生物DS−S−75株(FERM BP−5494)の染色体DNAから分離することができる。その遺伝子供与体からのEnHCH遺伝子をもつDNA断片の取得は、例えば精製酵素EnHCHのポリペプチド鎖の部分アミノ酸配列をもとに行なうことができる。すなわち、精製酵素をエンドペプチダーゼにより消化し、プロテインシークエンサーにより各断片のアミノ酸配列の一部を決定し、これをもとにしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用プライマーを合成する。次いでエンテロバクター属DS−S−75株の染色体DNAを鋳型としたPCRを行ない、EnHCH遺伝子の一部を増幅して、その塩基配列を明らかにする。得られたEnHCH遺伝子の部分塩基配列をプローブとして、遺伝子供与体の染色体DNAから常法により作製したDNAライブラリーよりハイブリダイゼーション法を用いて目的の遺伝子のDNA断片を得ることができる。
取得したEnHCH遺伝子のDNA塩基配列の決定法としては、例えばジデオキシシークエンス法が挙げられる。この方法には、PCRにより遺伝子を増幅する方法や核酸分解酵素により欠失させる方法などの、遺伝子工学分野で慣用される様々な手法が含まれる。これらの方法により、配列番号1で示される目的のDNA塩基配列中に全アミノ酸をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)が確認できる。
本発明のEnHCHをコードするDNAは、EnHCH活性を有するアミノ酸配列が実質的に配列番号2に示されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むことを特徴とする。ここで、EnHCH活性を有する限り、配列番号2に示したアミノ酸配列についてアミノ酸の1個又は数個の欠失、挿入、置換等があってもよい。例えば、DNAがコードするアミノ酸配列についてアミノ酸のいくつかの欠失、挿入、置換等を生じるようにDNAを改変することは、合成オリゴヌクレオチドを用いた部位特異的変異導入法などの周知の方法で適宜行うことができる。また、配列番号1に示したDNAまたは該DNAを適宜改変したDNAを鋳型にして、Mn2+イオンの存在下(通常0.5〜10mMの濃度)、または特定のヌクレオチドの濃度を低くしてPCR法を行うことによってランダムに変異が導入されたDNAを得ることができる。このようにして得られたDNAのうち、EnHCHの活性を有するタンパク質をコードするものが、本願発明に含まれることは言うまでもない。
また、本発明は、下記のアミノ酸配列:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列、又は
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質にも関する。
本明細書において、「配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有するアミノ酸配列」とは、配列番号2のアミノ酸配列との相同性は60%以上であれば特に制限はなく、例えば、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上であることを意味する。
本発明の酵素の精製方法は、特に限定されないが、通常のタンパク質の精製方法を適当に組み合わせることにより精製することができる。例えば、菌体を超音波により破砕後、硫酸アンモニウムによる塩析を行ない、沈殿の溶解物を疎水クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーを組み合わせることにより、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下SDS−PAGEと略す)で単一になるまで精製することができる。
また、本発明はEnHCHの上流に位置する配列番号7で示す25アミノ酸からなるシグナルペプチドとそれをコードする遺伝子(配列番号8で示す)を提供する。このシグナルペプチドにより、該遺伝子を導入した大腸菌の形質転換体から高いEnHCH活性を菌体培養液の状態で得ることができる。培養液を除菌すると活性はなくなり、培地中には酵素が存在しないため、過剰反応の防止や、生成物の抽出が容易である。また、場合によっては、該シグナル配列の遺伝子のみを他の有用な遺伝子に連結することができる。
さらに本発明はEnHCH活性を示すアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列を含む発現プラスミドを提供する。EnHCHの遺伝情報を担うDNA断片から必要な部分をベクターに組み込むことにより、宿主細胞に導入し形質転換体を得ることができる。このようなベクターとして好ましいのは、宿主細胞中で自律複製可能であり、さらに組換え宿主細胞のみを選別できるような適当な選択マーカーなどが付与されたものがあげられ、適当な宿主細胞内で、本発明の遺伝子を発現できるものである。さらに、このようなベクターは公知のベクター等から公知の技術を用いて業者が容易に製造し得るようなものであってもよいし、商業的に販売されているものでも良い。特に好ましいのはプラスミドpKK−223−3である。
さらに、本発明は、アミノ酸配列が実質的に配列番号2に示されているポリペプチドをコードするDNAにより形質転換された、EnHCH活性を有する酵素の産生能を有する微生物を提供する。
用いられる宿主細胞としては、得られた組換えベクターでもって形質転換され、かつ本遺伝子を発現させることができるようなものであれば特に制限なく使用することができる。このような宿主細胞としては、本発明の目的に沿って本遺伝子の発現を達成し得る限り、グラム陰性菌あるいはグラム陽性菌の区別なく、さらには、原核細胞あるいは真核細胞の区別なく、動物由来細胞であろうと植物由来細胞であろうと使用できる。
具体的に本発明で使用することのできる宿主細胞としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター属、サッカロミセス属、キサントモナス属、アセトバクター属、シュードモナス属、グルコノバクター属、アゾトバクター属、リゾビウム属、クレブシエラ属、サルモネラ属及びセラチア属から選ばれる微生物が挙げられるが、好ましくは大腸菌を用いる。特に好ましいのは、大腸菌DH5αである。DH5α(pKK−EnHCH1)は、受託番号FERM BP−08466として独立行政法人産業技術研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
形質転換体は、適当な栄養培地中で培養を行なうことにより大量に得ることができる。培養に用いられる培地は微生物の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物質等を含む通常の培地であれば何でも良い。例えば炭素源としてグルコース,フラクトース等の炭水化物、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、プロピレングリコール等のアルコール類、酢酸,クエン酸,リンゴ酸,マレイン酸,フマル酸,グルコン酸とその塩類などの有機酸、またはそれらの混合物を用いることができる。窒素源として硫酸アンモニウム,硝酸アンモニウム,リン酸アンモニウム等の無機窒素化合物および尿素,ペプトン,カゼイン,酵母エキス,肉エキス,コーンスチープリカー等の有機窒素化合物とそれらの混合物を挙げることができる。その他、無機塩としてリン酸塩,マグネシウム塩,カリウム塩,マンガン塩,鉄塩,亜鉛塩,銅塩など、更に必要に応じてビタミン類を加えてもよい。また、高酵素活性を持った形質転換菌体を得るための酵素誘導添加物として、上記培地およびペプトン培地、ブイヨン培地等の栄養培地に使用する菌株に応じて、効果的に目的のDNAを発現させるためにアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール等の抗生物質を培養液に添加してもよいし、イソプロピルβ−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG)等のプロモーターの活性化誘導剤を用いることもできる。培養は好気的条件下でpH4〜10、温度20〜60℃の任意の範囲に制御して1〜5日間培養を行えばよいが、用いる形質転換体により最適な条件で培養すると更に効果的である。
得られたEnHCH産生形質転換体の細胞から該酵素の抽出は次の方法で行うことができる。1)フレンチプレスや超音波破砕による機械的(物理的)方法、2)リゾチームなどの酵素処理方法、3)自己溶解法、4)浸透圧を利用した抽出法などの方法によって形質転換体を破壊して行うことができる。また大腸菌DH5α(pKK−EnHCH1)は細胞を破砕しなくとも、培養液の状態で高活性な酵素として利用できる。
本方法で産生される酵素は、起源のエンテロバクター属におけるEnHCHのポリペプチド配列と一致するもののみに限定されず、塩基配列変換や遺伝子変換などの遺伝子組換え手法を利用して得られるポリペプチドで、EnHCH活性を示すものと解すべきである。すなわちペプチド配列中のアミノ酸の1個又は数個が欠損したもの、あるいはそのペプチド配列中のアミノ酸の1個又は数個が他のアミノ酸で置き換えられたものをも包含する。
こうして製造した立体選択的加水分解酵素を大量に産生する形質転換体は、安価な培地中で大量に調製することができ、バイオリアクターとしてR体4−クロロ−3−ヒドロキシカルボン酸エステル、S体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、光学活性ヒドロキシカルボン酸、およびその対掌体エステル、R体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸エステルの製造等に利用することができる。
特に大腸菌DH5α(pKK−EnHCH1)は、遺伝子供与体(エンテロバクター属DS−S−75株)と比較して高い反応性を示し、中でもS体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、R体3−ヒドロキシブタン酸、S体2−ヒドロキシブタン酸を短時間に高光学純度で得ることが可能である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕EnHCH酵素の精製
酵素活性の測定は0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.15)に1%(v/v)4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルを基質とし、30℃で反応を行ない、遊離したクロルイオンを岩崎らの方法(Bull.chem.soc.Japan, 25, 226(1952))に従って比色定量した。1分間に1μmolのクロルイオンを遊離させる酵素量を1Uとした。タンパク質の定量は、280nmにおける吸収を測定して行なった。
エンテロバクター属DS-S-75株(FERM BP−5494)をPYG培地(1%ペプトン、1%酵母エキス、1%グリセロール、pH7.2)で培養し、遠心分離により菌体を調製した。
得られた湿菌体を超高圧細胞破砕装置により破砕後、遠心分離により菌体残さを除去し無細胞抽出液を得た。これに硫安を添加して50%飽和において沈殿した画分を回収した。更に1.6Mの硫安を含む10mM トリス−硫酸緩衝液(pH7.8)で平衡化したButyl−toyoperlによる疎水クロマトグラフィーを行なった。硫安濃度を0Mまで減少させ該酵素の活性画分を回収した。この画分に硫安を添加して80%飽和における沈殿を10mM トリス−硫酸緩衝液(pH7.8)に溶解し、同緩衝液にて透析を行なった。透析後、同緩衝液にて平衡化したDEAE-sepharoseによるイオン交換カラムクロマトグラフィーを行なった。同緩衝液の濃度勾配(10−200mM)にて溶出を行ない、該酵素の活性画分を回収した。この画分に、限外ろ過膜(MacroseP10K、日本ポール社製)により脱塩濃縮を行なった。濃縮液を0.1Mリン酸カリウム緩衝液で平衡化したSephadex-G150によるゲルろ過カラムクロマトグラフィーを行ない、該酵素の活性画分を回収した。
得られた不斉加水分解酵素標品は、SDS−PAGEで解析した結果、単一バンドとなり、その分子量は37.5kDaであった。ゲルろ過カラムクロマトグラフィーおよび10−20%の濃度勾配を施した分離ゲルを用いたNative−PAGEの結果、分子量は75kDaであった。これらの結果から、該酵素は分子量37.5kDaのサブユニットのホモ二量体であることがわかった。
精製の要約を表1に示したが、精製酵素の比活性は7690U/mg−タンパク質であり、粗酵素抽出液と比較して221倍であった。
Figure 0004345425
〔実施例2〕EnHCH酵素の部分アミノ酸配列の解析
精製したEnHCH酵素45μgをキモトリプシンで37℃1時間処理した。12.5%分離ゲルを用いてSDS−PAGEを行ない、PVDF膜に転写し、N末端および内部部分アミノ酸配列をアミノ酸シークエンサーによって決定した。決定されたアミノ酸配列を配列番号3および4に示した。
〔実施例3〕EnHCH遺伝子のクローニング
(1)エンテロバクター属からの染色体DNAの調製
エンテロバクター属DS−S−75株(FERM BP−5494)をPYG培地5ml中で20時間培養し、遠心分離により菌体を回収した。菌体を490mlのTE溶液(10mMトリス−塩酸 pH8.0、1mM EDTA)に懸濁し、10%SDSを30ml、20mg/mlプロテアーゼKを50ml添加し、50℃で1時間反応させた。その後、等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)による抽出を行なった後、0.1倍量の3M酢酸ナトリウム溶液を添加し、0.6倍量の2−プロパノールを静かに重層した。その結果、界面に生じたDNAをガラス棒で糸状に巻きつけて回収した。
得られたDNAを500mlのTE溶液に溶解させた。約1.1mgの染色体DNAを得た。
(2)プローブの作製
アミノ酸シークエンサーで決定した配列番号3および4のアミノ酸配列から予想されるDNA配列をコドン縮重を考慮してPCRプライマーを合成し(配列番号5及び6に示す)、(1)で抽出した染色体DNA50ngを鋳型にしてExTaqDNAポリメラーゼ(宝酒造株式会社製)を用いてPCR(熱変性96℃、30秒、アニーリング50℃、1分、伸長反応72℃、1分)を40サイクル行ない、4℃まで冷却後アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認し、DNA断片を常法によりアガロースゲルより回収した。次いで、そのDNA断片をpUC118(宝酒造株式会社製)にサブクローニングし、塩基配列をDNAシークエンサーで決定した。その結果、決定したDNA塩基配列中に、あらかじめ決定した部分アミノ酸配列(配列番号3および4)をコードする領域を確認できたので、得られた増幅DNAを常法に従って32Pでラベルし、プローブDNAとした。
(3)制限酵素地図の作成
抽出したDS−S−75株の染色体DNAを種々の制限酵素で切断し、1%アガロースゲルを用いて電気泳動後、ニトロセルロースメンブレンに転写させた。風乾後、(2)で作製したプローブを用いて、65℃で20時間ハイブリダイゼーション反応を行なった。
ハイブリダイゼーションを行なったメンブレンは、[1]2×SSC、65℃、15分、[2]1×SSC、65℃、30分で洗浄し、X線フィルムと増感紙をあて、オートラジオグラムをとった。この結果、種々のシグナルを比較することにより、EnHCH遺伝子領域近辺の制限酵素地図を作製した。
(4)ゲノムライブラリーからの遺伝子のクローニング
(3)で作製した制限酵素地図から目的とするEnHCH遺伝子の全長が含まれることを考慮して、プラスミドpBluescriptII KS(東洋紡績株式会社製)のEcoRI部位に約6000塩基対のDS−S−75株の染色体DNAに由来する多種類のDNA断片を挿入したゲノムライブラリーを作製した。これを大腸菌DH5α株に導入して得られた形質転換体160個体をニトロセルロースメンブレンにレプリカした後、0.5N NaOHにメンブレンを浸して溶菌し、1M トリス塩酸(pH7.5)にメンブレンを浸して中和した。風乾後、(2)で作製したプローブを用いて、65℃で20時間ハイブリダイゼーション反応を行なった。
ハイブリダイゼーションを行なったメンブレンは、[1]2×SSC、65℃、15分、[2]1×SSC、65℃、30分、[3]0.5×SSC、65℃、1時間で洗浄し、X線フィルムと増感紙をあて、オートラジオグラムをとった。この結果、陽性シグナルを与える1個の形質転換体を得た。
(5)塩基配列の決定
上記陽性株から常法によりプラスミドを抽出し、pBl−EnHCHを得た。これを、エキソヌクレアーゼIIIおよびマングマメのエンドヌクレアーゼ(mung bean endonuclease)により挿入遺伝子断片を種々欠失させ、それぞれの試料の塩基配列をジデオキシ法により決定し、得られた配列を重ね合わせ、BamHI−PstI間で塩基配列を決定した。決定した塩基配列とその塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。またpBl−EnHCHの模式図を図1に示す。
また、配列番号3および4に示す精製EnHCHの部分アミノ酸配列は、陽性株由来の挿入DNA断片の塩基配列から推定されるアミノ酸配列中に存在し、その部分アミノ酸配列が完全に一致した。
〔実施例4〕組換えプラスミドの作製
EnHCH遺伝子の開始コドンと推定されるATG配列は3個所に存在した。プラスミドpKK223−3のtacプロモーターの支配下に連結し、上記の各開始コドンおよび精製酵素のN末端から翻訳させる様に以下の手順で構築を行なった(図2、図3)。これら各々のATG配列のすぐ上流にEcoRI認識配列を付与するため、配列番号9〜12に示すPCRプライマーを設計し、M13プライマーを組み合わせて、pBl−EnHCH1 50ngを鋳型にしてPCR(熱変性96℃、30秒、アニーリング50℃、30秒、伸長反応72℃、1分)を30サイクル行なった(精製酵素のN末端については、メチオニンに置換した(図2))。4℃まで冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認し、各種DNA断片を常法によりアガロースゲルより回収した。次いで、そのDNA断片をBKLキット(宝酒造株式会社製)を用いて平滑、リン酸化後、pUC118のHincII制限酵素部位にサブクローニングし、各々について、上流約400塩基の配列をDNAシークエンサーで決定した。
得られた4種プラスミドを制限酵素Tth111IとPstIで消化後、pBl−EnHCHのTth111I−PstI断片を常法により挿入し、さらに、EcoRI−PstI消化断片をpKK223−3(ファルマシア製)ベクターの同部位に挿入し、発現プラスミドpKK−EnHCH1、pKK−EnHCH2、pKK−EnHCH3、pKK−EnHCH4を得た(図3)。
〔実施例5〕組換え大腸菌の作製
大腸菌JM109およびDH5αのコンピテントセルを調製し、pKK−EnHCHで形質転換することにより、組換え大腸菌JM109(pKK−EnHCH1)、DH5α(pKK−EnHCH1)を得た。なおDH5α(pKK−EnHCH2)は得ることができなかった。また対照試料としてベクターのみで形質転換したJM109(pKK−223−3)、DH5α(pKK223−3)も得た。
〔実施例6〕組換え大腸菌におけるEnHCH遺伝子の発現
(1)培養液の調製
実施例5で得た形質転換体を試験管に5ml入ったLB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム)で、20時間、37℃で好気的に培養した。なお、対照としてpKK223−3で形質転換したJM109株、DH5α株も同様に培養した。また、エンテロバクター属DS−S−75株については、試験管に5ml入ったPYG培地(1%ポリペプトン、1%酵母エキス、1%グリセリン)を20時間30℃で好気的に種培養し、各種株から培養液試料を得た。
(2)組換え体の加水分解活性の評価
250mM トリス硫酸緩衝液に終濃度0.05%(v/v)になるようにp−ニトロフェニルブチレートを添加し、反応液とした。この3mlに上記で調製した培養液試料20mlを添加し、30℃で反応させて加水分解反応により生成するp−ニトロフェノールに由来する400nmの吸光度の増大を測定した。結果を表2に示す。なお1Uは、30℃で1分間あたりに1μmolのp−ニトロフェノールの生成量を表わし、調製した培養液あたりの比活性を算出した。
Figure 0004345425
その結果、pKK−EnHCHで形質転換された大腸菌は、加水分解活性を所持し、JM109(pKK−EnHCH1)、JM109(pKK−EnHCH2)、DH5α(pKK−EnHCH1)の活性はエンテロバクター属DS−S−75株と比較して大幅に向上した。なかでもDH5α(pKK−EnHCH1)の培養液あたりの加水分解活性は約10.8倍であった。また、JM109(pKK−EnHCH1)、DH5α(pKK−EnHCH1)の培養液を除菌すると活性はなくなり、培地中には酵素が存在しないことがわかった。
JM109(pKK−EnHCH1)、JM109(pKK−EnHCH2)、JM109(pKK−EnHCH3)、JM109(pKK−EnHCH4)の4株ではJM109(pKK−EnHCH2)が最も高活性であった。また、図2に示した塩基配列上2番目のATG配列のすぐ上流には、リボソームが結合するSD(シャイン・ダルガーノ)配列がみられることから、EnHCH遺伝子の本来の開始コドンは2番目のATGであることが示唆された(配列番号1)。すなわち、図2で示したアミノ酸配列の2番目のメチオニン残基が、本来DS−S−75株で翻訳されうるEnHCHのN末端である。その結果、本遺伝子は、1086bpからなり、362アミノ酸をコードしていることが示唆された。
(3)組換えタンパク質のSDS−PAGE
(1)で調製したJM109(pKK−EnHCH1)、JM109(pKK−EnHCH2)、JM109(pKK−EnHCH3)、JM109(pKK−EnHCH4)の培養液試料を遠心分離により集菌し、20mMリン酸カリウム緩衝液で懸濁後、超音波破砕した。各5μgの抽出タンパク質試料およびエンテロバクター属DS−S−75株から精製したEnHCHをSDS−PAGE(10%分離ゲル)に共し、クマシーブリリアントグリーンによる染色を行なった。その結果、いずれの組換え大腸菌の組換え酵素でもエンテロバクター属DS−S−75株から精製したEnHCHと同じ位置にバンドが確認された(図4)。用いた分子量マーカーと分子量を下記に記す。ホスホリラーゼB(97,400)、ウシ血清アルブミン(66,200)、オボアルブミン(45,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(31,000)、トリプシンインヒビター(21,500)。
実施例2で示すように、精製酵素のN末端アミノ酸はバリンであった。また、配列番号2で示すEnHCHの推定アミノ酸配列のN末端側には、多くの疎水性残基、正に荷電した残基、および切断される認識配列としてAla−Xaa−Ala配列が存在することから翻訳開始メチオニンから25残基のアミノ酸配列はシグナルペプチドであることが示唆された(配列番号7)。
(4)組換えEnHCH酵素のN末端アミノ酸配列の解析
(1)で調製したJM109(pKK−EnHCH1)の細胞破砕液の20%−50%硫安沈殿試料を透析し、10%分離ゲルを用いてSDS−PAGEを行ない、PVDF膜に転写し、N末端配列をアミノ酸シークエンサーによって決定した。10残基決定した結果、エンテロバクター属DS−S−75株から精製したEnHCHのN末端配列と一致した。また、(3)のSDS−PAGEの結果、バンドが同じ位置にあることから、大腸菌においてもシグナルペプチドの切断が行われていることが明らかとなった。また、JM109(pKK−EnHCH1)、JM109(pKK−EnHCH2)の活性がJM109(pKK−EnHCH3)、JM109(pKK−EnHCH4)と比較して高いことから、本シグナルペプチドは、大腸菌での安定な発現に重要であることがいえる。
〔実施例7〕組換え大腸菌によるカルボン酸エステルの光学分割
(1)4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの光学分割
300ml容の三角フラスコにアンピシリンを含むLB培地60mlを調製し、DH5α(pKK−EnHCH1)を37℃で16時間振とう培養した。また、対照としてベクターのみで形質転換させたDH5α(pKK223−3)を調製した。また、エンテロバクター属DS−S−75株については、PYG培地60mlで培養した。各々の培養液に最終濃度が5%(w/v)になるように炭酸カルシウムと8%(w/v)になるようにラセミ体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルエステルを基質として加え、30℃で1時間振とう反応させた。また、エンテロバクター属DS−S−75株については、同様に最終濃度2%の基質で24時間振とう反応もあわせて行なった。反応終了後、遠心分離にて除菌し、反応液中に残存する4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルエステルの濃度をガスクロマトグラフィー(カラム担体:PEG20M、60−80メッシュ)で分析した。さらに、上記除菌液から等量の酢酸エチルで抽出し、アステック社製のG−TA(0.25mm×30m)を用いたガスクロマトグラフィーにより、残存していた4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの光学純度を測定した。その結果、リテンションタイムはR体14.7分、S体15.7分であった。分析条件:カラム温度110℃、検出器温度200℃、キャリアーガス 窒素;流速、0.8ml/分、検出器FID;スプリット比100/1。
さらに酢酸エチル抽出を2回行ない、水層画分をエバポレーターで濃縮した。無水硫酸マグネシウムにより脱水し、3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンのシロップを得た。シロップ10mlに1,2−ジクロロエタン500ml、トリフルオロ酢酸無水物100mlを加え30分放置することによりトリフルオロ化を行ない、減圧下で溶媒を除去後、エタノールに溶解させ、G−TA(0.25mm×30m)を用いたガスクロマトグラフィーにより3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの光学純度を測定した。リテンションタイムはR体18.7分、S体19.9分であった。分析条件:カラム温度120℃、検出器温度200℃、キャリアーガス 窒素;流速、0.8ml/分、検出器FID;スプリット比100/1。
その結果、DH5α(pKK−EnHCH1)は、遺伝子供与体(エンテロバクター属DS−S−75株)と比較して反応速度が向上した。また、高い立体識別性を所持し、R体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチル、生成したS体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンとも高光学純度であり、S体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルのほぼ全量がS体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンに変換された。また、DH5α(pKK223−3)に分割能力はなかった。反応後、残存したR体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの光学純度、および反応開始前のラセミ体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの量を100%としたときの収率、生成したS体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの光学純度の測定結果を表3に示す。
Figure 0004345425
(2)3−ヒドロキシブタン酸エチルの光学分割
実施例7の(1)と同様に菌体各種を培養し、各々の培養液に最終濃度が5%(w/v)になるように炭酸カルシウムと8%(w/v)になるようにラセミ体3−ヒドロキシブタン酸エチルを基質として加え、30℃で1時間振とう反応させた。また、エンテロバクター属DS−S−75株については、同様に4時間振とう反応もあわせて行なった。反応終了後、菌体を遠心分離により除去した。
反応液中に残存する3−ヒドロキシブタン酸エチルの濃度をガスクロマトグラフィー(カラム担体:PEG20M、60−80メッシュ)で分析した。さらに上記除菌液を等量の酢酸エチルで2回抽出し、酢酸エチル層を減圧下で溶媒を除去し3−ヒドロキシブタン酸エチルのシロップを得た。トリフルオロ酢酸無水物でトリフルオロ化した後、アステック社製のG−TA(0.25mm×30m)を用いたガスクロマトグラフィーにより、光学純度を測定した。リテンションタイムはR体8.1分S体12.1分であった。分析条件:カラム温度90℃、検出器温度200℃、キャリアーガス 窒素;流速、0.7ml/分、検出器FID;スプリット比100/1。
一方、水層に分画された3−ヒドロキシブタン酸の濃度も、ガスクロマトグラフィー(カラム担体:PEG20M、60−80メッシュ)で分析した。その際、水溶液のpHをリン酸によりpH4にして行なった。水層をエバポレーターで濃縮し、3−ヒドロキシブタン酸のシロップを得た。30ml容の三角フラスコにシロップを50mg入れ、氷冷しながら4−ジメチルアミノピリジンを122mg、ジクロロメタンを10ml、エタノールを100ml、塩酸1−エチル3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを115mg加え10分ほど攪拌した後、蓋をして室温で一晩攪拌した。有機層を1N塩酸で2回洗浄した後デシケーターにて溶媒を除去し、3−ヒドロキシブタン酸エチルへと変換した。これを同様にトリフルオロ化した後、ガスクロマトグラフィーにて光学純度の測定を行なった。
その結果、DH5α(pKK−EnHCH1)は、遺伝子供与体(エンテロバクター属DS−S−75株)と比較して反応速度が向上した。両株とも高い立体識別性を所持していた。また、DH5α(pKK223−3)に分割能力はなかった。反応後、残存したS体3−ヒドロキシブタン酸エチルの光学純度、および反応開始前のラセミ体3−ヒドロキシブタン酸エチルの量を100%としたときの収率、生成したR体3−ヒドロキシブタン酸の光学純度の測定結果を表4に示す。
Figure 0004345425
(3)組換え大腸菌による2−ヒドロキシブタン酸エチルの光学分割
ラセミ体3−ヒドロキシブタン酸エチルをラセミ体2−ヒドロキシブタン酸エチルに変えた以外は実施例7の(2)と同様の方法で反応した。ただし、反応時間は組換え大腸菌は24時間、DS−S−75株は24および36時間とした。反応終了後、実施例7の(2)と同様の方法で、濃度、光学純度の解析を行なった。リテンションタイムはR体7.4分、S体7.8分であった。光学純度分析条件:カラム温度90℃、検出器温度200℃、キャリアーガス 窒素;流速、0.7ml/分、検出器FID;スプリット比100/1。
その結果、DH5α(pKK−EnHCH1)は、遺伝子供与体(エンテロバクター属DS−S−75株)と比較して反応速度が向上し、また高い立体識別性を所持していた。反応後、残存したR体2−ヒドロキシブタン酸エチルの光学純度、および反応開始前のラセミ体2−ヒドロキシブタン酸エチルの量を100%としたときの収率、生成したS体2−ヒドロキシブタン酸の光学純度の測定結果を表5に示す。
Figure 0004345425
(4)組換え大腸菌によるテトラヒドロフラン−2−カルボン酸メチルの光学分割
実施例7の(1)と同様に菌体各種を培養し、各々の培養液に最終濃度が5%(w/v)になるように炭酸カルシウムと1%(w/v)になるようにラセミ体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸メチルを基質として加え、30℃で2時間振とう反応させた。また、エンテロバクター属DS−S−75株については、同様に4時間および24時間振とう反応させた。反応終了後、菌体を遠心分離により除去した。
反応液中に残存するテトラヒドロフラン−2−カルボン酸メチルの濃度をガスクロマトグラフィー(カラム担体:PEG20M、60−80メッシュ)で分析した。さらにアステック社製のG−TA(0.25mm×30m)を用いたガスクロマトグラフィーにより、光学純度を測定した。リテンションタイムはR体8.4分、S体9.5分であった。分析条件:カラム温度110℃、検出器温度240℃、キャリアーガス 窒素;流速、0.7ml/分、検出器FID;スプリット比100/1。
その結果、DH5α(pKK−EnHCH1)は、遺伝子供与体(エンテロバクター属DS−S−75株)と比較して反応速度が向上した。反応後、残存したR体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸メチルの光学純度、および反応開始前のラセミ体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸メチルの量を100%としたときの収率を表6に示す。
Figure 0004345425
(5)組換え大腸菌による乳酸エチルの光学分割
実施例7の(1)と同様に菌体各種を培養し、各々の培養液に最終濃度が5%(w/v)になるように炭酸カルシウムと6%(w/v)になるようにラセミ体乳酸エチルを基質として加え、30℃で24時間振とう反応させた。また、エンテロバクター属DS−S−75株については、同様に48時間および100時間振とう反応させた。反応終了後、菌体を遠心分離により除去した。
反応液中に残存する乳酸エチルの濃度をガスクロマトグラフィー(カラム担体:PEG20M、60−80メッシュ)で分析した。さらに実施例7の(1)と同様に、上記除菌液を等量の酢酸エチルで2回抽出し、酢酸エチル層を減圧下で溶媒を除去し乳酸エチルのシロップを得た。トリフルオロ酢酸無水物でトリフルオロ化した後、アステック社製のG−TA(0.25mm×30m)を用いたガスクロマトグラフィーにより、光学純度を測定した。リテンションタイムはR体10.1分S体11.8分であった。分析条件:カラム温度70℃、検出器温度200℃、キャリアーガス 窒素;流速、0.7ml/分、検出器FID;スプリット比100/1。
その結果、DH5α(pKK−EnHCH1)は、遺伝子供与体(エンテロバクター属DS−S−75株)と比較して反応速度が向上した。反応後、残存したR体乳酸エチルの光学純度、および反応開始前のラセミ体乳酸エチルの量を100%としたときの収率を表7に示す。
Figure 0004345425
(6)組換え大腸菌による4−フェニル−2−ヒドロキシブタン酸エチルの光学分割
実施例7の(1)と同様に菌体各種を培養し、各々の培養液に最終濃度が5%(w/v)になるように炭酸カルシウムと2%(w/v)になるようにラセミ体4−フェニル−2−ヒドロキシブタン酸エチルを基質として加え、30℃で24時間振とう反応させた。また、エンテロバクター属DS−S−75株については、同様に48時間および100時間振とう反応させた。反応終了後、菌体を遠心分離により除去した。
反応液中に残存する4−フェニル−2−ヒドロキシブタン酸エチルの濃度をガスクロマトグラフィー(カラム担体:PEG20M、60−80メッシュ)で分析した。さらに、上記除菌液を等量の酢酸エチルで2回抽出し、酢酸エチル層を減圧下で溶媒を除去し4−フェニル−2−ヒドロキシブタン酸エチルのシロップを得た。エタノールに溶解させ、ダイセル社製CHIRAL CELL OD(25cm × 0.46cm)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより光学純度の分析を行なった。分析条件:展開溶媒;ヘキサン:イソプロパノール(100:1)、流速;0.5ml、カラム温度25℃、検出器UV;250nm。
その結果、DH5α(pKK−EnHCH1)は、遺伝子供与体(エンテロバクター属DS−S−75株)と比較して反応速度が向上した。反応後、残存したR体4−フェニル−2−ヒドロキシブタン酸エチルの光学純度、および反応開始前のラセミ体乳酸エチルの量を100%としたときの収率を表8に示す。
Figure 0004345425
DH5α(pKK−EnHCH1)により、R体4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチル、S体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、S体3−ヒドロキシブタン酸エチル、R体3−ヒドロキシブタン酸、R体2−ヒドロキシブタン酸エチル、S体2−ヒドロキシブタン酸、R体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸メチル、R体乳酸エチル、R体4−フェニル−2ヒドロキシブタン酸エチルを生産することができた。しかも、遺伝子供与体(エンテロバクター属DS−S−75株)と同等かそれ以上の立体識別性を所持し、反応速度は圧倒的に速かった。すなわち、EnHCHをコードする遺伝子を導入したことにより、高い立体選択的加水分解活性能を所持した組換え大腸菌を得ることができた。特に実施例7の(1)−(3)に示すようなヒドロキシカルボン酸エステルは特に立体選択性が高かった。
コロニーハイブリダイゼーションにより得られたpBluescriptIIKSにクローニングされたEnHCH遺伝子(pBl−EnHCH )の摸式図。ORFを挟むBamHI−PstI部位間で塩基配列の決定を行なった。ORFは1086bp、362アミノ酸をコードしている。このうち、N末端側25アミノ酸はシグナルペプチドである。 pKK−EnHCH1〜4の構築におけるPCRプライマーの解説である。開始コドンとして推定される3種類のATG配列について、EcoRIをすぐ上流に付加したPCRプライマーを設計し、pUC118由来のM13プライマーと組み合わせてPCRを行なった。また、精製酵素のN末端であるバリンから翻訳させるために、バリンをメチオニンに置換したPCRプライマーを設計し、同様にPCRを行なった。 図2で得られたPCR産物のプラスミドpKK223−3へのサブクローニングを示している。まず、pUC118に平滑末端でサブクローニングし、上流側約400bpの塩基配列を決定した。PCR伸長エラーがないかを確認後、Tth111I−PstI間の配列をpBl−EnHCHのものと置換し、EcoRI−PstIでpKK223−3のtacプロモーター下流に連結した。 組換えタンパク質のSDS−PAGE写真である。左のレーンから遺伝子供与体(DS−S−75株)由来精製EnHCH、JM109(pKK223−3)の抽出液、JM109(pKK−EnHCH1)の抽出液、JM109(pKK−EnHCH2)の抽出液、JM109(pKK−EnHCH3)の抽出液、JM109(pKK−EnHCH4)の抽出液、分子量マーカー;ホスホリラーゼB(97,400)、ウシ血清アルブミン(66,200)、オボアルブミン(45,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(31,000)、トリプシンインヒビター(21,500)である。遺伝子供与体の精製EnHCHと同じ位置に組換えEnHCHのバンドが確認できた。

Claims (13)

  1. 下記の塩基配列:
    (a)配列番号1に記載の塩基配列、
    (b)配列番号1に記載の塩基配列において、1から複数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
    (c)配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であってクロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
    (d)配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、
    (e)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、又は
    (f)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
    のいずれかの塩基配列からなる遺伝子
    ここで、該クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性は、
    式〔1〕:
    Figure 0004345425

    (式中、R 1 はC1〜C4のアルキル基である。)
    に示すようなラセミ体クロロヒドリンを立体選択的に脱クロルおよび加水分解して、式〔2〕:
    Figure 0004345425

    に示すS体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを生成し、R体クロロヒドリンを残存させるか、下記式〔3〕:
    Figure 0004345425

    (式中、R 1 はC1〜C4のアルキル基であり、R 2 は、メチル基またはベンジル基であり、R 2 が、メチル基のときは、mが0のときnは0または1であり、mが1のときnは0である。R 2 がベンジル基のとき、mが0でありnは1である。)
    に示すような、ラセミ体ヒドロキシカルボン酸エステルを立体選択的に加水分解して、光学活性ヒドロキシカルボン酸を生成し、その対掌体エステルを残存させるか、または下記式〔4〕:
    Figure 0004345425

    (式中、R 1 は、C1〜C4のアルキル基である。)
    に示すような、ラセミ体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸エステルを立体選択的に加水分解して、R体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸エステルを残存させる作用をいう。
  2. 下記のアミノ酸配列:
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換されているアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列、又は
    (c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性を有するアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質
    ここで、該クロロヒドリン及びヒドロキシカルボン酸エステル不斉加水分解酵素活性は、
    式〔1〕:
    Figure 0004345425

    (式中、R 1 はC1〜C4のアルキル基である。)
    に示すようなラセミ体クロロヒドリンを立体選択的に脱クロルおよび加水分解して、式〔2〕:
    Figure 0004345425

    に示すS体3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを生成し、R体クロロヒドリンを残存させるか、また、下記式〔3〕:
    Figure 0004345425

    (式中、R 1 はC1〜C4のアルキル基であり、R 2 は、メチル基またはベンジル基であり、R 2 が、メチル基のときは、mが0のときnは0または1であり、mが1のときnは0である。R 2 がベンジル基のとき、mが0でありnは1である。)
    に示すような、ラセミ体ヒドロキシカルボン酸エステルを立体選択的に加水分解して、光学活性ヒドロキシカルボン酸を生成し、その対掌体エステルを残存させるか、または下記式〔4〕:
    Figure 0004345425

    (式中、R 1 は、C1〜C4のアルキル基である。)
    に示すような、ラセミ体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸エステルを立体選択的に加水分解して、R体テトラヒドロフラン−2−カルボン酸エステルを残存させる作用をいう
  3. 配列番号7のアミノ酸配列からなる、請求項2に記載のタンパク質を用いた休止菌体反応のための、シグナルペプチド。
  4. 配列番号8の塩基配列からなる、請求項3に記載のシグナルペプチドをコードするDNA。
  5. 請求項1に記載の遺伝子を含む、ベクター。
  6. さらに、請求項4に記載のDNAを含む、請求項5に記載のベクター。
  7. プラスミドpKK−EnHCH1(受託番号:FERM BP−08466)である、請求項6に記載のベクター。
  8. 請求項1に記載の遺伝子又は請求項5〜7のいずれか1項に記載のベクターを含む、非ヒト形質転換体。
  9. 宿主が、大腸菌である、請求項8に記載の非ヒト形質転換体。
  10. 宿主が、大腸菌JM109株又はDH5α株である、請求項9に記載の非ヒト形質転換体。
  11. 請求項1に記載の遺伝子を用いることを含む、請求項2に記載のタンパク質の製造方法。
  12. 請求項2に記載のタンパク質を用いることを含む、光学活性体の製造方法。
  13. 請求項8〜10のいずれか1項に記載の形質転換体を用いることを含む、光学活性体の製造方法。
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