JP4343585B2 - 絶対角度センサ付軸受装置およびその使用方法 - Google Patents

絶対角度センサ付軸受装置およびその使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種の機器における回転角度検出、例えば小型モータの位置制御のための角度検出や、ロボット関節の絶対角度検出のために用いられる絶対角度センサ付軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種類の装置の回転角度検出には、エンコーダが広く使われている。より小型化、低コスト化が必要な分野では、磁気式のセンサを軸受部に内蔵したセンサ内蔵軸受が使われている。磁気式のセンサ内蔵軸受は、別付けの光学式エンコーダに比べて精度が十分でなく、特に絶対角度検出においては軸受をその使用機器に組み込んだ後で、何らかの校正作業、例えば高精度なエンコーダを接続して補正データを作成する作業等が必須とされている。
センサ内蔵軸受の文献としては、回転部材に多極磁化された磁気発生部材を設け、固定部材に磁気センサを設けたインクリメンタル式エンコーダ内蔵軸受がある(例えば特許文献1)。これは、通常の軸受と別体のエンコーダを使用する機構に比べて、極めて小型な構造になっているが、絶対角度検出が不可能である。一方、絶対角度が検出可能なセンサとしてはレゾルバが広く知られている。しかし、レゾルバにおいても、高精度な絶対角度検出を実現するためには、軸受を機器に組み込んだあとで何らかの校正作業が必要である。例えば、特許文献2のものにおいては、レゾルバを組み込んだダイレクトライブモータに高精度なインクリメンタルエンコーダを結合し、CPUを用いて補正データを作成する技術が提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−349898号公報
【特許文献2】
特許2607048号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
レゾルバ等の軸受別体型の角度検出装置では、組み込むとき軸合わせの誤差などによっても、補正データが変化するため、レゾルバ単体では高精度の角度検出は困難である。そのため、レゾルバを組み込んだシステム、例えばダイレクトドライブモータに、検出角度補正を行うための手段、例えば校正用高精度エンコーダを取付けるアタッチメントを用意する必要がある。また、レゾルバをモータに組み直すごとに校正作業を行う必要があるため、ユーザ側での煩雑な作業が必要である。
また、レゾルバを用いた絶対角度検出は、一般的にR−Dコンバータを用いている。原理的にR−Dコンバータ自体に補正データを組み込むことはできないため、特許文献2の例では、上記のようにCPUを用いた校正回路を追加しており、そのため角度検出装置が複雑で高価になる。
一方、磁気式センサ内蔵軸受において、1回転にわたって変化する信号、例えば1回転1周期の正弦波を磁気発生部材に着磁して、それを磁気センサで検出することで、絶対角度が検出可能であることが知られている。またセンサ内蔵軸受は、センサ部と軸受が一体構造になっているために軸合わせ等の作業の必要がない。しかし、磁気発生部材に所望の着磁を施すことは困難であり、センサ単体では高精度な角度検出は実現されていない。
【0005】
この発明の目的は、軸受設置機器への組み込み後の校正作業無しで、高精度な絶対角度の検出が可能な回転センサ付軸受装置およびその使用方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の絶対角度センサ付軸受装置は、軸受設置機器に対して未組み込みの絶対角度センサ付軸受装置であって、回転側軌道輪の固定側軌道輪に対する回転角度の検出出力として電気角度で90°位相差の2つのアナログ出力を行う回転検出器を有するセンサ付軸受と、上記2つのアナログ出力から上記回転側軌道輪の回転角度の絶対角度を演算するときの誤差補正を行う補正データが記録され、上記センサ付軸受と対として使用される補正データ記録部付き部品とを備え、上記回転検出器は、回転側軌道輪に取付けられて磁気特性を円周方向に周期的に変化させた被検出部と、被検出部に対向して固定側軌道輪に取付けられ、互いに電気角度で90°位相差のアナログ出力を行う2つの磁気センサとでなり、上記被検出部は、この被検出部となる着磁前の環状部品を、円筒状に巻かれた空心コイルの内部に、上記環状部品の軸心が同空心コイルの軸心と直交するように配置し、この環状部品の外周部に着磁強度分布補正用の着磁ヨークを配置して空心コイルに着磁電流を流し、回転側軌道輪の1回転を1周期とする正弦波状の磁気特性を得た被検出部とするものである。
この構成によると、個々のセンサ付き軸受に対して、対として使用される補正データ記録部付き部品を設けたため、個々のセンサ付軸受について、絶対角度を演算するときの補正データを、その軸受の製造時に予め測定し、補正データ記録部付き部品に記録しておくことができる。そのため、軸受設置機器への軸受の組み込み後の校正作業無しで、高精度な絶対角度の検出が可能になる。このため、安価で高精度の絶対角度検出が可能な回転センサ付軸受が実現できる。
【0007】
上記回転検出器は、回転側軌道輪に取付けられて磁気特性を円周方向に周期的に変化させた被検出部と、被検出部に対向して固定側軌道輪に取付けられ、互いに電気角度で90°位相差のアナログ出力を行う2つの磁気センサとでなる。
このように磁気特性を円周方向に周期的に変化させた被検出部を設けたため、補正データ記録部付き部品の補正データを使用することで、簡単に精度良く絶対角度を出力することができる。また、2つの磁気センサで位相差のあるアナログ出力が得られるため、適宜の信号処理を施すことにより、外部磁界の影響を受け難くすることができる。この場合に、90°位相差のため、象限判別が可能となり、より精度の高い絶対角度検出が可能となる
この発明の絶対角度センサ付軸受装置の使用方法は、回転側軌道輪の固定側軌道輪に対する回転角度の検出出力として電気角度で90°位相差の2つのアナログ出力を行う回転検出器を有するセンサ付軸受の使用方法であって、上記2つのアナログ出力から上記回転側軌道輪の回転角度の絶対角度を演算するときの誤差補正を行う補正データが記録され、上記センサ付軸受と対として使用される補正データ記録部付き部品を準備する過程と、この補正データ記録部付き部品の準備よりも後に上記センサ付軸受を軸受設置機器に組み込む過程と、上記補正データ記録部付き部品を上記軸受設置機器を含むユーザシステムの基板に組み込む過程とを含み、上記補正データ記録部付き部品を準備する過程では、絶対角度を演算するときの補正データを、上記センサ付軸受の製造後に測定して上記補正データ記録部付き部品に記録し、上記回転検出器は、回転側軌道輪に取付けられて磁気特性を円周方向に周期的に変化させた被検出部と、被検出部に対向して固定側軌道輪に取付けられ、互いに電気角度で90°位相差のアナログ出力を行う2つの磁気センサとでなり、上記被検出部は、この被検出部となる着磁前の環状部品を、円筒状に巻かれた空心コイルの内部に、上記環状部品の軸心が同空心コイルの軸心と直交するように配置し、この環状部品の外周部に着磁強度分布補正用の着磁ヨークを配置して空心コイルに着磁電流を流し、回転側軌道輪の1回転を1周期とする正弦波状の磁気特性を得た被検出部とする。
この構成によると、軸受設置機器への組み込み後の校正作業無しで、高精度な絶対角度の検出が可能となる。
【0008】
また、この発明における上記各構成の場合に、上記補正データ記録部付き部品が、上記補正データを記録した補正テーブルと、この補正テーブルの補正データを用い、上記2つのアナログ出力から絶対角度を演算する絶対角度演算手段とを有し、上記補正データは、上記センサ付軸受の製造後に測定した角度校正データに基づくものであっても良い。
このようにセンサ付軸受の製造後に測定した角度校正データを補正テーブルに記録しておくことで、より一層精度の良い絶対角度検出が可能となる。
【0009】
上記補正データ記録部付き部品に記録される補正データは、逆正接の計算テーブルにおける逆正接演算結果となる角度値に統合しても良い。
この構成の場合、回転検出器の検出値を逆正接の計算テーブルに対比させて絶対角度を得る。ディジタル方式での逆正接の演算は複雑になるが、割り算結果より予め用意した逆正接演算結果のテーブルを参照することで容易に求められる。このときに、計算テーブルの逆正接演算結果となる角度値に補正データが統合されているため、つまり、逆正接演算結果となる角度値が補正済みのデータとされているため、上記計算テーブルを用いて得られる角度値が補正済みの値となる。このため、逆正接演算を行った後に、改めて補正演算を行う必要がなく、高精度の絶対角度検出を簡単な処理により行うことができる。
【0010】
この発明における上記各構成の場合に、上記補正データ記録部付き部品が、ワンチップ型マイクロコンピュータ、またはプログラマブルロジック回路であっても良い。また、これらワンチップ型マイクロコンピュータもしくはプログラマブルロジック回路の実装された回路基板であっても良い。
このように補正データ記録部付き部品が演算機能を有する部品である場合、その部品の一部を補正データの記録に用い、この部品の演算機能を利用して絶対角度の演算を行わせることができる。そのため、別途に演算手段となる部品を設ける必要がない。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図7と共に説明する。図5に示すように、この絶対角度センサ付軸受装置は、センサ付軸受1と、このセンサ付軸受1と対として使用される補正データ記録部付き部品20とを備える。センサ付軸受1は、図1に示すように、転動体4を介して互いに回転自在な回転側軌道輪2および固定側軌道輪3を有する軸受部1Aと、回転検出器6とで構成される。軸受部1Aは、深溝玉軸受からなり、その内輪が回転側軌道輪2となり、外輪が固定側軌道輪3となる。回転側軌道輪2の外径面および固定側軌道輪3の内径面には転動体4の軌道面2a,3aが形成されており、転動体4は保持器5で保持されている。回転検出器6は、回転側軌道輪2の固定側軌道輪3に対する回転角度の検出出力として電気角度で90°位相差の2つのアナログ出力を行うものである。回転検出器6は、回転側軌道輪2の一端部に取付けられた被検出部7と、この被検出部7に対向して固定側軌道輪3の一端部に取付けられた2つの磁気センサ8A,8Bとでなる。回転側軌道輪2と固定側軌道輪3との間の環状空間は、回転検出器6の設置側とは反対側の端部がシール部材10で密封されている。
【0012】
回転検出器6の被検出部7はラジアル型のものであって、磁気センサ8A,8Bに対する磁気特性を円周方向に周期的に変化させた環状の部品とされている。この磁気特性は、回転側軌道輪2の1回転を1周期として変化するものとしてある。具体的には、環状のバックメタル11と、その外周側に設けられて周方向に向けて変化する磁極N,Sが着磁された磁気発生部材12とを有する。この被検出部7はバックメタル11を介して回転側軌道輪2に固着されている。磁気発生部材12は例えばゴム磁石とされ、バックメタル11に加硫接着される。磁気発生部材12はプラスチック磁石や焼結磁石で形成されたものであっても良く、その場合にはバックメタル11は必ずしも設けなくても良い。
【0013】
図2は、被検出部7の磁気発生部材12に上述した磁性特性を持たせる処理の一例を示す。この処理では、円筒状に巻かれた空心コイル13の内部に、上記環状の被検出部7となる着磁前の環状部品を、その軸心が空心コイル13の軸心と直交するように配置する。この被検出部7となる部品の外周部に着磁強度分布補正用の着磁ヨーク14を配置した状態で、空心コイル13に着磁電流を流す。これにより、被検出部7の磁気発生部材12に、図4のように1回転を1周期とする正弦波状の着磁分布を得ることができる。
【0014】
図1において、回転検出器6の磁気検出部を構成する2つの磁気センサ8A,8Bは、同図(B)のように円周方向に所定の間隔(ここでは機械角で90°の位相差)を持たせて配置されている。これら両磁気センサ8A,8Bは共にアナログセンサからなる。これら磁気センサ8A,8Bは、同図(A)のように磁気検出回路基板9に搭載され、この磁気検出回路基板9と共に樹脂ケース15内に挿入した後に樹脂モールドされる。この樹脂ケース15を、金属ケース16を介して固定側軌道輪3に固定することにより、磁気センサ8A,8Bおよび磁気検出回路基板9が固定側軌道輪3に取付けられている。磁気検出回路基板9は、磁気センサ8A,8Bへの電力供給および磁気センサ8A,8Bの出力信号を処理して外部に出力するための回路を実装した基板である。
【0015】
図3は、回転側軌道輪2の回転に伴う両磁気センサ8A,8Bの検出信号の波形図を示す。このように2つの磁気センサ8A,8Bからは、互いに電気角度で90°位相差のアナログ出力X,Yが得られるので象限判別が可能となり、これらの出力X,Yから絶対角度を知ることができる。図4は、被検出部7の着磁波形と、両磁気センサ8A,8Bの設置位置との関係を示す。これにより、第1の磁気センサ8Aのアナログ出力Xは正弦波となり、第2の磁気センサ8Bのアナログ出力Yは余弦波となる。すなわち、これらアナログ出力X,Yと絶対角度θとの間には、次式
X=SIN(θ) ……(1)
Y=COS(θ) ……(2)
が成り立つ。したがって、絶対角度θは、次式
θ=TAN-1(X/Y)……(3)
として求めることができる。
【0016】
しかし、被検出部7の着磁波形を図4のように理想的な正弦波にすることは現実には困難であり、両磁気センサ8A,8Bのアナログ出力X,Yをそのまま用いて上記(1)〜(3)式で絶対角度θを演算しても誤差が生じる。そこで、この絶対角度センサ付軸受装置では、高精度な絶対角度θを検出するために前記補正データ記録部付き部品20(図5)が付加されている。この補正データ記録部付き部品20は、センサ付軸受1に設置しても、センサ付軸受1から離して設置しても良い。
【0017】
図5は、この実施形態の絶対角度センサ付軸受装置の概略構成をブロック図で示したものである。補正データ記録部付き部品20には、回転検出器6の2つのアナログ出力X,Yから回転側軌道輪2の回転角度の絶対角度を演算するときの誤差補正を行う補正データが記録されている。この補正データ記録部付き部品20は、上記両磁気センサ8A,8Bのアナログ出力X,Yから回転側軌道輪3の回転角度の絶対角度を演算するときの誤差補正を行う補正データを記録した補正テーブル26と、この補正テーブル26の補正データを用い、上記2つのアナログ出力X,Yから絶対角度を演算する絶対角度演算手段27とを有する。この補正データ記録部付き部品20は、絶対角度の演算が可能なようにディジタル方式で実装されており、補正テーブル26、絶対角度演算手段27のほかに、前記両磁気センサ8A,8Bのアナログ出力X,YをA/D変換するA/D変換器21を有する。絶対角度演算手段27は、A/D変換器21でディジタル信号に変換された前記両磁気センサ8A,8Bの出力X’,Y’を割り算する割り算器22と、割り算器22による演算出力(X’/Y’)から上記(3)式に相当する逆正接演算を行う逆正接演算器23と、この逆正接演算器23の演算出力である絶対角度θを、前記補正テーブル26の補正データと照合して、補正された絶対角度θ’を出力する補正処理部25とで構成される。この補正処理部25と補正テーブル26とは補正手段24を構成する。逆正接演算器23は、割り算器22による演算出力(X’/Y’)から上記(3)式に相当する逆正接演算を行うに際して、例えば、上記割り算の演算出力(X’/Y’)と逆正接の絶対角度値とを対比させて記憶した計算テーブル(LUT:ルックアップテーブル)(図示せず)を用いて絶対角度θを求めるものであっても良い。ディジタル方式での逆正接の演算は複雑になるが、割り算結果より予め用意した逆正接演算結果のテーブルを参照することで容易に求められる。
【0018】
図6は、上記補正手段24の構成を示すブロック図である。補正テーブル26は、上記2つのアナログ出力X,Yに基づき演算される絶対角度θ(=TAN-1(X’/Y’))と、この演算絶対角度θを校正した補正データである絶対角度θ’とを、個々の演算絶対角度θ1 ,θ2 ,…,θn ごとに対応付けて記録したテーブルである。すなわち、演算された絶対角度θに対して、補正値Δθだけ補正した値が校正した絶対角度θ’として対応付けられる。
【0019】
前記補正テーブル26の補正データは、前記センサ付軸受1の製造後に測定した角度校正データに基づくものである。この場合の角度校正データの測定は、例えば図7に示す校正装置34で行われる。この校正装置34では、軸受35で回転自在に支持されて回転駆動される回転軸36の一端部を、この絶対角度センサ付軸受装置のセンサ付軸受1で支持し、同じ回転軸36の他端部に高精度のエンコーダ37を設置した状態で、高精度エンコーダ37により検出される回転角度の検出データと、センサ付き軸受1の2つの磁気センサ8A,8Bからの出力X,Yに基づき演算される回転角度のデータとが対応付けて測定される。センサ付軸受1は、機器に組み込んだ後もその軸受部1Aと回転検出器6との相対位置関係が変化することが無いので、上述したように製造後に校正データを一度作成しておけば、この絶対角度センサ付軸受装置が出荷されてそのセンサ付軸受1がユーザのシステムに組み込まれた後に、検出される絶対角度について改めて校正作業を行う必要がない。
【0020】
このように、この絶対角度センサ付軸受装置によると、90°位相差の2つのアナログ出力X,Yを行う回転検出器6を有するセンサ付軸受1と、上記2つのアナログ出力X,Yから回転角度の絶対角度を演算するときの誤差補正を行う補正データが記録されてセンサ付軸受1と対として使用される補正データ記録部付き部品20とを設けたため、上記センサ付軸受1をユーザのシステムに組み込んだ後に、改めて絶対角度検出のための校正作業を行うことなく、高精度の絶対角度検出を行うことができ、ユーザ側のシステム設計も容易となる。
【0021】
上記回転検出器6は、回転側軌道輪2に取付けられて磁気特性を円周方向に周期的に変化させた被検出部7と、被検出部7に対向して固定側軌道輪3に取付けられ、電気角度で90°位相差のアナログ出力を行う2つの磁気センサ8A,8Bとでなるものとしているので、簡単に絶対角度を出力することができる。また2つの磁気センサ8A,8Bで90°位相差のアナログ出力X,Yが得られるため、象限判別が可能となり、より精度の高い絶対角度検出が可能となる。
【0022】
上記補正データ記録部付き部品20は、上記補正データを記録した補正テーブル26と、この補正テーブル26の補正データを用い、上記2つのアナログ出力X,Yから絶対角度を演算する絶対角度演算手段27とを有し、上記補正データは、上記センサ付軸受1の製造後に測定した角度校正データに基づくものとしているので、回転検出器6の出力から絶対角度の演算とその演算値の補正とが自動的に行われ、高精度の絶対角度検出が可能となる。
【0023】
図8および図9はこの発明の他の実施形態を示す。この絶対角度センサ付軸受装置は、第1の実施形態において、補正データ記録部付き部品20を、A/D変換器21と、割り算器22と、補正手段24Aとで構成し、独立した逆正接演算回路23は省略している。この補正手段24Aが、逆正接演算手段を兼ね、逆正接演算結果が補正済み結果となるものとしている。具体的には、補正手段24Aは、補正処理部25と計算テーブル28とでなり、計算テーブル28には、割り算器22の演算出力(X’/Y’)と、この演算出力に基づく逆正接演算結果(絶対角度)とが対応付けて記録されており、また逆正接演算結果としては補正済みの値が記録されている。すなわち、第1の実施形態における補正テーブル26の補正データは、逆正接の計算テーブル28における逆正接演算結果(絶対角度)となる角度値θ’(=θ+Δθ)に統合されている。補正手段24Aの補正処理部25は、割り算器22の演算出力(X’/Y’)に対応する逆正接演算結果θ’を計算テーブル28から検索し、この校正済みの角度値θ’を絶対角度として出力する。この場合、割り算器22と補正手段24Aとで、絶対角度を演算する絶対角度演算手段27Aが構成される。
【0024】
このように、補正データを、逆正接の計算テーブル28における逆正接演算結果となる角度値θ’(=θ+Δθ)に統合したため、第1の実施形態のように逆正接演算した上で補正演算するものと異なり、逆正接演算結果が既に補正済み結果となるため、改めて補正演算を行う必要がなく、演算が簡単な処理で行える。そのため処理が高速に行える。
すなわち、ディジタル方式での逆正接の演算は複雑になるが、割り算結果より予め用意した逆正接演算結果のテーブルを参照することで容易に求められる。この場合に、補正データを考慮して着磁誤差がある場合に正確な逆正接演算結果が得られるように逆正接のテーブル28を作成しておけば、絶対角度検出回路に特別な補正手段を加えることなく、高精度な角度検出装置が実現できる。
【0025】
図10ないし図13は、それぞれ上記各実施形態における補正データ記録部付き部品20の具体的な各種使用形態例を示す。図10の例では、第1の実施形態において、補正データ記録部付き部品20に、検出される絶対角度データをシリアル,パラレルなどの各種フォーマットで出力可能とするためのホスト側とのインターフェース29を付加すると共に、この補正データ記録部付き部品20を、ワンチップ型マイクロコンピュータ、プログラマブルロジック回路、またはこれらワンチップ型マイクロコンピュータもしくはプログラマブルロジック回路の実装された回路基板としている。同図における角度算出手段38は、第1の実施形態(図5)における割り算器22と逆正接演算器23とを含めた演算手段である。これにより、この絶対角度センサ付軸受装置が組み込まれるユーザシステムの回路基板などへの上記補正データ記録部付き部品20の装着を容易に行うことができる。
【0026】
図11は、図10の実施形態における回路基板化した補正データ記録部付き部品20の取付例を示す。この例では、センサ付軸受1の回転検出器6がケーブル30およびコネクタ31でユーザシステムの回路基板32に接続され、このユーザシステムの回路基板32上のソケット33に補正データ記録部付き部品20が取付けられる。
【0027】
図12は、図10の実施形態における回路基板化した補正データ記録部付き部品20の他の取付例を示す。この例では、センサ付軸受1の回転検出器6とユーザシステムの回路基板32とを、ケーブル30と共に接続するコネクタ31に補正データ記録部付き部品20が取付けられる。
【0028】
図13は、図10の実施形態における回路基板化した補正データ記録部付き部品20のさらに他の取付例を示す。この例では、センサ付軸受1における例えば固定側軌道輪3に補正データ記録部付き部品20が組み込まれ、補正データ記録部付き部品20からの出力(絶対角度)がケーブル30およびコネクタ31を介してユーザシステムの回路基板32に入力される。
【0029】
なお、上記実施形態は、回転検出器6をラジアル型のものとしたが、回転検出器6はアキシアル型のものであっても良い。また、軸受部1Aもアキシアル型のものであっても良い。
【0030】
【発明の効果】
この発明の絶対角度付軸受装置は、軸受設置機器に対して未組み込みの絶対角度センサ付軸受装置であって、回転側軌道輪の固定側軌道輪に対する回転角度の検出出力として電気角度で90°位相差の2つのアナログ出力を行う回転検出器を有するセンサ付軸受と、上記2つのアナログ出力から上記回転側軌道輪の回転角度の絶対角度を演算するときの誤差補正を行う補正データが記録され、上記センサ付軸受と対として使用される補正データ記録部付き部品とを設け、上記回転検出器は、回転側軌道輪に取付けられて磁気特性を円周方向に周期的に変化させた被検出部と、被検出部に対向して固定側軌道輪に取付けられ、互いに電気角度で90°位相差のアナログ出力を行う2つの磁気センサとでなり、上記被検出部は、この被検出部となる着磁前の環状部品を、円筒状に巻かれた空心コイルの内部に、上記環状部品の軸心が同空心コイルの軸心と直交するように配置し、この環状部品の外周部に着磁強度分布補正用の着磁ヨークを配置して空心コイルに着磁電流を流し、回転側軌道輪の1回転を1周期とする正弦波状の磁気特性を得た被検出部としたため、軸受設置機器への組み込み後の校正作業無しで、高精度な絶対角度の検出が可能であり、安価で高精度な絶対角度センサ付軸受装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の第1の実施形態にかかる絶対角度センサ付軸受装置におけるセンサ付軸受を示す断面図、(B)は同軸受における被検出部と磁気センサとの関係を示す概略図である。
【図2】同軸受における被検出部の着磁方法を示す説明図である。
【図3】同軸受における2つの磁気センサの出力を示す波形図である。
【図4】同軸受における被検出部の着磁波形と2つの磁気センサとの関係を示す説明図である。
【図5】この実施形態にかかる絶対角度センサ付軸受装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】同軸受装置における補正手段の構成を示すブロック図である。
【図7】同軸受装置における補正データ記録部付き部品の補正データの測定に用いられる校正装置の断面図である。
【図8】この発明の他の実施形態にかかる絶対角度センサ付軸受装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】同軸受装置における補正手段の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明のさらに他の実施形態にかかる絶対角度センサ付軸受装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】同実施形態にかかる軸受装置における補正データ記録部付き部品の取付例を示す説明図である。
【図12】同実施形態にかかる軸受装置における補正データ記録部付き部品の他の取付例を示す説明図である。
【図13】同実施形態にかかる軸受装置における補正データ記録部付き部品のさらに他の取付例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…センサ付軸受
2…回転側軌道輪(内輪)
3…固定側軌道輪(外輪)
6…回転検出器
7…被検出部
8A,8B…磁気センサ
20…補正データ記録部付き部品
26…補正テーブル
27,27A…絶対角度演算手段
28…計算テーブル

Claims (5)

  1. 軸受設置機器に対して未組み込みの絶対角度センサ付軸受装置であって、回転側軌道輪の固定側軌道輪に対する回転角度の検出出力として電気角度で90°位相差の2つのアナログ出力を行う回転検出器を有するセンサ付軸受と、上記2つのアナログ出力から上記回転側軌道輪の回転角度の絶対角度を演算するときの誤差補正を行う補正データが記録され、上記センサ付軸受と対として使用される補正データ記録部付き部品とを備え、
    上記回転検出器は、回転側軌道輪に取付けられて磁気特性を円周方向に周期的に変化させた被検出部と、被検出部に対向して固定側軌道輪に取付けられ、互いに電気角度で90°位相差のアナログ出力を行う2つの磁気センサとでなり、
    上記被検出部は、この被検出部となる着磁前の環状部品を、円筒状に巻かれた空心コイルの内部に、上記環状部品の軸心が同空心コイルの軸心と直交するように配置し、この環状部品の外周部に着磁強度分布補正用の着磁ヨークを配置して空心コイルに着磁電流を流し、回転側軌道輪の1回転を1周期とする正弦波状の磁気特性を得た被検出部とする、
    対角度センサ付軸受装置。
  2. 回転側軌道輪の固定側軌道輪に対する回転角度の検出出力として電気角度で90°位相差の2つのアナログ出力を行う回転検出器を有するセンサ付軸受の使用方法であって、
    上記2つのアナログ出力から上記回転側軌道輪の回転角度の絶対角度を演算するときの誤差補正を行う補正データが記録され、上記センサ付軸受と対として使用される補正データ記録部付き部品を準備する過程と、
    この補正データ記録部付き部品の準備よりも後に上記センサ付軸受を軸受設置機器に組み込む過程と、
    上記補正データ記録部付き部品を上記軸受設置機器を含むユーザシステムの基板に組み込む過程とを含み、
    上記補正データ記録部付き部品を準備する過程では、絶対角度を演算するときの補正データを、上記センサ付軸受の製造後に測定して上記補正データ記録部付き部品に記録し、
    上記回転検出器は、回転側軌道輪に取付けられて磁気特性を円周方向に周期的に変化させた被検出部と、被検出部に対向して固定側軌道輪に取付けられ、互いに電気角度で90°位相差のアナログ出力を行う2つの磁気センサとでなり、
    上記被検出部は、この被検出部となる着磁前の環状部品を、円筒状に巻かれた空心コイルの内部に、上記環状部品の軸心が同空心コイルの軸心と直交するように配置し、この環状部品の外周部に着磁強度分布補正用の着磁ヨークを配置して空心コイルに着磁電流を流し、回転側軌道輪の1回転を1周期とする正弦波状の磁気特性を得た被検出部とする、
    絶対角度センサ付軸受装置の使用方法。
  3. 請求項1において、上記補正データ記録部付き部品が、上記補正データを記録した補正テーブルと、この補正テーブルの補正データを用い、上記2つのアナログ出力から絶対角度を演算する絶対角度演算手段とを有し、上記補正データは、上記センサ付軸受の製造後に測定した角度校正データに基づくものである絶対角度センサ付軸受装置。
  4. 請求項1または請求項3において、上記補正データは、逆正接の計算テーブルにおける逆正接演算結果となる角度値に統合した絶対角度センサ付軸受装置。
  5. 請求項1、請求項3、および請求項4のいずれか1項において、上記補正データ記録部付き部品が、ワンチップ型マイクロコンピュータ、プログラマブルロジック回路、またはこれらワンチップ型マイクロコンピュータもしくはプログラマブルロジック回路の実装された回路基板である回転センサ付軸受装置。
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