JP4343358B2 - 無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置に関し、このものは、例えば、ダイヤフラムポンプとして用いられる。
【0002】
【従来の技術】
図3は、従来のダイヤフラム機構を備えるダイヤフラムポンプの一例を示す断面図である。
【0003】
図3において、ダイヤフラムロッド110の先端には一対のピストン部材141,145がダイヤフラム140の中央部を挟持するように固定されている。また、ダイヤフラム140の周縁は、圧力室180を形成するための圧力室形成部材150と、その後端に位置するハウジング部材160によって挟持固定されている。また、圧力室形成部材150の一方端(図面の下方)および他方端(図面の上方)には、吸引用の逆止弁151および吐出用の逆止弁155がそれぞれ形成されている。また、ダイヤフラムロッド110の後端部には、ロッド110を矢印(イ)方向および(ロ)方向への往復移動させるための図示していない振動手段が実質的に連接されている。
【0004】
このような構成のもとに、ダイヤフラムロッド110が矢印(イ)方向に移動すると、ピストン部材141,145とともにダイヤフラム140も矢印(イ)方向に移動する。これにより、圧力室180の体積は膨張するとともに負圧(陰圧)になり、吐出用の逆止弁155が「閉」、吸引用の逆止弁151が「開」の状態になり、外部の流体を吸引する。
【0005】
ついで、ダイヤフラムロッド110が矢印(ロ)方向に移動すると、ピストン部材141,145とともにダイヤフラム140が矢印(ロ)方向に移動する。これにより、圧力室180の体積は圧縮されるとともに正圧(陽圧)になり、吸引用の逆止弁151が「閉」、吐出用の逆止弁155が「開」の状態になり、圧力室180の流体が逆止弁155を通じて吐出される。
【0006】
これら一連の動作が繰り返され、ポンプからの吐出が連続的に行なわれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかながら、図3に示されるような従来のダイヤフラム機構では、以下のような不都合が生じていた。すなわち、ダイヤフラム140が矢印(イ)方向に移動した際に、圧力室180は負圧となる(その背後の背後空間190は大気圧)ために、ダイヤフラム140は図中の点線で示されるように、圧力室180側に反転するような形態をとる。
【0008】
この逆に、ダイヤフラム140が矢印(ロ)方向に移動した場合には、圧力室180は正圧となる(その背後の背後空間190は大気圧)ために、ダイヤフラム140は図中の実線で示されるように、背後空間190側に反転するような形態をとってしまう。このような現象はいわゆるダイヤフラム140の反転と呼ばれ、以下の問題が生じる。すなわち、
【0009】
(1)反転音が発生して、騒音防止が図れない。
(2)容積ロス(図2の符号200の容積分)が生じて、吐出量が減少してしまう。
(3)屈曲疲労により、ダイヤフラムが早期に破損してしまう。
等の問題がある。
【0010】
なお、図3においては、ダイヤフラムの反転状態が理解し易いように、ダイヤフラムに対するピストン部材141,145の大きさは実際のプロポーションよりも小さめに描かれている。
【0011】
本発明は、このような実状のもとに創案されたものであり、その目的は、動作中におけるダイヤフラムの反転を防止し、騒音防止が図れ、容積ロスによる吐出量の減少を防止し、耐久性に優れ長期の安定した使用が可能な無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明は、ダイヤフラムを装着したダイヤフラムピストン部の往復動で圧力室に流体を吸引、吐出するダイヤフラム装置において、前記ダイヤフラムを介して圧力室の反対側に、ダイヤフラムが反転しないように作用する圧力調整室が形成されており、前記ダイヤフラムピストン部には第1ピストンロッドが接合されるとともに、当該第1ピストンロッドには第2ピストンロッドが所定長さ相対的にフリー移動できるように連結されており、前記第2ピストンロッドには、圧力調整用ピストンが固着されているとともに、この圧力調整用ピストンは、シリンダとして作用するシリンダ室と摺動するように配置され、当該圧力調整用ピストンによって、シリンダ室が圧力調整源室とフロント室が分離形成され、かつ前記フロント室が前記ダイヤフラムに近い側に位置し、前記圧力調整源室と前記圧力調整室は互いに連通されており、前記圧力調整室の圧力は、前記圧力室から外部に流体を吐出する間および前記圧力室内へ流体の吸引開始から吸引完了に至るまで、前記圧力室の圧力よりも小さくなるように設定されているように構成される。
【0015】
また、本発明において、前記第1ピストンロッドと第2ピストンロッドとが相対的にフリー移動できる距離は、前記圧力室内への流体の吸引開始から吸引完了に至るまで、前記圧力調整室の圧力が前記圧力室内の圧力よりも小さくなるように設定される。
【0016】
また、本発明において、前記圧力調整源室には逆止弁が形成されており、当該圧力調整源室が実質的に大気圧以上にならないように構成される。
【0017】
また、本発明において、前記圧力室には流体を吸引、吐出するための逆止弁がそれぞれ形成されて構成される。
【0018】
また、本発明において、前記ダイヤフラムピストン部と、圧力調整用ピストンは同軸上に配設されてなるように構成される。
【0019】
また、本発明において、前記第2ピストンロッドには、圧力室に流体を吸引、吐出することができるように往復動装置が実質的に連結されてなるように構成される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置の好適な一例であるダイヤフラムポンプの要部を示す概略断面図である。
【0022】
図1に示されるように本発明のダイヤフラム装置1は、ダイヤフラム44を装着したダイヤフラムピストン部40の往復動で圧力室Pに流体を吸引、吐出できるようになっている。ダイヤフラムピストン部40は、ダイヤフラム44とこれを両側から固定するピストン部材41,45を備えて構成されている。
ピストン部材41には、第1ピストンロッド10が接合・固着されている。
【0023】
リング状のダイヤフラム44の周縁は、本実施例の場合、前方のハウジング50と後方のハウジング60に挟持・固定されており、第1ピストンロッド10の往復動に伴いダイヤフラムピストン部40が往復動できるようになっている。この往復動における前後位置の状態が点線と実線でそれぞれ示されている。そして、この往復動によって圧力室P内に流体を吸引、吐出できるように、吸引用の逆止弁51と吐出用の逆止弁55がそれぞれ圧力室Pの上下に配置されている。
【0024】
本発明において、最も重要かつ特徴部分である点は、ダイヤフラム44を介して、圧力室Pの反対側に(ダイヤフラム44の背後に)ダイヤフラム44が反転しないように作用する圧力調整室Sを形成している点である。
【0025】
圧力調整室Sが上記のダイヤフラム反転防止の作用を行えるようにするために、本発明では以下に示すような構成を採択している。
【0026】
すなわち、図1に示されるようにダイヤフラムピストン部40には、上述のごとく第1ピストンロッド10が接合され、この第1ピストンロッド10には第2ピストンロッド20が連結されている。第1ピストンロッド10と第2ピストンロッド20とはそれぞれ別部材から形成されており、しかもこれらは互いに所定長さ相対的にフリー移動できるように連結されている。
【0027】
第2ピストンロッド20には、圧力調整用ピストン30が固定ナット31で固着されているとともに、この圧力調整用ピストン30により、シリンダとして作用するシリンダ室が、圧力調整源室Hとフロント室F(ダイヤフラムに近い側)とに分離形成されている。そして、後方に位置する圧力調整源室Hと前記の圧力調整室Sは、第1ピストンロッド10内に形成された連通孔12,13,14および第2ピストンロッド20の連通孔24,25を通して互いに連通されている。
【0028】
なお、図1に示されるように第1ピストンロッド10の連通孔12は、第1ピストンロッド10と第2ピストンロッド20とが相対的にフリー移動できるように連結されている摺動スペース部分でもあり、この摺動スペース部分には第2ピストンロッド20の先端凸部23が摺動可能に挿入されている。第2ピストンロッド20は、この先端凸部23に延設される摺動凹部22と、ピストン固定部21を有している。
【0029】
図1に示される距離Lは、第1ピストンロッド10と第2ピストンロッド20とが相対的にフリー移動できる距離を示している。この距離Lの必要性およびその設定方法は、後述する動作の説明の中で言及する。
【0030】
また、本発明における圧力調整源室Hには、逆止弁65が形成されており、当該圧力調整源室Hが実質的に大気圧以上にならないようになっている。さらに、前記ダイヤフラムピストン部40と、圧力調整用ピストン30は同軸上に配設され、これらは本発明の作用効果を発現させるに際し、所定の一体的な動作を行うようになっている。
【0031】
以下、本発明の動作および作用の説明を行う。
第2ピストンロッド20の矢印(ロ)方向への移動とともに、圧力調整用ピストン30が矢印(ロ)方向への移動する。
【0032】
すると、密閉された圧力調整源室Hは徐々に膨張していき圧力が低下し負圧になる。このとき圧力調整源室Hと圧力調整室Sとは、上述のごとく連通孔により互いに連通されているために圧力調整室Sも圧力調整源室Hと同レベルの負圧となる。
【0033】
このような第1次的な負圧は、第2ピストンロッド20が距離Lの寸法まで移動して形成され、この時、ピストン固定部21の前方端部21aが第1ピストンロッド10の後部端面10aに衝突接触する。この状態が図2に示される。
【0034】
図2の状態からさらに、第2ピストンロッド20が矢印(ロ)方向へ移動すると、第1ピストンロッド10が第2ピストンロッド20に押されて矢印(ロ)方向へ移動を開始し、所定の移動完了点まで移動すると(この時、ダイヤフラムピストン部40は点線で示されるストローク位置にある)、圧力調整室S(および圧力調整源室H)の負圧レベルはますます大きくなり(より低圧となること)、ダイヤフラムピストン部40の流体吸引動作に必要な負圧に到達する。この間、ダイヤフラムピストン部40は、圧力室Pの流体圧力を高め、圧力室Pの逆止弁51を閉じ、逆止弁55を開けて流体を外部に吐出している。
【0035】
吐出が完了して第1ピストンロッド10と第2ピストンロッド20とが一体的に矢印(イ)方向に移動を開始すると、圧力室Pは負圧になり、圧力室Pの逆止弁51は開き、逆止弁55は閉じるので流体は第1ピストンロッド10が初期位置に復帰するまで(図2の状態)圧力室Pに吸引される。そして、第1ピストンロッド10が初期位置で停止した時に、圧力調整室Sの負圧は、圧力室Pの負圧のレベルより大きい(より低圧であること)が必要である。もし、圧力調整室Sの圧力が圧力室Pそれよりも高圧であるとダイヤフラム44は反転してしまう。
【0036】
さらに、第2ピストンロッド20は矢印(イ)方向に移動を続け、距離Lの寸法を零からLまで拡大して初期位置で停止して図1の状態に至る。この時、圧力調整源室H(圧力調整室S)の圧力は大気圧の筈であるが、もし大気圧よりも高い場合にこの圧力を大気に開放するために逆止弁65が形成されている。
【0037】
このような動作説明から分かるように、本発明における圧力調整室Sの圧力は、圧力室Pから外部に流体を吐出する間および圧力室P内へ流体の吸引開始から吸引完了に至るまで、圧力室P内の圧力よりも小さくなるように設定されている。
【0038】
また、このような設定との関連で、第1ピストンロッド10と第2ピストンロッド20とが相対的にフリー移動できる距離Lは、圧力室P内への流体の吸引開始から吸引完了に至るまで、圧力調整室Sの圧力が圧力室P内の圧力よりも小さくなるように設定されている。
【0039】
なお、図示していないが前記第2ピストンロッド20には、圧力室Pに流体を吸引、吐出することができるように例えば電磁石等を利用した往復動装置が実質的に連結されている。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、ダイヤフラムを装着したダイヤフラムピストン部の往復動で圧力室に流体を吸引、吐出するダイヤフラム装置において、ダイヤフラムを介して圧力室の反対側に、ダイヤフラムが反転しないように作用する圧力調整室を形成してなるように構成されているので、動作中におけるダイヤフラムの反転を防止でき、その結果、騒音の発生の防止や、容積ロスによる吐出量の減少を防止でき、しかも耐久性が保証できることから長期の安定した使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置の概略断面図である。
【図2】本発明の無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置の概略断面図であり、特に、動作説明の補助をするための図面である。
【図3】従来のダイヤフラム装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置
10…第1ピストンロッド
20…第2ピストンロッド
30…圧力調整用ピストン
40…ダイヤフラムピストン部
44…ダイヤフラム
51,55,65…逆止弁
P…圧力室
S…圧力調整室
H…圧力調整源室
F…フロント室
L…フリー移動距離
Claims (6)
- ダイヤフラムを装着したダイヤフラムピストン部の往復動で圧力室に流体を吸引、吐出するダイヤフラム装置において、
前記ダイヤフラムを介して圧力室の反対側に、ダイヤフラムが反転しないように作用する圧力調整室が形成されており、
前記ダイヤフラムピストン部には第1ピストンロッドが接合されるとともに、当該第1ピストンロッドには第2ピストンロッドが所定長さ相対的にフリー移動できるように連結されており、
前記第2ピストンロッドには、圧力調整用ピストンが固着されているとともに、この圧力調整用ピストンは、シリンダとして作用するシリンダ室と摺動するように配置され、当該圧力調整用ピストンによって、シリンダ室が圧力調整源室とフロント室が分離形成され、かつ前記フロント室が前記ダイヤフラムに近い側に位置し、前記圧力調整源室と前記圧力調整室は互いに連通されており、
前記圧力調整室の圧力は、前記圧力室から外部に流体を吐出する間および前記圧力室内へ流体の吸引開始から吸引完了に至るまで、前記圧力室の圧力よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置。 - 前記第1ピストンロッドと第2ピストンロッドとが相対的にフリー移動できる距離は、前記圧力室内への流体の吸引開始から吸引完了に至るまで、前記圧力調整室の圧力が前記圧力室内の圧力よりも小さくなるように設定される請求項1に記載の無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置
- 前記圧力調整源室には逆止弁が形成されており、当該圧力調整源室が実質的に大気圧以上にならないようになっている請求項1または請求項2に記載の無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置。
- 前記圧力室には流体を吸引、吐出するための逆止弁がそれぞれ形成されてなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置。
- 前記ダイヤフラムピストン部と、圧力調整用ピストンは同軸上に配設されてなる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置。
- 前記第2ピストンロッドには、圧力室に流体を吸引、吐出することができるように往復動装置が実質的に連結されてなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無反転ダイヤフラム機構を備えるダイヤフラム装置。
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