JP4342801B2 - シリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物及びその架橋成形物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物及びその加硫成形物に関するものである。一層詳細には、本発明は、機械的性質に優れた新規なシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物及びその加硫成形物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリカはカーボンブラックに次ぐ補強性を有することから、ゴムの補強剤として非常に有効である。従来、ポリクロロプレン系ゴム(CR)にシリカを配合する方法としては、混練法が用いられてきた。混練法とは、ハロゲン化珪素化合物や有機珪素化合物の熱分解、珪砂の加熱気化及び空気酸化などの製法で製造された乾式法シリカや、珪酸塩の熱分解または酸分解などの製法で製造された湿式法シリカといった市販シリカ粉末を、ロールやバンバリーミキサーを用いて、ゴムに配合する方法である。この方法では、ゴム組成物中に分散するシリカの凝集粒子径を出来るだけ小さくすることによって機械的特性が向上するが、現実にはゴム組成物中での最大凝集粒子径を50μm以下にすることは困難であり、従って、機械的強度の改善にも限界があった。
【0003】
一方、近年では、アルコキシシラン類化合物のゾルゲル反応を利用して、ポリマー中にシリカ微粒子が均一分散された複合材料を製造する技術の研究が盛んに行われている。ゴム材料においてもこの分野の研究が進んでおり、例えば、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)のラテックスにテトラエトキシシランを混合して、ラテックス中でゾルゲル反応を進行させ、シリカ複合化SBRが得られることがわかっている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、上記のSBRに関する研究の場合、ラテックスにアルコキシシラン類化合物を添加して撹拌した段階では、反応液は均一に乳化しているものの、ゾルゲル反応の進行途中で反応系が凝固(ゲル化)している。そのため、凝固(ゲル化)したものを切り刻んで取り出してから乾燥させている。このようなプロセスでは、大規模な生産は不可能である。
【0004】
【非特許文献1】
吉海和正、大崎徹郎、末吉梓:日本ゴム協会誌、2000年、第73巻、第3号、p.144〜151
【0005】
また、加硫SBRの使用限界温度はおよそ110℃であり、これ以上の高温に曝される用途には殆ど使用出来ない。このような用途では、クロロプレン系重合体のような耐熱性に優れるゴムを使用する必要がある。
【0006】
一方、本出願人は、アルコキシシリル基含有重合体が、それ自体ゴム素材になり、かつゴム組成物として用いると、ゴムの機械的強度を高めることができることを見出して、クロロプレン系重合体とアルコキシシリル基含有重合体とからなる新規なポリクロロプレン系ゴム組成物及びその架橋成形物を、「ポリクロロプレン系ゴム組成物及びその架橋成形物」なる名称の特許出願を本出願と同日付けで出願した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のアルコキシシリル基含有重合体を含有する新規なポリクロロプレン系ゴム組成物及びその架橋成形物について、更に機械的強度が優れるゴム組成物及びその成形物を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アルコキシシリル基含有重合体を含有する新規なポリクロロプレン系ゴム組成物において、更にシリカを含むことにより、好ましくは、該シリカを金属アルコキシドのゾルゲル反応を応用して微細な粒子として分散させることによって、更にゴムの機械的強度を高めることができることを見出して、本発明を達成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、シリカとクロロプレン系重合体とアルコキシシリル基含有重合体とを含み、クロロプレン系重合体100質量部に対して、シリカが2〜100質量部の量で存在し、アルコキシシリル基含有重合体が0.5〜25質量部の量で存在することを特徴とするシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物。
【0010】
また、本発明は、上記シリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物において、シリカが、最大凝集粒子径0.005〜5μmの凝集粒子として又は最大一次粒子径0.005〜0.2μmの粒子として分散されるシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物でもある。
【0011】
更に、本発明は、更に、加硫剤を、クロロプレン系重合体100質量部に対して、0.05〜20質量部の量で含有するシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物である。
【0012】
なお更に、本発明は、上記シリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物を架橋成形してなる成形物である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。本発明において用いるクロロプレン系重合体とは、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下、クロロプレンと記す)の単独重合体またはクロロプレンと共重合可能な単量体の一種類以上とを共重合して得られる共重合体である。
【0014】
クロロプレンと共重合可能な単量体とは、クロロプレンと有意に共重合する単量体であればいずれでもよいが、これにはアルコキシシリル基共役ジエン含有単量体は含まれない。クロロプレンとアルコキシシリル基含有共役ジエン単量体との共重合体は、アルコキシ基含有重合体と見なす。
クロロプレンと共重合可能である単量体の一例を挙げれば、共役ジエン単量体としては、1−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、2−フロロ−1,3−ブタジエン、2−ブロム−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエンなどがあり、ビニル単量体としては、アクリロニトリル、スチレン及びスチレン誘導体、アクリル酸及びアクリル酸エステル類、メタクリル酸及びメタクリル酸エステル類などがある。更に、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、硫黄などがある。これらの単量体は、必要に応じて二種類以上併用してもよい。クロロプレン以外の単量体の仕込量は特に限定されないが、単量体の合計100質量部の内、クロロプレン以外の単量体が0.01質量部以上10質量部以下であるのが好ましい。クロロプレン以外の単量体を0.01質量部以上共重合させることで、反応性の官能基を導入したり、重合体の結晶化速度を低くさせたりすることができる。しかし、クロロプレンの重合速度は、他の単量体の重合速度に比べて著しく速いので、クロロプレン以外の単量体を10質量部よりも多く共重合させるのは難しい場合が多い。なお、クロロプレン系重合体は、0.1質量%テトラヒドロフラン溶液をGPC測定(スチレン換算)することによって得られる数平均分子量が、10万以上100万以下であるのが好ましい。
【0015】
本発明におけるアルコキシシリル基含有重合体とは、アルコキシシリル基含有共役ジエン単量体の単独重合体またはアルコキシシリル基含有共役ジエン単量体と共重合可能な単量体の一種類以上とをラジカル共重合して得られる重合体である。
【0016】
アルコキシシリル基含有共役ジエン単量体とは、分子内に共役二重結合及びアルコキシシリル基を含有する構造を有する化合物であればいずれでもよく、二種類以上を併用してもよい。
アルコキシシリル基含有共役ジエン単量体の例としては、1−トリメトキシシリル−1,3−ブタジエン、1−トリエトキシシリル−1,3−ブタジエン、1−トリプロポキシシリル−1,3−ブタジエン、1−トリイソプロポキシシリル−1,3−ブタジエンなどの1−アルコキシシリル−1,3−ブタジエン類、2−トリメトキシシリル−1,3−ブタジエン、2−トリエトキシシリル−1,3−ブタジエン、2−トリプロポキシシリル−1,3−ブタジエン、2−トリイソプロポキシシリル−1,3−ブタジエンなどの2−アルコキシシリル−1,3−ブタジエン類、あるいは、4−メチレン−5−ヘキセニルトリメトキシシラン、4−メチレン−5−ヘキセニルトリエトキシシラン、4−メチレン−5−ヘキセニルトリプロポキシシラン、4−メチレン−5−ヘキセニルトリイソプロポキシシランなどの4−メチレン−5−ヘキセニルアルコキシシラン類がある。
【0017】
アルコキシシリル基含有共役ジエン単量体と共重合可能な単量体の例としては、1−クロロ−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン(即ちクロロプレン)、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、2−フロロ−1,3−ブタジエン、2−ブロム−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン及びスチレン誘導体、アクリル酸及びアクリル酸エステル類、メタクリル酸及びメタクリル酸エステル類、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド等が挙げられる。共重合可能な単量体は、二種以上を用いてもよい。アルコキシシリル基含有共役ジエン単量体と共重合可能な単量体の共重合量は40モル%以上99.9モル%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明において用いるアルコキシシリル基含有重合体中におけるアルコキシシリル基含有共役ジエン単量体の共重合量は、0.1モル%以上60モル%以下であることが好ましい。アルコキシシリル基含有重合体は、0.1モル%よりも少ないと、アルコキシシリル基の導入効果が得られにくい。また、アルコキシシリル基含有共役ジエン単量体は比較的高価であるため、60モル%よりも多く共重合させようとすると、経済的に不利となるため好ましくない。アルコキシシリル基含有重合体は、0.1質量%テトラヒドロフラン溶液をGPC測定(スチレン換算)することによって得られる数平均分子量が、5,000以上300,000以下であることが好ましく、更に好ましくは5,000以上200,000以下である。この範囲であれば、重合反応中における共重合体のゲル化が起こりにくい。
【0019】
本発明において、アルコキシシリル基含有単量体の合計の1モル%以上50モル%以下の範囲で、アルコキシシリル基含有共役ジエン単量体の一部をアルコキシシリル基含有ビニル単量体に代えて用いてもよい。このようなアルコキシシリル基含有ビニル単量体の例としては、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシランなどを挙げることができる。
【0020】
アルコキシシリル基含有重合体の製造において用いるアルコキシシリル基含有共役ジエン単量体は、共重合反応を効率的に進める上で、上記の中でも4−メチレン−5−ヘキセニルアルコキシシラン類が好ましい。
【0021】
4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランは、新規な物質であり、下記式によって表される:
【化1】
(式中、R、R’、R”は互いに同一であっても異なってもよく、炭素数1〜5の炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基である)。
【0022】
4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランは、下記の通りにして合成することができる。
溶媒中で、下記の式で示される2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリド:
【化2】
と、下記の式で示される3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシラン:
【化3】
(Xはハロゲン原子であり、R、R’、R”は、上に定義したのと同じである)とをカップリング反応させることによって4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランが得られる。
【0023】
4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの合成において用いる2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドとは、2−クロロ−1,3−ブタジエンのグリニャール試薬のことである。
【0024】
2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの合成方法の一例を示す。マグネシウム粉末と、2−クロロ−1,3−ブタジエンと、溶媒と、塩化亜鉛とを混合して加熱することによって、2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの溶液を得る。反応温度は40〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。40℃より低いと、反応率が低くなる可能性があり、100℃よりも高いと、原料化合物の揮発や2−クロロ−1,3−ブタジエンの重合が著しく起こり収率が低下する可能性がある。この反応では、系内に水分があると誘導期があったり反応率が低下したりする傾向があるため、使用する原料試薬は全て乾燥または脱水したものを使用することが好ましい。使用する溶媒は、原料試薬を溶解することができるものであれば、特に限定しないが、沸点が40℃以上の有機溶媒が好ましく、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DIMSO)、ジグライム、トリグライム、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、o−キシレン、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。このうち、テトラヒドロフラン(THF)が、蒸留分離が容易であるため最も好ましい。2−クロロ−1,3−ブタジエンの量は、溶媒に対して、0.5〜2.5mol/Lとすることが好ましい。この範囲であれば、安全に高い濃度の2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリド溶液を得ることが出来る。2−クロロ−1,3−ブタジエンの反応率は100%とすることが好ましい。未反応の2−クロロ−1,3−ブタジエンが残ると、蒸留操作が複雑になる。
【0025】
4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの合成において用いる3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランは、下記の式で表される化合物である:
【化4】
(Xはハロゲン原子であり、塩素及びヨウ素であるのが一般的であり;R,R’,R”は、上に定義したのと同じである)。
【0026】
3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの具体例として、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメチルシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリプロポキシシラン、3−ヨードプロピルトリプロポキシシランなどを挙げることができる。
【0027】
4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの合成において用いる3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランは、アルコキシ基の炭素数が小さい方が最終目的物の沸点が低くなり、精製操作が容易となることから、アルコキシ基の炭素数が小さいものを使用するのが好ましい。この関係で、本発明において用いる3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランにおけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5であり、好ましくは1〜2である。
【0028】
3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランにおけるハロゲン原子は、塩素及びヨウ素が一般的であるが、塩素化されたものよりもヨウ素化されたものの方がカップリング反応の反応速度が速い。これらの理由から、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリエトキシシランを使用するのが好ましい。
【0029】
カップリング反応速度を高めるために、3−クロロプロピルトリアルコキシシランにおける塩素を、あらかじめヨウ素に置換して3−ヨードプロピルトリアルコキシシランとして用いてもよい。このような置換反応は、ヨウ化ナトリウムのような金属ヨウ化物と3−クロロプロピルトリアルコキシシランとを、脱水アセトンのような溶媒に溶解させ、温度40〜100℃、好ましくは50〜80℃において、反応させることによって実施することができる。ヨウ素への置換は、ガスクロマトグラフィーによって確認することができる。反応液を冷却した後に、反応液を過剰のヘキサンのような溶媒に入れて塩化ナトリウムを析出させた後に、蒸留を行って3−ヨードプロピルトリアルコキシシランを得ることができる。
【0030】
カップリング反応速度を高めるために、また、触媒を用いても構わない。触媒としては、塩化銅(I)、塩化銅(II)、塩化リチウム、塩化ニッケル(II)などを挙げることができる。触媒を用いる場合、その使用量は、3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシラン、及び2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリド1molに対して、0.05〜0.20molであることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.15molである。この範囲であれば、高い収率で目的とする化合物を得ることが出来る。
【0031】
4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの合成におけるカップリング反応は、下記のようにして実施する。まず、反応容器において、必要に応じて触媒を溶媒中に溶解させる。反応温度は40〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。40℃よりも低いと、反応率が低くなる可能性があり、100℃よりも高いと、4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの重合が起こる可能性がある。使用する溶媒は、沸点が40℃以上の有機溶媒が好ましく、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DIMSO)、ジグライム、トリグライム、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、o−キシレン、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。このうち、テトラヒドロフラン(THF)が、蒸留分離が容易であるため最も好ましい。次いで、反応容器に、上述した通りにして合成した2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの溶液を加えた後に、3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの溶液を滴下して加える。3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの添加量は、溶媒に対して、0.5〜2.5mol/Lとすることが好ましい。この範囲であれば、高い収率で4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランを得ることが出来る。また、3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの量と、2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの量とは等モルにすることが好ましい。後者が過剰であると、ケイ素原子上でも置換反応が起こり、下式に示すような二量体が生成する場合がある。
【化5】
カップリング反応は発熱反応であるため、3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの溶液を滴下する速度は、反応液の温度を上昇させ過ぎないように、調節する。カップリング反応の進行は、ガスクロマトグラフィーによって確認することができる。
【0032】
カップリング反応が終了したことを確認した後に、塩化アンモニウムなどの塩の水溶液と、ジエチルエーテルなどの有機溶媒とを用いて、一般的な抽出操作を行って生成物を精製する。精製操作を行った後に蒸留することによって、4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランが高い純度で得られる。
【0033】
アルコキシシリル基含有重合体としては、クロロプレンとアルコキシシリル基含有ジエン単量体との共重合体を用いるのが好ましい。
【0034】
本発明において、クロロプレン系重合体及びアルコキシシリル基含有重合体を製造する際の重合方法は特に限定されず、塊重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれでもよい。特に、重合体をラテックス状態で得ることができるために、乳化重合がより好ましい。ラテックスの状態で利用することの利点は、ゾルゲル反応に必要な水を既に含んでいることと、容易に均一混合が可能であることである。
【0035】
本発明において用いるクロロプレン系重合体及びアルコキシシリル基含有重合体は、開始剤、乳化剤及び/または分散剤、反応溶媒、連鎖移動剤、重合停止剤、重合温度、最終重合率、脱モノマーなどを適切に選定、制御することで、溶剤可溶部の分子量、溶剤不溶分(ゲル含有量)などを調整することが可能である。
【0036】
開始剤は、過酸化物、アゾ系化合物などの従来ラジカル重合において公知の開始剤から適宜選択すれば良い。
過酸化物の一例を挙げれば、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、イソブチリルパーオキサイド、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクシニックパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキサイド)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどがある。
【0037】
アゾ系化合物の一例を挙げれば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)などがある。
【0038】
乳化重合によってラテックス状態で重合体を製造する場合には、乳化剤及び/または分散剤が必要となる。この場合の乳化剤及び/または分散剤は特に限定するものではなく、各種アニオン系、ノニオン系、カチオン系が使用できる。アニオン系としては、カルボン酸型、硫酸エステル型などがあり、例えば、ロジン酸のアルカリ金属塩、炭素数が8〜20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドとの縮合物などが挙げられる。ノニオン系の具体例としては、水溶性高分子、エーテル型、エステル型、ソルビタンエステル型、ソルビタンエステルエーテル型、アルキルフェノール型などがあり、例えば、ポリビニルアルコール及びその共重合体、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ソルビタンモノオレート等を挙げることができる。カチオン系の具体的としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アミン塩、芳香族4級アンモニウム塩等があり、例えば、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
クロロプレン系重合体ラテックスの製造では、安定に重合することが可能であるロジン酸のアルカリ金属塩を使用することが好ましい。
一方、アルコキシシリル基含有重合体ラテックスの製造では、乳化重合中にアルコキシシリル基の加水分解を起こさないように、反応系のpHを中性付近に維持することが好ましい。この場合には、pHが中性付近でも乳化安定性を維持し易いことから、ノニオン系乳化剤または硫酸エステル型アニオン系乳化剤が、より好適である。
【0039】
乳化重合に使用される乳化剤及び分散剤の添加量は、初期仕込み単量体の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部が好適である。0.5質量部よりも少ないと、乳化が不十分である可能性があり、20質量部よりも多いと、撹拌時の発泡が問題となったり、最終的なゴム製品の物性に悪影響したりする可能性が考えられる。
【0040】
溶液重合の場合に用いる反応溶媒としての有機溶剤は特に限定されない。具体的には、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが挙げられ、2種類以上の有機溶剤を混合しても良い。
【0041】
連鎖移動剤の種類は特に限定されるものではなく、通常クロロプレンの乳化重合に使用されるものが使用できるが、例えばn−ドデシルメルカプタンやtert−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0042】
重合停止剤(重合禁止剤)は特に限定するものでなく、例えば、2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ヒドロキノン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンなどが使用できる。
【0043】
重合時の重合温度は特に限定されるものではないが重合反応を円滑に行うために、重合温度を10℃以上50℃以下とすることが好ましい。
【0044】
最終重合率は、特に限定するものではなく、任意に調節することができる。未反応の単量体は減圧加熱等の公知の方法によって除去でき、その方法は特に限定するものではない。
【0045】
本発明におけるアルコキシシリル基含有重合体の使用量は特に限定されないが、クロロプレン系重合体を固形分換算で100質量部に対して、アルコキシシリル基含有重合体を固形分換算で0.5〜25質量部の添加量が好ましい。0.5質量部よりも少ない場合には、添加効果が得られにくく、25質量部を超える場合には、ゴムの加工性を低下させてしまう可能性がある。
【0046】
本発明のゴム組成物中におけるシリカの含有量は特に限定されないが、クロロプレン系重合体100質量部に対して、2質量部以上100質量部以下が好ましい。2質量部よりも少ないと補強効果が得られにくいが、100質量部よりも多いと加工性が低下する可能性がある。
【0047】
本発明のシリカは、接着後の乾燥被膜(接着剤層)中において、最大凝集粒子径が0.005μm以上5μm以下、さらに好ましくは、0.005μm以上0.5μm以下の凝集粒子として分散していることが好ましい。この範囲であれば、高い耐熱接着力を発現させることができる。
なお、シリカの最大凝集粒子径とは、本発明のゴム組成物を接着剤として用いた場合の乾燥被膜(接着剤層)中に分散しているシリカの凝集粒子の最大径のことであり、乾燥被膜の破断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)または原子間力顕微鏡(AFM)によって観察して測定する。
【0048】
本発明のシリカは、最大一次粒子径が0.005μm以上0.2μm以下であることが好ましい。この範囲であれば、耐熱接着力を著しく向上させることができる。
なお、シリカの最大一次粒子径とは、上記凝集粒子を構成する粒子で、分子間の結合を切断することなく存在する最小単位の粒子の最大サイズのことである。乾燥被膜中では、一次粒子の凝集体(凝集粒子)として分散しており、破断面の観察から最大一次粒子径を判定することは困難である。そこで、本発明では、乾燥被膜を酸素または空気雰囲気中で700℃以上で完全に燃焼させ、燃焼残分(灰分)に含まれているシリカを、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)または原子間力顕微鏡(AFM)によって観察して、最大一次粒子径を判定する。
【0049】
本発明のシリカは、クロロプレン系重合体及びアルコキシシリル基含有重合体及び水の存在下において、アルコキシシラン類化合物の加水分解及び縮合反応、いわゆるゾルゲル反応を進行させることによって生成させることが好ましい。
好適な具体例としては、クロロプレン系重合体ラテックスにアルコキシシリル基含有重合体ラテックス及びアルコキシシラン類化合物を混合する工程と、アルコキシシラン類化合物をシリカに転化させる工程と、乾燥させる工程を備えた製造方法によって、シリカを配合する方法が挙げられる。
【0050】
アルコキシシラン類化合物とは、同一分子内に1つ以上のケイ素原子と2つ以上のアルコキシ基を有する、分子量100〜1000の低分子量化合物である。四官能性アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン(TPOS)等が挙げられる。
三官能性アルコキシシランとしては、フェニルトリエトキシシラン(PTEOS)、オクタデシルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
二官能性アルコキシシランとしては、ジエトキシジメチルシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシ等が挙げられる。
本発明では、二種類以上のアルコキシシラン類化合物を混合して用いてもよい。上記の化合物うち、安価であり、大気中で容易に取り扱うことができることから、テトラエトキシシラン(TEOS)が最も好ましい。
アルコキシシラン類化合物の添加量は、シリカの配合量を考慮して決定すれば良い。
【0051】
クロロプレン系重合体及びアルコキシシリル基含有重合体及び水及びアルコキシシラン類化合物を混合する工程(以下、混合工程と記す)では、固形のクロロプレン系重合体及びアルコキシシリル基含有重合体、水、アルコキシシリル化合物をバンバリーミキサーや押出機などの中で混合する方法、または、クロロプレン系重合体ラテックスとアルコキシシリル基含有ラテックスの混合ラテックスにアルコキシシラン化合物を直接添加・乳化させる方法などが挙げられる。後者の方が低温での作業であり、簡便であるため好ましい。
また、前記のアルコキシシラン類化合物をある程度予め重縮合反応させて低分子量のポリシロキサンの状態でラテックスに添加する方法でも良い。
【0052】
アルコキシシラン類化合物をシリカに転化させる工程では、上記の混合工程で得られた混合物を任意の温度及び時間で熟成させ、ゾルゲル反応を進行させる。反応温度は特に限定しないが、10℃以上50℃以下が好ましい。10℃よりも低いとゾルゲル反応速度が遅過ぎる可能性があり、50℃よりも高いとポリマーの劣化やゲル化が起こる可能性が考えられる。反応時間は特に限定されない。反応時間は、アルコキシシラン化合物の添加量によって変化するので、反応混合物の固形分測定や比重測定等の手段によって、アルコキシシラン類化合物の反応率を確認して決めればよい。
【0053】
反応系は、密閉系である必要はなく、開放系であっても構わない。ゾルゲル反応中は、反応混合物を撹拌または振盪することによって、より微細なシリカ粒子を形成することが出来る。
【0054】
また、塩酸、硫酸等の酸触媒、またはアンモニア水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基触媒を添加することによって、効率的にゾルゲル反応を進行させることができる。酸触媒ではアルコキシラン類化合物が線状の重合体(ポリシロキサン)となり易いのに対して、塩基触媒ではアルコキシシラン類化合物が網目状に重縮合したゲル体となり易いことから、塩基触媒が好適である。
【0055】
ラテックス系または溶液系でゾルゲル反応を行う場合には、反応が終了した後に、反応液を乾燥させる工程が必要である。乾燥方法は、公知のポリクロロプレン系ラテックスの仕上げ方法を適用することができ、そのまま蒸発乾燥させる方法や、一旦凍結させた後に水洗・乾燥させる方法等が可能である。ゾルゲル反応中に反応系が凝固する場合には、凝固物をそのまま乾燥させることによって目的とするシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴムが得られる。
【0056】
本発明に用いる加硫剤としては、酸化亜鉛または酸化マグネシウムが好ましいが、それ以外に有機過酸化物、トリアジン化合物、ビスマレイミド化合物、酸化鉛、三酸化鉄、酸化チタン、酸化カルシウム、ハイドロタルサイト類などの、ゴム加工分野で広く知られた架橋剤が用いられる。
有機過酸化物の一例を挙げれば、イソブチリルパーオキサイド、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクシニックパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキサイド)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどがある。
【0057】
トリアジン化合物の具体例としては、1,3,5−トリメルカプトトリアジン、1−ヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジエチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−シクロヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジブチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジメチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−アニリノ−3,5−ジメルカプトトリアジンなどがある。
【0058】
以上に示してきた加硫剤の添加量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。この範囲であれば、安定かつ効率的に加硫することが可能である。
【0059】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを配合することによって、より補強性を高めることが出来る。この場合のカーボンブラックは、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックのいずれでも良く、比重、平均粒子径、粒子形状、比表面積などの性状についても制限はない。
【0060】
カーボンブラックの添加量は、クロロプレン系重合体100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下が好ましく、10質量部以上50質量部以下が更に好ましい。70質量部を超えると加工性が低下する可能性があり、スコーチを起こしやすくなる。5質量部よりも少ないと添加効果が得られにくい。
【0061】
上記加硫剤及びカーボンブラックの他、一般的に用いられる加硫促進剤を併用すれば、効率的に加硫することができるため好ましい。加硫促進剤としては、チオウレア化合物、グアニジン化合物、チアゾール化合物、チウラム化合物などを適宜選択できる。なかでもCRを効率よく加硫することができるチオウレア化合物が好ましい。
チオウレア化合物の具体例としては、N,N’−ジフェニルチオウレア、トリメチルチオウレア、N,N’−ジエチルチオウレアなどがある。
グアニジン化合物の具体例としては、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニドジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩などがある。
チアゾール化合物の具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2−メルカプトベンチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどがある。
チウラム化合物の具体例としては、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどがある。
【0062】
加硫促進剤を配合する場合、その添加量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。この範囲であれば、安定な加硫することが可能である。
【0063】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、補強剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤などを配合することができる。
軟化剤としては、潤滑油、プロセスオイル、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルトなどの石油系軟化剤、菜種油、亜麻仁油、ヒマシ油、椰子油などの脂肪油系軟化剤があり、可塑剤としては、フタル酸誘導体であるジブチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレートなど、ジイソフタル酸誘導体であるジイソオクチルイソフタレートなど、アジピン酸誘導体であるジ−n−ブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(n−オクチル)アジペートなど、アゼライン酸誘導体であるジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレートなど、ゼバシン酸誘導体であるジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケートなど、この他、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、トリメリット酸誘導体、リン酸誘導体、グリセリン誘導体などがあり、クロロプレン系重合体100質量部に対して最大40質量部程度まで添加することができる。
【0064】
加工助剤としては、ステアリン酸などの脂肪酸、ステアロアミドの脂肪酸アミド、ブチルステアレートなどの脂肪酸エステルなどが用いられ、クロロプレン系重合体100質量部に対して、0.1〜5質量部程度まで添加することができる。
【0065】
老化防止剤としては、アミン系、イミダゾール系、カルバミン酸金属塩、フェノール系、ワックスなどが使用でき、クロロプレン系重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部程度添加することができる。
【0066】
本発明のCR系ゴム組成物の特性を損なわない範囲で、他種ゴムをブレンドすることも可能である。ブレンド可能なゴムの一例としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、塩素化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、クリロロスルホン化ポリエチレンなどが挙げられる。
【0067】
本発明のポリクロロプレン系ゴム組成物は、通常のポリクロロプレンゴムと同様に、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーなどの密閉混合機などを用いて各種配合剤を混練添加することによって得られる。本発明においては、こうして得られるポリクロロプレン系ゴム組成物を、該組成物に含まれる加硫剤の加硫開始温度以上に加熱することにより架橋成形物とすることができる。加硫時の温度や加硫時間は適宜設定することができ、例えば、加硫温度は、130〜220℃の範囲である。
【0068】
このようにして得られた架橋成形物は、特に機械的性質に優れ、従来のクロロプレン系重合体が用いられている用途、特に一般工業用ゴム製品、自動車部品、接着剤、工業用部品などに利用可能であり、これらに限定されない。
【0069】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0070】
実験例1
内容積10リットルの反応器に、窒素雰囲気中で、水100質量部、ロジン酸のナトリウム塩5質量部、水酸化ナトリウム0.3質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩0.3質量部、亜硫酸ナトリウム0.5質量部を仕込み、これらを溶解させた後に、クロロプレン単量体100質量部、n−ドデシルメルカプタン0.03質量部を撹拌しながら加えた。過硫酸カリウム0.1質量部を重合開始剤として用い、窒素雰囲気下35℃で重合し、最終重合率が65%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。減圧下で未反応単量体を除去し、ポリクロロプレン系ラテックスを得た。下記の方法で固形分濃度を測定し、固形分濃度が25.0質量%になるように純水で希釈した。このラテックスをラテックスAとする。
【0071】
[固形分濃度]
アルミ皿だけを秤量してAとした。ラテックス試料を2ml入れたアルミ皿を秤量しBとした。ラテックス試料を入れたアルミ皿を110℃雰囲気下で2時間乾燥させた後、秤量しCとした。固形分濃度(質量%)は下式により求めた。
固形分濃度={(C−A)/(B−A)}×100
【0072】
得られた重合体の数平均分子量を、下記の方法で測定したところ、15.2万であった。
[数平均分子量]
ラテックス試料をテフロン製のシャーレに入れ、−30℃の冷凍庫内で24時間凍結した後、23℃で24時間真空乾燥させ、厚さ1mmの乾燥シートを得た。この乾燥シートを鋏で刻み、0.1質量%となるように、テトラヒドロフランに溶解させ、下記の条件で数平均分子量を測定した。
装置:HLC−8120GPC(東ソー株式会社製)、プレカラム:TSKガードカラムHHR−H、分析カラム:HSKgelGMHHR−H、サンプルポンプ圧:8.0〜9.5MPa。
【0073】
実験例2
内容積10リットルの反応器に、窒素雰囲気中で、水100質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩1.5質量部、水酸化ナトリウム1.5質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩1質量部を仕込み、溶解させた後に、撹拌しながらクロロプレン単量体96質量部、メタクリル酸ブチル単量体2質量部、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン単量体2質量部、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド0.6質量部を加えた。過硫酸カリウム0.2質量部を開始剤として用い、窒素雰囲気下35℃で重合し、最終重合率が70%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。減圧下で未反応単量体を除去し、ポリクロロプレン系ラテックスを得た。実験例1と同様の方法で固形分濃度を測定し、固形分濃度が25質量%になるように純水で希釈した。このラテックスをラテックスBとする。実験例1と同様の方法で数平均分子量を測定したところ、16.0万であった。
【0074】
実験例3
内容積10リットルの反応器に、窒素雰囲気中で、水100質量部、ラウリル硫酸ナトリウム塩1.2質量部、水酸化ナトリウム1.5質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩1質量部を仕込み、溶解させた後に、撹拌しながらクロロプレン単量体96質量部、アクリロニトリル単量体2質量部、1−クロロ−1,3−ブタジエン単量体2質量部、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド0.6質量部を加えた。過硫酸カリウム0.2質量部を開始剤として用い、窒素雰囲気下30℃で重合し、最終重合率が70%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。減圧下で未反応単量体を除去し、ポリクロロプレン系ラテックスを得た。実験例1と同様の方法で固形分濃度を測定し、固形分濃度が25質量%になるように純水で希釈した。このラテックスをラテックスCとする。実験例1と同様の方法で数平均分子量を測定したところ、15.8万であった。
【0075】
実験例4
ヨウ化ナトリウム135.0g(0.9mol)と3−クロロプロピルトリメトキシシラン59.6g(0.3mol)とを、脱水アセトン900mlに溶解させた。80℃で4日間還流させた。ガスクロマトグラフィーによって、全量ハロゲン置換したことを確認した後、冷却した。反応液を過剰のヘキサンに入れて塩化ナトリウムを析出させた後、蒸留をおこなった。3−ヨードプロピルトリメトキシシランは、77℃、5mmHgで留出し、主留として80.5g得られた。
【0076】
実験例5
ヨウ化ナトリウム135.0g(0.9mol)と3−クロロプロピルトリエトキシシラン72.2g(0.3mol)を、脱水アセトン900mlに溶解させた。80℃で4日間還流させた。ガスクロマトグラフィーによって、全量ハロゲン置換したことを確認した後、冷却した。反応液を過剰のヘキサンに入れて塩化ナトリウムを析出させた後に、蒸留を行った。3−ヨードプロピルトリメトキシシランは、86℃、5mmHgで留出し、主留として80.5g得られた。
【0077】
実験例6
2−クロロ−1,3−ブタジエン30.0g(0.34mol)、テトラヒドロフラン(THF)170ml、マグネシウム粉末6.2g、塩化亜鉛5.0gを混合して約80℃で加熱した。2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドのTHF溶液を得た。このTHF溶液の一部を、HCl水溶液とNaOH水溶液で滴定した結果、2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの濃度は1.0mol/Lであることが分かった。
【0078】
参考例1
500ml丸底フラスコに、無水塩化リチウム0.64g(0.015mol)と、無水塩化銅(II)1.01g(0.0075mol)と、脱水テトラヒドロフラン(THF)75mlを入れて溶解させた。続いて、実験例4で作製した3−ヨードプロピルトリメトキシシランを43.5g(0.15mol)添加した。実験例6で作製した2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドのTHF溶液150mlを、滴下漏斗を用いて、少量ずつ添加した。滴下速度は、反応液が40〜50℃程度になるように調節した。ガスクロマトグラフィーにより、カップリング反応の反応率が100%であることを確認した後、塩化アンモニウムの20質量%水溶液200mlに、反応液を添加して混合した。ジエチルエーテルで5回抽出操作を行い、蒸留した。
【0079】
4−メチレン−5−ヘキセニルトリメトキシシランを、70℃、5mmHgで留出し、主留として25.5g(0.12mol)得た。ガスクロマトグラフィーにて純度を測定した結果、99.5%以上であった。蒸留による回収率は78.5%であった。
【0080】
参考例2
500ml丸底フラスコに、無水塩化リチウム0.64g(0.015mol)と、無水塩化銅(II)1.01g(0.0075mol)と、脱水テトラヒドロフラン(THF)75mlを入れて溶解させた。続いて、実験例4で作製した3−ヨードプロピルトリエトキシシランを49.8g(0.15mol)添加した。実験例6で作製した2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドのTHF溶液150mlを、滴下漏斗を用いて、少量ずつ添加した。滴下速度は、反応液が40〜50℃程度になるように調節した。ガスクロマトグラフィーにより、カップリング反応の反応率が100%であることを確認した後、塩化アンモニウムの20質量%水溶液200mlに、反応液を添加して混合した。ジエチルエーテルで5回抽出操作を行い、蒸留した。
【0081】
4−メチレン−5−ヘキセニルトリエトキシシランを、75℃、5mmHgで留出し、主留として31.3g(0.12mol)得た。ガスクロマトグラフィーにて純度を測定した結果、99.5%以上であった。蒸留による回収率は80.6%であった。
【0082】
実験例7
3Lガラス製丸底フラスコを反応器に、窒素雰囲気中で、クロロプレン単量体943.8g(10.6mol)、4−メチレン−5−ヘキセニルトリエトキシシラン単量体56.2g(0.22mol)、1−ドデカンチオール2.2g、純水1150g、ラウリル硫酸ナトリウム40.0gを仕込み乳化させた。乳化後、過硫酸カリウム1gを開始剤として用い、窒素雰囲気下35℃で重合し、最終重合率が59%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。減圧下で未反応単量体を除去し、アルコキシシリル基含有重合体ラテックスを得た。実験例1と同様の方法によって、このラテックスの固形分濃度を測定したところ、32.6質量%であった。このラテックスをラテックスDとする。実験例1と同様の方法で数平均分子量を測定した結果、8.4万であった。
メタノール析出とベンゼン溶解を繰り返し行い、ラテックスBから精製ポリマーを取り出し、1H−NMR測定によって、共重合体の溶剤可溶分のモノマー組成比を調べた。共重合体中におけるクロロプレン共重合量は98.7モル%で、4−メチレン−5−ヘキセニルトリエトキシシランの共重合量は1.3%であった。
【0083】
実施例1
実験例1で得られたラテックスAを4253.7g(見掛け質量(ウエット質量、すなわち水を含む質量))に対して、実験例7で得られたラテックスDを66.3g(見掛け質量)混合した。つまり、固形分換算でのクロロプレン系重合体とアルコキシシリル基含有重合体の質量比は、100対2.0である。
この混合ラテックスに対して、テトラエトキシシランを416.1g添加した。ホモジナイザーで800rpm,15分間撹拌した後、29質量%のアンモニア水溶液を36.6g添加し、25℃で24時間撹拌した。24時間後、反応乳化液を−60℃で1日間凍結させ、真空乾燥させた。
以下の方法でシリカ含有率を測定したところ、10質量%であった。
【0084】
[シリカ含有率]
TG/DTA20(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、空気雰囲気における150℃残分率と800℃残分率を測定し、下式により算出した。試料量は約15mg,昇温速度は20℃/min,空気流量は500ml/min,到達温度は805℃である。
シリカ含有率=(800℃残分率/150℃残分率)×100
【0085】
このゴムの最大凝集粒子径、機械的特性を測定し、その結果を表1に示す。機械的特性の測定方法は、以下のとおりである。
【0086】
[機械的特性]
ゴム100質量部に対して、加硫剤として酸化亜鉛(ZnO#2/堺化学工業株式会社製)10質量部及び加硫促進剤としてエチレンチオウレア(Accel22S/川口化学工業株式会社製)0.5質量部を、8インチロールを用いて配合し、この配合物を油圧プレスを用いて170℃で30分間加硫し、厚さ2mmの加硫シートを得た。JIS K6251に準拠して、200%伸長時の引張応力(M200)及び400%伸長時の引張応力(M400)を測定した。
【0087】
最大凝集粒子径の測定方法は、以下のとおりである。
[最大凝集粒子径]
加硫物の一部を液体窒素中で破断した時の破断面を、走査型電子顕微鏡で観察し、ポリクロロプレン系ゴム組成物中におけるシリカの凝集粒子の最大径を測定した。
【0088】
実施例2
実験例1で得られたラテックスAを3781.1g(見掛け質量)に対して、実験例7で得られたラテックスDを58.9g(見掛け質量)混合した。つまり、固形分換算でのクロロプレン系重合体とアルコキシシリル基含有重合体の質量比は、100対2.0である。
この混合ラテックスに対して、テトラエトキシシランを832.2g添加した。ホモジナイザーで800rpm,15分間撹拌した後、29質量%のアンモニア水溶液を37.1g添加し、30℃で24時間撹拌した。24時間後、反応乳化液を−60℃で1日間凍結させ、真空乾燥させた。
実施例1と同様の方法で、機械的特性を測定し、その結果を表1に示す。実施例1と同様の方法で、シリカ含有率、最大凝集粒子径を測定し、その結果を表1に示す。
【0089】
実施例3
実験例2で得られたラテックスBを3692.7g(見掛け質量)に対して、実験例7で得られたラテックスDを147.3g(見掛け質量)混合した。つまり、固形分換算でのクロロプレン系重合体とアルコキシシリル基含有重合体の質量比は、100対5.2である。
この混合ラテックスに対して、テトラエトキシシランを832.2g添加した。ホモジナイザーで800rpm,15分間撹拌した後、29質量%のアンモニア水溶液を37.1g添加し、35℃で20時間撹拌した。24時間後、反応乳化液を−60℃で1日間凍結させ、真空乾燥させた。
実施例1と同様の方法で、機械的特性を測定し、その結果を表1に示す。実施例1と同様の方法で、シリカ含有率、最大凝集粒子径を測定し、その結果を表2に示す。
【0090】
実施例4
実験例3で得られたラテックスCを3692.7g(見掛け質量)に対して、実験例7で得られたラテックスDを147.3g(見掛け質量)混合した。つまり、固形分換算でのクロロプレン系重合体とアルコキシシリル基含有重合体の質量比は、100対5.2である。
この混合ラテックスに対して、テトラエトキシシランを832.2g添加した。ホモジナイザーで800rpm,15分間撹拌した後、29質量%のアンモニア水溶液を37.1g添加し、40℃で20時間撹拌した。24時間後、反応乳化液を−60℃で1日間凍結させ、真空乾燥させた。
実施例1と同様の方法で、機械的特性を測定し、その結果を表1に示す。実施例1と同様の方法で、シリカ含有率、最大凝集粒子径を測定し、その結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
比較例1
表面温度を50℃に調節したミキシングロールを用いて、市販のデンカクロロプレンM−40 500gに対して、市販シリカ粉末のニプシルVN−3(日本シリカ工業株式会社製)を55.6g配合した。M−40の数平均分子量(スチレン換算)をGPC測定したところ、15.3万であった。実施例1と同様の方法によって、この配合物の機械的特性を、また、実施例1と同様の方法によって、シリカ含有率、最大凝集粒子径を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0093】
比較例2
表面温度を50℃に調節したミキシングロールを用いて、市販のデンカクロロプレンM−40 500gに対して、市販シリカ粉末のニプシルVN−3(日本シリカ工業株式会社製)を125.0g配合した。実施例1と同様の方法によって、この配合物の機械的特性を、また、実施例1と同様の方法によって、シリカ含有率、最大凝集粒子径を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
【発明の効果】
表1及び2から分かる通りに、クロロプレン系重合体とアルコキシシリル基含有重合体とシリカとからなる本発明のゴム組成物(実施例1〜4)は、アルコキシシリル基含有重合体を含有しない従来のゴム組成物(比較例1及び2)よりも、シリカ粒子が微細に分散していることが明らかであり、優れた機械的特性を示すことも明らかである。
Claims (9)
- シリカとクロロプレン系重合体とアルコキシシリル基含有重合体とを含み、前記アルコキシル基含有重合体はアルコキシシリル基含有共役ジエン単量体の共重合量が0.1モル%以上60モル%以下であり、クロロプレン系重合体100質量部に対して、シリカが2〜100質量部の量で存在し、アルコキシシリル基含有重合体が0.5〜25質量部の量で存在することを特徴とするシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物。
- 前記シリカが、最大凝集粒子径0.005〜5μmの凝集粒子として分散されることを特徴とする請求項1記載のシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物。
- 前記シリカが、最大凝集粒子径0.005〜0.5μmの凝集粒子として分散されることを特徴とする請求項2記載のシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物。
- 前記シリカの最大一次粒子径が0.005〜0.2μmであることを特徴とする請求項1記載のシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物。
- 前記シリカが、クロロプレン系重合体ラテックスにアルコキシシラン類化合物を配合し、アルコキシシラン類化合物のゾルゲル反応によりシリカが生成されることによって得られることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載のシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物。
- 更に、加硫剤を、クロロプレン系重合体100質量部に対して、0.05〜20質量部の量で含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載のシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物。
- 更にカーボンブラックを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載のシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物。
- 更に加硫促進剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載のシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物。
- 請求項6〜8のいずれか一に記載のシリカ複合化ポリクロロプレン系ゴム組成物を架橋成形してなる成形物。
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