JP4342641B2 - 燃料タンクブリーザ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は自動2輪車等の車両における燃料タンクブリーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料タンクブリーザ装置は公知であり、例えば、特開昭55−160674号には燃料タンク内にサブタンクを設け、この中にブリーザーチューブを配設したものが示されている。
【0003】
また、図4に示すように、燃料タンク1の上部からブリーザチューブ2Aを延出し、さらにワンウエイバルブ3A,3B及びブリーザチューブ2B,2Cを交互に接続させて直列状に連続させ、ブリーザチューブ2Cの延出端を図示しないキャッチタンクへ接続させたものも公知である。
【0004】
ワンウエイバルブ3A,3Bは、それぞれ中央部がバルブ本体部4をなし、その内部にキャッチタンク側の内圧が高いときのみ燃料タンク1側へ開く弁体5が設けられるとともに、バルブ本体部4の両側から反対方向へ突出する一対のジョイント部6が一体に設けられている。
【0005】
このジョイント部6は、ブリーザチューブ2A,2B,2Cの内径よりも若干大きな外径を有する細いパイプ状をなし、これをブリーザチューブ2A,2B,2Cへ差し込むことによりワンウエイバルブ3Aをブリーザチューブ2Aと2Bの間へ、及びワンウエイバルブ3Bをブリーザチューブ2Bと2Cの各間へそれぞれ接続し、ブリーザチューブ2Bと2Cの内径とジョイント部6の内径をほぼ一致させて、全体として通路断面積がほぼ一定の連通路を形成するようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特開昭は、複雑な構造となりかつ装置の大型化や重量化さらには高価格を招くため有利ではなく、特にレース仕様車では、できるだけ簡素な構造でかつ可能な限り配設スペースをとらないように小型化・軽量化できることが要求されるから、この点では図4のような形式が有利となる。
【0007】
しかし、図4のような構造の場合、バルブ本体部4に軽便な構造を採用することによりワンウエイバルブ3A,3Bを安価にしているため、燃料タンク1側からキャッチタンク側へどうしても若干の燃料洩れを生じることになる。けれどもかかる燃料洩れは燃料を節約する点で可及的に少なくすることが望まれており、特に耐久レース仕様車では可能な限り燃料洩れを阻止することが要求される。そこで、本願発明はこれら要請の実現を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願の燃料タンクブリーザ装置に係る第1の発明は、燃料タンクの上部から延出するブリーザチューブを設け、その延出端をキャッチタンクへ接続するとともに、ブリーザチューブの中間部に燃料タンク側からの燃料通り抜けを阻止するワンウエイバルブを設けた燃料タンクブリーザ装置において、上記ブリーザチューブを、外側チューブと、その長さ方向内側へ部分的に重なるように挿入される内側チューブとで構成し、外側チューブのうち内側チューブが設けられていない部分を通路断面積が部分的に拡大する大径部とするとともに、
ワンウェイバルブに外側チューブを接続するジョイント部を形成し、
このジョイント部と外側チューブの間に内側チューブを配置したことを特徴とする。
【0009】
第2の発明は上記第1の発明において、上記大径部を上記ワンウエイバルブよりも燃料タンク側に設けたことを特徴とする。
【0010】
【発明の効果】
第1の発明によれば、ブリーザチューブの中間部に大径部を設けたので、燃料タンク側から気化状態でキャッチタンク側へ流出しようとする燃料は、この大径部へ入ったとき通路断面積が大きくなって内圧が低下するために液化し、空気と気液分離して再び燃料タンク側へ戻り易くなる。このため、ブリーザチューブから流出する燃料を可及的に減少させることができる。
【0011】
しかも、ブリーザチューブを外側チューブとその長さ方向内側へ部分的に重なるように挿入される内側チューブとで構成したので、外側チューブのうち内側チューブが設けられていない部分が前記大径部として機能できる。したがってブリーザチューブの外径をそのままにして、その内部に大径部を形成できるから、ブリーザ装置を大型化する必要がなく、かつ配設スペースに制約のある環境でも、従来と同様に使用できる。
【0012】
そのうえ、単に内側チューブを用いてブリーザチューブの通路断面積を部分的に変化させることにより大径部を形成するだけであるから、簡単な構造で大径部を形成でき、かつコンパクトで軽量にできるとともに安価にできる。
【0013】
第2の発明によれば、ワンウエイバルブの燃料タンク側に大径部を設けたため、ワンウエイバルブへ流入する前に大径部にて燃料を気液分離できるから、ワンウエイバルブとして従来と変わらない安価なものを採用できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき、耐久レース用自動2輪車に適用された実施例について説明する。図1は本実施例にかかるブリーザ装置の要部を一部破断して示す図、図2はこのブリーザ装置を適用した自動2輪車の燃料タンク回りを示す図、図3はバルブ本体部の拡大断面である。なお、これら各図において図4の従来例と共通する部分は共通符号を用いるものとする。
【0015】
まず、図2において、耐久レース用に構成された自動2輪車の燃料タンク1は上部中央に給油部10が設けられ、その前方からはブリーザチューブ2A,2B,2Cが車体前方へ延出している。このブリーザチューブは2A,2B,2Cに分割され、それぞれビニール等の柔軟で耐油性のある適宜材料からなるものである。
【0016】
ブリーザチューブ2Aの一端は燃料タンク1へ接続され、ブリーザチューブ2Cの延出端はメインフレーム11の外側面に支持されたキャッチタンク12へ接続されている。キャッタンク12は、内部に設けられている捕集材により気化燃料を分離吸収されるとともに大気開放されており、ブリーザチューブ2A,2B,2Cを介して燃料タンク1内を大気と連通させている。
【0017】
ブリーザチューブ2Aと2B並びにブリーザチューブ2Bと2Cの各間には2個のワンウエイバルブ3A,3Bがそれぞれ取付けられており、燃料タンク1内の気化燃料がキャッチタンク12側へ流出することを阻止している。なお、図中の符号13は燃料加圧装置の吸気管、14はハンドル、15は計器盤、16はヘッドライト、17はフロントフォーク、18はラジエタ、19は前輪である。
【0018】
次に、ブリーザ装置の詳細を図1に基づいて説明する。本図に示すブリーザチューブ2A,2B,2C及びワンウエイバルブ3A,3Bは前記従来例と同一構造であるが、ジョイント部6の外径D1はブリーザチューブ2A,2B,2Cの各内径D2よりも小さく、したがって、ジョイント部6の内径はブリーザチューブ2A,2B,2Cの各内径D2よりも小さくなるとともに、ジョイント部6の外周面とブリーザチューブ2A,2B,2Cの内周面との各間に内側チューブ20が介在されている。
【0019】
この内側チューブ20は金属や合成樹脂等の適宜材料からなる直管状の部材であり、予めブリーザチューブ2A,2B,2Cの端部から内部へ押し込むことにより密に嵌合されてブリーザチューブ2A,2B,2Cの各開口端近傍部内側へ長さ方向で部分的に重なり、かつ挿入部の先端位置はジョイント部6の先端と略一致するようになっている。なお、ブリーザチューブ2A,2B,2Cは本願発明における外側チューブに相当する。
【0020】
また、燃料タンク1の上部へ一体に設けられた上方へ突出してブリーザチューブ2Aへ挿入されるジョイントパイプ21も、ジョイント部6と同様の外形寸法をなし、ジョイントパイプ21とブリーザチューブ2Aの内面との間にも内側チューブ20が介在されている。内側チューブ20の外形はブリーザチューブ2A,2B,2Cの各内径(D2)程度であり、その内径はジョイント部6及びジョイントパイプ21の各外径と同程度か若干小さくなっている。また、内側チューブ20の長さは、対応するジョイント部6及びジョイントパイプ21の各長さと同程度であり、小型部品となっている。
【0021】
このジョイントパイプ21と対向するジョイント部6の各先端間は、ブリーザチューブ2Aだけになり、その内側は内側チューブ20が存在せず、内側チューブ20の不連続部分となる。なお、内側チューブ20はブリーザチューブ2Aの両端部分のみに挿入されている。その結果、この不連続部の通路断面積はブリーザチューブ2A,2B,2Cの内径そのものであるD2となり、ジョイント部6及びジョイントパイプ21の各内径部分に対して通路断面積が拡大する大径部22A,22Bとなっている。
【0022】
さらに、2つのワンウエイバルブ3A,3B間においてブリーザチューブ2B内で対向する一対のジョイント部6間も内側チューブ20が存在しない内側チューブ20の不連続部分であり、この不連続部が大径部22Bになっている。すなわち、大径部も2ヶ所設けられることになり、大径部22Aはブリーザチューブ2A内、大径部22Bはブリーザチューブ2B内にそれぞれ形成されている。
【0023】
これらのワンウエイバルブ3A,3Bは同一構造であり、その詳細構造を図3に示す。これらのワンウエイバルブは、その外径部をなすバルブ本体部4を有し、このバルブ本体部4は熱可塑性の適宜合成樹脂からなり、ジョイント部6の軸線方向で接合される2分割のハウジング4A,4Bを備え、両部材の接合部は超音波溶着により気密に接合されて内部に弁体収容空間4Cを形成するとともに、各ハウジング4A,4Bにはそれぞれにジョイント部6が一体化され、互いに反対方向へ突出している。
【0024】
ハウジング4Aは、弁体収容空間4C内に臨むジョイント部6の開口部30上方へ張り出して先端部で弁体5を図の上方へ押し上げ付勢する片持ちバネ状の弾性腕部31を一体に有し、かつこれら開口部30及び弾性腕部31を囲み、ハウジング4Bの内側へ嵌合する環状のストッパ壁32を有する。
【0025】
ハウジング4Bは、弁体収容空間4C内に臨むジョイント部6の開口部近傍通路内にカラー33をネジ止めし、その弁体収容空間4C内へ突出する量を調節自在にするとともに、このカラー33の開口端を間隔をもって囲むとともに、弁体収容空間4C内へ突出する環状のバルブシート部34を一体に有する。
【0026】
弁体5は略円板状をなし、その円板部35の図中上面側部分はバルブシート部34へ着座し、下面先端側部分はストッパ壁32の上端部へ当接可能になっている。また、円板部35の外周部には弁体5の下動時にストッパ壁35の上部で閉塞される通気溝36が複数設けられている。
【0027】
弁体5の中央部には図の上下方向へ突出する一体の筒部37,38が一体に設けられ、これら筒部37,38の軸心部に上下へ貫通する軸穴39が形成されている。筒部37はカラー33へ嵌合して上下方向へ摺動自在であり、筒部38の下端部は弾性腕部31に支持され、かつこの弾性腕部31により通常時は軸穴39の下端開口部が閉じられている。
【0028】
弁体5は、図の上方となるキャッチタンク側と下方になる燃料タンク側との差圧で開閉し、燃料タンク側の内圧がキャッチタンク側と同じかもしくはそれよりも高ければ上動してバルブシート34へ着座するため、キャッチタンク側と燃料タンク側との連通が断たれたバルブ閉状態となる。
【0029】
逆にキャッチタンク側の内圧が高くなると弾性腕部31を変形させながら弁体5を下動させ、連通溝36を介してキャッチタンク側と燃料タンク側を連通するバルブ開状態となる。また、ストッパ壁32に当接して下動を停止し、連通溝36が閉塞されても、変形した弾性腕部31により軸穴39の下端開口部が開放されるため、軸穴39を介して連通が保たれる。
【0030】
なお、弾性腕部31の付勢力並びにストッパ壁32及びバルブシート34の弁体5へ向う突出量はバルブの開閉動作を確実にするように設定される。但し、バルブ閉状態においても、円板部35のバルブシート34に対する着座部及び軸穴39に対する弾性腕部31の閉塞部を通して燃料タンク側からキャッチタンク側へ若干量の気体流出を回避できないことは前述の通りである。
【0031】
次に、本実施例の作用を説明する。図1において燃料タンク1の加熱や給油により燃料タンク1側から、気化した燃料が空気とともにジョイントパイプ21からブリーザチューブ2Aの大径部22A内へ流入すると、この部分は通路断面積が大きくなっているため、内圧が急激に低下し、その結果、気化していた燃料は液化して空気と気液分離し、ブリーザチューブ2A内を滴下して燃料タンク1側へ戻り易くなる。
【0032】
残った空気と、分離しきれなかった気化燃料は、ワンウエイバルブ3A内へ入り、ここでその多くが弁体5によりキャッチタンク側への流出を阻止されるが、それでもなお、一部が弁体5とそのシート部との間隙より流出する。しかし、この1番目のワンウエイバルブ3Aを通過した燃料もすぐに2番目の大径部22Bへ入り、ここで同様に気液分離され、さらにここで残っても2番目のワンウエイバルブ3Bによりキャッチタンク側への流出を阻止されるので、燃料の流出を可及的に阻止できる。
【0033】
なお、2番目の大径部22Bで気液分離された燃料は、1番目のワンウエイバルブ3Aにおける弁体5の上へ滴下するが、弁体5は燃料タンク1側へ向かって開くようになっており、燃料タンク1側への通過を許容するので、燃料は燃料タンク1へ戻ることができる。
【0034】
しかも、本実施例のようなレース仕様車では、特殊な急速給油装置を用いて給油部10から燃料を加圧急速充填することが行われ、給油時には燃料タンク1から多量の燃料がブリーザチューブ2A内へ流出してくるが、このような場合でも十分な燃料の回収を期待できる。
【0035】
そのうえ、本実施例では、ブリーザチューブ2A,2B,2Cの各端部内へ内側チューブ20を挿入することにより、大径部22A,2Bを形成したので、ブリーザチューブ2A,2B,2Cを特殊構造にすることなく簡単に大径部22A,22Bを安価に形成できる。しかもブリーザチューブ2A,2B,2Cの外径側を拡張させないので、従来のブリーザチューブ2A,2B,2Cをそのまま使用できる。また、内側チューブ20をブリーザチューブ2A,2B,2Cの各端部内側へ挿入するだけなので、内側チューブ20を小型部品にすることができ、かつ取付も容易となる。
【0036】
したがって、本実施例のように耐久レース用車両に適用した場合、部品の配設スペースに制約が大きいにもかかわらず、これまでと同様に使用できる。また、燃料洩れを可及的に少なくすることにより、給油回数を少なくしてタイムアップに貢献できる。特に長時間の競争となり、このような燃料洩れの影響が顕著となる耐久レースに好適である。
【0037】
なお、本願発明では、上記実施例に限定されず、種々に応用や変形が可能である。例えば、ブリーザチューブ2A,2B,2Cはワンウエイバルブ3A,3Bにおけるハウジング4A,4Bの外径と同程度まで太径にしても、部品配設スペースの制約を受けにくくできるから、太径のブリーザチューブを採用すれば大径部の大容量化を簡単に実現できる。さらに、このブリーザ装置を使用する対象は、必ずしもレース仕様車に限らず、一般車両に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例にかかるブリーザ装置の要部を一部破断にして示す図
【図2】このブリーザ装置を適用した自動2輪車の燃料タンク回りを示す図
【図3】バルブ本体部の構造を示す拡大断面図
【図4】従来例における図1と同様の図
【符号の説明】
1:燃料タンク、2:ブリーザチューブ(外側チューブ)、3:ワンウエイバルブ、5:弁体、6:ジョイント部、20:内側チューブ、21:ジョイントパイプ、22:大径部、31:弾性腕部、34:バルブシート
Claims (2)
- 燃料タンクの上部から延出するブリーザチューブを設け、その延出端をキャッチタンクへ接続するとともに、ブリーザチューブの中間部に燃料タンク側からの燃料通り抜けを阻止するワンウエイバルブを設けた燃料タンクブリーザ装置において、上記ブリーザチューブを、外側チューブと、その長さ方向内側へ部分的に重なるように挿入される内側チューブとで構成し、外側チューブのうち内側チューブが設けられていない部分を通路断面積が部分的に拡大する大径部にするとともに、
ワンウェイバルブに外側チューブを接続するジョイント部を形成し、
このジョイント部と外側チューブの間に内側チューブを配置したことを特徴とする燃料タンクブリーザ装置。 - 上記大径部を上記ワンウエイバルブよりも燃料タンク側に設けたことを特徴とする請求項1に記載した燃料タンクブリーザ装置。
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