JP4340647B2 - ヤーン及びグランドパッキン - Google Patents

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Description

本発明は、ヤーン及びグランドパッキンに係り、詳しくは、編組タイプのグランドパッキンや紐状ガスケット、耐火クロス等に用いられるヤーン、並びにそのヤーンを用いて作成されるグランドパッキンに関するものである。
流体機器の軸封部などに用いるグランドパッキンや、それに用いるヤーン(編み糸)に関する従来技術としては、特許文献1や特許文献2に示されたもののように、基材として膨張黒鉛を用いたものが知られている。これら特許文献1,2においては、グランドパッキン用としてのヤーンを、繊維材を編む又は組むこと(ニット編みや編組等)によって成る筒状部材内に長尺状の膨張黒鉛シートを充填することで形成することが開示されている。そして、上記のようにして形成されるヤーンを複数本用いてのひねり加工又は編組(例:8本の編み糸による8打角編)により、グランドパッキンが作成される。
このような構成の膨張黒鉛製ヤーンを用いる従来技術は、膨張黒鉛基材の外周を補強線材でニット編み等して被覆してあるので、これら複数のヤーンを編組してグランドパッキンを製造する際に各ヤーンに生じる引っ張り力やねじり力に対して、補強線材を編む又は組むことで成る筒状部材がこれに対抗し、その筒状部材内にある膨張黒鉛基材の破断が防止されることを意図して成されたものである。
特開昭63−1863号公報 特公平6−27546号公報
しかしながら、これら従来技術によるヤーンを用いての編組によりグランドパッキンを作成した場合、部分的に膨張黒鉛が切断欠落してその部分には補強繊維しか存在しないという不都合の生じることがあった。これは次のような原因によるものである。即ち、ヤーンをひねり加工又は編組すべく曲げたり捩ったりした場合に、筒状部材内の膨張黒鉛シートがその曲りや捩りに追従できない部分があり、そのような部分は筒状部材を形成する繊維材どうしの間からはみ出てしまうこととなる。この不都合は、ヤーンとしての最小曲げ半径があまり小さくならないことに起因している。
従って、部分的に繊維材間から膨張黒鉛がはみ出ている状態のヤーンの複数を、グランドパッキンにすべくひねり加工又は編組すると、それに伴う隣合うヤーンどうしの擦れ合いにより、繊維材間からはみ出している膨張黒鉛が削り取られてしまうという不都合である。上述のような不都合が生じると、その不都合部分、即ち膨張黒鉛の欠落部分におけるシール性が低下することになり、具合が悪い。
本発明の目的は、繊維材を編む又は組むことによって成る筒状部材内に基材としての膨張黒鉛を充填して成るヤーンを更に改良することにより、グランドパッキンを作成すべくひねり加工又は編組する際の部分的な膨張黒鉛の欠落が生じないように、膨張黒鉛を基材とするヤーンを、通常の曲げ処理における膨張黒鉛のはみ出しが生じない柔軟性に富む改善されたものとする点にある。また、その改善されたヤーンによって形成されるシール性に優れるグランドパッキンを得ることも目的である。
請求項1に係る発明は、ヤーン1において、繊維材2を編む又は組むことによって成る筒状部材3内に、幅wを厚みtで除した値である縦横比hが1〜5に設定される断面を有する長さが200mm前後の繊維状膨張黒鉛4を、それらの端部をずらしながら入れ込んで充填して形成されることを特徴とするものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のヤーン1において、前記断面の縦横比hが1.0〜3に設定されていることを特徴とするものである。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のヤーン1において、前記繊維状膨張黒鉛4の厚みtが0.25mm〜0.50mmに設定されていることを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、グランドパッキン5において、請求項1〜3の何れか一項に記載のヤーン1の複数本を集束してひねり加工又は編組して紐状に構成されることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、繊維材を編む又は組むことによって成る筒状部材内に充填する膨張黒鉛として、縦横比が1〜5に設定された断面を有する繊維状膨張黒鉛を用いる手段であり、これによってヤーンとしての最小曲げ(特に幅方向の曲げ)半径が、従来品に比べて明確に小さくなることが確認された(図4参照)。故に、ヤーンをひねり加工又は編組すべく曲げたり捩ったりした場合に、筒状部材内の膨張黒鉛シートがその曲りや捩りに十分追従できるようになって、繊維材どうしの間からはみ出てしまうことが解消され、グランドパッキンにすべく複数のヤーンをひねり加工又は編組する際に、隣合うヤーンどうしの擦れ合いによって繊維材間からはみ出している膨張黒鉛が削り取られてしまうという不都合が生じないようになる。従って、グランドパッキンにおける膨張黒鉛の欠落に起因したシール性低下が回避されるようになるのである。
その結果、グランドパッキンを作成すべくひねり加工又は編組する際の部分的な膨張黒鉛の欠落が生じないように、膨張黒鉛を基材とするヤーンを、通常の曲げ処理における膨張黒鉛のはみ出しが生じない柔軟性に富む改善されたものとして提供することができる。そして、請求項4のように、ヤーンの複数本を集束してひねり加工又は編組して紐状に構成することにより、膨張黒鉛の欠落によるシール性低下が生ぜず、長期に亘って良好なシール性を有する改善されたグランドパッキンを提供することができる。
請求項2の発明によれば、繊維状膨張黒鉛の断面の縦横比を1〜3に設定することにより、前述した最小曲げ半径が飛躍的に小さくなることが確認され、請求項1の発明による前記作用効果がさらに強化されるヤーンを提供することができる。この場合、請求項3のように、繊維状膨張黒鉛の厚みを0.25mm〜0.50mmに設定すれば、実用に適した望ましいヤーンを構成することが可能となる。
以下に、本発明によるヤーン及びそれを用いたグランドパッキンの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1はヤーンの製作状況を示す概略説明図、図2は、図1のヤーンを用いて作成されたグランドパッキンを示す図、図3は繊維状膨張黒鉛の断面寸法を示す拡大図、図4,5は繊維状膨張黒鉛の縦横比と曲げ半径との関係データを示す図、図6はグランドパッキンの使用例を示す図である。
本発明によるグランドパッキン用のヤーン(編み糸)1は、図1に示すように、繊維材2の編組によって成る筒状部材3内に、幅を厚みで除した値である縦横比hが1〜5(1≦h≦5)に設定される断面を有する繊維状膨張黒鉛4を充填して形成されている。前記縦横比hは、図3に示すように、繊維状膨張黒鉛4の断面寸法における幅wを厚みtで除した(割った)値(h=w/t)である。尚、繊維状膨張黒鉛4の断面形状は、例えば、長円形や楕円径等、矩形以外の形状でも良い。
図4及び図5においては、繊維状膨張黒鉛4の厚みtが、0.25mm、0.38mm、0.50mmの3種類について、縦横比hが1.5,2,3,4,5の5種類の計15通りのサンプル(ヤーン1)について、幅方向の曲げ可能半径を測定してデータを取ったものである。この場合の「曲げ可能半径」とは、繊維状膨張黒鉛4の切断、割れが生じない正常な状態で曲げうる最小径のことである。繊維状膨張黒鉛4の厚みtが0.25mmのものは小径グランドパッキン用のヤーンに、0.38mmのものは普及型のグランドパッキン用ヤーンに、そして0.50mmのものは大径グランドパッキン用のヤーンにそれぞれ適している、という使用形態が考えられる。
例えば、断面形状の縦横比hが10であるといった扁平な断面形状を有する膨張黒鉛シートを用いたヤーンでは、その長手方向の引張り力が作用すると、断面形状における長手方向である幅寸法が長いためにその両端での応力に差が出易いことから、その内部応力を緩和すべく引張り力が作用するに伴って自然に断面形状がC型等の湾曲形状に変化する性質がある。しかしながら、筒状部材内に充填されている状態では、膨張黒鉛シートが個々に丸く断面変化することが物理的に困難な状況にあるため、従来品においては、引張り力が強くなると内部応力の緩和ができず、従って切れてしまう他なかったのである。そこで、本発明によるヤーン1では、前述のように断面形状の縦横比hが5以下とされた繊維状膨張黒鉛4を用いているので、引張りに伴う断面湾曲型への変化を要することなくある程度の内部応力の緩和が可能になるとともに、隣合う繊維状膨張黒鉛どうしの滑りも良くなり、従って、実用上で十分な曲げ性能を有するヤーン1を実現できたと考えられる。
しかして図4の表や図5のグラフから分るように、繊維状膨張黒鉛4の縦横比hが5以下になると実用に耐え得る最小曲げ半径値が得られるものであり、縦横比hが3以下になると、最小曲げ半径が極端に小さくなることが伺える。従って、縦横比hの範囲は、好ましくは1.0〜3.0の範囲(1.0≦h≦3.0)に設定されるのが望ましい。hが1であるとは、厚さが0.25mmの場合には幅も0.25mmとなり、物理的に切断するのが困難になるから、切断作業の実情から、縦横比hの下限を1に設定するのが現実的であると思われる。尚、図4,5の実験データからは、縦横比hが1.5〜3.0の範囲のヤーン1が良い。
図2に示すグランドパッキン5は、上述のヤーン1の8本(複数本の一例)を芯材Sの周りに(芯材Sが無くても良い)集束してひねり加工又は編組(8打角編等)して紐状に構成されたものであり、これを連続して丸めて圧縮成形することにより、断面が矩形で全体形状がドーナツ型のリング形のグランドパッキンGとすることができる。例えば、図6に示すように、グランドパッキンGは、回転軸6の軸方向に複数個並ぶ状態でパッキンボックス7に装備され、かつ、パッキン押え8によって軸方向に押圧されることにより、回転軸6の外周面6aに対してシール作用するように用いられる。
〔実施例1〕
実施例1によるヤーンは、次のように作成される。繊維材2として直径0.1mm程度のインコネル線(又はステンレス線等)を用いて編組(ニット編)によって成る筒状部材3内に、厚さ0.38mm×幅1.0mmの矩形断面形状を為し、かつ、長さが200mm前後の繊維状膨張黒鉛4の多数を、それらの端部を20mmずらしながら入れ込んで充填させ、断面形状が円形(丸型)のヤーン1とした。この実施例1による第1ヤーン1における繊維状膨張黒鉛4の断面の縦横比hは、h=1.0/0.38≒2.63であり、また、第1ヤーン1の重量は5g/mであった。
図2に、実施例1のヤーン1を用いて成るグランドパッキン5が示されている。このグランドパッキン5は、実施例1のヤーン1を8本用いて編組(8打角編等)した後に、表面に黒鉛を塗布し、断面が縦8mmで横8mmの正方形を呈するグランドパッキン5を製作した。
〔実施例2〕
実施例2によるヤーンは、次のようにして作成される。断面サイズが厚さ0.38mmで、幅1.0mm、長さ200mmの繊維状膨張黒鉛4を、その端部を30mmずつずらしながら収束させて長尺品とし、その外周を線径0.1mmのインコネル線による繊維材2を用いてニット編みして成る筒状部材3で被覆し、断面形状が円形(丸型)のヤーン1を製作した。この実施例2による第2ヤーン1における繊維状膨張黒鉛4の縦横比hは、h=1.0/0.38≒2.63であり、また、第2ヤーン1の重量は4g/mであった。
この実施例2によるヤーン1を8本用いて編組してから、表面に黒鉛を塗布し、断面が縦6.5mmで横6.5mmの正方形を呈するグランドパッキン5を製作した(図2参照)。
参考に、本発明の上記実施例1,2のヤーンと、従来構造による従来品1〜5にヤーンとの特性比較表を図7に示す。従来品の概略構成は次の通りである。従来品1のヤーンは、細幅の膨張黒鉛シートの複数枚を積層して、その外周を繊維で補強する構造のものである。従来品2のヤーンは、広幅の膨張黒鉛テープを折畳んで成る紐状体の外周を繊維で補強する構造のものである。従来品3のヤーンは、繊維で補強された広幅の膨張黒鉛テープを折畳み又は加撚する構造のものである。従来品4のヤーンは、従来品3のヤーンの外周をさらに繊維で補強する構造のものである。従来品5のヤーンは、繊維で形成した筒状部材内に短冊状の膨張黒鉛シートを充填する構造のものである。
図7の特性比較表から、実施例1,2のヤーン1の伸びは、従来品1〜5のいずれのものよりも明確に優れており、レベルの高いものとなっていることが理解できる。
以上より、本発明によるヤーン1、及びそれによるグランドパッキン5には次のような利点がある。1.繊維状膨張黒鉛の収束本数を変更することで、任意の太さのヤーンを製作することが可能である。2.繊維状膨張黒鉛どうしの滑りが良く、そのために膨張黒鉛が切れることがないと共に伸びも大きい。3.繊維束は容易に断面が変形して丸形になるので、補強材との密着性が良く、かつ、曲げ易い。4.長尺の材料を使用しないので、生産が容易である。5.接着剤無しでヤーンを製作することが可能である。
ヤーンの概略の作り方を示す作用図 図1のヤーンの編組によるグランドパッキンを示す斜視図 繊維状膨張黒鉛の断面形状及び寸法比率を示す説明図 繊維状膨張黒鉛の断面の幅/厚みの比率と最小曲げ半径との対比表を示す図 繊維状膨張黒鉛の断面の幅/厚みの比率と最小曲げ半径との関係グラフを示す図 グランドパッキンの使用例を示す要部の断面図 ヤーンの従来品と本発明品との特性比較表を示す図
符号の説明
1 ヤーン
2 繊維材
3 筒状部材
4 繊維状膨張黒鉛
5 グランドパッキン
t 繊維状膨張黒鉛の断面厚み
w 繊維状膨張黒鉛の断面幅

Claims (4)

  1. 繊維材を編む又は組むことによって成る筒状部材内に、幅を厚みで除した値である縦横比が1〜5に設定される断面を有する長さが200mm前後の繊維状膨張黒鉛を、それらの端部をずらしながら入れ込んで充填して形成されるヤーン。
  2. 前記縦横比が1〜3に設定されている請求項1に記載のヤーン。
  3. 前記繊維状膨張黒鉛の厚みが0.25mm〜0.50mmに設定されている請求項1又は2に記載のヤーン。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載のヤーンの複数本を集束してひねり加工又は編組して紐状に構成されるグランドパッキン。
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