JP4338004B2 - ロケットモータのノズルカバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロケットモータのノズルを一時的に閉塞しておくのに用いられるロケットモータのノズルカバー(ノズルクロージャ)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のロケットモータのノズルカバーとしては、例えば図5および図6に示すようなものがあった。図5に尾部側を示すロケットモータ100は、燃焼室101を形成するモータケース102の尾部内側にノズル103を設けたものであって、燃焼室101内に図示しない断熱材を介して固体推進薬104が装填してあると共に、尾部にノズルカバー105が装着してある。
【0003】
ノズルカバー105は、薄い金属製の円盤であって、図6に示すように、中心から放射状に8本の破裂促進用溝部105Aが形成してある。このノズルカバー105は、モータケース102の尾部端面との間にOリング106を介装すると共に、モータケース102の尾部外周にねじ結合したリング状の固定具107により、ノズル103の開口部を気密的に閉塞した状態にして開口部の周縁すなわちモータケース102の尾部端面に固定してある。
【0004】
上記ロケットモータ100のノズルカバー105は、燃焼室101内に塵埃等が侵入するのを防止し且つ固体推進薬104の吸湿を防止して、ロケットモータ100の長期保存性を高める働きをする。そして、固体推進薬104に点火した際には、燃焼室101内を初期燃焼圧力まで高める働きをし、その後、燃焼室101内の圧力が高まると、その圧力により溝部105Aに破断が生じ、図5中に仮想線で示すように花弁状に破裂変形する。これにより、ロケットモータ100は、ノズル103から燃焼ガスを噴出して飛翔を開始する。
【0005】
なお、ロケットモータのノズルカバーは、図5および図6に示すもののほか、例えば特公平6−56137号公報に開示されているものがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したような従来のノズルカバー105にあっては、燃焼室101内の圧力で花弁状に破裂変形した際、変形した部分がノズル103から噴出する高温の燃焼ガスと接触して溶融し、その一部が破損する恐れがあるという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0007】
なお、ノズルカバーの破損防止対策としては、例えば、早期に破裂し得るように溝部をより深く形成したり、溶融し難くするために板厚を大きくしたりすることが考えられる。ところが、溝部を深くすると、ロケットモータへの装着時や輸送時の衝撃でノズルカバーが破損しやすくなるという不具合があり、また、板厚を大きくすると、ノズルカバーが変形し難くなるので、燃焼ガスとの接触時間が長くなって破損防止効果が充分に得られないと共に、変形した部分でノズルの開口部を狭めてしまう恐れがあるという不具合があった。そして、この種のノズルカバーでは、非常に高い加工精度が要求されるうえに、溝部の深さや板厚を決定するために燃焼試験を繰り返し行う必要があるので、開発の手間やコストの面から見ても溝部の深さや板厚を設定し直すことは好ましくなかった。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、ロケットモータのノズルの開口部を閉塞した状態にして開口部の周縁に固定され、ロケットモータの燃焼圧力により中央部が破裂するノズルカバーにおいて、簡単な構造で破裂後の破損を確実に防止することができるロケットモータのノズルカバーを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わるロケットモータのノズルカバーは、請求項1として、ロケットモータのノズルの開口部を閉塞した状態にして開口部の周縁に固定され、ロケットモータの燃焼圧力により中央部が破裂するノズルカバーにおいて、カバー本体が、少なくとも開口部に対向する面に弾性を有する熱保護部材を備えている構成とし、請求項2として、熱保護部材が、燃焼ガスの熱によりアブレーションガスを発生する部材である構成とし、請求項3として、カバー本体が、中心から放射状に破裂促進用の溝部を備えており、熱保護部材が、カバー本体の溝部に対応する位置に同じく破裂促進用の溝部を備えている構成とし、請求項4として、カバー本体が、開口部の周縁に対向する面に熱保護部材を備えている構成としており、上記の構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。なお、上記の構成において、熱保護部材には、その素材として樹脂やゴムを使用することができる。
【0010】
【発明の作用】
本発明の請求項1に係わるロケットモータのノズルカバーでは、ロケットモータのノズルの開口部を閉塞した状態にして開口部の周縁に固定されるカバー本体により、ロケットモータ内に塵埃や湿気が入り込むのを防止する機能と、ロケットモータ内の初期燃焼圧力を得る機能が得られる。そして、当該ノズルカバーでは、カバー本体が、少なくとも開口部に対向する中央部の面に弾性を有する熱保護部材を設けているので、ロケットモータ内の圧力によりカバー本体の中央部が破裂した際には、熱保護部材がカバー本体とともに破裂変形してノズルの中心線側に面する状態となり、この熱保護部材によってノズルから噴出する高温の燃焼ガスからカバー本体を保護し、カバー本体の溶融および破損を防止する。
【0011】
本発明の請求項2に係わるロケットモータのノズルカバーでは、熱保護部材として、燃焼ガスの熱によりアブレーションガスを発生する部材すなわちアブレーション材を用いているので、ロケットモータ内の圧力により破裂した際には、アブレーションガスによる自己冷却機能で高温の燃焼ガスからカバー本体をより確実に保護する。
【0012】
本発明の請求項3に係わるロケットモータのノズルカバーでは、カバー本体および熱保護部材が、中心から放射状に破裂促進用の溝部を備えており、且つ互いの溝部の位置を一致させているので、ロケットモータ内の圧力により破裂した際には、カバー本体および熱保護部材がいずれも溝部で破断して花弁状に変形することとなり、このような破断部分の一致により、変形したカバー本体におけるノズルの中心線側の全面が熱保護部材で確実に覆われた状態になる。
【0013】
本発明の請求項4に係わるロケットモータのノズルカバーでは、熱保護部材が弾性を有するものであり、カバー本体が、開口部の周縁に対向する外周部の面に熱保護部材を備えているので、当該カバー本体を開口部の周縁に固定した際に、熱保護部材がシール材の役目を果たすこととなり、別のシール材を用いることなくロケットモータ内の気密性を確保し得ることとなる。
【0014】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わるロケットモータのノズルカバーによれば、ロケットモータのノズルの開口部を閉塞した状態にして開口部の周縁に固定されるカバー本体により、ロケットモータ内に塵埃や湿気が入り込むのを防止する機能と、ロケットモータ内の初期燃焼圧力を得る機能を得ることができるうえに、ロケットモータ内の圧力により中央部を破裂させた際には、弾性を有する熱保護部材をカバー本体とともに変形させて、高温の燃焼ガスからカバー本体を保護することができ、カバー本体の溶融および破損を確実に防止することができる。また、カバー本体には既存のカバーを使用することも可能であるため、きわめて簡単で且つ比較的安価に実現し得る構造で、所定の強度を確保することができると共に、燃焼ガスの噴出に何ら影響の無い速やかな破裂変形を行うことができる。
【0015】
本発明の請求項2に係わるロケットモータのノズルカバーによれば、請求項1と同様の効果を得ることができるうえに、熱保護部材としてアブレーションガスを発生する部材を採用したことから、ロケットモータ内の圧力により破裂した際に、アブレーションガスによる自己冷却機能で高温の燃焼ガスからカバー本体をより確実に保護することができ、カバー本体の破損防止機能をより一層高めることができる。
【0016】
本発明の請求項3に係わるロケットモータのノズルカバーによれば、請求項1および2と同様の効果を得ることができるうえに、カバー本体および熱保護部材に互いに一致する溝部を備えたことにより、ロケットモータ内の圧力により破裂した際に、カバー本体および熱保護部材を同一の破断部分で花弁状に変形させてカバー本体におけるノズルの中心線側の全面を熱保護部材で確実に保護することができる。
【0017】
本発明の請求項4に係わるロケットモータのノズルカバーによれば、請求項1〜3と同様の効果を得ることができるうえに、弾性を有する熱保護部材をカバー本体の外周部に設けたことにより、当該カバー本体を開口部の周縁に固定した際に、熱保護部材を利用した簡単な構造でロケットモータ内の充分な気密性を容易に得ることができ、これにより、従来用いていたOリングやOリング装着部分の加工等が一切不要となって、ロケットモータの製造の手間やコストを減らすことができる。
【0018】
【実施例】
以下、図面に基づいて、本発明に係わるロケットモータのノズルカバーの一実施例を説明する。
【0019】
図1はロケットモータRの尾部側を示す図であって、図示のロケットモータRは、燃焼室1を形成する概略円筒状のモータケース2の尾部内側にノズル3が設けてある。ノズル3は、モータケース2との間に、尾部側への移動を規制する段部3Aを有し、モータケース2に対して堅固に固定されている。燃焼室1には、図示しない断熱材を介して固体推進薬4が装填してあるほか、点火用のイグナイタ等が設けてある。そして、ロケットモータRは、その尾部に、ノズル3の開口部(出口)を閉塞するノズルカバー5が装着してある。
【0020】
ノズルカバー5は、モータケース2の直径よりもやや小さい薄い金属製の円盤から成るカバー本体15を備えると共に、図2に示すように、カバー本体15のノズル3側の全面に、弾性を有する熱保護部材25を備えている。つまり、この実施例のノズルカバー5では、カバー本体15に対して、ノズル3の開口部を閉塞する中央部の面、および開口部の周縁すなわちモータケース2の尾部端面に対応する外周部の面のいずれの面にも熱保護部材25が設けてある。
【0021】
熱保護部材25は、樹脂やゴム等を素材とすると共に、固体推進薬4の燃焼ガスの熱によってアブレーションガスを発生する部材すなわちアブレーション材でもある。この熱保護部材25は、その素材によってカバー本体15に設ける手段を選択することが可能であり、別途成形した後にカバー本体15に貼り付けるようにしても良いし、カバー本体15に素材を塗布することで所定の厚さに成形するようにしても良い。
【0022】
さらに、カバー本体15および熱保護部材25には、中心から放射状に破裂促進用の溝部15A,25Aが設けてある。つまり、カバー本体15および熱保護部材25は、溝部15A,25Aの部分で肉厚が小さいものとなっている。この実施例の溝部15A,25Aは、断面三角形を成し、各々8本が45度間隔で設けてある。なお、各溝部15A,25Aは、カバー本体15および熱保護部材25の外周縁には達していない。したがって、カバー本体15および熱保護部材25の外周部分には、全周にわたって一定の肉厚が確保されている。そして、カバー本体15および熱保護部材25は、図2(c)の断面に示す如く互いの溝部15A,25Aの位置を一致させた状態にしている。
【0023】
そして、ノズルカバー5は、溝部15A,25Aをノズル3側に向けた状態にして、固定具6を介してモータケース2に取り付けられる。固定具6は、断面L形を成すリング状の部材であって、モータケース2の尾部外周に設けたおねじ部2Aと螺合するめねじ部6Aを有し、モータケース2の尾部端面との間でノズルカバー5の外周部を挟むようにして同モータケース2にねじ結合される。これにより、ノズルカバー5は、その中央部でロケットモータRのノズル3の開口部を閉塞した状態にし、その外周部でモータケース2の尾部端面すなわちノズル3の開口部の周縁に固定される。
【0024】
上記構成を備えたロケットモータRのノズルカバー5は、燃焼室1内に塵埃等が侵入するのを防止し且つ固体推進薬4の吸湿を防止して、ロケットモータRの長期保存性を高める働きをしており、このとき、熱保護部材25が弾性を有するので、モータケース2の尾部端面と固定具6に挟まれた外周部全体において、熱保護部材25により燃焼室1内の気密性を充分に確保し得るものとなっている。したがって、従来のノズルカバー(図5参照)のように、モータケース2の尾部端面とノズルカバー5との間にOリングを設ける必要が無く、また、モータケース2にOリング装着用の溝を形成するも無いので、その分ロケットモータRの製造の手間やコストを減らすことが可能である。
【0025】
さらに、当該ノズルカバー5は、ロケットモータRの固体推進薬4に点火した際、ノズル3の開口部を気密的に閉塞することで燃焼室1内を初期燃焼圧力まで高める働きをし、燃焼室1内が所定の圧力以上になるとカバー本体15および熱保護部材25の溝部15A,25Aで破断が生じ、図3に示すように中央部が花弁状に破裂変形する。
【0026】
このとき、ノズルカバー5は、弾性を有する熱保護部材25がカバー本体15とともに自在に変形してノズル3の中心線側に面する状態となり、しかも、カバー本体15および熱保護部材25の溝部15A,25Aが互いに同じ位置に設けてあるので双方の破断部分が一致し、変形したカバー本体15におけるノズル3の中心線側の全面が熱保護部材25で覆われた状態になる。したがって、後記するカバー本体15の熱保護がより確実になる。さらに、ノズルカバー5は、各溝部15A,25Aがカバー本体15および熱保護部材25の外周縁には達していないので、外周部分に破断が及ぶことはなく、これによりモータケース2から離脱することはない。
【0027】
上記の如くノズルカバー5が破裂変形すると、ノズル3から固体推進薬4の燃焼ガスが噴出し、ロケットモータRが飛翔を開始する。このとき、ノズルカバー5は、図3中の矢印で示す高温の燃焼ガスにさらされることとなり、図4に示すように熱保護部材25の一部が燃焼ガスの熱で溶融する。しかし、当該ノズルカバー5では、熱保護部材25の溶融範囲がカバー本体15に達することは無く、しかも、熱保護部材25からはアブレーションガスが発生するので、その潜熱による冷却効果でカバー本体15が高温の燃焼ガスから保護される。
【0028】
このように、上記実施例で説明したノズルカバー5では、燃焼室1内の気密を保持する本来の機能を備えているうえに、カバー本体15と熱保護部材25によるきわめて簡単で且つ比較的安価に実現し得る構造で、金属製のカバー本体15を高温の燃焼ガスから充分に保護し、カバー本体15の溶融を防止し且つ破損を確実に防止することができる。
【0029】
なお、本発明に係わるロケットモータのノズルカバーは、詳細な構成が上記実施例に限定されるものではなく、また、カバー本体および熱保護部材の素材や厚さはロケットモータの作動時間などに応じても適宜設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるロケットモータのノズルカバーの一実施例を説明する断面図である。
【図2】図1に示すノズルカバーの側面図(a)、正面図(b)および図b中のX−X線矢視に基づく断面図(c)である。
【図3】ノズルカバーが破裂した状態を説明する断面図である。
【図4】燃焼ガスにより熱保護部材が溶融した状態を示す拡大断面図である。
【図5】従来におけるロケットモータのノズルカバーの一実施例を説明する断面図である。
【図6】図5に示すノズルカバーの側面図(a)、正面図(b)および図b中のX−X線矢視に基づく断面図(c)である。
【符号の説明】
R ロケットモータ
1 ノズル
5 ノズルカバー
15 カバー本体
15A 溝部
25 熱保護部材
25A 溝部
Claims (4)
- ロケットモータのノズルの開口部を閉塞した状態にして開口部の周縁に固定され、ロケットモータの燃焼圧力により中央部が破裂するノズルカバーにおいて、カバー本体が、少なくとも開口部に対向する面に弾性を有する熱保護部材を備えていることを特徴とするロケットモータのノズルカバー。
- 熱保護部材が、燃焼ガスの熱によりアブレーションガスを発生する部材であることを特徴とする請求項1に記載のロケットモータのノズルカバー。
- カバー本体が、中心から放射状に破裂促進用の溝部を備えており、熱保護部材が、カバー本体の溝部に対応する位置に同じく破裂促進用の溝部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のロケットモータのノズルカバー。
- カバー本体が、開口部の周縁に対向する面に熱保護部材を備えていることを特徴とする請求項1〜3に記載のロケットモータのノズルカバー。
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