(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置を具体化した第1の実施形態について説明する。
図1に、上記制御装置が適用されるハイブリッド車両の概略構成を示す。このハイブリッド車両には動力を発生する動力源4が搭載されている。この動力源4は、内燃機関16、第1モータジェネレータ18、内燃機関16の動力を車輪側出力軸6と第1モータジェネレータ18とに分配する動力分配機構20等から構成されている。
内燃機関16は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの動力装置であって、吸入空気量や燃料噴射量、点火時期などの機関運転状態が制御されることにより、その出力トルクが調整される。
第1モータジェネレータ(以下、第1MGという)18は、第1インバータ24を介して蓄電装置、ここではバッテリ26に接続されており、基本的には内燃機関16の動力を利用して発電を行う発電機として機能する。ただし、後述する減速制御の実行時等では、電力が供給されることにより電動機として機能する。そして、上記第1インバータ24が制御されることにより、第1MG18の発電量や出力トルクは調整される。
動力分配機構20は、サンギア20aと、サンギア20aに対して同心円上に配置されたリングギア20bと、サンギア20a及びリングギア20bに噛合するピニオンギアを自転かつ公転自在に保持しているキャリア20cとを構成要素とする遊星歯車機構で構成されている。
キャリア20cには、ダンパー16bを介して内燃機関16のクランクシャフト16aが接続されており、同キャリア20cが入力要素になっている。また、サンギア20aには第1MG18の回転軸が接続されており、同サンギア20aが反力要素になっている。そして、リングギア20bには車輪側出力軸6が接続されており、このリングギア20bが出力要素となっている。
内燃機関16の動力は、上記動力分配機構20を介して上記車輪側出力軸6に伝達され、この車輪側出力軸6に伝達された動力は、デファレンシャルギア8を介して車輪10に伝達される。車輪10には、その回転を制動する制動装置であるブレーキ50が設けられており、このブレーキ50は、運転者によるブレーキペダルの操作、あるいは後述する電子制御装置30からの制御信号に基づいてその作動が制御される。
図2(A)に上記動力分配機構20の共線図を示す。この図2(A)に示されるように、内燃機関16の動力は、動力分配機構20を介して車輪側出力軸6と第1MG18とに分配される。また、例えば車輪側出力軸6の回転速度を一定とした場合、第1MG18の回転速度を変化させることにより、内燃機関16の回転速度を連続的に変化させることができる。すなわち、第1MG18の制御を通じて、内燃機関16を効率よく運転させることが可能となっている。
また、このハイブリッド車両には、車両走行のための駆動力を出力する駆動制御や運動エネルギを回収する回生制御が可能な電動機である第2モータジェネレータ(以下、第2MGという)12も設けられている。この第2MG12は変速機14を介して車輪側出力軸6に接続されており、第2MG12から車輪側出力軸6に伝達されるトルクは、変速機14にて可変設定される変速比に応じて増減される。また、この第2MG12も、第2インバータ29を介してバッテリ26に接続されており、第2インバータ29が制御されることにより、第2MG12の出力トルクや回生トルクは調整される。
上記変速機14は、一組のラビニョ型遊星歯車機構によって構成されている。すなわち、この変速機14には、第1サンギア14aと第2サンギア14bとが設けられており、第1サンギア14aにショートピニオン14cが噛合するとともに、そのショートピニオン14cと第2サンギア14bとがロングピニオン14dに噛合している。そして、ロングピニオン14dがリングギア14eに噛合している。ショートピニオン14c及びロングピニオン14dは、キャリア14fによって自転かつ公転自在に保持されている。こうした構成により、第1サンギア14aとリングギア14eとは、ショートピニオン14c及びロングピニオン14dを備えるダブルピニオン型遊星歯車機構をなしており、また、第2サンギア14bとリングギア14eとは、ロングピニオン14dを備えるシングルピニオン型遊星歯車機構をなしている。
また、変速機14には、第1サンギア14aを選択的に固定する第1ブレーキB1と、リングギア14eを選択的に固定する第2ブレーキB2とが設けられている。これら第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2は、油圧を利用した係合力に応じてそのトルク容量が連続的に変化するように構成されている。なお、油圧のみならず、例えば電磁力等を利用した係合力にてトルク容量を連続的に変化させるようにしてもよい。
そして、第2サンギア14bには前述した第2MG12が連結されており、キャリア14fには上記車輪側出力軸6が連結されている。従って、変速機14では、第2サンギア14bが入力要素、キャリア14fが出力要素となっている。
上記変速機14において、第1ブレーキB1を係合させて第1サンギア14aを固定するとともに第2ブレーキB2を解放することにより、この変速機14の変速段は減速比の小さい高速段に設定される。一方、第2ブレーキB2を係合させてリングギア14eを固定するとともに第1ブレーキB1を解放することにより、この変速機14の変速段は前記高速段より減速比の大きい低速段に設定される。こうした変速機14の変速制御は、車速や要求駆動力(アクセル開度等)などといった走行状態に基づき、後述する電子制御装置30によって行われる。より具体的には、変速段領域を予めマップ(変速線図)として定めておき、検出された走行状態が低車速状態である場合、あるいは要求駆動力が大きい場合には、電子制御装置30から変速機14に向けて低速段変速信号が出力される。そして、この低速段変速信号に基づいて第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の状態が制御されることにより、変速機14では低速段が選択される。一方、検出された走行状態が高車速状態である場合、あるいは要求駆動力が小さい場合には、電子制御装置30から変速機14に向けて高速段変速信号が出力され、この高速段変速信号に基づいて第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の状態が制御されることにより、変速機14では高速段が選択される。
図2(B)に変速機14の共線図を示す。この図2(B)に示されるように、リングギア14eが固定されて低速段が設定されると、第2MG12の回転速度に対するキャリア14fの回転速度は低速段の減速比に応じて減速されるとともに、第2MG12からキャリア14fを介して車輪側出力軸6に伝達される駆動トルクは同低速段の減速比に応じて増大される。一方、第1サンギア14aが固定されて高速段が設定されると、第2MG12の回転速度に対するキャリア14fの回転速度は高速段の減速比に応じて変更される。より具体的には、低速段が設定された場合と比較して増速される。また、第2MG12からキャリア14fを介して車輪側出力軸6に伝達される駆動トルクは同高速段の減速比に応じて変更される。より具体的には、低速段が設定された場合と比較して減少される。
このように、変速機14を低速段に設定して第2MG12から車輪側出力軸6に伝達される駆動トルクを大きくしたり、変速機14を高速段に設定して第2MG12の回転速度を低下させたりすることにより、同第2MG12の駆動効率等は良好な状態に維持される。
内燃機関16の燃料噴射制御や点火時期制御などといった機関制御、第1インバータ24を通じた第1MG18の制御、第2インバータ29を通じた第2MG12の制御、ブレーキ50の作動制御、及び変速機14の変速段切替制御等といった各種制御は、電子制御装置30によって行われる。この電子制御装置30は、CPU(中央演算処理装置)やメモリ、上記制御対象の駆動回路に制御信号を出力する出力回路の他、各種センサの検出信号が取り込まれる入力回路等を備えて構成されている。なお、入力回路に取り込まれる検出信号としては、例えばクランクシャフト16aの回転速度を検出する機関回転速度センサ16cの信号、車輪側出力軸6の出力軸回転速度Soutを検出する出力軸回転速度センサ6aの信号、運転者によって操作されるシフトレバー70の操作位置を検出するシフトポジションセンサ70aの信号等々がある。
上述したように、このハイブリッド車両では、変速機14に設けられた第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2についてそれらの係合と解放とを切り替えて変速段を変更することにより、第2MG12から車輪側出力軸6に伝達される駆動トルクを増減させるようにしている。ここで、変速機14の変速時において、第1ブレーキB1や第2ブレーキB2の係合切替により第2MG12の回転速度が強制的に変更されると、その回転速度の変化に起因して変速ショックが発生するおそれがある。そこで、電子制御装置30は、変速機14の変速時において、変速前の第2MG12の回転速度を変速後の減速比に応じた回転速度、すなわち同期回転速度に調整する回転同期制御を行う。
例えば、減速比が大きくなる側に変速段が切り替えられる場合、すなわち高速段から低速段に切り替えられる場合には、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2がともに一旦解放された状態において、第2MG12の回転速度が低速段に対応した同期回転速度に向けて徐々に高くなるように同第2MG12の回転速度が制御される。そして、第2MG12の回転速度が同期回転速度に達すると、第2ブレーキB2は徐々に係合されていき、その係合過程では、第2ブレーキB2のトルク容量の増大に抗して同期回転速度が維持できるように第2MG12の出力トルク、換言すればその回転速度は調整される。そして、第2ブレーキB2が完全に係合すると、回転同期制御による第2MG12の回転速度調整は終了される。
同様に、減速比が小さくなる側に変速段が切り替えられる場合、すなわち低速段から高速段に切り替えられる場合には、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2がともに一旦解放された状態において、第2MG12の回転速度が高速段に対応した同期回転速度に向けて徐々に低くなるように同第2MG12の回転速度が制御される。そして、第2MG12の回転速度が同期回転速度に達すると、第1ブレーキB1は徐々に係合されていき、その係合過程では、第1ブレーキB1のトルク容量の増大に抗して同期回転速度が維持できるように第2MG12の出力トルク、換言すればその回転速度は制御される。そして、第1ブレーキB1が完全に係合すると、回転同期制御による第2MG12の回転速度調整は終了される。
他方、上記ハイブリッド車両においても通常の車両と同様に、降坂路走行中の車速増加を抑えるための減速要求や、運転者によるシフトレバー70の操作を通じた減速要求に基づいてエンジンブレーキを利用することがある。こうしたハイブリッド車両でのエンジンブレーキは、以下のようにして実施される。
すなわち、上記動力分配機構20を備えるハイブリッド車両では、燃料カット実行中などのような内燃機関16の運転休止中にあって、第1MG18に電力を供給して当該第1MG18を電動機として機能させ、その駆動力を利用して運転休止中の内燃機関16のクランクシャフト16aを回転させると車両の減速度が増大するようになる。そこで、内燃機関16の運転休止中に上記減速要求がなされたときには、第1MG18に対して電力供給を行うことにより車両の減速度を増大させる減速制御を実行し、この減速制御の実行によって上記エンジンブレーキが実施される。
ここで、上記回転同期制御の実行中には、第2MG12の回転速度を制御するために電力が消費される。また、上記減速制御の実行中には、内燃機関16のクランクシャフト16aを回転させるために第1MG18にて電力が消費される。このように回転同期制御の実行中における第2MG12、及び減速制御の実行中における第1MG18はともに電力消費状態となる。そのため、回転同期制御の実行中に減速制御が実行されたり、減速制御の実行中に回転同期制御が実行されたりすると、例えば第2MG12への電力供給が不足してその回転速度調整(回転同期制御)が十分に行えなくなり、変速機14から変速ショックが発生するおそれがある。
すなわち、減速制御が実行される車両走行状態は、コースト走行状態(アクセルペダルの全閉操作等による燃料カットの実行によって内燃機関16の運転は休止されており、ハイブリッド車両が慣性走行している状態)となっている。この状態において減速制御のみが実行されるのであれば、第2MG12を回生制御してこれにより得られる電力で第1MG18を駆動させることが可能である。しかし、コースト走行状態において変速機14の変速要求がなされ、これに伴い回転同期制御が実行されると第2MG12は電力消費状態となる。そのため、このときに減速制御を実行しても第1MG18に十分な電力を供給することは困難となり、減速度を十分に増大させることができない可能性がある。さらに、減速制御による第1MG18での電力消費によって第2MG12への電力供給が不足し、これにより変速機14から変速ショックが発生するおそれがある。特に、バッテリ26の蓄電量が低下していたり、減速制御において過度に大きな減速度の増大が要求されたりすると、第2MG12への電力供給はさらに不足してしまい、変速ショックもさらに増大するおそれがある。
そこで本実施形態では、減速制御の実行と回転同期制御の実行とが重なるような状況、すなわち減速制御及び回転同期制御のいずれか一方の制御についてその実行が開始された後に他方の制御の実行要求がなされた場合には、その他方の制御の実行を遅延させる処理を行うようにしている。より具体的には、減速制御の実行が開始された後に回転同期制御の実行要求がなされた場合には、回転同期制御の実行を遅延して減速制御の実行を優先させる回転同期遅延処理を実行することにより、変速機14からの変速ショックの発生を抑えるようにしている。
図3に、上記回転同期遅延処理の手順を示す。なお、本処理は、電子制御装置30によって所定の実行周期毎に繰り返し実行される。
本処理が開始されると、まず、減速制御の実行中であるか、すなわち減速制御の実行が開始されており、第1MG18は電力消費状態になっているか否かが判定される(S100)。ここでは、シフトポジションセンサ70aの信号に基づいて検出される運転者からの減速要求、あるいは降坂路走行中の車速増加を抑えるために電子制御装置30から出力される減速要求等に基づいて第1インバータ24から第1MG18に向けて電力が供給されている場合に肯定判定される。
そして、減速制御の実行中である場合には(S100:YES)、変速要求があるか否かが判定される(S110)。ここでは、電子制御装置30から変速機14に向けて上記低速段変速信号が出力されている場合に肯定判定される。なお、変速機14の変速段が高速段から低速段に切り替えられるときには、第2MG12の回転速度が同期回転速度に向けて増速され、同第2MG12の電力消費量は大きくなるため、ここでは低速段変速信号が出力されているか否かを判定するようにしている。この他、上記高速段変速信号が出力されている場合には、第2MG12の回転速度は減速されるのであるが、その減速過程でも第2MG12の回転速度は同期回転速度になるように制御されるため、同第2MG12は電力消費状態となる。従って、ステップS110において、低速段変速信号が出力されている場合のみならず、高速段変速信号が出力されている場合にも、変速要求がある旨判定するようにしてもよい。
ステップS110にて、変速要求がないと判定される場合には(S110:NO)、回転同期制御及び減速制御がともに実行されることはないため、本処理は一旦終了される。
一方、ステップS110にて、変速要求があると判定される場合には(S110:YES)、変速禁止フラグFcが「1」に設定される(S120)。なお、変速禁止フラグFcの初期値は「0」に設定されている。
そして、変速禁止フラグFcが「1」に設定されると、変速機14の変速制御、すなわち第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の係合・解放制御が禁止される。さらに、回転同期制御の実行も禁止されて(S130)、本処理は一旦終了される。この回転同期制御の実行禁止によって第2MG12での電力消費は禁止され、減速制御の実行が優先されるようになるため、第1MG18に対して十分な電力を供給することができ、もって車両の減速度が十分に増大される。
他方、上記ステップS100にて、減速制御が実行中ではない旨判定されると(S100:NO)、次に、変速禁止フラグFcが「1」であるか否かが判定される(S140)。そして、変速禁止フラグFcが「1」ではない場合(S140:NO)、すなわち変速禁止フラグFcが「0」である場合には、本処理は一旦終了される。
ここで、減速制御が実行中ではない旨判定されるとともに、変速禁止フラグFcが「1」である旨判定される場合には、次のような状態になっていると考えることができる。すなわち、変速禁止フラグFcが「1」に設定されているということは、前回の実行周期において減速制御の実行中に変速要求があったため、回転同期制御の実施が禁止されていることを示している。そして、今回の実行周期において減速制御が実行されていないと判定されたにもかからず変速禁止フラグFcが「1」に設定されているということは、前回の実行周期では減速制御が実行されていたが、今回の実行周期では減速制御が実行されていない状態、すなわち今回の実行周期では減速制御が終了している状態であると考えることができる。
そこで、ステップS140にて、変速禁止フラグFcが「1」である旨判定されると(S140:YES)、変速禁止フラグFcが「0」に設定され(S150)、変速機14の変速制御、すなわち第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の係合・解放制御が開始される。さらに、回転同期制御の実行されて(S160)、本処理は一旦終了される。
このように変速要求がなされてから減速制御の実行が終了するまで回転同期制御の実行が遅延されることにより、ステップS160にて回転同期制御が実行される際には、第1MG18での電力消費が終了した状態になっている。そのため、このステップS160での回転同期制御の実行に際しては、第2MG12に対して十分な電力を確実に供給することができ、同第2MG12の回転速度調整を適切に行うことができる。従って、変速機14からの変速ショックの発生を十分にかつ確実に抑えることができる。
以上説明した本実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)減速制御(内燃機関16の運転休止中に第1MG18に電力を供給して車両の減速度を増大させる制御)の実行が開始された後に回転同期制御(変速機14の変速時に、変速前の第2MG12の回転速度を変速後の回転速度に調整する制御)の実行要求がある場合、回転同期制御の実行を遅延させて減速制御の実行を優先させるようにしている。従って、第1MG18での電力消費を伴う減速制御と第2MG12での電力消費を伴う回転同期制御との同時実行を抑えることができるようになり、これにより回転同期制御の実行時に第2MG12へ十分な電力を供給することができるようになる。そのため、回転同期制御における第2MG12の回転速度調整を好適に行うことができるようになり、もって変速機14からの変速ショックの発生を好適に抑えることができるようになる。
また、減速制御の実行時には第1MG18へ十分な電力を供給することができるようになるため、同減速制御の実行時には当該車両の減速度を好適に増大させることもできるようになる。
(2)減速制御の実行が終了するまで回転同期制御の実行を禁止するようにしている。従って、減速制御と回転同期制御とが同時に実行されることを確実に回避することができるようになり、回転同期制御の実行時においては、第2MG12に十分な電力を確実に供給することができるようになる。また、減速制御の実行時においては、第1MG18に十分な電力を確実に供給することができるようになる。
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置を具体化した第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、減速制御の実行が開始された後に回転同期制御の実行要求がなされた場合には、回転同期制御の実行を遅延して減速制御の実行を優先させる回転同期遅延処理を実行することにより、変速機14からの変速ショックの発生を抑えるようにした。
他方、本実施形態では、減速制御及び回転同期制御のいずれか一方の制御についてその実行が開始された後に他方の制御の実行要求がなされた場合には、その他方の制御の実行を遅延させる処理として次の処理を行うようにしている。すなわち、回転同期制御の実行が開始された後に減速制御の実行要求がなされた場合には、減速制御の実行を遅延して回転同期制御の実行を優先させる減速制御遅延処理を実行することにより、変速機14からの変速ショックの発生を抑えるようにしている。
図4に、上記減速制御遅延処理の手順を示す。なお、本処理も、電子制御装置30によって所定の実行周期毎に繰り返し実行される。
本処理が開始されると、まず、変速機14が変速中であるか否か、すなわち回転同期制御の実行が開始されており、第2MG12は電力消費状態になっているか否かが判定される(S200)。ここでは、電子制御装置30から変速機14に向けて上記低速段変速信号が出力されており、これに基づいて回転同期制御が実行されている場合に肯定判定される。なお、変速機14の変速段が高速段から低速段に切り替えられるときには、第2MG12の回転速度が同期回転速度に向けて増速され、同第2MG12の電力消費量は大きくなる。そのため、ここでは低速段変速信号の出力の有無を判定条件としている。この他、上記高速段変速信号が出力されている場合には、第2MG12の回転速度は減速されるのであるが、その減速過程でも第2MG12の回転速度は同期回転速度になるように制御されるため、同第2MG12は電力消費状態となる。従って、ステップS200において、低速段変速信号の出力の有無のみならず、高速段変速信号の出力の有無も判定条件として設定し、この高速段変速信号が出力されており、これに基づいて回転同期制御が実行されている場合にも肯定判定されるようにしてもよい。
そして、変速機14が変速中である場合には(S200:YES)、減速制御の実行要求があるか否か、すなわち減速要求があるか否かが判定される(S210)。ここでは、運転者からの減速要求がシフトポジションセンサ70aの信号に基づいて検出されている場合、あるいは降坂路走行中の車速増加を抑えるための減速要求が電子制御装置30から出力されている場合に肯定判定される。
ステップS210にて、減速要求がないと判定される場合には(S210:NO)、減速制御及び回転同期制御がともに実行されることはないため、本処理は一旦終了される。
一方、ステップS210にて、減速要求があると判定される場合には(S210:YES)、減速禁止フラグFdが「1」に設定される(S220)。なお、減速禁止フラグFdの初期値は「0」に設定されている。
そして、減速禁止フラグFdが「1」に設定されると、減速制御の実行が、すなわち第1MG18への電力供給が禁止されて(S230)、本処理は一旦終了される。この減速制御の実行禁止によって第1MG18での電力消費は禁止され、回転同期制御の実行が優先されるようになるため、第2MG12に対して十分な電力を確実に供給することができ、同第2MG12の回転速度調整を適切に行うことができる。従って、変速機14からの変速ショックの発生を十分にかつ確実に抑えることができる。
他方、上記ステップS200にて、変速機14が変速中ではない旨判定されると(S200:NO)、次に、減速禁止フラグFdが「1」であるか否かが判定される(S240)。そして、減速禁止フラグFdが「1」ではない場合(S240:NO)、すなわち減速禁止フラグFdが「0」である場合には、本処理は一旦終了される。
ここで、変速機14が変速中ではない旨判定されるとともに、減速禁止フラグFdが「1」である旨判定される場合には、次のような状態になっていると考えることができる。すなわち、減速禁止フラグFdが「1」に設定されているということは、前回の実行周期において回転同期制御の実行中に減速要求があったため、減速制御の実施が禁止されていることを示している。そして、今回の実行周期において変速機14が変速中ではないと判定されたにもかからず減速禁止フラグFdが「1」に設定されているということは、前回の実行周期では変速機14が変速中であったが、今回の実行周期ではその変速が完了している状態、すなわち今回の実行周期では回転同期制御が終了している状態であると考えることができる。
そこで、ステップS240にて、減速禁止フラグFdが「1」である旨判定されると(S240:YES)、減速禁止フラグFdが「0」に設定され(S250)、減速制御の実行が、すなわち第1MG18への電力供給が開始されて(S260)、本処理は一旦終了される。
このように減速要求がなされてから回転同期制御の実行が終了するまで減速制御の実行が遅延されることにより、ステップS260にて減速制御が実行される際には、第2MG12での電力消費が終了した状態になっている。そのため、このステップS260での減速制御の実行に際しては、第1MG18に対して十分な電力を確実に供給することができ、もって車両の減速度を十分に増大させることができる。
以上説明した本実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)回転同期制御の実行が開始された後に減速制御の実行要求がなされた場合には、減速制御の実行を遅延させて回転同期制御の実行を優先させるようにしている。従って、第2MG12での電力消費を伴う回転同期制御と第1MG18での電力消費を伴う減速制御との同時実行を抑えることができるようになり、これにより回転同期制御の実行時に第2MG12へ十分な電力を供給することができるようになる。そのため、回転同期制御における第2MG12の回転速度調整を好適に行うことができるようになり、もって変速機14からの変速ショックの発生を好適に抑えることができるようになる。
また、減速制御の実行時には第1MG18へ十分な電力を供給することができるようになるため、同減速制御の実行時には当該車両の減速度を好適に増大させることもできるようになる。
(2)減速制御の実行が終了するまで回転同期制御の実行を禁止するようにしている。従って、減速制御と回転同期制御とが同時に実行されることを確実に回避することができるようになり、回転同期制御の実行時においては、第2MG12に十分な電力を確実に供給することができるようになる。また、減速制御の実行時においては、第1MG18に十分な電力を確実に供給することができるようになる。
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置を具体化した第3の実施形態について説明する。
第2の実施形態では、回転同期制御の実行が開始された後に減速制御の実行要求がなされた場合、減速制御の実行を遅延させるようにした。しかし、このような減速制御の遅延処理を実行すると、同減速制御の実行要求がなされた時点から実際に車両の減速度が増大されるまでの時間が長くなってしまう。特に、その減速制御の実行要求が、運転者のシフトレバー70の操作による減速要求に基づくものである場合には、運転者の操作に対して減速度が増大されるまでの時間が長くなるため、運転者の操作に対する応答性が悪化し、ドライバビリティが低下してしまう。
そこで、本実施形態では、減速制御の実行が遅延される場合、同減速制御の実行によって得られる減速度に相当する制動力をブレーキ50から発生させるようにしており、第2の実施形態における減速制御遅延処理(先の図4に示す処理手順)に対して、図5に示すステップS300の処理を追加するようにしている。
すなわち、変速機14が変速中であり、回転同期制御の実行が開始されている場合にあって(S200:YES)、減速要求がある旨判定され(S210:YES)、減速制御の実行が禁止されると(S230)、制動力制御が実行される(S300)。この制動力制御では、減速制御実行時の減速度の増大量に相当する制動力を発生させるべく、ブレーキ50の作動が制御される。このブレーキ50の作動制御に際しては、車両の走行状態等に基づいて要求制動力が算出され、その要求制動力に応じてブレーキ50の作動量が調整される。なお、減速制御の遅延処理が終了して同減速制御の実行が開始され、これによりエンジンブレーキが十分に得られるようになると、この制動力制御は終了され、ブレーキ50の作動は終了される。
ちなみに、ブレーキ50の作動開始にあっては制動力を徐々に増大させることにより、車両の減速度が急激に増大されることを抑制することができる。また、ブレーキ50の作動終了にあっては制動力を徐々に減少させることにより、車両の減速度が急激に減少されることを抑制することができる。
図6に、本実施形態における減速制御遅延処理の作用についてその一例を示す。なお、同図6では、ハイブリッド車両がコースト走行状態となっている場合において、変速機14の変速段が高速段から低速段に切り替えられる際の作用について例示している。
時刻t1において変速機14の変速が開始されると、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2がともに一旦解放され、その後、回転同期制御の実行開始によって第2MG12の回転速度は低速段に対応した同期回転速度に向けて徐々に増速される。
そして、回転同期制御の実行中にあって減速要求がなされると(時刻t2)、その減速要求に基づく減速制御の実行は禁止される一方、制動力制御の実行が開始され、ブレーキ50からは制動力が発生される。このブレーキ50の作動により、減速要求に基づく減速制御の実行によって車両の減速度を増大させることができない状況であっても、車両の減速度は増大される。従って、減速要求に対して減速制御の実行が遅延されても、車両の減速度は速やかに増大されるようになり、例えば上記ドライバビリティの低下も抑えられる。
そして、第2MG12の回転速度が低速段に対応した同期回転速度に達すると、第2ブレーキB2は徐々に係合されていき、その係合過程では、第2ブレーキB2のトルク容量の増大に抗して同期回転速度が維持できるように第2MG12の出力トルク、換言すればその回転速度は調整される。そして、第2ブレーキB2が完全に係合すると、回転同期制御による第2MG12の回転速度調整は終了される(時刻t3)。
そして回転同期制御が終了すると(時刻t3)、遅延されていた減速制御の実行が開始され、第1MG18の回転速度は徐々に増大されていく。この減速制御の開始後、同減速制御によって車両の減速度が増大すると、すなわちエンジンブレーキが十分得られるようになると(時刻t4)、制動力制御は終了される。
以上説明した本実施形態によれば、第2の実施形態による作用効果に加え、さらに以下のような作用効果を得ることができる。
(3)減速制御の実行が遅延される場合には、同減速制御の実行によって得られる減速度に相当する制動力をブレーキ50にて発生させるようにしている。そのため、減速制御の実行が遅延される場合であっても、減速要求に基づいて車両の減速度を速やかに増大させることができるようになる。
また、減速制御の実行要求が、運転者のシフトレバー70の操作による減速要求に基づくものである場合に同減速制御の実行が遅延されると、運転者の操作に対して減速度が増大されるまでの時間が長くなり、ドライバビリティが低下してしまうおそれがある。この点、本実施形態では、減速制御の実行が遅延される場合であっても、車両の減速度を速やかに増大させることができるため、上記ドライバビリティの低下も好適に抑えることができるようになる。
(第4の実施形態)
次に、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置を具体化した第4の実施形態について説明する。
第3の実施形態では、減速制御の実行が遅延される場合、同減速制御の実行による減速度の増大に代えてブレーキ50から制動力を発生させるようにした。
ここで、ブレーキ50にて制動力を発生させている最中に減速制御の遅延が終了して同減速制御が実行されると、ブレーキ50の作動によって得られる減速度に減速制御の実行によって得られる減速度が加算されるため、過度に減速度が増大してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態では、減速制御の実行に対する遅延が終了して同減速制御が実行される場合にあって、ブレーキ50による制動力の発生が行われている場合には、次の処理を実行するようにしている。すなわち、制動力の発生が行われていない場合と比較して、減速制御における減速度の増大量を減少させるようにしており、第3の実施形態における減速制御遅延処理でのステップS260の処理を、図7に示すようにステップS400の処理に変更するようにしている。
すなわち、変速機14が変速中ではなく、回転同期制御が実行されていない場合にあって(S200:NO)、減速禁止フラグFdが「1」であり(S240:YES)、減速禁止フラグFdが「0」に設定されると、前記ステップS260での減速制御の実行に代えて、減速度低減減速制御が実行される(S400)。この減速度低減減速制御では、前記減速制御と同様にエンジンブレーキを発生させるべく、第1MG18に対して電力が供給される。ただし、ブレーキ50にて制動力を発生させている最中に通常通りの減速制御が実行されると、上述したように減速度が過度に増大してしまうおそれがある。そこでこの減速度低減減速制御では、第1MG18への電力供給によって得られる減速度の増大量を、制動力の発生が行われていない場合と比較して減少させるようにしている。より具体的には、ブレーキ50による制動力の発生が行われない通常の減速制御時におけるクランクシャフト16aの回転上昇速度に対し、ブレーキ50の制動力による減速度の増大に相当する分だけクランクシャフト16aの回転上昇速度が低くなるように、換言すればエンジンブレーキの効果が減少するように第1MG18への電力供給量が調整される。すなわち、通常の減速制御時と比較して、第1MG18の回転上昇速度は低くなるように設定される。
図8に、本実施形態における減速制御遅延処理の作用についてその一例を示す。なお、同図8では、ハイブリッド車両がコースト走行状態となっている場合において、変速機14の変速段が高速段から低速段に切り替えられる際の作用について例示している。
時刻t1において変速機14の変速が開始されると、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2がともに一旦解放され、その後、回転同期制御の実行開始によって第2MG12の回転速度は低速段に対応した同期回転速度に向けて徐々に増速される。
そして、回転同期制御の実行中にあって減速要求がなされると(時刻t2)、その減速要求に基づく減速制御の実行は禁止される一方、前記制動力制御の実行が開始され、ブレーキ50からは制動力が発生される。
そして、第2MG12の回転速度が低速段に対応した同期回転速度に達すると、第2ブレーキB2は徐々に係合されていき、その係合過程では、第2ブレーキB2のトルク容量の増大に抗して同期回転速度が維持できるように第2MG12の出力トルク、換言すればその回転速度は調整される。そして、第2ブレーキB2が完全に係合すると、回転同期制御による第2MG12の回転速度調整は終了される(時刻t3)。
そして回転同期制御が終了すると(時刻t3)、遅延されていた減速制御の実行が開始される。すなわち上記減速度低減減速制御が開始され、第1MG18の回転速度は徐々に増大されていく。
そして、この減速度低減減速制御の開始後、同制御によって車両の減速度が増大すると、すなわちエンジンブレーキが十分得られるようになると(時刻t4)、制動力制御は終了される。
ここで、時刻t3から時刻t4までは、制動力制御の実行と減速制御の実行とが重複しており、通常の減速制御と同様に第1MG18の回転速度を増大させると(二点鎖線にて図示)、過度に減速度が増大してしまうおそれがある。この点、本実施形態では、上記減速度低減減速制御の実行を通じて第1MG18の回転上昇速度は低くなるように設定される。そのため、制動力制御が併用されない通常の減速制御時と比較して、クランクシャフト16aの回転上昇速度は低くなり、減速制御によるエンジンブレーキの効果は低減される。従って、ブレーキ50にて制動力を発生させているときに減速制御が実行される場合であっても、車両の減速度は適切に調整される。
以上説明した本実施形態によれば、第3の実施形態による作用効果に加え、さらに以下のような作用効果を得ることができる。
(4)減速制御の実行に対する遅延が終了して同減速制御が実行される場合にあって、ブレーキ50による制動力の発生が行われている場合には、同制動力の発生が行われていない場合と比較して、減速制御における減速度の増大量を減少させるようにしている。従って、ブレーキ50にて制動力を発生させている最中に減速制御が実行される場合であっても、車両の減速度を適切に調整することができるようになる。
(第5の実施形態)
次に、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置を具体化した第5の実施形態について説明する。
ハイブリッド車両が上述したようなコースト走行状態となっている場合等において、第2MG12が回生制御されると、同第2MG12は上記車輪側出力軸6に対する回転抵抗となり、車輪10にはその回転を妨げようとする制動力が作用する。従って、上記第1〜第4の実施形態において減速制御(減速度低減減速制御を含む)が実行される場合、例えば減速制御の遅延が終了して同減速制御の実行が開始される場合や、減速制御の実行が回転同期制御の実行よりも優先される場合等において、第2MG12の回生制御が同時に実行されると、次のような不都合が生じるおそれがある。
すなわち、減速制御の実行によって得られる減速度に回生制御の実行によって得られる減速度が加算され、過度に減速度が増大してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、第1MG18の減速制御及び第2MG12の回生制御がともに実行される場合には、減速制御の非実行時に比して第2MG12の回生量を減少させる回生量減少処理を実行するようにしている。
図9に、同回生量減少処理の手順を示す。なお、本処理も、電子制御装置30によって所定の実行周期毎に繰り返し実行される。
本処理が開始されるとまず、第1MG18の減速制御及び第2MG12の回生制御がともに実行されているが否かが判定される(S500)。
そして、第1MG18の減速制御及び第2MG12の回生制御がともに実行されている場合には(S500:YES)、第2MG12の回生量を減少させるために目標回生量Pが補正される(S510)。ここでは、バッテリ26の蓄電量、車両や第1MG18での電力消費状態等に基づいて設定される目標回生量Pから所定値αが減算される。この所定値αには、次のような値が設定されている。すなわち、第2MG12の回生制御と第1MG18の減速制御とが同時に実行される場合にあって第2MG12の回生量を減少させることにより、過度な減速度の増大を抑えることができる値が設定されている。なお、同所定値αを車両の減速状態、例えば車速の低下速度等に基づいて可変設定するようにしてもよい。また、目標回生量Pの補正に際しては、所定値αの減算のみならず、適宜の値を当該目標回生量Pに乗算して当該目標回生量Pの値を小さくするようにしてもよい。
こうして目標回生量Pが補正されると、本処理は一旦終了され、第2MG12の回生量が目標回生量Pとなるように、第2インバータ29が制御される。
一方、第1MG18の減速制御及び第2MG12の回生制御がともに実行されていない場合には(S500:NO)、所定値αによる目標回生量Pの補正が禁止され(S520)、本処理は一旦終了される。
図10に、本実施形態における回生量減少処理の作用についてその一例を示す。なお、この図10は、上記第4の実施形態に回生量減少処理を適用した場合の作用を示している。また、同図10は、先の図8に回生量減少処理の作用を追加したタイミングチャートになっており、以下では、回生量減少処理の作用を中心に説明する。
時刻t1において変速機14の変速が開始されると、この変速に併せて第2MG12の駆動力(出力トルク)は増大されていく。そして、回転同期制御が終了すると(時刻t3)、第2MG12の回生量が増大され、その回生量は目標回生量Pに向けて調整される。
また、回転同期制御が終了すると、遅延されていた減速制御(減速度低減減速制御)の実行が開始され(時刻t3)、第1MG18の回転速度が増大されることにより車両の減速度は増大されていく。
ここで、時刻t3以降では、第2MG12の回生制御及び第1MG18の減速制御が共に実行されるが、この場合に設定される目標回生量Pは、それら回生制御及び減速制御が共に実行されない場合、例えば第2MG12の回生制御のみが実行される場合の目標回生量P’(二点鎖線にて図示)と比較して、所定値αの分だけ小さくなるように補正される。そのため、回生トルクも所定値αに相当する分だけ小さくなり、第2MG12の回生制御を実行することによって発生する減速度の増大量は減少される。従って、第2MG12の回生制御と第1MG18の減速制御とが同時に実行されても、過度な減速度の増大は抑えることができる。
以上説明した本実施形態によれば、第4の実施形態による作用効果に加え、さらに以下のような作用効果を得ることができる。
(5)第1MG18の減速制御及び第2MG12の回生制御がともに実行される場合には、第2MG12の回生量を減速制御の非実行時に比して減少させるようにしている。そのため、第1MG18の減速制御及び第2MG12の回生制御がともに実行される場合であっても、ハイブリッド車両の減速度を適切に調整することができるようになる。
なお、先の図10では、本実施形態における回生量減少処理を上記第4の実施形態に適用した場合について説明したが、この回生量減少処理は、第1〜第3の実施形態において減速制御を実行する際にも適用することができ、この場合にも上記(5)と同様な作用効果を得ることができる。
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・第1の実施形態では、減速制御の実行が終了するまで回転同期制御の実行を禁止するようにした。すなわち、減速制御の実行が終了するまで回転同期制御の実行を遅延させるようにした。この他、減速制御の実行が進行し、回転同期制御において第2MG12の回転速度を十分に調整できる程度に、換言すれば第2MG12に十分な電力を供給できる程度にまで第1MG18の電力消費量が減少したか否かを、所定の判定値A及び第1MG18の電力消費量の比較を通じて判定する。そして、第1MG18の電力消費量が判定値A以下となっていれば、減速制御の実行終了を待たずに回転同期制御の実行を開始するようにしてもよい。この場合にも、回転同期制御における第2MG12の回転速度調整を好適に行うことができるようになり、もって変速機14からの変速ショックの発生を好適に抑えることができるようになる。また、回転同期制御が開始されるまでは第1MG18へ十分な電力を供給することができるため、減速制御の実行を通じて当該車両の減速度を好適に増大させることもできる。
・第2の実施形態では、回転同期制御の実行が終了するまで減速制御の実行を禁止するようにした。すなわち、回転同期制御の実行が終了するまで減速制御の実行を遅延させるようにした。この他、回転同期制御の実行が進行し、減速制御において第1MG18の回転速度を十分に高めることができる程度に、換言すれば第1MG18に十分な電力を供給できる程度にまで第2MG12の電力消費量が減少したか否かを、所定の判定値B及び第2MG12の電力消費量の比較を通じて判定する。そして、第2MG12の電力消費量が判定値B以下となっていれば、回転同期制御の実行終了を待たずに減速制御の実行を開始するようにしてもよい。この場合にも、減速制御の実行時には第1MG18に十分な電力を供給することができ、もって当該車両の減速度を好適に増大させることができるようになる。また、減速制御が開始されるまでは第2MG12へ十分な電力を供給することができるため、回転同期制御における同第2MG12の回転速度調整を好適に行うことができ、もって変速機14からの変速ショックの発生も好適に抑えることができる。
・上記変速機14の変速段は2段(低速段及び高速段)であった。この他、3段以上の変速段を有する変速機であっても、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置は同様に適用することができる。すなわち、それら変速段の変更に際して、上記各実施形態と同様な原理に基づく制御を実施すればよい。
また、上記各実施形態では、変速機14を1つ備えるハイブリッド車両に本発明の制御装置を適用した場合について説明した。この他、2つ以上の変速機を備えるハイブリッド車両の制御装置としても本発明は同様に適用することができる。すなわちハイブリッド車両が複数の変速機を備える場合には、個々の変速機の変速動作に際して、上記各実施形態と同様な原理に基づく制御を実施すればよい。
・上記変速機14は一組のラビニョ型遊星歯車機構にて構成されていたが、この他の機構でもよく、要は、第2MG12の回転を変速可能な機構であればよい。
また、上記動力分配機構20は遊星歯車機構にて構成されていたが、この他の機構でもよく、要は、内燃機関16の動力を車輪側出力軸6と第1MG18とに分配することのできる機構であればよい。
4…動力源、6…車輪側出力軸、6a…出力軸回転速度センサ、8…デファレンシャルギア、10…車輪、12…第2モータジェネレータ(第2MG、電動機)、14…変速機、14a…第1サンギア、14b…第2サンギア、14c…ショートピニオン、14d…ロングピニオン、14e…リングギア、14f…キャリア、16…内燃機関、16a…クランクシャフト、16b…ダンパー、16c…機関回転速度センサ、18…第1モータジェネレータ(第1MG、発電機)、20…動力分配機構、20a…サンギア、20b…リングギア、20c…キャリア、24…第1インバータ、26…バッテリ、29…第2インバータ、30…電子制御装置(遅延手段、制動力制御手段、減速度増大抑制手段、回生量減少手段)、50…ブレーキ、70…シフトレバー、70a…シフトポジションセンサ、B1…第1ブレーキ、B2…第2ブレーキ。