JP4337293B2 - 遷移金属化合物、それを用いたオレフィン重合用触媒およびポリオレフィンの製造方法 - Google Patents

遷移金属化合物、それを用いたオレフィン重合用触媒およびポリオレフィンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遷移金属化合物、それを用いたオレフィン重合用触媒およびポリオレフィンの製造方法に関するものである。詳しくは、特定の構造を有する遷移金属化合物と、それをオレフィン重合用触媒の構成成分として用いることにより、ポリオレフィンを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
後周期遷移金属錯体をオレフィンの重合触媒として用いることは不向きだと考えられていたが、最近、後周期遷移金属錯体を構成成分とするオレフィン重合に関する注目すべき検討が幾つか行われている。たとえば、2座ジイミン配位子を持つニッケル錯体を触媒の構成成分として用いてエチレンの重合を行うと、高い活性で分岐を持つポリエチレンが生成することが開示されている(WO96/23010)。また、フェノキシイミンニッケル錯体を触媒に用いてエチレンの重合を行うと、高い活性でエチレン重合が進行することが報告されている(Organometallics,17巻,3149−3151ページ,1998年)。
【0003】
近年、重合活性が高い触媒系や重合系中の不純物および重合成分に含まれる極性化合物に対して耐性の高い触媒系の開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特定の遷移金属化合物、およびポリオレフィンを効率よく製造することが可能なオレフィン重合用触媒を提供すること、並びにそれを用いたポリオレフィンの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するため、鋭意検討の結果、特定の構造を有する遷移金属化合物をオレフィン重合用触媒の構成成分として用い、これに有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物を組み合わせることで、ポリオレフィンを効率よく製造することが可能な新しい触媒系を見い出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
すなわち本発明は、特定のフォスフィンを有する周期表第10族の遷移金属化合物を提供するものである。また、特定のフォスフィンを有する遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物からなるオレフィン重合用触媒を提供するものである。さらに、本発明は、前記オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うことを特徴とするポリオレフィンの製造方法を提供するものである。
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の遷移金属化合物の構造としては、下記一般式(1)
【0008】
【化2】
Figure 0004337293
で表される化合物が挙げられる。一般式(1)中、Mはニッケル原子やパラジウム原子などの周期表第10族から選ばれる遷移金属原子である。R1は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基、またはトリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基などの炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。また、R1は互いに結合して環を形成していてもよい。Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基、またはトリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基などの炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。Yは周期表第15族または第16族の原子とリン原子が共有結合している基を1つ以上有することを特徴とするフォスフィンを示しており、その好ましい構造として、下記一般式(2)
P(NR2 2a3 3-a (2)
(ここで、R2は互いに同じでも異なっていてもよく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基を示す。また、R2は互いに結合して環を形成していてもよい。環を形成した場合、一般式(2)中のNR2 2部位は、ピリジニル基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピペリジノ基などの窒素を含む複素環となる。R3は互いに同じでも異なっていてもよく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基を示す。また、R3は互いに結合して環を形成していてもよい。aは1〜3の整数を示す。)
が挙げられる。
【0009】
本発明で用いる遷移金属化合物の合成方法に特に限定はないが、例を挙げると、Ni(cod)2のような0価ニッケル錯体とハロゲン化アリル化合物、およびフォスフィンを反応させる方法や、ビス(π−アリルニッケルブロミド)とフォスフィンを反応させる方法により合成することが可能である。Journalof Chemical Society,Dalton Transactions,1994巻,1337−1347ページ中に記載されている合成方法などが参考となる。
【0010】
本発明に用いる遷移金属化合物の具体的な合成方法を例に挙げると、たとえば、(η3−C35)NiBr{P(NC483}の合成方法は、Ni(cod)2とフェニルブロミドを反応させた後、さらにP(NC483を反応させる方法や、{(η3−C35)NiBr}2とP(NC483を反応させる方法で該遷移金属化合物を合成することが可能であるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0011】
本発明に用いる(A)遷移金属化合物の具体的な例として、次に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
【化3】
Figure 0004337293
【化4】
Figure 0004337293
本発明におけるオレフィン重合用触媒の構成成分の一つである(B)有機アルミニウム化合物とは、該遷移金属化合物と作用もしくは反応することにより、オレフィンを重合することが可能な重合活性種を形成し得る化合物を示しており、その具体的な例として、下記構造で表される有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0013】
Al(R4n(X)3-n (3)
(式中、R4は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、またはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を示す。)
好ましい化合物として、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等を挙げることができる。
【0014】
また、下記一般式(4)および/または(5)で表されるアルキルアルミノキサンも(B)有機アルミニウム化合物の例として挙げることができる。
【0015】
【化5】
Figure 0004337293
(式中、R5は各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜20の炭化水素基である。また、qは2〜60の整数である。)
一般式(4)および/または(5)で表されるアルキルアルミノキサンの具体的な例として、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、トリイソブチルアルミノキサン、tert−ブチルアルミノキサンやそれらの混合物などを挙げることができる。なお、アルキルアルミノキサンには少量のトリアルキルアルミニウム化合物が含まれていてもよい。
【0016】
本発明におけるオレフィン重合用触媒の構成成分の一つである(C)有機ホウ素化合物とは、該遷移金属化合物と作用もしくは反応することにより、オレフィンを重合することが可能な重合活性種を形成し得る化合物を示しており、その具体的な例として、下記構造で表される有機ホウ素化合物を挙げることができる。
【0017】
B(R63 (6)
(式中、R6は互いに同じでも異なっていてもよく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、フェニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基、またはペンタフルオロフェニル基、3,5−ジ−トリフルオロメチルフェニル基などの炭素数6〜30のフッ素化された炭化水素基を示す。)本発明における(A)成分と(B)成分の比に制限はないが、(B)成分が(3)式で表される有機アルミニウム化合物である場合、(A)成分と(B)成分の金属原子当たりのモル比が(A成分):(B成分)=100:1〜1:100000にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。また、(B)成分が(4)式および/または(5)式で表されるアルキルアルミノキサンである場合、(A)成分と(B)成分の金属原子当たりのモル比が(A成分):(B成分)=100:1〜1:1000000にあり、特に1:1〜1:100000の範囲であることが好ましい。
【0018】
また、本発明における(A)成分と(C)成分の比にも制限はないが、(A)成分と(C)成分のモル比が(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。
【0019】
(A)成分と(B)成分または(C)成分からなるオレフィン重合用触媒を調製する方法に関して制限はなく、調製の方法として、各成分に対して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、各成分を2種以上用いてオレフィン重合用触媒を調製することも可能である。
【0020】
本発明における触媒は、通常の重合方法、すなわちスラリー重合、気相重合、高圧重合、溶液重合、塊状重合のいずれにも使用できる。本発明において重合とは単独重合のみならず共重合も意味し、これら重合により得られるポリオレフィンは、単独重合体のみならず共重合体も含む意味で用いられる。
【0021】
本発明におけるオレフィンの重合は、気相でも液相でも行うことができ、特に気相で行う場合には、粒子形状の整ったポリオレフィンを効率よく安定的に生産することができる。また、重合を液相で行う場合、用いる溶媒は、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンそれ自身を溶媒として用いることもできる。
【0022】
本発明に用いるオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、スチレンおよびスチレン誘導体、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役および非共役ジエン、シクロブテン等の環状オレフィン等が挙げられる。また、フッ素化したオレフィンも重合に用いることができる。さらにまた、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように、3種以上の成分を混合して重合することもできる。また、特定の条件下では、上記オレフィン類とアクリル酸メチルや酢酸ビニルなどの極性基を有するオレフィンとの共重合を行うことも可能である。
【0023】
本発明の方法を用いてポリオレフィンを製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、重合温度は−100〜300℃、重合時間は10秒〜20時間、重合圧力は常圧〜3000kg/cm2Gの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるポリオレフィンは、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。遷移金属化合物の合成は、すべての操作を窒素雰囲気下で行った。遷移金属化合物の調製に用いた溶媒は、すべて公知の方法で脱水、脱酸素を行ったものを用いた。
【0025】
実施例1
(η3−C35)NiBr{P(NC483}の合成
−78℃に冷却した{(η3−C35)NiBr}2(0.20g,0.56mmol)のトルエン(20mL)溶液に、P(NC483のトルエン溶液(1.0mol/L,1.1mL,1.1mmol)を加え、ゆっくり室温まで昇温した後、そのまま終夜攪拌した。減圧下で溶媒を留去した後、残さをヘキサンで洗浄後、減圧下で乾燥を行うことで黄土色の固体として表題化合物を得た(0.25g)。
【0026】
1H−NMR(C66);δ=4.89(brs,2H,C35),4.14(brs,1H,C35),3.11(brs,12H,Py−H),2.70(brs,2H,C35),1.59(brs,12H,Py−H)
実施例2
(η3−C35)NiBr{P(NC482(tert−Bu)}の合成
−78℃に冷却した{(η3−C35)NiBr}2(0.18g,0.50mmol)のトルエン(10mL)溶液に、P(NC482(tert−Bu)のトルエン溶液(1.0mol/L,1.0mL,1.0mmol)を加え、ゆっくり室温まで昇温した後、そのまま終夜攪拌した。減圧下で溶媒を留去した後、残さをヘキサンで洗浄後、減圧下で乾燥を行うことで濃赤色の固体として表題化合物を得た(0.23g)。
【0027】
1H−NMR(C66);δ=4.79(1H,brs,C35),4.20(1H,brs,C35),3.04(brs,8H,Py−H),2.73(brs,1H,C35),2.62(brs,1H,C35),1.72(brs,8H,Py−H),1.27(s,9H,tert−Bu)
実施例3
50mLのシュレンク管中で、実施例1で得た(η3−C35)NiBr{P(NC483}(61.4mg,146μmol)のトルエン(13.0mL)溶液に、EtAlCl2のヘキサン溶液(0.90mol/L,1.6mL,1.46mmol)を加えることで触媒溶液Aの調製を行った。
【0028】
96mLのガラス製オートクレーブに、トルエン(30mL)および触媒溶液A(10mL,100μmol)を加え、10kg/cm2Gのエチレン圧になるようにエチレンを連続的に供給しながら室温で20分間、さらにエチレンの供給を切って10分間重合を行った。反応混合物をエタノール(100mL)/塩酸(5mL)に加えた後、析出した固体をエタノール/塩酸で洗浄後、減圧下、80℃で8時間乾燥を行うことで1.23gのポリマーを得た。
【0029】
実施例4
50mLのシュレンク管中で、実施例2で得た(η3−C35)NiBr{P(NC482(tert−Bu)}(80.1mg,196μmol)のトルエン(17.4mL)溶液に、EtAlCl2のヘキサン溶液(0.90mol/L,2.2mL,1.96mmol)を加えることで触媒溶液B(10mL,100μmol)の調製を行った。
【0030】
96mLのガラス製オートクレーブに、トルエン(30mL)および触媒溶液Bを加え、10kg/cm2Gのエチレン圧になるようにエチレンを連続的に供給しながら室温で20分間、さらにエチレンの供給を切って10分間重合を行った。反応混合物をエタノール(100mL)/塩酸(5mL)に加えた後、析出した固体をエタノール/塩酸で洗浄後、減圧下、80℃で8時間乾燥を行うことで0.14gのポリマーを得た。
【0031】
実施例5
96mLのガラス製オートクレーブに、トルエン(30mL)、実施例4と同様の方法で調製した触媒溶液B(10mL,100μmol)、およびPMAO(2.85mol/Lトルエン溶液,0.35mL,1.0mmol)を加え、10kg/cm2Gのエチレン圧になるようにエチレンを連続的に供給しながら室温で20分間、さらにエチレンの供給を切って10分間重合を行った。反応混合物をエタノール(100mL)/塩酸(5mL)に加えた後、析出した固体をエタノール/塩酸で洗浄後、減圧下、80℃で8時間乾燥を行うことで3.96gのポリマーを得た。
【0032】
【発明の効果】
本発明の遷移金属化合物を構成成分とするオレフィン重合用触媒は、オレフィン重合に対して極めて有効であり、本触媒をオレフィン重合用触媒として用いることで、ポリオレフィンを効率よく製造することが可能である。

Claims (2)

  1. (A)下記一般式(1)で表される遷移金属化合物
    Figure 0004337293
    (ここで、Mは周期表第10族から選ばれる遷移金属原子である。Rは互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。また、Rは互いに結合して環を形成していてもよい。Xはハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。Yは下記一般式(2)
    P(NR 3−a (2)
    (ここで、Rは互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。また、Rは互いに結合して環を形成していてもよい。Rは互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。また、Rは互いに結合して環を形成していてもよい。aは2又は3である。)で表される置換基を示す。)と(B)エチルアルミニウムジクロリド又はジエチルアルミニウムクロリド、並びに下記一般式(4)および/または(5)で表されるアルキルアルミノキサン
    Figure 0004337293
    (式中、R5は各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素数1〜20の炭化水素基である。また、qは2〜60の整数である。)を構成成分とするポリオレフィン製造用触媒。
  2. 請求項1に記載のポリオレフィン製造用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うことを特徴とするポリオレフィンの製造方法。
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