JP4337193B2 - ドウガネブイブイの防除方法及び防除剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バシルス・ポピリエに属する微生物の菌体、胞子、又は胞子とパラスポアとを有する胞子嚢を用いたコガネムシ科昆虫、その中でも特にドウガネブイブイの防除方法及び防除剤に関する。前記微生物は、植物害虫であるコガネムシ科幼虫、特にドウガネブイブイを防除することができるので、該昆虫に対する微生物農薬として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来から、牧草地、農地、果樹園、庭園などにおいて植物害虫となっているコガネムシ科昆虫は、近年、ゴルフ場の増設とともに、ゴルフ場の芝の根を食い荒らす重要植物害虫として問題となっている。このようなコガネムシ科昆虫として、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、マメコガネ(Popillia japonica)、サクラコガネ(Anomala daimiana)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)、スジコガネ(Mimela testaceipes)、セマダラコガネ(Blitopertha orientalis)、ナガチャコガネ(Heptophylla picea)等が挙げられるが、近年、とくに関東以西のゴルフ場において、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)が、非常に多く発生し問題となっている。
【0003】
このコガネムシ科昆虫の防除には従来、化学農薬が用いられてきたが、近年、地球環境問題がクローズアップされるに伴い、自然環境や人体の健康に悪影響が懸念される化学農薬に代わって、環境保全に貢献することのできる安全性の高い生物的防除法が切望されている。
【0004】
このような観点から、昆虫に対して殺虫性を有する微生物を用いた微生物農薬が開発されており、例えば、鱗翅目や蚊の幼虫に対して病原性を有するバシルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)の生菌又はその殺虫成分を農薬とするいわゆるBT剤は代表的なものとして知られている。
【0005】
又、コガネムシ化昆虫についても、乳化病に冒されたマメコガネ(Popillia japonica)幼虫から単離されたバシルス・ポピリエに属する微生物が、マメコガネ幼虫に対して乳化病を誘発することが知られており、既に、米国においては該微生物を用いた微生物製剤が市販されている。しかしながら、該微生物では、ドウガネブイブイに対しては効果がない(農業有用微生物−その利用と展望− 梅谷献二、加藤肇 236頁 1990年)ため、我が国においてコガネムシ科幼虫防除剤として使用するには満足できるものではない。
【0006】
このように、現在までに知られているバチルス・ポピリエ属の微生物では、ドウガネブイブイ以外のコガネムシ科昆虫に対しては殺虫効果を呈しても、ドウガネブイブイに対して殺虫効果を呈するものはない。その理由として、ドウガネブイブイは他に比べ体長が比較的大きい為、ドウガネブイブイ以外のコガネムシ科昆虫に殺虫効果を奏したとしても、ドウガネブイブイに対しては殺虫効果を発揮しづらいもの考えられている。
【0007】
一方、本発明防除剤の有効成分であるバシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・マメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Mame)( FERM BP−8069 )、バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・ヒメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Hime)(FERM P−17660)及びバシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・サクラ株(Bacillus popilliae var. popilliae Sakura)(FERM P−17662)は、
【0008】
マメコガネ(Popillia japonica)、サクラコガネ(Anomala daimiana)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)、スジコガネ(Mimela testaceipes)、セマダラコガネ(Blitopertha orientalis)、ナガチャコガネ(Heptophylla picea)に対して、体液中への注射による感染及び経口投与による感染試験を実施し、一部のコガネムシ幼虫種を除いて乳化病を誘発することが分かっている(Appl.Entomol.Zool.32巻(4)583頁から588頁 1997年)が、ドウガネブイブイについては知られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点からなされたものであり、特にドウガネブイブイに対して有効なバシルス・ポピリエに属する微生物、即ち、菌体、胞子、又は胞子とパラスポアとを有する胞子嚢を用いたコガネムシ科昆虫の防除剤を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、バシルス・ポピリエに属する微生物を有効成分とした防除剤が、ドウガネブイブイに対して強い殺虫活性を有することを見いだし本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、
(1) バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・マメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Mame)( FERM BP−8069 )、バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・ヒメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Hime)(FERM P−17660)及びバシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・サクラ株(Bacillus popilliae var. popilliae Sakura)(FERM P−17662)からなる群から選ばれる1種以上の微生物をドウガネブイブイに作用させることを特徴とするドウガネブイブイの防除方法、
【0012】
(2) バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・マメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Mame)( FERM BP−8069 )、バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・ヒメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Hime)(FERM P−17660)及びバシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・サクラ株(Bacillus popilliae var. popilliae Sakura)(FERM P−17662)からなる群から選ばれる1種以上の微生物の胞子及びパラスポアとを含む胞子嚢を有効成分とするドウガネブイブイに殺虫性を示すことを特徴とするドウガネブイブイの防除剤、に関するものである。
【0013】
本発明において、「ドウガネブイブイの防除」とは、コガネムシ科ドウガネブイブイ、特にドウガネブイブイの幼虫の駆除、及びドウガネブイブイの幼虫による植物虫害の予防及び改善をいう。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0015】
<1>本発明防除剤の有効成分である微生物
本発明防除剤の有効成分である微生物は、ドウガネブイブイに殺虫性を示すことを特徴とするバシルス・ポピリエに属する微生物である。該微生物として具体的には、バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・マメ株(以後マメ株と呼ぶことがある)、バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・ヒメ株(以後ヒメ株と呼ぶことがある)及びバシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・サクラ株(以後サクラ株と呼ぶことがある)が挙げられる。
【0016】
これら3株は、札幌市郊外にあるゴルフ場において、乳化病に冒されたそれぞれマメコガネ、ヒメコガネ、及びサクラコガネ幼虫から、後記実施例に示すようにして単離された株である。
【0017】
これらの菌株は胞子嚢の形態学的特徴と殺虫活性(殺虫スペクトル)から、いずれも新規な乳化病菌(バシルス・ポピリエ)に属するものと考えられ、それぞれ由来する宿主昆虫の名前をとって、バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・マメ株(以後マメ株と呼ぶ)、バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・ヒメ株(以後ヒメ株と呼ぶ)、及びバシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・サクラ株(以後サクラ株と呼ぶ)と命名した。
【0018】
なお、平成11年11月25日、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 郵便番号305 日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に、ヒメ株は受託番号FERMP−17660、及びサクラ株は受託番号FERM P−17662として寄託された。また、マメ株は、平成11年11月25日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)に受託番号FERM P−17661で寄託され、平成14年6月10日にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−8069が付与されている。
【0019】
<2>本発明によるコガネムシ科昆虫防除剤
本発明防除剤をコガネムシ科昆虫に作用させることにより、コガネムシ科昆虫を防除することができる。本発明防除剤をコガネムシ科昆虫に作用させることは、本発明防除剤に用いられるバシルス・ポピリエに属する微生物の菌体、胞子、又は胞子とパラスポアとを有する胞子嚢を、コガネムシ科昆虫、好ましくは幼虫の体内に取り込ませることによりおこなわれるが、特に胞子とパラスポアとを有する胞子嚢を取り込ませることが好ましい。
【0020】
本発明防除剤は、コガネムシ科昆虫に広く適応し得るが、特にドウガネブイブイに対して防除効果を示す点が特徴的である。コガネムシ科昆虫体内に取り込ませる、本発明防除剤の有効成分はバシルス・ポピリエに属する微生物の菌体、胞子、又は胞子とパラスポアとを有する胞子嚢であり、特に胞子とパラスポアとを有する胞子嚢が好ましい。
【0021】
胞子とパラスポアとを有する胞子嚢は例えば、次に示すようにして調製することができる。コガネムシ科幼虫、好ましくはマメコガネ幼虫、セマダラコガネ幼虫又はドウガネブイブイ幼虫に、本発明防除剤の有効成分であるバシルス・ポピリエに属する微生物を取り込ませる。具体的には、本発明防除剤の有効成分であるバシルス・ポピリエに属する微生物を前記幼虫の存在する飼育培土などに散布し、経口的に摂取させるか、又は、体液中に注射することにより注入する。この幼虫を好ましくは3週間〜4週間飼育し、該幼虫体内で本発明防除剤の有効成分であるバシルス・ポピリエに属する微生物を増殖させる。その後、例えば、幼虫を切開あるいは後肢を切断するなどして体液を採取し、得られた体液を例えば遠心分離又は濾過し、沈殿画分から胞子嚢を精製、単離することによって得られる。
【0022】
上記方法で得られた胞子とパラスポアとを有する胞子嚢をもちいて本発明の防除剤を得るには、該胞子嚢を乾燥して粉末にしてもよいし、水あるいは中性の緩衝液、例えばリン酸緩衝液又はトリス−塩酸緩衝液の懸濁液としてもよい。また、該胞子嚢と、微生物農薬等の微生物製剤の製造に通常用いられる担体、例えば、ベントナイト、タルク類、バーミキュライト、酸性白土、珪藻土等の鉱物質粉末、硫酸アンモニウム、尿素、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機塩、フスマ、小麦粉、米糠、多糖類等の有機物粉末を、また、補助剤として、カゼイン、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸、糖類、合成高分子や分散剤、固着剤等の成分と混合して製剤としてもよい。さらに、この製剤にバシルス・チューリンゲンシスの菌体またはその殺虫成分を混合することによって、コガネムシ幼虫に対してこれらの相乗効果が期待できる。
【0023】
本発明の防除剤は、コガネムシ科幼虫の被害を防除しようとする芝地、果樹園、農地などに土壌1m2当たり胞子嚢数が1×108個から1×1014個、好ましくは1×109個から1×1013個となるように散布して行う。その後、必要に応じて1m2当たり1Lから2Lの散水、及び/あるいは土壌を鋤きこみ混和してもよい。懸濁液を用いる場合は、水あるいは前記中性緩衝液で1×108個/Lから1×1014個/L、好ましくは1×109個/Lから1×1013個/Lとなるように懸濁したものを用いることが好ましい。
【0024】
本発明の防除剤はコガネムシ科昆虫に広く適応できるが、とくにドウガネブイブイに対しても感染する点で特徴的である。
本願発明の微生物を有効成分とする防除剤は、自然環境への悪影響や人体への毒性は殆どなく、本発明の防除方法は地球環境保全にも貢献する優れた防除方法である。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例によりさらに具体的に説明する。
【0026】
(実施例1)本発明防除剤の有効成分である微生物の分離
1993年、札幌のゴルフ場から数千匹の幼虫を採取し、北海道大学農学部応用分子昆虫学教室において飼育した。これらはマメコガネ(Popillia japonica)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)及びサクラコガネ(Anomala daimiana)の幼虫であると同定された。これらの3齢幼虫を飼育している過程で、乳化病に感染している幼虫数匹が発見され、感染しているマメコガネ(Popillia japonica)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)及びサクラコガネ(Anomala daimiana)幼虫より以下に示す方法で菌を分離した。即ち、乳化病にかかり死亡した幼虫の後肢を切断し、そこから乳白色の体液を回収した。
【0027】
上記体液から馬場ら(Baba,F.,S.Asano and T.Iizuka 1990年 J.Seric.Sci.Jpn. 56巻 487-489頁)の方法を用いて遠心分離により沈殿画分から胞子嚢を精製し、単離した。単離した胞子嚢を走査型顕微鏡(日立製S−800)で形態観察し、Fairfax Biological Laboratory社より供与されたバシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ菌(Bacillus popilliae var. popilliae)(以下標準株と呼ぶ)と比較した。この結果、マメコガネ(Popillia japonica)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)及びサクラコガネ(Anomala daimiana)幼虫からそれぞれ分離した胞子嚢はいずれも胞子とパラスポラルボディを有することが観察されたが、パラスポラルボディの大きさはいずれも標準株のものに比べて大きかった。また、サクラコガネ(Anomala daimiana)幼虫から分離した胞子嚢の胞子と標準株の胞子嚢の胞子は、各々の胞子の先端にパラスポラルボディが直接接合していたが、マメコガネ(Popillia japonica)とヒメコガネ(Anomala rufocuprea)幼虫から分離した胞子嚢は胞子とパラスポラルボディが不規則に接合していた。これらのことから各々の菌株は胞子嚢の形態学的特徴が相違することがわかった。
【0028】
(実施例2)本発明防除剤の有効成分である微生物の同定
実施例1で得られたマメ株、ヒメ株及びサクラ株を用いて、コガネムシ幼虫種に対する乳化病感染試験を行った。経口接種の場合には、腐葉土を直径6cmのプラスチックカップに各20gずつ入れ、さらに実施例1で得られたマメ株、ヒメ株、サクラ株をそれぞれ1×108個となるように加え、各々のカップにドウガネブイブイ3齢幼虫を1匹ずつ入れた。また、注射接種の場合には、実施例1で得られたマメ株、ヒメ株、サクラ株、各々1×108個を注射器を用いてコガネムシ3齢幼虫に注入し、上記のプラスチックカップに1匹ずつ入れた。経口接種の場合も注射接種の場合も、ドウガネブイブイ幼虫については20日間、その他の幼虫については10日間、25℃で飼育して死体個体数を観察した。表−1にマメ株、ヒメ株及びサクラ株のそれぞれコガネムシ幼虫種に対する乳化病感染試験結果を示した。
【0029】
【表1】
Figure 0004337193
【0030】
表−1に示したコガネムシ幼虫種に対する感染試験において3株間で殺虫活性(殺虫スペクトル)に違いが認められた。これらのことから、マメコガネ(Popillia japonica)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)及びサクラコガネ(Anomala daimiana)幼虫から分離した微生物はいずれも標準株とは異なること、また、単離したこれら3株もそれぞれ異なる微生物であることが明らかとなった。
【0031】
(実施例3)マメ株、ヒメ株及びサクラ株の胞子嚢の製造
実施例1で得たマメ株の胞子とパラスポアとを有する胞子嚢1×107個/mlの水懸濁液を調製し、この5μlをドウガネブイブイの3齢幼虫に注射して乳化病にかからせた。腐葉土を直径6cmのプラスチックカップに20g程入れ、この乳化病幼虫から採取した胞子嚢を水懸濁液にして1×108個程度散布した。ドウガネブイブイ3齢幼虫をカップに入れ、25℃で飼育した。幼虫の体が乳白色を帯びてきた時点で体表面を70%エチルアルコールで殺菌し、背部を切開して体液を採取した。該体液から10000rpm、5分間の遠心分離により粗胞子嚢を回収し、蒸留水で2回〜3回洗浄して同様に遠心分離して精製胞子嚢を得た。
【0032】
ヒメ株及びサクラ株についてもこれとほぼ同様の方法で精製胞子嚢を得た。それぞれ、胞子とパラスポアとを有する胞子嚢であることを確認した。
続いて、さらにそれぞれカップ5個づつ、即ちそれぞれの株についてドウガネブイブイ3齢幼虫を5匹ずつ用いて製造し、同様の方法により胞子とパラスポアとを有する胞子嚢を得た。
【0033】
(実施例4)本発明防除剤(マメ)の製造
実施例3で得られたマメ株の精製胞子嚢2×109個を水6mlに懸濁し、これにベントナイト(クニゲルKB;クニミネ工業製)を10g加えて混練した後、
50℃の温風乾燥機にて5時間乾燥させ、その後、粉砕を行って2×108個/gのマメ株の胞子嚢を含有した本発明防除剤(マメ)を約10g製造した。
【0034】
(実施例5)本発明防除剤(ヒメ)の製造
実施例3で得られたヒメ株の精製胞子嚢2×109個を水6mlに懸濁し、これにベントナイト(クニゲルKB;クニミネ工業製)10gを加えて混練した後、
50℃の温風乾燥機にて5時間乾燥させ、その後、粉砕を行って2×108個/gのヒメ株の胞子嚢を含有した本発明防除剤(ヒメ)を約10g製造した。
【0035】
(実施例6)本発明防除剤(サクラ)の製造
実施例3で得られたサクラ株の精製胞子嚢2×109個を水6mlに懸濁し、これにベントナイト(クニゲルKB;クニミネ工業製)を10g加えて混練した後、50℃の温風乾燥機にて5時間乾燥させ、その後、粉砕を行って2×108個/gのサクラ株の胞子嚢を含有した本発明防除剤(サクラ)を約10g製造した。
【0036】
(実施例7)本発明防除剤(2菌株胞子嚢混合剤)の製造
実施例4で得られた本発明防除剤(マメ)と実施例5で得られた本発明防除剤(ヒメ)を重量比1:1で混合してマメ株とサクラ株の胞子嚢の混合製剤である本発明防除剤(2菌株胞子嚢混合剤)を10g製造した。
これと同様にマメ株とヒメ株及びヒメ株とサクラ株の2株胞子嚢混合剤を製造した。
【0037】
(実施例8)本発明防除剤(3菌株胞子嚢混合剤)の製造
実施例4、実施例5及び実施例6で得られた本発明防除剤(マメ)、本発明防除剤(ヒメ)及び本発明防除剤(サクラ)をそれぞれ重量比1:1:1で混合して本発明防除剤(3菌株胞子嚢混合剤)を15g製造した。
【0038】
(実施例9)本発明防除剤のドウガネブイブイ幼虫に対する殺虫活性
腐葉土を直径6cmのプラスチックカップ5個に各20gずつ入れ、これに本発明防除剤(マメ)を2g(4×108個胞子嚢含有)加えてよく混合した。それぞれのカップにドウガネブイブイ3齢幼虫を1匹ずつ入れ、25℃で20日間飼育しながら死亡個体数を調べた。また、死亡幼虫体内に胞子嚢が形成されているかどうか体液を顕微鏡で調べた。本発明防除剤(ヒメ)と本発明防除剤(サクラ)についても同様の試験を行ったところ、いずれの本発明防除剤もドウガネブイブイに対して殺虫活性を有し、中でも本発明防除剤(ヒメ)は高い防除効果を有していた。結果を表−2に示す。
【0039】
【表2】
Figure 0004337193
【0040】
(実施例10)本発明防除剤によるコガネムシ幼虫種に対する感染試験
本発明防除剤(2菌株胞子嚢混合)についてコガネムシ幼虫種に対する感染試験を行い、単一菌株の本発明防除剤と比較した。
【0041】
本発明防除剤(2菌株胞子嚢混合剤)はヒメ株とサクラ株胞子嚢の混合剤を用い、直径6cmのプラスチックカップに2g(ヒメ株とサクラ株胞子嚢がそれぞれ2×108個含有)添加した。このカップに、マメコガネ、セマダラコガネ及びドウガネブイブイのそれぞれ3齢幼虫を入れて、25℃で4週間飼育しながら死亡個体数を調べた。混合製剤とすることにより、それぞれの菌株のコガネムシ幼虫種に対する適応範囲を包含した防除剤が得られた。結果を表−3に示した。
【0042】
【表3】
Figure 0004337193
【0043】
【発明の効果】
本発明の微生物は、ドウガネブイブイに対し致死性の乳化病を誘発するため、菌体、特に胞子嚢を幼虫に作用させることによってドウガネブイブイを防除し、芝、牧草、果樹、農園芸植物等を該害虫の被害から保護することができる。

Claims (2)

  1. バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・マメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Mame)FERM BP−8069、バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・ヒメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Hime)FERM P−17660及びバシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・サクラ株(Bacillus popilliae var. popilliae Sakura)FERM P−17662からなる群から選ばれる1種以上の微生物をドウガネブイブイに作用させることを特徴とするドウガネブイブイの防除方法。
  2. バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・マメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Mame)FERM BP−8069、バシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・ヒメ株(Bacillus popilliae var. popilliae Hime)FERM P−17660及びバシルス・ポピリエ・バル・ポピリエ・サクラ株(Bacillus popilliae var. popilliae Sakura)FERM P−17662からなる群から選ばれる1種以上の微生物の胞子及びパラスポアとを含む胞子嚢を有効成分とする、ドウガネブイブイに殺虫性を示すことを特徴とするコガネムシ科昆虫の防除剤。
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