JP4337190B2 - 液晶表示装置の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電気に起因する不良を抑制する液晶表示用カラーフィルターおよび液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は2枚の基板間に液晶層が挟み込まれた構造を取っている。液晶表示装置内部の液晶層が外場印加に伴って示す電気光学応答を利用することにより明暗が表現できる。色選択性を有する画素から成るカラーフィルターなどを用いることによりフルカラーの表示も可能である。
【0003】
一般にカラーフィルターは、透明基板上に形成された赤、緑、青もくしくはシアン、マゼンダ、イエローの3原色の着色層を一絵素として多数の絵素から構成されている。そして、各着色層間には、表示コントラストを高めるために遮光層(画面上では、一般に黒色に見えることから、ブラックマトリックスと称されている)が設けられている。ブラックマトリックスは金属薄膜、あるいは遮光剤により着色された樹脂を表示領域にパターニングすることにより形成される。また、カラーフィルター基板の表示領域に電極として透明導電膜層が形成される。
【0004】
液晶表示装置はこのようなカラーフィルター基板と他の透明基板を貼り合わせ、これら2枚の基板の間隙に液晶を捻って配向させる構成である。他の透明基板としては液晶駆動のための薄膜トランジスタ(TFT)アレイを形成する場合、薄膜ダイオードアレイを形成する場合があり、また透明電極をストライプ状に形成し、カラーフィルター基板側に形成されたストライプ状の透明電極と単純マトリックスを形成する場合もある。
【0005】
これらの方式の液晶表示装置では、カラーフィルターの表面凹凸に起因して、配向不良が発生し、光漏れ、残像などの表示不良を引き起こす場合がある。また、カラーフィルター表面に残存する不純物の影響を受けて表示不良を引き起こす場合もある。これら表示不良への対策として、表面平坦性向上および微少な不純物から液晶分子を守る保護層の形成を目的として着色層上に透明保護膜層を設けた後に透明電極を形成する場合がある。
【0006】
また、従来の液晶表示装置は正面から見た場合には良好な表示特性を示すものの、斜めから見たときに著しくコントラストが低下するという欠点があった。この欠点を解決するために、近年、イン・プレイン・スイッチング(IPS)方式の液晶表示装置が開発された。この方式の液晶表示装置は2枚の透明基板間で液晶が平行に配向しており、従来とは異なり、基板に平行方向に印加される電場によりスイッチングする。このため、カラーフィルターの液晶と接する側の表面には透明電極は形成されていない。また、横方向に印加される電場の方向を乱さないために、遮光層の材料としてはクロムなどの金属薄膜ではなく、黒色顔料などの遮光剤を分散させた樹脂を用いることが多い。このIPS方式においても表面平坦性向上および微少な不純物から液晶分子を守る保護層の形成を目的として着色層上に透明保護膜層を形成する場合が多い。
【0007】
これらのカラーフィルターおよび液晶表示装置を製造する際には、熱硬化するためのホットプレートや基板搬送機構などとの剥離帯電、また、スピンコート、エアーナイフでの塗布や液切り時の摩擦帯電などによって静電気が発生する可能性がある。
【0008】
また、これらの液晶表示装置を形成する際にはどの方式でも液晶分子を配向させることが必要である。通常は液晶表示装置を形成する2枚の基板それぞれの表面にポリイミド樹脂からなる薄膜を形成し、その上をレーヨンやコットンなどの立毛布で一方向に擦るというラビング処理を施すことで液晶を一方向に配向させる。このラビング工程は摩擦帯電により静電気を発生させる。
【0009】
これらの静電気は放電、パーティクル引きつけ等による点欠陥を生じたり、配向膜傷つけによる配向不良、カラーフィルター表面電位ムラによるスペーサー密度のバラツキなどにより、液晶表示装置製造工程における歩留まり低下、表示不良等の原因となることがある。特に表層が透明保護膜層の時には静電気の発生が大きかったり、発生した静電気が逃げにくいため、透明保護膜層を設けている場合には静電気の影響を受けやすくなる。
【0010】
この問題を解決するためにプロセス中に除電装置を付けるなどの工程の改善をが行われるが、静電気を発生させた後に除電させるため、その影響を完全に排除することは難しい。
【0011】
また、カラーフィルターの構成により静電気を除去する方法として、非表示部にも透明導電膜層を形成し、基板全体をなるべく導電化する手法が考えられる。除電のためには、カラーフィルター基板全面に透明導電膜層を成膜するのが望ましいが、液晶表示装置のシール部外側に透明導電膜層を形成すると空気中の湿気による腐食の怖れがあり、また、液晶表示装置の構成によってはシール外に導電膜が存在することによりTFTアレイ基板とカラーフィルター基板間の電気的な短絡を起こし、表示不良や歩留まり低下の原因となる。透明導電膜層は通常ITOのスパッタで形成されるが、スパッタ時にマスクを設けるマスクスパッタでパターニングされる。表示領域の透明導電膜と非表示領域の透明導電膜との間に間隔を設けて、シール外でのTFTアレイ基板とカラーフィルター基板間の短絡による表示不良を避ける場合、表示領域の透明導電膜と非表示領域の透明導電膜との間隔が狭すぎるとマスクスパッタが困難となり、パターンエッジがぼけたり、基板表面を傷つける等の不具合を発生させる。マスクスパッタで位置ずれがあると、シール材、配向膜、透明導電膜の層構成が好ましくない状態を作るため、歩留まりの低下と共に、マスク設計が難しくなりコストアップの要因となる。また、マスクスパッタでは複雑なパターニングは難しかったり、実現できない場合も考えられる。さらに、IPS等の透明導電膜層を最上層に形成しないカラーフィルターにおいては、通常工程に加えて、透明導電膜層を形成する工程が付加されるため、歩留まり低下、コストアップの要因となる。
【0012】
透明保護膜層があるカラーフィルターの非表示領域に設けられたブラックマトリックス層は、最表層でなく透明保護膜層の下に配置される。しかしながら、透明保護膜層下にブラックマトリックス層が配置された構成であっても、液晶表示装置製造工程で十分な除電効果があることが本発明者らの検討で明らかになった。
【0013】
液晶表示装置の表示領域の周縁には額縁と呼ばれる遮光部分が設けられ、2枚の基板を貼り合わせているシール部分近傍や液晶駆動用配線のみで液晶配向が制御されていない部分を覆い隠している。通常、この額縁はブラックマトリックス層で形成される。シールは、ブラックマトリックスによる額縁の上に配置される。液晶表示装置を構成する2枚の基板を引き剥がしたとき、シール材とブラックマトリックス層との間で剥離せずに、ブラックマトリックス層と基板との間で、剥離が生じる場合がある。これは、ブラックマトリックス層と基板との接着力がシール剤とブラックマトリックス層との接着力よりも低いことが原因である。特開平10−325951号公報では、対策として、シール下の額縁にスリットを入れて、シール剤と基板がブラックマトリクス層を介さずに接着している部分を設けている。シールの幅は通常1mm程度であるので、額縁に入れられるスリット幅は1mm未満になる。本発明者らは、表示領域外端(額縁外端)の外側に導電性のブラックマトリックス層を配置するとき、あまり近くに配置すると液晶表示装置に悪影響を及ぼす場合があり、適切な配置があることを見出した。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カラーフィルターおよび液晶表示装置を製造する際の静電気に起因する歩留まりの低下を少なくするカラーフィルターを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
(1)透明基板上に少なくともブラックマトリックス層およびブラックマトリックス層の開口部に着色層を設けたカラーフィルター基板と、対向基板との間に液晶層を有する液晶表示装置の製造方法において、表示領域外端の外側に該表示領域外端からの距離dが1mm以上20mm以下であってブラックマトリックス層と同じ材料により成る導電性パターンを設け、さらに配向膜を形成したカラーフィルター基板をラビングする工程を有することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
(2)導電性パターンが、カラーフィルター基板の表面から2層目またはそれより下層にあることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置の製造方法。
(3)導電性パターンが、樹脂と遮光剤から主としてなる樹脂ブラックマトリックス層であることを特徴とする(1)または(2)に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶表示装置のカラーフィルター基板および対向基板に用いられる基板としては、特に限定されるものではなく、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラスなどの無機ガラス類、有機プラスチックのフィルムまたはシート等が好ましく用いられる。また、反射型液晶表示装置の場合は、反射電極を設ける側の基板として、金属板などの不透明基板を採用することも可能である。
【0017】
上記透明基板もしくは不透明基板上に必要に応じてブラックマトリックス層が設けられる。ブラックマトリックス層は、クロムやニッケル等の金属またはそれらの酸化物等の薄膜や着色膜の重ね塗りで形成しても良いが、樹脂および遮光剤から主として成る樹脂ブラックマトリックス層を形成することが製造コストや廃棄物処理コストの面から好ましい。さらに、樹脂ブラックマトリックス層は、透明導電膜層のような腐食の問題がないことやガラス切断の際にブラックマトリックス層が破断面上にあっても導電性の小片が発生しにくい点でも本発明に適している。
【0018】
樹脂ブラックマトリックス層に用いられる遮光剤としては、カーボンブラック、黒鉛、酸化チタン、酸化窒化チタン、四酸化鉄等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉の他に、赤、青、緑色等の顔料の混合物等を用いることができる。この中でも、特にカーボンブラック、酸化チタン、酸化窒化チタンは遮光性が優れており、好ましい。さらにこれらの中でも、本発明では、比較的大きな導電性を有することからカーボンブラックがより好ましい。分散の良い粒径の小さいカーボンブラックは主として茶系統の色調を呈するので補色の顔料を混合させて無彩色にするのが好ましい。
【0019】
遮光剤を分散させる方法としては、例えば、ポリイミド前駆体溶液中に遮光剤や分散剤等を混合させた後、三本ロール、サンドグラインダー、ボールミルなどの分散機中で分散させる方法などがあるが、この方法に特に限定されない。また、遮光剤の分散性向上、あるいは塗布性やレベリング性向上のために種々の添加剤が加えられていても良い。
【0020】
樹脂ブラックマトリックス層に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの感光性または非感光性の材料が好ましく用いられる。
【0021】
ブラックマトリックス層用樹脂や後述する着色層用樹脂として用いられる感光性の樹脂としては、光分解型樹脂、光架橋型樹脂、光重合型樹脂などのタイプがあり、特に、エチレン不飽和結合を有するモノマ、オリゴマまたはポリマと紫外線によりラジカルを発生する開始剤とを含む感光性組成物、感光性ポリアミック酸組成物等が好適に用いられる。
【0022】
ブラックマトリックス層用樹脂や後述する着色層用樹脂として用いられる非感光性の樹脂としては、上記の各種ポリマなどで現像処理が可能なものが好ましく用いられるが、透明導電層の製膜工程や液晶表示装置の製造工程でかかる熱に耐えられるような耐熱性を有する樹脂が好ましく、また、液晶表示装置の製造工程で使用される有機溶剤への耐性を持つ樹脂が好ましく、中でもポリイミド系樹脂が特に好ましい。
【0023】
ここで、ポリイミド系樹脂としては、特に限定されるものではないが、通常下記一般式[I]で表される構造単位を主成分とするポリイミド前駆体を、加熱または適当な触媒によってイミド化したものが好適に用いられる。
【0024】
【化1】
Figure 0004337190
【0025】
ここで一般式(1)のnは0あるいは1〜4の数である。R1は酸成分残基であり、R1は少なくとも2個の炭素原子を有する3価または4価の有機基を示す。耐熱性の面から、R1は環状炭化水素、芳香族環または芳香族複素環を含有し、かつ炭素数6から30の3価または4価の基が好ましい。R1の例として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、ペリレン基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルスルフォン基、ジフェニルプロパン基、ベンゾフェノン基、ビフェニルトリフルオロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンチル基などから誘導された基が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0026】
2は少なくなくとも2個の炭素原子を有する2価の有機基を示す。耐熱性の面から、R2は環状炭化水素、芳香族環または芳香族複素環を含有し、かつ炭素数6から30の2価の基が好ましい。R2の例として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、ペリレン基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルスルフォン基、ジフェニルプロパン基、ベンゾフェノン基、ビフェニルトリフルオロプロパン基、ジフェニルメタン基、シクロヘキシルメタン基などから誘導された基が挙げられるがこれらに限定されるものではない。一般式(1)で表される構造単位を主成分とするポリマはR1、R2がこれらの内各々1個から構成されていても良いし、各々2種以上から構成される共重合体であっても良い。ペーストを構成する溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系極性溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系極性溶媒等が好適に使用される。
【0027】
またアクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレートなどのアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート、環状のアクリレートまたはメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートまたは、メタクリレートなどの内から3〜5種類程度のモノマを用いて、分子量5000〜200000程度に重合した樹脂を用いる。なお、スペーサーがアクリル樹脂を含むものである場合、スペーサーを構成する成分中のアクリル樹脂の含有量は、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。アクリル系樹脂スペーサーを構成する材料が感光性か非感光性は制限されないが、スペーサーの微細加工のしやすさの点から感光性の材料が好ましく用いられる。感光性樹脂の場合には、アクリル系樹脂と光重合性モノマ、光重合開始剤を配合した組成物が好ましく用いられる。光重合性モノマとしては、2官能、3官能、多官能モノマがあり、2官能モノマとして、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールアクリレートなどがあり、3官能モノマとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートなどがあり、多官能モノマとしてジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートなどがある。また、光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、イミダゾール、トリアジン系などが単独もしくは混合で用いられる。
【0028】
樹脂ブラックマトリックス層は、黒色ペーストを透明基板上に塗布、乾燥した後に、パターニングして形成される。黒色ペーストを塗布する方法としては、ディップ法、ロールコーター法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバーコーティング法などが好適に用いられ、この後、オーブンやホットプレートを用いて加熱乾燥(セミキュア)を行う。セミキュア条件は、使用する樹脂、溶媒、ペースト塗布量により異なるが、通常60〜200℃で1〜60分加熱する。
【0029】
このようにして得られた黒色ペースト被膜は、樹脂が非感光性の樹脂である場合は、その上にフォトレジスト膜を形成した後に、また、樹脂が感光性の樹脂である場合は、そのままかあるいは酸素遮断膜を形成した後に、露光、現像を行う。必要に応じて、ポジ形フォトレジスト膜または酸素遮断膜を除去し、また、加熱乾燥(本キュア)する。本キュア条件は、前駆体からポリイミド系樹脂を得る場合には、塗布量により若干異なるが、200〜300℃で1〜60分加熱するのが一般的である。アクリル系樹脂の場合には、本キュア条件は、通常150〜300℃で1〜60分加熱するのが一般的である。かくして樹脂ブラックマトリックス層を得る。
【0030】
また、基板上に黒ペーストを塗布する方法以外に、別基板上に塗布、セミキュアされた黒色層を加熱加圧して転写する方法(転写法)によって樹脂ブラックマトリックス層を形成しても良い。
【0031】
樹脂ブラックマトリックス層の膜厚は、好ましくは0.5〜2.0μm、より好しくは0.8〜1.5μmである。この膜厚が0.5μmよりも薄い場合には、遮光性が不十分になる。一方、膜厚が2.0μmよりも厚い場合には、遮光性は確保できるものの、カラーフィルターの平坦性が犠牲になりやすく、段差が生じやすい。
【0032】
樹脂ブラックマトリックス層の遮光性は、OD値(透過率の逆数の常用対数)で表されるが、液晶表示装置の表示品位を向上させるためには、好ましくは1.6以上であり、より好ましくは2.0以上である。また、樹脂ブラックマトリックス層の膜厚の好適な範囲を前述したが、OD値の上限は、これとの関係で定められるべきである。
【0033】
ブラックマトリックス層が除電効果を持つためには、除電の時定数が秒オーダーもしくはそれ以下であることが好ましい。時定数と抵抗値には逆比例の関係があることから、本発明におけるブラックマトリックス層の表面抵抗値は1012Ω/□以下が好ましく、より好ましくは1010Ω/□以下である。ブラックマトリックス層が透明保護膜層などに覆われており最表層にない場合は、ブラックマトリックス層の表面抵抗値はより低抵抗であることが好ましい。ブラックマトリックス層の表面抵抗値は、遮光剤の種類や添加率で制御することができる。
【0034】
ブラックマトリックス層の表面抵抗値は以下のようにして測定することができる。無アルカリガラス基板上に、ブラックマトリックス層を形成し、アドバンテスト(株)製電気抵抗測定装置TR8601およびTR42超高抵抗測定用試料箱を用いてブラックマトリックス層の表面抵抗率を測定する。
【0035】
透明保護膜層があるカラーフィルターの非表示領域に設けられたブラックマトリックス層は、最表層でなく透明保護膜層の下に配置される。しかしながら、透明保護膜層下にブラックマトリックス層が配置された構成であっても、液晶表示装置製造工程での十分な除電効果があることが本発明者らの検討で明らかになった。
【0036】
樹脂ブラックマトリックス層には通常(20〜200)μm×(20〜300)μmの開口部が設けられるが、この開口部を少なくとも被覆するように3原色のそれぞれの着色層が複数配列される。すなわち、1つの開口部は、3原色のいずれか1つの着色層により被覆され、各色の着色層が複数配列される。
【0037】
カラーフィルターの着色層は、少なくとも3原色、赤(R)、緑(G)、青(B)または、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の3層を包含するものであり、各画素にはこれらの3色のいずれかの1つの着色層が設けられる。
【0038】
着色層に用いられる着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等を好適に用いることができ、さらに、紫外線吸収剤、分散剤などの種々の添加剤を添加しても良い。分散剤としては界面活性剤、顔料の中間体、染料の中間体、高分子分散剤などの広範囲のものが使用される。また、塗布性やレベリング性向上のために種々の添加剤を加えても良い。
【0039】
顔料の具体的な例をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで表す。赤色顔料としてはピグメントレッド9、97、122、123、144、149、166、168、177、180、190、192、215、216、224などが、緑顔料としてはピグメントグリーンC.I.No.7、10、36、37、38、47などが、青色顔料としてはピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、21、22、60、64などが、黄色顔料としてはピグメントイエロー13、17、20、24、83、86、93、94、95、109、110、117、125、129、137、138、139、150、153、154、166、173などが、紫色顔料としてはピグメントバイオレット19、23、29、30、32、33、36、37、38などが、橙色顔料としてはピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65などが、藍色顔料としてはピグメントブルー15、16などが、紅色顔料としてはピグメントレッド81、122、144、146、169、177、ピグメントバイオレット19などが採用できる。これらの顔料は1種類のみで使用しても良く、2種類以上で組み合わせて使用しても良い。顔料は必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性処理などの表面処理がされても良い。
【0040】
着色層に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの感光性または非感光性の材料が採用できる。
【0041】
着色層を形成する方法としては、ブラックマトリックス層と同様の方法が採用できる。基板上に着色剤を含むペーストを塗布、乾燥した後に、パターニングを行う。着色剤を分散または溶解させ着色ペーストを得る方法としては、溶媒中に樹脂と着色剤を混合させた後、三本ロール、サンドグラインダー、ボールミルなどの分散機中で分散させる方法などがある。
【0042】
着色ペーストを塗布する方法としては、黒色ペーストの場合と同様、ディップ法、ロールコーター法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバーコーティング法等が好適に用いられ、この後、オーブンやホットプレートを用いて加熱乾燥(セミキュア)を行う。セミキュア条件は、使用する樹脂、溶媒、ペースト塗布量により異なるが通常60〜200℃で1〜60分加熱する。
【0043】
このようにして得られた着色ペースト被膜は、樹脂が非感光性の樹脂である場合は、その上にフォトレジスト膜を形成した後に、また、樹脂が感光性の樹脂である場合は、そのままかあるいは酸素遮断膜を形成した後に、露光、現像を行う。必要に応じて、フォトレジスト膜または酸素遮断膜を除去し、加熱乾燥(本キュア)する。
【0044】
本キュア条件は、前駆体からポリイミド系樹脂を得る場合には、塗布量により若干異なるが、200〜300℃で1〜60分加熱するのが一般的である。アクリル系樹脂の場合には、本キュア条件は、通常150〜300℃で1〜60分加熱するのが一般的である。以上のプロセスにより、基板上にパターニングされた着色層が形成される。また、いわゆる転写法で着色層を形成しても良い。
【0045】
基板上に、上記のように、第1色目の着色層を全面にわたって形成した後に、不必要な部分をフォトリソグラフィ法により除去し、所望の第1色目の着色層のパターンを形成する。同様の操作を繰り返し、第2色目の着色パターン、第3色目の着色パターンを形成する。
【0046】
着色層の膜厚は、好ましくは0.5〜2.5μm、より好しくは0.8〜2.0μmである。この膜厚が0.5μmよりも薄い場合には、着色が不十分になる。一方、膜厚が2.5μmよりも厚い場合には、カラーフィルターの平坦性が犠牲になりやすい。
【0047】
着色層の上には必要に応じて透明保護膜層を形成できる。樹脂ブラックマトリックス層を採用した場合、金属薄膜によるブラックマトリックス層に比べて膜厚が大きいので、カラーフィルターの凹凸が大きくなり、平坦化のために透明保護膜層が設けられることが多い。透明保護膜層に用いられる樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゼラチン等が好ましく用いられるが、透明導電膜の成膜工程や液晶表示装置の製造工程でかかる熱に耐えられるような耐熱性を有する樹脂が好ましく、また、液晶表示装置の製造装置で使用される有機溶剤への耐性を持つ樹脂が好ましいことから、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂が好ましく用いられる。
【0048】
透明保護膜層を塗布する方法としては、黒色ペースト、着色ペーストの場合と同様、ディップ法、ロールコーター法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバーによる方法などが好適に用いられ、この後、オーブンやホットプレートを用いて加熱乾燥を行う。このとき、必要に応じて真空乾燥、予備加熱乾燥(セミキュア)を行っても良い。セミキュア条件は、使用する樹脂、溶媒、ペースト塗布量により異なるが、通常60〜200℃で1〜60分加熱することが好ましい。また、加熱乾燥時のキュア条件は、樹脂により異なるが、前駆体からポリイミド系樹脂を得る場合には、通常200〜300℃で1〜60分加熱するのが一般的である。
【0049】
本発明の透明保護膜層の厚さは0.02μmから3μmであることが好ましい。0.02μmよりも薄い場合は、不純物成分の遮断性が充分でないだけでなく、平坦化も充分でない。画素内段差を小さくする点からは該透明保護膜層が厚い方が効果的であるが、均一塗布が難しくなる。ブラックマトリックス層、着色層の膜厚との組み合わせより好適な範囲を選ぶことができる。該透明保護膜層の厚さは、0.03μmから2μmの範囲であることがさらに好ましく、0.04μmから1.5μmの範囲であることが最も好ましい。
【0050】
3色の着色層を形成後、もしくは透明保護膜層形成後に必要に応じて透明導電膜層が形成される。透明導電膜層としてはITOなどの酸化物薄膜が採用され、通常0.1μm程度のITO膜がスパッタリング法などで作製される。アクティブマトリックス方式では透明導電膜層は表示領域でベタ膜であるが、単純マトリックス方式ではベタの透明導電膜層形成後、ストライプ状にパターニングされる。
【0051】
本発明の目的のためにはカラーフィルターの非表示領域にできるだけ広い範囲でブラックマトリックス層の導電性パターンを形成することが望ましい。しかしながら、一般的に、シールは基板端から約1mm内側に形成されるため、表示領域からシール外へブラックマトリックス層が連続して形成されている場合、シール外のカラーフィルター基板上のブラックマトリックス層とTFTアレイ基板間で導電性パーティクルによる電気的短絡が生じて表示領域にも影響が及ぶ可能性がある。また、TFTアレイ基板上の配線電位がシール外のブラックマトリックス層を介して表示領域のカラーフィルター電位に影響を及ぼすことがある。この現象は特にカラーフィルター表面に透明導電膜層がないIPS方式において起こりやすい。これらの問題を避けるためには、ブラックマトリックス層は、表示領域部分と非表示領域部分で分離することが有効である。
【0052】
液晶表示装置の表示領域の周縁には額縁と呼ばれる遮光部分が設けられ、シール部分近傍や液晶駆動用配線のみで液晶配向が制御されていない部分を覆い隠している。通常、この額縁はブラックマトリックス層で形成される。非表示領域のブラックマトリックス層パターンは、表示領域の額縁外端部からの距離dが1mm以上であることが重要であり、より好ましくは1.5mm以上、最も好ましくは2mm以上である。距離dが1mmより小さい場合は、表示領域外に配置したブラックマトリックス層パターンに誘起された電圧の影響が、表示領域にも影響を及ぼすことがある。
【0053】
すなわち、ラビング工程で、摩擦で帯電したラビングロールが額縁外側に配置された導電性のブラックマトリックス層パターンに達したときに、ラビングロールと該ブラックマトリックス層パターンとの間で放電し、該ブラックマトリックス層パターンが高電位になることがある。ラビングロール電位は数kVに達することがあり、このとき該ブラックマトリックス層パターンと額縁の距離が小さいと、該ブラックマトリックス層パターンと額縁の間でさらに放電が発生し、表示領域端に深く電荷注入されて除電が難しくなる。
【0054】
あるいは、偏光フィルム貼り付け工程や基板カット工程でも基板周縁が数kVに達する電圧にさらされるが、このときには、カラーフィルター基板がTFTアレイ基板と電気的にも接続されているため、ラビング工程と同様の懸念に加えて、放電あるいは誘導による電荷がTFTを破壊することもある。
【0055】
一方、非表示領域のブラックマトリックス層と表示領域の額縁外縁部との距離が大きすぎると静電気に対する効果が不十分になるので、距離dは20mm以内であることが重要であり、より好ましくは10mm以内、最も好ましくは5mm以内である。
【0056】
非表示領域のブラックマトリックスパターンの幅は大きい方が除電効果が大きい。特にラビングロールによる帯電の防止は、ラビングロールが非表示領域外のブラックマトリックスパターン上で1回転分以上できる幅であることが好ましい。静電気抑制効果を得るためには、非表示領域のブラックマトリックス層ターンの幅は2mm以上が好ましく、より好ましくは5mm以上、最も好ましくは10mm以上である。非表示領域のブラックマトリックス層は、ある程度の面積があれば静電気抑制効果があり、例えば、10mm以上の連続パターンであればよい。したがって、非表示領域のブラックマトリックス層パターンは、20mm以内の間隙をおいて自由に配置することができる。
【0057】
透明導電膜層を表示領域外に配置する静電気対策においては、腐食やマスクスパッタ精度の制約がある他、透明導電膜層が基板のスクライブライン上にあると、ガラスカット時、低抵抗の導電性の小片が発生して、短絡欠陥の原因となることがあり好ましくない。したがって、一枚の基板に複数のカラーフィルタが配置されるなどして、基板上の非表示領域が比較的狭い場合にもフォトリソグラフィーでパターニングされるブラックマトリックス層配置による静電気対策が優れている。本発明は、一枚の基板に比較的小型のカラーフィルターが多数配置された場合に特に有効である。本発明は、透明導電膜層パターンを非表示領域に形成することによる静電気対策を除外するものではなく、障害がない範囲で本発明のブラックマトリックス層パターンによる静電気対策と併用することができる。
【0058】
次にTFTアレイを備えた対向基板の製造方法について説明する。
【0059】
透明基板上にアルミニウム薄膜をスパッタ法にて形成する。アルミニウム薄膜上にポジ型フォトレジストを塗布、乾燥してフォトレジスト被膜を形成する。続いて該フォトレジスト被膜上にフォトマスクを置き、露光装置を用いて紫外線を照射する。露光後、アルカリ現像液により、フォトレジスト被膜を現像する。次いでアルミニウムエッチャントでアルミニウム薄膜をエッチングしゲート電極、ゲート配線および付加容量からなる所定のパターンを得る。アルミニウム薄膜エッチング後、不要となったフォトレジスト被膜を剥離液にて剥離する。アルミニウム薄膜上にプラズマCVD法にて窒化珪素薄膜とアモルファスシリコン薄膜を連続して形成する。アモルファスシリコン薄膜上にポジ型フォトレジストを塗布、乾燥してフォトレジスト被膜を形成する。続いて該フォトレジスト被膜上にフォトマスクを置き、露光装置を用いて紫外線を照射する。露光後、アルカリ現像液により、フォトレジスト被膜を現像する。次いでリアクティブイオンエッチング法でアモルファスシリコン薄膜と窒化珪素薄膜をエッチングし所定のパターンを得る。リアクティブイオンエッチング後、不要となったフォトレジスト被膜をアッシングおよび剥離液にて剥離する。次にプラズマCVD法にて窒化珪素薄膜を形成する。トランジスタのチャンネル部分に該窒化珪素薄膜が残るようにアモルファスシリコン薄膜と同様にしてフォトレジストとリアクティブイオンエッチングを用いてパターニングする。この上にボロンをドープしたアモルファスシリコン薄膜を形成してフォトレジストとリアクティブイオンエッチングを用いてパターニングし、チャンネル層とソース電極およびドレイン電極とのオーミックコンタクトを確保する。さらにプラズマCVD法にて窒化珪素薄膜を形成してフォトレジストとリアクティブイオンエッチングを用いてパターニングし、ソース電極およびドレイン電極接続部分にスルーホールを形成する。アルミニウム薄膜をスパッタ法にて形成しフォトレジストとアルミニウムエッチャントを用いてパターニングし、ソース電極およびデータ配線を形成する。ITO薄膜をスパッタ法にて形成しフォトレジストとITOエッチャントを用いてパターニングし、画素電極を得る。プラズマCVD法にて窒化珪素薄膜を形成してフォトレジストとリアクティブイオンエッチングを用いてパターニングし、保護層を形成する。該保護層は画素電極上と液晶表示装置の外部信号線との接続部分はエッチングされ除かれる。かくして薄膜トランジスタからなる液晶駆動素子を備えた基板を得る。
【0060】
カラーフィルター基板上とTFTアレイ基板上にポリイミド配向剤を塗布し、80℃ で10分間乾燥し180℃ で1時間キュアして配向膜を得る。該配向膜を綿布やレーヨン布によりラビング処理する。ツイストネマチック方式では、カラーフィルター基板とTFTアレイ基板を貼り合わせたときに液晶が90°捻れるようにラビング方向を選択する。
【0061】
カラーフィルター基板に直径2μmから7μmのポリスチレンからなるスペーサーを散布する。一方、TFTアレイ基板上には直径2μmから7μmのガラスロッドを混入したエポキシ系のシール剤をスクリーン印刷する。シール剤はカラーフィルターの額縁部分に接合されるように配置され、液晶注入口が設けられる。
【0062】
カラーフィルター基板とTFTアレイ基板を位置合わせし、圧力をかけつつ加熱処理する。加熱処理は100℃ から170℃ で5分間から2時間実施され、2つの基板が固定される。かくして得られるセルに液晶を注入する。まずセルを減圧中に置き充分脱気する。シール剤に設けられた液晶注入口を液晶中に浸した後、減圧雰囲気を常圧もしくは加圧雰囲気に変化させ、液晶をセルの中に導入する。液晶が注入されたセルの液晶注入口を紫外線硬化樹脂で塞ぐ。ラビング方向に合わせて、基板外側に偏光フィルムを貼り付ける。かくして液晶表示装置を得る。
【0063】
カラーフィルター基板の静電気が充分に抑制できていない場合、スペーサー散布ムラにより液晶表示装置にギャップムラや色調不良の表示不良が発生することがある。
【0064】
本発明はカラーフィルターとTFTアレイ基板とを備えてなる液晶表示装置について主に記載したが、単純マトリックス配線による駆動である液晶表示装置、あるいは、TFTアレイ基板上にブラックマトリックス層と着色層を備えたいわゆるカラーフィルターオンアレイについても同様の効果がある。
【0065】
本発明のカラーフィルターおよびこれを用いた液晶表示装置は、パソコン、ワードプロセッサー、エンジニアリング・ワークステーション、ナビゲーションシステム、液晶テレビなどの表示画面に用いられ、また、液晶プロジェクション等にも好適に用いられる。また、光通信や光情報処理の分野において、液晶を用いた空間変調素子としても好適に用いられる。空間変調素子は、素子への入力信号に応じて、素子に入射する光の強度や位相、偏光方向等を変調させるもので、実時間ホログラフィーや空間フィルター、インコヒーレント/コヒーレント変換等に用いられるものである。
【0066】
【実施例】
(調製例1)
メチルトリメトキシシラン4.08g、フェニルトリメトキシシラン9.9g、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン28.8gをγ−ブチロラクトン156.3g、3−メチル−3−メトキシブタノール150gに溶解し、30℃で撹拌しながら9.12gの蒸留水を加えた後、50℃で2時間加熱撹拌し、加水分解・縮合を行った。次いで130℃に昇温してさらに縮合を進めながら生成したアルコールと水を留去させた。この溶液を50℃に冷却した後、撹拌しつつ3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物24.17gを添加してアミック酸系ポリオルガノシロキサン溶液を得た。
【0067】
(調製例2)
メチルトリメトキシシラン272g、フェニルトリメトキシシラン396gを3−メチル−3−メトキシブタノール785.6gに溶解した後に、撹拌しつつ燐酸3.34gと蒸留水216gの混合物を加えた。得られた溶液を105℃で1時間加熱し、主としてメタノールからなる成分302gを留去させた。次いで130℃で2時間加熱し、主としてアルコールと水からなる成分147gを留去させた。これを室温まで冷却してから3−メチル−3−メトキシブタノール86gを加えてポリオルガノシロキサン系溶液を得た。
【0068】
(調製例3)
アセト酢酸エチルエステル650gと3−メチル−3−メトキシブタノール1567gの混合液にテトラブトキシジルコニウム383gを添加して30℃で1時間撹拌した後、24時間放置してジルコニアキレート溶液を得た。
【0069】
実施例1
(樹脂ブラックマトリックス層の作製)
3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物144.1gをγ−ブチロラクトン1095g、N−メチル−2−ピロリドン209gに混合し、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル95.1g、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン6.2gを添加して70℃で3時間反応させた後、無水フタル酸2.96gを添加してさらに70℃で1時間反応させてポリイミド前駆体(ポリアミック酸)溶液を得た。
【0070】
下記の組成を有するカーボンブラックミルベースをホモジナイザーを用いて、7000rpmで30分間分散し、ガラスビーズを濾過して、ブラックペーストを調製した。
【0071】
[カーボンブラックミルベース]
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100):4.6部
ポリイミド前駆体溶液:24.0部
N−メチル−2−ピロリドン:61.4部
ガラスビーズ:90.0部。
【0072】
360mm×460mmの無アルカリガラス基板上にスピナーを用いて、ブラックペーストを塗布し、オーブン中で135℃、20分間セミキュアした。続いて、ポシ型フォトレジストをスピナーで塗布し、オーブンで80℃、210分間乾燥した。フォトレジスト膜厚は1.5μmとし、フォトマスクを介して露光した。
【0073】
次に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを2重量%含んだ水溶液を現像液に用い、基板を現像液に揺動させつつディップさせ、ポジ型レジストの現像とブラックペースト塗布膜のエッチングを同時に行った。その後、レジスト剥離液でポジ型フォトレジストを剥離し、さらに、300℃で30分間キュアし、略長方形の開口部を有する樹脂ブラックマトリックス層パターンを形成した。カラーフィルターの額縁外端から15mmの間隔をおいて周囲4辺に額縁外端に平行に、連続してブラックマトリックス層パターンを10mmの幅で形成した。樹脂ブラックマトリックス層の膜厚は、1.2μmであった。ブラックマトリックス層ベタ膜を用いて表面抵抗値を測定したところ、1010Ω/□であった。1枚の基板上には、約61mm×81mmの表示領域を持ったカラーフィルターを2行4列で8面配置した。
【0074】
(着色層の作製)
赤、緑、青の顔料として各々Color Index No.65300 Pigment Red 177で示されるジアントラキノン系顔料、Color Index No.74265 Pigment Green 36 で示されるフタロシアニングリーン系顔料、Color Index No.74160 Pigment Blue 15-4で示されるフタロシアニンブルー系顔料を用意した。ブラックマトリックス層に使用したポリイミド前駆体溶液に上記顔料を各々混合分散させて、赤、緑、青の3種類の着色ペーストを得た。
【0075】
まず、樹脂ブラックマトリックス層基板上に青ペーストを塗布し、120℃20分間セミキュアした。この後、ポジ型フォトレジストをスピナーで塗布後、80℃で20分乾燥した。フォトマスクを用いて露光し、テトラメチルアンモニウムヒドロキド2重量%水溶液に基板を浸漬し揺動させながら、ポジ型レフォトジストの現像および着色ペースト塗膜のエッチングを同時に行った。その後、ポジ型フォトレジストをレジスト剥離液で剥離し、さらに、300℃で30分間キュアした。青着色層の膜厚は1.6μmであり、データ線方向に伸びたストライプ形状で、ストライプ幅方向端部は6μm幅でブラックマトリックス層に重ねる設計とした。
基板洗浄後に、青着色層と同様にして、厚さ1.6μmの緑画素を形成した。さらに基板洗浄後に、青着色層と同様にして、厚さ1.6μmの赤画素を形成した。
【0076】
(透明保護膜および透明導電膜層の作製)
調製例1で得たアミック酸系ポリオルガノシロキサン溶液7.5gと調製例2で得たポリオルガノシロキサン溶液10gおよび調製例3で得たキレート溶液1.5gを混合し、透明樹脂用組成物を得た。ブラックマトリックス層と3原色の着色層が形成された基板の上に該透明樹脂を塗布し、80℃ で10分間乾燥し、次いで280℃ で60分間キュアして、厚さが0.2μmの透明保護膜層を形成した。該透明保護膜層が形成された基板上に、スパッタリング法にて膜厚が0.15μmで表面抵抗が20Ω/□のITO膜を形成した。ITO膜は表示領域の額縁上にパターン端部がくるようにマスクスパッタした。ただし、電気接合点として、表示領域の4つの角からのみ該ITO膜パターンは額縁外へ延びている。
【0077】
(液晶駆動素子基板の作製)
無アルカリガラス基板上に0.3μmのアルミニウム薄膜をスパッタ法にて形成した。アルミニウム薄膜上にポジ型フォトレジストを塗布、乾燥してフォトレジスト被膜を形成した。続いて該フォトレジスト被膜上にフォトマスクを置き、露光装置を用いて紫外線を照射した。露光後、アルカリ現像液により、フォトレジスト被膜を現像した。次いでアルミニウムエッチャントでアルミニウム薄膜をエッチングしゲート電極、ゲート配線および付加容量からなる所定のパターンを得た。アルミニウム薄膜エッチング後、不要となったフォトレジスト被膜を剥離液にて剥離した。アルミニウム薄膜上にプラズマCVD法にて厚さ0.7μmの窒化珪素薄膜と厚さ0.08μmのアモルファスシリコン薄膜を連続して形成した。アモルファスシリコン薄膜上にポジ型フォトレジストを塗布、乾燥してフォトレジスト被膜を形成した。続いて該フォトレジスト被膜上にフォトマスクを置き、露光装置を用いて紫外線を照射した。露光後、アルカリ現像液により、フォトレジスト被膜を現像した。次いでリアクティブイオンエッチング法でアモルファスシリコン薄膜と窒化珪素薄膜をエッチングし所定のパターンを得た。リアクティブイオンエッチング後、不要となったフォトレジスト被膜をアッシングおよび剥離液にて剥離した。次にプラズマCVD法にて厚さ0.5μmの窒化珪素薄膜を形成した。トランジスタのチャンネル部分に該窒化珪素薄膜が残るようにアモルファスシリコン薄膜と同様にしてフォトレジストとリアクティブイオンエッチングを用いてパターニングした。この上にボロンをドープしたアモルファスシリコン薄膜を厚さ0.2μm形成してフォトレジストとリアクティブイオンエッチングを用いてパターニングし、チャンネル層とソース電極およびドレイン電極とのオーミックコンタクトを確保した。さらにプラズマCVD法にて窒化珪素薄膜を厚さ0.8μm形成してフォトレジストとリアクティブイオンエッチングを用いてパターニングし、ソース電極およびドレイン電極接続部分にスルーホールを形成した。厚さ0.2μmのアルミニウム薄膜をスパッタ法にて形成しフォトレジストとアルミニウムエッチャントを用いてパターニングし、ソース電極およびデータ配線を形成した。厚さ0.14μmのITO薄膜をスパッタ法にて形成しフォトレジストとITOエッチャントを用いてパターニングし、画素電極を得た。プラズマCVD法にて窒化珪素薄膜を0.5μm形成してフォトレジストとリアクティブイオンエッチングを用いてパターニングし、保護層を形成した。該保護層は画素電極上と液晶表示装置の外部信号線との接続部分はエッチングされ除かれる。かくして薄膜トランジスタからなる液晶駆動素子を備えた基板を得た。
【0078】
上記のカラーフィルター基板上と液晶駆動素子を備えた基板上にポリイミド配向剤を塗布し、80℃ で10分間乾燥し180℃ で1時間キュアして厚さ0.05μmの配向膜を得た。液晶が両基板間で90°捻れるように、該配向膜をレーヨン布によりラビング処理した。カラーフィルター基板に直径4.5μmのポリスチレンからなるスペーサーを散布した。一方、液晶駆動素子が形成された基板上には直径4.8μmのガラスロッドを混入したエポキシ系のシール剤をスクリーン印刷した。シール剤はカラーフィルターの額縁部分に接合されるように配置され、液晶注入口が設けた。
【0079】
(液晶表示装置の作製)
カラーフィルター基板と液晶駆動素子が形成された基板を位置合わせし、圧力をかけつつ加熱処理した。加熱処理は150℃で1時間実施され、2つの基板が固定された。次いで、ガラスカットして8面を個別セルに切り出した。得られたセルに液晶を注入する。まずセルを減圧中に置き充分脱気した。シール剤に設けられた液晶注入口を液晶中に浸した後、減圧雰囲気を常圧もしくは加圧雰囲気に変化させ、液晶をセルの中に導入した。液晶が注入されたセルの液晶注入口を紫外線硬化樹脂で塞ぐ。ラビング方向に合わせて、基板外側に偏光フィルムを貼り付ける。かくして液晶表示装置を8面を得た。
【0080】
かくして得られた液晶表示装置には、カラーフィルターが形成された基板のラビング下流側のもの1枚にセルギャップムラによる軽度の色調ズレ表示不良が見られた他は良好な表示特性が得られた。表示不良は、セルギャップが部分的に0.2〜0.3μm増大したことによるもので、ラビングによる帯電の影響でスペーサー散布の均一性が悪くなったためと推察された。
【0081】
実施例2
ブラックマトッリクス層をスパッタで形成した金属クロムおよび酸化クロムより成る三層クロム薄膜とした以外は実施例1と全く同様にしてカラーフィルターおよび液晶表示装置を作製したところ、実施例1と同様に、カラーフィルターが形成された基板のラビング下流側のもの1面にセルギャップムラによる軽度の表示不良が見られた他は良好な表示特性が得られた。
【0082】
実施例3
ブラックマトリックス層で形成された額縁と非表示領域に形成されたブラックマトリックス層パターンの間の間隙を2mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターおよび液晶表示装置を作製したところ、8面の液晶表示装置全てで良好な表示特性が得られた。
【0083】
比較例1
非表示領域にブラックマトリックス層パターンを配置しないこと以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターおよび液晶表示装置を作製した。
【0084】
カラーフィルターが形成された基板のラビング方向下流のもの4面で顕著なセルギャップムラによる表示不良が観察された他、その他の4面でもセルギャップムラにより、額縁周辺部分で色調ズレ表示不良が発生した。
【0085】
比較例2
画素領域の額縁とダミーパターンの間の間隙を30mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターおよび液晶表示装置を作製したところ、カラーフィルターが形成された基板のラビング方向下流のもの3面で顕著なセルギャップムラによる表示不良が観察された他、その他の5面でもセルギャップムラにより、額縁周辺部分で比較的薄い色調ズレ表示不良が発生した。
【0086】
比較例3
画素領域の額縁とダミーパターンの間の間隙を0.3mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターおよび液晶表示装置を作製した。
【0087】
偏光フィルム貼り合わせ時の静電気でTFTが破壊され、欠陥となったものが2枚あった。
【0088】
実施例4
ブラックマトリックス層の幅を1mmにした以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターおよび液晶表示装置を作製したところ、カラーフィルターが形成された基板のラビング下流側のもの1面にセルギャップムラによる色調ズレ表示不良が見られた。また、ラビング方向下流側の残りの3面でも比較的軽度の色調ズレ表示不良が見られた。一方、ラビング方向上流側の4面は良好であった。
【0089】
【発明の効果】
本発明は、静電気起因の不良が発生しにくいカラーフィルターおよび液晶表示装置を提供するものである。カラーフィルター基板の帯電は工程中のラビング処理や剥離帯電などにより発生し、スペーサー散布ムラによるセルギャップムラや色調不良などの表示不良の原因となる。カラーフィルター基板の静電気の発生を抑えることあるいは発生した静電気を速やかに除電することにより、液晶表示装置の不良発生の低減を図る。

Claims (3)

  1. 透明基板上に少なくともブラックマトリックス層およびブラックマトリックス層の開口部に着色層を設けたカラーフィルター基板と、対向基板との間に液晶層を有する液晶表示装置の製造方法において、表示領域外端の外側に該表示領域外端からの距離dが1mm以上20mm以下であってブラックマトリックス層と同じ材料により成る導電性パターンを設け、さらに配向膜を形成したカラーフィルター基板をラビングする工程を有することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
  2. 導電性パターンが、カラーフィルター基板の表面から2層目またはそれより下層にあることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法
  3. 導電性パターンが、樹脂と遮光剤から主としてなる樹脂ブラックマトリックス層であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置の製造方法
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