JP4336012B2 - 即冷型冷却包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、即冷型冷却包装体に関し、さらに詳しくは、水と吸熱化学反応する冷却剤と、水又は水を加えて含水させゲル化した吸水性樹脂とを予め分離して収容しておき、必要に応じてこれらを混合して速やかに冷却作用を発揮させるタイプの即冷型冷却包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、物質の吸熱反応を利用した冷却包装体についての研究及び開発が盛んに行われてきた。
例えば、特開昭60−171042号には、水を封入した内袋を、冷却剤及び吸水性ポリマーと共に外袋に封入し、使用時に手等による外力で内袋を破断することによって冷却剤と水の吸熱反応を生起させるようにした冷却袋が開示されている。
一方、特開平1−289889号には、冷却剤と、水を加えて抱水させた吸水性樹脂を分離又は区画して包装し、使用時に混合することにより吸熱反応を生起させるようにした冷却包装剤が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の即冷型冷却包装剤においては、種々の解決すべき問題点が残されている。
まず第一の問題点として、冷却感を選択して使用できない点が挙げられる。すなわち、従来の冷却包装剤では、袋体が単一の材料から構成されていたため、急速に冷却するか又は緩やかに冷却するかなど、状況に応じた選択的使用ができなかった。そのため、緩やかに冷却する場合は、冷却包装体にタオルを巻き付け、急冷効果を下げる等の手間を必要としていた。
さらに、従来の冷却包装剤は冷却効果に重点が置かれ、袋体の肌触りについて配慮したものはない。そのため、実際に使用したときに、例えば発熱を抑える目的や、打ち身による炎症を和らげる目的で冷却包装剤を患部に直接当てると、肌触りが悪いという欠点があった。
【0004】
次に第二の問題点として、使用開始時の即冷性や、冷却効果及びその持続性等の冷却能力が低い点が挙げられる。
例えば、前記特開平1−289889号に記載の冷却包装剤のように、抱水させる吸収性樹脂として水用の吸水性樹脂を用いた場合、冷却剤として用いられている塩が溶解した塩水を吸収する能力が劣るため、含水ゲル状吸水性樹脂中に含まれる水と冷却剤の接触(溶解)で生じた濃厚な塩水が、その後の含水ゲル状吸水性樹脂中に含まれる水と冷却剤の接触及びそれによる速やかな吸熱反応の生起を阻害する要因となる。すなわち、濃厚な塩水は冷却剤を溶解せず、むしろ含水ゲル状吸水性樹脂中に含まれる水と冷却剤の接触を阻害してしまう。そのため、冷却剤と水の接触機会を増すためには大量の吸水性樹脂を用いる必要がある。その結果、単位吸熱量に対する吸水性樹脂の使用割合が高く、効率的でないと共に、経済的でもない。
【0005】
さらに第三の問題点として、水漏れや取り扱い性、使用感等の問題が挙げられる。前記特開平1−289889号に記載のような冷却包装剤は、抱水させた吸収性樹脂を用いているため、使用前に水漏れの心配はない。しかし、前記特開昭60−171042号に記載の冷却袋の場合、易破断性の内袋内に水を封入してあるため、輸送時に内袋が破れたり、シール不良等により水が漏れた場合、使用前に不慮の吸熱反応が起こってしまい、製品が駄目になってしまう。逆に内袋と外袋の間に水を封入した場合、輸送時に内袋が破れたり、シール不良等により水が漏れた場合に他の物を汚したり、ぶよぶよしているために取り扱い難いといった問題がある。
【0006】
また、前記特開平1−289889号に記載のように抱水させた吸水性樹脂を用いた系では、冷却反応を開始させるまでは、抱水によってゲル化した吸水性樹脂特有のソフト感を有するものの、使用によって吸熱溶解反応が進行するにつれて、吸水性樹脂中に封じ込められていた水が冷却剤によって抽出されて濃厚な塩水を形成し、塩水と高分子の2相に分離して液状化してしまい、ソフト感が損なわれるという問題がある。また、使用後の液状化した冷却剤は、水漏れのおそれがあると共に、冷却したあとの低温保持能力に劣るために簡易冷却剤として繰り返し使用することが難しかった。
【0007】
従って、本発明の第一の目的は、肌触りや冷却感を調整、選択できる冷却包装体を提供することにある。
本発明の第二の目的は、前記したような問題を解決し、使用開始から速やかな吸熱化学反応が起こり、かつ長時間冷却効果を維持できる冷却能力の高い即冷型冷却包装体を提供することにある。
本発明の第三の目的は、水漏れの恐れがなく、ソフト感が維持され、また繰返し使用可能な冷却包装体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、熱伝導率及び/又は触感が異なる少なくとも2枚のシート材の周辺部を強固にシールして形成した袋体内に、外部から力を付加することにより連通可能な少なくとも2つの収容部を設け、一方の収容部に、水に溶解し吸熱化学反応する少なくとも1種の冷却剤と、塩水を吸収してゲル化する少なくとも1種の吸収性物質の粉体を収容し、他方の収容部に、水を加えて含水させゲル化した少なくとも1種の吸水性樹脂と防カビ・防腐剤を収容してなり、該袋体に外部から力を付加することによって上記2つの収容部を連通させて吸熱化学反応を開始させるようにしたことを特徴とする即冷型冷却包装体が提供される。
【0009】
上記態様において、好適には、上記袋体は、熱伝導率及び/又は触感が互いに異なる2枚のシート材の周辺部を強固にシールして形成した袋体であって、かつ、所定の分画接着部において剥離可能に接着して少なくとも2つの収容部に区画した袋体が用いられる。
【0010】
使用する即冷型冷却包装体の触感や冷却感を調整、選択できる好適な態様においては、前記包装体の一側面は、耐水性、耐寒性を有する単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製され、他側面は、内面側が樹脂でラミネート加工された樹脂もしくは綿の不織布、布もしくは紙、又は外面側が植毛もしくは起毛された耐水性、耐寒性を有する単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の即冷型冷却包装体の第一の特徴は、袋体の両側面を材質の異なる2枚のシート材から構成する点に特徴を有する。すなわち、熱伝導率及び/又は触感が異なる2枚のシート材の周辺部を強固にシールして形成した袋体内に、外部から力を付加することにより連通可能な2つの収容部を設け、好ましくは所定の分画接着部において剥離可能に接着して2つの収容部に区画した袋体を構成するものである。
【0012】
前記したように、従来の包装体の2枚のシート材は、同じ材質のものからできていたため、冷却感や肌触り等の選択ができなかった。しかし、本発明の即冷型冷却包装体の場合、熱伝導率や触感が異なる2枚のシート材の組合せから構成されているため、シート面を選択して患部に押し当てることで、急冷感や緩やかな冷却感を選択でき、また肌触り等の選択ができる。また、熱伝導率や触感等の異なるシート面を交互に患部にあてがうことにより、従来とは異なる冷却感を得ることもできる。また、後述するような特徴により得られる包装体のソフトな使用感との相乗効果により、包装体を長時間患部に押し当てても不快感を感じないで済む。
【0013】
この態様の冷却包装体の場合、後述する第二の特徴のように、袋体の一方の収容部に少なくとも1種の冷却剤と吸塩水性樹脂粉体を収容し、他方の収容部に水を加えて含水させゲル化した少なくとも1種の吸水性樹脂と防カビ・防腐剤を収容することが好ましい。上記冷却剤を溶解させる物質としては水を用いることもでき、この場合にも、袋体の熱伝導率及び/又は触感が異なる2枚のシート材の周辺部は強固にシールされているため水漏れを生じることはない。
【0014】
冷却包装体は冷却原理に物質の吸熱溶解反応を利用するものであるが、本発明の即冷型冷却包装体の第二の特徴は、その材料構成にある。すなわち、外部から力を付加することにより連通可能な2つの収容部を有する袋体の、水を加えて含水させゲル化した少なくとも1種の吸水性樹脂と防カビ・防腐剤を収容した収容部とは別の収容部に、水に溶解し吸熱化学反応する少なくとも1種の冷却剤と共に、塩水を吸収してゲル化する少なくとも1種の吸収性物質の粉体(以下、吸塩水性樹脂粉体という)を収容したことを特徴としている。このような構成とすることにより、包装体を手で揉むなどして外圧を加えると2つの収容部が連通し、含水してゲル化した吸水性樹脂中の水と冷却剤が接触して直ちに吸熱溶解反応が起こり、速やかな冷却作用を発揮する。その際生じた濃厚な塩水は吸塩水性樹脂粉体により吸収されて除かれるので、その後の含水ゲル状吸水性樹脂中に含まれる水と冷却剤の接触が阻害されることはない。そのため、使用開始から速やかな吸熱化学反応が起こり、かつ長時間冷却効果を維持できる冷却能力の高い即冷型冷却包装体を提供できる。また、吸塩水性樹脂粉体は塩水を吸収して膨潤し、冷却包装体の冷却能力を損なうことなく徐々に粘性を有するゲル化物となるので、ソフトな使用感を維持できる。
【0015】
ここで、本発明の作用の理解を容易にするために、吸水性樹脂の吸水原理について簡単に説明する。吸水性樹脂は、基本的に水と親和性の高いイオン性基を有するポリマーで、ポリマー分子相互の間が結合した架橋構造を持っている。高吸水性の原理は、ポリマー鎖の帯電による反発によって網目が拡大することによって説明される。例えば、代表的な高吸水性ポリマーのアクリル酸ナトリウム系ポリマー架橋体の場合、電離しやすいカルボン酸ナトリウム基を持っているので、吸水すると水に溶けようとして三次元網目構造が広がる。高分子鎖の網目内に水が侵入してくると、カルボン酸ナトリウム基の中のナトリウムイオンが解離してゆき、高分子鎖にはその残基のカルボニル基が残される。高分子鎖中のカルボニル基同士はマイナスイオンで互いに電気的に反発するため、高分子鎖の網目をさらに押し広げ、それによって網目内にたくさんの水が取り込まれ、保持される仕組みとなっている。
【0016】
吸水性樹脂の吸水量は、例えばアクリル酸ナトリウム系ポリマー架橋体の場合、純水では自重の約500倍、水道水では約300倍、尿、生理食塩水では約50倍、海水では約7倍と、塩濃度が高くなるにつれて吸水倍率が低下する。これは、塩類のもたらすイオンの存在によって高吸水性ポリマーがイオン解離できず、ポリマー鎖の帯電による反発によって網目の拡大が起こらないからであると説明される。特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等のもたらす多価金属イオンは、高吸水性ポリマー中に取り込まれて結合してしまうので、吸水倍率を大きく低下させる。
【0017】
前記したように、冷却剤と共に吸水性樹脂を用いた場合、吸水性樹脂は冷却剤として用いられている塩が溶解した塩水を吸収する能力が劣るため、含水ゲル状吸水性樹脂中に含まれる水と冷却剤の接触(溶解)で生じた濃厚な塩水が、その後の冷却剤と水の接触及びそれによる速やかな吸熱反応の生起を阻害する要因となる。そのため、含水ゲル状吸水性樹脂中に含まれる水と冷却剤の接触で生じた塩水を速やかに除去して、その後の吸水性樹脂中の水と冷却剤との接触機会を増す必要がある。この目的のために、本発明の即冷型冷却包装体はその一方の収容部内に冷却剤と共に吸塩水性樹脂粉体を収容するものである。
【0018】
吸塩水性樹脂は、前記吸水性樹脂の吸塩水能力が低いという欠点を改良したものであり、多価金属イオンを取り込みにくい解離基を持った高吸水性ポリマーとしたものである。すなわち、高吸水性ポリマーにカルボキシル基や水酸基以外の親水性基、例えばスルホン酸基、サルフェート基、リン酸基等を導入したものであり、具体的には、架橋する前の親水性ポリマー自体にスルホン酸基を導入する方法(特開昭61−36309号、特開昭60−55011号)又はリン酸基を導入する方法(特開昭55−15634号)、あるいは親水性ポリマーの架橋剤(カルボキシル基と反応するエポキシ基、アミノ基や、水酸基と反応する無水酸基、イソシアネート基等の官能基を2個以上有する多官能性化合物)であるジグリシジルエーテル、エチレンジアミン、コハク酸、ヘキサメチレンジイソシアネート等にスルホン酸基を入れておき、高吸水性ポリマー化する方法(特開昭57−42765号)などがある。
【0019】
前記のような吸塩水性樹脂粉体を冷却剤と共に一方の収容部内に収容しておくことにより、使用時に、含水してゲル化している吸水性樹脂と混合したときに、冷却剤と含水ゲル状の吸水性樹脂とが接触して直ちに吸熱溶解反応が起こり、速やかな冷却作用を発揮する。その際生じた濃厚な塩水は吸塩水性樹脂粉体により速やかに吸収されて除かれるので、その後の含水ゲル状吸水性樹脂中の水と冷却剤の接触が阻害されることはない。そのため、使用開始から速やかな吸熱化学反応が起こり、かつ長時間冷却効果を維持できる。また、単位吸熱量に対する吸水性樹脂の使用割合を低くでき、効率的であると共に経済的な即冷型冷却包装体を提供できる。
【0020】
なお、吸水性樹脂粉体と吸塩水性樹脂粉体を混合して最初から粘性を持たせた含水物として一方の収容部内に収容しておき、使用時に、他方の収容部内に収容された冷却剤と混合した場合、吸熱化学反応が遅く、冷却能力が大変低い。これは、吸塩水性樹脂粉体が最初からゲル状になっているため、冷却剤と含水ゲル状の吸水性樹脂との接触により生じた濃厚な塩水を速やかに吸収、除去することが困難であるためと考えられる。また、使用時に冷却剤を吸水性樹脂粉体及び吸塩水性樹脂粉体のゲル状含水物と混合するとき、うまく混合することができない。
【0021】
また、本発明の即冷型冷却包装体によれば、吸塩水性樹脂粉体は塩水を吸収して膨潤し、冷却包装体の冷却能力を損なうことなく徐々に強粘性を有するゲル化物となるので、ソフトな使用感を維持できる。
さらに使用後の冷却包装体内に収容されているのはゲル状物であるため、再度冷蔵庫内に置いて冷却することにより、冷温維持効果の高い簡易な冷却包装体として繰り返し使用することもできる。
【0022】
次に、本発明の即冷型冷却包装体の構成要素の詳細について説明する。
吸水性樹脂の水で溶解し吸熱化学反応する冷却剤は、水に溶解する際に吸熱反応を起こすものであれば特に限定されない。但し、吸熱反応の際に有害な物質やガスが生成されるようなものは除かれる。具体的には、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、酸性硫酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、尿素、硝酸尿素、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸カリウム等が挙げられ、これらを単独で又は2種もしくは3種以上を組み合わせて用いることができる。
冷却剤の配合割合は、包装体の大きさ、用途等により適宜選定され、特定の割合に限定されるものではないが、一般に、1包装体当り15〜50質量部程度が望ましい。
【0023】
吸塩水性樹脂粉体は、塩水を吸収して膨潤する樹脂であれば特に限定されない。具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸塩系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸塩系ポリマーと不飽和二重結合を有する親水性化合物との共重合物、デンプンとポリ(メタ)アクリル酸塩系ポリマーとの共重合物、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂と不飽和二重結合を有する親水性化合物との共重合物、デンプンとポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂の共重合物、デンプン、セルロース、天然ガム重合体(キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアルガム等)等の粉末が挙げられ、これらを単独で又は2種もしくは3種以上の混合物として用いることができる。
【0024】
吸塩水性樹脂粉体の配合割合は、冷却剤と含水ゲル状吸水性樹脂との接触により生じた塩水を充分に吸収できる量的割合であればよく、特定の割合に限定されるものではないが、一般に、冷却剤100質量部当り1〜16質量部程度が適当である。吸塩水性樹脂粉体の配合割合が上記範囲よりも少ないと塩水の吸収・除去が充分に行なわれ難くなり、逆に上記範囲よりも多くなると冷却剤と含水ゲル状吸水性樹脂との接触を阻害し易くなるので好ましくない。
【0025】
水を吸収してゲル化する吸水性樹脂は、水を吸収して膨潤するものであれば特に限定されない。具体的には、ポリビニールアルコール、ポリビニール(メタ)アクリレート、アルギン酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸とマレイン酸の共重合物、ゼラチン、カラギーナン、マンナン、寒天、ペプチン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂、ポリエチレングリコール系ポリマー、ビニールアルコールと(メタ)アクリル酸の共重合物等が挙げられ、これらを単独で又は2種もしくは3種以上の混合物として用いることができる。なお、本明細書中において、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートとメタアクリレートを総称する用語であり、他の類似の用語についても同様である。
【0026】
吸水性樹脂の使用割合は、冷却剤との接触により充分な吸熱化学反応を生じさせる量の水を含有できる量的割合であればよく、所望の用途や包装体の大きさ、冷却剤の量等に応じて適宜選定でき、特定の割合に限定されるものではないが、一般に、冷却剤100質量部当り1〜5質量部程度が適当である。吸水性樹脂の使用割合が上記範囲よりも少ないと吸熱化学反応を行なうに充分な量の水を含有でき難くなり、逆に上記範囲よりも多くなると使用時に冷却剤及び吸塩水性樹脂粉体と充分に混合し難くなるので好ましくない。
【0027】
吸水しゲル化した吸水性樹脂の保存安定性に寄与する防カビ・防腐剤としては、従来公知のものは全て使用でき、特定のものに限定されない。具体的には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソブチル、プロピオン酸ナトリウム、ε―ポリリシン、チアベンダゾール、イソチアゾロン等が挙げられ、これらを単独で又は2種もしくは3種以上を組み合わせて用いることができる。
防カビ・防腐剤の配合割合は、吸水してゲル化した吸水性樹脂の防カビ・防腐に充分な効果のある量的割合であればよく、含水ゲル状吸水性樹脂100質量部当り0.02〜0.5質量部程度で充分である。
【0028】
本発明の即冷型冷却包装体は、前記冷却剤と吸塩水性樹脂粉体を収容する収容部と、含水ゲル状の吸水性樹脂と防カビ・防腐剤を収容する収容部の2つの収容部を有し、使用時に外力を加えることで、これら2つの収容部が容易に連通するものであればどのような形態であってもよい。具体的には、連接2部袋体構造、二重袋体構造などが挙げられる。
以下、添付図面を参照しながら好適な袋体構造について説明する。
【0029】
図1は本発明の即冷型冷却包装体に用いる袋体構造の好適な一実施態様を示しており、それぞれ耐水性及び耐寒性を有する2枚のシート材1及び2の四周辺部を強固にシールして形成した袋体であって、かつ、略半分割するようにほぼ中心線に沿って走る分画接着部3において、外部から力を付加することにより剥離可能に接着して2つの収容部A及びBに区画した袋体である。
この袋体の一方の収容部A内には前記1種又は2種以上の冷却剤と吸塩水性樹脂粉体が収容され、他方の収容部B内には1種又は2種以上の吸水性樹脂粉体と防カビ・防腐剤の混合物に水を加えて含水させゲル化したものが収容される。なおこの場合、収容部B内には、吸水性樹脂中に抱水されない水が多少共存していても構わない。
使用に際しては、上記包装体を手で揉むなどして外力を加えることにより、分画接着部3を剥離して2つの収容部A及びBを連通させ、内容物を良く混合することで冷却反応を開始させる。
【0030】
前記2枚のシート材1及び2としては、好ましくは熱伝導率及び/又は触感が異なる2枚のシート材が用いられる。具体的には、一方のシート材1は、耐水性、耐寒性を有する単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製され、他方のシート材2は、内面側が樹脂でラミネート加工された樹脂もしくは綿の不織布、布もしくは紙、又は外面側が植毛もしくは起毛された耐水性、耐寒性を有する単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製される。ここで、「複合層」は、同種又は異種のシート材が複数層積層されたものをいうが、プラスチックフィルム以外のシート材を構成材料とする場合には、ヒートシール性を付与するために内面側が樹脂でラミネート加工されたものを用いる。本発明で用いるシート材は、複合層の場合は少なくとも内面側が樹脂フィルムで構成されるので、プラスチックフィルム以外のシート材を構成材料とする場合も含めて複合層プラスチックフィルムという。また、外面側が植毛されたシート材としては、例えば誘電溶着等により微小プラスチック繊維がフィルム表面に植毛されたものなどが挙げられ、また外面側が起毛されたシート材としては、不織布、布等を起毛したものなどが挙げられ、いずれもソフトな肌触りを有する。
【0031】
また、前記熱伝導率及び/又は触感が異なる2枚のシート材1,2のより具体的な組合せ例としては、2軸延伸ポリプロピレン/ポリビニリデン/低密度ポリエチレン、2軸延伸ポリエステル/エバール/低圧・低密度ポリエチレン、2軸延伸ポリエステル/ポリビニリデン/低密度ポリエチレン、2軸延伸ポリエステル/低密度ポリエチレン/アルミ箔/低密度ポリエチレン、2軸延伸ナイロン/ポリビニリデン/低圧・低密度ポリエチレン、普通セロファン/低密度ポリエチレン、2軸延伸ポリプロピレン/エバール/低密度ポリエチレン等で構成された表面が平坦なシートと;ポリエステルスパンボンド不織布にポリエチレンをラミネート加工したシート、ポリプロピレンスパンボンド不織布にポリエチレンをラミネート加工したシート、パルプ繊維で作った不織布にポリエチレンをラミネート加工したシート、ナイロンスパンボンド不織布にポリエチレンをラミネート加工したシート、コットンスパンボンド不織布にポリエチレンをラミネート加工したシート等の表面が凹凸のシートとの組合せが挙げられる。
【0032】
前記のように互いに性質が異なる2枚のシート材を用いることにより、冷却感や肌触りを選択することができる。例えば、単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製されたシート材1のシート面を必要箇所に押し当てることにより、急冷効果が得られ、また内面側が樹脂でラミネート加工された樹脂もしくは綿の不織布、布もしくは紙、又は外面側が植毛もしくは起毛された単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製された熱伝導率が低く及び/又はソフトな触感を有するシート材2のシート面を必要箇所に押し当てることにより、緩やかに冷却できる。
【0033】
本発明の即冷型冷却包装体は、さらに所望により、前記内面側が樹脂でラミネート加工された樹脂もしくは綿の不織布、布もしくは紙、又は外面側が植毛もしくは起毛された単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製されたシート材2に、揮発性を有する香料又は精油を付着又は塗布してもよい。このように揮発性を有する香料又は精油を付着又は塗布しておくことにより、使用者に香りによる安らぎ感を与えることができる。
【0034】
なお、本発明の即冷型冷却包装体は前記したような構造を有するものが好ましいが、これに限られるものではなく、例えば内袋と外袋の二重袋構造とし、内袋内に前記1種又は2種以上の吸水性樹脂粉体と防カビ・防腐剤の混合物に水を加えて含水させゲル化したものが収容され、内袋と外袋の間の収容部内に1種又は2種以上の冷却剤と吸塩水性樹脂粉体が収容された構造、又はこれと逆の収容態様とすることもできる。このような構造の場合、内袋は易破断性の耐水性プラスチックフィルムから作製し、外袋は、単一層もしくは複合層プラスチックフィルム、あるいは内面側が樹脂でラミネート加工された樹脂もしくは綿の不織布、布もしくは紙、又は外面側が植毛もしくは起毛された耐水性、耐寒性を有する単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製すればよい。特に本発明の第一態様の場合には、外袋は、前記したような熱伝導率及び/又は触感が異なる少なくとも2枚のシート材の四周辺部を強固にシールして形成される。
【0035】
本発明の即冷型冷却包装体は、保管時においては冷却剤と含水ゲル状の吸水性樹脂又は水が接触することはなく、また含水したゲル状の吸水性樹脂には防カビ・防腐剤が配合されているので、長期間安定的に保管でき、一方、使用に際して手で揉むなどの簡単な操作で吸熱化学反応を生起させることができるので、例えば打撲、捻挫、火傷、歯痛、日射病、発熱等の患部の簡易冷却用など、簡便な即冷型冷却袋として種々の用途に用いることができる。また、肌触りが良いシート面を必要箇所、例えばまぶたに押し当てることで疲れ目を癒す効果が得られたり、また火傷をした箇所に押し当てることで緩やかに炎症を抑えることもできる。さらに、本発明の即冷型冷却包装体は携帯に便利であるので、レジャー用、緊急用などの冷却袋として有用である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されないことはもとよりである。
【0037】
実施例1、2及び比較例1
図1に示すような中央を剥離可能に接着した2つの収容部A,Bを有する袋体を作製し、収容部A内に下記表1に示すA欄の各成分の粉体を、また収容部B内にB欄の各成分の混合物のゲル状物を収納した。
【表1】
【0038】
試験例:
前記のようにして作製した各即冷型冷却包装体に外圧を加えて中央部の接着を剥がし、両収容部の内容物を40秒間よく混合し、冷却包装体を縦32cm、横22cm、厚さ3.5cmの発泡樹脂板の上に設置し、冷却包装体の中央を折り重ねてその間に温度計を入れ、温度変化を測定した。なお、測定時の外気温は25℃であった。
得られた試験結果を基に、経過時間(30分まで)に対する温度変化をグラフにしたものを図2に示す。
【0039】
図2のグラフから、含水ゲル状の吸水性樹脂とは別の収容部内に、吸塩水性樹脂粉体を冷却剤と共に収容した実施例1及び2の冷却包装体は、冷却剤とは別の収容部内に、吸塩水性樹脂粉体を吸水性樹脂と共に混合し、ゲル状化したものを収容した比較例1の冷却包装体よりも即冷却効果に優れていた。さらに、実施例1及び2の冷却包装体は、30分経過後も極めて緩やかに温度が上昇し、150分経過後でも実施例1では8.5℃、実施例2では10.8℃であり、冷温維持効果に優れていた。また、150分経過後も液状化せずにゲル物特有のソフト感を有していた。
なお、上記試験終了後の実施例1及び2の冷却包装体を冷蔵庫に入れ、冷却した後、簡易冷却剤として使用する実験を繰り返し行なったところ、簡易冷却剤として求められる充分な冷却効果が得られると共に、ソフト感も維持されていた。
【0040】
実施例3
熱伝導率及び/又は触感が異なる2枚のシート材の一方のシートとして、低温でも柔らかく肌に対する触感の良いナイロンスパンボンド不織布に50μm厚さの低圧・低密度ポリエチレンをラミネート加工したシートを使用し、他方のシートとして2軸延伸ポリエステル12μm/エバール15μm/低圧・低密度ポリエチレン35μmで構成されたシートを使用した。この2枚のシートの四周辺部を強固にシールし、かつ、所定の分画接着部において剥離可能に接着して2つの収容部に区画した図1に示すような袋体の一方の収容部に、硝酸アンモニウム36質量%とDKドライカプセルCB−T1.8質量%を収容し、他方の収容部に、水60質量%、吸水性樹脂サンフレッシュST−500D1.8質量%及び防腐剤0.2質量%を混合しゲル化させた物を収容し、即冷型冷却包装体を作製した。
この即冷型冷却包装体を手で揉んで外力を加え、区画している接着部を剥がし、両収容物を混合すると、直ちに冷却が始まった。冷却包装体の中央を折り重ねてその間に温度計を入れ、冷却包装体の両表面の最低温度差を測定した。表面が平坦なシート面は−7.5℃、表面が凹凸の不織布のシート面は−5.0℃で、測定での温度差は2℃位であるが、実使用では表面が平坦なシートは肌に対する密着性や熱伝導が良く、極めて冷たく感じ、同じ場所に静置しているのが苦痛になる程冷えた。一方、不織布面を肌に当てた場合、不織布は僅かの隙間と細い繊維で構成された布のため、熱伝導率が悪く、肌に対する冷たさの感触が穏やかで大変良かった。さらに、低温でも柔らかなナイロン不織布であるため、肌に対する感触も良かった。従って、上記のような即冷型冷却包装体を用いた場合、使用箇所に応じて、急冷感や穏やかな冷却感を選択して使用できる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明の即冷型冷却包装体の第一の特徴によれば、袋体が熱伝導率や触感が異なる2枚のシート材の組合せから構成されているため、シート面を選択して患部に押し当てることで、急冷感や緩やかな冷却感を選択でき、また肌触り等の選択ができると共に、包装体のソフト感との相乗効果により従来とは異なる心地よい冷却感が得られる。
また、本発明の即冷型冷却包装体の第二の特徴によれば、含水ゲル状の吸水性樹脂と防カビ・防腐剤を収容した収容部とは別の収容部に、冷却剤と共に吸塩水性樹脂粉体を収容したものであるため、包装体を手で揉むなどして外圧を加えて2つの収容部を連通させると、冷却剤と含水ゲル状の吸水性樹脂に含まれる水が接触して直ちに吸熱溶解反応が起こり、速やかな冷却作用を発揮する。その際生じた濃厚な塩水は吸塩水性樹脂粉体により吸収されて除かれるので、その後の含水ゲル状吸水性樹脂中に含まれる水と冷却剤の接触が阻害されることはない。そのため、使用開始から速やかな吸熱化学反応が起こり、かつ長時間冷却効果を維持できる冷却能力の高い即冷型冷却包装体を提供できる。また、吸塩水性樹脂粉体は塩水を吸収して膨潤し、冷却包装体の冷却能力を損なうことなく徐々に粘性を有するゲル化物となるので、ソフトな使用感を維持できる。
また、使用後の冷却包装体内に収容されているのはゲル状物であるため、再度冷蔵庫内に置いて冷却することにより、冷温維持効果の高い簡易な冷却包装体として繰り返し使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の即冷型冷却包装体の好適な一実施態様を示す概略断面図である。
【図2】 実施例1、2及び比較例1で作製した即冷型冷却包装体の経時的温度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1,2 シート材
3 分画接着部
A,B 収容部
Claims (4)
- 熱伝導率及び/又は触感が異なる少なくとも2枚のシート材の周辺部を強固にシールして形成した袋体内に、外部から力を付加することにより連通可能な少なくとも2つの収容部を設け、一方の収容部に、水に溶解し吸熱化学反応する少なくとも1種の冷却剤と、塩水を吸収してゲル化する少なくとも1種の吸収性物質の粉体を収容し、他方の収容部に、水を加えて含水させゲル化した少なくとも1種の吸水性樹脂と防カビ・防腐剤を収容してなり、該袋体に外部から力を付加することによって上記2つの収容部を連通させて吸熱化学反応を開始させるようにしたことを特徴とする即冷型冷却包装体。
- 前記袋体は、熱伝導率及び/又は触感が互いに異なる2枚のシート材の周辺部を強固にシールして形成した袋体であって、かつ、所定の分画接着部において剥離可能に接着して少なくとも2つの収容部に区画した袋体であることを特徴とする請求項1に記載の即冷型冷却包装体。
- 前記包装体の一側面は、耐水性、耐寒性を有する単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製され、他側面は、内面側が樹脂でラミネート加工された樹脂もしくは綿の不織布、布もしくは紙、又は外面側が植毛もしくは起毛された耐水性、耐寒性を有する単一層もしくは複合層プラスチックフィルムから作製されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の即冷型冷却包装体。
- 前記塩水を吸収してゲル化する吸収性物質の配合割合が、冷却剤100質量部当り1〜16質量部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の即冷型冷却包装体。
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