JP4335484B2 - 液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 - Google Patents

液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種光学素子に有用な液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶化合物の配向層からなる薄膜(フィルム)、とりわけネマチック構造、あるいはねじれネマチック構造の配向を固定化した液晶物質からなるフィルムは、液晶表示素子用の色補償や視野角補償用の素子として、また旋光性光学素子等として優れた性能を有し、各種表示素子の高性能化、軽量化に寄与している。これらのフィルムの製造法としては、配向性基板上に形成された液晶物質からなる層を支持基板を兼ねる透光性基板上に転写する方法が提案されている(特開平4−57017号、特開平4−177216号等)。さらに、液晶表示用素子に求められる過酷な耐久性試験に耐えるための対策として、またより一層の薄型化、軽量化のために、支持基板フィルムを用いない液晶物質からなる光学素子の製造方法も提案されている(特開平8−278491号)。
【0003】
かかる製造法によれば、配向性基板上に配向形成された液晶物質よりなる層を、接着剤を介して一旦再剥離性基板に転写させた後に、該再剥離性基板を剥離することにより、支持基板フィルムのない液晶物質層からなる光学素子の製造が可能になった。ここで用いられる再剥離性基板としては機械的強度と良好な剥離性が要求されるため、シリコーンやフッ素樹脂などの表面コート、あるいは他の表面処理を施した光学的等方性フィルムを除けば、一般には二軸延伸ポリエステルや二軸延伸ポリプロピレンなどの光学的異方性を有するフィルムに限られていた。
【0004】
前記光学的等方性フィルムはその種類が少なく、剥離性、耐熱性や強度、膜厚等が液晶物質層の製造に必要な耐性を十分に具備するとは言えず、また高価格のものが多い。他方、二軸延伸され光学的異方性を有する再剥離性基板は、光学的等方性フィルムとは異なり種類も多く耐性も十分であるが、該基板上に形成された液晶物質層を製造時にそのまま検査しようとした場合には、複屈折性の影響で液晶物質層の異物、輝点、色ムラ等の光学的欠陥の検出が極めて困難であるという問題があり、欠陥の検出と良好な剥離性との両立が充分に解決されていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決し、支持基板フィルムのない薄膜化した液晶フィルムの製造法において、光学的欠陥の検出を容易にし、かつ再剥離時の剥離性を良好にすることを目的として、再剥離性基板について鋭意検討した結果、一軸延伸ポリエステルフィルムを用いることにより、製造時に要求される機械的強度、良好な剥離性を満足し、同時に光学的欠陥の検査が容易にできることを見出し、ついに本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して一軸延伸ポリエステルフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、前記液晶物質層の光学的欠陥の検出を行い、ついで再剥離性基板を剥離することを特徴とする液晶フィルムの製造方法、に関する。
また、本発明の第2は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して一軸延伸ポリエステルフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、前記液晶物質層の光学的欠陥の検出を行い、ついで再剥離性基板を剥離後、偏光板を貼着することを特徴とする楕円偏光板の製造方法、に関する。
本発明の第1および第2において、前記一軸延伸ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステルで構成されていることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる液晶の配向が固定化された液晶物質層は、配向状態にある液晶物質を固定化する手段を用いることにより固定化された層であり、固定化手段としては、高分子液晶物質の場合は配向状態から急冷してガラス化状態にして固定する、反応性官能基を有する低分子または高分子液晶物質を配向させた後、前記官能基を反応せしめ(硬化・架橋等)固定化する、などが挙げられる。
前記反応性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタン基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアナート基、酸無水物基等が挙げられ、それぞれの基に適した方法で反応が行われる。
【0008】
液晶物質層に使用することのできる液晶物質は、液晶フィルムが目的とする用途や製造方法により低分子液晶物質、高分子液晶物質を問わず広い範囲から選定することができるが、高分子液晶物質が好ましい。さらに液晶物質の分子形状は、棒状であるか円盤状であるかを問わず、例えばディスコティックネマチック液晶性を示すディスコティック液晶化合物も使用することができる。
固定化前の液晶物質層の液晶相としては、ネマチック相、ねじれネマチック相、コレステリック相、ハイブリッドネマチック相、ハイブリッドねじれネマチック相、ディスコティックネマチック相、スメクチック相等が挙げられる。
【0009】
前記高分子液晶物質としては、各種の主鎖型高分子液晶物質、側鎖型高分子液晶物質、またはこれらの混合物を用いることができる。主鎖型高分子液晶物質としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系、ポリエステルイミド系等の高分子液晶物質、またはこれらの混合物等が挙げられる。また、側鎖型高分子液晶物質としては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系、ポリエステル系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する物質に側鎖としてメソゲン基が結合した高分子液晶物質、またはこれらの混合物が挙げられる。これらのなかでも合成や配向の容易さなどから、主鎖型高分子液晶物質のポリエステル系が好ましい。
【0010】
低分子液晶物質としては、飽和ベンゼンカルボン酸類、不飽和ベンゼンカルボン酸類、ビフェニルカルボン酸類、芳香族オキシカルボン酸類、シッフ塩基型類、ビスアゾメチン化合物類、アゾ化合物類、アゾキシ化合物類、シクロヘキサンエステル化合物類、ステロール化合物類などの末端に前記反応性官能基を導入した液晶性を示す化合物や前記化合物類のなかで液晶性を示す化合物に架橋性化合物を添加した組成物などが挙げられる。また、ディスコティック液晶化合物としては、トリフェニレン系、トルクセン系等が挙げられる。
【0011】
さらに、液晶物質中に熱または光架橋反応等によって反応しうる官能基または部位を有している各種化合物を液晶性の発現を妨げない範囲で配合しても良い。架橋反応しうる官能基としては、前述の各種の反応性官能基などが挙げられる。
【0012】
液晶の配向が固定化された液晶物質層は、前記液晶物質や必要に応じて添加される各種の化合物を含む組成物を溶融状態で配向基板上に塗布する方法や、該組成物の溶液を配向基板上に塗布する方法等により形成し、配向基板上に塗布された塗膜は乾燥、熱処理(液晶の配向)を経て、必要により光照射および/または加熱処理(重合・架橋)等の前述の配向を固定化する手段を用いて配向を固定化することにより形成される。
【0013】
前記溶液の調製に用いる溶媒に関しては、本発明に使用される液晶物質や組成物を溶解でき、適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限は無く、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸メトキシプロピル、乳酸エチルなどのエステル系、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などやこれらの混合系が好ましく用いられる。また、配向基板上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤等を溶液に添加しても良い。さらに、着色を目的として液晶性の発現を妨げない範囲内で二色性染料や通常の染料や顔料等を添加することもできる。
【0014】
塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スピンコート法などを挙げることができる。塗布の後に、ヒーターや温風吹きつけなどの方法による溶媒除去(乾燥)工程を入れても良い。塗布された膜の乾燥状態における膜厚は、0.1μm〜50μm、好ましくは0.2μm〜20μmである。この範囲外では、得られる液晶物質層の光学性能が不足したり、液晶物質の配向が不十分になるなどして好ましくない。
【0015】
続いて、必要なら熱処理などにより液晶の配向を形成した後、配向の固定化を行う。熱処理は液晶相発現温度範囲に加熱することにより、液晶物質が本来有する自己配向能により液晶を配向させるものである。熱処理の条件としては、用いる液晶物質の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10〜300℃、好ましくは30〜250℃の範囲である。あまり低温では、液晶の配向が十分に進行しないおそれがあり、また高温では、液晶物質が分解したり配向基板に悪影響を与えるおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜60分、好ましくは10秒〜30分の範囲である。3秒よりも短い熱処理時間では、液晶の配向が十分に完成しないおそれがあり、また60分を超える熱処理時間では、生産性が極端に悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。液晶物質が熱処理などにより液晶の配向が完成したのち、そのままの状態で配向基板上の液晶物質層を、使用した液晶物質に適した手段を用いて固定化する。
【0016】
前記配向基板としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のフィルムが例示できる。
【0017】
これらのフィルムは製造方法によっては改めて配向能を発現させるための処理を行わなくとも本発明に使用される液晶物質に対して十分な配向能を示すものもあるが、配向能が不十分、または配向能を示さない等の場合には、これらのフィルムを適度な加熱下に延伸する、フィルム面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理を行う、フィルム上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる配向膜を設けてラビング処理を行う、酸化珪素等の斜方蒸着処理、あるいはこれらを適宜組み合わせるなどして配向能を発現させたフィルムを用いても良い。
また配向基板として、表面に規則的な微細溝を多数設けたアルミニウム、鉄、銅などの金属板や各種ガラス板等も使用することができる。
【0018】
配向基板上に形成された液晶物質層は、次に接着剤を介して一軸延伸ポリエステルフィルムからなる再剥離性基板と接着させる。
この接着剤としては、液晶物質層および再剥離性基板たる1軸延伸ポリエステルフィルムに対して十分な接着力を有し、かつ後の工程で1軸延伸ポリエステルフィルムを剥離することが可能であり、液晶物質層の光学的特性を損なわないものであれば、特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂系、メタクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ゴム系、ウレタン系、ポリビニルエーテル系およびこれらの混合物系や、熱硬化型および/または光硬化型、電子線硬化型等の各種反応性のものを挙げることができる。これらの接着剤は液晶物質層を保護する透明保護層の機能を兼ね備えたものも含まれる。なお、上記接着剤として粘着剤を用いることもできる。
【0019】
前記反応性のものの反応(硬化)条件は、接着剤を構成する成分、粘度や反応温度等の条件により変化するため、それぞれに適した条件を選択して行えばよい。例えば、光硬化型の場合は、好ましくは各種の公知の光開始剤を添加し、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザー、シンクロトロン放射光源などの光源からの光を照射し、反応を行わせればよい。単位面積(1平方センチメートル)当たりの照射量としては、積算照射量として通常1〜2000mJ、好ましくは10〜1000mJの範囲である。ただし、光開始剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、あるいは反応性の化合物自身に光源波長の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、あるいは吸収波長の異なる2種以上の光開始剤を混合して用いるなどの方法を採ることも出来る。電子線硬化型の場合の加速電圧は、通常10kV〜200kV、好ましくは50kV〜100kVである。
【0020】
接着剤の厚みは、前述のように接着剤を構成する成分、接着剤の強度や使用温度などにより異なるが、通常1〜50μm、好ましくは3〜30μmである。この範囲外では接着強度が不足したり、端部よりの滲み出しなどがあったりして好ましくない。
また、これらの接着剤はその特性を損なわない範囲で、光学特性の制御を目的とする各種微粒子等を添加することもできる。前記微粒子としては、接着剤を構成する化合物とは屈折率の異なる微粒子、透明性を損なわず帯電防止性能向上のための導電性微粒子、耐摩耗性向上のための微粒子等が例示でき、より具体的には、微細シリカ、微細アルミナ、ITO(Indium Tin Oxide)微粒子、銀微粒子、各種合成樹脂微粒子などが挙げられる。さらに本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を配合しても良い。
【0021】
本発明に使用される再剥離性基板は、一軸延伸ポリエステルフィルムである。その組成は特に限定されるものではなく任意であるが、好ましくはその繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレートであるものが例示される。他の共重合成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等のジカルボン酸成分、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分が挙げられる。
【0022】
これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記カルボン酸成分やジオール成分と共に、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸を併用することも可能である。また、その他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有する化合物を含んでも良い。
該ポリエステルの製造法としては、芳香族ジカルボン酸とジオールを直接反応させる直接重合法、芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルとジオールとをエステル交換反応させるいわゆるエステル交換反応法等の任意の製造法を適用することができる。
【0023】
再剥離性基板の剥離力に関しては、同一材料から製造される再剥離性基板であっても製造方法、表面状態や使用される接着剤との濡れ性などにより変化するため一概には決定できないが、接着剤との界面での剥離力(180゜剥離、剥離速度30cm/分、室温下測定)は、通常0.38〜12N/m、好ましくは0.38〜8.0N/mであることが望ましい。剥離力がこの値より低い場合には、配向基板上の液晶物質層を再剥離性基板と接着後、配向基板を剥離する際、剥離力が低すぎ再剥離性基板に浮きが見られたりして所望する界面での良好な剥離状態が得られず、再剥離性基板への液晶物質層の転写が不十分になる、また剥離力が高すぎる場合には、再剥離性基板を剥離する際、液晶物質層の破壊、あるいは、所望する層との界面で剥離ができないなどして好ましくない。
【0024】
また、再剥離性基板の剥離性を調整するために、滑剤を含有させることもできる。滑剤を含有させる場合、光学的欠陥の検査性や剥離性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、滑剤の種類、添加量に特に制限は無い。滑剤の具体例としては、微細シリカ、微細アルミナ等が挙げられ、添加量の指標としては、再剥離性基板のヘイズ値が通常50%以下、好ましくは30%以下となるようにすればよい。それ以上のヘイズ値の場合には、光学的欠陥の検査性が悪化し好ましくない。
また、必要に応じてその他の公知の各種添加剤、例えば、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤などを含有させてもよい。
【0025】
一軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法の一例としては、例えば、前記ポリエステルを溶融し、シート状に押し出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度においてテンターで横延伸後、熱固定処理を施す方法が挙げられる。
【0026】
本発明における液晶フィルムの製造方法は、配向基板上に液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して一軸延伸ポリエステルフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離することを特徴とするものである。
液晶フィルムの製造方法としては、再剥離性基板に一軸延伸ポリエステルを使用する点を除き特に限定されないが、一例として以下の方法で製造することができる。
【0027】
まず、配向基板上に、液晶物質の塗膜を適切な方法で形成し、必要に応じて溶媒等を除去し、加熱等により液晶の配向を完成せしめ、用いた液晶物質に適した手段により液晶物質層を固定化する。次いで、配向の固定化された液晶物質層および/または1軸延伸ポリエステルフィルム(再剥離性基板)上に、接着剤層を形成し、接着剤層を介して液晶物質層と一軸延伸ポリエステルフィルム(再剥離性基板)を密着した後、必要により接着剤層を反応(硬化)させた後、配向基板を剥離する。
このようにして、配向の固定化された液晶物質層を再剥離性基板に転写させることができる。本発明においては、かくして再剥離性基板である一軸延伸ポリエステルフィルム上に接着剤を介し接着された液晶物質層からなる積層物を得た後、該一軸延伸ポリエステルフィルムを剥離することにより液晶フィルムを得るものである。かくして、液晶フィルムが製造される。
【0028】
この製造工程中の再剥離性基板である一軸延伸ポリエステルフィルム上に形成された液晶物質層は、そのままの状態で、容易に光学的欠陥の検出が可能である。
また、一軸延伸ポリエステルフィルムを剥離する際には、剥離不良による液晶物質層の破壊、あるいは他の界面での剥離は発生せず、良好な剥離状態を得ることができる。
【0029】
光学的欠陥の検出方法については、特に限定されないが、2枚の偏光板の吸収軸を直交方向に配置し、その間に一軸延伸ポリエステルフィルムと液晶物質層とからなる積層フィルムを配置し、偏光板の下部から白色光を照射し、反対方向から目視で観察する方法や、ラインカメラを用いた自動化法等が挙げられる。前記液晶物質層のリターデーション(複屈折と液晶物質層の厚みとの積)によっては偏光板の吸収軸は必ずしも直交に配置せず、光学的欠陥が検知しやすくなるように任意の角度に設定することもできる。
【0030】
得られた液晶フィルムは、液晶物質層の表面保護のため、露出している液晶物質層に透明保護層を設けたり、表面保護フィルムを貼合しても良い。透明保護層としては、前述の接着剤から選定することもできる。
【0031】
また本発明においては、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して一軸延伸ポリエステルフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離基板を剥離して得られる液晶フィルムに、偏光板を貼着することにより楕円偏光板が製造される。
液晶フィルムの偏光板を貼着する面は特に限定されず、配向基板剥離面側でも良く、一軸延伸ポリエステルフィルム剥離面側でも良い。偏光板の貼着面は用途、製造プロセス等により、適宜選択することができる。
【0032】
本発明の楕円偏光板は、偏光板および液晶フィルムの他に、反射防止層、防眩処理層、ハードコート層、光拡散層を1層または複数層含んでいても良い。偏光板と貼合あるいは接着に使用される接着剤等は光学グレードであれば特に制限はなく、例えば前記の接着剤から適するものを用いることができる。
【0033】
本発明の楕円偏光板に使用される偏光板は、本発明の目的が達成し得るもので有れば特に限定されず、液晶表示装置に通常用いられる偏光板を適宜使用することができるが、好ましくは近年開発上市された薄膜型のものが望ましい。具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)や部分アセタール化PVAのようなPVA系偏光フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物等からなる親水性高分子フィルムにヨウ素および/または2色性色素を吸着して延伸した偏光フィルム、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン配向フィルムなどからなる偏光フィルムなどを使用することができる。また、反射型の偏光フィルムも使用することができる。
【0034】
前記偏光板は、偏光フィルム単独で使用しても良いし、強度向上、耐湿性向上、耐熱性の向上等の目的で偏光フィルムの片面または両面に透明な保護層等を設けたものであっても良い。透明な保護層としては、ポリエステルやトリアセチルセルロース等の透明プラスチックフィルムを直接または接着剤層を介して積層したもの、樹脂の塗布層、アクリル系やエポキシ系等の光硬化型樹脂層などが挙げられる。これら透明な保護層を偏光フィルムの両面に被覆する場合、両面に同じ透明な保護層を設けても良いし、また異なる透明な保護層を設けても良い。
【0035】
また、上記製造工程に置いて、一軸延伸ポリエステルフィルムを剥離する前に、あるいは剥離後に、他の光学異方フィルムと貼合あるいは接着し、必要により一軸延伸ポリエステルフィルムを剥離することにより、液晶フィルムを有する各種の光学素子を得ることができる。
この光学素子においても、光学異方性フィルムとの貼合前に、一軸延伸ポリエステルフィルム上に形成された液晶物質層は、そのままの積層状態で、容易に光学的欠陥の検出が可能である。
さらに、必要により上記各種のフィルムや層の複数枚を積層してもよく、同一面同士、例えば液晶物質層同士を必要により粘・接着剤を介して貼合することもできる。
【0036】
本発明の液晶フィルムを有する各種光学素子のなかで、例えばネマチック配向、ねじれネマチック配向を固定化した液晶フィルムは位相差フィルムとして機能し、STN型、TN型、OCB型、HAN型等の透過または反射型液晶表示装置の補償板として使用できる。コレステリック配向やスメクチック配向を固定化した液晶フィルムは、輝度向上用の偏光反射フィルム、反射型のカラーフィルター、選択反射能に基因する視角による反射光の色変化を生かした各種偽造防止素子や装飾フィルムなどに利用できる。またネマチックハイブリッド配向を固定化したフィルムは、正面から見たときのリターデーションを利用して、位相差フィルムや波長板として利用でき、またリターデーション値の向き(フィルム厚さ方向の分子軸の傾き)による非対称性を生かしてTN型液晶表示装置の視野角改善フィルムなどに利用できる。また、1/4波長板機能を有する液晶フィルムは偏光板と組み合わせ、円偏光板や反射型の液晶表示装置やEL表示装置の反射防止フィルター等として用いることができる。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、通常の再剥離性基板を用いた場合に極めて困難である、液晶物質層の異物、輝点、色ムラ等の光学的欠陥の容易な検出と再剥離性基板の良好な剥離性の両立とを、再剥離性基板として一軸延伸ポリエステルを使用することにより極めて容易に達成することができる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明について実施例によりさらに詳しく説明する。
【0039】
実施例1
テレフタル酸50mmol、2,6−ナフタレンジカルボン酸50mmol、メチルヒドロキノンジアセテート40mmol、カテコールジアセテート60mmolおよびN−メチルイミダゾール60mgを用いて窒素雰囲気下、270℃で12時間重縮合を行った。次に得られた反応生成物をテトラクロロエタンに溶解した後、メタノールで再沈殿を行って精製し、液晶性ポリエステル14.7gを得た。この液晶性ポリエステル(ポリマー1)の対数粘度(フェノール/テトラクロロエタン(6/4 質量比)混合溶媒:30℃)は0.17dl/g、液晶相としてネマチック相を持ち、等方相−液晶相転移温度は250℃以上、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度は115℃であった。
【0040】
ビフェニルジカルボニルクロリド90mmol、テレフタロイルクロリド10mmolおよびS−2−メチル−1,4−ブタンジオール105mmolをジクロロメタン中で室温にて20時間反応させ、反応液をメタノール中に投入し再沈殿させることにより液晶性ポリエステル12.0gを得た。この液晶性ポリエステル(ポリマー2)の対数粘度は0.12dl/gであった。
【0041】
19.82gのポリマー1と0.18gのポリマー2を80gのN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ溶液を調整した。この溶液を、レーヨン布にてラビング処理したポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名カプトン)上にスピナーにて塗布し、溶媒を乾燥除去した後、210℃で20分熱処理することでツイステッドネマチック配向構造を形成させた。熱処理後、室温下まで冷却してツイステッドネマチック配向構造を固定化し、ポリイミドフィルム上に実膜厚3.0μmの均一に配向した液晶物質層を得た(液晶物質層1)。実膜厚は触針式膜厚計を用いて測定した。
【0042】
次いで液晶物質層1の上(ポリイミドフィルムと反対側の面)に市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を5μmの厚さに塗布し、この上に再剥離性基板として、厚さ38μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、ポリエチレンテレフタレートをPETという)フィルムをラミネートし、約600mJのUV照射により該接着剤層を硬化させた。この後、一軸延伸PETフィルム/接着剤層/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1を再剥離性基板である一軸延伸PETフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体1を得た。
【0043】
液晶フィルム積層体1中の光学的欠陥を調べるため、2枚の偏光板の吸収軸を直交方向に配置し、それらの間に14インチサイズの液晶フィルム積層体1を一軸延伸ポリエステルの延伸方向と一方の偏光板の吸収軸あるいは透過軸とが同方向となるように設置し、偏光板の下部から白色蛍光灯を光源とし、反対方向から目視で液晶フィルム積層体1中の異物、傷等の欠陥を観察した。
その結果、一軸延伸ポリエステルフィルムの複屈折性の影響を受けることなく、欠陥の検査を行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体1の検査に要した時間は11秒であった。
【0044】
比較例1
別途、実施例1と同様に作製した液晶物質層1の上(ポリイミドフィルムと反対側の面)に市販UV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を5μmの厚さの接着剤層を形成した。この上に再剥離性基板用フィルムとして市販の厚さ35μmの二軸延伸PETフィルム(商品名「S10」、東レ(株)製)をラミネートし、約600mJのUV照射により該接着剤層を硬化させた。この後、二軸延伸PETフィルム/接着剤層/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層を二軸延伸PETフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体2を得た。
【0045】
液晶フィルム積層体2中の光学的欠陥を調べるため、2枚の偏光板の吸収軸を直交方向に配置し、それらの間に14インチサイズの液晶フィルム積層体2を置き、偏光板の下部から白色蛍光灯を光源とし、反対方向から目視で液晶フィルム積層体2中の異物、傷等の欠陥を観察した。
その結果、二軸延伸PETフィルムの複屈折性の影響を受けるため、欠陥の検出が極めて困難であり、検査を行うことができなかった。
2枚の偏光板の吸収軸の交差角度を種々変化させても、また液晶物質層1の配向軸と偏光板の吸収軸との角度を変化させても、複屈折による干渉を除去できず、検査は困難であった。
【0046】
実施例2
実施例1において得られた液晶フィルム積層体1の露出した液晶物質層面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、一軸延伸PETフィルム/接着剤層/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体から一軸延伸PETフィルムを剥離した。一軸延伸PETフィルムと接着剤層との間の剥離力は、2.0N/mであった。
得られた、接着剤層/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体の接着剤層面に偏光板(厚さ約180μm;住友化学工業(株)製SQ−1852AP)を25μmの粘着剤層2を介してラミネートし、偏光板/粘着剤層2/接着剤層/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムが一体となった積層体からなる楕円偏光板を得た。製造工程中における液晶フィルム積層体1の光学的欠陥の検査性が良好であったのに加え、一軸延伸PETの剥離性が極めて良好であり、一軸延伸PETフィルムと接着剤層との界面での正常な剥離が可能であった。
【0047】
比較例2
比較例1において得られた液晶フィルム積層体2の露出した液晶物質層面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、二軸延伸PETフィルム/接着剤層/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体から二軸延伸PETフィルムを剥離した。二軸延伸PETフィルム「S10」と接着剤層間の剥離力は、3.9N/mであった。
製造工程中における液晶フィルム積層体2は、二軸延伸PETフィルムの複屈折性の影響により、光学的欠陥の検査性が悪く、また、二軸延伸PETフィルムの剥離においては、剥離性が悪く、二軸延伸PETフィルムと接着剤層との界面で剥離する正常な剥離部分の面積は、全体の約60%であった。
【0048】
比較例3
実施例2において、厚さ38μmの一軸延伸PETフィルムの代わりに、厚さ50μmのアクリル樹脂フィルム(商品名「アクリプレン」、三菱レイヨン(株)製)を用いた以外は、実施例2と同様に実施し、液晶フィルム積層体3を得た。アクリル樹脂フィルム「アクリプレン」と接着剤層間の剥離力は、31N/mであった。
製造工程中における液晶フィルム積層体3の光学的欠陥の検査性は良好であったが、再剥離性基板に用いた「アクリプレン」フィルムの剥離性が悪く、「アクリプレン」フィルムと接着剤層との界面で剥離する正常な剥離部分は得られなかった。
【0049】
比較例4
実施例2において、厚さ38μmの一軸延伸PETフィルムの代わりに、厚さ50μmのTPXフィルム(商品名オピュラン「X44B」、三井化学(株)製)を用いた以外は、実施例2と同様に実施し、液晶フィルム積層体4を得た。TPXフィルム「X44B」と接着剤層間の剥離力は、0.2N/mであった。
製造工程中における液晶フィルム積層体4の光学的欠陥の検査性は良好であったが、再剥離性基板としたTPXフィルムの接着剤への接着力が低く、製造工程での各種操作中にTPXフィルムと接着剤層との剥離が生じやすく安定な製造が困難であった。
【0050】
比較例5
実施例2において、厚さ38μmの一軸延伸PETフィルムの代わりに、厚さ50μmの二軸延伸PETフィルム(商品名「T60」、東レ(株)製)を用いた以外は、実施例2と同様に実施し、液晶フィルム積層体5を得た。二軸延伸PETフィルム「T60」と接着剤層間の剥離力は、4.5N/mであった。
製造工程中における液晶フィルム積層体5は、二軸延伸PETフィルムの複屈折性の影響により光学的欠陥の検査性が悪く、また、「T60」フィルムの剥離においては、剥離性が悪く、「T60」フィルム/接着剤層界面で剥離する正常な剥離部分の面積は、全体の約30%であった。
【0051】
比較例6
実施例2において、厚さ38μmの一軸延伸PETフィルムの代わりに、厚さ50μmのシリコーン表面コート二軸延伸PETフィルム(商品名「#52」、帝人(株)製)を用いた以外は、実施例2と同様に実施し、液晶フィルム積層体6を得た。前記「#52」フィルムと接着剤層間の剥離力は、0.77N/mであった。
製造工程中における液晶フィルム積層体6は、二軸延伸PETフィルムの複屈折性の影響により、光学的欠陥の検査性が悪かった。「#52」フィルムの剥離性は良好で、「#52」フィルム/接着剤層界面での正常な剥離が可能であった。
【0052】
比較例7
実施例2において、厚さ38μmの一軸延伸PETフィルムの代わりに、厚さ50μmのシリコーン表面コート二軸延伸PETフィルム(商品名「#51」、帝人(株)製)を用いた以外は、実施例2と同様に実施し、液晶フィルム積層体7を得た。前記「#51」フィルムと接着剤層間の剥離力は、2.0N/mであった。
製造工程中における液晶フィルム積層体7は、二軸延伸PETフィルムの複屈折性の影響により、光学的欠陥の検査性が悪かった。「#51」フィルムの剥離性は良好で、「#51」フィルム/接着剤層界面での正常な剥離が可能であった。
【0053】
実施例2〜比較例7の結果を表1にまとめた。
【0054】
【表1】
Figure 0004335484

Claims (4)

  1. 配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して一軸延伸ポリエステルフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、前記液晶物質層の光学的欠陥の検出を行い、ついで再剥離性基板を剥離することを特徴とする液晶フィルムの製造方法。
  2. 配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して一軸延伸ポリエステルフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、前記液晶物質層の光学的欠陥の検出を行い、ついで再剥離基板を剥離後、偏光板を貼着することを特徴とする楕円偏光板の製造方法。
  3. 前記一軸延伸ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステルで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶フィルムの製造方法。
  4. 前記一軸延伸ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステルで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の楕円偏光板の製造方法。
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