JP2004138697A - 液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 - Google Patents
液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004138697A JP2004138697A JP2002301458A JP2002301458A JP2004138697A JP 2004138697 A JP2004138697 A JP 2004138697A JP 2002301458 A JP2002301458 A JP 2002301458A JP 2002301458 A JP2002301458 A JP 2002301458A JP 2004138697 A JP2004138697 A JP 2004138697A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- liquid crystal
- film
- substrate
- crystal material
- alignment
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- G—PHYSICS
- G02—OPTICS
- G02F—OPTICAL DEVICES OR ARRANGEMENTS FOR THE CONTROL OF LIGHT BY MODIFICATION OF THE OPTICAL PROPERTIES OF THE MEDIA OF THE ELEMENTS INVOLVED THEREIN; NON-LINEAR OPTICS; FREQUENCY-CHANGING OF LIGHT; OPTICAL LOGIC ELEMENTS; OPTICAL ANALOGUE/DIGITAL CONVERTERS
- G02F1/00—Devices or arrangements for the control of the intensity, colour, phase, polarisation or direction of light arriving from an independent light source, e.g. switching, gating or modulating; Non-linear optics
- G02F1/01—Devices or arrangements for the control of the intensity, colour, phase, polarisation or direction of light arriving from an independent light source, e.g. switching, gating or modulating; Non-linear optics for the control of the intensity, phase, polarisation or colour
- G02F1/13—Devices or arrangements for the control of the intensity, colour, phase, polarisation or direction of light arriving from an independent light source, e.g. switching, gating or modulating; Non-linear optics for the control of the intensity, phase, polarisation or colour based on liquid crystals, e.g. single liquid crystal display cells
-
- G—PHYSICS
- G02—OPTICS
- G02B—OPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
- G02B5/00—Optical elements other than lenses
- G02B5/30—Polarising elements
- G02B5/3016—Polarising elements involving passive liquid crystal elements
Landscapes
- Physics & Mathematics (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
- Nonlinear Science (AREA)
- General Physics & Mathematics (AREA)
- Optics & Photonics (AREA)
- Polarising Elements (AREA)
Abstract
【課題】支持基板フィルムのない薄膜化した液晶フィルムの製造方法において、製造時に要求される機械的強度、良好な剥離性を満足し、かつ光学的な欠陥検査を容易にできる液晶フィルムの製造方法を提供する。
【解決方法】配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離して液晶フィルムを製造することにより前記課題を達成できる。
【選択図】 なし
【解決方法】配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離して液晶フィルムを製造することにより前記課題を達成できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種光学素子に有用な液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶化合物の配向層からなる薄膜(フィルム)、とりわけネマチック構造、あるいはねじれネマチック構造の配向を固定化した液晶物質からなるフィルムは、液晶表示素子用の色補償や視野角補償用の素子として、また旋光性光学素子等として優れた性能を有し、各種表示素子の高性能化、軽量化に寄与している。これらのフィルムの製造法としては、配向性基板上に形成された液晶物質からなる層を支持基板を兼ねる透光性基板上に転写する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。さらに、液晶表示用素子に求められる過酷な耐久性試験に耐えるための対策として、またより一層の薄型化、軽量化のために、支持基板フィルムを用いない液晶物質からなる光学素子の製造方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
かかる製造法によれば、配向性基板上に配向形成された液晶物質よりなる層を、接着剤を介して一旦再剥離性基板に転写させた後に、該再剥離性基板を剥離することにより、支持基板フィルムのない液晶物質層からなる光学素子の製造が可能になる。また、本発明者らは、製造時に要求される機械的強度、良好な剥離性を満足し、同時に光学的欠陥の検査を容易するため、再剥離性基板として一軸延伸ポリエステルフィルムを用いる製造方法について特許出願を行った(特願2001−313506号)。
【0004】
しかしながら、一軸延伸ポリエステルフィルムを用いた場合でも、液晶表示素子用補償板等の光学素子との貼合角度や観察に用いる偏光板との軸配置の点で、光学的欠陥の検査が可能な条件の限定があり、また斜め方向からの観察では残留複屈折の影響で欠陥が見えずらいなどの問題がある。一方で、特にアクティブ型液晶表示素子用の視野角補償板等の光学素子に対する欠陥の検査基準は非常に厳しくなってきており、数十μmの微細な欠陥は一軸延伸ポリエステルを使用した場合でも見えずらいという問題がある。
【0005】
検査性を改善するためには複屈折性ができるだけ小さい光学的により等方性のフィルムを使用することが望ましいが、支持基板フィルムのない液晶物質層の製造に必要な剥離性、強度、膜厚等を満足できる光学的等方性フィルムはほとんど無いのが実状であり、とりわけ剥離性のコントロールが難しいため、求められる適度な剥離性を実現することは極めて困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−57017号公報
【特許文献2】
特開平4−177216号公報
【特許文献3】
特開平8−278491号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決し、支持基板フィルムのない薄膜化した液晶フィルムの製造法において、光学的欠陥の検出を容易にし、かつ剥離時の剥離性を良好にすることを目的として、再剥離性基板について鋭意検討した結果、けん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることにより、製造時に要求される機械的強度、良好な剥離性を満足し、同時に光学的欠陥の検査が容易にできることを見出し、ついに本発明に到達した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離することを特徴とする液晶フィルムの製造方法、に関する。
【0009】
また、本発明の第2は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離後、偏光板を貼着することを特徴とする楕円偏光板の製造方法、に関する。
【0010】
また、本発明の第3は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離することを特徴とする液晶フィルムの製造方法、に関する。
【0011】
さらに、本発明の第4は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離後、偏光板を貼合することを特徴とする楕円偏光板の製造方法、に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる液晶の配向が固定化された液晶物質層は、配向状態にある液晶物質を固定化する手段を用いることにより固定化された層であり、固定化する手段としては、高分子液晶物質の場合は配向状態から急冷してガラス化状態にして固定する方法、反応性官能基を有する低分子または高分子液晶物質を配向させた後、前記官能基を反応せしめ(硬化・架橋等)固定化する方法などが挙げられる。
前記反応性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアナート基、酸無水物等が挙げられ、それぞれの基に適した方法で反応が行われる。
【0013】
液晶物質層に使用することのできる液晶物質は、液晶フィルムが目的とする用途や製造方法により、低分子液晶物質、高分子液晶物質を問わず広い範囲から選定することができるが、高分子液晶物質が好ましい。さらに液晶物質の分子形状は、棒状であるか円盤状であるかを問わない。例えばディスコティックネマチック液晶性を示すディスコティック液晶化合物も使用することができる。
固定化前の液晶物質層の液晶相としては、ネマチック相、ねじれネマチック相、コレステリック相、ハイブリッドネマチック相、ハイブリッドねじれネマチック相、ディスコティックネマチック相、スメクチック相等が挙げられる。
【0014】
前記高分子液晶物質としては、各種の主鎖型高分子液晶物質、側鎖型高分子液晶物質、またはこれらの混合物を用いることができる。主鎖型高分子液晶物質としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系、ポリエステルイミド系等の高分子液晶物質、またはこれらの混合物等が挙げられる。また、側鎖型高分子液晶物質としては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系、ポリエステル系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する物質に側鎖としてメソゲン基が結合した高分子液晶物質、またはこれらの混合物が挙げられる。これらのなかでも合成や配向の容易さなどから、主鎖型高分子液晶物質のポリエステル系が好ましい。
【0015】
低分子液晶物質としては、飽和ベンゼンカルボン酸類、不飽和ベンゼンカルボン酸類、ビフェニルカルボン酸類、芳香族オキシカルボン酸類、シッフ塩基型類、ビスアゾメチン化合物類、アゾ化合物類、アゾキシ化合物類、シクロヘキサンエステル化合物類、ステロール化合物類などの末端に前記反応性官能基を導入した液晶性を示す化合物や前記化合物類のなかで液晶性を示す化合物に架橋性化合物を添加した組成物などが挙げられる。また、ディスコティック液晶化合物としては、トリフェニレン系、トルクセン系等が挙げられる。
【0016】
さらに、液晶物質中に熱または光架橋反応等によって反応しうる官能基または部位を有している各種化合物を液晶性の発現を妨げない範囲で配合しても良い。架橋反応しうる官能基としては、前述の各種の反応性官能基などが挙げられる。
【0017】
液晶の配向が固定化された液晶物質層は、前記液晶物質や必要に応じて添加される各種の化合物を含む組成物を溶融状態で配向基板上に塗布する方法や、該組成物の溶液を配向基板上に塗布する方法等により形成し、配向基板上に塗布された塗膜は乾燥、熱処理(液晶の配向)を経て、必要により光照射および/または加熱処理(重合・架橋)等の前述の配向を固定化する手段を用いて配向を固定化することにより形成される。
【0018】
前記溶液の調製に用いる溶媒に関しては、本発明に使用される液晶物質や組成物を溶解でき、適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限は無く、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸メトキシプロピル、乳酸エチルなどのエステル系、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などやこれらの混合系が好ましく用いられる。また、配向基板上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤等を溶液に添加しても良い。さらに、着色を目的として液晶性の発現を妨げない範囲内で二色性染料や通常の染料や顔料等を添加することもできる。
【0019】
塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スピンコート法などを挙げることができる。塗布の後に、ヒーターや温風吹きつけなどの方法による溶媒除去(乾燥)工程を入れても良い。塗布された膜の乾燥状態における膜厚は、0.1μm〜50μm、好ましくは0.2μm〜20μmである。この範囲外では、得られる液晶物質層の光学性能が不足したり、液晶物質の配向が不十分になるなどして好ましくない。
【0020】
続いて、必要なら熱処理などにより液晶の配向を形成した後、配向の固定化を行う。熱処理は液晶相発現温度範囲に加熱することにより、液晶物質が本来有する自己配向能により液晶を配向させるものである。熱処理の条件としては、用いる液晶物質の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10〜300℃、好ましくは30〜250℃の範囲である。あまり低温では、液晶の配向が十分に進行しないおそれがあり、また高温では、液晶物質が分解したり配向基板に悪影響を与えるおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜60分、好ましくは10秒〜30分の範囲である。3秒よりも短い熱処理時間では、液晶の配向が十分に完成しないおそれがあり、また60分を超える熱処理時間では、生産性が極端に悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。液晶物質が熱処理などにより液晶の配向が完成したのち、そのままの状態で配向基板上の液晶物質層を、使用した液晶物質に適した手段を用いて固定化する。
【0021】
前記配向基板としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のフィルムが例示できる。
【0022】
これらのフィルムは製造方法によっては改めて配向能を発現させるための処理を行わなくとも本発明に使用される液晶物質に対して十分な配向能を示すものもあるが、配向能が不十分、または配向能を示さない等の場合には、これらのフィルムを適度な加熱下に延伸する、フィルム面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理を行う、フィルム上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる配向膜を設けてラビング処理を行う、酸化珪素等の斜方蒸着処理、あるいはこれらを適宜組み合わせるなどして配向能を発現させたフィルムを用いても良い。
また配向基板として、表面に規則的な微細溝を多数設けたアルミニウム、鉄、銅などの金属板や各種ガラス板等も使用することができる。
【0023】
配向基板上に形成された液晶物質層は、次に接着剤を介して再剥離性基板と接着させる。
この接着剤としては、液晶物質層および再剥離性基板に対して十分な接着力を有し、かつ後の工程で再剥離性基板を剥離することが可能であり、液晶物質層の光学的特性を損なわないものであれば、特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂系、メタクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ゴム系、ウレタン系、ポリビニルエーテル系およびこれらの混合物系や、熱硬化型および/または光硬化型、電子線硬化型等の各種反応性のものを挙げることができる。これらの接着剤は液晶物質層を保護する透明保護層の機能を兼ね備えたものも含まれる。なお、上記接着剤として粘着剤を用いることもできる。
【0024】
前記反応性のものの反応(硬化)条件は、接着剤を構成する成分、粘度や反応温度等の条件により変化するため、それぞれに適した条件を選択して行えばよい。例えば、光硬化型の場合は、好ましくは各種の公知の光開始剤を添加し、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザー、シンクロトロン放射光源などの光源からの光を照射し、反応を行わせればよい。単位面積(1平方センチメートル)当たりの照射量としては、積算照射量として通常1〜2000mJ、好ましくは10〜1000mJの範囲である。ただし、光開始剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、あるいは反応性の化合物自身に光源波長の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、あるいは吸収波長の異なる2種以上の光開始剤を混合して用いるなどの方法を採ることも出来る。電子線硬化型の場合の加速電圧は、通常10kV〜200kV、好ましくは50kV〜100kVである。
【0025】
接着剤の厚みは、前述のように接着剤を構成する成分、接着剤の強度や使用温度などにより異なるが、通常1〜50μm、好ましくは3〜30μmである。この範囲外では接着強度が不足したり、端部よりの滲み出しなどがあったりして好ましくない。
【0026】
また、これらの接着剤はその特性を損なわない範囲で、光学特性の制御あるいは基板の剥離性や浸食性を制御する目的として、各種微粒子等や表面改質剤を添加することもできる。
前記微粒子としては、接着剤を構成する化合物とは屈折率の異なる微粒子、透明性を損なわず帯電防止性能向上のための導電性微粒子、耐摩耗性向上のための微粒子等が例示でき、より具体的には、微細シリカ、微細アルミナ、ITO(Indium Tin Oxide)微粒子、銀微粒子、各種合成樹脂微粒子などが挙げられる。
【0027】
また、前記表面改質剤としては、接着剤との相溶性がよく接着剤の硬化性や硬化後の光学性能に影響を及ぼさない限り特に限定されず、イオン性、非イオン性の水溶性界面活性剤、油溶性界面活性剤、高分子界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン等の有機金属系界面活性剤、反応性界面活性剤等が使用できる。とりわけ、パーフルオロアルキル化合物、パーフルオロポリエーテル化合物などのフッ素系界面活性剤、あるいはシリコーン等の有機金属系界面活性剤は表面改質効果が大きいため、特に望ましい。表面改質剤の添加量は、接着剤に対し0.01〜10質量%の範囲が望ましく、より望ましくは0.05〜5質量%、さらに望ましくは0.1〜3質量%である。この範囲よりも添加量が少なすぎると添加効果が不十分となり、一方多すぎると接着強度が下がりすぎるなどの弊害を生じる恐れがある。なお、表面改質剤は、単独で用いても良いし、必要に応じて複数種類を併用しても良い。
さらに本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を配合しても良い。
【0028】
本発明の第1および第2においては、再剥離性基板としてけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用いる。また、本発明の第3および第4においては、第二の再剥離性基板としてけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用いる。
【0029】
けん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを第二の再剥離性基板として用いる本発明の第3および第4においては、第一の再剥離性基板として以下のフィルムを用いることができる。すなわち、ポリエチレン、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンサルファイド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、一軸延伸ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート、アモルファスポリオレフィン、トリアセチルセルロースあるいはエポキシ樹脂等のプラスチックフィルムが使用できる。
【0030】
これらのプラスチックフィルムには、適度な再剥離性を持たせるために、予めその表面にシリコーンをコートしておくことができ、あるいは有機薄膜又は無機薄膜を形成しておくことができる。また、同様な目的で、プラスチックフィルムの表面に化学処理を施すか、あるいはコロナ処理のような物理的処理を施しておくこともできる。
【0031】
また、再剥離性基板の剥離性を調整するために、滑剤や表面改質剤を含有させることもできる。前記滑剤としては、光学的欠陥の検査性や剥離性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、種類、添加量に特に制限は無い。滑剤の具体例としては、微細シリカ、微細アルミナ等が挙げられ、添加量の指標としては、再剥離性基板のヘイズ値が通常50%以下、好ましくは30%以下となるようにすればよい。添加量が少なすぎると添加効果が認められず、一方、多すぎる場合には、光学的欠陥の検査性が悪化し好ましくない。
【0032】
また、前記表面改質剤としては、接着剤との相溶性がよく接着剤の硬化性や硬化後の光学性能に影響を及ぼさない限り特に限定されず、イオン性、非イオン性の水溶性界面活性剤、油溶性界面活性剤、高分子界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン等の有機金属系界面活性剤、反応性界面活性剤等が使用できる。とりわけ、パーフルオロアルキル化合物、パーフルオロポリエーテル化合物などのフッ素系界面活性剤、あるいはシリコーン等の有機金属系界面活性剤は表面改質効果が大きいため、特に望ましい。ここで、表面改質剤の添加量は、接着剤に対し0.01〜10質量%の範囲が望ましく、より望ましくは0.05〜5質量%、さらに望ましくは0.1〜3質量%である。この範囲よりも添加量が少なすぎると添加効果が不十分となり、一方、多すぎると接着強度が下がりすぎるなどの弊害を生じる恐れがある。なお、表面改質剤は、単独で用いても良いし、必要に応じて複数種類を併用しても良い。
また、必要に応じてその他の公知の各種添加剤、例えば、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤などを含有させてもよい。
【0033】
再剥離性基板の剥離力に関しては、同一材料から製造される再剥離性基板であっても製造方法、表面状態や使用される接着剤との濡れ性などにより変化するため一概には決定できないが、接着剤との界面での剥離力(180゜剥離、剥離速度30cm/分、室温下測定)は、通常0.38〜12N/m、好ましくは0.38〜8.0N/mであることが望ましい。剥離力がこの値より低い場合には、配向基板上の液晶物質層を再剥離性基板と接着後、配向基板を剥離する際、剥離力が低すぎ再剥離性基板に浮きが見られたりして所望する界面での良好な剥離状態が得られず、再剥離性基板への液晶物質層の転写が不十分になる、また剥離力が高すぎる場合には、再剥離性基板を剥離する際、液晶物質層の破壊、あるいは、所望する層との界面で剥離ができないなどして好ましくない。
【0034】
また、再剥離性基板の厚みも剥離性に影響する場合があり、望ましくは16〜100μm、特に望ましくは25〜50μmがよい。厚みが厚すぎると剥離ポイントが安定せず剥離性が悪化する恐れがあり、一方薄すぎるとフィルムの機械強度が保てなくなるため、製造中に引き裂かれるなどのトラブルが生じる恐れがある。
【0035】
本発明で用いられるけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムについて述べる。けん化処理に用いられる水溶液に添加するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。このアルカリ水溶液のアルカリ濃度、浸漬温度、および浸漬時間によりけん化処理の程度をコントロールすることができる。より効率的にけん化処理を行う条件としては、通常、アルカリ濃度としては5〜30重量%程度、浸漬温度としては30〜70℃、浸漬時間としては30秒〜10分程度の条件で処理を行う。アルカリ水溶液に浸漬した後、水洗浄を行い、乾燥処理する。なお、水洗浄の前に1N程度の塩酸などで中和処理を行っても良い。
【0036】
けん化処理の程度は例えば、水に対する接触角で見積もることができ、接触角が40度以下、好ましくは30度以下になるまで処理するのが良い。けん化処理が足りない場合には、トリアセチルセルロースフィルムと接着剤との接着力が強くなり過ぎ、製造工程中にトリアセチルセルロースフィルムがうまく剥がせなくなる恐れがある。なお、ここで言う接触角は静止接触角を意味し、該接触角の測定法は接触角計(協和界面科学(株)製、自動接触計CA−Z型)を用いて20℃、65%RH下の条件下で体積4μlの水滴を針先に作り、これをフィルムに接触させ、フィルム表面に液滴を作成し、このとき生じる液滴とフィルム界面との角度を静止接触角として測定する方法を採用した。
【0037】
なお、けん化処理されたトリアセチルセルロースの場合にも、フィルム厚みが剥離性に影響する場合があり、前述の再剥離性基板と同様に、望ましくは16〜100μm、特に望ましくは25〜50μmがよい。厚みが厚すぎると剥離ポイントが安定せず剥離性が悪化する恐れがあり、一方、薄すぎるとフィルムの機械強度が保てなくなるため、製造中に引き裂かれるなどのトラブルが生じる恐れがある。
【0038】
本発明における液晶フィルムの製造方法の一つは、配向基板上に液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離することを特徴とするものである。
【0039】
液晶フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、一例として以下の方法で製造することができる。
まず、配向基板上に、液晶物質の塗膜を適切な方法で形成し、必要に応じて溶媒等を除去し、加熱等により液晶の配向を完成せしめ、用いた液晶物質に適した手段により液晶物質層の配向を固定化する。次いで、配向が固定化された液晶物質層上に、接着剤層を形成し、接着剤層を介して液晶物質層とけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる再剥離性基板を密着した後、必要により接着剤層を反応(硬化)させた後、配向基板を剥離する。
【0040】
このようにして、配向の固定化された液晶物質層をけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる再剥離性基板に転写させることができる。本発明においては、かくして再剥離性基板上に接着剤を介し接着された液晶物質層からなる積層物を得た後、該再剥離性基板を剥離することにより液晶フィルムを得るものである。かくして、液晶フィルムが製造される。
得られた液晶フィルムは、液晶物質層の表面保護のため、露出している液晶物質層に透明保護層を設けたり、表面保護フィルムを貼合しても良い。透明保護層としては、前述の接着剤から選定することもできる。
【0041】
本発明における液晶フィルムの製造方法のもう一つは、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板(けん化処理されたTACフィルム)に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離することを特徴とするものである。ここで、第一の再剥離性基板としては、前述の再剥離性基板の中から任意に選択できる。
【0042】
本発明の製造工程において、けん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に形成された液晶物質層は、そのままの状態で、容易に光学的欠陥の検出が可能である。また、けん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを剥離する際には、剥離不良による液晶物質層の破壊、あるいは他の界面での剥離は発生せず、良好な剥離状態を得ることができる。
【0043】
光学的欠陥の検出方法については、特に限定されないが、2枚の偏光板の吸収軸を直交方向に配置し、その間にけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムと液晶物質層とからなる積層フィルムを配置し、偏光板の下部から白色光を照射し、反対方向から目視で観察する方法や、ラインカメラを用いた自動化法等が挙げられる。前記液晶物質層のリターデーション(複屈折と液晶物質層の厚みとの積)によっては偏光板の吸収軸は必ずしも直交に配置せず、光学的欠陥が検知しやすくなるように任意の角度に設定することもできる。
【0044】
得られた液晶フィルムは、液晶物質層の表面保護のため、露出している液晶物質層に透明保護層を設けたり、表面保護フィルムを貼合しても良い。透明保護層としては、前述の接着剤から選定することもできる。
【0045】
本発明においては、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離基板を剥離して得られる液晶フィルムに、偏光板を貼着することにより楕円偏光板が製造される。
また本発明においては、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板(けん化処理されたTACフィルム)に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離して得られる液晶フィルムに、偏光板を貼着することにより楕円偏光板が製造される。
【0046】
液晶フィルムの偏光板を貼着する面は特に限定されず、配向基板剥離面側でも良く、第一の再剥離性基板の剥離面側でも良い。偏光板の貼着面は用途、製造プロセス等により、適宜選択することができる。
本発明の楕円偏光板は、偏光板および液晶フィルムの他に、反射防止層、防眩処理層、ハードコート層、光拡散層を1層または複数層含んでいても良い。偏光板と貼合あるいは接着に使用される接着剤等は光学グレードであれば特に制限はなく、例えば前記の接着剤から適するものを用いることができる。
【0047】
本発明の楕円偏光板に使用される偏光板は、本発明の目的が達成し得るもので有れば特に限定されず、液晶表示装置に通常用いられる偏光板を適宜使用することができるが、好ましくは近年開発上市された薄膜型のものが望ましい。具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)や部分アセタール化PVAのようなPVA系偏光フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物等からなる親水性高分子フィルムにヨウ素および/または2色性色素を吸着して延伸した偏光フィルム、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン配向フィルムなどからなる偏光フィルムなどを使用することができる。また、反射型の偏光フィルムも使用することができる。
【0048】
前記偏光板は、偏光フィルム単独で使用しても良いし、強度向上、耐湿性向上、耐熱性の向上等の目的で偏光フィルムの片面または両面に透明な保護層等を設けたものであっても良い。透明な保護層としては、ポリエステルやトリアセチルセルロース等の透明プラスチックフィルムを直接または接着剤層を介して積層したもの、樹脂の塗布層、アクリル系やエポキシ系等の光硬化型樹脂層などが挙げられる。これら透明な保護層を偏光フィルムの両面に被覆する場合、両面に同じ透明な保護層を設けても良いし、また異なる透明な保護層を設けても良い。
【0049】
また、上記製造工程においてけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを剥離する前に、あるいは剥離後に、他の光学異方フィルムと貼合あるいは接着し、必要によりけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを剥離することにより、液晶フィルムを有する各種の光学素子を得ることができる。
この光学素子においても、光学異方性フィルムとの貼合前に、けん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に形成された液晶物質層は、そのままの積層状態で、容易に光学的欠陥の検出が可能である。
さらに、必要により上記各種のフィルムや層の複数枚を積層してもよく、同一面同士、例えば液晶物質層同士を必要により粘・接着剤を介して貼合することもできる。
【0050】
本発明の液晶フィルムを有する各種光学素子のなかで、例えばネマチック配向、ねじれネマチック配向を固定化した液晶フィルムは位相差フィルムとして機能し、STN型、TN型、OCB型、HAN型等の透過または反射型液晶表示装置の補償板として使用できる。コレステリック配向やスメクチック配向を固定化した液晶フィルムは、輝度向上用の偏光反射フィルム、反射型のカラーフィルター、選択反射能に基因する視角による反射光の色変化を生かした各種偽造防止素子や装飾フィルムなどに利用できる。またネマチックハイブリッド配向を固定化したフィルムは、正面から見たときのリターデーションを利用して、位相差フィルムや波長板として利用でき、またリターデーション値の向き(フィルム厚さ方向の分子軸の傾き)による非対称性を生かしてTN型液晶表示装置の視野角改善フィルムなどに利用できる。また、1/4波長板機能を有する液晶フィルムは偏光板と組み合わせ、円偏光板や反射型の液晶表示装置やEL表示装置の反射防止フィルター等として用いることができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明は、通常の再剥離性基板を用いた場合に極めて困難である、液晶物質層の異物、輝点、色ムラ等の光学的欠陥の容易な検出と再剥離性基板の良好な剥離性の両立とを、再剥離性基板としてけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用することにより極めて容易に達成することができる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれらに制限されるものではない。
【0053】
[調製例]
テレフタル酸50mmol、2,6−ナフタレンジカルボン酸50mmol、メチルヒドロキノンジアセテート40mmol、カテコールジアセテート60mmolおよびN−メチルイミダゾール60mgを用いて窒素雰囲気下、270℃で12時間重縮合を行った。次に得られた反応生成物をテトラクロロエタンに溶解した後、メタノールで再沈殿を行って精製し、液晶性ポリエステル14.6gを得た。この液晶性ポリエステル(ポリマー1)の対数粘度(フェノール/テトラクロロエタン(6/4 質量比)混合溶媒:30℃)は0.16dl/g、液晶相としてネマチック相を持ち、等方相−液晶相転移温度は250℃以上、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度は112℃であった。
【0054】
ビフェニルジカルボニルクロリド90mmol、テレフタロイルクロリド10mmolおよびS−2−メチル−1,4−ブタンジオール105mmolをジクロロメタン中で室温にて20時間反応させ、反応液をメタノール中に投入し再沈殿させることにより液晶性ポリエステル12.3gを得た。この液晶性ポリエステル(ポリマー2)の対数粘度は0.11dl/gであった。
【0055】
19.82gのポリマー1と0.18gのポリマー2を80gのN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ溶液を調整した。この溶液を、レーヨン布にてラビング処理したポリイミドフィルム(商品名「カプトン」、デュポン社製)上にスピナーにて塗布し、溶媒を乾燥除去した後、210℃で20分熱処理することでツイステッドネマチック配向構造を形成させた。熱処理後、室温下まで冷却してツイステッドネマチック配向構造を固定化し、ポリイミドフィルム上に実膜厚3.0μmの均一に配向した液晶物質層を得た(液晶物質層1)。実膜厚は触針式膜厚計を用いて測定した。
【0056】
[実施例1]
調製例で得られた液晶物質層1の上(ポリイミドフィルムと反対側の面)に市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を5μmの厚さに塗布し(接着剤層1)、この上に再剥離性基板として、厚さ40μmのけん化処理したトリアセチルセルロースフィルム(以下、けん化TACフィルムと呼ぶ。)をラミネートし、約600mJのUV照射により該接着剤層1を硬化させた。ここで、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)としては、市販のフィルム(商品名「フジタック」、富士写真フィルム(株)製)を用い、けん化後の水の接触角は20度であった。この後、けん化TACフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1を再剥離性基板であるけん化TACフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体1を得た。
【0057】
液晶フィルム積層体1中の光学的欠陥を調べるため、2枚の偏光板の吸収軸を直交方向に配置し、それらの間に14インチサイズの液晶フィルム積層体1を設置し、偏光板の下部から白色蛍光灯を光源とし、反対方向から目視で液晶フィルム積層体1中の異物、傷等の欠陥を観察した。
その結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体1の検査に要した時間は11秒であった。
【0058】
得られた液晶フィルム積層体1の露出した液晶物質層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、けん化TACフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体からけん化TACフィルムを剥離した。けん化TACフィルムと接着剤層1との間の剥離力は、2.4N/mであった。
【0059】
さらに、得られた接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体の接着剤層1の面に偏光板(厚み約180μm;住友化学工業(株)製「SQ−1852AP」)を25μmの粘着剤層2を介してラミネートし、偏光板/粘着剤層2/接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムが一体となった積層体からなる楕円偏光板を得た。
製造工程中における液晶フィルム積層体1の光学的欠陥の検査性が良好であったのに加え、けん化TACフィルムの剥離性が極めて良好であり、けん化TACフィルムと接着剤層1との界面での正常な剥離が可能であった。
【0060】
[比較例1]
実施例1においてけん化TACの代わりに未けん化のTACフィルム(商品名「フジタック」、富士写真フィルム(株)製、厚み40μm)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、未けん化TACフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1を未けん化TACフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体2を得た。
実施例1と同様の方法により、液晶フィルム積層体2の光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体2の検査に要した時間は10秒であった。
【0061】
得られた液晶フィルム積層体2の露出した液晶物質層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、未けん化TACフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体から未けん化TACフィルムを剥離しようとしたが、未けん化TACフィルムと接着剤層1間の接着力が強すぎ、正常な界面での剥離は全くできなかった。
製造工程中における液晶フィルム積層体2は、検査性は良かったが、未けん化TACフィルムの剥離においては、剥離性が非常に悪く、未けん化TACフィルムと接着剤層1との界面で剥離する正常な剥離部分は得られなかった。
【0062】
[比較例2]
実施例1において、けん化TACの代わりに厚み50μmのポリカーボネート(鐘淵化学工業(株)製)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、ポリカーボネートフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1をポリカーボネートフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体3を得た。
実施例1と同様の方法により、液晶フィルム積層体3の光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体3の検査に要した時間は12秒であった。
【0063】
得られた液晶フィルム積層体3の露出した液晶物質層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、ポリカーボネートフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体からポリカーボネートフィルムを剥離した。ポリカーボネートフィルムと接着剤層1間の剥離力は26N/mであり非常に重く、剥離界面には白濁が生じていた。
製造工程中における液晶フィルム積層体3は、検査性は良かったが、ポリカーボネートフィルムの剥離においては、剥離性が悪く、ポリカーボネートフィルムと接着剤層1との界面で剥離する正常な剥離部分の面積は、全体の約10%であった。
【0064】
[比較例3]
実施例1において、けん化TACの代わりに厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、ポリエチレンテレフタレートをPETという。)フィルム(商品名:「T60」、東レ(株)製)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、T60PETフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1をT60PETフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体4を得た。
実施例1と同様の方法により、液晶フィルム積層体4の光学的欠陥の観察を行った結果、T60PETフィルムの複屈折性の影響を受けるため、欠陥の検出が極めて困難であり、検査を行うことができなかった。
2枚の偏光板の吸収軸の交差角度を種々変化させても、また液晶物質層1の配向軸と偏光板の吸収軸との角度を変化させても、複屈折による干渉を除去できず、検査は困難であった。
【0065】
[実施例2]
実施例1において、けん化TACフィルムの代わりに厚さ38μmのシリコーンコート二軸延伸PETフィルム(商品名「#52」、帝人(株)製)(以下、#52PETフィルムと呼ぶ。)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、#52PETフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1を#52PETフィルム上に転写した。
さらに得られた積層体の露出した液晶物質層1の面にUV硬化型接着剤(UV−3400)を5μmの厚さに塗布し(接着剤層2)、この上に第二の再剥離性基板として、厚さ40μmのけん化TACフィルム(商品名「フジタック」、けん化後の水の接触角は15度)をラミネートし、約600mJのUV照射により該接着剤層2を硬化させ、#52PETフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/けん化TACフィルムからなる積層体を得た。この後、この積層体から#52PETフィルムを剥離することにより接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/けん化TACフィルムからなる液晶フィルム積層体5を得た。
実施例1と同様の方法で光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体5の検査に要した時間は9秒であった。
【0066】
得られた液晶フィルム積層体5の接着剤層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、けん化TACフィルム/接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体からけん化TACフィルムを剥離した。けん化TACフィルムと接着剤層2との間の剥離力は、2.5N/mであった。
【0067】
さらに、得られた接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体の接着剤層2の面に偏光板(厚み約180μm;住友化学工業(株)製「SQ−1852AP」)を25μmの粘着剤層2を介してラミネートし、偏光板/粘着剤層2/接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムが一体となった積層体からなる楕円偏光板を得た。製造工程中における液晶フィルム積層体1の光学的欠陥の検査性が良好であったのに加え、けん化TACフィルムの剥離性が極めて良好であり、けん化TACフィルムと接着剤層2との界面での正常な剥離が可能であった。
【0068】
[比較例4]
実施例2において、第二の再剥離性基板としてけん化TACフィルムの代わりに未けん化TACフィルム(「フジタック」、厚み40μm)を使用した以外は実施例2と同様に実施し、接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/未けん化TACフィルムからなる液晶フィルム積層体6を得た。
実施例1と同様の方法により光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体6の検査に要した時間は11秒であった。
【0069】
得られた液晶フィルム積層体6のむき出しの接着剤層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、未けん化TACフィルム/接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体から未けん化TACフィルムを剥離しようとしたが、接着力が強すぎて全く剥離できなかった。
製造工程中における液晶フィルム積層体6は、検査性は良かったが、未けん化TACフィルムの剥離においては、剥離性が非常に悪く、未けん化TACフィルムと接着剤層2との界面で正常な剥離部分は得られなかった。
【0070】
[比較例5]
実施例2において、第二の再剥離性基板としてけん化TACの代わりに、厚さ50μmのアクリル樹脂フィルム(商品名「アクリプレン」、三菱レイヨン(株)製)を使用した以外は実施例2と同様に実施し、接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/アクリプレンからなる液晶フィルム積層体7を得た。
実施例1と同様の方法により光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体7の検査に要した時間は12秒であった。
【0071】
得られた液晶フィルム積層体7のむき出しの接着剤層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、アクリプレン/接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体からアクリプレンを剥離しようとしたが、接着力が強すぎて全く剥離できなかった。
製造工程中における液晶フィルム積層体7は、検査性は良かったが、アクリプレンの剥離においては、剥離性が非常に悪く、アクリプレンと接着剤層2との界面で正常な剥離部分は得られなかった。
【0072】
[比較例6]
実施例2において、第二の再剥離性基板としてけん化TACの代わりに、厚さ50μmのPETフィルム(商品名「S10」、東レ(株)製)を使用した以外は実施例2と同様に実施し、接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/S10PETフィルムからなる液晶フィルム積層体8を得た。
実施例1と同様の方法により、液晶フィルム積層体8の光学的欠陥の観察を行った結果、S10PETフィルムの複屈折性の影響を受けるため、欠陥の検出が極めて困難であり、検査を行うことができなかった。
2枚の偏光板の吸収軸の交差角度を種々変化させても、また液晶物質層1の配向軸と偏光板の吸収軸との角度を変化させても、複屈折による干渉を除去できず、検査は困難であった。
【0073】
実施例1、2及び比較例1〜6の結果を表1にまとめた。
【0074】
【表1】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種光学素子に有用な液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶化合物の配向層からなる薄膜(フィルム)、とりわけネマチック構造、あるいはねじれネマチック構造の配向を固定化した液晶物質からなるフィルムは、液晶表示素子用の色補償や視野角補償用の素子として、また旋光性光学素子等として優れた性能を有し、各種表示素子の高性能化、軽量化に寄与している。これらのフィルムの製造法としては、配向性基板上に形成された液晶物質からなる層を支持基板を兼ねる透光性基板上に転写する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。さらに、液晶表示用素子に求められる過酷な耐久性試験に耐えるための対策として、またより一層の薄型化、軽量化のために、支持基板フィルムを用いない液晶物質からなる光学素子の製造方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
かかる製造法によれば、配向性基板上に配向形成された液晶物質よりなる層を、接着剤を介して一旦再剥離性基板に転写させた後に、該再剥離性基板を剥離することにより、支持基板フィルムのない液晶物質層からなる光学素子の製造が可能になる。また、本発明者らは、製造時に要求される機械的強度、良好な剥離性を満足し、同時に光学的欠陥の検査を容易するため、再剥離性基板として一軸延伸ポリエステルフィルムを用いる製造方法について特許出願を行った(特願2001−313506号)。
【0004】
しかしながら、一軸延伸ポリエステルフィルムを用いた場合でも、液晶表示素子用補償板等の光学素子との貼合角度や観察に用いる偏光板との軸配置の点で、光学的欠陥の検査が可能な条件の限定があり、また斜め方向からの観察では残留複屈折の影響で欠陥が見えずらいなどの問題がある。一方で、特にアクティブ型液晶表示素子用の視野角補償板等の光学素子に対する欠陥の検査基準は非常に厳しくなってきており、数十μmの微細な欠陥は一軸延伸ポリエステルを使用した場合でも見えずらいという問題がある。
【0005】
検査性を改善するためには複屈折性ができるだけ小さい光学的により等方性のフィルムを使用することが望ましいが、支持基板フィルムのない液晶物質層の製造に必要な剥離性、強度、膜厚等を満足できる光学的等方性フィルムはほとんど無いのが実状であり、とりわけ剥離性のコントロールが難しいため、求められる適度な剥離性を実現することは極めて困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−57017号公報
【特許文献2】
特開平4−177216号公報
【特許文献3】
特開平8−278491号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決し、支持基板フィルムのない薄膜化した液晶フィルムの製造法において、光学的欠陥の検出を容易にし、かつ剥離時の剥離性を良好にすることを目的として、再剥離性基板について鋭意検討した結果、けん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることにより、製造時に要求される機械的強度、良好な剥離性を満足し、同時に光学的欠陥の検査が容易にできることを見出し、ついに本発明に到達した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離することを特徴とする液晶フィルムの製造方法、に関する。
【0009】
また、本発明の第2は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離後、偏光板を貼着することを特徴とする楕円偏光板の製造方法、に関する。
【0010】
また、本発明の第3は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離することを特徴とする液晶フィルムの製造方法、に関する。
【0011】
さらに、本発明の第4は、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離後、偏光板を貼合することを特徴とする楕円偏光板の製造方法、に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる液晶の配向が固定化された液晶物質層は、配向状態にある液晶物質を固定化する手段を用いることにより固定化された層であり、固定化する手段としては、高分子液晶物質の場合は配向状態から急冷してガラス化状態にして固定する方法、反応性官能基を有する低分子または高分子液晶物質を配向させた後、前記官能基を反応せしめ(硬化・架橋等)固定化する方法などが挙げられる。
前記反応性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアナート基、酸無水物等が挙げられ、それぞれの基に適した方法で反応が行われる。
【0013】
液晶物質層に使用することのできる液晶物質は、液晶フィルムが目的とする用途や製造方法により、低分子液晶物質、高分子液晶物質を問わず広い範囲から選定することができるが、高分子液晶物質が好ましい。さらに液晶物質の分子形状は、棒状であるか円盤状であるかを問わない。例えばディスコティックネマチック液晶性を示すディスコティック液晶化合物も使用することができる。
固定化前の液晶物質層の液晶相としては、ネマチック相、ねじれネマチック相、コレステリック相、ハイブリッドネマチック相、ハイブリッドねじれネマチック相、ディスコティックネマチック相、スメクチック相等が挙げられる。
【0014】
前記高分子液晶物質としては、各種の主鎖型高分子液晶物質、側鎖型高分子液晶物質、またはこれらの混合物を用いることができる。主鎖型高分子液晶物質としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系、ポリエステルイミド系等の高分子液晶物質、またはこれらの混合物等が挙げられる。また、側鎖型高分子液晶物質としては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系、ポリエステル系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する物質に側鎖としてメソゲン基が結合した高分子液晶物質、またはこれらの混合物が挙げられる。これらのなかでも合成や配向の容易さなどから、主鎖型高分子液晶物質のポリエステル系が好ましい。
【0015】
低分子液晶物質としては、飽和ベンゼンカルボン酸類、不飽和ベンゼンカルボン酸類、ビフェニルカルボン酸類、芳香族オキシカルボン酸類、シッフ塩基型類、ビスアゾメチン化合物類、アゾ化合物類、アゾキシ化合物類、シクロヘキサンエステル化合物類、ステロール化合物類などの末端に前記反応性官能基を導入した液晶性を示す化合物や前記化合物類のなかで液晶性を示す化合物に架橋性化合物を添加した組成物などが挙げられる。また、ディスコティック液晶化合物としては、トリフェニレン系、トルクセン系等が挙げられる。
【0016】
さらに、液晶物質中に熱または光架橋反応等によって反応しうる官能基または部位を有している各種化合物を液晶性の発現を妨げない範囲で配合しても良い。架橋反応しうる官能基としては、前述の各種の反応性官能基などが挙げられる。
【0017】
液晶の配向が固定化された液晶物質層は、前記液晶物質や必要に応じて添加される各種の化合物を含む組成物を溶融状態で配向基板上に塗布する方法や、該組成物の溶液を配向基板上に塗布する方法等により形成し、配向基板上に塗布された塗膜は乾燥、熱処理(液晶の配向)を経て、必要により光照射および/または加熱処理(重合・架橋)等の前述の配向を固定化する手段を用いて配向を固定化することにより形成される。
【0018】
前記溶液の調製に用いる溶媒に関しては、本発明に使用される液晶物質や組成物を溶解でき、適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限は無く、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸メトキシプロピル、乳酸エチルなどのエステル系、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などやこれらの混合系が好ましく用いられる。また、配向基板上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤等を溶液に添加しても良い。さらに、着色を目的として液晶性の発現を妨げない範囲内で二色性染料や通常の染料や顔料等を添加することもできる。
【0019】
塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スピンコート法などを挙げることができる。塗布の後に、ヒーターや温風吹きつけなどの方法による溶媒除去(乾燥)工程を入れても良い。塗布された膜の乾燥状態における膜厚は、0.1μm〜50μm、好ましくは0.2μm〜20μmである。この範囲外では、得られる液晶物質層の光学性能が不足したり、液晶物質の配向が不十分になるなどして好ましくない。
【0020】
続いて、必要なら熱処理などにより液晶の配向を形成した後、配向の固定化を行う。熱処理は液晶相発現温度範囲に加熱することにより、液晶物質が本来有する自己配向能により液晶を配向させるものである。熱処理の条件としては、用いる液晶物質の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10〜300℃、好ましくは30〜250℃の範囲である。あまり低温では、液晶の配向が十分に進行しないおそれがあり、また高温では、液晶物質が分解したり配向基板に悪影響を与えるおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜60分、好ましくは10秒〜30分の範囲である。3秒よりも短い熱処理時間では、液晶の配向が十分に完成しないおそれがあり、また60分を超える熱処理時間では、生産性が極端に悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。液晶物質が熱処理などにより液晶の配向が完成したのち、そのままの状態で配向基板上の液晶物質層を、使用した液晶物質に適した手段を用いて固定化する。
【0021】
前記配向基板としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のフィルムが例示できる。
【0022】
これらのフィルムは製造方法によっては改めて配向能を発現させるための処理を行わなくとも本発明に使用される液晶物質に対して十分な配向能を示すものもあるが、配向能が不十分、または配向能を示さない等の場合には、これらのフィルムを適度な加熱下に延伸する、フィルム面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理を行う、フィルム上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる配向膜を設けてラビング処理を行う、酸化珪素等の斜方蒸着処理、あるいはこれらを適宜組み合わせるなどして配向能を発現させたフィルムを用いても良い。
また配向基板として、表面に規則的な微細溝を多数設けたアルミニウム、鉄、銅などの金属板や各種ガラス板等も使用することができる。
【0023】
配向基板上に形成された液晶物質層は、次に接着剤を介して再剥離性基板と接着させる。
この接着剤としては、液晶物質層および再剥離性基板に対して十分な接着力を有し、かつ後の工程で再剥離性基板を剥離することが可能であり、液晶物質層の光学的特性を損なわないものであれば、特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂系、メタクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ゴム系、ウレタン系、ポリビニルエーテル系およびこれらの混合物系や、熱硬化型および/または光硬化型、電子線硬化型等の各種反応性のものを挙げることができる。これらの接着剤は液晶物質層を保護する透明保護層の機能を兼ね備えたものも含まれる。なお、上記接着剤として粘着剤を用いることもできる。
【0024】
前記反応性のものの反応(硬化)条件は、接着剤を構成する成分、粘度や反応温度等の条件により変化するため、それぞれに適した条件を選択して行えばよい。例えば、光硬化型の場合は、好ましくは各種の公知の光開始剤を添加し、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザー、シンクロトロン放射光源などの光源からの光を照射し、反応を行わせればよい。単位面積(1平方センチメートル)当たりの照射量としては、積算照射量として通常1〜2000mJ、好ましくは10〜1000mJの範囲である。ただし、光開始剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、あるいは反応性の化合物自身に光源波長の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、あるいは吸収波長の異なる2種以上の光開始剤を混合して用いるなどの方法を採ることも出来る。電子線硬化型の場合の加速電圧は、通常10kV〜200kV、好ましくは50kV〜100kVである。
【0025】
接着剤の厚みは、前述のように接着剤を構成する成分、接着剤の強度や使用温度などにより異なるが、通常1〜50μm、好ましくは3〜30μmである。この範囲外では接着強度が不足したり、端部よりの滲み出しなどがあったりして好ましくない。
【0026】
また、これらの接着剤はその特性を損なわない範囲で、光学特性の制御あるいは基板の剥離性や浸食性を制御する目的として、各種微粒子等や表面改質剤を添加することもできる。
前記微粒子としては、接着剤を構成する化合物とは屈折率の異なる微粒子、透明性を損なわず帯電防止性能向上のための導電性微粒子、耐摩耗性向上のための微粒子等が例示でき、より具体的には、微細シリカ、微細アルミナ、ITO(Indium Tin Oxide)微粒子、銀微粒子、各種合成樹脂微粒子などが挙げられる。
【0027】
また、前記表面改質剤としては、接着剤との相溶性がよく接着剤の硬化性や硬化後の光学性能に影響を及ぼさない限り特に限定されず、イオン性、非イオン性の水溶性界面活性剤、油溶性界面活性剤、高分子界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン等の有機金属系界面活性剤、反応性界面活性剤等が使用できる。とりわけ、パーフルオロアルキル化合物、パーフルオロポリエーテル化合物などのフッ素系界面活性剤、あるいはシリコーン等の有機金属系界面活性剤は表面改質効果が大きいため、特に望ましい。表面改質剤の添加量は、接着剤に対し0.01〜10質量%の範囲が望ましく、より望ましくは0.05〜5質量%、さらに望ましくは0.1〜3質量%である。この範囲よりも添加量が少なすぎると添加効果が不十分となり、一方多すぎると接着強度が下がりすぎるなどの弊害を生じる恐れがある。なお、表面改質剤は、単独で用いても良いし、必要に応じて複数種類を併用しても良い。
さらに本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を配合しても良い。
【0028】
本発明の第1および第2においては、再剥離性基板としてけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用いる。また、本発明の第3および第4においては、第二の再剥離性基板としてけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用いる。
【0029】
けん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを第二の再剥離性基板として用いる本発明の第3および第4においては、第一の再剥離性基板として以下のフィルムを用いることができる。すなわち、ポリエチレン、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンサルファイド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、一軸延伸ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート、アモルファスポリオレフィン、トリアセチルセルロースあるいはエポキシ樹脂等のプラスチックフィルムが使用できる。
【0030】
これらのプラスチックフィルムには、適度な再剥離性を持たせるために、予めその表面にシリコーンをコートしておくことができ、あるいは有機薄膜又は無機薄膜を形成しておくことができる。また、同様な目的で、プラスチックフィルムの表面に化学処理を施すか、あるいはコロナ処理のような物理的処理を施しておくこともできる。
【0031】
また、再剥離性基板の剥離性を調整するために、滑剤や表面改質剤を含有させることもできる。前記滑剤としては、光学的欠陥の検査性や剥離性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、種類、添加量に特に制限は無い。滑剤の具体例としては、微細シリカ、微細アルミナ等が挙げられ、添加量の指標としては、再剥離性基板のヘイズ値が通常50%以下、好ましくは30%以下となるようにすればよい。添加量が少なすぎると添加効果が認められず、一方、多すぎる場合には、光学的欠陥の検査性が悪化し好ましくない。
【0032】
また、前記表面改質剤としては、接着剤との相溶性がよく接着剤の硬化性や硬化後の光学性能に影響を及ぼさない限り特に限定されず、イオン性、非イオン性の水溶性界面活性剤、油溶性界面活性剤、高分子界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン等の有機金属系界面活性剤、反応性界面活性剤等が使用できる。とりわけ、パーフルオロアルキル化合物、パーフルオロポリエーテル化合物などのフッ素系界面活性剤、あるいはシリコーン等の有機金属系界面活性剤は表面改質効果が大きいため、特に望ましい。ここで、表面改質剤の添加量は、接着剤に対し0.01〜10質量%の範囲が望ましく、より望ましくは0.05〜5質量%、さらに望ましくは0.1〜3質量%である。この範囲よりも添加量が少なすぎると添加効果が不十分となり、一方、多すぎると接着強度が下がりすぎるなどの弊害を生じる恐れがある。なお、表面改質剤は、単独で用いても良いし、必要に応じて複数種類を併用しても良い。
また、必要に応じてその他の公知の各種添加剤、例えば、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤などを含有させてもよい。
【0033】
再剥離性基板の剥離力に関しては、同一材料から製造される再剥離性基板であっても製造方法、表面状態や使用される接着剤との濡れ性などにより変化するため一概には決定できないが、接着剤との界面での剥離力(180゜剥離、剥離速度30cm/分、室温下測定)は、通常0.38〜12N/m、好ましくは0.38〜8.0N/mであることが望ましい。剥離力がこの値より低い場合には、配向基板上の液晶物質層を再剥離性基板と接着後、配向基板を剥離する際、剥離力が低すぎ再剥離性基板に浮きが見られたりして所望する界面での良好な剥離状態が得られず、再剥離性基板への液晶物質層の転写が不十分になる、また剥離力が高すぎる場合には、再剥離性基板を剥離する際、液晶物質層の破壊、あるいは、所望する層との界面で剥離ができないなどして好ましくない。
【0034】
また、再剥離性基板の厚みも剥離性に影響する場合があり、望ましくは16〜100μm、特に望ましくは25〜50μmがよい。厚みが厚すぎると剥離ポイントが安定せず剥離性が悪化する恐れがあり、一方薄すぎるとフィルムの機械強度が保てなくなるため、製造中に引き裂かれるなどのトラブルが生じる恐れがある。
【0035】
本発明で用いられるけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムについて述べる。けん化処理に用いられる水溶液に添加するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。このアルカリ水溶液のアルカリ濃度、浸漬温度、および浸漬時間によりけん化処理の程度をコントロールすることができる。より効率的にけん化処理を行う条件としては、通常、アルカリ濃度としては5〜30重量%程度、浸漬温度としては30〜70℃、浸漬時間としては30秒〜10分程度の条件で処理を行う。アルカリ水溶液に浸漬した後、水洗浄を行い、乾燥処理する。なお、水洗浄の前に1N程度の塩酸などで中和処理を行っても良い。
【0036】
けん化処理の程度は例えば、水に対する接触角で見積もることができ、接触角が40度以下、好ましくは30度以下になるまで処理するのが良い。けん化処理が足りない場合には、トリアセチルセルロースフィルムと接着剤との接着力が強くなり過ぎ、製造工程中にトリアセチルセルロースフィルムがうまく剥がせなくなる恐れがある。なお、ここで言う接触角は静止接触角を意味し、該接触角の測定法は接触角計(協和界面科学(株)製、自動接触計CA−Z型)を用いて20℃、65%RH下の条件下で体積4μlの水滴を針先に作り、これをフィルムに接触させ、フィルム表面に液滴を作成し、このとき生じる液滴とフィルム界面との角度を静止接触角として測定する方法を採用した。
【0037】
なお、けん化処理されたトリアセチルセルロースの場合にも、フィルム厚みが剥離性に影響する場合があり、前述の再剥離性基板と同様に、望ましくは16〜100μm、特に望ましくは25〜50μmがよい。厚みが厚すぎると剥離ポイントが安定せず剥離性が悪化する恐れがあり、一方、薄すぎるとフィルムの機械強度が保てなくなるため、製造中に引き裂かれるなどのトラブルが生じる恐れがある。
【0038】
本発明における液晶フィルムの製造方法の一つは、配向基板上に液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離することを特徴とするものである。
【0039】
液晶フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、一例として以下の方法で製造することができる。
まず、配向基板上に、液晶物質の塗膜を適切な方法で形成し、必要に応じて溶媒等を除去し、加熱等により液晶の配向を完成せしめ、用いた液晶物質に適した手段により液晶物質層の配向を固定化する。次いで、配向が固定化された液晶物質層上に、接着剤層を形成し、接着剤層を介して液晶物質層とけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる再剥離性基板を密着した後、必要により接着剤層を反応(硬化)させた後、配向基板を剥離する。
【0040】
このようにして、配向の固定化された液晶物質層をけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる再剥離性基板に転写させることができる。本発明においては、かくして再剥離性基板上に接着剤を介し接着された液晶物質層からなる積層物を得た後、該再剥離性基板を剥離することにより液晶フィルムを得るものである。かくして、液晶フィルムが製造される。
得られた液晶フィルムは、液晶物質層の表面保護のため、露出している液晶物質層に透明保護層を設けたり、表面保護フィルムを貼合しても良い。透明保護層としては、前述の接着剤から選定することもできる。
【0041】
本発明における液晶フィルムの製造方法のもう一つは、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板(けん化処理されたTACフィルム)に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離することを特徴とするものである。ここで、第一の再剥離性基板としては、前述の再剥離性基板の中から任意に選択できる。
【0042】
本発明の製造工程において、けん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に形成された液晶物質層は、そのままの状態で、容易に光学的欠陥の検出が可能である。また、けん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを剥離する際には、剥離不良による液晶物質層の破壊、あるいは他の界面での剥離は発生せず、良好な剥離状態を得ることができる。
【0043】
光学的欠陥の検出方法については、特に限定されないが、2枚の偏光板の吸収軸を直交方向に配置し、その間にけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムと液晶物質層とからなる積層フィルムを配置し、偏光板の下部から白色光を照射し、反対方向から目視で観察する方法や、ラインカメラを用いた自動化法等が挙げられる。前記液晶物質層のリターデーション(複屈折と液晶物質層の厚みとの積)によっては偏光板の吸収軸は必ずしも直交に配置せず、光学的欠陥が検知しやすくなるように任意の角度に設定することもできる。
【0044】
得られた液晶フィルムは、液晶物質層の表面保護のため、露出している液晶物質層に透明保護層を設けたり、表面保護フィルムを貼合しても良い。透明保護層としては、前述の接着剤から選定することもできる。
【0045】
本発明においては、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離基板を剥離して得られる液晶フィルムに、偏光板を貼着することにより楕円偏光板が製造される。
また本発明においては、配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板(けん化処理されたTACフィルム)に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離して得られる液晶フィルムに、偏光板を貼着することにより楕円偏光板が製造される。
【0046】
液晶フィルムの偏光板を貼着する面は特に限定されず、配向基板剥離面側でも良く、第一の再剥離性基板の剥離面側でも良い。偏光板の貼着面は用途、製造プロセス等により、適宜選択することができる。
本発明の楕円偏光板は、偏光板および液晶フィルムの他に、反射防止層、防眩処理層、ハードコート層、光拡散層を1層または複数層含んでいても良い。偏光板と貼合あるいは接着に使用される接着剤等は光学グレードであれば特に制限はなく、例えば前記の接着剤から適するものを用いることができる。
【0047】
本発明の楕円偏光板に使用される偏光板は、本発明の目的が達成し得るもので有れば特に限定されず、液晶表示装置に通常用いられる偏光板を適宜使用することができるが、好ましくは近年開発上市された薄膜型のものが望ましい。具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)や部分アセタール化PVAのようなPVA系偏光フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物等からなる親水性高分子フィルムにヨウ素および/または2色性色素を吸着して延伸した偏光フィルム、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン配向フィルムなどからなる偏光フィルムなどを使用することができる。また、反射型の偏光フィルムも使用することができる。
【0048】
前記偏光板は、偏光フィルム単独で使用しても良いし、強度向上、耐湿性向上、耐熱性の向上等の目的で偏光フィルムの片面または両面に透明な保護層等を設けたものであっても良い。透明な保護層としては、ポリエステルやトリアセチルセルロース等の透明プラスチックフィルムを直接または接着剤層を介して積層したもの、樹脂の塗布層、アクリル系やエポキシ系等の光硬化型樹脂層などが挙げられる。これら透明な保護層を偏光フィルムの両面に被覆する場合、両面に同じ透明な保護層を設けても良いし、また異なる透明な保護層を設けても良い。
【0049】
また、上記製造工程においてけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを剥離する前に、あるいは剥離後に、他の光学異方フィルムと貼合あるいは接着し、必要によりけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを剥離することにより、液晶フィルムを有する各種の光学素子を得ることができる。
この光学素子においても、光学異方性フィルムとの貼合前に、けん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に形成された液晶物質層は、そのままの積層状態で、容易に光学的欠陥の検出が可能である。
さらに、必要により上記各種のフィルムや層の複数枚を積層してもよく、同一面同士、例えば液晶物質層同士を必要により粘・接着剤を介して貼合することもできる。
【0050】
本発明の液晶フィルムを有する各種光学素子のなかで、例えばネマチック配向、ねじれネマチック配向を固定化した液晶フィルムは位相差フィルムとして機能し、STN型、TN型、OCB型、HAN型等の透過または反射型液晶表示装置の補償板として使用できる。コレステリック配向やスメクチック配向を固定化した液晶フィルムは、輝度向上用の偏光反射フィルム、反射型のカラーフィルター、選択反射能に基因する視角による反射光の色変化を生かした各種偽造防止素子や装飾フィルムなどに利用できる。またネマチックハイブリッド配向を固定化したフィルムは、正面から見たときのリターデーションを利用して、位相差フィルムや波長板として利用でき、またリターデーション値の向き(フィルム厚さ方向の分子軸の傾き)による非対称性を生かしてTN型液晶表示装置の視野角改善フィルムなどに利用できる。また、1/4波長板機能を有する液晶フィルムは偏光板と組み合わせ、円偏光板や反射型の液晶表示装置やEL表示装置の反射防止フィルター等として用いることができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明は、通常の再剥離性基板を用いた場合に極めて困難である、液晶物質層の異物、輝点、色ムラ等の光学的欠陥の容易な検出と再剥離性基板の良好な剥離性の両立とを、再剥離性基板としてけん化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用することにより極めて容易に達成することができる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれらに制限されるものではない。
【0053】
[調製例]
テレフタル酸50mmol、2,6−ナフタレンジカルボン酸50mmol、メチルヒドロキノンジアセテート40mmol、カテコールジアセテート60mmolおよびN−メチルイミダゾール60mgを用いて窒素雰囲気下、270℃で12時間重縮合を行った。次に得られた反応生成物をテトラクロロエタンに溶解した後、メタノールで再沈殿を行って精製し、液晶性ポリエステル14.6gを得た。この液晶性ポリエステル(ポリマー1)の対数粘度(フェノール/テトラクロロエタン(6/4 質量比)混合溶媒:30℃)は0.16dl/g、液晶相としてネマチック相を持ち、等方相−液晶相転移温度は250℃以上、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度は112℃であった。
【0054】
ビフェニルジカルボニルクロリド90mmol、テレフタロイルクロリド10mmolおよびS−2−メチル−1,4−ブタンジオール105mmolをジクロロメタン中で室温にて20時間反応させ、反応液をメタノール中に投入し再沈殿させることにより液晶性ポリエステル12.3gを得た。この液晶性ポリエステル(ポリマー2)の対数粘度は0.11dl/gであった。
【0055】
19.82gのポリマー1と0.18gのポリマー2を80gのN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ溶液を調整した。この溶液を、レーヨン布にてラビング処理したポリイミドフィルム(商品名「カプトン」、デュポン社製)上にスピナーにて塗布し、溶媒を乾燥除去した後、210℃で20分熱処理することでツイステッドネマチック配向構造を形成させた。熱処理後、室温下まで冷却してツイステッドネマチック配向構造を固定化し、ポリイミドフィルム上に実膜厚3.0μmの均一に配向した液晶物質層を得た(液晶物質層1)。実膜厚は触針式膜厚計を用いて測定した。
【0056】
[実施例1]
調製例で得られた液晶物質層1の上(ポリイミドフィルムと反対側の面)に市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を5μmの厚さに塗布し(接着剤層1)、この上に再剥離性基板として、厚さ40μmのけん化処理したトリアセチルセルロースフィルム(以下、けん化TACフィルムと呼ぶ。)をラミネートし、約600mJのUV照射により該接着剤層1を硬化させた。ここで、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)としては、市販のフィルム(商品名「フジタック」、富士写真フィルム(株)製)を用い、けん化後の水の接触角は20度であった。この後、けん化TACフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1を再剥離性基板であるけん化TACフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体1を得た。
【0057】
液晶フィルム積層体1中の光学的欠陥を調べるため、2枚の偏光板の吸収軸を直交方向に配置し、それらの間に14インチサイズの液晶フィルム積層体1を設置し、偏光板の下部から白色蛍光灯を光源とし、反対方向から目視で液晶フィルム積層体1中の異物、傷等の欠陥を観察した。
その結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体1の検査に要した時間は11秒であった。
【0058】
得られた液晶フィルム積層体1の露出した液晶物質層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、けん化TACフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体からけん化TACフィルムを剥離した。けん化TACフィルムと接着剤層1との間の剥離力は、2.4N/mであった。
【0059】
さらに、得られた接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体の接着剤層1の面に偏光板(厚み約180μm;住友化学工業(株)製「SQ−1852AP」)を25μmの粘着剤層2を介してラミネートし、偏光板/粘着剤層2/接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムが一体となった積層体からなる楕円偏光板を得た。
製造工程中における液晶フィルム積層体1の光学的欠陥の検査性が良好であったのに加え、けん化TACフィルムの剥離性が極めて良好であり、けん化TACフィルムと接着剤層1との界面での正常な剥離が可能であった。
【0060】
[比較例1]
実施例1においてけん化TACの代わりに未けん化のTACフィルム(商品名「フジタック」、富士写真フィルム(株)製、厚み40μm)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、未けん化TACフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1を未けん化TACフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体2を得た。
実施例1と同様の方法により、液晶フィルム積層体2の光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体2の検査に要した時間は10秒であった。
【0061】
得られた液晶フィルム積層体2の露出した液晶物質層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、未けん化TACフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体から未けん化TACフィルムを剥離しようとしたが、未けん化TACフィルムと接着剤層1間の接着力が強すぎ、正常な界面での剥離は全くできなかった。
製造工程中における液晶フィルム積層体2は、検査性は良かったが、未けん化TACフィルムの剥離においては、剥離性が非常に悪く、未けん化TACフィルムと接着剤層1との界面で剥離する正常な剥離部分は得られなかった。
【0062】
[比較例2]
実施例1において、けん化TACの代わりに厚み50μmのポリカーボネート(鐘淵化学工業(株)製)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、ポリカーボネートフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1をポリカーボネートフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体3を得た。
実施例1と同様の方法により、液晶フィルム積層体3の光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体3の検査に要した時間は12秒であった。
【0063】
得られた液晶フィルム積層体3の露出した液晶物質層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、ポリカーボネートフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体からポリカーボネートフィルムを剥離した。ポリカーボネートフィルムと接着剤層1間の剥離力は26N/mであり非常に重く、剥離界面には白濁が生じていた。
製造工程中における液晶フィルム積層体3は、検査性は良かったが、ポリカーボネートフィルムの剥離においては、剥離性が悪く、ポリカーボネートフィルムと接着剤層1との界面で剥離する正常な剥離部分の面積は、全体の約10%であった。
【0064】
[比較例3]
実施例1において、けん化TACの代わりに厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、ポリエチレンテレフタレートをPETという。)フィルム(商品名:「T60」、東レ(株)製)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、T60PETフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1をT60PETフィルム上に転写し、液晶フィルム積層体4を得た。
実施例1と同様の方法により、液晶フィルム積層体4の光学的欠陥の観察を行った結果、T60PETフィルムの複屈折性の影響を受けるため、欠陥の検出が極めて困難であり、検査を行うことができなかった。
2枚の偏光板の吸収軸の交差角度を種々変化させても、また液晶物質層1の配向軸と偏光板の吸収軸との角度を変化させても、複屈折による干渉を除去できず、検査は困難であった。
【0065】
[実施例2]
実施例1において、けん化TACフィルムの代わりに厚さ38μmのシリコーンコート二軸延伸PETフィルム(商品名「#52」、帝人(株)製)(以下、#52PETフィルムと呼ぶ。)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、#52PETフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/ポリイミドフィルムの積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより液晶物質層1を#52PETフィルム上に転写した。
さらに得られた積層体の露出した液晶物質層1の面にUV硬化型接着剤(UV−3400)を5μmの厚さに塗布し(接着剤層2)、この上に第二の再剥離性基板として、厚さ40μmのけん化TACフィルム(商品名「フジタック」、けん化後の水の接触角は15度)をラミネートし、約600mJのUV照射により該接着剤層2を硬化させ、#52PETフィルム/接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/けん化TACフィルムからなる積層体を得た。この後、この積層体から#52PETフィルムを剥離することにより接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/けん化TACフィルムからなる液晶フィルム積層体5を得た。
実施例1と同様の方法で光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体5の検査に要した時間は9秒であった。
【0066】
得られた液晶フィルム積層体5の接着剤層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、けん化TACフィルム/接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体からけん化TACフィルムを剥離した。けん化TACフィルムと接着剤層2との間の剥離力は、2.5N/mであった。
【0067】
さらに、得られた接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体の接着剤層2の面に偏光板(厚み約180μm;住友化学工業(株)製「SQ−1852AP」)を25μmの粘着剤層2を介してラミネートし、偏光板/粘着剤層2/接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムが一体となった積層体からなる楕円偏光板を得た。製造工程中における液晶フィルム積層体1の光学的欠陥の検査性が良好であったのに加え、けん化TACフィルムの剥離性が極めて良好であり、けん化TACフィルムと接着剤層2との界面での正常な剥離が可能であった。
【0068】
[比較例4]
実施例2において、第二の再剥離性基板としてけん化TACフィルムの代わりに未けん化TACフィルム(「フジタック」、厚み40μm)を使用した以外は実施例2と同様に実施し、接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/未けん化TACフィルムからなる液晶フィルム積層体6を得た。
実施例1と同様の方法により光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体6の検査に要した時間は11秒であった。
【0069】
得られた液晶フィルム積層体6のむき出しの接着剤層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、未けん化TACフィルム/接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体から未けん化TACフィルムを剥離しようとしたが、接着力が強すぎて全く剥離できなかった。
製造工程中における液晶フィルム積層体6は、検査性は良かったが、未けん化TACフィルムの剥離においては、剥離性が非常に悪く、未けん化TACフィルムと接着剤層2との界面で正常な剥離部分は得られなかった。
【0070】
[比較例5]
実施例2において、第二の再剥離性基板としてけん化TACの代わりに、厚さ50μmのアクリル樹脂フィルム(商品名「アクリプレン」、三菱レイヨン(株)製)を使用した以外は実施例2と同様に実施し、接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/アクリプレンからなる液晶フィルム積層体7を得た。
実施例1と同様の方法により光学的欠陥の観察を行った結果、再剥離性基板の影響を受けることなく、欠陥の検査を容易に行うことができた。このとき、液晶フィルム積層体7の検査に要した時間は12秒であった。
【0071】
得られた液晶フィルム積層体7のむき出しの接着剤層1の面にセパレートフィルム付きの約25μmの粘着剤層1をラミネートした。次いで、アクリプレン/接着剤層2/液晶物質層1/接着剤層1/粘着剤層1/セパレートフィルムの積層体からアクリプレンを剥離しようとしたが、接着力が強すぎて全く剥離できなかった。
製造工程中における液晶フィルム積層体7は、検査性は良かったが、アクリプレンの剥離においては、剥離性が非常に悪く、アクリプレンと接着剤層2との界面で正常な剥離部分は得られなかった。
【0072】
[比較例6]
実施例2において、第二の再剥離性基板としてけん化TACの代わりに、厚さ50μmのPETフィルム(商品名「S10」、東レ(株)製)を使用した以外は実施例2と同様に実施し、接着剤層1/液晶物質層1/接着剤層2/S10PETフィルムからなる液晶フィルム積層体8を得た。
実施例1と同様の方法により、液晶フィルム積層体8の光学的欠陥の観察を行った結果、S10PETフィルムの複屈折性の影響を受けるため、欠陥の検出が極めて困難であり、検査を行うことができなかった。
2枚の偏光板の吸収軸の交差角度を種々変化させても、また液晶物質層1の配向軸と偏光板の吸収軸との角度を変化させても、複屈折による干渉を除去できず、検査は困難であった。
【0073】
実施例1、2及び比較例1〜6の結果を表1にまとめた。
【0074】
【表1】
Claims (4)
- 配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離性基板を剥離することを特徴とする液晶フィルムの製造方法。
- 配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を再剥離性基板に転写し、ついで再剥離基板を剥離後、偏光板を貼着することを特徴とする楕円偏光板の製造方法。
- 配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離することを特徴とする液晶フィルムの製造方法。
- 配向基板上の液晶の配向が固定化された液晶物質層を、接着剤を介して第一の再剥離性基板と接着せしめた後、配向基板を剥離して液晶物質層を第一の再剥離性基板に転写し、ついで接着剤を介してけん化処理されたトリアセチルセルロースフィルムからなる第二の再剥離性基板と接着せしめた後、第一の再剥離性基板を剥離して液晶物質層を第二の再剥離性基板に転写し、ついで第二の再剥離性基板を剥離後、偏光板を貼合することを特徴とする楕円偏光板の製造方法。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002301458A JP2004138697A (ja) | 2002-10-16 | 2002-10-16 | 液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 |
PCT/JP2003/012961 WO2004036274A1 (ja) | 2002-10-16 | 2003-10-09 | 液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 |
KR1020057006457A KR20050084850A (ko) | 2002-10-16 | 2003-10-09 | 액정 필름 및 타원편광판의 제조방법 |
CNB2003801015108A CN1313849C (zh) | 2002-10-16 | 2003-10-09 | 液晶薄膜和椭圆偏光板的制造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002301458A JP2004138697A (ja) | 2002-10-16 | 2002-10-16 | 液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004138697A true JP2004138697A (ja) | 2004-05-13 |
Family
ID=32105017
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002301458A Pending JP2004138697A (ja) | 2002-10-16 | 2002-10-16 | 液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 |
Country Status (4)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004138697A (ja) |
KR (1) | KR20050084850A (ja) |
CN (1) | CN1313849C (ja) |
WO (1) | WO2004036274A1 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007114270A (ja) * | 2005-10-18 | 2007-05-10 | Nippon Oil Corp | 光学フィルムの製造方法 |
JP2008183812A (ja) * | 2007-01-30 | 2008-08-14 | Nippon Oil Corp | 液晶フィルムの製造方法および光学素子用積層フィルム |
JP2016051177A (ja) * | 2014-08-29 | 2016-04-11 | 住友化学株式会社 | 光学フィルムの製造方法 |
US10890702B2 (en) | 2013-09-10 | 2021-01-12 | Sumitomo Chemical Company, Limited | Method for producing laminated body |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH06308328A (ja) * | 1993-04-22 | 1994-11-04 | Nippon Petrochem Co Ltd | 光学素子 |
JPH0726223A (ja) * | 1993-07-08 | 1995-01-27 | Dainippon Printing Co Ltd | 帯電防止性を有する微粘着高透明保護フィルム |
JP3366154B2 (ja) * | 1995-04-07 | 2003-01-14 | 新日本石油株式会社 | 液晶性高分子フィルムの製造方法 |
JP4140998B2 (ja) * | 1997-12-22 | 2008-08-27 | 大日本印刷株式会社 | 拡散層付偏光板および当該偏光板を用いた液晶表示装置 |
JP2000347027A (ja) * | 1999-06-07 | 2000-12-15 | Nippon Mitsubishi Oil Corp | 転写用素子 |
-
2002
- 2002-10-16 JP JP2002301458A patent/JP2004138697A/ja active Pending
-
2003
- 2003-10-09 WO PCT/JP2003/012961 patent/WO2004036274A1/ja active Application Filing
- 2003-10-09 CN CNB2003801015108A patent/CN1313849C/zh not_active Expired - Fee Related
- 2003-10-09 KR KR1020057006457A patent/KR20050084850A/ko not_active Application Discontinuation
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007114270A (ja) * | 2005-10-18 | 2007-05-10 | Nippon Oil Corp | 光学フィルムの製造方法 |
JP2008183812A (ja) * | 2007-01-30 | 2008-08-14 | Nippon Oil Corp | 液晶フィルムの製造方法および光学素子用積層フィルム |
US10890702B2 (en) | 2013-09-10 | 2021-01-12 | Sumitomo Chemical Company, Limited | Method for producing laminated body |
US11402560B2 (en) | 2013-09-10 | 2022-08-02 | Sumitomo Chemical Company, Limited | Method for producing laminated body |
JP2016051177A (ja) * | 2014-08-29 | 2016-04-11 | 住友化学株式会社 | 光学フィルムの製造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
KR20050084850A (ko) | 2005-08-29 |
CN1705899A (zh) | 2005-12-07 |
CN1313849C (zh) | 2007-05-02 |
WO2004036274A1 (ja) | 2004-04-29 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2004226752A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
TWI235256B (en) | Method for producing an optical device; elliptical and circular polarizers comprising the optical device; and liquid crystal device | |
JP2007114270A (ja) | 光学フィルムの製造方法 | |
JP2008183812A (ja) | 液晶フィルムの製造方法および光学素子用積層フィルム | |
JP2004226753A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2003075636A (ja) | 楕円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2006284736A (ja) | 液晶フィルムおよび光学素子用積層フィルム | |
JP2006284735A (ja) | 液晶フィルムおよび光学素子用積層フィルム | |
JP2004117522A (ja) | 液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 | |
KR100746806B1 (ko) | 광학 적층체의 제조 방법, 상기 적층체로 이루어지는 타원편광판, 원 편광판 및 액정 표시 장치 | |
JP2004309771A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004138697A (ja) | 液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 | |
JP4335484B2 (ja) | 液晶フィルムおよび楕円偏光板の製造方法 | |
JP2004226754A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
KR100746807B1 (ko) | 광학 적층체의 제조 방법, 상기 적층체로 이루어지는 타원편광판, 원 편광판 및 액정 표시 장치 | |
JP2004226758A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004226762A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004226757A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004226763A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004226765A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004226756A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004226759A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004226764A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004226760A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 | |
JP2004226761A (ja) | 光学積層体の製造方法、当該積層体からなる楕円偏光板、円偏光板および液晶表示装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050930 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080701 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080818 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080916 |