JP4334939B2 - アルミニウム連続鋳造鋳型用潤滑油 - Google Patents
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続いて、さらに、鋳型92から取り出された鋳塊の表面に冷却水を供給し、内部まで凝固させ、鋳塊を連続的に引き出す。
なお、水平連続鋳造においては、鋳型の形状によって、円柱状、角柱状、あるいは中空状などの長尺鋳塊が連続的に製造される。
即ち、鋳型92内の溶湯951は、自重により鋳型下部921に押しつけられるため、鋳型上部922は鋳型下部921に比べて冷却され難くなる。その結果、鋳型92内におけるアルミニウム溶湯951の先端であるモルテンサンプ99が、図2における中心線(a)で示す鋳型92の中心よりも上側にずれ、均一な組織のアルミニウム鋳塊が得られなくなるおそれがあった。
しかしながら、このような方法においては、実用上限界がある。即ち、溶湯951と鋳型92との接触面への導入油量には、潤滑油93の粘度、油性あるいは熱分解性等の特性が複雑に関与している。さらに、鋳型92の温度や重力による摩擦面圧等の操業時における条件も変化する。そのため、潤滑油量を変えるだけでは、安定な潤滑を維持することは困難であった。
しかしながら、このような方法においては、たとえ均一な冷却が確保できても潤滑油の種類によっては鋳肌欠陥や湯漏れを発生させてしまうおそれがあった。
しかしながら、このような潤滑油を用いて水平連続鋳造をおこなうと、ひまし油が熱分解して副生成物が生成するおそれがある。この副生成物は、溶湯内に入り込み、鋳肌表面にピットを発生させ、所謂ピット欠陥を発生させるおそれがある。また、副生成物の生成を回避するため、ひまし油の添加量を低減すると、今度は鋳型と溶湯表面で焼き付きが発生し、湯漏れが多発するようになるという問題がある。
該潤滑油は、合成エステルからなる油性剤5〜40重量部と、40℃における動粘度が5〜200mm2/sの鉱油95〜60重量部とからなり、かつ40℃における動粘度が30〜100mm2/sであり、
上記合成エステルにおけるエステル化された脂肪酸の炭素数は10〜20であることを特徴とするアルミニウム連続鋳造鋳型用潤滑油にある(請求項1)。
そのため、上記潤滑油は、優れた潤滑性を示すことができる。それ故、鋳型と溶湯表面で焼き付きが発生することはほとんどなく、湯漏れの発生を防止することができる。さらに、上記潤滑油は、熱分解等により副生成物を生成することもない。そのため、ピット欠陥の発生を防止することができる。
即ち、本発明のアルミニウム連続鋳造鋳型用潤滑油は、従来潤滑油においては実現が困難であったピット欠陥及び湯漏れの両方をバランスよく防止できるものである。
ここで、上記潤滑油は、合成エステルとして、該合成エステルにおけるエステル化された脂肪酸の炭素数が10〜20のものを含有する。
上記のごとく、合成エステルにおける脂肪酸の炭素数を特定することにより、上記潤滑油は、潤滑性がより向上して湯漏れの発生を一層防止できると共に、冬季等の低温環境においても凝固し難いものとなる。
また、上記潤滑油は、合成エステルからなる油性剤5〜40重量部と、鉱油95〜60重量部とを含有する。
ここで、上記潤滑油は、上記油性剤と上記鉱油とを合計で100重量部となるように含有することができる。
また、上記油性剤としては、天然油脂又は合成エステルをそれぞれ単独で用いることもできるが、天然油脂及び合成エステルを混合して用いることもできる。
天然油脂と合成エステルとを混合して用いる場合には、これらの合計が5〜40重量部となるようにする。
より好ましくは、上記潤滑油は、油性剤を10〜30重量部、及び鉱油を90〜70重量部含有することがよい。
この場合には、その他の成分の含有量を上記潤滑油100重量部に対して、1.0重量部以下にすることが好ましい。その他の成分が1.0重量部を越える場合には、上記潤滑油の潤滑性が低下するおそれがある。また、この場合には、鋳型表面に上記潤滑油が残留してしまうおそれがある。
脂肪酸の炭素数が10未満の場合には、上記潤滑油の潤滑性が低下し、湯漏れが発生し易くなるおそれがある。一方、20を越える場合には、上記潤滑油が低温で凝固し易くなり、冬季や寒冷地等での操業が不可能となるおそれがある。
また、合成エステルとしては、フルエステルや部分エステルがあるが、好ましくはフルエステルがよい。この場合には、上記潤滑油の潤滑性をより向上させることができる。
また、上記の鉱油は、40℃における動粘度が5〜200mm2/sであるものが好ましく、より好ましくは、20〜150mm2/sのものがよい。
40℃における粘度が上記の範囲から外れる場合には、上記潤滑油の動粘度を30〜100mm2/sの範囲にすることが困難になる。
好ましくは、上記天然油脂は、パーム油、牛脂及び豚脂から選ばれる1種又は2種以上であることがよい。
この場合には、これらの天然油脂が加熱酸化により劣化しにくいという特長を生かして、上記潤滑油を、熱や酸化に対して安定なものにすることができる。
この場合には、上記潤滑油の熱や酸化に対する安定性や境界潤滑性を向上させることができる。
ステルから選ばれる1種又は2種以上からなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、熱による酸化に対する安定性や、境界潤滑性を向上させることができる
。
本例の潤滑油は、アルミニウムの連続鋳造を行うときに鋳型に用いるものである。該潤滑油は、天然油脂又は/及び合成エステルからなる油性剤5〜40重量部と、鉱油95〜60重量部とからなり、かつ40℃における動粘度が30〜100mm2/sである。また、上記合成エステルにおけるエステル化された脂肪酸の炭素数は10〜20である。
また、合成エステルとしては、ネオペンチルグリコール(NPG)、トリメチロールプロパン(TMP)、又はペンタエリスリトール(PET)と、炭素数が10,12、又は20の脂肪酸とのエステルを合成により作製した。また、これらの合成エステルとしては、エステル数が1〜4のモノエステル、ジエステル、トリエステル、又はテトラエステルを用いた。
なお、ネオペンチルグリコール(NPG)、トリメチロールプロパン(TMP)、又はペンタエリスリトール(PET)の構造式を下記の化1〜化3にそれぞれ示す。
具体的には、まず、各試料をそれぞれビーカーに入れ、該ビーカーの温度を−3℃まで冷却した。このときに凝固した場合を「×」として評価し、凝固しなかった場合を「○」として評価した。その結果を表1〜表4に示す。
具体的には、キャノンフェンスケに各試料をそれぞれ注入し、該キャノンフェンスケを予め40℃に保温されたエチレングリコール中に浸し、次いで、キャノンフェンスケ内の各試料(潤滑油)の落下速度を測定し、これを粘度に換算することにより測定した。
なお、上記の動粘度、並びに下記の湯漏れ率及びピット発生率の測定は、上記の冷却試験において、その評価が「○」となった試料について行った。
具体的には、まず、図2に示すごとく、鋳型2及びタンディッシュ3を備えた水平鋳造システム1を準備した。
この水平鋳造システム1には、冷却水45を貯蔵する冷却水室4、及び潤滑油55(試料E1〜試料E31及び試料C1〜試料C23)を溜めておくための潤滑油室5が、それぞれ鋳型2の上下に設けられている。鋳型2は、直径が35mmのものを用いた。
具体的には、まずアルミニウム合金の溶湯をタンディッシュ3に入れ、溶湯をタンディッシュ3から鋳型2に供給する。このとき、ヘッダーリング部6あるいは鋳型2の入口側の壁から鋳型2内に潤滑油55として、上記の各試料を供給する。
このようにして、上記の各試料を用いて水平連続鋳造を行い、このときの湯漏れ率及びピット発生率を調べた。
表1より知られるごとく、試料E1と試料E2、及び試料E3と試料E4の結果をそれぞれ比較すると、ネオペンチルグリコールエステルにおいてエステル数が変化しても湯漏れ率及びピット発生率はほとんど変化しないことがわかる。また、脂肪酸の炭素数が多くなると、潤滑性は向上し、湯漏れ率が若干低減する傾向にある。一方、ピット発生率は、加熱による残存量が増加する傾向となり、やや増加する傾向にある。ただし、このピット発生率の増加も工業生産上においては問題のないレベルであった。
試料C1は、合成エステルや天然油脂などの油性剤を含有しておらず、鉱油のみからなるものである。この場合には、潤滑性が非常に乏しく湯漏れが100%発生し、操業不可能であった。
一方、試料C5,C11,C17,及びC21の結果より知られるごとく、合成エステルや天然油脂などの油性剤の含有量が45重量部となると、高温での残油量が増えるため、ピット発生率が工業生産上の限界レベルである2%を越えて高くなることがわかる。
2 鋳型
3 タンディッシュ
4 冷却水
45 冷却水室
5 潤滑油室
55 潤滑油
Claims (3)
- アルミニウムの連続鋳造の鋳型に用いる潤滑油において、
該潤滑油は、合成エステルからなる油性剤5〜40重量部と、40℃における動粘度が5〜200mm2/sの鉱油95〜60重量部とからなり、かつ40℃における動粘度が30〜100mm2/sであり、
上記合成エステルにおけるエステル化された脂肪酸の炭素数は10〜20であることを特徴とするアルミニウム連続鋳造鋳型用潤滑油。 - 請求項1において、上記合成エステルは、ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンエステル、及びペンタエリスリトールエステルから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするアルミニウム連続鋳造鋳型用潤滑油。
- 請求項1又は2において、上記合成エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、及びテトラエステルから選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とするアルミニウム連続鋳造鋳型用潤滑油。
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