JP4334639B2 - X線管 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線を発生させるX線管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線管は、高真空の管内でカソードを加熱してそのカソードから電子を放出させ、その電子を高電圧を印加した陽極ターゲットに入射することによりX線を発生させるものである。このX線管は用途により様々な構造のものが存在するが、ヒータやグリッド電極などに電圧を印加するため、外部から管内に所定の電圧を供給する必要がある。このため、実開平5−11302号公報、特開平9−180630号公報及び特開平9−180660号公報に記載されるように、絶縁性を有するステムに導電体からなる複数のピンを貫通させ、それらのピンを通じてX線管の管内に所定の電圧を供給している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のX線管にあっては、長時間の使用によりステムの絶縁性が損なわれ、電子の放出が正常に行われなくなるおそれがあるという問題点がある。すなわち、X線管の使用に際し長時間にわたりヒータ、カソードが高温に加熱されると、そのヒータ、カソードの構成物質が分解蒸発し、蒸散物としてX線管の管内に飛散する。この蒸散物は管内の内面に付着することとなるが、その付着位置がステムの表面であると、付着した蒸散物を通じてステムを貫通するピン間が短絡した状態となり、ステムの絶縁性が損なわれる。この場合、ヒータやグリッド電極などに所望の電圧を供給することができなくなり、X線管が正常に動作しなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、長時間使用しても安定して動作するX線管を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に係るX線管は、カソードを加熱して電子を放出させ、電子を陽極ターゲットに入射させてX線を発生させるX線管において、カソードを内蔵する容器の開口部に装着される絶縁基板と、絶縁基板を貫通し容器内に電圧を供給するための複数のピンと、容器内にてピンに取り付けられ、容器内に発生する蒸散物がピンの付根部分に付着しないように絶縁基板の表面から隔てた位置に配置されピンの付根部分を覆うピンカバーとを備えたことを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、長時間の使用により、高温に加熱されるヒータ、カソードなどから導電性の蒸散物が発生しても、ピンカバーの設置によりピンの付根部分に蒸散物が付着することがない。このため、絶縁基板の表面に蒸散物が付着しても各ピン間における絶縁性が損なわれない。
【0007】
また本発明に係るX線管は、前述のピンカバーが、ピンに外装される筒状部と、その筒状部から外側に突出してなる鍔部を備えて構成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、鍔部により蒸散物のピンの付根部分への付着が確実に防止される。また、筒状部をかしめることによりピンカバーを正確な位置に容易に取り付けることが可能となる。
【0009】
更に本発明に係るX線管は、前述のピンが、その周面に形成される拡径部を有し、拡径部が絶縁基板の外側表面部分で絶縁基板に固着されていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ピン固着用の拡径部が絶縁基板の内面側に配置されないため、ピンカバーで覆うべきピンの付根部分が狭い範囲となる。このため、ピンカバーの鍔部を小さく形成することが可能となる。従って、各ピンを狭い間隔で設けても、ピンカバー同士が接触するなどの不具合がなく、各ピンの間の絶縁性が確実に維持できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。尚、各図において同一要素には同一符号を付して説明を省略する。また、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致していない。
【0012】
(第一実施形態)
図1に本実施形態に係るX線管を示す。図1に示すように、X線管1は、マイクロフォーカスX線管であり、電子を発生・放出する電子銃部2と、電子銃部2からの電子を受けてX線を発生させるX線発生部3とを備えている。
【0013】
電子銃部2は、その各構成部品を収容する容器21を具備し、その容器21の端部には開口部22が形成されている。開口部22には、ステム基板4が取り付けられている。ステム基板4は、容器21内を密封するようにロウ付け(鑞付け)などにより開口部22に固着されている。このステム基板4は、導電性のない絶縁体により形成され、例えば、セラミックスにより形成される。
【0014】
ステム基板4には、複数のピン5が貫通している。ピン5は、容器21の外部から容器21の内部へ所定の電圧を供給するためのものである。ピン5の周面には、その周面から突出する拡径部51が形成されている。拡径部51はステム基板4の外面41に当接されており、この拡径部51とステム基板4がロウ付けされることにより、ピン5がステム基板4に対して固定されている。なお、図1においては、説明の便宜上、第一グリッド電極71に電圧を印加するためのピン5のみを図示しており、第二グリッド電極72、カソード73、ヒータ76などへ電圧を印加するためのピン5の図示を省略してある。
【0015】
ピン5の容器21内に位置する部分には、ピンカバー6が取り付けられている。ピンカバー6は、ピン5に外装される筒状部61と、その筒状部61から外側へ突出してなる鍔部62とを備えて構成されている。筒状部61は、ピン5の外径とほぼ同寸法の内径を有しており、この筒状部61がかしめられることにより、ピンカバー6がピン5に固定されている。この筒状部61を備えることにより、ピンカバー6を正確な位置に容易に固定することが可能となる。
【0016】
一方、鍔部62は、ピン5の付根部分を少なくとも覆う形状とされている。このピン5は、前述したように拡径部51がステム基板4の外面41に当接されステム基板4の内面42にないため、鍔部62で覆うべき範囲が狭くて済み、鍔部62の筒状部61からの突出長を短いものとすることができる。従って、各ピン5を狭い間隔で設けても、ピンカバー6同士が接触するなどの不具合がなく、各ピン5の間の絶縁性が確実に確保できる。
【0017】
ピンカバー6は、その鍔部62がステム基板4の内面42から一定距離を隔てるようにして設置されている。この鍔部62と内面42との間の離間距離は、ピン5の径寸法、鍔部62の突出長などを考慮して、X線管1の使用時に発生する蒸散物がその間を通じてピン5の付根部分に付着しないように設定すればよい。
【0018】
容器21内におけるピン5の端部には、第一グリッド電極71に接続されている。第一グリッド電極71には、その中央部分に電子80を通過させるための開口71aが設けられている。また、第一グリッド電極71のX線発生部3側には、第二グリッド電極72が配設されている。第二グリッド電極72は、第一グリッド電極71に絶縁体を介して支持されている。第二グリッド電極72には、その中央部分に電子80を通過させるための開口72aが設けられている。また、第二グリッド電極72にはリード線72bが接続され、図示しないピン5を通じて容器21の外部から電圧が印加される。
【0019】
第一グリッド電極71のステム基板4側には、カソード73が配設されている。カソード73は絶縁体よりなる筒体74の先端に設けられており、その筒体74は絶縁体よりなるスペーサ75を介して第一グリッド電極71に支持されている。カソード73には、図示しないリード線、ピンを介して所定の電圧が外部から供給できるようになっている。
【0020】
また、筒体74内には、ヒータ76が配設されている。ヒータ76は、カソード73を加熱するためのものであり、図示しないリード線、ピンを介して所定の電圧が外部から供給されるようになっている。
【0021】
一方、X線発生部3は、その各構成部品を収容する容器31を備えている。容器31は、電子銃部2の容器21と開口25を通じて連通しており、カソード73から放出される電子80を入射できる構造になっている。これらの容器31、容器21は密封されており、その内部がほぼ真空状態に保たれている。
【0022】
容器31の内部には、ターゲット32が設置されている。ターゲット32は、電子銃部2からの電子80を受けてX線81を発生させるものである。このターゲット32は、金属製の棒状体であって、その軸方向を電子80が進入してくる方向に対して交差する向きに配置されている。ターゲット32の先端面32aは、電子銃部2からの電子80を受ける面であり、その電子80が進入してくる前方の位置に配置されている。また、ターゲット32には、正の高電圧が印加されている。
【0023】
容器31には、X線出射窓33が設けられている。X線出射窓33は、ターゲット32から発せられたX線81を容器31の外部へ出射させるための窓であり、例えば、X線透過材であるBe材からなる板体などにより構成される。このX線出射窓33は、ターゲット4の先端の前方に設けられている。また、X線出射窓33は、その中心がターゲット4の中心軸の延長上に位置するように形成されている。
【0024】
次に、X線管1の動作について説明する。
【0025】
図1において、ピン5などを通じて第一グリッド電極71、第二グリッド電極73に所定の電圧を印加し、ターゲット32に正の高電圧を印加した状態にて、ヒータ76を加熱すると、カソード73から電子80が放出される。電子80は、開口71a、72aを通過しターゲット32の先端面32aに入射する。この電子80の入射により先端面32aからX線81が放出され、このX線81はX線出射窓33を通じてX線管1外へ出射されていく。
【0026】
このようなX線管1の使用を長時間にわたって続けると、図2に示すように、高温に加熱されるヒータ76、カソード73などから導電性を有する蒸散物91が放出される。この蒸散物91は、容器21内に飛散して、ピン5の周面、ステム基板4の内面42などに付着する。
【0027】
このとき、ピン5の付根部分に向けて蒸散物91が飛散しても、図3に示すように、そのピン5の付根部分をピンカバー6が覆っているから、ピン5の付根部分に蒸散物91が付着することがない。このため、ステム基板4の内面42上に付着し堆積した蒸散物91を通じて、ピン5同士が導通し短絡することを確実に防止できる。従って、X線管1を長時間使用しても、ヒータ76、カソード73から発せられる蒸散物91の影響を受けることなく、X線管1の正常動作が確保できる。
【0028】
(第二実施形態)
第一実施形態では本発明に係るX線管をマイクロフォーカスX線管に適用した場合について説明したが、本発明に係るX線管はそのようなものに限られるものではなく、透過型のマイクロフォーカスX線管にも適用でき、また、焦点径もマイクロフォーカスに限らず、どの様な焦点径を持つX線管に対しても同様に適用できる。その場合であっても、第一実施形態に係るX線管1と同様な作用効果が得られる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0030】
すなわち、長時間の使用によりカソードを加熱するヒータやそのカソードなどから導電性の蒸散物が発生しても、ピンカバーの設置によりピンの付根部分に蒸散物が付着することがない。このため、蒸散物の付着に起因して各ピン間における絶縁性が損なわれることがない。従って、長時間使用しても、その使用により生ずる蒸散物の影響を受けることなく、X線管の正常動作が確保できる。
【0031】
また、ピンカバーを筒状部と鍔部を備えた構成とすることにより、鍔部により蒸散物のピンの付根部分への付着が確実に防止でき、また、筒状部をかしめることによりピンカバーをピンに容易に取り付けることができる。
【0032】
更に、拡径部を絶縁基板の外側表面部分で当接させてピンを絶縁基板に固着することにより、ピンカバーで覆うべきピンの付根部分が狭くなるため、ピンカバーの鍔部を小さく形成することが可能となる。従って、各ピンを狭い間隔で設けても、ピンカバー同士が接触するなどの不具合がなく、各ピンの間の絶縁性が確実に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一実施形態に係るX線管の説明図である。
【図2】第一実施形態に係るX線管の動作説明図である。
【図3】第一実施形態に係るX線管の動作説明図である。
【符号の説明】
1…X線管、2…電子銃部、21…容器、22…開口部、3…X線発生部、32…ターゲット、5…ピン、6…ピンカバー、73…カソード、80…電子、81…X線。

Claims (3)

  1. カソードを加熱して電子を放出させ、前記電子を陽極ターゲットに入射させてX線を発生させるX線管において、
    前記カソードを内蔵する容器の開口部に装着される絶縁基板と、
    前記絶縁基板を貫通し前記容器内に電圧を供給するための複数のピンと、
    前記容器内にて前記ピンに取り付けられ、前記容器内に発生する蒸散物が前記ピンの付根部分に付着しないように前記絶縁基板の表面から隔てた位置に配置され前記ピンの付根部分を覆うピンカバーと、
    を備えたことを特徴とするX線管。
  2. 前記ピンカバーは、前記ピンに外装される筒状部と、その筒状部から外側に突出してなる鍔部を備えて構成されていること、を特徴とする請求項1に記載のX線管。
  3. 前記ピンは、その周面に形成される拡径部を有し、前記拡径部が絶縁基板の外側表面部分で前記絶縁基板に固着されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載のX線管。
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