JP4333961B2 - 閉花受粉性イネの作出法およびその選抜法 - Google Patents

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Description

本発明は、実用的なイネの組換え体作出に有用な母本の作出法に関するものであり、より詳細には、植物体に閉花受粉性を付与するタンパク質および該タンパク質をコードする遺伝子ならびにこれらの利用に関するものである。
遺伝子組換え作物は多大な可能性を秘めているので、実用化が望まれている。しかし、環境などへの長期的な影響の評価が定まっていないことを理由に、近縁野生種または同種栽培作物との交雑による遺伝子拡散に対する強い懸念が生産者および消費者に存在し、その結果、実用化が困難となっている。環境などに対する長期的な影響評価が定まるまでは、予防原則論的な見地に立ち、遺伝子拡散防止などにより安全性を確保することが求められている。
イネは、一般に、高頻度で自家受粉する植物であるが、開花後に外部に花粉を飛散させるので、低頻度ではあるものの他家受粉も生じ得る。野外栽培の際に、花粉の飛散による組換え体と周辺の野生植物または同種作物との間での交雑が生じないようにするために、周辺植物との栽培距離を確保するか、または栽培時期を調整する(例えば、開花時期をずらすなど)ことが必要とされている。これらの方法が不可能な場合は、摘花、除雄、花への袋がけ、防風ネットの設置などが行われている。しかし、いずれの場合も多大な労力を必要とするので、イネにおいても花粉飛散防止技術の開発が望まれている。
組換え植物からの花粉飛散による遺伝子拡散を防止する技術として、葉緑体形質転換法による母性遺伝の利用、無配偶生殖(apomixis)、雄性不稔などが提唱されている。しかし、イネでは、葉緑体形質転換法、無配偶生殖が未だ実用化に至っていない。また、雄性不稔イネは存在するが、種子を収穫するためには人工的な授粉が必要とされるので実用的ではない。
花粉の飛散を防止するさらなる技術として、閉花受粉が知られている。オオムギにおいては、閉花受粉性の品種を用いた遺伝解析が行われている(例えば、特許文献1および非特許文献1を参照のこと)。オオムギにおける研究に基づけば、閉花受粉性の品種が存在し、遺伝解析に基づけば、閉花受粉性が少数の遺伝子に支配されていることが明らかにされている。
閉花受粉性イネについては、これまでにいくつかの報告がなされている(例えば、非特許文献2および3を参照のこと)。また、閉花受粉性に類似した形質を有するものとして、「穂不抽出性イネ」が報告されている(例えば、非特許文献4を参照のこと)。他に、花器官の形態的変異により閉花性となったイネについても、いくつかの報告がなされている(非特許文献5および6を参照のこと)。
特開2005−229854公報(平成17年9月2日公開) Theor Appl Genet 109,480−7(2004) J Fac Agric Hokkaido Univ.53,72−130(1963) Current Science 50,419−420(1981) Rice Genetics Newsletter 3,62−63(1986) Development 130,705−718(2003) Plant Cell Physiol.43,130−135(2002)
これまでに報告されている閉花受粉性イネとして、「閉穎大黒(d7)」突然変異体は、原因遺伝子の多面的発現によって他の生育障害(例えば、矮性および短粒など)を伴うと推定され、「Dhundhuni」は閉花受粉性の遺伝様式が複雑である(関与遺伝子の数が多く、母性遺伝も関与する)と推定されており、これらはいずれも交配母本としての利用は困難である、
「穂不抽出性イネ」では、穂が止葉の葉鞘に包まれているので、登熟後に病害に侵される危険性、および収穫作業の繁雑化が想定され、これもまた実用的ではない。
開花を引き起こす駆動力として機能する花器官「鱗被」(双子葉植物の花弁に相当)の形態変異によって閉花性を示すイネとして、superwoman1(spw1)変異体、Act::OsMADS3組換え体などが報告されている。しかし、これらは雄蕊に変異が生じ、激しい不稔を伴うので、実用的ではない。
このように、花粉の飛散を防止し得る閉花受粉性(cleistogamy)を有している栽培品種の開発が望まれているが、日本のイネにおいては閉花受粉性の実用品種は存在しない。また、閉花受粉性を付与する遺伝子本体が存在するのか、また、どのような機序に基づいて閉花受粉性が制御されているのかについては、不明であった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、正常な稔性を有し、草型、出穂性などの農業形質における変異を伴わない実用的な閉花受粉性植物を作出および選抜する技術を提供することにある。
本発明者は、日本型イネ品種「台中65号」を原品種として、化学変異源物質N−methyl−N−nitrosourea(MNU)によって誘発された突然変異体集団から、唯一の閉花受粉性イネ突然変異体superwoman1−cleistogamy(spw1−cls)を得た。具体的には、上記集団から(1)開花時期に雄蕊を穎の外に抽出しない突然変異体系統を選抜し、(2)その中から正常に稔実する系統を選抜した。さらに、イネspw1−cls変異体についてマップベースクローニング法を行うことにより、閉花受粉性がクラスB MADSボックスタンパク質であるSUPERWOMAN1(SPW1)をコードする遺伝子における変異によって引き起こされたものであることを明らかにし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るポリペプチドは、植物体に閉花受粉性を付与するポリペプチドであって、(A)クラスB MADSボックスタンパク質の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているポリペプチド;または、(B)上記(A)のアミノ酸配列の第45位以外の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたポリペプチド、であることを特徴としている。
本発明に係るポリペプチドは、植物体に閉花受粉性を付与し得る。superwoman1(spw1)変異体が、雄蕊に変異が生じ、激しい不稔を伴うこと(非特許文献5を参照のこと)に鑑みれば、SPW1において1つのアミノ酸を置換することにより植物体に閉花受粉性を付与し得るということは、全く予想し得ないことであった。
本発明に係るポリペプチドは、植物体に閉花受粉性を付与するポリペプチドであって、(A)単子葉植物のクラスB MADSボックスタンパク質の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているポリペプチド;または、(B)上記(A)のアミノ酸配列の第45位以外の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されているポリペプチド、であってもよい。
本発明に係るポリペプチドは、植物体に閉花受粉性を付与するポリペプチドであって、(A)配列番号1、6、8、10、12、14、16、18または20に示されるアミノ酸配列の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているアミノ酸配列;または、(B)上記(A)のアミノ酸配列の第45位以外の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列、からなるポリペプチドであってもよい。
本発明に係るポリペプチドは、植物体に閉花受粉性を付与するポリペプチドであって、(A)配列番号1、6または8に示されるアミノ酸配列の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているアミノ酸配列;または、(B)上記(A)のアミノ酸配列の第45位以外の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列、からなるポリペプチドであってもよい。
本発明に係るポリペプチドにおいて、上記親水性アミノ酸はトレオニンであることが好ましい。
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記のポリペプチドをコードすることを特徴としている。
本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、または該ポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得かつ植物体に閉花受粉性を付与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、であってもよい。
本発明に係る植物体は、上記のポリペプチドを発現していることを特徴としている。
本発明に係る植物体は、上記のポリヌクレオチドを発現していることを特徴としている。
本発明に係る植物体作製方法は、閉花受粉性が付与された植物体を作製する方法であって、(I)クラスB MADSボックスタンパク質をコードする遺伝子に対して、該タンパク質の第45位のアミノ酸置換に対応する変異を誘導する工程;(II)クラスB MADSボックスタンパク質をコードする遺伝子において、該タンパク質の第45位のアミノ酸置換を誘導する変異を有する遺伝子を植物体に導入する工程;または、(III)SPW1(配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)以外のクラスB MADSボックス遺伝子の発現を抑制する工程、のいずれかを包含することを特徴としている。
本発明に係る植物体作製キットは、閉花受粉性が付与された植物体を作製するためのキットであって上記のポリヌクレオチドを備えていることを特徴としている。
本発明に係るオリゴヌクレオチドは、上記のポリヌクレオチドのフラグメントまたはその相補配列を含むことを特徴としている。
本発明に係るオリゴヌクレオチドは、配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。
本発明に係るオリゴヌクレオチドセットは、上記のポリヌクレオチドのフラグメントまたはその相補配列を含む、一組のオリゴヌクレオチドを含んでいることを特徴としている。
本発明に係るオリゴヌクレオチドセットは、配列番号22に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、および配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含んでいることを特徴としている。
本発明に係るスクリーニング方法は、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングする方法であって、上記のオリゴヌクレオチドを目的の植物体由来のcDNAとハイブリダイズさせる工程を包含することを特徴としている。
本発明に係るスクリーニング方法は、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングする方法であって、配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを目的の植物体由来のcDNAとハイブリダイズさせる工程を包含することを特徴としている。
本発明に係るスクリーニング方法は、配列番号22に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを目的の植物体由来のcDNAとハイブリダイズさせる工程をさらに包含することが好ましい。
本発明に係るスクリーニングキットは、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングするキットであって、上記のオリゴヌクレオチドを備えていることを特徴としている。
本発明に係るスクリーニングキットは、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングするキットであって、配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを備えていることを特徴としている。
本発明に係るスクリーニングキットは、配列番号22に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをさらに備えていることが好ましい。
本発明に係る抗体は、上記のポリペプチドと特異的に結合することを特徴としている。
本発明に係るスクリーニング方法は、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングする方法であって、上記の抗体を目的の植物体由来の組織抽出物とインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
本発明に係るスクリーニングキットは、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングするキットであって、上記の抗体を備えていることを特徴としている。
本発明を用いれば、閉花受粉性が付与された植物体を容易に作製することができる。また、本発明を用いれば、閉花受粉性を有している植物体を容易にスクリーニングすることができる。
〔1:ポリペプチドおよびポリヌクレオチド〕
〔1−1〕ポリペプチド
本発明は、植物体に閉花受粉性を付与するポリペプチドを提供する。本発明に係るポリペプチドは、植物におけるクラスB MADSボックスタンパク質の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているポリペプチドまたはその変異体であることを特徴としている。上記植物は、好ましくは単子葉植物であり、より好ましくはイネ科植物(例えば、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、エンバク、キビ、アワ、モロコシなど)であり、最も好ましくは、イネ、オオムギまたはコムギである。
植物におけるクラスB MADSボックスタンパク質はAP3型とPI型とに分類される。AP3型としては、イネのSPW1(配列番号1)、オオムギのHvAP3(配列番号10)、コムギのTaMADS#51(配列番号14)およびTaMADS#82(配列番号16)が挙げられ、PI型としてはイネのOsMADS2(配列番号6)およびOsMADS4(配列番号8)、オオムギのHvPI(配列番号12)、コムギのWPI1(配列番号18)およびWPI2(配列番号20)が挙げられるが、植物におけるクラスB MADSボックスタンパク質はこれらに限定されない。なお、これらのタンパク質に対するcDNA配列を、配列番号2(イネのSPW1)、配列番号11(オオムギのHvAP3)、配列番号15(コムギのTaMADS#51)、配列番号17(TaMADS#82)、配列番号7(イネのOsMADS2)、配列番号9(OsMADS4)、配列番号13(オオムギのHvPI)、配列番号19(コムギのWPI1)および配列番号21(WPI2)に示す。
本発明に係るポリペプチドは、このようなクラスB MADSボックスタンパク質の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されていることを特徴としている。本発明者らが作出した植物体において、イネのクラスB MADSボックスタンパク質であるSUPERWOMAN1(SPW1)タンパク質において第45位のアミノ酸がイソロイシンからトレオニンに置換されていたが(配列番号4)、本発明に係るポリペプチドにおける第45位のアミノ酸置換はこれに限定されない。なお、トレオニン以外の親水性アミノ酸としては、グリシン、セリン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジンが挙げられる。superwoman1(spw1)変異体(非特許文献5を参照のこと)が、雄蕊に変異が生じ、激しい不稔を伴うことに鑑みれば、SPW1において1つのアミノ酸を置換することにより植物体に閉花受粉性を付与し得るということは、全く予想し得ないことである。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用される。また、ポリペプチドの「フラグメント」は、当該ポリペプチドの部分断片が意図される。本発明に係るポリペプチドはまた、天然供給源より単離されても、化学合成されてもよい。
本発明に係るポリペプチドは、その天然の環境から取り出されたネイティブなポリペプチドであっても、宿主細胞中で発現されかつ任意の適切な技術によって実質的に精製されている組換えのポリペプチドであってもよい。
また、本発明に係るポリペプチドは、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、His、Myc、Flagなどの当該分野において周知のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
本明細書中においてポリペプチドまたはタンパク質に関して用いられる場合、用語「変異体」は、植物体に閉花受粉性を付与する活性を有するポリペプチドが意図される。このような変異体は、1個以上のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであることが好ましく、より好ましくは、1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであり得る。特に、ポリペプチドにおける「中性」アミノ酸置換は、一般的にそのポリペプチドの活性にほとんど影響しないので、さらに好ましい。
本発明に係るポリペプチドにおいて、好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または付加を有し得る。これらは、本発明に係るポリペプチドの、植物体に閉花受粉性を付与する活性を変化させない。ポリペプチドを構成するアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではなく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在し得ることもまた周知である。また、当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができ、本明細書に記載されている手法に従えば、作製した変異体が所望の活性を有するか否かを容易に決定し得る。
このように、本実施形態に係るポリペプチドは、植物体に閉花受粉性を付与する活性を有するポリペプチドであって、クラスB MADSボックスタンパク質の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているポリペプチドまたはその変異体であることを特徴としており、一実施形態において、本実施形態に係るポリペプチドは、(A)配列番号1、6、8、10、12、14、16、18または20に示されるアミノ酸配列の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているアミノ酸配列;または、(B)上記(A)のアミノ酸配列の第45位以外の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されたアミノ酸配列、からなるポリペプチドであり得る。さらなる実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、(C)配列番号1、6もしくは8に示されるアミノ酸配列の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているアミノ酸配列;または、(D)上記(C)のアミノ酸配列の第45位以外の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されたアミノ酸配列、からなるポリペプチドであり得る。
〔1−2〕ポリヌクレオチド
本発明はまた、植物体に閉花受粉性を付与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。一実施形態において、本発明に係るポリヌクレオチドは、植物におけるクラスB MADSボックスタンパク質の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているポリペプチドまたはその変異体をコードすることを特徴としている。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「DNA配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用される。
本発明に係るポリヌクレオチドは、DNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)またはRNA(例えば、mRNA)の形態で存在し得る。DNAは、一本鎖または二本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、または、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
1つの局面において、本実施形態に係るポリヌクレオチドは、配列番号2に示される塩基配列の第348位または349位の塩基が置換されてなるポリヌクレオチドまたはその変異体であり得る。配列番号2に示される塩基配列の第348位または第349位の塩基が置換されていることにより、コードされるポリペプチドの第45位のアミノ酸は、疎水性アミノ酸から親水性アミノ酸に置換されている。好ましくは、本実施形態に係るポリヌクレオチドは、配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはその変異体であり得る。
本明細書中においてDNAまたはポリヌクレオチドに関して用いられる場合、用語「変異体」は、植物体に閉花受粉性を付与する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図され、「配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの変異体」は、配列番号5に示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、挿入、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド;あるいは、配列番号2に示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであることが意図される。
ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなり)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。適切なハイブリダイゼーション温度は、塩基配列やその塩基配列の長さによって異なり、例えば、アミノ酸6個をコードする18塩基からなるDNAフラグメントをプローブとして用いる場合、50℃以下の温度が好ましい。
本明細書中で使用される場合、「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。ポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチドによって、参照のポリヌクレオチドの少なくとも約15ヌクレオチド(nt)、そしてより好ましくは少なくとも約20nt、さらにより好ましくは少なくとも約30nt、そしてさらにより好ましくは約30ntより長いポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)が意図される。このようなポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチド)は、本明細書中においてより詳細に考察されるようなプローブ(プライマーを含む。)としても有用である。
本発明に係るポリヌクレオチドはまた、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
このように、本実施形態に係るポリヌクレオチドは、植物体に閉花受粉性を付与する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、植物におけるクラスB MADSボックスタンパク質の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているポリペプチドまたはその変異体をコードすることを特徴としている。1つの局面において、本発明に係るポリヌクレオチドは、植物体に閉花受粉性を付与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、(A)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;(B)上記(A)の塩基配列の1もしくは数個の塩基が欠失、挿入、置換もしくは付加されてなるポリヌクレオチド;または(C)上記(A)のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチド、であり得る。なお、配列番号5に示される塩基配列を例にして本発明に係るポリヌクレオチドを説明したが、本発明に係るポリヌクレオチドがこれに限定されないことを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。
〔2:本発明に係るポリペプチドの利用〕
〔2−1〕閉花受粉性が付与された植物体およびその作出方法
1つの局面において、本発明は、本発明に係るポリペプチドを発現している植物体を提供する。他の局面において、本発明は、本発明に係るポリヌクレオチドを発現している植物体を提供する。
一実施形態において、本発明に係る植物体は、spw1−cls型変異を有していない植物体にspw1−cls型変異を導入することにより作製され得る。なお、本明細書中において、クラスB MADSボックスタンパク質における第45位のアミノ酸の親水性アミノ酸への置換および該タンパク質をコードする遺伝子における該アミノ酸置換に対応する塩基置換を、必要に応じて「spw1−cls型変異」と称し、該置換によって閉花受粉性が付与された植物体を「spw1−cls型変異体」と称する。なお、クラスB MADSボックスタンパク質の第45位付近が主に疎水性アミノ酸から構成されていることに鑑みれば、第45位以外の疎水性アミノ酸を親水性アミノ酸に置換することによって得られた変異体もまたspw1−cls型変異体として本発明の範囲内に包含されるべきである。
すなわち、本実施形態に係る植物体の作製方法は、植物体において本発明に係るポリペプチドを発現させる工程を包含することを特徴としている。植物体において本発明に係るポリペプチドを発現させる工程は、植物体へspw1−cls型変異を導入する工程であることが好ましい。植物体へのspw1−cls型変異の導入工程は、
(I)クラスB MADSボックスタンパク質をコードする遺伝子に対して、該タンパク質の第45位のアミノ酸置換に対応する変異を誘導する工程;または
(II)クラスB MADSボックスタンパク質をコードする遺伝子において、該タンパク質の第45位のアミノ酸置換を誘導する変異を有する遺伝子を植物体に導入する工程
であり得る。すなわち、(I)は、本発明に係るポリヌクレオチドを植物体内において生成する工程であり、(II)は、本発明に係るポリヌクレオチドを植物体に導入する工程である。なお、(I)としては、(i)ジーンターゲティングによるspw1−cls型変異の導入、または(ii)突然変異源処理によるspw1−cls型変異の導入、が挙げられるが、これらに限定されない。(II)としては、(iii)spw1−cls型変異遺伝子の導入、または(iv)交配によるspw1−cls型変異の導入、が挙げられるが、これらに限定されない。
(i)ジーンターゲティングによるspw1−cls型変異の導入
当該分野において周知の技術(例えば、ジーンターゲティング法(Terada et al., (2002),Efficient gene targeting by homologous recombination in rice. Nat Biotechnol. 20(10):1030−4))を用いて目的のアミノ酸位またはその付近に1または数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたクラスB MADSボックスタンパク質変異体を作製することにより、閉花受粉性植物を作出することができる。
(ii)突然変異源物質での処理によるspw1−cls型変異の導入
目的の植物を突然変異源物質で処理してクラスB MADSボックス遺伝子座に変異を生じさせることにより、閉花受粉性植物を作出することができる。本発明者は、日本型イネ品種「台中65号」を化学変異源物質N−methyl−N−nitrosourea(MNU)で処理して突然変異体集団を得、該集団から開花時期に雄蕊を穎の外に抽出しない突然変異体系統を選抜し、選抜された系統から正常に稔実する系統をさらに選抜することにより、閉花受粉性イネ突然変異体superwoman1−cleistogamy(spw1−cls)を得た。さらに、マップベースクローニング法により、SUPERWOMAN1(SPW1)遺伝子の変異を確認した。なお、当業者は、当該分野において周知の突然変異原物質を必要に応じて適宜選択し得る。
(iii)spw1−cls型変異遺伝子の導入
実施例にて後述するように、spw1−cls型変異を有するゲノムDNA断片を、クラスB MADSボックス遺伝子の機能欠失型変異体(例えば、spw1−1、spw1−2など)に導入することにより、閉花受粉性植物を作出することができる。なお、当業者は、当該分野における技術常識に従って、遺伝子を首尾よく植物に導入して、その遺伝子を構成的または組織特異的に発現させることができる。
(iv)交配によるspw1−cls型変異の導入
閉花受粉性を付与したい品種を、上述したように作製したspw1−cls型の変異体と交配させ、その後代のうちspw1−cls型変異をホモに有するものを選抜することにより、閉花受粉性植物を作出することができる。
他の実施形態において、本発明に係る植物体は、spw1−cls型変異を有していない植物体においてSPW1以外のクラスB MADSボックス遺伝子の発現を抑制することにより作製され得る。具体的には、実施例にて後述するように、SPW1以外のクラスB MADSボックス遺伝子のうち、鱗被で特異的に作用するもの(例えば、OsMADS2)の発現を抑制することにより、閉花受粉性植物を作出することができる。この場合、冗長的に機能する他のクラスB MADSボックス遺伝子により、雄蕊の形成は正常に行われる。なお、当業者は、当該分野における技術常識(例えば、ノックアウト法、アンチセンス法、コサプレッション法およびRNAi法など)に従って、目的の遺伝子の発現を首尾よく抑制し得る。
このように、本明細書を読んだ当業者は、当該分野における周知技術を用いて本発明に係る植物体を容易に作出することができ、以下に詳述するオリゴヌクレオチドおよび抗体を用いれば、本発明に係る植物体を容易に選抜することができる。なお、目的の植物体(すなわち、spw1−cls型変異を有する変異体)をスクリーニングするためには、TILLING法(特異的プローブおよびミスマッチ部位特異的エンドヌクレアーゼ処理によって、目的の遺伝子座における変異を検出する方法)などによっても検出することができ、得られた変異体におけるSPW1遺伝子の塩基配列を解析することにより、目的のアミノ酸位またはその付近にアミノ酸置換が生じている個体や、1または数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加された個体を見出すことができる。
〔2−2〕オリゴヌクレオチド(プローブまたはプライマー)およびその利用
本発明は、本発明に係るポリヌクレオチドのフラグメントからなるオリゴヌクレオチドを提供する。本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個ないし数十個結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。オリゴヌクレオチドは、短いものはジヌクレオチド(二量体)、トリヌクレオチド(三量体)といわれ、長いものは30マーまたは100マーというように重合しているヌクレオチドの数で表される。オリゴヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチドのフラグメントとして生成されても、化学合成されてもよい。
本発明に係るオリゴヌクレオチドは、閉花受粉性が付与された植物体を選抜するに有用である。すなわち、本発明に係るオリゴヌクレオチドを用いれば、spw1−cls型変異を容易に検出し得る。よって、本発明を用いれば、閉花受粉性を有する植物体を容易にスクリーニングすることができる。よって、本発明に係るオリゴヌクレオチドを目的の植物体由来のゲノムDNAなどとハイブリダイズさせる工程を包含するスクリーニング方法、および、本発明に係るオリゴヌクレオチドを備えているスクリーニングキットもまた、閉花受粉性を有する植物体をスクリーニングするための本発明の範囲に含まれることが容易に理解されるべきである。
すなわち、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、本発明に係るポリヌクレオチドのフラグメントまたはその相補配列を含むことを特徴としており、配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。また、本発明に係るオリゴヌクレオチドセットは、上記オリゴヌクレオチドを少なくとも1つ含んでいることを特徴としており、配列番号22に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、および配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。
さらに、本発明に係るスクリーニング方法は、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングする方法であって、本発明に係るオリゴヌクレオチドを目的の植物体由来のcDNAとハイブリダイズさせる工程を包含することを特徴としており、配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを目的の植物体由来のcDNAとハイブリダイズさせる工程を包含してもよく、この場合、配列番号22に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを目的の植物体由来のcDNAとハイブリダイズさせる工程をさらに包含することが好ましい。
なおさらに、本発明に係るスクリーニングキットは、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングするキットであって、本発明に係るオリゴヌクレオチドを備えていることを特徴としており、配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを備えていてもよく、この場合、配列番号22に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをさらに備えていることが好ましい。
当該分野において周知の植物品種識別法としては、RFLP法、RAPD法、AFLP法、CAPS法、SSR法、ISSR法、SNP法などが挙げられ、本明細書を読んだ当業者は、採用する手法に応じて適切なオリゴヌクレオチドを適宜設計し得る。
標的とするクラスB MADSボックスタンパク質の配列情報がすでに知られていることや、該タンパク質の第45位のアミノ酸置換が生じているか否かを検出し得ればよいことに鑑みれば、CAPS法(特にdCAPS法)を用いることが好ましい。CAPS法は、PCR産物を特定の制限酵素により切断して切断断片の長さの違いに応じて塩基置換(多型)を検出する方法であり、好ましい制限酵素部位がない場合にプライマー(オリゴヌクレオチド)を工夫して好ましい制限酵素部位を新たに設けることも可能である(dCAPS法)。
例えば、第1のオリゴヌクレオチド(5’−TGCAGAACTCGTGGTACTTGCCGGTGGAGGAGAACACCATG−3’(配列番号23))は、増幅するテンプレートとなるSPW1 cDNA(配列番号2)またはSPW1ゲノムDNA(配列番号3)の相補配列(5’−TGCAGAACTCGTGGTACTTGCCGGTGGAGGAGAACATAATG−3’)に一部塩基置換を導入している。第1のオリゴヌクレオチドとプライマー対を形成してspw1−cls型変異部位を含むフラグメントを増幅し得るように、第2のオリゴヌクレオチド(例えば、5’−CAGGGAGCTCACCGTGCTCTGCGACGCCCAGGTCGCCA−3’(配列番号22))を設計する。第1および第2のオリゴヌクレオチドをプライマー対として用いたPCRによる増幅フラグメントをNcoI処理した場合に、spw1−cls型変異がある場合は、増幅フラグメントは生成された部位(CCATGG)で切断されるが、変異がない(野生型)の場合は、増幅フラグメントは生成された部位(TCATGG)では切断されない。
なお、配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを例としてdCAMPSマーカーである第1のオリゴヌクレオチドを説明したが、本発明に係るオリゴヌクレオチドはこれに限定されない。また、配列番号22に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを例としてプライマー対を形成する第2のオリゴヌクレオチドを説明したが、本発明に係るオリゴヌクレオチドはこれにも限定されない。
本発明に係る同一出願人は、新たな1塩基多型判別技術を開発している(特開2004−248635公報(平成16年9月9日公開)を参照のこと)。一実施形態において、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、上記技術に適用するためのオリゴヌクレオチドであり得る。すなわち、本実施形態に係るオリゴヌクレオチドは、1塩基多型の遺伝子型を判別するためのPCRプライマーであって、該プライマーの3’末端から1番目の塩基は判別すべき該1塩基多型の位置に対応し、該プライマーの3’末端から3番目の塩基は該プライマーがアニールする鋳型(テンプレート)配列と相補的な塩基から置換されていることを特徴としている。上記置換はGからT、AからCへ、TからG、またはCからAの置換であることが好ましい。本実施形態に係るオリゴヌクレオチドのTm値は50℃以上であり、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは65℃以上であり、最も好ましくは70℃以上である。本実施形態に係るオリゴヌクレオチドを用いれば、目的の増幅産物を得ることができるか否かに応じて標的遺伝子中に1塩基多型(1塩基置換)が存在するか否かを知ることができる。
本明細書において使用される場合、用語「プライマー」は、適切な条件下での鋳型指向性DNA合成の開始点として作用する一本鎖オリゴヌクレオチドが意図される。プライマーとしての好ましい長さは、意図される用途に応じて適宜変更され得るが、一般的には、15〜50の間の任意の数の塩基からなるヌクレオチドであり得、好ましくは15〜30ヌクレオチドである。プライマーは、鋳型配列に完全に一致する必要はないが、鋳型とハイブリダイズするに十分相補的であるべきである。用語「プライマー対」は、増幅される核酸配列の5’末端とハイブリダイズする5’(上流)プライマーおよび増幅されるその配列の3’末端の相補物とハイブリダイズする3’(下流)プライマーを含む一組のプライマーセットが意図される。
なお、本明細書において、核酸増幅反応として「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)」を用いて例示的に説明しているが、本実施形態に係るオリゴヌクレオチドは、PCR以外の核酸増幅反応にもまた適用可能である。
すなわち、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、本発明に係るポリヌクレオチドのフラグメントまたはその相補配列からなることを特徴としており、当該分野において周知の品種識別技術に適用可能なものである。よって、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、spw1−cls型変異を検出するために適用する各技術に応じて適宜設計されるものであり、特定のオリゴヌクレオチドに限定されないということを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。
〔2−3〕抗体およびその利用
本発明は、本発明に係るポリペプチドと特異的に結合する抗体を提供する。本発明に係る抗体は、本発明に係るポリペプチドと特異的に結合し得るものであれば限定されず、該ポリペプチドに対するポリクローナル抗体等でもよいが、該ポリペプチドに対するモノクローナル抗体であることが好ましい。モノクローナル抗体は、性質が均一で供給しやすい、ハイブリドーマとして半永久的に保存ができるなどの利点を有する。
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgMおよびこれらのFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fcフラグメント)を意味し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体および抗イディオタイプ抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書中で使用される場合、用語「本発明に係るポリペプチドと特異的に結合する」は、クラスB MADSボックスタンパク質の第45位のアミノ酸が親水性アミノ酸に置換されているポリペプチドと特異的に結合するが、第45位のアミノ酸が置換されていないクラスB MADSボックスタンパク質とは結合しないことが意図される。よって、本発明を用いれば、閉花受粉性を有する植物体を容易にスクリーニングすることができる。よって、本発明に係る抗体を目的の植物体由来の組織抽出物とインキュベートする工程を包含するスクリーニング方法、および、本発明に係る抗体を備えているスクリーニングキットもまた、閉花受粉性を有する植物体をスクリーニングするための本発明の範囲に含まれることが容易に理解されるべきである。
本発明に係る抗体は、本発明に係るポリペプチドと特異的に結合することを特徴としている。また、本発明に係るスクリーニング方法は、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングする方法であって、上記の抗体を目的の植物体由来の組織抽出物とインキュベートする工程を包含することを特徴としている。さらに、本発明に係るスクリーニングキットは、閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングするキットであって、上記の抗体を備えていることを特徴としている。
本明細書中で使用される場合、用語「本発明に係るポリペプチドと特異的に結合する抗体」は、該ポリペプチドと特異的に結合し得る完全な抗体分子および抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)フラグメント)を含むことが意図される。FabおよびF(ab’)フラグメントは完全な抗体のFc部分を欠いており、循環によってさらに迅速に除去され、そして完全な抗体の非特異的組織結合をほとんど有し得ない(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316−325(1983)(本明細書中に参考として援用される))。従って、これらのフラグメントが好ましい。
「抗体」は、種々の公知の方法(例えば、HarLowら、「Antibodies:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1988)」、岩崎ら、「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」)に従えば作製され得る。
モノクローナル抗体は、当該分野において周知の方法(例えば、ハイブリドーマ法(Kohler,G.およびMilstein,C.,Nature 256,495−497(1975))、トリオーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,Immunology Today 4,72(1983))およびEBV−ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss,Inc.,77−96(1985))などを参照のこと)を用いれば作製され得る。
ペプチド抗体もまた、当該分野に周知の方法(例えば、Chow,M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:910−914;およびBittle,F.J.ら、J.Gen.Virol.66:2347−2354(1985)を参照のこと)によって作製され得る。
FabおよびF(ab’)ならびに本発明に係る抗体の他のフラグメントが、本明細書中で開示される方法に従って使用され得ることは、当業者には明白である。このようなフラグメントは、代表的には、パパイン(Fabフラグメントを生じる)またはペプシン(F(ab’)フラグメントを生じる)のような酵素を使用するタンパク質分解による切断によって産生され得る。あるいは、本発明に係るポリペプチド結合フラグメントは、組換えDNA技術の適用または化学合成によって産生され得る。
このように、本実施形態に係る抗体は、本発明に係るポリペプチドと特異的に結合するフラグメント(例えば、FabフラグメントおよびF(ab’)フラグメント)を備えていればよく、異なる抗体分子のFcフラグメントとからなる免疫グロブリンも本発明に含まれることに留意すべきである。
つまり、本発明の目的は、本発明に係るポリペプチドと特異的に結合する抗体およびその利用を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の免疫グロブリンの種類(IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM)、ペプチド抗原作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得される抗体も本発明の範囲に属することに留意しなければならない。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
〔1:手法〕
〔1−1.閉花受粉性を有する変異体の同定〕
閉花受粉性を有する変異体を見出すために、N−methyl−N−nitrosourea(MNU)で変異誘発したコメ(Oryza sativa L.subsp.japonica cv.Taichung 65)のM2集団をスクリーニングした。上記M2集団を通常の条件下で生育したところ、野生型のコメは開花期に開花し15分後に閉じたが、いくつかの葯が、穎が閉じた後もなお外側に残存した。そこで、先ず、開花期に穎の外に葯が観察されない植物を選んだ。続いて、閉花受粉性が単一の劣性形質として示される、受精能を有する系統を見出した。異なる遺伝的背景におけるこの変異体の閉花受粉性の安定性を確認するために、この変異体をcv.Kasalath(subsp.indica)と交配させ、F2集団における閉花受粉性の分離を試みた。
〔1−2.パラフィン切片〕
野生型およびspw1−clsの穎花を、FAA(ホルムアルデヒド:氷酢酸:エタノール=1:1:18)中にて4℃で24時間固定し、次いで、濃度勾配を有する一連のエタノール中にて脱水した。100%エタノール中にて脱水したサンプルをキシレンに置換し、Paraplast plus(Oxford Labware,St.Louis,MO)に包埋した。8μm厚でのミクロトーム切片をDelafield’s hematoxylineで染色し、光学顕微鏡で観察した。
〔1−3.走査型電子顕微鏡(SEM)〕
新鮮なサンプルを走査型電子顕微鏡(VE−8000,Keyence,Osaka,Japan)で直接観察した。
〔1−4.インサイチュハイブリダイゼーション〕
パラフィン切片を、8μm厚のミクロトーム切片をAPSコートしたスライドガラス(Matsunami Glasses,Osaka,Japan)上にアプライした以外については上記したように調製した。SPW1、OsMADS2およびOsMADS4の全長cDNAまたは部分長cDNAより、ジゴキシゲニン標識したアンチセンスプローブおよびセンスプローブを調製した。インサイチュハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションシグナルの免疫学的検出を、Kouchi,H. and Hata,S. Mol.Gen.Genet.238,106−119(1993)に記載の方法に従って行った。
〔1−5.ジーンマッピング〕
マップベースクローニングのために、ホモ接合の閉花受粉性植物とcv.Kasalath(subsp.indica)とのF2集団を使用した。CAPSマーカーを用いて、原因遺伝子を、第6染色体の長腕上にマッピングした。
〔1−6.植物の形質転換〕
ゲノムDNAフラグメントまたはcDNA(変異ありまたはなし)の全てを、PfuUltra DNA polymerase(Stratagene)を使用するPCR反応によって増幅し、その配列を確認した。DNAフラグメントを、pZH2B(M.Kuroda氏よりご供与戴いた)にクローニングした。RNAi実験のために、312bp(SPW1)、300bp(OsMADS2)および58bp(OsMADS4)の遺伝子特異的DNAフラグメントを、コメユビキチン遺伝子プロモータおよびイネアスパラギン酸プロテアーゼ遺伝子の第3イントロンを有するpZH2Bi(M.Kuroda氏よりご供与戴いた)にhead−to−headの方向でクローニングした。Oikawaら、Plant Mol.Biol.55,687−700(2004)に記載の方法に従って、ベクターを、アグロバクテリウムを介した形質転換によって、ハイグロマイシンによる選択条件下でイネ胚盤由来のカルスに導入した。アリル特異的dCAPSマーカー(配列番号22および23)を用いて、spw1−clsまたはspw1−1のホモ接合カルスを選択した。
〔1−7.酵母two−hybridアッセイ〕
SPW1、OsMADS2およびOsMADS4の野生型または変異型(I45TまたはV45T)のMドメイン、IドメインおよびKドメインに対応するコード配列を、PfuUltra DNA polymerase(Stratagene)を使用して増幅し、配列を確認し、two−hybridベクターpAS2−1およびpACT2にサブクローニングした。酵母形質転換およびβ−ガラクトシダーゼ液体アッセイの全てを、酵母細胞を20℃でインキュベートした以外は、Wang,K.L.ら、Nature 428,945−950(2004)に記載の方法に従って行った。
〔2:閉花受粉性を有するspw1−clsの表現型〕
図1aに、野生型形質を示す分離系統(左)およびspw1−cls(右)の外観を示し、閉花性を比較した。図1bに、穎の一部を切除したspw1−clsの米粒の発育過程を示した。矢印は未成熟な種を示し、矢頭は雄蕊を示す。これより、spw1−clsにおいては、雄蕊が穎の中に残っていることがわかる。
図1cおよびdに、野生型およびspw1−cls変異体の内部花器官構造を示した。野生型では鱗被(矢印)が伸長していないが(図1c)、spw1−clsでは鱗被(矢印)が細長く伸長しているものの他の花器官が正常である(図1d)。さらに、野生型(左)とspw1−cls型(右)との鱗被の形態の比較を図1eに示す。このように、閉花受粉性イネspw1−clsにおいては、鱗被が形態変化して伸長していたが、雄蕊などの他の器官では変化を生じていなかった。
野生型(左)およびspw1−cls(右)の穎花の横断切片を図1fに示す。矢印は鱗被を示す。野生型では鱗被が肥大し、野生型のイネの鱗被では、多くの維管束が発達しているのに対して、spw1−cls変異体では鱗被が薄く、spw1−clsの鱗被では、維管束は未発達であり、扁平な構造を有していた。また、図1gおよびhに、野生型およびspw1−cls変異体の、鱗被(lo)および内穎の周縁部(ma)の走査型電子顕微鏡像を示した。野生型のイネの鱗被表面は丸く膨潤した細胞によって構成されていたが(図1g)、spw1−clsにおいては内穎の周縁部に観察される細長く平坦な細胞によって構成されていた(図1h)。これらの結果より、spw1−clsにおいては、本来鱗被として発達すべき器官が穎と鱗被との中間に相当する器官に形態変化し、その結果、細胞が膨潤する能力を失い、開花を生じることができなくなったと考えられる。
図1iは、インド型イネ品種Kasalathとspw1−cls変異体とを交配して得られた、野生型(開放花形成)を示すF2個体であり、右はspw1−cls型(閉花受粉性)を示すF2個体を示す図である。spw1−clsとインド型イネ品種「Kasalath」との交配によって得られたF2集団においても25%の閉花受粉性個体が得られた。閉花受粉性の形質は、遺伝的背景とは独立して安定して発現している、すなわち、遺伝的背景が変更されても閉花受粉性が安定的に発現されることがわかった。
外来遺伝子として35Sプロモータ::GFP遺伝子を導入したspw1−cls変異体の受精後の花を図1jに示す。図では、内部を観察し得るように穎の一部を切除している。GFP遺伝子の高発現による緑色蛍光および閉花受粉性が観察され、雄蕊を内部に残存させたまま子房が発達していることがわかる。このことより、遺伝子組換えの母本として利用した場合においても、安定的に閉花受粉性を発現することが確認された。
「閉穎大黒」として知られているd7突然変異体は、これまでに報告されている閉花受粉性イネである。d7変異体では、正常な鱗被を有しているものの、外花穎および内花穎の近位部が強固に融合しており、その結果、開花期において開花しない。しかし、d7変異体は原因遺伝子の多面的発現によって他の生育障害(例えば、矮性および短粒など)を伴うと推定されており、現実的には利用可能ではない。
そこで閉花受粉性を有する変異体spw1−clsにおける草型および穂の形態を野生型と比較した(図2)。野生型形質を示す分離個体の草型を図2aに示し、spw1−clsの草型を図2bに示す。また、図2cは、穂の形態を比較した図であり、左が野生型を示し、右がspw1−clsを示す。図2dは、野生型(左)とspw1−cls変異体(右)との間での米粒の外観の比較を示す図である。spw1−clsは閉花受粉性を有していることを除けば野生型と同様の外観を有していることがわかる。しかし、spw1−clsは、野生型イネと同等の種子稔実率を有し、穂は正常に抽出し、他の形質(草型、出穂日など)についても野生型のイネと優位な差はなかった(表1)。
以上より、clsは鱗被の特性に特異的に影響を与えると考えられ、spw1−cls変異体は実用的な利用に適しているといえる。
〔3:spw1−clsにおける閉花受粉性の作用機序〕
SPW1遺伝子の変異により閉花受粉性がもたらされる作用機序を知るために、SPW1遺伝子に関する形質転換植物の花の形態を解析した(図3)。図3は、SPW1遺伝子の機能欠失型突然変異体spw1−1の花器官構造(図3a)、RNAi法によりSPW1遺伝子の発現を強く抑制した系統の花器官構造(図3c)、RNAi法によりSPW1遺伝子の発現を弱く抑制した系統の花器官構造(図3d)を示す。
まず、RNAi法によってSPW1遺伝子の発現量を低下させると、SPW1の機能欠失型突然変異アリルであるspw1−1(図3a)およびspw1−2(示さず)、鱗被の伸長および雄蕊の雌蕊化を示すもの(図3c)、ならびにspw1−clsと同様に鱗被の伸長だけを示して雄蕊の外観は正常であるもの(図3d)が観察された。SPW1遺伝子の発現抑制が強い場合は、機能欠失型突然変異体spw1−1と同様に、鱗被の伸長および雄蕊の雌蕊化が観察された。SPW1遺伝子の発現抑制が弱い場合は、spw1−cls変異体と同様の鱗被の伸長のみが観察された。しかし、これらの系統は、花粉に変異を生じており、完全に不稔であった。
図3eは、機能欠失型変異株spw1−1に対する変異型SPW1遺伝子による機能相補を示す図である。I45T変異を有する変異型SPW1遺伝子(gSPW1I45T)をspw1−1に導入すると、伸長した鱗被および正常な雄蕊を有するspw1−cls型の花となることを示す。この結果より、SPW1遺伝子の働きを適度に低下させることによってspw1−clsと類似の形態変化を誘発することができること、および単純にSPW1遺伝子の発現量を低下させただけでは花粉稔性および種子稔性を確保することが困難であることがわかった。
本発明では、マップベースクローニング法により、閉花受粉性がSUPERWOMAN1(SPW1)遺伝子の変異によって引き起こされたものであることを明らかにした。SPW1は、MADSボックスタンパク質転写活性化因子のクラスBに分類されるが、クラスB MADSボックスタンパク質は、さらに、PISTILLATA(PI)サブファミリーとAPETALLA3(AP3)サブファミリーとに分類される。さらに、上記サブファミリーに属するタンパク質がヘテロ二量体を形成してCArGボックスと称される特定の配列を有するDNAに結合し、遺伝子の転写を活性化する。シロイヌナズナなどで提唱されている花の形態形成の「ABCモデル」においては、クラスB MADSボックスタンパク質は、双子葉植物では花弁および雄蕊の形態形成に必要であり、単子葉植物では鱗被および雄蕊の形態形成に必要であることが知られている。SPW1は、イネにおける唯一のAP3型クラスB MADSボックスタンパク質であり、PI型タンパク質であるOsMADS2およびOsMADS4とヘテロ二量体を形成し、鱗被および雄蕊の形態形成を制御していると考えられている。図3bは、SPW1遺伝子の構造を示す図である。ボックス部分はエキソン、細線部分はイントロンを示し、ATGは翻訳開始コドン、TGAは翻訳終止コドンを表す。spw1−1およびspw1−2はいずれもスプライシング異常により機能欠失型変異(superwoman変異)をもたらし、鱗被が穎状に変換し、雄蕊が雌蕊に変換する。spw1−cls変異体では、第45位のアミノ酸(イソロイシン(I))がトレオニン(T)に置換されている。
図3fは、クラスB MADSボックスタンパク質(シロイヌナズナ(PI、AP3)およびイネ(SPW1、OsMADS2、OsMADS4))のMADSドメインにおけるアミノ酸配列の比較を示す図である。図中、反転表記は、5種中3種以上のタンパク質においてアミノ酸が保存されていることを示し、網掛け部分は、類似の性質を有するアミノ酸が保存されていることを示す。野生型のクラスB MADSボックスタンパク質において第45位のアミノ酸(矢印)はすべて疎水性アミノ酸(ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I))であり、高度に保存されているが、spw1−clsでは親水性アミノ酸であるトレオニン(T)に変異している。このことにより、タンパク質の構造が微妙に変化していることが示唆される。なお、クラスB MADSボックスタンパク質の第45位付近は主に疎水性アミノ酸から構成されていることに鑑みれば、第45位以外の疎水性アミノ酸を親水性アミノ酸に置換することによってspw1−cls型の変異体を得ることもまた、本発明の範囲内に包含されるべきである。
次いで、spw1−cls変異が、MADSボックスドメイン(DNA結合性タンパク質ドメイン)におけるアミノ酸置換(第45位のイソロイシンのトレオニンへの変異(I45T))によるものであることを確認した(図4)。図4aは、spw1−cls変異体に対する野生型SPW1遺伝子による機能相補を示す図である。spw1−cls変異体に野生型SPW1遺伝子(gSPW1wt)を導入することにより野生型の花(鱗被(矢印)が伸長しない)になった。一方、spw1−cls型変異株に対して変異型SPW1遺伝子(gSPW1I45T)を導入しても、鱗被は伸長したままであり、正常な雄蕊を有するspw1−cls型の花のままであった(図4b)。これらのことより、I45T変異がspw1−cls変異の原因であることがわかった。この変異を利用して作製したdCAPSマーカー(配列番号22および23)は、幼苗において閉花受粉性を判別し得る。このDNAマーカーを用いれば、交配により閉花受粉性を導入した栽培品種を首尾よく選抜し、効率的に育成し得る。
イネなどの多くのイネ科植物においては、鱗被の膨潤によって開花が生じると考えられているので、本発明に従えば、クラスB MADSボックス遺伝子に同様の突然変異を付与してヘテロ二量体形成能を適切に低下させることによって、多くのイネ科植物において閉花受粉性作物を作出または選抜し得る。
〔4:クラスB MADSボックスタンパク質の相互作用〕
上述したように、閉花受粉性の原因遺伝子であることが同定されたSPW1は、高等植物において広く花弁(鱗被)および雄蕊の形態形成を制御することが知られている「クラスB MADSボックス遺伝子」の1つである。これらの遺伝子の産物であるクラスB MADSボックスタンパク質は、AP3型およびPI型の2種類のサブクラスに分類されAP3型サブクラスのタンパク質とPI型サブクラスのタンパク質とが形成したヘテロ二量体がDNAに結合し、形態形成に必要な遺伝子群の転写を活性化させることが知られている。SPW1は、イネにおける唯一のAP3型タンパク質であり、PI型タンパク質であるOsMADS2およびOsMADS4とヘテロ二量体を形成すると考えられている。そこで、spw1−cls変異によって生じるI45T型のSPW1タンパク質(SPW1I45T)において、2つのPI型タンパク質とのヘテロ二量体形成に変化が生じているか否かを、酵母two−hybrid法を用いて解析した。
図5aは、酵母two−hybrid法による、野生型またはI45T変異型のSPW1タンパク質の、OsMADS2タンパク質またはOsMADS4タンパク質に対するタンパク質−タンパク質相互作用を解析した結果を示す図である。レポーター遺伝子(LacZ遺伝子)の発現強度を指標にして、野生型SPW1タンパク質(SPW1(wt):白カラム)および変異型SPW1タンパク質(SPW1(I45T):黒カラム)と、OsMADS2の野生型タンパク質もしくはV45T変異型タンパク質またはOsMADS4の野生型タンパク質もしくはV45T変異型タンパク質との間の相互作用を測定した。その結果、I45T型のSPW1タンパク質(SPW1I45T)においてヘテロ二量体形成能が低下していることがわかった。図5aでは、2種類のタンパク質が強く結合するほど高い値を示す。野生型SPW1wtは、野生型のOsMADS2およびOsMADS4と結合するが、変異型SPW1I45TはOsMADS4とほとんど結合せず、OsMADS2との結合は数分の一に減弱することがわかる。また、OsMADS2およびOsMADS4のV45T変異体を作製してSPW1wtとの結合を確認した。その結果、SPW1wtとの結合は、OsMADS2V45TではOsMADS2wtの約半分に、OsMADS4V45Tではほとんど結合しないことがわかった。さらに、SPW1I45TとOsMADS2V45TまたはOsMADS4V45Tとの間では全く結合が生じないことがわかった。
図5bおよびcは、インサイチュハイブリダイゼーション法によるOsMADS2遺伝子およびOsMADS4遺伝子の発現部位を示した図である。インサイチュハイブリダイゼーション法による解析の結果、OsMADS2は鱗被および雄蕊の原基にて発現し(図5b)、OsMADS4は雄蕊の原基のみにて発現する(図5c)ことがわかった。これらの結果より、spw1−cls型変異株について、鱗被の原基ではSPW1I45TとOsMADS2との結合が弱いために鱗被形成が阻害され、雄蕊の原基ではSPW1I45TとOsMADS4との結合が全く生じずSPW1I45TとOsMADS2との結合が弱いものの、雄蕊形成には十分な活性を保っていることが示唆された。
OsMADS4は鱗被の原基には発現していないので、SPW1とOsMADS2との間の相互作用は鱗被形成に重要であると考えられる。このことは、雄蕊を形成するにはSPW1I45TとOsMADS2とのヘテロ二量体化レベルは低くても十分であるが、完全な鱗被の特性を確立するには不十分であるということによって支持される。また、このような考えを確認するために、RNAi法によりOsMADS2遺伝子およびOsMADS4遺伝子の発現を抑制した。図5dおよびeに、RNAi法によりOsMADS2遺伝子およびOsMADS4遺伝子の発現を抑制した系統の花器官構造を示す。
OsMADS2遺伝子の発現を抑制した植物においては、OsMADS4 mRNAが第2whorlには存在しないが第3whorlには存在するので、正常な雄蕊を有しつつ、伸張した穎様の鱗被を示した(図5d)。しかし、OsMADS4遺伝子の発現を抑制した植物においては、OsMADS2が第2whorlおよび第3whorlの両方に存在するので、表現型を示さなかった(図5e)。
以上の結果より、spw1−clsにおいては、クラスB MADSボックスタンパク質であるSPW1タンパク質のOsMADS2およびOsMADSとのヘテロ二量体形成能が低下し、その結果、クラスB活性が低下し、よって鱗被のみが形態変化を生じ、雄蕊には形態変化を生じなかったと考えられる。
開花性の栽培品種は、自ら花粉を飛散させるとともに他品種の花粉を受容しやすいので、交雑および/または遺伝子拡散が懸念される。しかし、雄蕊の機能が保持されていないと自家受粉し得ない。本発明は、切望されていた閉花受粉性を有する栽培品種を提供し、育種の効率化に大きく貢献し得る。
従来、閉花性であるか否かを判定するには、実際に植物個体の開花状態を観察し、開花の際に葯が頴から出ているか否かを目で見て調査しなければならなかった。しかも、閉花性でありながら雄蕊の機能を保持しているものを選別することは困難であった。本発明は、閉花受粉性を有する植物を首尾よく選別し得る遺伝マーカーを提供し、植物の育種の大幅な効率化に寄与する。
このように、本発明は、広く農業全般に利用可能であり、食品産業においても有効利用され得る。また、本発明は、生物分野の基礎研究にも利用可能である。
図1は、閉花受粉性突然変異体spw1−clsの表現型を示す図である。 図2は、閉花受粉性突然変異体spw1−clsと野生型との間で、草型、穂および米粒を比較した図である。 図3は、閉花受粉性突然変異体spw1−clsにおける花器官構造の変化、およびspw1−cls変異の原因遺伝子を示す図である。 図4は、閉花受粉性突然変異体spw1−clsに対する野生型SPW1遺伝子による機能相補を示す図である。 図5は、閉花受粉性に関するOsMADS2およびOsMADS4の影響を調べた結果を示す図である。

Claims (10)

  1. 植物体に閉花受粉性を付与するポリペプチドであって、
    (A)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;または
    (B)上記(A)のアミノ酸配列の第45位以外の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換、もしくは付加されたポリペプチド。
  2. 請求項1に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
  3. 請求項1に記載のポリペプチドを発現していることを特徴とする植物体。
  4. 請求項に記載のポリヌクレオチドを発現していることを特徴とする植物体。
  5. 閉花受粉性が付与された植物体を作製する方法であって、
    (I)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子に対して、該タンパク質の第45位のアミノ酸をトレオニンに置換させる変異を誘導する工程;または
    (II)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子を植物体に導入する工
    包含することを特徴とする方法。
  6. 請求項に記載のポリヌクレオチドを備えていることを特徴とする閉花受粉性が付与された植物体を作製するためのキット。
  7. 配列番号23に示される塩基配列からなることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
  8. 配列番号22に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、および配列番号23に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含んでいることを特徴とするオリゴヌクレオチドセット。
  9. 請求項に記載のオリゴヌクレオチドまたは請求項8に記載のオリゴヌクレオチドセットを目的の植物体由来のcDNAとハイブリダイズさせる工程を包含することを特徴とする閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングする方法。
  10. 請求項に記載のオリゴヌクレオチドまたは請求項8に記載のオリゴヌクレオチドセットを備えていることを特徴とする閉花受粉性が付与された植物体をスクリーニングするためのキット。
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