以下、本発明の燃料噴射弁を、ガソリンエンジンに燃料を噴射供給するものに適用して、具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
図1は、実施形態の燃料噴射弁を適用する燃料噴射装置の構成を表す部分的断面図である。図2は、図1中の吸引部材と第2可動コアとからなるユニットを表す図であって、図2(a)はユニットの吸引部材等の構成部材の組付け分解図、図2(b)は、ユニットの構成を示す断面図である。図3は、図1中の燃料噴射弁の一実施例の組付け過程を示す図であって、弁ボディをケーシングに組付ける工程を示す工程図である。図4は、図1中の燃料噴射弁の一実施例の組付け過程を示す図であって、ケーシング内にニードルとユニットとを挿入組付けする工程を示す工程図である。図5は、図1中の燃料噴射弁の一実施例の組付け過程を示す図であって、ユニット内の第2可動コアと、ニードルに協働する第1可動コアとの間のエアギャップが所定になるように、ユニットをケーシング内に圧入する工程を示す工程図である。図6は、図1中の燃料噴射弁の一実施例の組付け過程を示す図であって、第2可動コアと第1可動コアとの間のエアギャップが所定になった後に、ユニットとケーシングを溶接する工程を示す工程図である。図7は、図1中の燃料噴射弁の一実施例の組付け過程を示す図であって、ケーシングに駆動コイルを組付ける工程を示す工程図である。図8は、図1中の燃料噴射弁の一実施例の組付け過程を示す図であって、ケーシングの燃料導入部側に、第1可動コアに付勢する付勢部材と付勢力調整部材を挿入組付ける工程を示す工程図である。図9は、図1中の燃料噴射弁の一実施例の組付け過程を示す図であって、第1可動コアへの付勢部材の付勢力が所定になるように、付勢力調整部材をケーシングの燃料導入部側に圧入する工程を示す工程図である。図10は、図1中の燃料噴射弁の一実施例の組付け過程を示す図であって、燃料噴射弁の組付け完成状態を示す工程図である。
燃料噴射装置1は、内燃機関(エンジン)、特にガソリンエンジンに用いられる。燃料噴射装置1は、図1に示すように、エンジンの燃焼室(図示せず)に燃料噴射する燃料噴射弁2と、燃料噴射弁2の噴射動作等を制御する制御手段(以下、ECUと呼ぶ)100とを含んで構成されている。
なお詳しくは、燃料噴射弁2は、例えば多気筒(例えば4気筒)ガソリンエンジン(以下、エンジンと呼ぶ)の吸気ポート等の吸気管または各気筒に取付けられて、気筒内の燃焼室に燃料を噴射供給する。なお、本実施形態では、燃料噴射弁2は各気筒に設けられているものとする。燃料噴射弁2には、図示しない燃料ポンプにより加圧された燃料が、燃料分配管(図示せず)を介して供給される。燃料分配管には、一般に、図示しない燃料タンク内の燃料を燃料ポンプ(図示せず)により吸い上げ吐出し、その吐出された燃料が導かれている。なお、吐出される燃料は、図示しないプレーシャレギュレータ等の調圧装置によって所定の圧力に調圧されて、燃料分配管へ送られる。なお、エンジンが直噴エンジンの場合には、燃焼室へ供給する燃料の圧力が約2Mpa以上とするため、燃料ポンプによって燃料タンクから吸上げられた所定圧(例えば0.2Mpa)の燃料を、図示しない高圧ポンプで加圧し、この加圧された高圧の燃料(例えば、2〜13Mpaの範囲の所定の燃料)が、燃料分配管を介して燃料噴射弁2に供給されている。燃料ポンプから吐出される燃料、高圧ポンプから燃料分配管へ供給された燃料は、図示しないプレーシャレギュレータ等の調圧装置によって所定の圧力に調圧されている。なお、以下、本実施例で説明するエンジンは、ガソリン直噴エンジンとする。
燃料噴射弁2は、略円筒形状であり、一端から燃料を受け、内部の燃料通路を経由して他端から燃料を噴射する。燃料噴射弁2は、燃料の噴射を遮断および許容する弁部Bと、弁部Bを駆動する電磁駆動部Sとを備えており、燃料導入部48側から内部の燃料通路内に流入した燃料を弁部Bからエンジンの気筒に噴射供給する。
弁部Bは、図1に示すように、弁ボディとしてのノズルボディ12と、弁部材としてのニードル30と、弁ハウジング16とを含んで構成されている。ノズルボディ12は弁ハウジング16の燃料噴射側端部の内壁に溶接により固定されている。ノズルボディ12は燃料流れ方向の噴孔21側に向けて縮径する内周面としての円錐面13を有している。円錐面13には、ニードル30が離座および着座可能である。
なお、ここで、円錐面13は、ニードル30が離座および着座可能な弁座14を構成する。具体的には、弁座14には、ニードル30の当接部31が離座および着座する。ニードル30は略軸状に形成され、ノズルボディ12内を軸方向に往復移動可能である。なお、ここで、弁座14と当接部31は、弁部が燃料の噴射を遮断するための油密機能の働きをするシート部を構成している。また、ノズルボディ12と弁ハウジング16は、弁座14を有し、ニードル30が離座および着座する弁ボディを構成している。ノズルボディ12と弁ハウジング16は、別部材を溶接等により固定し、一体的に形成されるものに限らず、一体形成されているものであってもよい。なお、ノズルボディ12と弁ハウジング16を別部材で構成し、一体的に形成されるものは、例えばノズルボディ12を特定の材料で、弁ハウジング16をその特定材料以外の材料で形成したい場合に好ましい。これにより、燃料噴射毎に繰り返しニードル30が離座および着座する弁座14を有する弁ボディ12には耐磨耗性に比較的高い特定材料を用い、弁ハウジング16には特定材料以外の比較的安価な材料を用いることができる。
弁座の中央側には、図1に示すように、弁座14の燃料流れの下流側に向って、内部燃料通路と連通可能な噴孔21が配置されている。この噴孔21は、要求される燃料の噴霧の形状、方向、数などに応じて、その大きさ、噴孔軸線の方向、噴孔配列等が決定される。また、噴孔の開口面積は、開弁時の流量を規定する。なお、燃料噴射弁2の燃料噴射量は、開弁している噴孔の開口面積と、ニードル30のリフト量と、開弁期間とによって計量されている。ニードル30が弁座14に着座すると噴孔21からの燃料噴射が遮断され、ニードル30が弁座14から離座すると噴孔21からの燃料噴射が許容され燃料が噴射される。
なお、上述の燃料噴射量に影響を及ぼすリフト量は、ニードル30(詳しくは当接部31とノズルボディ12(詳しくは弁座14)によるリフト量−開口面積の関係において、リフト量の増加に従ってシール部31、14の離間距離が増加するので、シール部による開口面積が噴孔による開口面積より小さい間(例えば後述する低リフト状態)は、燃料噴射量が増加する。
電磁駆動部Sは、図1に示すように、筒状部材18、第1可動コア50、第1可動コア50に軸方向に対峙する第2可動コア60、ハウジング15、コイル70、および永久磁石80と、第1可動コア50および第2可動コア60に付勢する付勢手段としての付勢部材59、69とを有する。なお、ここで、第2可動コア60、永久磁石80、およびハウジング15は、請求範囲に記載のユニットを構成する。第2可動コア60、永久磁石80、およびハウジング15を組付けユニット化したものを、筒状部材18に挿入するように構成されている。また、筒状部材18は、請求範囲に記載のケーシングを構成する。なお、この筒状部材18は、内部に、ニードル30、第1可動コア50、第2可動コア、ハウジング15、および永久磁石80を収容可能な収容体であり、以下の本実施形態では、燃料噴射弁本体とも呼ぶ。
筒状部材18は、弁ハウジング16の反噴孔側の内周壁に挿入され、溶接により弁ハウジング16に固定されている。また、筒状部材18は、噴孔21側から第1磁性筒部18a、非磁性筒部18b、および第2磁性筒部18cにより構成されている。非磁性筒部18bは第1磁性筒部18aと第2磁性筒部18cとの磁気的短絡を防止する。この磁気的短絡防止により、コイル60の通電により発生する電磁力による磁束を、第1可動コア、第2可動コア、および永久磁石80に効率的に流れるようにしている。なお、筒状部材18は、第1磁性筒部18aと非磁性筒部18bと第2磁性筒部18cを磁性材からなるパイプ材から形成し、その一部を熱処理することにより非磁性筒部18bを形成する。なお、筒状部材18は一体形成されるものに限らず、別部材で形成され一体的に接続されるものであってもよい。
ハウジング15は非磁性材からなる略円筒状体であり、図1および図2に示すように、内部に第2可動コア60と永久磁石80を収容する。詳しくは、図2(a)に示すように、ハウジング15は、非磁性材料からなるパイプ材などで形成され、段付き内周15a、15bからなる段差部15kを有する。段差部15kは、第2可動コア60の軸方向移動(詳しくは反永久磁石80側の軸方向下方移動)を規制する。なお、ここで、段差部15kは、請求範囲に記載の係止部を構成する。なお詳しくは、ハウジング15の内周15a、15bは、内周15aより内周15bを小さく形成している。内周15aは、第2可動コア60を移動可能に保持している。内周15bは、第2可動コア60の下端部60bを挿通可能とするとともに、第2可動コア60の上端部60aの軸方向下方移動を阻止するように形成されている。
なお、本実施形態では、ハウジング15の外周は段付き外周15c、15dから形成されていることが好ましい。これによりユニット化されたハウジング15を筒状部材18の内周に圧入により挿入組付けする際、圧入荷重が低減でき、圧入よる挿入組付けが容易となる。さらになお、上記段付き外周15c、15dのうち、段差部15k側(詳しくは下部側)の外周15dが外周15cより小さく形成されていることが好ましい。
第1可動コア50は磁性ステンレス等の磁性材からなる段付きの略円筒状体である。第1可動コア50はニードル30に固定されており、第1可動コア50とニードル30は協働する。第1可動コア50は筒状部材18の内周を軸方向に移動可能である。なお、第1可動コア50とニードル30は、図1に示すように別部材を溶接等により一体的に形成されたものに限らず、一体に形成されているものであってもよい。
第2可動コア60は、図1に示すように、磁性ステンレス等の磁性材からなる略円筒体であり、第2可動コア60は筒状部材18内を軸方向に移動可能である。詳しくは、第2可動コア60は、図1および図2に示すように、ユニット化され、筒状部材18に挿入固定されたハウジング15内を、軸方向に移動可能に構成されている。図2(a)に示すように、第2可動コア60は、段差付きの外周形状を有しており、第2可動コア60の上端部60a側の外周が下端部60b側の内周より大きく形成されている。上端部60aつまり第2可動コア60は、ハウジング15の段差部15kにより、第2可動コア60の永久磁石80から遠ざかる側の軸方向位置が規制されるように構成されている。下端部60bは、ハウジング15の内周15a、15bを挿通可能である。図1および図2に示すように、段差部15kにより第2可動コア60の軸方向下方移動が規制されている状態では、下端部60bは、ハウジング15の下端面から第1可動コア50側に突出する。
なお、本実施形態では、第2可動コア60の内周は段付き内周60c、60dから形成されていることが好ましい。詳しくは、内周60dは内周60dより小さく形成されている。第2可動コア60は、付勢部材59を挿通可能にするとともに、内周60dと内周60dの段差で付勢部材69を保持し付勢部材69の付勢力を受けられる。
永久磁石80は、フェライト磁石、稀土類磁石、あるいはアルニコ磁石等の磁化された磁性体である。図1に示すように、永久磁石80は略円筒体に形成され、所定の磁力が発生するように着磁されている。この永久磁石80は、第2可動コア60の反第1可動コア50側に、第2可動コア60に軸方向に対峙するように配置されている。
なお、永久磁石80は、本実施例では、第2可動コア60側の端面をS極、反第2可動コア60側の端面をN極とする磁極に配置されている。なお、永久磁石80の磁極配置は、第2可動コア60側の端面をS極、反第2可動コア60側の端面をN極とするものに限らず、第2可動コア60側の端面をN極、反第2可動コア60側の端面をS極とする磁極配置であってもよい。なお、第2可動コア60側の端面をS極、反第2可動コア60側の端面をN極とする磁極配置する前者に代えて、第2可動コア60側の端面をN極、反第2可動コア60側の端面をS極とする磁極配置する後者の構成とする場合には、永久磁石80による磁力と駆動コイルによる電磁力の関係が前者と同じになるように、後者におけるECU100による駆動コイルへの通電方向を反転させる。
なお、本実施形態では、第2可動コア60と永久磁石80との間には、図1および図2に示すように、磁性体17を設けることが好ましい。磁性体17は、永久磁石等の強磁性材料のように着磁により磁化されるものではなく、比較的磁化され易く、残留磁気が少ない軟磁性材料などの磁性材を使用する。例えば駆動コイルへの通電方向によっては、第1可動コア50および第2可動コア60に発生する磁界(磁力の磁極方向)と、永久磁石80の磁界とが逆方向となる場合がある。この場合、磁性体17を設けることにより、駆動コイルの磁束の流れは、その磁束の流れに対して磁気抵抗となる永久磁石80自身に直接作用することなく、永久磁石80と第2可動コア60の間に設けられた磁性体17に作用する。したがって、永久磁石80の磁束の影響を緩和または除去できるので、駆動コイルに発生する電磁力を効率的に利用することができる。
なお、ここで、永久磁石80と磁性体17は請求範囲の磁化部材を構成している。さらになお、永久磁石80を有する磁化部材は、駆動コイルの磁界の方向(磁力の方向)に応じて第2可動コア60を反第1可動コア50側に吸引可能な吸引部材を構成する。なお、永久磁石80と磁性体17で磁化部材を構成するものに限らず、永久磁石17で磁化部材を構成するものであってもよい。なお、ここで、上記磁化部材の下端部は、第2可動コア60の反第1可動コア50側方向(図1では軸方向上方)への移動量を規制する機能を有する。なお詳しくは、本実施例では、磁性体17が第2可動コア60の永久磁石80側方向(図1では軸方向上方)への移動量を規制する。
さらになお、磁性体17は、図1および図2に示すように、永久磁石80を収容して保持するように有底筒状に形成されており、ハウジング15の内周15aに挿入固定可能である。なお、本実施例では、磁性体17とハウジング15とを挿入固定する方法として、磁性体17の外周をハウジング15の内周15aへの圧入により挿入組付けし、磁性体17とハウジング15の圧入固定がなされる。なお、磁性体17および永久磁石は、付勢部材59が挿通可能に形成されている。
なお、ここで、第2可動コア60の軸方向移動量L2は、図1に示すように、第2可動コア60が段差部15kに規制されている状態において、磁性体17の下端面と第2可動コア60の上端部との間に形成されるエアギャップにより決定されている。また、軸方向移動量L1は、図1に示すように、第2可動コア60が段差部15kに規制されている状態において、第2可動コア60の下端部と第2可動コア50の上端部との間に形成されるエアギャップにより決定される。なお、この軸方向移動量L1は、請求範囲に記載の第1可動コア50の軸方向移動量であり、ニードル30のリフト量を低リフト状態とする場合おける第1可動コア50の軸方向に移動しうる最大移動量である。なお、ニードル30のリフト量を高リフト状態とする場合における第1可動コア50の軸方向に移動しうる最大移動量は、L1+L2で規定されている。なお、低リフト状態では、第2可動コア60が段差部15kに係止され、弁座14方向側へ第2可動コア60の移動が規制されている。高リフト状態では、第2可動コア60が磁化部材(詳しくは永久磁石80と磁性体17)の下端部(詳しくは磁性体17の下端面)に当接し、反弁座14方向側へ第2可動コア60の移動が規制されている。
コイル70は、樹脂製のスプール71の外周に所定方向に巻回されている。コイル70の端部は2つのターミナル75として引き出されている。ターミナル75は、外部電源等(詳しくは、ECU100)からの電流をコイル70へ供給する。スプール71は、筒状部材18の外周に装着されている。なお、ここで、コイル70、スプール71、ターミナル75は、駆動コイルを構成している。なお、コイル70等の駆動コイルの外周側には樹脂モールド19が形成されており、この樹脂モールド19によりターミナル75を収容するコネクタ部74が設けられている。
付勢部材59、69は、図1に示すように、第1可動コア50をニードル30の着座方向に付勢する第1付勢部材59と、第2可動コア60をニードル30の着座方向に付勢する第2付勢部材とから構成されている。なお、第1付勢部材59および第2付勢部材69は、加える荷重に応じて変位するばね部材等の弾性体であればいずれの部材であってもよい。なお以下で説明する本実施例では、圧縮スプリング等のばね部材とする。
第1付勢部材59は、一端部で第1可動コアに係止され、他端部で付勢力調整部材(以下、アジャスティングパイプと呼ぶ)41に係止されている。詳しくは、アジャスティングパイプ41は、燃料導入部48の内周48aに圧入され、内部に燃料通路を形成している。アジャスティングパイプ41の圧入量を調整することにより、第1可動コア50に付勢する第1付勢部材59の付勢力(荷重)が変更される。第1付勢部材59の付勢力により第1可動コア50およびニードル30は弁座14に向けて付勢されている。
第2付勢部材69は、第2可動コア60と、他端部で磁性体17等の第2可動コア60に軸方向に対峙する磁化部材との間に挟みこまれている。第2付勢部材69の内周側には、図1に示すように、第1付勢部材59とアジャスティングパイプ41が配置されている。第2付勢部材69と第1付勢部材59は内外に二重に配置される付勢手段を構成している。
なお、本実施形態では、アジャスティングパイプ41は略円筒状体であり、アジャスティングパイプ41の第1付勢部材59との接触面は円筒状であることが好ましい。これにより、第2付勢部材69と第1付勢部材59を内外に二重に配置し、第1可動コア50と第2可動コア60への各付勢力の独立した調整が可能なように、アジャスティングパイプ41を配置することが可能となる。
なお、燃料噴射弁2の内部燃料通路は、図1に示すように、燃料の流れの上流から下流に向かって、燃料導入部48の内周と、アジャスティングパイプ41の内周と、永久磁石80の内周80aと、磁性体17の内周17aと、第2可動コア60の内周60c、60dと、第1可動コア50の径方向通路52と、筒状部材40の内周、弁ハウジング16の内周、およびノズルボディ12の内周とニードル30とで形成される燃料通路の順で構成されており、これらは、噴孔21へ向かう燃料の流れ経路としての内部燃料通路を構成している。
ECU100は、図示しないリードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、マイクロプロセッサ(CPU)、入力ポート、出力ポートを相互に双方向性バスで接続した公知の構成のマイクロコンピュータとして構成されている。このECU100は、バッテリ等の電源を用いて、燃料噴射弁2のコイル70への通電開始および通電停止を行なうことで、燃料噴射弁2への通電期間を制御する。エンジンの回転速度、吸気管圧力(または吸入空気量)、冷却水温等のエンジンの運転状態を検出する図示しない各種センサの信号を読み込み、エンジン用の各種プログラム(図示せず)に従って、燃料噴射弁2の電磁駆動部Sの動作を制御する(図1参照)。
本実施形態の燃料噴射装置1における電気的構成を、図1に従って説明する。ECU100は、エンジンの運転状態を検出する各種センサの信号に基づいて、燃料噴射弁2の二つのターミナル75に所定の方向の電流を供給する。ECU100は、制御部本体(図示せず)と、制御部本体内もしくは制御部本体に配置される通電方向切換え回路(図示せず)とを有する。なお、制御部は上記説明のマイクロコンピュータであるので説明を省略する。
通電方向切換え回路は、コイル70を中心とし、四つのスイッチング素子(以下、トランジスタと呼ぶ)TR1、TR2、TR3、TR4よりなるいわゆるHブリッジ回路を組んだ構成となっている。なお詳しくは、所定方向に巻回されたコイル70の一端側は、直列接続された、バッテリ電源電圧Vb側の第1のトランジスタTR1と、接地側の第2のトランジスタTR1との中間点に接続されている。また、コイル70の他端側は、直列接続された、バッテリ電源電圧Vb側の第3のトランジスタTR3と、接地側の第4のトランジスタTR4との中間点に接続されている。この通電方向切換え回路では、第1のトランジスタTR1のベース端子と第4のトランジスタTR4のベース端子に対する通電のみをONにすることにより、コイル70へ流れる電流の方向が所定方向となる。また、第2のトランジスタTR2のベース端子と第3のトランジスタTR3のベース端子に対する通電のみをONにすることにより、コイル70へ流れる電流の方向が、所定方向とは逆転し、反所定方向となる。なお、以下の本実施形態の説明では、所定電流方向を正方向、反所定電流方向を逆方向と呼ぶ。
なお、ここで、ECU100は、システムを制御する手段の一つとして、燃料噴射弁2の駆動コイルへの通電方向を切換える切換手段を有する。この切換手段は、通電方向を切換えることで、コイル70に流れる電流方向を正方向から逆方向へ、あるいは逆方向から正方向へ切換えられる。
上述の構成を有する燃料噴射装置1の動作、特に燃料噴射弁2の作動について説明する。
(1)駆動コイル(詳しくはコイル70)の非通電状態では、永久磁石80の磁束の流れは、磁性体17を通って閉回路を形成する。永久磁石80の磁力は、磁性体17を通じて第2可動コア60に及ばないため、第2可動コア60を永久磁石80に吸引する吸引力は生じない。一方、駆動コイルは非通電状態にあるため、コイル70には電磁力は生じず、ニードル30は、第1付勢部材59によって弁座14へ押付けられている。その結果、燃料噴射弁2は閉弁し、噴孔21から燃料が噴射されることはない。
なお、第2付勢部材69の付勢力によって第2可動コア60がハウジング15の段差部15kに向けて付勢されているため、この付勢力によって第2可動コア60が段差部15kに係止されている。そのため、第2可動コア60の移動位置が軸方向移動の下限位置(以下、低リフト状態制限位置と呼ぶ)に規制されている。
(2)駆動コイルへの通電方向が正方向にある状態では、コイル70に通電され、コイル70には電磁力が発生する。さらに、駆動コイルへの通電方向が正方向に設定されているため、第2可動コア60の永久磁石80側の磁極(例えば、本実例ではS極)と、永久磁石80の第2可動コア60側端面の磁極(例えば、本実例ではS極)とが反発する関係となる。その結果、第2可動コア60は段差部15kに係止され、低リフト状態に制限する位置に維持される。
一方、コイル70によって磁化された第2可動コア60は第1可動コア50を引きつけ、第1可動コア50に協働するニードル30が弁座14から離座する。このとき、第1可動コア50の軸方向変位は、低リフト状態制限位置にある第2可動コア60によって規制されるので、ニードル30のリフト量Hは低リフト状態に制限される(H=HD1)。
なお、このとき、第2可動コア60には、永久磁石80による磁力(以下、定常磁力と呼ぶ)に対して反発するコイル70の電磁力が作用している。このコイル70の電磁力すなわち磁束の流れは、永久磁石80自体に直接作用せず、磁性体17に作用する。その結果、コイル70の磁束の流れは、その磁束の流れに対して磁気抵抗となる永久磁石80の磁束の流れに妨げられない。そのため、永久磁石80と第2可動コア60との間に磁性体17を配置せずに永久磁石80と第2可動コア60を軸方向に直接対峙させる構成を有する燃料噴射弁に比べて、コイル70に発生する電磁力を約半分程度にする場合であっても、同等以上の動作力を得ることが可能である。
なお、ここで、永久磁石80の磁力で形成する磁気回路とコイル70の電磁力で形成する磁気回路は、永久磁石80と第2可動コア60との間に挟まれた磁性体17を通じて、それぞれ閉回路を形成している。
(3)駆動コイルへの通電方向が逆方向にある状態では、駆動コイルへの通電方向を正方向から逆方向に切換えられるため、コイル70に発生する電磁力による磁界の方向は、永久磁石80の磁界の方向と同じとなる。このとき、第2可動コア60には、永久磁石80による定常磁力に加えてコイル70の電磁力をバイアスされた磁力が作用する。その結果、第2可動コア60は磁性体17側に引きつけられて、磁性体17の下端面に係止される。その結果、第2可動コア60の移動位置が軸方向移動の上限位置(以下、高リフト状態制限位置と呼ぶ)に規制される。
一方、コイル70と永久磁石80によって磁化された第2可動コア60は第1可動コア50を引きつけ、ニードル30のリフト量Hを高リフト状態にする(H=HD2であって、HD2>HD1)。
次に燃料噴射装置1の全体動作を説明する。ECU100は各種センサの信号からエンジンの運転状態を検出する。そして、ECU100は、検出したエンジンの運転状態に基いて、その運転状態に適した噴孔21から燃料噴射する噴射率、噴霧形状等の噴射・噴霧特性を判断する。その運転状態に適した噴射・噴霧特性がニードル30のリフト量を低リフト状態にすることであるとECU100が判断した場合には、ECU100は通電方向切変え回路の第1および第4のトランジスタTR1、TR4をオン動作させ、駆動コイルへの通電方向を正方向にする。その結果、第2可動コア60の移動位置を低リフト状態制限位置に規制し、ニードル30のリフト量HをH=HD1に制御する。一方、その運転状態に適した噴射・噴霧特性がニードル30のリフト量を高リフト状態にするものであるとECU100が判断した場合には、ECU100は通電方向切変え回路の第2および第3のトランジスタTR2、TR3をオン動作させ、駆動コイルへの通電方向を逆方向にする。その結果、第2可動コア60の移動位置を高リフト状態制限位置に規制し、リフト量HをH=HD2に制御する。
なお、リフト量を変化させることで、例えば燃料噴射のための開口面積が変わるため、単位時間当りの噴射量を変化させることが可能である。その結果、コイル70への通電期間を調節することで燃料噴射弁2から噴射される噴射量が調整される。さらに、コイル70への通電期間が同一であっても、リフト量Hを、H=HD1あるいはH=HD2のいずれかに設定することによって噴射量を変化させることができる。
この様に、ECU100によって駆動コイルへの通電方向を切換えることで、第2可動コア60の極性(磁極)を反転させられる。第2可動コア60の極性を反転させると、永久磁石80の定常磁力とコイル70の電磁力がバイアスした磁力、あるいは永久磁石80の定常磁力に反発するコイル70の電磁力のいずれかが第2可動コア60に作用する。第2可動コア60にバイアスした磁力が作用する場合には、永久磁石80側に吸引され、第2可動コア60の軸方向上方へ移動可能な上限位置(高リフト状態制限位置)に規制される。一方、永久磁石80に反発するコイル70の電磁力が第2可動コア60に作用する場合には、第2可動コア60は反永久磁石80側つまり弁座14方向に押付けられ、第2可動コア60の軸方向下方へ移動可能な下限位置(低リフト状態制限位置)に規制される。なお、第1可動コア50および第2可動コア60には駆動コイルの電磁力が作用可能であり、低リフト状態および高リフト状態のいずれの場合であっても、コイル70に電磁力を発生している。この電磁力によって第1可動コア50が引きつけられる。
なお、ここで、第2可動コア60、永久磁石80と磁性体17からなる磁化部材、およびECU90(詳しくは通電方向切換回路)は、ニードル30のリフト量を可変にするリフト可変手段を構成する。第2可動コア60の変位動作(詳しくは軸方向に移動する位置)により第1可動コア50の変位量(軸方向に移動する移動量)つまりニードル30のリフト量Hを、HD2からHD1へ、あるいはHD1からHD2へ変化させることができる。上記リフト可変手段によって、燃料噴射弁2のリフト量が低リフト状態(H=HD1)と高リフト状態(H=HD2)に切換えられる。
上述の燃料噴射装置1における燃料噴射弁2の組付け方法について、図2から図10に従って説明する。
まず、上述の構成を有する燃料噴射弁2を組付けのための各構成ユニットで表すと、燃料噴射弁2は、図2(b)に示すユニットと、図3の展開図に示す第2のユニットとしてのホルダサブアッセンブリとを有する。ホルダサブアッセンブリは、ノズルボディ12、弁ハウジング16、および筒状部材18から構成している。なお、ホルダサブアッセンブリは、ノズルボディ12、弁ハウジング16、および筒状部材18から構成されるものに限らず、ノズルボディ12、弁ハウジング16、筒状部材18、および駆動コイルなどを有するものでもよく、ユニット(図2(b)参照)を組付ける前に、そのユニット以外の燃料噴射弁2を構成する、そのユニット以外の筒状部材18を含む構成部材を組付けた組付け構造体(以下、燃料噴射弁本体と呼ぶ)であればよい。
なお、以下で説明するホルダアッセンブリは、ノズルボディ12、弁ハウジング16、および筒状部材から構成されるものとする。
図2(a)に示すように、第2可動コア60、第2付勢部材69、および磁化部材17、80を順にハウジング15へ、図2(b)中の軸方向下方(以下、軸方向と呼ぶ)に挿入し、図2(b)のユニットを組付ける。このとき、磁化部材17、80をハウジング15に圧入より挿入する挿入量は、第2可動コア60が低リフト制限位置にあるように段差部15kに係止される状態のとき、軸方向移動量L2になるように圧入管理される。これにより、第2コア60の軸方向移動量L2は、磁化部材17、80のハウジング15への圧入量により決定される。なお、ハウジング15に磁性部材を圧入する際、磁性体17に永久磁石80を収容し、その磁性体17をハウジング15に圧入するものに限らず、ハウジング15に磁性体17のみを圧入した後、その磁性体17へ永久磁石を収容するように挿入してもよい。
なお、ハウジング15に磁化部材17、80を圧入し、軸方向移動量L2になるように圧入量を管理決定した後には、図2(b)に示すように、磁化部材17、80(詳しくは磁性体17)とハウジング15を溶接Jにより接合することが好ましい。これにより、ユニット段階、およびその後の行程や燃料噴射弁2の完成状態のいずれの状態であっても、第2可動コア60の軸方向移動量L2を確実に維持することができる。
図3に示すように、ノズルボディ12、弁ハウジング16、および筒状部材18を組付け、ホルダアッセンブリを形成する。例えば弁ハウジング16に、図3に示すように、ノズルボディ12および筒状部材18の順に軸方向に挿入し、ホルダアッセンブリを組付ける。なお、ユニットを組付ける工程(図2参照)とホルダアッセンブリを組付ける工程(図3参照)は、ユニットを組付け、その後ホルダアッセンブリを組付ける工程順に限らず、ホルダアッセンブリを組付け、その後ユニットを組付ける工程順であってもよい。
図4に示すように、ホルダアッセンブリ内に第1可動コア50およびユニットを挿入組付けするように、ホルダアッセンブリ(詳しくは筒状部材18)へ第1可動コア50、およびユニットの順に、軸方向に挿入する。なお詳しくは、第1可動コア50は、予め別工程にてニードル30と溶接等により固定され、一体的に組付けられている。ホルダアッセンブリのうち、筒状部材18の反弁座14側の開口部から弁座14側の開口部に向かって、第1可動コア50、およびユニットの順に軸方向に挿入する。なお、この工程では、第1可動コア50つまりニードル30の初期位置に組付けるため、ホルダアッセンブリを構成するノズルボディ12、弁ハウジング16、および筒状部材18を溶接J等により固定しておく。ニードル30および第1可動コア50の初期位置とは、ニードル30がノズルボディ12の弁座14に着座している状態である。
図5および図6に示すように、ニードル30および第1可動コア50が、ホルダアッセンブリ内の初期位置状態に挿入組付けされた後、図6に示す軸方向移動量L1になるように、ユニットを筒状部材18の内周に圧入する。これにより、第1の稼動コア50の低リフト状態における軸方向移動量L1は、ユニットの筒状部材18への圧入量により決定される(図6参照)。
なお、このとき、ユニット内で第2可動コア60の軸方向移動量L2に調整されているので、ユニットを筒状部材18へ挿入し、ユニットの下端部つまり第2可動コア60の下端面と第1可動コア50の上端面とのエアギャプのみを調節するだけで、軸方向移動量L1および軸方向移動量L2つまりニードル30のリフト量が調整できる。これにより、第2可動コア60と磁化部材17、80をハウジング15に収容しユニット化するので、ユユニットを他の構成部材と組付け燃料噴射弁2を組立てる工程は、従来の可動コアを一つ有する燃料噴射弁の組立てる工程とほぼ同じような手順とすることが可能である。
図6に示す工程にてニードル30のリフト量の調整が完了した後は、図7に示すように、筒状部材18に駆動コイル(コイル70等)および燃料導入部48を挿入組付けする。
なお、ユニットを筒状部材18に圧入し、軸方向移動量L1になるように圧入量を管理決定した後には、図6に示すように、ユニット(詳しくはハウジング15)と筒状部材18を溶接Jにより接合することが好ましい。これにより、図6に示す燃料噴射弁本体の段階、およびその後の行程や燃料噴射弁2の完成状態のいずれの状態であっても、第2可動コア50の軸方向移動量L1を確実に維持することができ、従ってニードル30のリフト量が、低リフト状態と高リフト状態に切換え可能であるともに、これらリフト状態に対応するHD1およびDH2を確実に維持することができる。
図7にて筒状部材18の外周に駆動コイルを装着し、内周に燃料導入部48を装着した後は、図8および図9に示すように、燃料導入部48内に第1付勢部材59およびアジャスティングパイプ41を順に挿入組付けし、第1付勢部材59の第1可動コアへの付勢力が所定荷重になるようにアジャスティングパイプ41を圧入する。
図10に示すように、燃料噴射弁2へ供給される燃料の油密および燃料中の異物を除去するためのOリング91等と、フィルタ98とを燃料導入部48に組付け、燃料噴射弁2の組付けが完了する。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)可動コア50、60を2つ有し、吸引部材側の第2可動コアの軸方向位置で、第1可動コアの軸方向移動量を規制することにより、ニードル30のリフト量を可変する燃料噴射弁2において、第1可動コア50および第2可動コア60を軸方向移動可能な筒状部材18などの燃料噴射弁本体とは別に、燃料噴射弁本体に挿入固定可能なハウジング15を備えており、第2可動コア60と磁化部材17、80とをハウジング15に収容し、ユニット化するように構成されている。これにより、第2可動コア60と磁化部材の間のエアギャップで規定される第2可動コア60の軸方向移動量L2を、燃料噴射弁本体に組み込む前に、ユニット段階で所定の軸方向移動量L2に調節することが可能である。したがって、燃料噴射弁本体に組み込む前に、ユニット段階で所定の軸方向移動量L2に調節できるので、選択組付けのための部品を多数準備する必要がない。
なお、第2可動コア60と磁化部材17、80とを燃料噴射弁本体に直接組付けながら、第2可動コア60の軸方向移動量L2を調節する場合には、最適な軸方向移動量にする上で、磁化部材17、80等の燃料噴射弁2への着脱を繰り返す可能性がある。その場合、例えば燃料噴射弁2内部の清浄度が損なわれるおそれがあり、燃料噴射弁2の組付けに要する時間が比較的長くかかるおそれがある。
これに対して、上記構成を有する燃料噴射弁2では、上記ユニットにて第2可動コア60の軸方向移動量L2を管理できるので、燃料噴射弁本体に組付け後に軸方向移動量L2の調節のため着脱する必要はなく、燃料噴射弁2の組付時間の低減が図れる。
したがって、可動コア50、60を2つ有し、一方の可動コア60で他方の可動コア50の軸方向移動量を規制することでニードル30のリフト量を可変にする機能を有するものにおいて、生産性の向上が図れる。
(2)なお、本実施形態では、ハウジング15の内周15a、15bには、第2可動コア60の軸方向移動(詳しくは磁化部材17、80における反永久磁石80側の移動)を規制する段差部15kを有しており、内周15a、15bに、磁化部材17、80を圧入するように構成されている。これによると、ハウジング15に磁化部材17、80を圧入することで、第2可動コア60の軸方向移動量L2を決定することができる。
(3)さらになお、本実施形態では、上記ユニットを、筒状部材18に圧入するように構成している。これによると、筒状部材18は、第1可動コア、第2可動コア、および吸引部材を収容し、第1可動コアおよび第2可動コアを軸方向移動可能なものであり、その筒状部材18つまり燃料噴射弁本体に、ユニットを圧入する。これにより、予め第2可動コア60の軸方向移動量L2を調節したユニットを燃料噴射弁本体に圧入することで、ニードル30のリフト量の調節が可能である。
(4)さらになお、本実施形態では、第2可動コア60を、ニードル30の着座方向に付勢する第2付勢部材69を備えており、第2付勢部材69は、第2可動コア60と磁化部材17、80(詳しくは磁化部材17、80の下端部側の磁性体17)の間に挟み込むように収容されている。これにより、ハウジング15に、第2可動コア60、第2付勢部材69、および磁化部材17、80を収容し、ユニット化することで、ユニット段階で、第2可動コア60の軸方向移動量L2と第2付勢部材60の第2可動コア60への付勢荷重の組付け管理が可能である。
(5)さらになお、本実施形態では、磁化部材17、80は、駆動コイルの磁力の方向(磁界の方向)に応じて第2可動コア60を反第1可動コア50側に吸引可能な永久磁石80を有している。
例えば第2可動コア60の軸方向位置を切換えて、ニードル30のリフト量を低リフト状態と高リフト状態に切換えたい場合において、第2可動コア60を駆動する方法として、磁化部材に例えば電流供給により磁力発生するコイルなどの駆動部材を用いる場合には、駆動コイルを駆動するための消費電力量以外に、駆動部材を駆動するための消費電力量が必要となる。
これに対して本実施形態では、駆動コイルの磁力の方向に応じて第2可動コア60を反第1可動コア50側に吸引可能な永久磁石80を有する磁化部材17、80を用いるので、駆動コイルとは別に電流供給により磁力発生する駆動部材を用いる必要はなく、ニードル30のリフト量を切換える燃料噴射弁2を備えるシステム全体(詳しくは燃料噴射弁2を有する燃料噴射装置1)の消費電力量の低減が図れる。
(6)さらになお、本実施形態では、上記磁化部材17、80として、永久磁石80と、永久磁石80を内部に収容可能な磁性体17とからなることが好ましい。これによると、第2可動コア60と永久磁石80との間には、磁性体17が配置される。その結果、例えば駆動コイルへの通電により第1可動コア50および第2可動コア60に発生する磁界(磁力の方向)と永久磁石80の磁界とが逆方向となる場合において、駆動コイルの磁束の流れは、その磁束の流れに対して磁気抵抗となる永久磁石80自身に直接作用せず、永久磁石80と第2可動コア60の間に設けられた磁性体17に作用するため、永久磁石80の磁束の影響を緩和または除去できる。したがって、駆動コイルに発生する電磁力を効率的に利用することができる。
さらに、磁化部材17、80をユニット内に挿入する挿入量を管理する方法として、ハウジング15内に磁性体17のみを挿入し、挿入量(本実施例では圧入量)を決めてから磁性体17内に永久磁石80を組付けたり、永久磁石80を磁性体17内に組付けた状態で、磁性体17をハウジング15内に組付けることもできる。
(7)以上説明した構成を有する燃料噴射弁2の組付け方法は、
弁座14に離座および着座するニードル30と、二つ可動コア50、60と、磁化部材17、80と、これら部材を収容する筒状部材18を備え、二つの可動コア50、60のうち、磁化部材17、80側の第2可動コア60の軸方向位置に応じて第1可動コア50の移動量を可変にする燃料噴射弁2に用いられ、ニードル30の弁座14から離間するリフト量が可変されるように、第2可動コア60の軸方向移動量L2を調節する燃料噴射弁の組付方法において、
第2可動コア60と磁化部材17、80を収容するハウジング15を形成し、
ハウジング15に、第2可動コア60と磁化部材17、80を収容してユニット化し、
第2可動コア60の軸方向移動量L2を、磁化部材17、80をハウジング15に圧入する圧入量により調節するように構成されている。
これによると、第2可動コア60の軸方向移動量L2を調節する組付方法として、第2可動コア60と磁化部材17、80を収容するハウジング15を形成し、これに第2可動コア60と磁化部材17、80を収容してユニット化し、このユニット段階にて、磁化部材17、80のハウジング15への圧入量により第2可動コア60の軸方向移動量L2を調節することができる。したがって、燃料噴射弁2内に組み込む前のユニット段階で第2可動コア60の軸方向移動量L2を調節でき、生産性の向上が図れる。
(8)なお、本実施形態の組付け方法では、第2可動コア60と磁化部材17、80をハウジング15に収容し、ユニット化する際に、第2可動コア60と磁化部材17、80との間に、第2可動コア60をニードル30の着座方向に付勢する第2付勢部材60を挟み込むようにしている。これによると、ハウジング15に、第2可動コア50、第2付勢部材69、および磁化部材17、80を収容し、ユニット化することで、第2可動コア60の軸方向移動量L2と第2可動コアへの第2付勢部材69の付勢荷重の組付け管理をすることができる。
(9)さらになお、本実施形態の組付け方法では、筒状部材18の反弁座14側の開口部から弁座14側の開口部に向かって、ニードル30と第1可動コア50の組付け構造体、およびユニットの順に挿入組付けるようにしている。これによると、筒状部材18の反弁座14側の開口部から弁座14側の開口部に向けた一方向に、ニードル30等の組付け構造体、ユニットの順に挿入組付けする。したがって、筒状部材18つまり燃料噴射弁本体の一端から他端への一方向に軸方向組付けができ、従って生産性の向上が図れる。
(10)さらになお、本実施形態の組付け方法では、ニードル30等の組付け構造体、およびユニットを筒状部材18に挿入組付けする前の筒状部材18に、弁座14を有する弁ボディとしてのノズルボディ12および弁ハウジング16を組付固定するようにしている。
一般に、第2可動コア60と磁化部材17、80とを筒状部材18つまり燃料噴射弁本体に直接組付けながら、第2可動コア60の軸方向移動量L2を調節する場合には、第2可動コア60に係わる軸方向移動量L2等の不良が発生すると、燃料噴射弁本体側の全ての構成部品が不良とみなされるおそれがある。
これに対して本実施形態の組付け方法では、燃料噴射弁2内に組み込む前のユニット段階で第2可動コア60の軸方向移動量などを調節するので、第2可動コア60に係わる不良により、少なくともノズルボディ12、弁ハウジング16、および筒状部材18を有する燃料噴射弁本体側の構成部品が不良となってしまうのを防止できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態を、図11に従って説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。図11は、本実施形態に係わる燃料噴射弁のケーシングを構成する筒状部材を示す断面図である。
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した筒状部材18において、一体成形されるものに代えて、図11に示すように、別部材から形成し一体的に接続されている筒状部材118とする。図11に示すように、筒状部材118は、磁性材料のパイプ材等からなる第1磁性筒部18aおよび第2磁性筒部18cと、非磁性材料のパイプ材等からなる非磁性筒部18bとの3部材が別々に形成されている。これら第1磁性筒部18a、第2磁性筒部18c、および非磁性筒部18bを、第1磁性筒部18a、非磁性筒部18b、および第2磁性筒部18cの順で溶接J等により接続している。
この様に構成しても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した第2付勢部材69において、第2付勢部材69を第2可動コア60と磁化部材17、80との間に挟み込むものに代えて、図12に示すように、磁化部材117、180を挿入可能なものとする。図12は、本実施形態の燃料噴射弁を適用する燃料噴射装置の構成を表す部分的断面図である。
図12に示すように、第2付勢磁性部材117、180は、第2付勢部材169が挿通可能なように、永久磁石180の内周180aおよび磁性体117の内周117aが第2付勢部材169の外径より大きく形成されている。第2付勢部材69は、第2可動コア60と燃料導入部48との間に挟み込まれるように構成されている。
この様に構成しても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、第2付勢部材169は、磁化部材117、80を挿入可能であるので、予め第2可動コア60の軸方向移動量L2を調節したユニットを燃料噴射弁本体に挿入固定した後に、ユニット内の第2可動コア60に所定の付勢力を与えるように、第2付勢部材69をユニットに挿入することが可能である。
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した第2可動コア60において、第2付勢部材69を内部に配置するものに代えて、図13に示すように、第2付勢部材69を第2可動コア160の外周部に配置するようにする。図13は、本実施形態の燃料噴射弁を適用する燃料噴射装置の構成を表す部分的断面図である。
図13に示すように、第2可動コア160の外周部には、上端部160a側に段差が形成されており、この段差と筒状部材18の内周との間に空隙が設けられている。なお詳しくは、上端部160a側の外周のうち、磁化部材17、80側の外周を、第1可動コア50側の外周より小さく形成する。これにより、外周部には段付き外周による段差が形成される。この段差には第2付勢部材269が装着されている。
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)この様に構成しても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(2)一般に、駆動コイルに発生した磁力を利用して第2可動コアを磁化部材17、80に磁気吸引する場合において、筒状部材18の外周側に配置される駆動コイルから筒状部材18、磁化部材17、80、第2可動コアへ流れる図中の実線に示す磁束の流れ以外に、筒状部材18から第2可動コアへ直接流れる漏れ磁束(図中の破線)が生じる場合がある。
これに対して本実施形態では、第2付勢部材269を第2可動コア160の外周部に設けるので、筒状部材18と第2可動コア160との間に空隙を設けることが可能である。したがって、筒状部材18から第2可動コア160へ直接流れる磁束の漏れが生じるのを防止できる。
(3)なお、本実施形態では、第2可動コア160の外周部には、筒状部材18の内周との間に、段付き外周による段差を設けており、第2付勢部材269はその段差に装着されるようになっていることが好ましい。
これによると、外周部の外周と筒状部材18の内周との間に段差が設けられ、その段差に第2付勢部材269が装着されるので、第2付勢部材269を第2可動コア160に付勢するように装着することができるとともに、筒状部材18と第2可動コア160との間に空隙が確実に設けられる。
(他の実施形態)
なお、以上説明した本実施形態では、磁性部材17、80は、永久磁石80を有する磁化部材として説明したが、第2可動コア60を駆動する方法として、磁化部材を磁性材からなる磁性部材とし、その磁性部材を例えば電流供給により磁力発生するコイルなどの駆動部材により磁化するものであってもよい。いずれの構成であっても、駆動コイルの磁力の方向(磁界の方向)に応じて第2可動コア60を反第1可動コア50側に吸引可能である。
さらになお、以上説明した本実施形態では、第2可動コア60とともにハウジング15に収容され、ユニット化されるものを、磁化部材17、80で説明したが、磁化部材は、駆動コイルの磁力の方向(磁界の方向)に応じて第2可動コア60を反第1可動コア50側に吸引可能なものでよいため、駆動コイルの磁力により第2可動コア60を吸引する吸引部材であればいずれでもよい。なお、以上説明した本実施形態で説明した磁化部材17、80は、請求範囲に記載の吸引部材を構成する。
なお、本実施形態では、永久磁石80および磁性体17を用いニードル30のリフト量を切換えるものとして説明したが、永久磁石80および磁性体17を用いるものに限らず、特開2003−269289号公報に開時される従来技術のように2つの駆動コイルを用いるものであってもよく、2つの可動コアを有し、一方の可動コアの軸方向位置により他方の可動コアの軸方向移動量を規制することによりニードルのリフト量を切換える等のため、これら可動コアの軸方向移動量を設定するものであればいずれでもよい。
さらになお、以上説明した本実施形態では、第2可動コア60と磁性部材17、80とをハウジング15に収容してユニット化したものを、ニードル30とともに燃料噴射弁本体となる筒状部材18に挿入組付けした。燃料噴射弁本体となる部材もしくは組付構造体は、筒状部材18に限らず、ニードル30や第1可動コア50など燃料噴射弁2の内部構成部材と、第2可動コア60と磁性部材17、80とを収容してユニット化するハウジング15とを内部に収容するケーシングであればいずれであってもよい。
さらになお、以上説明した本実施形態おいて、本発明を適用する燃料噴射弁の構成として、上記ケーシングを有するものであれば、必ずしも筒状部材を有する必要はない。