JP4332901B2 - 機器制御方法及び機器制御装置 - Google Patents

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本発明は、機器制御方法及び機器制御装置に関する。
IEEE Computer Graphics and Applications, January/February 1998,60-73
近年普及している自動車用のオートエアコンでは、外気温センサ、日射量センサ及び内気温センサなど、多種類のセンサ入力を参照して、吹出し風量ないし吹出し温度を車両環境に応じて適性値に制御することが行なわれている。この場合、風量値や気流温度値(いわゆる、エアミックスダンパーの開度で規定される)の設定値を、上記多数のセンサ入力値の組と結びつけるための制御仕様が必要である。従来多用されているエアコン制御形態の一つにTAO法がある。自動車用のエアコンでは、内気温センサの温度情報に基づいて、希望設定温度に近づくように吹出す空気の温度と風量とを制御する。このとき、目標吹出温度(TAO)は、次のような数式で計算される。
TAO = E×(TSET+△T)−F×T−G×TAM−H×TS+C
ただし、TSET:設定温度、T:内気温、TAM:外気温、TS:日射量、△T,C:補正定数、E〜H:係数
また、多変数入力/1出力の制御に適した方式としてこの他に知られているものにニューラルネットワークがある。
TAO法において制御仕様を定めるには、△T、C、E〜H等の制御固有の係数を車種毎に異なる値として決定する必要がある。しかし、TAOは、設定温度(TSET)、内気温(TR)、外気温(TAM)及び日射量(TS)の4つもの入力変数を自由度として有する多変数関数であり、これら変数を独立に変化させながら多数の係数(△T、C、E〜H)の適性値を探るのは、シミュレーションを導入しても相当の労力を要し、該TAOを用いた制御ロジックの開発にも時間を要することとなる。
また、ニューラルネットワークを用いた制御部は、入力数の増えると必要な素子数が幾何学的に増加する問題がある。また、種々の入力値の組み合わせに対して意図した入力結果が得られるようになるまで、複雑な学習処理を多数回繰り返さなければならず、開発リードタイムが非常に長くなってしまう欠点がある。さらに、学習処理の実施には高性能のコンピュータが必要であり、設備投資金額もかさむ難点がある。
本発明の課題は、複数入力一出力形態の機器制御において、取得の容易なモデル制御パターンを用意するだけで、簡単で開発工数の少ないアルゴリズムにより、任意の入力値に対し意図通りの出力結果が得られる機器制御方法と、これを実現するための機器制御装置とを提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記の課題を解決するために、本発明の機器制御方法は、
少なくともN個(N≧2)の必須入力変数群を参照して、該必須入力変数群に対し一義的に定められた1つの出力変数の値を演算し、その得られた出力変数値に基づき対象機器の制御を行なう方法であって、
必須入力変数群は、その一部をなす種別の固定されたM個(1≦M<N)の第一種入力変数と、必須入力変数群の残余をなす形で該第一種入力変数とは排他的に種別が定められた(N−M)個の第二種入力変数とからなり、
必須入力変数群の値に応じて出力変数の値を決定する制御特性情報として、第一種入力変数が張るM次元部分入力空間上の予め定められたQ個(Q≧2)のモデル座標点毎に、(N−M)個の二種入力変数の値と出力変数の値との関係を定めるモデル制御パターンを複数離散的に用意し、
必須入力変数群のN次元入力値が与えられたとき、該N次元入力値に含まれる第一種入力変数のM次元部分入力空間上の座標点を実制御座標点として、該M次元部分入力空間にて実制御座標点を内部に含む予め定められたモーフィング対象空間領域に存在するJ個(2≦J≦Q)のモデル座標点を被モーフィング座標点として特定し、
第二種入力変数と出力変数とが張る制御パターン空間において、各被モーフィング座標点に対応するJ個のモデル制御パターンの形状を、M次元部分入力空間における各被モーフィング座標点の実制御座標点までの距離に応じた重みにてモーフィングすることにより、実制御座標点に対応する合成制御パターンを作成し、
該合成制御パターンに基づいてN次元入力値に対応する出力変数値を計算することを特徴とする。
また、本発明の機器制御装置は、
少なくともN個(N≧2)の必須入力変数群を参照して、該必須入力変数群に対し一義的に定められた1つの出力変数の値を演算し、その得られた出力変数値に基づき対象機器の制御を行なう装置であって、必須入力変数群は、その一部をなす種別の固定されたM個(1≦M<N)の第一種入力変数と、必須入力変数群の残余をなす形で該第一種入力変数とは排他的に種別が定められた(N−M)個の第二種入力変数とからなり、
必須入力変数群の値に応じて出力変数の値を決定する制御特性情報として、第一種入力変数が張るM次元部分入力空間上の予め定められたQ個(Q≧2)のモデル座標点毎に複数離散的に用意された、(N−M)個の二種入力変数の値と出力変数の値との関係を定めるモデル制御パターンを記憶する制御特性情報記憶手段と、
必須入力変数群のN次元入力値が与えられたとき、該N次元入力値に含まれる第一種入力変数のM次元部分入力空間上の座標点を実制御座標点として、該M次元部分入力空間にて実制御座標点を含む予め定められたモーフィング対象空間領域に存在するJ個(2≦J≦Q)のモデル座標点を被モーフィング座標点として特定する被モーフィング座標点特定手段と、
第二種入力変数と出力変数とが張る制御パターン空間において、各被モーフィング座標点に対応するJ個のモデル制御パターンの形状を、M次元部分入力空間における各被モーフィング座標点の実制御座標点までの距離に応じた重みにてモーフィングすることにより、実制御座標点に対応する合成制御パターンを作成する制御パターンモーフィング手段と、
該合成制御パターンに基づいてN次元入力値に対応する出力変数値を計算する出力変数計算手段と、を有することを特徴とする。
上記本発明においては、機器制御に使用する必須入力変数群が2個以上あるとき、その変数を、出力変数との関係をモデル制御パターンとして直接記述する第二種入力変数と、そのモデル制御パターンをマッピングするための第一種入力変数とに分離する。第一種入力変数が張る空間をM次元部分入力空間とする。ただし、第一種入力変数の数Mは1個ないし2個であってもよく、前者の場合は1次元空間(直線)、後者の場合は2次元空間(平面)となる。従って、M次元部分入力空間は、Mが3以上の場合に3次元以上の狭義の意味での空間となる。また、第二種入力変数と出力変数とが張る空間を制御パターン空間とする。ただし、第二種入力変数の数Nは1個であってもよく、この場合は出力変数と合わせて2次元空間(平面)となる。従って、制御パターン空間は、Nが2以上の場合に3次元以上の狭義の意味での空間となる。
そして、第一種入力変数値の種々の組み合わせについてM次元部分入力空間上に、2以上のモデル座標点を定め、それらモデル座標点毎に固有の(つまり、個々の第一種入力変数値の組み合わせ毎に、第二種入力変数と出力変数との間の好ましい制御特性を反映した)モデル制御パターンをマッピングする形で用意する。そして、必須入力変数群の現在値を取得したとき、これに含まれる第一種入力変数値を抽出すれば、M次元部分入力空間上にその座標点を実制御座標点としてプロットできる。そして、その実制御座標点を含む予め定められたモーフィング対象空間領域に存在する2個以上のモデル座標点を被モーフィング座標点として特定する。
第一種入力変数の現在値を表わす実制御座標点は刻々変化するものであり、一般には、これがどれかのモデル座標点と一致することはない。そこで、実制御座標点に近接した複数個のモデル座標点を被モーフィング座標点として選ぶ(その具体的な選び方は、モーフィング対象空間領域をどう設定するかに応じて異なる)。各モデル座標点には固有のモデル制御パターンが用意されている。個々のモデル制御パターンは、必須入力変数群のうち第一種入力変数の値をモデル座標点の座標値に固定したとき、残余の第二種入力変数の値に応じて出力変数をどのように変化させるかを記述する制御関数であるが、これを制御パターン空間上で眺めてみた場合、モデル座標点毎に固有の形状を有した図形として捉えることができる。
本発明者は、制御パターン(制御関数)を図形に概念変換して捉え、従来は画像処理分野に特化された技術であるモーフィング(例えば、非特許文献1)を敢えて機器制御の分野に導入することにより、実制御座標点について本来的には用意されていない制御パターンを簡単に取得できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。すなわち、M次元部分入力空間にて複数の被モーフィング座標点に対応して用意されたモデル制御パターンを、それぞれ制御パターン空間上での図形とみなすことにより、M次元部分入力空間における各被モーフィング座標点の実制御座標点までの距離に応じた重みにて、画像合成処理の場合と全く同様にしてモーフィングできる。従来は、モーフィングにより合成された画像を視覚的に出力することだけが目的であったが、本発明においては、モーフィングにより合成されるのが制御パターンであり、モーフィングの結果物である合成制御パターンを、第二種入力変数が与えられたときに出力変数の値を決定するための制御関数として、機器制御処理に2次使用する点に最大の特徴がある。
そして、モーフィングにより得られた実制御座標点に対応する合成制御パターンは、純画像合成処理的な手法により得られたものであるにも拘わらず、制御技術的にも全く矛盾しないばかりか、第一種入力変数の値(モデル座標点の座標値)毎の、第二種入力変数と出力変数との間の適正な制御特性を反映したものとして個々のモデル制御パターンが用意されている限り、合成制御パターンも実制御座標点における所望の制御特性を的確に反映したものとして取得できる。そして、複数入力一出力形態の機器制御であるにも拘わらず、開発工数の主体を占めるのは第一種入力変数の値(モデル座標点の座標値)の種々の組につき、第二種入力変数と出力変数との関係を示すモデル制御パターンを、例えば実験的な手法により取得する処理を機械的に繰り返すことだけである。その取得したモデル制御パターンは機器にインストールするだけで直ちに実使用に供することができ、しかもモーフィングによる簡単で開発工数の少ない画像合成的なアルゴリズムにより、任意の入力値に対し意図通りの出力結果が得られる機器制御方法ならびに装置が実現する。
第一種入力変数の個数Mが2以上の場合、M次元部分入力空間は2次元以上の空間となり、モデル座標点とモデル制御パターンとの組も、その2次元以上の空間に一様に分散マッピングする形で用意する必要がある。この場合、M次元の実制御座標点に対する被モーフィング座標点を簡単かつ的確に決定するには、モーフィング対象空間領域を以下のようにして定めておくと、モーフィングのアルゴリズムを簡略化することができる。すなわち、M次元部分入力空間内にて隣接するモデル座標点を相互にフレーム連結することにより、各頂点をモデル座標点とする形でM次元部分入力空間を隙間なく区画するよう複数の単位セルを配列形成する。そして、それら複数の単位セルのうち、実制御座標点を内包するものをモーフィング対象空間領域とし、該単位セルの頂点をなすモデル座標点を被モーフィング座標点として使用する。M次元部分入力空間を予め上記のような単位セル(モーフィング対象空間領域)にて区切っておくことにより、実制御座標点がどの単位セルに属するかを判定することにより、その単位セルの頂点をなすモデル座標点を被モーフィング座標点として簡単に決定できる。
M次元部分入力空間内に分散するモデル座標点を相互にフレーム連結することにより得られる単位セルの頂点数の最小値はM+1であり、例えばM次元部分入力空間である場合、その頂点数の最小値を与える単位セル(シンプレックスという)は三角形となる。そして、M次元部分入力空間内のどこに実制御座標点が位置している場合においても、その実制御座標点が属するシンプレックスの頂点をなすモデル座標点が、常にその実制御座標点に対する最近接の(M+1)個の座標点となるよう一義的に決定できるフレーム連結方法として、任意の(M+1)個のモデル座標点が張るシンプレックスとしてのM次元多面体(M=2の場合は多角形である)に対し外接M次元球体(M=2の場合は円である)を描いたとき、その外接M次元球体内に他のモデル座標点が含まれないようにフレーム連結する方法を採用できる。このとき、空間を分割する個々のシンプレックスを(広義の)ドローネ三角形と称する(Mが3であれば、ドローネ三角形は三角錘(頂点数は4)となる)。このようなドローネ三角形を単位セルとして使用することで、実制御座標点に対する最近接のモデル座標点を用いて、最小限の数のモデル制御パターンのモーフィングを行なうことにより合成制御パターンを得ることができ、処理の簡略化を測ることができる。
一方、上記の単位セルは、頂点数がM+2個以上の冗長頂点単位セルとして選ぶこともできる。この場合、本発明の機器制御方法は、
少なくともN個(N≧3)の必須入力変数群を参照して、該必須入力変数群に対し一義的に定められた1つの出力変数の値を演算し、その得られた出力変数値に基づき対象機器の制御を行なう方法であって、
必須入力変数群は、その一部をなす種別の固定されたM個(2≦M<N)の第一種入力変数と、必須入力変数群の残余をなす形で該第一種入力変数とは排他的に種別が定められた(N−M)個の第二種入力変数とからなり、
必須入力変数群の値に応じて出力変数の値を決定する制御特性情報として、第一種入力変数が張るM次元部分入力空間上の予め定められたQ個(Q≧2)のモデル座標点毎に、(N−M)個の二種入力変数の値と出力変数の値との関係を定めるモデル制御パターンを複数離散的に用意し、
必須入力変数群のN次元入力値が与えられたとき、該N次元入力値に含まれる第一種入力変数のM次元部分入力空間上の座標点を実制御座標点として、該M次元部分入力空間にて実制御座標点を内部に含む予め定められたモーフィング対象空間領域に存在するJ個(2≦J≦Q)のモデル座標点を被モーフィング座標点として特定し、
第二種入力変数と出力変数とが張る制御パターン空間において、各被モーフィング座標点に対応するJ個のモデル制御パターンの形状を、M次元部分入力空間における各被モーフィング座標点の実制御座標点までの距離に応じた重みにてモーフィングすることにより、実制御座標点に対応する合成制御パターンを作成し、
該合成制御パターンに基づいてN次元入力値に対応する出力変数値を計算するとともに、
M次元部分入力空間内にて隣接するモデル座標点を相互にフレーム連結することにより、各頂点をモデル座標点とする形でM次元部分入力空間を隙間なく区画するように定められた、頂点数がM+2個以上の冗長頂点単位セルが複数配列形成されてなり、
それら複数の冗長頂点単位セルのうち、実制御座標点を内包するものをモーフィング対象空間領域とし、該冗長頂点単位セルの頂点をなすモデル座標点のM+2個以上を被モーフィング座標点として使用することを特徴とするものとなる。
すなわち、シンプレックスよりも多い頂点数(M+2個以上)の冗長頂点単位セルを採用することで、合成制御パターンの作成に関与するモデル制御パターンの数を増やす(冗長化する)ことができ、当該合成制御パターンに従う実制御座標点での制御内容の妥当性をより高めることができる。
また、冗長頂点単位セルの選び方によってはモデル制御パターンのモーフィング演算を簡略化できる場合がある。例えば、冗長頂点単位セルは、頂点数2個の超直方体として選ぶことができる。ここでいう超直方体は、M次元部分入力空間を直交座標系としたとき、次元数Mが3のときは直方体(立方体を概念として含む)、次元数Mが2のときは長方形(正方形を概念として含む)となる。
冗長頂点単位セルの頂点、すなわちモデル座標点の全てをランダムに設定した場合は、モデル座標点1つに付きM個の座標成分が存在することから、モーフィング演算にはM×(全頂点数)の座標値を独立変数として考慮しなければならない。しかし、上記のような超直方体を採用すれば、超直方体の各辺の長さ(M通り)が与えられれば、超直方体の頂点をなす1つのモデル座標点の座標から、他のモデル座標点の座標を自動的に決定できる。従って、演算に考慮すべき独立変数の数は、M(座標成分数)+M(超直方体の各辺の長さ)=2Mとなり、モデル座標点の全てをランダムに設定する場合と比較して演算を大幅に簡略化できる。特に、冗長頂点単位セルをなす複数の超直方体を互いに合同となるように定めておくと、超直方体の各辺の長さを定数化できるので、演算においては、1個のモデル座標点の座標成分のみを変数として扱えばよく、演算に考慮すべき独立変数のM個で済むようになり、さらなる演算の簡略化を図ることができる。
上記超直方体の各頂点をなすモデル座標点と実制御座標点との幾何学的な関係に基づき、各モデル座標点に対応するモデル制御パターンを線形補間合成して合成制御パターンを得る場合は、次の手法を採用することにより、モーフィングアルゴリズムの大幅な簡略化を図ることができる。すなわち、超直方体の実制御座標点を通って各面と平行なM個の平面で切断する。これにより、超直方体は、それぞれ実制御座標点を共有し、かつ超直方体の頂点をなすモデル座標点を排他的に1個ずつ取り合う2個の部分直方体に区切られる。M次元部分入力空間を直交座標系としたとき、部分直方体は、次元数Mが3のときは直方体(立方体を概念として含む)であり、超直方体に対する分割数は8、次元数Mが2のときは長方形(正方形を概念として含む)であり、超直方体に対する分割数は4となる。M次元に一般化した場合、超直方体の部分直方体による分割数は2である。
そして、各部分直方体の超直方体に対する相対体積を、当該部分直方体に含まれるモデル座標点の超直方体の対角線方向反対側に位置するモデル座標点への重みとする形でモーフィングを行なう。この方法によれば、モーフィングの重み演算を各部分直方体の体積演算に転換することができ、例えば2点間線形補間によるモデル制御パターン合成を比較的少数回繰り返すだけで最終的な合成制御パターンを簡単に得ることができる。
第二種入力変数の個数(N−M)が例えば1であれば、モデル制御パターン及び合成制御パターンは、(該1個の第二種入力変数と出力変数とが張る制御パターン空間としての)制御パターン平面上に描画可能な二次元線図パターンとすることができる。このようにすると、モデル制御パターンのデータ取得工程は、第一種入力変数の組を任意の値に固定し、1個の第二種入力変数の値を単純に変化させながら出力変数値の適性値を見出す形に簡略化され、開発工数のさらなる削減に寄与するとともに、線図パターンの合成で済むのでモーフィング計算のアルゴリズムも軽量化できる。
この場合、二次元線図パターンは、パターン起点からパターン終点に向けて配列する一定個数のハンドリング点により形状規定されるものとでき、全てのモデル座標点に対応する二次元線図パターンの各ハンドリング点同士が配列順位に従い一義的に対応付けることができる。そして、各被モーフィング座標点にかかる二次元線図パターンの各ハンドリング点の対応するもの同士をモーフィングすることにより合成ハンドリング点を生成し、それら合成ハンドリング点により合成制御パターンをなす二次元線図パターンを規定することができる。二次元線図パターンをハンドリング点の集合に還元することで、モーフィングの演算対象も限られた個数のハンドリング点とすることができ、モーフィング演算負荷を大幅に減ずることができる。そして、合成制御パターンも、モーフィングの結果として得られる合成ハンドリング点により簡単に得ることができる。
ハンドリング点により規定される二次元線図パターンの種別は、例えばペジェ曲線やBスプライン曲線などの曲線パターンとすることもできるが、ハンドリング点を順次直線連結して得られる折線状パターンとすることが、演算の簡略化により寄与できる。また、制御パターンを表わす二次元線図パターンにおいて、第二種入力変数に対する出力変数の変化勾配を、その屈曲点にて不連続に遷移させる制御を行ないたい場合、屈曲点を表わすハンドリング点が、モーフィング合成後においても、合成制御パターン中の対応する屈曲点を表わすハンドリング点として保存されるので、屈曲点位置の異なる複数の二次元線図パターンを幾何学的にブレンドしているにも拘わらず、屈曲点位置が不鮮明となることを防止することができる。
対象機器が例えばエアコンである場合、必須入力変数群は、外気温、日射量、内気温の設定温度に対する温度偏差の2以上を含むものとできる。また、出力変数は、吹出し気流の風量及び温度(あるいは、対応するエアミックスダンパー開度)のいずれかとすることができる。これにより、エアコン(特に自動車用のオートエアコン)制御装置において、吹出し気流の風量や温度を制御するためのモデル制御パターンを繰り返し決定し、これをモーフィング演算ソフトウェアとともに装置の制御主体(エアコンECU)に組み込むだけで済むようになり、従来のTAO方式やニューラルネットワーク方式と比較して、複雑な設計ロジックや学習処理が一切不要となる。
より具体的には、必須入力変数群を外気温、日射量及び温度偏差(内気温と設定温度との差)の3つに定めることができ、第一種入力変数が外気温及び日射量の2つとすることができる。また、第二種入力変数を温度偏差の1つに定めることができ、出力変数を風量とすることができる。このようにすると、M次元部分入力空間は、外気温と日射量とが張る二次元座標平面とすることができ、該二次元座標平面上の複数のモデル座標点と対応付ける形でモデル制御パターンを、温度偏差と風量との関係を示す二次元線図パターンとして個別に用意すれば済むようになる。そして、合成制御パターンはそれらモデル制御パターンをなす二次元線図パターンをモーフィングして合成される二次元線図パターンとして簡単に得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の機器制御装置の一例たるエアコン制御装置CAの全体構成を模式的に示すブロック図である。エアコン制御装置CAはダクト1を備え、該ダクト1には、車内空気を循環させるための内気吸い込み口13と、車外の空気を取込む外気吸い込み口14とが形成され、内外気切替ダンパー15によりいずれかが切替使用される。これら内気吸い込み口13ないし外気吸い込み口14からの空気は、ブロワモータ23により駆動されるブロワ16によってダクト1内に吸い込まれる。
ダクト1内は、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ17と、逆にこれを加熱して暖気を発生させるヒータコア2(エンジン冷却水の廃熱により発熱動作する)とが設けられている。そして、これら冷気と暖気とが、エアミックスダンパー3の角度位置に対応した比率にて混合され、吹出し口4,5,6より吹出される。このうち、フロントグラス曇り止め用のデフ吹出し口4は、フロントグラスの内面下縁に対応するインパネ上方奥に、フェイス吹出し口5はインパネの正面中央に、フット吹出し口6はインパネ下面奥の搭乗者足元に対向する位置にそれぞれ開口し、吹出し口切替用ダンパー7,8,9により個別に開閉される。具体的には、モータ20からのダンパー制御用の回転入力位相に応じて、ダンパー駆動ギア機構10により、デフ吹出し口4のみを開いた状態、フェイス吹出し口5のみを開いた状態、フット吹出し口6のみを開いた状態、フェイス吹出し口5とデフ吹出し口4とを開いた状態、フット吹出し口6とデフ吹出し口4とを開いた状態、フェイス吹出し口5、デフ吹出し口4及びフット吹き出し口6の全てを開いた状態の間で切り替えられる。
また、内外気切替ダンパー15はモータ21により、エアミックスダンパー3はモータ19により、吹出し口切替用ダンパー7,8,9はモータ20により、それぞれ電動駆動される。これらモータ19,20,21は例えばステッピングモータにて構成され、個々の動作はエアコン駆動制御手段の主体をなすエアコンECU50により集中制御される。さらにブロワモータ23はブラシレスモータ等で構成され、エアコンECU50により、PWM制御にて回転速度制御することにより吹出し風量が調整される。エアコンECU50の実体はコンピュータハードウェアであり、エバポレータセンサ51、内気センサ55、外気センサ56、水温センサ57及び日射センサ58が接続されている。
また、車載エアコン用操作ユニット100も独立した操作ユニットECU160を有し、風量設定スイッチ52、吹出し口切替スイッチ53、温度設定スイッチ54、A/Cスイッチ59、オート切替スイッチ103、内外気切替スイッチ60が接続されている。操作ユニットECU160はエアコンECU50と通信バス30(例えば、LIN通信バス等のシリアル通信バス)により接続されている。
操作ユニットECU160もコンピュータハードウェアであり、前述の風量設定スイッチ52、吹出し口切替スイッチ53、温度設定スイッチ54D,54P、A/Cスイッチ59、オート切替スイッチ103、内外気切替スイッチ60が接続されている。風量設定スイッチ52、吹出し口切替スイッチ53、温度設定スイッチ54D,54P、A/Cスイッチ59、オート切替スイッチ103あるいは内外気切替スイッチ60の各操作入力状態は、操作ユニットECU160から通信バス30を介してエアコンECU50に送られる。
具体的には、エアコンECU50は、操作ユニットECU160と連携して、内蔵のROM等に搭載されたエアコン制御ファームウェアの実行により、以下のような制御を行なう。
・内外気切替スイッチ60の操作入力状態に対応して、内気側及び外気側のいずれかに内外気切替用ダンパー15が倒れるよう、対応するモータ21の駆動ICに制御指令を行なう。
・A/Cスイッチ59の操作状態に応じて、エバポレータ17の作動をオン・オフさせる。
・オート切替スイッチ103の入力状態に基づいて、エアコンの動作モードをマニュアルモードとオートモードとの間で切り替える(モード切替手段)。
・オートモードでは、温度設定スイッチ54D,54Pによる設定温度の入力情報と、内気センサ55、外気センサ56、水温センサ57及び日射センサ58の出力情報とを参照し、車内温度が設定温度に近づくよう、エアミックスダンパー3の開度調整による吹出し温度調整と、ブロワモータ23による風量調整と、吹出し口切替ダンパー7,8,9の位置変更とがなされるよう、対応するモータ19,23,20の動作制御指令を行なう。
・マニュアルモードでは、風量設定スイッチ52と吹出し口切替スイッチ53との操作入力状態に対応して、ブロワモータ23による風量調整を行なうとともに、吹出し口切替ダンパー7,8,9が対応する開閉状態となるようにモータ20への駆動制御指令を行なう。
エアコン制御装置CAは、N個(N≧2)の必須入力変数群を参照して、該必須入力変数群に対し一義的に定められた1つの出力変数の値を演算し、その得られた出力変数値に基づき対象機器の制御を行なうものである。ここで、必須入力変数群は、その一部をなす種別の固定されたM個(1≦M<N)の第一種入力変数と、必須入力変数群の残余をなす形で該第一種入力変数とは排他的に種別が定められた(N−M)個の第二種入力変数とからなる。
具体的には、図2に示すように、必須入力変数群は外気温ξ、日射量η及び温度偏差βの3つであり(つまり、N=3)、第一種入力変数は外気温ξ及び日射量ηの2つであり(つまり、M=2)、第二種入力変数は温度偏差βの1つであり(つまり、N−M=1)、出力変数は吹出し気流の風量α又は温度γである。風量α及び温度γは独立して制御がなされるが、以下は、風量αにより代表させて説明を行なう。つまり、必須入力変数群β,ξ,ηを参照して、該必須入力変数群β,ξ,ηに対し一義的に定められた1つの出力変数αの値を演算し、その得られた出力変数α値に基づき対象機器たるエアコンの制御を行なう装置となっている。
前述のファームウェアは、次の機能実現手段をコンピュータ処理により実現するものである。
・制御特性情報記憶手段:必須入力変数群(外気温ξ、日射量η及び温度偏差β)の値に応じて出力変数(風量α)の値を決定する制御特性情報として、第一種入力変数(外気温ξ、日射量η)が張るM次元部分入力空間MPS(ここでは、ξ−η平面)上の予め定められたQ個(Q≧2:図3Aに示すごとく、この実施形態ではQ=30の場合を例示している)のモデル座標点p毎に複数離散的に用意された、(N−M)個(この実施形態では1個)の第二種入力変数(温度偏差β)の値と出力変数(風量α=の値との関係を定めるモデル制御パターンP(図3A)を記憶する。図1の制御データメモリ171がこれに相当する。
・被モーフィング座標点特定手段:必須入力変数群(外気温ξ、日射量η及び温度偏差β)のN次元(ここでは、三次元)の入力値pxが与えられたとき、図5に示すごとく、該入力値pxに含まれる第一種入力変数(外気温ξ、日射量η)のM次元部分入力空間MPS(ξ−η平面)上の座標点を実制御座標点pxとして、該M次元部分入力空間MPS(ξ−η平面)にて実制御座標点pxを含む予め定められたモーフィング対象空間領域DTに存在するJ個(2≦J≦Q:ここでは、J=3であり、モーフィング対象空間領域DTはドローネ三角形である)のモデル座標点pを被モーフィング座標点pa,pb,pcとして特定する。
・制御パターンモーフィング手段:第二種入力変数(温度偏差β)と出力変数(風量α)とが張る制御パターン空間CPS(ここでは、β−α平面)において、各被モーフィング座標点pa,pb,pcに対応するJ個のモデル制御パターンPa,Pb,Pcの形状を、M次元部分入力空間MPS(ξ−η平面)における各被モーフィング座標点pa,pb,pcの実制御座標点pxまでの距離に応じた重みにてモーフィングすることにより、実制御座標点pxに対応する合成制御パターンPxを作成する。
・出力変数計算手段:合成制御パターンPxに基づいてN次元入力値に対応する出力変数(風量α)の値を計算する。
以下、エアコン制御装置CAの動作について、より詳細に説明する。図2に示すように、エアコンECU170は、出力変数たる風量αの設定値を計算するために、図1の3つのセンサ、すなわち、内気センサ55、外気センサ56及び日射センサ58の検出値を読み込み、また、温度設定スイッチ54による設定温度値を読み込む。外気センサ56の検出値が外気温ξとして取得され、日射センサ58の検出値が日射量ηとして取得される。また、設定温度値に対する内気センサ55の検出値の差分が温度偏差βとして取得される(内気温が設定温度値未満であればマイナス、設定温度値を超えていればプラス)。
取得された外気温ξと日射量ηとの組がM次元部分入力空間MPS(ξ−η平面)上での実制御座標点pxを示す。他方、外気温ξと日射量η(第一種入力変数)の種々の値の組が、モデル座標点pとして定められており、図3Aに示すように、制御データメモリ170には、各モデル座標点pi(ξi,ηi)毎にモデル制御パターンPi(≡P1〜P30)が格納されている。
図4Aに示すように、各モデル制御パターンPi(≡P1〜P30)は、温度偏差β(第二種入力変数)と風量α(出力変数)とが張る制御パターン平面CPS(β−α平面)上にて描画可能な二次元線図パターンとされている。各パターンとも、その起点から終点に向けて配列する一定個数(図では9個)のハンドリング点hiを有し、それらハンドリング点hiを順次直線連結して得られる折線状パターンとして定義されている。従って、制御パターンPは、それらハンドリング点hiのβ−α平面上での座標値の集合として一義的に規定することができ、各てのモデル制御パターンPiの各ハンドリング点h同士は、配列順位に従い一義的な対応関係を形成する。
次に、第一種入力変数である外気温ξと日射量ηとが張るM次元部分入力空間MPS(ξ−η平面)は、各モデル座標点を頂点とする形でドローネ三角形(シンプレックス)をなす単位セルDTにより隙間なく区画されている。このドローネ三角形を用いた具体的な制御の流れを図9のフローチャートに示す。まず、取得された外気温ξと日射量ηとの組を座標成分とする実制御座標点pxが属している単位セルDTを特定する(S1)。そして、特定された単位セルDTの各頂点をなす3つのモデル座標点を被モーフィング座標点pa,pb,pcとして選択する(S2)。
そして、図6に示すように、被モーフィング座標点pa,pb,pcに対応する3個のモデル制御パターンPa,Pb,Pcを制御データメモリ170から読み出し(S3)、M次元部分入力空間MPS(ξ−η平面)における各被モーフィング座標点pa,pb,pcの実制御座標点pxまでの距離に応じた重みにてモーフィングすることにより、実制御座標点pxに対応する合成制御パターンPxを作成する(S4)。この計算は、図1のモーフィング計算部172が行なう。
図7は、制御パターンの、ドローネ三角形を用いたポリモーフィングのアルゴリズムを概念的に示すものである。ここでは、ドローネ三角形の頂点に対応する3つの制御パターン図形P,P,Pを合成する場合を例にとっており、WijはPからPへのワープ関数で、P上の各点に対応するP上の点を特定する。合成制御パターンPを生成するには、まずWijをPの重心座標gに適用してP毎にWijを線形内挿し、中間ワープ関数Wバーを導く。各Pは、隣接する2つのものが、Wバーにより実制御座標点のpx重心座標Gに応じた重みで中間合成され、中間制御パターンPバーを生成する。合成制御パターンPxは、Pバーの各点(具体的には、各ハンドリング点)を重心座標gが示す重みにて線形結合して得られる。
図8は、これをさらに具体的に展開して示すものであり、ξ−η平面上にて、被モーフィング座標点pa,pb,pcをそれぞれ点A,B,Cとし、また、実制御座標点pxを点Xとする。三角形ABCの各頂点A,B,Cから、点Xを通って各辺と交差する直線を考え、各辺との交点をD,E,Fとすると、pxの重心座標Gの各成分は、図中のga,gb,gcとして式(1)により表わされる。図中の各点の座標値及び各線分の長さは周知の解析幾何学の手法により計算できるが、いずれも初等的であるため詳細な説明は略する。すると、3つの中間制御パターンPバーは、図中のPd,Pe,Pfとして式(2)により計算できる。その結果、Pxはga,gb,gcを重みとするPd,Pe,Pfの線形結合として計算できる。
ここで、被モーフィング座標点pa,pb,pcに対応する各モデル制御パターンPa,Pb,Pcの実体は、前述のごとく、各々同じ数のハンドリング点を繋いで得られる折線状パターンであり、β−α平面上でのハンドリング点hiの座標値の集合と等価であるから、図8の式(2)のPa,Pb,Pcに、それぞれ対応するハンドリング点の座標値を代入すれば、中間制御パターンPd,Pe,Pfのハンドリング点の集合を得ることができ、さらに、これを(3)式に代入することにより、合成制御パターンPxのハンドリング点の集合を得ることができる。これを相互に繋ぐと最終的な合成制御パターンPxが得られる。そして、この合成制御パターンPx上にて、現在検出されている温度偏差β(第二種入力変数)の値に対応する風量αの値を読み取り、制御値として出力する(S5)。
次に、M次元部分入力空間MPS(ξ−η平面)は、図10に示すように、ドローネ三角形(シンプレックス)よりも頂点数の多い冗長頂点単位セルDTにより区画することもできる。シンプレックスよりも多い頂点数(M+2個以上)の冗長頂点単位セルHCBを採用することで、合成制御パターンPxの作成に関与するモデル制御パターンPa,Pb,Pc,Pdの数を増やす(冗長化する:ここでは3→4)ことができ、当該合成制御パターンPxに従う実制御座標点pxでの制御内容の妥当性をより高めることができる。
本実施形態では、冗長頂点単位セルHCBは、頂点数2個の超直方体HCBとして選んである。超直方体HCBの各辺は、M次元部分入力空間を張るM本の座標軸のどれかに平行となるように定められており、M次元部分入力空間を直交座標系としたとき、図10のごとく次元数Mが2のときは長方形(正方形を概念として含む)であるが、次元数Mが3のときは直方体(立方体を概念として含む)となる。
冗長頂点単位セルHCBの頂点、すなわちモデル座標点の全てをランダムに設定した場合は、モデル座標点1つに付きM個の座標成分が存在することから、モーフィング演算にはM×(全頂点数)の座標値を独立変数として考慮しなければならない。しかし、上記のような超直方体HCBを採用すれば、超直方体HCBの各辺の長さ(M通り)が与えられれば、超直方体HCBの頂点をなす1つのモデル座標点の座標から、他のモデル座標点の座標を自動的に決定できる。
図13には、次元数Mが2の場合の実例を示しており、ξ−η平面(M次元部分入力空間)の原点に最も近い長方形(超直方体)HCBの頂点をなすモデル座標点paの座標を(ξa,ηa)とすれば、長方形HCBのξ軸方向の辺長をΔξ、η座標軸方向の辺長をΔηとして、残り3つの頂点をなすモデル座標点pb,pc,pdは、それぞれpb:(ξa+Δξ,ηa)、pc:(ξa,ηa+Δη)、pc:(ξa+Δξ,ηa+Δη)として表わすことができる。図10に示すように、冗長頂点単位セルをなす複数の超直方体HCBが全て合同となるように定めた場合(つまり、各モデル座標点がξ軸方向とη軸方向にそれぞれ等間隔でマトリックス状に配列した場合)は、Δξ及びΔηは一定、すなわち定数される。従って、モーフィング演算においては、1個のモデル座標点の座標成分ξa,ηaのみを独立変数として扱えばよく、演算に考慮すべき独立変数の2個で済むようになり、モーフィング演算の大幅な簡略化を図ることができるのである。
この超直方体HCB(長方形)を用いた具体的な制御の流れを図12のフローチャートに示す。まず、図10に示すように、取得された外気温ξと日射量ηとの組を座標成分とする実制御座標点pxが属している超直方体HCBを特定する。そして、図11に示すように、特定された超直方体HCBの各頂点をなす4つのモデル座標点を被モーフィング座標点pa,pb,pc,pdとして選択し、これらに対応する4個のモデル制御パターンPa,Pb,Pc,Pdを制御データメモリ170から読み出し(S201)、M次元部分入力空間MPS(ξ−η平面)における各被モーフィング座標点pa,pb,pc,pdの実制御座標点pxまでの距離に応じた重みにてモーフィングすることにより、実制御座標点pxに対応する合成制御パターンPxを作成する(S202)。この計算は、図1のモーフィング計算部172が行なう。
図13に、超直方体HCB(長方形)を用いた制御パターンのポリモーフィングのアルゴリズムを概念的に示している。被モーフィング座標点pa,pb,pc,pdをそれぞれA,B,C,Dとして、長方形HCB(超直方体)の実制御座標点pxを通って各辺(CA,DB及びCD,AB)と平行な2本の直線(2個の平面)で切断する。これにより、長方形HCBは、それぞれ実制御座標点X(px)を共有し、かつ長方形HCBの頂点をなすモデル座標点を排他的に1個ずつ取り合う4個(2個)の部分長方形SCB、具体的には長方形CKXN(面積:Sb),NXLD(面積:Sa),KAMX(面積:Sd),KMBL(面積:Sd)に区切られる。
そして、各部分長方形(部分直方体)SCBの長方形(超直方体)HCBに対する相対面積(相対体積)を、当該部分長方形SCBに含まれるモデル座標点の長方形HCBの対角線方向反対側に位置するモデル座標点(すなわち、paに対してはpd、pbに対してはpc、pdに対してはpa、pcに対してはpb)への重みとする形でモーフィングを行なう。すなわち、長方形HCBの面積をS0とすれば、合成制御パターンPxは、
Px=(1/S0)×(Sa・Pa+Sb・Pb+Sc・Pc+Sd・Pd)
‥(13)
にて合成することができる。
上記モーフィング演算のアルゴリズムは、実は、次のような補間合成演算を逐次的に実行して合成制御パターンPxを得るのと数学的に全く等価である。すなわち、超直方体HCBの各座標軸方向に隣接する2つのモデル座標点間にて、それらモデル座標点が張る線分への実制御座標点pxの正射影点を分点とする形で、梃子の原理により一次中間制御パターンを合成する。次いで、超直方体HCBの各面の対向する2辺について得られた一次中間制御パターンに対し、対応する正射影点が張る線分について実制御座標点pxの正射影点を新たに分点として設け、その分点に関してそれら一次中間制御パターン同士を梃子の原理により合成し、二次中間制御パターンとする。この一連の処理を、分点が実制御座標点Xにたどり着くまで繰り返す。超直方体HCBのどの辺から補間演算を開始しても、最終的に得られる結果は全て同じである。
図13に、その計算例を示している。すなわち、線分DBへの実制御座標点pxの正射影点をLとし、線分CAへの実制御座標点pxの正射影点をKLとすれば、線分DB側の一次中間制御パターンPが図中の式(11)により、線分CA側の一次中間制御パターンPが図中の式(12)により計算される。そして、線分KL上には実制御座標点Xが存在するので、これを分点として一次中間制御パターンP及びPを用いて二次中間制御パターンを求めると、(13)式通りの合成制御パターンPxが得られることは、幾何学的に容易に理解できる。なお、Pxをξa及びηaを用いて表した結果を(17)式に示している。
図13によると、長方形HCB内の実制御座標点Xの合成制御パターンPxを合成するのに、線分CA上での合成、線分DB上での合成、そして、線分KL上での合成、の都合3回のパターン合成処理(次数にすれば2)が必要であった。これをM=3の場合に拡張すれば、直方体HCBの対向する2枚の長方計について上記2次にわたる合成処理を行ない、最終的に両長方形について得られた二次中間制御パターン同士を、直方体HCB内の実制御座標点Xを分点として合成することにより、三次中間制御パターンを求めると、それが最終的に得るべき合成制御パターンPxとなる。パターン合成処理の回数は3×2+1=7回である。
すると、M=4以上の場合についても、M−1次の場合のパターン合成処理を、実制御座標点Xを挟む2つの系について行ない、その結果をXを分点として合成することで、最終的な合成制御パターンPxが得られることは容易に類推できる。従って、M=nの場合のパターン合成処理回数をQ、M=n−1の場合のパターン合成処理回数をQn−1とすれば、
=2Qn−1+1、Q2=4
の漸化式が成り立つので、これを解くと、Q=2n−1+1となる。つまり、M次元部分入力空間に、単位セルとして超直方体を導入した場合、合成制御パターンPxを得るために必要十分なパターン合成回数は2−1回である。これは、M=2の場合は3、M=3の場合は7となり、上記の結果とも一致している。
M次元部分入力空間の次元数が大きい場合、すなわち、第一種入力変数を多数考慮しなければならない場合、第二種入力変数と出力変数との関係を示す二次元線図パターンを、モデル制御パターンとして必要な数だけ実験的に用意することができれば、第一種入力変数の現在値に対応した二次元線図パターンを、2−1回の処理により合成制御パターンPxとして得ることができる。特に、二次元線図パターンが限られた個数のハンドリング点により規定されていれば、個々の合成処理はハンドリング点座標の線形補間演算で代用できる。このような演算であれば、M=20程度の多変量系となった場合も、合成制御パターンPxを決める演算回数は、1つの二次元線図パターン上のハンドリング点総数を10個として、(220−1)×10=10.5×10回程度となる。数百万個のカラー画素をモーフィングする画像モーフィング処理や、20もの変数を有する多変量制御系を従来の手法(例えば、線形計画法や二次計画法など)により最適化する問題と比較すれば、処理演算負荷ははるかに小さいといえる。
なお、上記の実施形態にて、出力変数を風量αから吹出し気流の温度に置き換えても、全く同様の手法によりその出力設定値を計算できる。この場合、上記の説明にて風量αは、該温度あるいはこれに一義的に対応したパラメータである、エアミックスダンパー3(図1)の角度位置γで置き換えられる。そして、モデル制御パターンは、図3Aに示すように、温度偏差βとこの角度位置γとの関係を示す線図パターンとされ、図3Bに示すごとく、制御データメモリ170には、該線図パターンRPi(≡R1〜R30)が、各モデル座標点pi≡(ξi,ηi)と対応付けて記憶される。
なお、本発明の適用対象はエアコン以外の電子機器の制御にも適用できる。また、第一種入力変数の数Mは3以上に設定することも可能である。この場合は、モデル制御パターンは3次元以上の部分入力空間上にマッピングした形で用意され、4以上のモデル制御パターンをポリモーフィングすることにより合成制御パターンが得られる。さらに、第二種入力変数の数(N−M)を2以上に設定することも可能である。この場合、制御パターン空間は3次元以上の空間として与えられ、制御パターン図形も該空間内の曲面として用意される。
本発明の適用対象となるエアコン制御装置の電気的構成の一例を示すブロック図。 その制御系統の要部を抽出して示すブロック図。 制御データメモリの内容を示す概念図。 制御データメモリ内容の別例を示す概念図。 制御パターンのデータ例を示す図。 同じく別例を示す図。 M次元部分入力空間の単位セルへの分割方法の第一例を示す図。 図5における実制御座標点と被モーフィング座標点との関係を示す図。 ポリモーフィングの概念図。 線図パターンとして与えられた制御パターンの、ポリモーフィング計算アルゴリズムの概念の第一例を説明する図。 図8のポリモーフィング計算アルゴリズムを利用した風量制御の処理流れを示すフローチャート。 M次元部分入力空間の単位セルへの分割方法の第二例を示す図。 図10における実制御座標点と被モーフィング座標点との関係を示す図。 図10の場合の風量制御の処理流れを示すフローチャート。 線図パターンとして与えられた制御パターンの、ポリモーフィング計算アルゴリズムの概念の第二例を説明する図。
符号の説明
CA 空調制御装置(機器制御装置)
β,ξ,η 必須入力変数群
ξ,η 第一種入力変数
β 第二種入力変数
α 出力変数
MPS M次元部分入力空間
CPS 制御パターン空間
p モデル座標点
px 実制御座標点
pa,pb,pc 被モーフィング座標点
P モデル制御パターン
Px 合成制御パターン
hi ハンドリング点
DT 単位セル(モーフィング対象空間領域、ドローネ三角形)
HCB 超直方体(冗長頂点単位セル)
170 エアコンECU
171 モーフィング計算部(制御パターンモーフィング手段)
172 制御データメモリ(制御特性情報記憶手段)

Claims (13)

  1. 少なくともN個(N≧2)の必須入力変数群を参照して、該必須入力変数群に対し一義的に定められた1つの出力変数の値を演算し、その得られた出力変数値に基づき対象機器の制御を行なう方法であって、
    前記必須入力変数群は、その一部をなす種別の固定されたM個(1≦M<N)の第一種入力変数と、前記必須入力変数群の残余をなす形で該第一種入力変数とは排他的に種別が定められた(N−M)個の第二種入力変数とからなり、
    前記必須入力変数群の値に応じて前記出力変数の値を決定する制御特性情報として、前記第一種入力変数が張るM次元部分入力空間上の予め定められたQ個(Q≧2)のモデル座標点毎に、(N−M)個の前記二種入力変数の値と前記出力変数の値との関係を定めるモデル制御パターンを複数離散的に用意し、
    前記必須入力変数群のN次元入力値が与えられたとき、該N次元入力値に含まれる前記第一種入力変数の前記M次元部分入力空間上の座標点を実制御座標点として、該M次元部分入力空間にて前記実制御座標点を内部に含む予め定められたモーフィング対象空間領域に存在するJ個(2≦J≦Q)のモデル座標点を被モーフィング座標点として特定し、
    前記第二種入力変数と前記出力変数とが張る制御パターン空間において、各被モーフィング座標点に対応するJ個の前記モデル制御パターンの形状を、前記M次元部分入力空間における各前記被モーフィング座標点の前記実制御座標点までの距離に応じた重みにてモーフィングすることにより、前記実制御座標点に対応する合成制御パターンを作成し、
    該合成制御パターンに基づいて前記N次元入力値に対応する出力変数値を計算することを特徴とする機器制御方法。
  2. 前記第一種入力変数の個数Mが2以上であり、
    前記M次元部分入力空間内にて隣接する前記モデル座標点を相互にフレーム連結することにより、各頂点を前記モデル座標点とする形で前記M次元部分入力空間を隙間なく区画するよう複数の単位セルが配列形成されてなり、
    それら複数の単位セルのうち、前記実制御座標点を内包するものを前記モーフィング対象空間領域とし、該単位セルの頂点をなすモデル座標点を前記被モーフィング座標点として使用する請求項1記載の機器制御方法。
  3. 前記単位セルは、各前記モデル座標点を頂点とする、頂点数M+1個のシンプレックスである請求項2記載の機器制御方法。
  4. 少なくともN個(N≧2)の必須入力変数群を参照して、該必須入力変数群に対し一義的に定められた1つの出力変数の値を演算し、その得られた出力変数値に基づき対象機器の制御を行なう方法であって、
    前記必須入力変数群は、その一部をなす種別の固定されたM個(2≦M<N)の第一種入力変数と、前記必須入力変数群の残余をなす形で該第一種入力変数とは排他的に種別が定められた(N−M)個の第二種入力変数とからなり、
    前記必須入力変数群の値に応じて前記出力変数の値を決定する制御特性情報として、前記第一種入力変数が張るM次元部分入力空間上の予め定められたQ個(Q≧2)のモデル座標点毎に、(N−M)個の前記二種入力変数の値と前記出力変数の値との関係を定めるモデル制御パターンを複数離散的に用意し、
    前記必須入力変数群のN次元入力値が与えられたとき、該N次元入力値に含まれる前記第一種入力変数の前記M次元部分入力空間上の座標点を実制御座標点として、該M次元部分入力空間にて前記実制御座標点を内部に含む予め定められたモーフィング対象空間領域に存在するJ個(2≦J≦Q)のモデル座標点を被モーフィング座標点として特定し、
    前記第二種入力変数と前記出力変数とが張る制御パターン空間において、各被モーフィング座標点に対応するJ個の前記モデル制御パターンの形状を、前記M次元部分入力空間における各前記被モーフィング座標点の前記実制御座標点までの距離に応じた重みにてモーフィングすることにより、前記実制御座標点に対応する合成制御パターンを作成し、
    該合成制御パターンに基づいて前記N次元入力値に対応する出力変数値を計算するとともに、
    前記M次元部分入力空間内にて隣接する前記モデル座標点を相互にフレーム連結することにより、各頂点を前記モデル座標点とする形で前記M次元部分入力空間を隙間なく区画するように定められた、頂点数がM+2個以上の冗長頂点単位セルが複数配列形成されてなり、
    それら複数の冗長頂点単位セルのうち、前記実制御座標点を内包するものを前記モーフィング対象空間領域とし、該冗長頂点単位セルの頂点をなすモデル座標点のM+2個以上を前記被モーフィング座標点として使用することを特徴とする機器制御方法。
  5. 前記冗長頂点単位セルは、頂点数2個の超直方体とされてなる請求項4記載の機器制御方法。
  6. 前記冗長頂点単位セルをなす複数の前記超直方体が互いに合同となるように定められてなる請求項5記載の機器制御方法。
  7. 前記超直方体を、前記実制御座標点を通って各面と平行なM個の平面で切断することにより、それぞれ前記実制御座標点を共有し、かつ前記超直方体の頂点をなす前記モデル座標点を排他的に1個ずつ取り合う2個の部分直方体に区切り、各部分直方体の前記超直方体に対する相対体積を、当該部分直方体に含まれるモデル座標点の前記超直方体の対角線方向反対側に位置するモデル座標点への重みとする形で前記モーフィングを行なう請求項5又は請求項6に記載の機器制御方法。
  8. 前記第二種入力変数の個数(N−M)が1であり、前記モデル制御パターン及び前記合成制御パターンが、該1個の第二種入力変数と前記出力変数とが張る前記制御パターン空間としての制御パターン平面上に描画可能な二次元線図パターンとされてなる請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の機器制御方法。
  9. 前記二次元線図パターンは、パターン起点からパターン終点に向けて配列する一定個数のハンドリング点により形状規定されるものであり、全ての前記モデル座標点に対応する二次元線図パターンの各ハンドリング点同士が配列順位に従い一義的に対応付けられてなり、
    各前記被モーフィング座標点にかかる前記二次元線図パターンの各ハンドリング点の対応するもの同士をモーフィングすることにより合成ハンドリング点を生成し、それら合成ハンドリング点により前記合成制御パターンをなす二次元線図パターンを規定するようにした請求項8記載の機器制御方法。
  10. 前記二次元線図パターンは、前記ハンドリング点を順次直線連結して得られる折線状パターンである請求項9記載の機器制御方法。
  11. 前記対象機器がエアコンであり、
    前記必須入力変数群は、外気温、日射量、内気温の設定温度に対する温度偏差の2以上を含むものであり、
    前記出力変数は、吹出し気流の風量及び温度のいずれかである請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の機器制御方法。
  12. 前記必須入力変数群が前記外気温、前記日射量及び前記温度偏差の3つであり、
    前記第一種入力変数が前記外気温及び前記日射量の2つであり、
    前記第二種入力変数が前記温度偏差の1つであり、
    前記出力変数が前記吹出し気流の風量又は温度であり、
    前記M次元部分入力空間は、前記外気温と前記日射量とが張る二次元座標平面であり、該二次元座標平面上の複数のモデル座標点と対応付ける形で前記モデル制御パターンが、前記温度偏差と前記風量又は前記温度との関係を示す二次元線図パターンとして個別に用意されてなり、前記合成制御パターンはそれらモデル制御パターンをなす二次元線図パターンをモーフィングして合成される二次元線図パターンである請求項11に記載の機器制御方法。
  13. 少なくともN個(N≧2)の必須入力変数群を参照して、該必須入力変数群に対し一義的に定められた1つの出力変数の値を演算し、その得られた出力変数値に基づき対象機器の制御を行なう装置であって、前記必須入力変数群は、その一部をなす種別の固定されたM個(1≦M<N)の第一種入力変数と、前記必須入力変数群の残余をなす形で該第一種入力変数とは排他的に種別が定められた(N−M)個の第二種入力変数とからなり、
    前記必須入力変数群の値に応じて前記出力変数の値を決定する制御特性情報として、前記第一種入力変数が張るM次元部分入力空間上の予め定められたQ個(Q≧2)のモデル座標点毎に複数離散的に用意された、(N−M)個の前記二種入力変数の値と前記出力変数の値との関係を定めるモデル制御パターンを記憶する制御特性情報記憶手段と、
    前記必須入力変数群のN次元入力値が与えられたとき、該N次元入力値に含まれる前記第一種入力変数の前記M次元部分入力空間上の座標点を実制御座標点として、該M次元部分入力空間にて前記実制御座標点を含む予め定められたモーフィング対象空間領域に存在するJ個(2≦J≦Q)のモデル座標点を被モーフィング座標点として特定する被モーフィング座標点特定手段と、
    前記第二種入力変数と前記出力変数とが張る制御パターン空間において、各被モーフィング座標点に対応するJ個の前記モデル制御パターンの形状を、前記M次元部分入力空間における各前記被モーフィング座標点の前記実制御座標点までの距離に応じた重みにてモーフィングすることにより、前記実制御座標点に対応する合成制御パターンを作成する制御パターンモーフィング手段と、
    該合成制御パターンに基づいて前記N次元入力値に対応する出力変数値を計算する出力変数計算手段と、
    を有することを特徴とする機器制御装置。
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