JP4221867B2 - 制御量算出装置、空調制御装置及び記録媒体 - Google Patents

制御量算出装置、空調制御装置及び記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば空調制御において外気温、内気温、日射量等から風量を算出するというような、n個の変数から一の制御量を算出する制御量算出装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、例えば車両用自動空調装置(オートカーエアコン)では、車室外の気温である外気温、車室内の気温である内気温、及び日射量等の環境条件に基づいて、風量や吹き出し口温度等を制御する。そのため、従来より、オートカーエアコンには、環境条件から風量又は吹き出し口温度等の制御量を算出するための情報(以下「制御特性」という。)を記憶している。この制御特性は、車両毎に調整されたものであり、ROMなどの不揮発性の記憶媒体に記憶されているのが一般的である。したがって、制御特性は、固定的なものであり、通常は変更することができない。以下、このように車両出荷時に固定的に記憶された制御特性を既定値制御特性という。
【0003】
以下、この制御特性に関する問題点について説明する。最初に制御特性に基づく制御量の算出処理に関する問題点を述べ、次に制御特性の学習についての問題点を述べる。
(1)制御特性に基づく制御量の算出処理について説明する。なお、ここでは風量制御を例に挙げて説明する。
【0004】
風量制御は、通常、センサにより計測した外気温、内気温、日射量を入力信号とし、その3つの入力信号から上述した制御特性に従って風量を算出し、算出された風量となるよう送風機を駆動制御するものである。
図26には、風量を算出するための制御特性の一例として、外気温、日射量を一定とし、内気温のみを変化させた場合の冷房風量制御特性としてのマップを示した。このマップは、オートカーエアコンの設定温度(内気温の目標温度)が25℃となっている場合を示しており、内気温が設定温度25℃に近づくと最小風量とし、設定温度よりも内気温が高くなるにしたがって風量が増加することを示している。そして、およそ50℃で最大風量となることを示している。ここでは一の入力信号としての内気温から風量を算出するためのマップを示したが、入力信号が複数個になった場合であっても、従来行われてきた制御特性に基づく制御量の算出は、このようないわゆるマップ制御であった。
【0005】
次に入力信号が複数個ある場合の従来のマップ制御について説明する。
まず入力信号が2つの場合、すなわち内気温と日射量とから風量を算出する場合を説明する。この場合、図27に示すように、内気温(x)と日射量(y)とで定まる平面上の点(x,y)に対して風量を対応させればよい。しかしながら、内気温(x)と日射量(y)とで定まる平面上の点(x,y)の全てに、すなわち入力空間全体に風量を対応させることは現実的でない。したがって、次に示すような手法を用いていた。
【0006】
その手法とは、図27に示すように入力空間をメッシュ状に分割して入力空間を部分空間に区分し、この部分空間の境界を示す線分の交点にそれぞれ風量を対応させておき、部分空間内部の点に対応する風量を双1次補間にて求めるものである。
【0007】
例えば図27に示す例で言えば、2つの入力信号、内気温(x)と日射量(y)とが入力されると、内気温(x)と日射量(y)とで定まる平面上の点A(x,y)がどの部分空間に属しているかを判断し、その部分空間を定める4つの頂点(x0 ,y0 ),(x1 ,y0 ),(x0 ,y1 ),(x1 ,y1 )と、その4つの頂点に対応させて記憶された風量に基づく双1次補間を行うという具合である。
【0008】
点(x0 ,y0 )に対応する風量をblw00、点(x1 ,y0 )に対応する風量をblw10、点(x0 ,y1 )に対応する風量をblw01、点(x1 ,y1 )に対応する風量をblw11とすれば、この双1次補間のアルゴリズムは、次に示す如くである。
【0009】
最初に次の式7,8によってX,Yを算出する。
X=(x−x0 )/(x1 −x0 ) … 式7
Y=(y−y0 )/(y1 −y0 ) … 式8
次に、下記式9によって点A(x,y)に対応する風量blwを算出する。
blw=(1−X)(1−Y)×blw00+X(1−Y)blw10
(X−1)Y×blw01+XY×blw11 … 式9
なお、ここでは入力信号が2つの場合を説明したが、3つ以上の場合であっても同様の手法で計算することができる。
【0010】
一般的に、従来の既定値制御特性は、入力空間の部分空間の頂点とその頂点における風量との対応関係として具象化されるものであった。そして、この既定値制御特性に基づく制御量の算出に双線形補間を用いていたため、計算量が多くなるという問題があった。この計算量という点について言えば、入力信号が増えるほど多くなってしまう。
(2)次に、制御特性の学習について説明する。
【0011】
従来、既定値制御特性は固定的であるため、利用者は自動制御される風量に不満があると、スイッチ操作で風量を調節する必要がある。
この問題を解決する手法として、利用者がスイッチ操作を行った際の環境条件とその環境条件に対して利用者自らが設定した風量とを教師データとして、既定値制御特性を利用者の好む制御特性に更新する学習を行うことが挙げられる。
【0012】
ここで考慮すべき点は、ある限定された環境条件の下で利用者が設定した風量から、どのようにして環境条件全体に対しての制御特性を更新するのが適切かということである。
そこで次に、各利用者の好む風量制御特性が、どのようなものであるかを考えることとする。3人の被験者N,T,Yの好む冷房時の風量を調べたところ、図28に示す結果を得た。図28には、日射量を500W/m2 に固定した場合における内気温と各被験者N,T,Yが好む風量との対応関係を示した。なお、図28(a)は外気温が20℃の場合であり、図28(b)は外気温が30℃の場合であり、図28(c)は外気温が35℃の場合である。
【0013】
そして、図29は、図28(b)に示される結果を簡略化して示したものである。図29から分かるように、内気温に対して各被験者N,T,Yの好む風量は、図26に示したような冷房風量制御特性としてのマップの最大風量から最小風量への傾斜に現れている。したがって、制御特性の学習において、各利用者の好む制御を実現するために、この場合、制御特性としてのマップの傾斜を変えることが必要である。例えば図30に示すような内気温と風量とを対応させた既定値制御特性としてのマップに基づく風量制御において、図30(a)に示すように内気温T1で利用者が風量を下げ、内気温T2で利用者が風量を上げた場合、図30(b)に示すような、風量修正のあった内気温T1,T2において、それぞれ修正された風量を通るような傾きを有するマップに変更するという具合である。
【0014】
この観点から見ると、特開平5−149602号公報には、住宅用空調装置における制御特性の学習についての技術が開示されているが、この技術は図31に示すように、内気温と修正後の風量とを教師データとして、その教師データの近傍のみで制御特性を更新するものであるため、環境条件全体において利用者の好みの風量制御を実現することはできない。
【0015】
また、特開平7ー172143号公報には、車両用空調装置において、外気温、日射量に応じて空調起動時の風量の上限を学習する技術が開示されている。しかし、ここに開示された技術は、1つの入力信号である外気温から風量の上限を算出するための折れ線で示される制御特性としてのマップを変更するものであり、マップの傾きを変更してはいるものの、1つの入力信号に対するマップに関するものである。そのため、日射量に関しては、日射量が所定量よりも大きいとき(日射量大)と小さいとき(日射量小)とで2種類のマップを使い分けるようにしている。
【0016】
これを図32に示した。図32(a)は学習前のマップを示し、図32(b)は学習後のマップを示している。このように外気温から風量の上限という制御量を算出するための制御特性である折れ線のマップを有しており、このマップ(制御特性)の傾きを変えることはできるものの、日射量については、その日射量に応じて日射量大用マップと日射量小用マップを使い分ける。
【0017】
したがって、この場合は、日射量に対して連続的に制御を変えることができず、日射量に対する細かな制御ができないという問題があった。さらに、この手法によって、入力信号を増やしていった場合には、保持すべきマップの数が級数的に多くなってしまうことが問題となる。例えば、日射量に加えてラジエータ水温の大小について別の制御を行おうとした場合、日射量大でラジエータ水温大に対応するマップ、日射量大でラジエータ水温小に対応するマップ、日射量小でラジエータ水温大に対応するマップ、日射量小でラジエータ水温小に対応するマップという4つのマップが必要となってくる。
【0018】
例えば2つの入力信号から一の制御量を算出するための制御特性は、一般的に3次元平面に埋め込まれた2次元の図形である曲面として具象化することができる。図2(a)に示す如くである。したがって、理想的には、この曲面形状、すなわち曲面の各部分の位置・曲率を教師データに基づいて更新することが、適切な学習であると考えられる。しかしながら、このような任意の曲面を取り扱うことには技術的な困難が伴い、従来実現されていなかった。
【0019】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、センサからの入力信号というような一又は複数個の入力変数から制御量を算出する制御量算出装置において、制御量の算出計算を簡単にすることを第1の目的とし、また、第1の目的に加え、制御量を算出するための制御特性に対する適切な学習を可能とすることを第2の目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
第1の目的を達成するためになされた請求項1および3に記載の制御量算出装置は、外部から入力されるn個の入力変数に対して制御量を算出する装置である。ここでnは自然数であり、以下記述するnも同じとする。
【0021】
本発明の制御量算出装置は、平面方程式記憶手段を備え、この平面方程式記憶手段には、n個の入力変数から一の未知数を算出可能な平面の方程式が記憶されている。そして、この平面の方程式は、n次元入力空間が分割された複数の部分空間に対応してそれぞれ定義されている。
【0022】
ここで、「n次元入力空間」及び「部分空間」について説明しておく。
n次元入力空間は、n個の入力変数に対応するn次元空間内の点の集合として想定される。n個の入力変数がそれぞれ決まると、このn個の入力変数は、n次元空間内の一点として表せる。したがって、このn個の変数に対応する点の集合は、各変数の取り得る値の範囲に応じて、n次元空間内の領域を形成する。この領域をn次元入力空間と呼ぶことにする。例えば、nが3であれば直方体形状の領域となるし、nが2であれば長方形形状の領域となる。一方、部分空間は、このn次元入力空間を分割した空間として定義される。
【0023】
上述した平面の方程式は、このような部分空間にそれぞれ対応して定義されおり、制御量算出手段は、n個の入力変数が入力されると、平面方程式記憶手段に記憶された平面の方程式の中から当該入力変数に対応する点の属する部分空間に対応して記憶された平面の方程式を選択し、選択した平面の方程式を用いて入力変数から一の未知数を制御量として算出する。
【0024】
ここで本発明に対する理解を容易にするために、本発明の前提とする思想を説明する。
n個の入力変数から一の制御量を算出するには、n次元入力空間から1次元空間への写像を定義できればよい。例えば2次元の入力空間から1次元空間への写像は、図2(a)に示すように、3次元空間に埋め込まれたなめらかな2次元の図形である曲面を用いて定義することができる。図2(a)では、日射量及び内気温が決まると、すなわち日射量及び内気温という2軸で定義される平面内の1点が決まると、曲面との交点を求めることによって風量が算出される。これを拡張すれば、n次元入力空間から1次元空間への写像は、n+1次元空間に埋め込まれたなめらかな曲面を用いて定義することができる。すなわち、この曲面が制御特性を具象化したものである。
【0025】
ところで、数学的に、なめらかな曲面は各点の近く(近傍)だけを眺めると平面と同じ性質を持つことが知られている(現代数学小事典、p356、1977、講談社ブルーバックス)。そして、この性質は、曲面が何次元の空間内に埋め込まれていても成立する。したがって、この性質を利用すれば、任意のなめらかな曲面は、十分小さな平面を組み合わせることで近似できる。これは、上述したような曲面で具象化された制御特性が、十分小さな平面を組み合わせることで近似できることを意味する。例えば図2(a)に示したような3次元空間内に埋め込まれたなめらかな曲面で具象化された風量制御特性は、図2(b)に示すような15個の平面1〜15の組み合わせで近似できる。
【0026】
そこで、本発明では、この点に着目し、n次元入力空間を部分空間に分割し、それぞれの部分空間に平面の方程式を対応させた。部分空間は、図2(b)の例で言えば、風量制御特性を具象化した曲面を近似した平面モデルを、日射量(x)及び内気温(y)の2軸からなる平面に射影した場合に各平面1〜15が射影される領域とすればよい。図3(a)に示す如くである。入力空間をこのような部分空間に分割すれば、平面1〜15が各部分空間にそれぞれ対応することになる。
【0027】
なお、入力空間を図3(b)に示すようにメッシュ状に分割し、分割されたそれぞれの部分空間に平面を対応させるようにしてもよい。この場合は、分割が簡単になるという点で有利であるが、必要な近似精度を得るために全体として分割を細かくする必要があり、無駄に平面の個数が増える可能性が高い。したがって、このようなことを考えると、上述したように制御特性としての曲面を平面モデルで近似し、その平面モデルに合わせて入力空間を分割することが好ましい。
【0028】
そして、本発明では、入力された入力変数に対応する部分空間を特定し、その部分空間に対応する平面の方程式を用いて制御量を算出する。例えば図3(a)に示すように、内気温(x)が10℃、日射量(y)が600W/m2 である場合、この2つの入力変数に対応する点は部分空間8に属するため、部分空間8に対応する平面8の方程式を用いて制御量を算出するという具合である。
【0029】
従来は、図27を用いて上述したように、n次元入力空間を部分空間に分割し、この部分空間の頂点に対して制御量を対応させておき、部分空間内部の点に対応する制御量は、双線形補間を行って算出していた。この場合、図27に示したような、2次元入力空間の場合であっても、すなわち2つの入力信号に基づく計算であっても、上述した式9の如く計算量が多くなる。そして、入力信号が増えれば増えるほど計算量が多くなるという問題があった。
【0030】
これに対して、本発明の制御量算出装置では、n個の入力変数に対応する部分空間に対応する平面の方程式を選択し、選択された平面の方程式を用いて制御量を算出する。一般に、平面の方程式は、f(x)=ax+by+・・・+cz+dと表され、n個の入力変数x,y,・・・,zから即座に計算できる。したがって、制御量の算出計算が極めて簡単になる。
【0031】
また、第2の目的を達成するためになされた請求項1および3に記載の制御量算出装置は、上述した制御量算出装置の構成に加え、さらに、制御量を外部から修正するための制御量修正手段と、学習制御手段とを備えている。
ここで制御量修正手段としては、例えば制御量として空調制御における風量を算出する場合には、利用者によって操作される風量の修正スイッチが該当する。また、例えば外部から通信などによって制御量の修正指示を行うためのインターフェース装置であってもよい。学習制御手段は、制御量修正手段を介して制御量が修正されると、当該修正後の制御量及び当該修正の際に入力された入力変数を教師データとして教師データ記憶手段に記憶する。このとき、その入力変数に対応する部分空間に対応する教師データとして記憶する。以下、この修正の際に入力された入力変数に対応する部分空間を「対象部分空間」と便宜上呼ぶ。そして、学習制御手段は、さらに、教師データ記憶手段に記憶された教師データの中の対応部分空間に対応する教師データに基づいて、その対象部分空間に対応する平面の方程式を更新する。
【0032】
ここで「教師データ記憶手段に記憶された教師データの中の対象部分空間に対応する教師データ」には、新たに記憶された教師データだけでなく、それ以前に記憶された教師データも含まれる。そして、「対象部分空間に対応する教師データに基づいて」とは、教師データ記憶手段に記憶された教師データの中のその対象部分空間に対応する教師データの全てに基づくことが考えられる。また、対象部分空間に対応する教師データのうち、現時点により近い時点で記憶された所定数の教師データに基づくことが考えられる。例えば利用者によって制御量の修正が行われるような装置を考えると、その利用者がほとんど変わらない状況においては、記憶された教師データの全てに基づいて平面の方程式を更新することによって、その利用者の好みを適切に反映することができると考えられる。逆に、その利用者が途中で変わるような状況においては、ある時点よりも過去に記憶された教師データが別の利用者の制御量修正操作によって記憶されたものであることも考えられるため、例えば現時点により近い時点で記憶された所定数の教師データに基づいて平面の方程式を更新することが、その利用者の好みを反映する上で有効であると考えられる。
【0033】
上述したように、本発明の制御量算出装置では、修正された制御量及び入力変数からなる教師データに基づいて、部分空間に対応して定義された平面の方程式を更新する。この平面の方程式による平面の集合は、制御特性を具象化した曲面を近似するものである。したがって、各平面を十分に小さくして近似精度を上げれば、教師データによる平面の方程式の更新は、通常では学習困難な曲面の学習に相当する。つまり、本発明は、n+1次元に埋め込まれた曲面を平面で近似し、各平面の傾斜を更新するのであるから、曲面の各部分における位置・曲率の更新に近いものとなる。すなわち、本発明による学習は上述した理想的な学習に極めて近いものであり、本発明によれば、制御特性に対する適切な学習が実現される。
【0034】
さて、上述した制御量算出装置では、平面方程式記憶手段が平面の方程式を記憶しており、学習制御手段が、記憶された平面の方程式を更新するのであるが、具体的には、次のような構成を採用する。すなわち、x,y,・・・,zのn個の入力変数及び制御量wに対して、平面の方程式が、w=ax+by+・・・+cz+dで定義されており、平面方程式記憶手段は、平面の方程式の平面係数a,b,・・・,c,dを記憶し、学習制御手段は、平面係数a,b,・・・,c,dを更新することによって平面の方程式を更新するものである。つまり、一般的に平面の方程式は、平面係数のみで決定されるため、平面方程式記憶手段にはこの平面係数を記憶しておき、学習制御手段は、この平面係数を更新することによって平面の方程式を更新するのである。
【0035】
このような構成において、上述した制御量及び入力変数からなる教師データは、(x,y,・・・,z,w)として表すことができる。したがって、ある部分空間に対応する教師データは、ある時点において、(x i ,y i ,・・・,z i ,w i )(i=0,1,2,・・・,k)と表すことができる。ここでiは教師データの記憶された順に割り振られるとする。このとき、これら教師データ(x i ,y i ,・・・,z i ,w i )をできるだけ正確に通る平面の方程式の平面係数を求めることが望ましい。
【0036】
そこで、請求項1および3に示すように、学習制御手段は、対象部分空間に対応する教師データ(x i ,y i ,・・・,z i ,w i )(i=0,1,2,・・・,k)に基づいて、平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k を次の式10にて示される連立方程式の解として求めるように構成する。
【0037】
【数5】
Figure 0004221867
【0038】
なお、上述の式10の左辺の行列は必ずしも正方行列でなく、また、特異となる場合がある。ここで特異とは、行列式から作られる方程式の中で互いに線形独立となっているものがn+1個の未知数よりも少ない場合をいう。すなわち、行列の階数(ランク)が(n+1)よりも小さくなる。この場合は、与えられた教師データから平面の方程式を一意に決定できない。
【0039】
そこで、請求項1に示すように、学習制御手段は、上記式10に示される行列の階数(ランク)が(n+1)よりも小さい場合、対象部分空間がx L ≦x≦x U ,y L ≦y≦y U ,・・・,z L ≦z≦z U の範囲に存在し、当該対象部分空間に対応する平面の方程式の平面係数がa k-1 ,b k-1 ・・・,c k-1 ,d k-1 であるとき、前記式10の解又は最小2乗解のうち、下記式11を最小にする平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k を求めるようにすることが考えられる。
【0040】
【数6】
Figure 0004221867
【0041】
ここでは上記式11に示されるような修正量の2乗和という指標を定義し、その最小化を制約条件として平面係数を決定する。これについて説明する。
教師データに基づいて平面の方程式を更新する場合、すなわち新たな平面係数を決定する場合には、元の平面の方程式をできるだけ変えないようにすることが理想的である。なぜなら、元の方程式はそれまでの教師データを反映した方程式となっており、例えば利用者の好みを反映した方程式となっているからである。したがって、更新前の平面と更新後の平面との修正量の総和を最小にすればよい。つまり、上記式11を最小にするようにすればよいのである。
【0042】
このようにすれば、上記式10で示した連立方程式が必ず一意に解けることになる。そして、この方法で求まる平面は、最新の教師データ(x k ,y k ,・・・,z k ,w k )付近を大きく修正したものとなり、制御量の修正を適切に反映したものであると共に、元の平面をできるだけ変えないものとなっているため、それまでの学習結果を有効に利用したものとなる。
【0043】
そして、上記式10に示した連立方程式の具体的な解法として、請求項2に示すように、特異値分解と呼ばれる手法を用いることが有効である。特異値分解は、特異又はそれに近い行列や方程式を扱う非常に強力な技法であり、線形最小2乗問題を解くための極め付きの方法であることが知られている(NUMERICAL RECIPES in C、p73〜81、技術評論社)。特に式10の左辺の行列が特異な場合には有効であり、上記式11を最小にするような解を求める場合には、特異値分解及び変数変換の手法を用いて計算すればよい。
【0044】
なお、この特異値分解は、浮動小数点演算を必要とする。そのため、車両に搭載される電子制御装置等、機器組み込み用の低速な固定小数点プロセッサを用いて実現することは技術的に困難である。
そこで、請求項3に示すように、平面係数a,b,・・・,cのそれぞれに対し複数個の代表値を記憶する代表値記憶手段を備えることが考えられる。このとき、学習制御手段は、上記式10に示す連立方程式を次の式12に示す連立方程式に変換し、代表値記憶手段に記憶された代表値の組み合わせの全部又は一部の中で式13を最小にする組み合わせを探索して平面係数a k ,b k ,・・・,c k とすると共に、当該平面係数a k ,b k ,・・・,c k から式14を用いて平面係数d k を求めることを特徴とするものである。
【0045】
【数7】
Figure 0004221867
【0046】
上記式10に示した連立方程式の最小2乗解を求めるのは、次の式15の最小値を与える係数a k ,b k ,・・・,c k を求めることと同値である。
【0047】
【数8】
Figure 0004221867
【0048】
ここでFが最小値であることから、上記式14を得る。
上記式14を用いれば、式10の連立方程式を式12に示した連立方程式に変換することができ、その最小2乗解は、上記式13を最小とする係数a k ,b k ,・・・,c k として決定できる。
【0049】
本発明では、代表値記憶手段に、平面係数a,b,・・・,cがとり得る有限個の代表値を予め記憶しておく。例えば平面係数aの代表値をa rep 1 ,a rep 2 ,・・・,a rep Np 、平面係数bの代表値をb rep 1 ,b rep 2 ,・・・,b rep Nq 、平面係数cの代表値をc rep 1 ,c rep 2 ,・・・,c rep Nr として、それぞれNp個、Nq個、・・・Nr個の代表値を記憶しておく。なお、明細書中にイメージデータとして取り込んだ数式及び図面に記載された数式の中では、記号「ハット」を用いて代表値を示すが、本文中では、この記号「ハット」に代え、上述したように「rep」で示すことにする。
【0050】
そして、代表値記憶手段に記憶された代表値の組み合わせの全部又は一部の中で上記式13を最小とするような代表値a rep p' ,b rep q' ,・・・,c rep r' を探索し、この探索された代表値a rep p' ,b rep q' ,・・・,c rep r' を平面係数とする。また、平面係数a k ,b k ,・・・,c k が決定されれば、式14からd k を求める。
【0051】
この技術思想は、平面方程式の平面係数を離散的な代表値で代替でき、かつ、係数値の取りうる範囲が決まっていることを前提としている。すなわち、このような前提の下では、上述したように予め記憶された代表値を用いて平面係数を決定できるのである。この構成によれば、特異値分解を利用する場合と比べ、大幅に計算量を削減でき、浮動小数点演算も必要としない。結果として、車両に搭載される電子制御装置等、機器組み込み用の低速な固定小数点プロセッサを用いて実現することができる。
【0052】
ところで、上記式13を最小にする代表値の組み合わせが複数個存在することが考えられる。そこで、請求項3に示すように、学習制御手段は、式13を最小にする代表値の組み合わせが複数個ある場合、当該対象部分空間に対応する平面係数がa k-1 ,b k-1 ・・・,c k-1 であるとき、次の式16を最小にする代表値の組み合わせを平面係数a k ,b k ,・・・,c k として求めるようにすることが考えられる。
【0053】
【数9】
Figure 0004221867
【0054】
これは、上述したように、教師データに基づいて平面の方程式を更新する場合、すなわち新たな平面係数を決定する場合には、元の平面の方程式をできるだけ変えないようにすることが理想的だからである。
この構成では、上記式16を最小にする代表値の組み合わせを平面係数として求めるため、元の平面の方程式をできるだけ変えないように新たな平面係数を決定することができ、それまでの学習結果を有効に利用できる。
【0055】
なお、算出される制御量が不連続とならないように、平面同士の境界を共通化する場合には、次のようにすればよい。
すなわち、請求項4に示すように、学習制御手段は、平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k として求めた代表値の組み合わせを基準代表値とし、隣接する部分空間に対応する平面方程式の平面係数を、当該基準代表値の前後の代表値の中から探索することによって求める。
【0056】
本発明では、対象部分空間に対応する平面係数として求めた代表値の組み合わせがa rep p' ,b rep q' ,・・・,c rep r' であるとき、この組み合わせを基準代表値とし、基準代表値の前後の代表値の中から、隣接する部分空間に対応する平面係数を、代表値の組み合わせa rep l' ,b rep m' ,・・・,c rep n' として決定する。
【0057】
ここで「前後」というのは、1≦p L ≦p ' ≦p U ≦Npとなる自然数p L ,p U を取り、p L ≦l ' ≦p U とすることをいう。この場合、l ' の取り得る代表値の個数は、p U −p L +1個となる。平面係数b,cについても同様である。このようにするのは、例えば風量制御を例に挙げれば、人間の温度感覚を考慮すると、隣接する平面の風量制御特性は滑らかに変化すべきであり、平面の境界で風量制御特性が急変するのは好ましくないからである。上述したように所定範囲の代表値、すなわち基準代表値の前後の代表値の中から、隣接する平面係数を決定すれば、制御特性の急変を防止することができる。またこのとき、計算の対象となる代表値の組み合わせを減らすことができるため、処理効率がアップする点においても有利である。
【0058】
ただし、このように代表値の中から選択的に平面係数を決定すれば、平面同士の境界が厳密には共通化されない。一方、例えば風量制御では、必ずしも平面の境界を完全に一致させる必要はない。なぜなら、部分空間の境界部分で例えば1ないし2レベル程度の風量差が生じたとしても、乗員は制御に違和感を覚えないからである。したがって、ここでいう「境界の共通化」は、境界における制御量の変化を制御上問題のない範囲に収めることを意味する。
【0059】
ところで、代表値記憶手段に記憶する代表値は、制御が不安定とならない範囲で設定すべきである。
例えば風量制御では、各入力信号に対する風量の変化率の最大値、最小値が決まっている。例えば内気温に対する変化率の範囲は[1.9,6.0](レベル/℃)であり、日射量に対する変化率の範囲は[0.013,0.034](レベル/(W/m 2 ))であり、外気温に対する変化率の範囲は[0.27,1.7](レベル/℃)である。そして、これを越えると、制御が不安定になり、快適性を損なう。例えば仮に内気温に対する変化率を30レベル/℃と設定すると、内気温が1℃上がることで風量が30レベル増加する。すると、内気温が即座に下がり、例えば1℃下がれば今度は風量が30レベル減少する。このように変化率が大きくなると、風量が振動するいわゆるハンチングが発生するのである。
【0060】
そこで、請求項5に示すように、代表値記憶手段に記憶される代表値は、各平面係数a,b,・・・,cの変更による制御量の変化率が所定範囲となるように設定することが好ましい。
例えば風量制御の例で言えば、Np個の代表値a rep p を、1.9≦a rep p ≦6.0の範囲に設定するという具合である。このようにすれば、制御が不安定になることを防止でき、快適性を損なうこともない。
【0061】
次に、代表値a rep p の設定間隔を考える。上述したような1.9〜6.0の範囲に等間隔に設定することも考えられる。しかし、平面係数a k は傾きを示しており、等間隔に設定した場合には、制御量の変化が一定割合とならない。また、設定間隔が細かすぎても、粗すぎても問題がある。前者では、代表値の組み合わせが膨大になって計算に時間がかかるし、一方後者では、滑らかな制御特性の変更がなされない。
【0062】
したがって、請求項6に示すように、代表値記憶手段に記憶される代表値の設定間隔は、制御量の変化率が所定割合以下となるように決定することが望ましい。つまり、代表値a rep p →代表値a rep p+1 とした場合に、P(=1,2,・・・,Np−1)に対してそれぞれ、制御量の変化率が所定割合以下になるようにするのである。ここで所定割合は、細かすぎずまた粗すぎない適切な割合として制御特性に応じ適宜設定されるものである。このようにすれば、利用者に違和感を与えない制御が可能となる。
【0063】
なお、学習制御手段によって対象部分空間に対応する平面の方程式のみを更新すると、更新された平面の境界の少なくとも一部は、隣接する平面の境界と共通にならない。その場合、この共通とならない境界部分において算出される制御量が不連続になり、結果として、この制御量に基づく制御が不連続になる。
【0064】
そこで、請求項7に示すように、学習制御手段は、対象部分空間に対応する平面の方程式を更新した後、隣接する平面同士の境界が共通となるように、該当する部分空間に対応する平面の方程式を更新するよう構成することが考えられる。
ここで「更新した後」としたのは、対象部分空間に対応する平面方程式の更新直後に境界の共通化を行ってもよいが、入力変数のその後の変化によって対象部分空間が移行する時点で境界の共通化を行えば十分だからである。
【0065】
隣接する平面同士の境界を共通にする具体的な手法として、図5(a)に示すような風量制御特性を具象化した平面モデルについて言えば、例えば算出される風量が等しくなる平面の境界に対して等高線という概念を導入することが考えられる。図5(a)では、平面の境界に対して4つの等高線1〜4が示されている。そして、図6(a)に示すように平面11の方程式が更新されることによって等高線4が途切れてしまった場合には、図7(a)に示すように、等高線4が連続するよう周囲の平面の方程式を更新するという具合である。
【0066】
このようにすれば、算出される制御量が不連続となることがなくなり、その結果、制御量に基づく制御が不連続となることがなくなる。
また、学習制御手段によって対象部分空間に対応する平面の方程式を更新すると、対象部分空間の領域が平面の方程式に対して妥当でなくなる場合がある。例えば図6(a)に示すように平面11の面積を変えることなく平面11の傾きを変えた場合、この更新後の平面モデルを内気温及び日射量の2軸からなる平面に射影すると、図6(b)に示すように部分空間11は元の部分空間11(図5(b)参照)よりも狭くなっている。したがって、平面11の方程式の更新に合わせて、部分空間11の領域を狭く、部分空間14の領域を広くするように部分空間の境界を更新することが必要となる。
【0067】
そこで、請求項8に示すように、学習制御手段が、平面の方程式の更新に合わせて、該当する部分空間の境界を更新するようにすることが考えられる。なお、「平面の方程式の更新」には、対象部分空間に対応する平面の方程式の更新だけでなく、平面同士の境界を共通とするための平面の方程式の更新も含まれる。したがって、例えば図7(a)に示したように平面モデル全体の整合性を保つように平面の方程式を更新した場合には、図7(b)に示すように、部分空間10と13との境界、部分空間11と14との境界、及び部分空間12と15との境界という3つの境界を更新する。
【0068】
上述したような連立方程式の解として平面係数を決定すれば、教師データを正確に通る平面の方程式を求めることができる。
ただし、対象部分空間に対応するK個の教師データは、必ずしも同一平面上にのっているとは限らない。その場合、上記式10にて示される連立方程式は解を持たない。そこで、請求項9に示すように、平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k を上記式10にて示される連立方程式の最小2乗解として求めるようにすることが考えられる。すなわち、上記式10に示す連立方程式をXa=wとした場合、|Xa−w|を最小とする解aを求める。このようにすれば、教師データをできるだけ正確に通る平面の方程式を求めることができる。
【0069】
なお、例えば式10の最小2乗解として計算された平面の方程式による平面は、与えられた教師データをできるだけ正確に通る平面であるが、最新の教師データ(xk ,yk ,・・・,zk ,wk )を通ることは保障されない。最新の教師データ(xk ,yk ,・・・,zk ,wk )は、最新の修正制御量wk を示すデータであり、この制御量wk の修正を維持するためには、更新した平面の方程式が教師データ(xk ,yk ,・・・,zk ,wk )を通るようにすることが必要である。
【0070】
そこで、請求項10に示すように、学習制御手段は、対象部分空間に対応させて記憶された教師データの中で最新の教師データを通るように平面の方程式を更新するよう構成することが考えられる。これによって、最も新しい制御量の修正を有効にすることができる。
【0071】
また、教師データを構成する入力変数(xk ,yk ,・・・,zk )が入力されるのは「修正の際」であるため、修正開始時点には限定されないが、仮に修正開始時点のものを用いるとする。このとき、例えば数秒から数十秒といった時間が制御量の修正にかかることがあり、修正直後の入力変数(xk',yk',・・・,zk')が修正開始時点のものと異なってくることが考えられる。例えば日射量に基づく風量制御を例に挙げれば、日射量は、雲に隠れていた太陽が現れることで瞬時に、500W/m2 から1000W/m2 というように変化する。その場合、修正開始時点の入力変数を含む最新の教師データ(xk ,yk ,・・・,zk ,wk )を通るようにしても、制御量の修正直後に、既に変わっている入力変数によって制御量が変更されてしまう。
【0072】
したがって、請求項11に示すように、学習制御手段は、制御量修正手段による修正後の制御量が、修正直後の入力変数に対応するものとなるように平面の方程式を更新するよう構成することが考えられる。修正直後の入力変数を含むデータ(xk',yk',・・・,zk',wk )を通るように平面方程式を更新すれば、既に変わっている入力変数によって修正直後に制御量が変更されることがなくなる。
【0073】
また、制御量の修正に数秒から数十秒といった時間がかかれば、その間に入力変数が変化することによって制御量が変更されてしまうことが考えられる。例えば風量制御では、風量の修正途中で、利用者の操作とは別に、風量が多くなったり少なくなったりする可能性がある。そこで、請求項12に示すように、学習制御手段は、制御量修正手段による制御量の修正が行われている間は、入力変数が変化しても制御量を変更しないようにするとよい。このようにすれば、修正操作の途中で制御量が変更されないため、修正操作が容易になる。
【0074】
以上は制御量算出装置の発明として説明してきたが、上述した制御量算出装置を用いて、空調制御における風量又は吹き出し口温度を制御量として算出する空調制御装置の発明として実現することもできる。すなわち、その構成は、センサから入力される外気温、内気温、日射量を少なくとも入力変数とし、制御量として風量又は吹き出し口温度を算出するように構成されており、さらに、算出された風量又は吹き出し口温度に基づいて空調ユニットを駆動する駆動手段を備えることを特徴とするものである。なお、「少なくとも」としたのは、入力変数には制約がなく、他の条件、例えば車両に搭載されるものにあってはラジエータの水温等を入力変数に加えることが考えられるからである。
【0075】
また、上述した制御量算出装置は、空調制御に用いることには当然限られず、従来技術として説明したような、いわゆるマップ制御を行う装置に対し用いることができる。例えば、本発明の制御量算出装置を用いて、エンジン制御装置、オートクルーズ装置等を構成することが考えられる。つまり、エンジン制御装置やオートクルーズ装置において、マップを用いて表現される制御特性を平面の集合により近似することになり、必要なら学習も可能である。
【0076】
なお、このような制御量算出装置の制御量算出手段及び学習制御手段をコンピュータシステムにて実現する機能は、例えば、コンピュータシステム側で起動するプログラムとして備えることができる。このようなプログラムの場合、例えば、フロッピーディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータシステムにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として前記プログラムを記録しておき、このROMあるいはバックアップRAMをコンピュータシステムに組み込んで用いてもよい。
【0077】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の車両用空調制御装置の概略構成を示すブロック図である。車両用空調制御装置は、環境条件検出部11と、風量計算部12と、平面係数データベース13と、風量制御特性更新部14と、教師データ記憶部15と、風量修正スイッチ16と、駆動部17と、送風機18とを備えている。
【0078】
環境条件検出部11は、車室内の気温を検出する内気温センサ11aと、日射量を検出する日射量センサ11bと、車室外の気温を検出する外気温センサ11cとを有している。そして、これら3つのセンサ11a,11b,11cによってそれぞれ検出される内気温、日射量、外気温を環境条件として風量計算部12及び風量修正スイッチ16へ出力する。
【0079】
風量計算部12は、環境条件検出部11から繰り返し出力される環境条件から風量制御特性に基づいて制御量としての風量を計算する。この風量制御特性は、複数の平面の方程式にて具象化されており、それぞれの方程式を決定する平面係数が平面係数データベース13に記憶されている。
【0080】
駆動部17は、風量計算部12からの風量に基づいて送風機18を駆動制御する。すなわち、送風機18から車室内へ送られる風量を風量計算部12から出力される風量となるようにする。
風量修正スイッチ16は、自動制御される風量の修正を利用者が指示するためのスイッチである。風量修正スイッチ16を介して風量の修正が行われると、修正後の風量及びその修正の際に環境条件検出部11から入力された環境条件が教師データとして教師データ記憶部15へ出力される。
【0081】
教師データ記憶部15は、風量修正スイッチ16からの教師データを記憶すると共に、風量制御特性更新部14へ該当する教師データを出力する。
風量制御特性更新部14は、教師データ記憶部15から教師データが入力されると、平面係数データベース13から該当する平面係数を読み出し、教師データ記憶部15からの教師データに基づいて平面係数を更新し、更新した平面係数を再度平面係数データベース13へ出力する。
【0082】
本実施形態の車両用空調制御装置は、大別して、風量計算モード、学習モードの2つのモードで動作する。
風量計算モードには、上述した環境条件検出部11、風量計算部12、平面係数データベース13、駆動部17及び送風機18が関与する。風量計算モードでは、環境条件検出部11にて検出される環境条件に基づき、風量計算部12が、平面係数データベース13から該当する平面係数を読み出し、読み出した平面係数によって定まる平面の方程式を用いて制御量としての風量を繰り返し計算する。そして、計算された風量となるように、駆動部17が送風機18を駆動制御する。
【0083】
車両用空調制御装置は、通常時は、この風量計算モードで動作するのであるが、上述した風量修正スイッチ16を介した風量の修正操作が行われると、学習モードへ移行する。
学習モードには、上述した環境条件検出部11、風量修正スイッチ16、教師データ記憶部15、風量制御特性更新部14及び平面係数データベース13が関与する。学習モードでは、教師データ記憶部15が、風量修正スイッチ16から出力される教師データを記憶すると共に、風量修正スイッチ16からの教師データを含む該当教師データを風量制御特性更新部14に出力する。そして、風量制御特性更新部14が、教師データ記憶部15から出力された教師データに基づいて、平面係数データベース13に記憶されている平面係数を更新する。その後、再び風量計算モードに移行する。
【0084】
さて、本実施形態の車両用空調制御装置では、上述したように制御量である風量を算出するための風量制御特性を複数の平面の方程式にて具象化したことを特徴としている。
そこで、以下の説明に対する理解を容易にするために、ここで、その前提となる思想を説明しておく。
【0085】
本実施形態では、環境条件検出部11にて検出される環境条件としての内気温、日射量、外気温の3つの入力信号から制御量である風量を算出する。したがって、3次元入力空間から1次元空間への写像を定義した。
まず外気温を10℃に固定して、内気温及び日射量の2つの入力信号から風量を算出する場合を考える。この場合の写像は、図2(a)に示すように、3次元空間に埋め込まれたなめらかな2次元の図形である曲面を用いて定義することができる。すなわち、図2(a)では、日射量及び内気温が決まると、曲面との交点を求めることによって風量が算出される。これを拡張すれば、内気温、日射量、外気温という3つの入力信号から風量を算出するには、4次元空間に埋め込まれた曲面を用いればよい。この場合、この曲面が風量を算出するための風量制御特性に相当する。なお、一般化して、n個の入力変数から一の制御量を算出するには、n+1次元空間内に埋め込まれたなめらかな曲面を用いればよい。
【0086】
本実施形態の車両用空調制御装置は、内気温、日射量、外気温の3つの入力信号から制御量である風量を算出するものであるが、以下説明を簡単にするために、内気温、日射量の2つの入力信号から風量を算出するための図2(b)に示す平面モデルとして示された風量制御特性を、適宜、例に挙げて説明する。
【0087】
ところで、数学的に、なめらかな曲面は各点の近く(近傍)だけを眺めると平面と同じ性質を持つことが知られていることは上述したが、この性質は、曲面が何次元の空間内に埋め込まれていても成立する。したがって、この性質を利用すれば、任意のなめらかな曲面は、十分小さな平面を組み合わせることで近似できる。これは、上述したような曲面で具象化される風量制御特性が、十分小さな平面を組み合わせることで近似できることを意味する。例えば、図2(a)に示したような3次元空間内に埋め込まれたなめらかな曲面で具象化された風量制御特性は、図2(b)に示すような15個の平面1〜15の組み合わせで近似できるという具合である。
【0088】
そのため、本実施形態では、内気温、日射量、外気温で定義される3次元入力空間をN個の部分空間に分割し、それぞれの部分空間に平面の方程式を対応させた。ここで各部分空間は、4次元空間に埋め込まれた風量制御特性を示す曲面を平面モデルで近似し、その平面モデルを3次元入力空間に射影した場合の各平面に対応する領域とする。
【0089】
図2(b)の例で言えば、風量制御特性を示す平面モデルを、日射量(x)及び内気温(y)の2軸からなる平面に射影した場合に各平面1〜15が射影される領域を部分空間とすることに相当する。図2(b)の平面モデルを射影した図は、図3(a)に示す如くである。図3(a)に示された部分空間1〜15がそれぞれ、図2(b)に示す平面モデルの平面1〜15に対応する。
【0090】
このように部分空間と平面とを対応付ければ、例えば図3(a)では、内気温(x)が10℃、日射量(y)が600W/m2 である場合、この2つの入力変数に対応する点(x,y)は部分空間8に属するため、部分空間8に対応する平面8を用いて制御量を算出することができる。
【0091】
なお、入力空間の分割は、図3(b)に示すようにメッシュ状に分割し、36個のそれぞれの部分空間1〜36に平面を対応させるように、風量制御特性としての平面モデルを構成してもよい。この場合は、分割が簡単になるという点で有利であるが、近似精度を得るために入力空間の一部を細かく分割する必要がある場合、全体として分割を細かくする必要があり、無駄に平面の個数が増える可能性が高い。したがって、このようなことを考えると、上述したように制御特性を示す曲面を平面モデルで近似し、その平面モデルに合わせて入力空間を分割することが好ましい。
【0092】
上述したように本実施形態では、風量制御特性を示す曲面を平面モデルで近似し、入力空間を分割した部分空間毎に平面の方程式を対応させている。したがって、環境条件がどの部分空間に属するかを判断し、その部分空間に対応する平面の方程式を用いて制御量を算出する。
【0093】
すなわち、上述した風量計算モードにおいて、本実施形態の風量計算部12では、環境条件検出部11からの環境条件である内気温(x)、日射量(y)、外気温(z)から定まる3次元入力空間内の点(x,y,z)がN個の部分空間のどれに属するかを判断する。そして、点(x,y,z)が属する部分空間を添え字jを用いて部分空間jとすると、部分空間jに対応する平面の方程式fj (x,y,z)=aj x+bj y+cj z+dj を用い、下記式17の如く風量blwを計算する。
blw=aj x+bj y+cj z+dj … 式17
そして、各部分空間に対する平面の方程式は、方程式を決定する平面係数の形式で、上述した平面係数データベース13に記憶されている。図4に示す如くである。図4では、N個の部分空間にそれぞれ対応するようにN個の平面係数(a1 ,b1 ,c1 ,d1 ),(a2 ,b2 ,c2 ,d2 ),・・・,(aN ,bN ,cN ,dN )が記憶された様子を示している。これら各平面係数は、後述するように学習モードにおいて更新される。なお、各平面係数の初期値は、各部分空間において、従来の固定的な既定値風量制御特性を最小2乗近似するものとして算出する。この計算は、最小2乗法によって実現できる。
【0094】
従来は、図27を用いて上述したように、n次元入力空間を部分空間に分割し、この部分空間の頂点に対して制御量を対応させておき、部分空間内部の点に対応する制御量は、双線形補間を行って算出していた。この場合、図27に示したような、2次元入力空間の場合であっても、すなわち2つの入力信号に基づく計算であっても、上述した式9の如く計算量が多くなる。そして、入力信号が増えれば増えるほど計算量が多くなるという問題があった。
【0095】
これに対して、本実施形態の制御量算出装置では、環境条件検出部11からの環境条件である内気温(x)、日射量(y)、外気温(z)に対応する部分空間jを判断し、部分空間jに対応する平面の方程式fj (x,y,z)を用い、上記式17の如く風量blwを計算する。したがって、制御量の算出計算が極めて簡単になるという効果を奏する。
【0096】
また、上述した学習モードにおいては、風量修正スイッチ16を介して風量が修正されると、風量修正スイッチ16が、その修正後の風量w、及びその修正の際に環境条件検出部11から入力された内気温(x)、日射量(y)、外気温(z)を教師データ(x,y,z,w)として教師データ記憶部15へ出力する。
【0097】
教師データ記憶部15は、不揮発性のメモリ装置に教師データ(x,y,z,w)を記憶する。そして、教師データ(x,y,z,w)がどの部分空間に対応するものであるかを判断する。これは、教師データを構成する内気温(x)、日射量(y)、外気温(z)から定まる3次元入力空間内の点(x,y,z)が、どの部分空間に属するかによって判断される。そして、教師データ記憶部15は、記憶した教師データの中で部分空間jに対応する教師データ(x1 ,y1 ,z1 ,w1 ),(x2 ,y2 ,z2 ,w2 ),・・・,(xk ,yk ,zk ,wk )を検索する。そして、これら教師データを風量制御特性更新部14に出力する。以下、適宜、これら教師データを(xi ,yi ,zi ,wi )(i=1,2,3,・・・,k)と記述する。なお、添え字iは、教師データ記憶部15の不揮発性のメモリ装置に記憶された順序を示す。したがって、上述した風量修正スイッチ16から直前に出力された教師データ(x,y,z,w)が、k番目の教師データ(xk ,yk ,zk ,wk )に相当する。
【0098】
風量制御特性更新部14は、これらk個の教師データ(xi ,yi ,zi ,wi )(i=1,2,3,・・・,k)に基づいて、平面係数データベース13に記憶された平面係数を更新する。平面係数データベース13には、上述したように、N個の部分空間にそれぞれ対応して、N個の平面の方程式を決定する平面係数(a1 ,b1 ,c1 ,d1 ),(a2 ,b2 ,c2 ,d2 ),・・・(aN ,bN ,cN ,dN )が記憶されている(図4参照)。ここで部分空間jに対応する平面係数の初期値を(aj 0,bj 0,cj 0,dj 0)と表すと、最初は部分空間jに属する教師データとして(x1 ,y1 ,z1 ,w1 )が出力されるため、この教師データ(x1 ,y1 ,z1 ,w1 )に基づき、風量制御特性更新部14は、平面係数(aj 0,bj 0,cj 0,dj 0)を更新して新たな平面係数(aj 1,bj 1,cj 1,dj 1)を求める。続いて、風量修正スイッチ16から部分空間jに属する教師データが出力されると、教師データ記憶部15は、その教師データ(x2 ,y2 ,z2 ,w2 )と、以前に記憶した教師データ(x1 ,y1 ,z1 ,w1 )を出力する。そのため、風量制御特性更新部14は、これら2つの教師データ(x1 ,y1 ,z1 ,w1 ),(x2 ,y2 ,z2 ,w2 )に基づき、平面係数(aj 1,bj 1,cj 1,dj 1)を更新して新たな平面係数(aj 2,bj 2,cj 2,dj 2)を求める。風量制御特性更新部14は、同様に平面係数を更新していく。つまり、風量制御特性更新部14は、k個の教師データ(xi ,yi ,zi ,wi )(i=1,2,3,・・・,k)に基づき、既に求められている平面係数(aj k-1,bj k-1,cj k-1,dj k-1)を更新して平面係数(aj k,bj k,cj k,dj k)を求めるのである。
【0099】
本実施形態では、具体的に、風量特性更新部14は、下記式18の連立方程式を解いて平面係数(aj k,bj k,cj k,dj k)を求める。
【0100】
【数10】
Figure 0004221867
【0101】
なお、この連立方程式を以下説明において「Xa=w」と単に記述することもある。
このような連立方程式の解として計算される平面係数(aj k,bj k,cj k,dj k)から決定される平面の方程式による平面は、与えられたk個の教師データ(xi ,yi ,zi ,wi )(i=1,2,3,・・・,k)を正確に通る平面となる。図8に示す如くである。図8は、内気温(x)、日射量(y)、外気温(z)及び風量(w)の4軸からなる4次元空間内に埋め込まれた部分空間jに対応する更新前及び更新後の平面を示している。更新前の平面は、平面係数(aj k-1,bj k-1,cj k-1,dj k-1)で決定される方程式fj k-1=aj k-1x+bj k-1y+cj k-1z+dj k-1によるものであり、更新後の平面は、教師データ(x1 ,y1 ,z1 ,w1 ),(x2 ,y2 ,z2 ,w2 ),(xk ,yk ,zk ,wk )を通るように、新たに計算された平面係数(aj k,bj k,cj k,dj k)で決定される方程式fj k=aj kx+bj ky+cj kz+dj kによるものである。
【0102】
ただし、上述のK個の教師データは、必ずしも同一平面上にのっているとは限らない。その場合、上記式18にて示される連立方程式は解を持たない。そこで、本実施形態では、このような場合には上記式18の連立方程式の最小2乗解を求める。この手法については後述する。
【0103】
また、上記式18の左辺の行列Xは、必ずしも正方行列ではない。また特異になることがある。そのため、行列が正方かつ正則であることを仮定する連立方程式の解法(Gauss-Jordan法等)は使用できない。
ここで行列Xが特異になる例を示す。
【0104】
▲1▼求める平面係数(aj k,bj k,cj k,dj k)に対して、教師データが3個以下であるときが相当する。この場合、連立方程式Xa=wは、例えば下記式19に示す如くとなる。
【0105】
【数11】
Figure 0004221867
【0106】
この場合は、図9(a)に示すように、教師データが少ないために平面の方程式fj kが一意に決定されない。
▲2▼教師データの数が4個以上あっても、それら教師データから決定される各方程式のうち線形独立になっているものが3個以下であるときが相当する。例えば日射量、外気温が変わらず、内気温だけが変わったような場合である。具体的に日射量0W/m2、外気温が20℃で、内気温が40,37,33,30,28℃のときにそれぞれ風量を28,25,21,18,16レベルに修正したとする。この場合、連立方程式Xa=wは、例えば下記式20に示す如くとなる。
【0107】
【数12】
Figure 0004221867
【0108】
この場合は、図9(b)に示すように、教師データが直線上に並んでしまい、平面の方程式fj kが一意に決定されない。
ところで、上記▲1▼に示す場合は、学習の最初の段階で必ず発生する。また、上記▲2▼に示す場合も、本実施形態を考える場合に発生する可能性は大きい。なぜなら、外気温や日射量が変化せず内気温のみが変化する状況は頻繁に起こり得るからである。
【0109】
そこで、本実施形態では、次の式21に示すような指標Eを導入し、上記式18に示した連立方程式Xa=wの解を求める。
【0110】
【数13】
Figure 0004221867
【0111】
ここで更新後の平面係数(aj k,bj k,cj k,dj k)で決定される平面の方程式をfj kとし、更新前の平面係数(aj k-1,bj k-1,cj k-1,dj k-1)で決定される方程式をfj k-1とし、部分空間jをDj として示した。すると、修正量はfj k−fj k-1となる。したがって、上記式21は、修正量の2乗を部分空間Dj において積分したものであり、修正量の総和の指標となっている。
【0112】
本実施形態では、上記式21で示す指標Eを最小にするような、上記式18の連立方程式Xa=wの解又は最小2乗解を求める。
例えば図10は、このような平面の更新による風量wの修正量、図中では教師データ(xi ,yi ,zi ,wi )に対応する修正量を示すものであるが、上記式21は、このような修正量の2乗を部分空間j全体においてトータルしたものとなっている。
【0113】
ここでの前提となる思想は、方程式fj k-1による平面をなるべく変えないような新たな平面の方程式fj kを求めることが理想的であるというものである。なぜなら、方程式j k-1よる平面は、k−1番目までの教師データに基づき更新されたものであり、それまでの利用者の好みを反映するものだからである。
【0114】
上記式21に示す指標Eを最小にするという条件の下では、式18に示す連立方程式Xa=wは一意に解ける。そして、この方法で求まる方程式による平面は、図11に示すように、k番目の教師データ(xk ,yk ,zk ,wk )の近くを大きく修正し、遠くを小さく修正したものとなる。これによって、最新の教師データであるk番目の教師データ(xk ,yk ,zk ,wk )を反映し、かつ、それまでの学習結果を有効にすることができる。
【0115】
このように 本実施形態の車両用空調制御装置では、風量修正スイッチ16を介して修正された風量w及びその修正時の環境条件である内気温(x)、日射量(y)、外気温(z)を教師データとして、平面の方程式fj kを決定する平面係数を更新する。この平面係数によって決定される方程式による平面の集合は、風量制御特性を具象化した曲面を近似するものである。したがって、各平面を十分に小さくして近似精度を上げれば、教師データによる平面の方程式の更新は、通常では学習困難な曲面の学習を可能とするものである。つまり、本発明は、n+1次元に埋め込まれた曲面を平面で近似し、各平面を更新するのであるから、曲面の各部分における位置・曲率の更新に相当する。すなわち、本発明による学習は上述した理想的な学習に極めて近いものであり、本発明によれば制御特性に対する適切な学習が実現される。
【0116】
また、上述した方法で計算された平面係数から決定される方程式による平面は、教師データをできるだけ正確に通る平面となり、その結果、利用者の好みを反映するものとなる。
さらに、上述したように本実施形態の車両用空調装置は、通常時に、風量計算モードとなっており、風量修正スイッチ16を介した風量の修正が行われると、学習モードに移行する。そして、風量の修正が終了し、平面の方程式の更新が完了すると、再び風量計算モードに戻り、この時、はじめて新たに風量計算を行って風量を変化させる。つまり、風量修正スイッチ16を介した風量の修正途中にあっては、環境が変化しても風量が変更されない。その結果、風量修正操作に利用者が違和感を覚えることもない。
【0117】
(い)さて、次に本実施形態における具体的な計算手法を以下に示す。本実施形態では、上記式21の指標Eを最小にするような、上記式18の連立方程式の解を、変数変換及び特異値分解の手法を用いて計算する。
上記式21は、部分空間Dj が−α≦x≦α,−β≦y≦β,・・・,−γ≦z≦γの範囲にあるとき、次の式22の如くなる。なお、部分空間Djがこの範囲にない場合には、この範囲を取るように座標変換すればよい。例えば図12(a)に示すように平面内の任意の位置にある部分入力空間Dj に対し、図12(b)に示すように、部分入力空間Dj のX及びY軸方向の両方向における中心位置に原点がくるような座標変換を行うという具合である。
【0118】
【数14】
Figure 0004221867
【0119】
そして、方程式fj k-1=aj k-1x+bj k-1y+cj k-1z+dj k-1であり、方程式fj k=aj kx+bj ky+cj kz+dj kであるから、この式22を計算すると、下記式23の如くとなる。この式23は、各係数の差分の重みづけ2乗和となっている。
【0120】
【数15】
Figure 0004221867
【0121】
したがって、平面係数(aj k,bj k,cj k,dj k)の決定は、上記式18に示す連立方程式を、上記式23を最小化するという条件で解くことで実現する。
さて、k番目の教師データが与えられた時点では、k−1番目までの教師データから計算された平面係数(aj k-1,bj k-1,cj k-1,dj k-1)は計算されている。したがって、i番目の教師データ(xi ,yi ,zi ,wi )(i=1,2,3,・・・,k)に対し、aj k-1i +bj k-1i +cj k-1i +dj k-1は計算できる。その値をwci とする。次の式24に示す如くである。
j k-1i +bj k-1i +cj k-1i +dj k-1 =wci …式24
また、上記式18のi番目の行を取り出す。次の式25に示す如くである。
j ki +bj ki +cj ki +dj k =wi …式25
上記式24、25の辺々を引く。次の式26に示す如くである。
(aj k−aj k-1)xi +(bj k−bj k-1)yi
+(cj k−cj k-1)zi +(dj k−dj k-1)=wi−wci …式26
なお、この式26は、図13に示すような、教師データ(xi ,yi ,zi ,wi )(i=1,2,3,・・・,k)に対する修正量を示す。
【0122】
続いて、次の式27に示す変数変換を上記式26に施す。
【0123】
【数16】
Figure 0004221867
【0124】
すると、次の式28に示す如くとなる。
【0125】
【数17】
Figure 0004221867
【0126】
これをi=1,2,3,・・・,kについてまとめる。次の式29を得る。
【0127】
【数18】
Figure 0004221867
【0128】
一方、上記式27を上記式23に適用する。これによって次の式30を得る。
【0129】
【数19】
Figure 0004221867
【0130】
ここまでの変数変換によって、上記式18の連立方程式を上記式21の最小化という条件で解くという問題は、上記式29を上記式30の最小化という条件で解くという問題に変換される。この問題は、公知技術である特異値分解により解くことができる。
【0131】
ここで補足的に特異値分解による連立方程式の解法を説明する。例えば次の式31の連立方程式を考える。なお、ここで使用する変数名は、本実施形態における変数名とは別個のものである。
Ax=b …式31
ここでAはM行N列の行列であり、xはN次元列ベクトルであり、bはM次元列ベクトルである。そして、この式31のM個の連立方程式は互いに線形独立であるとする。
【0132】
このときM<Nであれば、予め左辺の行列Aの下に「0」の行を補ってN行N列の正方行列を作る。また、右辺のベクトルbにも同様に「0」を補ってN次元列ベクトルとしておく。
行列Mが列数N以上である任意のM行N列の行列Aは特異値分解により、3個の行列の積に分解できる。次の式32に示す如くである。
A=UWVt …式32
ここでUはM行N列の列直交行列であり、WはN行N列の対角行列であり、VtはN行N列の直交行列Vの転置行列である。
【0133】
このとき、上記式31の解は、次の式33で求まる。
x=V[diag(1/wj )]Ut b …式33
この式33によって得られる解は、次の性質を持つ。
【0134】
(ア)上記式31が解を持つ、すなわちAx=bとなるxが存在するなら、ベクトルxは、上記式31の厳密な解である。
(イ)上記式31が解を持たない、すなわちAx=bとなるxが存在しないなら、ベクトルxは、上記式31の最小2乗解である。つまり、|Ax−b|を最小にするxである。
【0135】
(ウ)上記式31の行列Aが特異なら、上記式31の解は一意ではなく無数に存在するが、xはその中で長さ|x|が最小のものである。
なお、(ウ)の性質を用いるべく、上記式31のxに対して上記式27のような変数変換を行うのである。これにより長さ|x|の最小となるxは、上記式30を最小化するxとなる。また、特異値分解の手法を用いれば、上記(イ)に示す性質によって、解がない場合には上記式18(式29)の最小2乗解が計算される。
【0136】
このような特異値分解により、上記式29におけるA,B,C,Dを計算したら、次の式34によって平面係数(aj k,bj k,cj k,dj k)を算出する。
【0137】
【数20】
Figure 0004221867
【0138】
このように、変数変換及び特異値分解の手法を用いて所望の平面係数計算が実現できる。
(ろ)また、本実施形態においては、更新後の平面がk番目の教師データを通るように平面係数を補正する。この手順を以下に説明する。
【0139】
まず最初に、補正量Δfを次の式35によって計算する。
Δf=wk −fj k(xk ,yk ,zk ) …式35
次に平面係数dj kにΔfを足して、新たな平面係数dj kとする。
【0140】
つまり、上述した特異値分解の手法を用いて計算される平面係数(aj k,bj k,cj k,dj k)で決定される方程式fj kによる平面は、k個の教師データを最小2乗近似する平面となる場合がある。この場合は、教師データが同一平面上に並んでいないと、最後に与えられたk番目の教師データ(xk ,yk ,zk ,wk )を通るとは限らない。図14(a)に示す如くである。すなわち、利用者が風量を例えば15レベルに修正したとしても、学習後に出力される風量は10レベルになり、修正が直接的に反映されない状況が発生する。そのため、上述したような平面係数dj kの補正を行うことによって、k番目の教師データ(xk ,yk ,zk ,wk )を必ず通る平面となるようにしている。これによって、利用者による最も新しい風量の修正を有効にすることができる。
【0141】
(は)なお、本実施形態の車両用空調制御装置では、以上詳述したように風量制御特性を具象化した曲面を複数の平面にて近似し、さらに、教師データに基づいて各平面の傾きを更新するものであった。
このとき、風量制御特性である曲面を近似する複数の平面のうちの一の平面を更新することによってその更新された平面とその周囲の平面との境界が共通でなくなると、その境界付近においては、制御量として計算される風量が不連続になる。
【0142】
このような問題を解決するために例えば図5では、図2(b)に示した平面モデルにおいて等高線という概念を導入した様子を示している。図5には、各平面同士の境界の中で風量が等しく計算される境界を4本の等高線1〜4として示した。内気温の軸方向において、外側に位置する2本の等高線1,4は最大風量を示し、内側に位置する2本の等高線2,3は最小風量を示している。このような等高線は、途中で途切れず、かつ、お互いに交わらないという性質を持つ。したがって、このような性質に基づいて、風量制御特性の整合性を保つことが考えられる。
【0143】
すなわち、例えば図5(a)に示す等高線3,4で挟まれた平面11の方程式が更新され、平面11の傾きが変更されたとする。この様子を図6(a)に示した。図6(a)では、平面11の傾きが変更されたことによって等高線4が途切れている。このときは、等高線4をつなぐように、図6(a)中の平面11の周囲の該当する平面の方程式を更新する。これによって、平面モデルから計算される制御量が不連続となることがなくなる。
【0144】
ここでは内気温及び日射量の2つの入力信号から風量を算出する風量制御特性について説明したが、本実施形態も同様に風量制御特性を示す平面モデルに等高線という概念を導入すれば、算出される風量が不連続にならないよう風量制御特性の整合性を保つような大域的な学習も実現できる。
【0145】
なお、図6(a)に示すように平面11の傾きを変えれば、この更新後の平面モデルを内気温及び日射量の2軸からなる平面に射影すると分かるように、図6(b)に示す部分空間11は元の部分空間11(図5(b)参照)よりも狭くなっている。すなわち、平面の更新によって、部分空間と平面との対応が妥当でなくなることがある。この場合には、部分空間の境界を平面の方程式の更新に合わせて動的に変更するようにしてもよい。
【0146】
例えば図7(a)に示したように平面モデル全体の整合性を保つように平面の方程式を更新した場合には、図7(b)に示すように、部分空間10と13との境界、部分空間11と14との境界、及び部分空間12と15との境界という3つの境界を更新するという具合である。
【0147】
なお、本実施形態では、平面係数データベース13が「平面方程式記憶手段」に相当し、風量計算部12が「制御量算出手段」に相当する。また、風量修正スイッチ16が「制御量修正手段」に相当し、教師データ記憶部15が「教師データ記憶手段」に相当し、風量制御特性更新部14及び教師データ記憶部15が「学習制御手段」に相当する。
【0148】
以上、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る。
(に)上記第1実施形態では、特異値分解の手法を用いて上記式18の連立方程式の最小2乗解を求めている。その具体的な計算方法は、上記実施形態の説明中に(い)として詳述した。この方法は上述したように有効な計算方法として知られているが、浮動小数点演算が必要となり、そのため、車両に搭載される電子制御装置等、機器組み込み用の低速な固定小数点プロセッサを用いて実現することは技術的に困難である。
【0149】
そこで、上記式18の連立方程式の解法として、代表値の組み合わせとして決定する手法を提供する。以下、この手法を「代表値探索法」と呼ぶ。
最初に、予め離散的に設定された代表値の組み合わせを上記式18の連立方程式の解とすることの妥当性を説明する。
【0150】
風量制御では、上記式18の最小2乗解を必ずしも厳密に計算する必要はない。例えば風量を最小の1レベルから31レベルまで31段階に分けている場合を考える。このような場合、上記式18を厳密に解いて求めた平面方程式に対し、風量が1ないし2レベルずれたとしても、利用者に違和感を与えることはない。
【0151】
図15は、内気温xに対し最小2乗解を実線にてプロットしたものである。ここで、風量は1〜31レベルの範囲しかとらないため、内気温xに対する傾き(変化率)をaとすれば、次の式36の範囲でaの値が変動しても風量のずれは1レベルに収まる。
【0152】
【数21】
Figure 0004221867
【0153】
例えば図15において、内気温x1,x2をそれぞれ30℃,40℃とすると、最小2乗解を示す実線の傾きは3(=(31−1)/(40−30))である。したがって、この傾き(=3)に対して風量のずれが1レベルとなる傾きaの範囲は、上記式36から2.9≦a≦3.1となる。これを直線1,2として図15中に破線で示した。そのため、風量のずれを2レベルの範囲に収めるのであれば、次のことが言える。すなわち、最小2乗解が2.9と3.1の間にあるなら、その値を2.9又は3.1といった代表値に代替しても実用上十分な精度で解が得られる。
【0154】
つまり、制御量が最小2乗解からズレても実用上問題とならない範囲であれば、予め設定された代表値の組み合わせを上記式18の連立方程式の解としてもよいのである。
ところで、上記式18の最小2乗解を求めるのは、次の式37の最小値を与える係数aj k,bj k,cj k,dj kを求めることと同値である。
【0155】
【数22】
Figure 0004221867
【0156】
ここでFが最小値であることから、次の式38が成り立つ。
【0157】
【数23】
Figure 0004221867
【0158】
この式38を整理すると、次の式39を得る。
【0159】
【数24】
Figure 0004221867
【0160】
ここでxave ,yave ,zave ,wave は教師データのそれぞれの成分の平均値を示す。次の式40に示す如くである。なお、明細書中にイメージデータとして取り込んだ数式及び図面に記載された数式の中では、記号「バー」を用いて平均値を示すが、本文中では、この記号「バー」に代え、上述したように「ave」で示すことにする。
【0161】
【数25】
Figure 0004221867
【0162】
平面係数aj k,bj k,cj kが決まれば、上記式39から平面係数dj kが計算できる。一方、上記式39を上記式37に代入して次の式41を得る。
【0163】
【数26】
Figure 0004221867
【0164】
ここでXi ,Yi ,Zi ,Wi は教師データのそれぞれの成分からそれぞれの平均値を引き算したものである。次の式42に示す如くである。
【0165】
【数27】
Figure 0004221867
【0166】
すなわち、式18の連立方程式の最小2乗解は、上記式41を最小にする平面係数aj k,bj k,・・・,cj kを求めることに帰着できる。なお、式18の連立方程式が解を有するならば、上記式41は「0」となる。
したがって、代表値の組み合わせの中で上記式41を最小にするものを求めればよい。
【0167】
平面係数aj k,bj k,・・・,cj kのそれぞれの代表値を予め記憶しておく。例えば平面係数aj kの代表値をarep 1,arep 2,・・・,arep Np 、平面係数bj kの代表値をbrep 1,brep 2,・・・,brep Nq 、平面係数cj kの代表値をcrep 1,crep 2,・・・,crep Nr という具合に、それぞれNp個、Nq個、Nr個の代表値を記憶しておく。代表値は、風量制御特性更新部14に記憶される。したがって、風量制御特性更新部14が「代表値記憶手段」に相当する。なお、代表値をどのように設定するかについては後述する。
【0168】
この場合、代表値の全ての組み合わせは、Np×Nq×Nr通りとなる。そこで、この組み合わせの全てを、あるいは組み合わせを条件によって絞れる場合にはその一部を、上記式41に代入してFの値を計算する。そして、Fの値を最小とする代表値の組み合わせを解とする。例えばその組み合わせが(arep p,brep q,crep r )と決定されると、平面係数dj kは上記式39を用いて、以下の式43で求めることができる。
【0169】
【数28】
Figure 0004221867
【0170】
なお、Fの最小値を与える代表値の組み合わせが複数個ある場合は、次の式44の値を最小とするものを選択する。これは上記式21又は式23を簡易化したものである。
(aj k−aj k-12 +(bj k−bj k-12 +・・・+(cj k−cj k-12
…式44
次に、実際の計算方法の一具体例を示す。
【0171】
平面係数bj k,cj kが与えられれば、次の式45は計算できる。
i =bj ki +cj ki −Wi …式45
すると、上記式41は、次の式46のように変形できる。
【0172】
【数29】
Figure 0004221867
【0173】
したがって、次のようにおくと、式47を得る。
【0174】
【数30】
Figure 0004221867
【0175】
F(aj k,bj k,cj k)=aj k(aj kXX+SRX)+SRR …式47
この式47を用いて代表値を探索することにより計算量を減らすことができる。そこで次に、計算手順の一例を図16及び図17のフローチャートに基づいて説明する。
【0176】
まず最初のステップS100においては、教師データ各成分の平均値を求める。この処理は、上記式40を用いてxave ,yave ,zave ,wave を求めるものである。続くS110では、教師データ各成分を変換する。この処理は、上記式42を用いてXi ,Yi ,Zi ,Wi を求めるものである。なおここで、特にフローチャートに記載していないが、変数p,q,rを「1」に初期化する。
【0177】
そして次にSXXを求め(S120)、さらに、SRX及びSRRを初期化して「0」とする(S130)。
次のS140では、Ri ,SRX,SRRを算出する。それぞれ以下の式48,49,50にて算出する。
【0178】
【数31】
Figure 0004221867
【0179】
そして次のS150では、S140で求めたSRXを2倍したものをSRXに代入する。
このようにしてSXX,SRX,SRRが算出されると、S160にて、上記式47を用いてF(arep p,brep q,crep r )を算出する。
【0180】
そして、算出したFがそれまでに算出したFの中の最小値であるFmin以下か否かを判断し(S170)、F>Fminであれば(S170:NO)、図17中のS220へ移行する。一方、F≦Fminであれば(S170:YES)、代表値の組み合わせを記憶し(S180)、FminにFを代入し(S190)、さらに変数pをインクリメントして(S200)、S210へ移行する。
【0181】
S210では、pがNpよりも大きいか否かを判断する。ここでp>Npである場合(S210:YES)、図17中のS220へ移行する。一方、p≦Npである場合(S210:NO)、S160からの処理を繰り返す。すなわち、S160からS210までの処理が代表値arep 1,arep 2,・・・,arep Np に対して実行されることになる。
【0182】
図17に示す処理が開始されると、変数pに「1」が代入されて初期化され(S220)、変数iがインクリメントされる(S230)。そして次に変数iがkよりも大きいか否かを判断する(S240)。ここでi>kである場合(S240:YES)、S250へ移行する。一方、i≦kである場合(S240:NO)、図16中のS140からの処理を繰り返す。
【0183】
S250では変数iに「1」を代入して初期化し、続くS260では変数qをインクリメントする。そしてq≦Nqであれば(S270:NO)、図16中のS130からの処理を繰り返す。一方、q>Nqであれば(S270:YES)、変数qに「1」を代入して初期化し(S280)、変数rをインクリメントする(S290)。そして次にrがNrよりも大きいか否かを判断し(S300)、r≦Nrであれば(S290:NO)、図16中のS130からの処理を繰り返す。一方、r>Nrであれば(S290:YES)、平面係数dj kを求め(S310)、本代表値探索処理を終了する。平面係数dj kは上記式43にて求められる。
【0184】
つまり、平面係数bj k,cj kの代表値brep 1,brep 2,・・・,brep Nq ,crep 1,crep 2,・・・,crep Nr を固定し、平面係数aj kの代表値arep 1,arep 2,・・・,arep Np を変えながらF(arep p,brep q,crep r )を算出して、Fを最小にする代表値の組み合わせを求めるのである。
【0185】
なお、Fを最小とする代表値の組み合わせが複数あれば、次の式51を最小とする代表値の組み合わせを選択する。
【0186】
【数32】
Figure 0004221867
【0187】
上述した代表値探索処理において、上記式47は平面係数aj kの二次関数であり、SXX>0であるため下に凸の放物線となる。したがって、最小値を1つしか持たない。そのため、S170では、F>Fminとなった場合(S170:NO)、図y中のS220に移行し、以降の変数pについての計算を省略している。いわゆる枝刈りを行っている。つまり、m>1かつF(arep m-1,brep q,crep r )<F(arep m,brep q,crep r )なる番号mが見つかったら、それ以降のp=m+1,m+2,・・・,Npに対してF(arep p,brep q,crep r )は最小値になり得ない。これによって、探索すべき代表値の組み合わせを減らすことができ、計算量を削減することができる。
【0188】
次に、上述した代表値をどのように設定するかについて説明する。
風量制御では、各入力変数に対する風量の変化率の最大値及び最小値が決まっている。具体的には、内気温に対する変化率の範囲は[1.9,6.0](レベル/℃)であり、日射量に対する変化率の範囲は[0.013,0.034](レベル/(W/m2 ))であり、外気温に対する変化率の範囲は[0.27,1.7](レベル/℃)である。すなわち、内気温が1℃増加すれば、風量は1.9〜6.0のレベルの範囲で増加する。また、日射量が1W/m2 増加すれば、風量は0.013〜0.034レベルの範囲で増加する。同様に、外気温が1℃増加すれば、風量は0.27〜1.7レベルの範囲で増加する。
【0189】
このようにしているのは、これを越えると、制御が不安定になり、快適性を損なうためである。例えば仮に内気温に対する変化率を30レベル/℃とすると、内気温が1℃上がることで風量が30レベル増加する。すると、内気温が即座に下がり、例えば1℃下がれば今度は風量が30レベル減少する。このように変化率が大きくなると、風量が振動するいわゆるハンチングが発生してしまう。
【0190】
そこで、平面係数aj k,bj k,cj kの取りうる範囲を限定することが出来る。すなわち、以下の式52,53,54に示す如くである。
1.9 ≦aj k≦6.0 [レベル/℃] …式52
0.013≦bj k≦0.034 [レベル/(W/m2 )] …式53
0.27 ≦cj k≦1.7 [レベル/℃] …式54
したがって、平面係数aj k,bj k,cj k の代表値は、上記式52〜54の範囲で設定する。
【0191】
また、代表値の個数は各制御に要求される解の精度によって適宜設定すればよい。当然ながら、個数を増やすほど演算精度は向上する。また、上述の範囲を等分して代表値を設定してもよいが、代表値arep p→arep p+1とした場合に、P(=1,2,・・・,Np−1)に対してそれぞれ、制御量の変化率が所定割合以下になるようにするとよい。制御量の増減にムラが出ないためである。
【0192】
以上のようにして設定された風量制御の代表値を以下に例示する。
平面係数aj kの代表値(19個):
1.900,2.048,2.185,2.330,2.486,2.651,2.828,3.016,3.218,3.432,3.661,3.905,4.165,4.443,4.739.5.055,5.392,5.752,6.000
平面係数bj kの代表値(4個):
0.013,0.0199,0.0268,0.0340
平面係数cj kの代表値(4個):
0.270,0.758,1.249,1.700
この場合、平面係数bj k,cj kに対する代表値は、式53及び式54に示す範囲に対して等間隔に設定されている。これはもともと平面係数bj k,cj kの取りうる範囲が小さいためである。これに対して、平面係数aj kは、式52に示すように取りうる範囲が大きいため、等間隔に設定せず、代表値arep p→arep p+1とした場合に、P(=1,2,・・・,Np−1)に対してそれぞれ、制御量の変化率が所定割合以下になるようになっている。
【0193】
以上のような代表値探索法によって平面方程式の平面係数を更新するようにすれば、上記実施形態と比べて、計算量を大幅に削減でき、かつ、浮動小数点演算を必要としない。したがって、機器組み込み用の低速な固定小数点プロセッサを用いて車両用空調制御装置を構成することができる。
【0194】
(ほ)風量制御特性である曲面を近似する複数の平面のうちの一の平面を更新することによってその更新された平面とその周囲の平面との境界が共通でなくなると、その境界付近においては、制御量として計算される風量が不連続になる。このような問題を解決するために上記実施形態の説明中に(は)として示したように、等高線という概念を導入し、この等高線の性質に基づいて、風量制御特性の整合性を保っていた。
【0195】
これに対して、上述した代表値探索法を用い、隣接平面同士の境界を共通化することもできる。これは代表値の組み合わせの全てを探索するのではなく、その一部の範囲に限定して探索を行うものである。これについて説明する。
図18(a)は、外気温20℃の風量制御特性を、内気温(x)及び日射量(y)の2軸についてプロットしたものである。図18(a)に示される風量制御特性は、略V字谷形状のグラフであり、谷底を境に図面左側が暖房制御特性を示し、右側が冷房制御特性を示している。このグラフでは日射量が次の3つの区間に分割されている。
【0196】
A区間:[0,350]W/m2
B区間:[350,750]W/m2
C区間:[750,1000]W/m2
ここでB区間の冷房制御特性を取り出したものを図18(b)に示す。これは傾斜平面w= rep p x+b rep q y+c rep r z+d i を風量最大値maxi、最小値miniでクリッピングすることで得られる。この図18(b)では4つの境界が図示されている。
【0197】
最初に傾斜平面が最大値・最小値と接する境界について考える。図19に示すように、この傾斜平面に対し教師データが追加され、上述の代表値探索処理にて平面係数(代表値の組み合わせ)が新たに決定され、その方程式がw= rep p x+b rep q y+c rep r z+d i からw= rep p x+b rep q y+c rep r z+d i に更新されたとする。この更新によって傾斜平面が最大値・最小値と接する境界は移動するが、この境界で傾斜平面と最大値・最小値とは切れ目なく接続するため問題はない(図19(b)参照)。
【0198】
次に傾斜平面同士が形成する境界について考える。図20に示すようにB区間及びC区間の傾斜平面を例に挙げて説明する。ここでB区間の傾斜平面を「傾斜平面i」と記述し、一方、C区間の傾斜平面を「傾斜平面j」と記述して区別する。
【0199】
図20(a)に示すように、学習前においては両平面の境界は共通である。しかし、図20(b)に示すように傾斜平面iが更新されて傾きを変えると境界がずれる。この境界のずれを、上記実施形態では、等高線の概念を導入して補正した。
【0200】
しかしながら、風量制御では、必ずしも両平面の境界を完全に一致させる必要はない。境界において1ないし2レベルの風量差が生じたとしても、乗員は制御に違和感を覚えないためである。すなわち、厳密な最小2乗解を必要としないことになり、上述した代表値探索法を適用できる。以下、境界を共通にするとは、その境界において両平面の風量差を実質上問題のない大きさに収めることと定義する。
【0201】
次に、代表値探索法を用いた具体的な境界の共通化について説明する。図21(a)に示すように、傾斜平面iの平面方程式がw= rep p x+b rep q y+c rep r z+d i に更新されたとする。ここで隣接平面jの方程式をw= rep l x+b rep m y+c rep n z+d j からw= rep l x+b rep m y+c rep n z+d j に更新し、境界を共通化する(図21(b)参照)。
【0202】
このとき、前提となる思想は次のようなものである。人間の温度感覚を考慮すると、隣接する平面の制御特性は滑らかに変化すべきであり、平面の境界で制御特性が急変するのは好ましくない。
これは、隣接する平面方程式の平面係数が大きく変化しないことに相当する。例えば傾斜平面iの内気温xに対する傾きがarep p' であれば、その隣接傾斜平面jの内気温xに対する平面係数arep l' はそれに近い値に設定すべきである。
【0203】
したがって、arep l の取りうる値は、代表値arep 1,arep 2,・・・,arep Npの全てではなく、例えばarep p の前後2s+1個のarep p -s,・・・,arep p ,・・・,arep p +sに制約される。arep p 及びarep l の取りうる代表値の範囲を図示すると、図23の如くとなる。同様に、係数brep m は前後2t+1個のbrep m -t,・・・,brep m ,・・・,brep m +tに、係数crep n は前後2u+1個のcrep n -u,・・・,crep n ,・・・,crep n +uに制約される。この場合、代表値の組み合わせの数は(2s+1)(2t+1)(2u+1)通りとなる。そこで隣接平面jの教師データに対し、上記式41を最小化する代表値の組み合わせを、この(2s+1)(2t+1)(2u+1)通りの中から選択し、隣接平面jの平面方程式w= rep l x+b rep m y+c rep n z+d j を決定する。このようにして平面方程式を更新すれば、両平面間の特性急変を防止し、境界を共通化することができる。
【0204】
なお、上述した例ではl’の選択範囲をp’−s≦l’≦p’+sとしたが、一般的に1≦pL ≦p’≦pU ≦Npを満たす自然数PL ,PU を取り、PL ≦l’≦PU としてもよい。この場合、l’の取りうる代表値の個数は、PU −PL +1個となる。m’,n’の選択範囲についても同様である。
【0205】
なお、隣接傾斜平面jの境界共通化は、必ずしも傾斜平面iの平面係数の更新直後に行う必要はない。
例えば傾斜平面iの更新の後、日射量の増大等によって、対象部分空間がB区間からC区間に変更される時点で傾斜平面jを更新してもよい。すなわち、境界の共通化は、隣接する傾斜平面に制御が移る時点で行えば十分である。
【0206】
ところで、上述したように代表値の選択範囲に制約を設けることによって隣接傾斜平面を更新した場合、境界が離れてしまう可能性がある。例えば上述した例で言えば、教師データによっては、図22(a)のように境界が離れてしまう。
そこで、次のようにすることが考えられる。
【0207】
隣接傾斜平面jに制御が移る時点の内気温・日射量・外気温をそれぞれxB ,yB ,zB とし、その環境における傾斜平面i及び傾斜平面jの風量をそれぞれwi' B ,wj' B とすると、次の式55,式56のように記述できる。
【0208】
【数33】
Figure 0004221867
【0209】
また、図22(a)中の点ei',ej'はそれぞれ4次元空間内の点(xB ,yB ,zB ,wi' B ),(xB ,yB ,zB ,wj' B )を示す。このとき、風量差Δfは、wi' B −wj' B となる。そこで、傾斜平面jの係数dj'を改めてdj'←dj'+Δfと更新する。このようにすれば、傾斜平面jを平行移動し、両平面を点ei'で連続とすることができ、制御の連続性を保つことが出来る。
【0210】
(へ)上記実施形態では、風量修正スイッチ16を介して風量が修正されると、学習モードに移行し、風量修正スイッチ16が、その修正後の風量w、及びその修正の際に環境条件検出部11から入力された内気温(x)、日射量(y)、外気温(z)を、教師データ(x,y,z,w)として教師データ記憶部15へ出力する。
【0211】
このとき、例えば風量修正スイッチ16の操作開始時点における内気温(x)、日射量(y)、外気温(z)を、教師データ(x,y,z,w)として教師データ記憶部15へ出力することが考えられる。このように操作完了以前の内気温、日射量、外気温が教師データとなった場合、以下に示すような問題が発生する可能性がある。
【0212】
風量スイッチ16を介した風量の修正は、1回のスイッチ操作で1レベルあるいは2〜3といった数レベルの単位でしか行えないのが一般的である。そのため、例えば10レベル以上の修正をする場合、利用者は、何回もスイッチ操作を繰り返す。したがって、スイッチ操作開始から完了までに数秒から数十秒かかることがある。ところが、この短い時間でさえ、環境が大きく変化する状況がある。例えば雲に隠れていた太陽が現れる場合がそうであり、また、車両自体がビルの影から日のあたる場所に移動する場合がそうである。このような状況下では、日射量が、例えば500W/m2から1000W/m2まで増加するといった具合に急変する。そのため、風量修正スイッチ16を介した風量の修正直後に、日射量の変化によって利用者が指定した風量が変更されてしまう。
【0213】
この問題を具体的に説明する。例えば風量修正スイッチ16を介した修正作業を時刻t0 で開始し、時刻t1 で完了したとする。このとき、風量はw0 からw1 に変更されたとし、環境は(x0 ,y0 ,z0 )から(x1 ,y1 ,z1 )に変化したとする。車両用空調装置は、風量修正スイッチ16を介した修正作業が開始されると、学習モードに入る。そして、操作が完了した時刻t1に、環境(x0 ,y0 ,z0 )の属する部分空間に対応させて教師データ(x0 ,y0 ,z0 ,w1 )を登録する。そして、この教師デ−タを用いてその部分空間に対応する平面方程式を更新し、風量計算モードに戻る。
【0214】
例えば、風量修正スイッチ16を介して風量を25レベルから15レベルに落とす間に、内気温が30℃から28℃に変化した場合を考える。なお、日射量・外気温はそれぞれ500W/m2,20℃であるとする。この環境に対応する風量制御特性は図18(a)に示したB区間の傾斜平面として具象化できる。
【0215】
ここで内気温について風量制御特性をプロットしたものを図24に図示する。図24(a)は学習開始時点の環境と風量を示し、風量レベルは25レベルである。一方、図24(b)は、時刻t1 で修正作業が完了し、教師データ(30℃,500W/m2,20℃,15レベル)を通るように風量制御特性を変更した直後の状態を示す。
【0216】
このとき、既に内気温は28℃に変化しているため、風量計算モードに戻ると、風量は15レベルにとどまらず即座に12レベルになってしまう。すなわち、この例では、利用者が風量を15レベルに修正したにもかかわらず、学習が完了した時点で風量が12レベルに不連続にとんでしまう。
【0217】
そこで、図25(b)に示すように、学習完了後に学習完了時点の環境で(28℃、500W/m2,20℃)で、利用者の指定した風量15レベルになるよう制御特性を平行移動するようにしてもよい。これによって、学習完了時点で風量が急変してしまうことを防止できる。
【0218】
なお、上述した例は操作開始時刻t0 と操作完了時刻t1 の環境が同一の部分空間に属するものである。もしも両者が異なる部分空間に属する場合は、上述したように境界の共通化を実行した後に、同様に平面の平行移動を行えばよい。
例えば、風量修正スイッチ16を介して風量を25レベルから15レベルに落とす間に、日射量が500W/m2から900W/m2まで変化した場合を考える。なお、内気温・外気温はそれぞれ30℃,20℃であるとする。
【0219】
この場合は、時刻t0における風量制御特性は図18(a)に示すB区間の傾斜平面として具象化でき、時刻t1における風量制御特性はC区間の傾斜平面として具象化できる。つまり、学習完了後の制御量はC区間の傾斜平面によって算出される。
【0220】
したがって、傾斜平面iの更新と共に、両平面の境界を共通化するように傾斜平面jを更新する。図21(b)に示す如くである。そして続けて、(30℃,900W/m2,20℃,15レベル)の点を通るように制御特性を平行移動すればよい。
【0221】
このようにすれば、風量修正スイッチ16を介した風量の修正直後に、例えば日射量といった環境の変化によって、利用者が指定した風量が変更されてしまうことがなくなる。
(と)例えば、上記実施形態では、本発明を車両用空調装置に適用したものであったが、これに限定されるものではなく、従来いわゆるマップ制御を行うような装置に対して適用可能である。マップ制御を行うような従来装置としては、例えばエンジン制御装置やオートクルーズ装置などが挙げられる。例えばオートクルーズ装置では、熟練ドライバーの運転パターンをマップに組み込み、このマップに従って車両の走行制御をするものが提案されている。このようなマップ設計には工数がかかることが知られている。したがって、本発明による平面の集合による制御特性近似と学習アルゴリズムを用い、熟練ドライバーの運転パターンを学習させる事によって、平面モデルとしての制御特性の設計自動化を行い、その結果、その設計工数を削減させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の車両用空調制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】風量制御特性を具象化した曲面を示す説明図である。
【図3】平面モデルの各平面に対応させる部分空間を示す説明図である。
【図4】平面係数データベースを示す説明図である。
【図5】平面モデルに導入された等高線を示す説明図である。
【図6】平面モデルの平面の更新によって等高線が途切れた様子を示す説明図である。
【図7】大域的な学習によって等高線が修復された様子を示す説明図である。
【図8】教師データに基づいて平面が更新される様子を示す説明図である。
【図9】教師データから一意に平面が決定されない様子を示す説明図である。
【図10】平面の更新による平面の修正量を示す説明図である。
【図11】修正量の最小化を条件として更新された平面の様子を示す説明図である。
【図12】部分入力空間の座標変換を示す説明図である。
【図13】変数変換に対応するイメージを示す説明図である。
【図14】平面係数の補正を示す説明図である。
【図15】最小2乗解に対して許容できる傾きの範囲を示す説明図である。
【図16】代表値探索処理の前半部分を示すフローチャートである。
【図17】代表値探索処理の後半部分を示すフローチャートである。
【図18】(a)は風量制御特性を示す説明図であり、(b)は傾斜平面の境界を示す説明図である。
【図19】最大値・最小値との境界及びその境界の移動を示す説明図である。
【図20】平面の更新による境界のずれを示す説明図である。
【図21】境界のずれが代表値探索法による平面の更新にて補正される様子を示す説明図である。
【図22】制御の連続性確保のための平面の平行移動を示す説明図である。
【図23】代表値の探索範囲の制限を示す説明図である。
【図24】風量の修正を行う場合に発生する問題を示す説明図である。
【図25】風量修正後の補正を示す説明図である。
【図26】内気温から風量を算出するためのマップして具象化された風量制御特性を例示する説明図である。
【図27】従来の風量制御特性に基づく風量の算出手法を示すための説明図である。
【図28】利用者の好む風量制御特性を調査した際の実験結果を示す説明図である。
【図29】各被験者の好む風量制御特性としてのマップを比較して例示する説明図である。
【図30】風量制御特性としてのマップの有効な学習を示す説明図である。
【図31】従来の風量制御特性としてのマップに対する更新手法を示す説明図である。
【図32】従来の風量制御特性としてのマップに対する更新手法を示す説明図である。
【符号の説明】
11…環境条件検出部 11a…内気温センサ
11b…日射量センサ 11c…外気温センサ
12…風量計算部 13…平面係数データベース
14…風量制御特性更新部 15…教師データ記憶部
16…風量修正スイッチ 17…駆動部
18…送風機

Claims (14)

  1. 外部から入力されるn(nは自然数。以下同じ。)個の入力変数に対して制御量を算出する制御量算出装置であって、
    前記n個の入力変数に対応するn次元空間内の点の集合として想定されるn次元入力空間が分割された複数の部分空間に対応させてそれぞれ定義された方程式であって、前記n個の入力変数から一の未知数を算出可能な平面の方程式を記憶する平面方程式記憶手段と、
    前記入力変数が入力されると、前記平面方程式記憶手段に記憶された平面の方程式の中から当該入力変数に対応する点の属する部分空間に対応する平面の方程式を選択し、当該選択した平面の方程式を用いて前記入力変数から前記一の未知数を制御量として算出する制御量算出手段と、
    前記制御量を外部から修正するための制御量修正手段と、
    該制御量修正手段を介して前記制御量が修正されると、当該修正後の制御量及び当該修正の際に入力された入力変数を、当該入力変数に対応する部分空間である対象部分空間に対応する教師データとして教師データ記憶手段に記憶すると共に、前記教師データ記憶手段に記憶された教師データの中の前記対象部分空間に対応する教師データに基づいて、当該対象部分空間に対応させて前記平面方程式記憶手段に記憶された平面の方程式を更新する学習制御手段とを備え、
    x,y,・・・,zのn個の入力変数及び制御量wに対して、前記平面の方程式は、w=ax+by+・・・+cz+dで定義されており、
    前記平面方程式記憶手段は、前記平面の方程式の平面係数a,b,・・・,c,dを記憶し、
    前記学習制御手段は、前記対象部分空間に対応する教師データ(x i ,y i ,・・・,z i ,w i )(i=0,1,2,・・・,k)に基づいて、平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k を次の式1にて示される連立方程式の解又は最小2乗解として求める場合、前記式1に示される行列の階数が(n+1)よりも小さい場合であって、前記対象部分空間がx L ≦x≦x U ,y L ≦y≦y U ,・・・,z L ≦z≦z U の範囲に存在し、当該対象部分空間に対応する平面の方程式の前記平面係数がa k-1 ,b k-1 ・・・,c k-1 ,d k-1 であるとき、前記式1の解又は最小2乗解のうち、次の式2を最小にする前記平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k を求め、求めた前記平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k で前記平面係数a,b,・・・,c,dを更新することによって前記平面の方程式を更新すること
    を特徴とする制御量算出装置。
    Figure 0004221867
    Figure 0004221867
  2. 請求項1に記載の制御量算出装置において、
    前記学習制御手段は、前記平面係数を特異値分解の手法を用いて計算すること
    を特徴とする制御量算出装置。
  3. 外部から入力されるn(nは自然数。以下同じ。)個の入力変数に対して制御量を算出する制御量算出装置であって、
    前記n個の入力変数に対応するn次元空間内の点の集合として想定されるn次元入力空間が分割された複数の部分空間に対応させてそれぞれ定義された方程式であって、前記n個の入力変数から一の未知数を算出可能な平面の方程式を記憶する平面方程式記憶手段と、
    前記入力変数が入力されると、前記平面方程式記憶手段に記憶された平面の方程式の中から当該入力変数に対応する点の属する部分空間に対応する平面の方程式を選択し、当該選択した平面の方程式を用いて前記入力変数から前記一の未知数を制御量として算出する制御量算出手段と、
    前記制御量を外部から修正するための制御量修正手段と、
    該制御量修正手段を介して前記制御量が修正されると、当該修正後の制御量及び当該修正の際に入力された入力変数を、当該入力変数に対応する部分空間である対象部分空間に対応する教師データとして教師データ記憶手段に記憶すると共に、前記教師データ記憶手段に記憶された教師データの中の前記対象部分空間に対応する教師データに基づいて、当該対象部分空間に対応させて前記平面方程式記憶手段に記憶された平面の方程式を更新する学習制御手段と、
    前記平面係数a,b,・・・,cのそれぞれに対し複数個の代表値を記憶する代表値記憶手段とを備え、
    x,y,・・・,zのn個の入力変数及び制御量wに対して、前記平面の方程式は、w=ax+by+・・・+cz+dで定義されており、
    前記平面方程式記憶手段は、前記平面の方程式の平面係数a,b,・・・,c,dを記憶し、
    前記学習制御手段は、前記対象部分空間に対応する教師データ(x i ,y i ,・・・,z i ,w i )(i=0,1,2,・・・,k)に基づいて、平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k を次の式(3−1)にて示される連立方程式の解として求める場合、前記式(3−1)に示す連立方程式を次の式(3−2)に示す連立方程式に変換し、前記代表値記憶手段に記憶された代表値の組み合わせの全部又は一部の中で式4を最小にする組み合わせを探索して平面係数a k ,b k ,・・・,c k とすると共に、当該平面係数a k ,b k ,・・・,c k から式5を用いて平面係数d k を求め、前記式4を最小にする代表値の組み合わせが複数個ある場合、当該対象部分空間に対応する平面の方程式の前記平面係数がa k-1 ,b k-1 ・・・,c k-1 ,d k-1 であるとき、次の式6を最小にする代表値の組み合わせを平面係数a k ,b k ,・・・,c k として求め、求めた前記平面係数a k ,b k ,・・・,c k で前記平面係数a,b,・・・,c,dを更新することによって前記平面の方程式を更新すること
    を特徴とする制御量算出装置。
    Figure 0004221867
    Figure 0004221867
  4. 請求項3に記載の制御量算出装置において、
    前記学習制御手段は、平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k として求めた代表値の組み合わせを基準代表値とし、隣接する部分空間に対応する平面方程式の平面係数を、当該基準代表値の前後の代表値の中から探索することによって求めること
    を特徴とする制御量算出装置。
  5. 請求項3又は4に記載の制御量算出装置において、
    前記代表値記憶手段に記憶される代表値は、前記各平面係数a,b,・・・,cの変更による前記制御量の変化率が所定範囲となるように設定されていること
    を特徴とする制御量算出装置。
  6. 請求項3〜5のいずれかに記載の制御量算出装置において、
    前記代表値記憶手段に記憶される代表値の設定間隔は、制御量の変化率が所定割合以下となるように決定されていること
    を特徴とする制御量算出装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の制御量算出装置において、
    前記学習制御手段は、さらに、前記対象部分空間に対応する平面の方程式を更新した後、隣接する平面同士の境界が共通となるように、該当する部分空間に対応させて前記平面 方程式記憶手段に記憶された平面の方程式を更新するよう構成されていること
    を特徴とする制御量算出装置。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の制御量算出装置において、
    前記学習制御手段は、さらに、前記平面の方程式の更新に合わせて、該当する部分空間の境界を更新すること
    を特徴とする制御量算出装置。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の制御量算出装置において、
    前記学習制御手段は、前記式1にて示される連立方程式の解がない場合は、前記平面係数a k ,b k ,・・・,c k ,d k を前記式1にて示される連立方程式の最小2乗解として求めること
    を特徴とする制御量算出装置。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の制御量算出装置において、
    前記学習制御手段は、前記対象部分空間に対応する教師データのうちで最新の教師データを通る平面となるように前記平面の方程式を更新するよう構成されていること
    を特徴とする制御量算出装置。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の制御量算出装置において、
    前記学習制御手段は、前記制御量修正手段による修正後の制御量が、修正直後の入力変数に対応するものとなるように前記平面の方程式を更新するよう構成されていること
    を特徴とする制御量算出装置。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の制御量算出装置において、
    前記学習制御手段は、前記制御量修正手段による制御量の修正が行われている間は、前記入力変数が変化しても制御量を変更しないこと
    を特徴とする制御量算出装置。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の制御量算出装置を用いて構成された空調制御装置であって、
    センサから入力される外気温、内気温、日射量を少なくとも前記入力変数とし、前記制御量として風量又は吹き出し口温度を算出するように構成されており、
    さらに、算出された前記風量又は吹き出し口温度に基づいて空調ユニットを駆動する駆動手段を備えること
    を特徴とする空調制御装置。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の制御量算出装置の制御量算出手段及び学習制御手段としてコンピュータシステムを機能させるためのプログラムを記録した記録媒体。
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