JP4332653B2 - 組織体形成方法及び組織体形成キット - Google Patents

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Description

本発明は、細胞を含む三次元組織体の形成に関し、特に増殖性の細胞を含む三次元組織体のサイズの制御に関する。
培養細胞は、三次元的に集合して組織体を形成した場合には、例えば、基材表面に二次元的に接着して、いわゆる単層を形成した場合に比べて、より長期間生存し、生体内における本来の機能をより高いレベルで発現することが報告されている。このため、培養細胞から三次元組織体を形成する技術は、例えば、生体の挙動を再現するシミュレータ、薬品開発における動物実験の代替技術、細胞移植による再生医療技術等への応用が期待されている。
そこで、従来、例えば、特許文献1には、基材に形成された細胞非接着性表面をもつウェル内で初代肝細胞を培養することにより、当該ウェル内で当該初代肝細胞が三次元的に集合した組織体を形成させることが記載されている。この特許文献1には、ウェル内に入れる細胞の数を変えることにより、組織体のサイズを制御することが記載されている。
一方、例えば、特許文献2には、基材の表面に規則的に配置された複数の小領域で内皮細胞を二次元的に培養した後、当該内皮細胞の単層上で初代肝細胞を培養することによって、当該単層上で当該初代肝細胞が三次元的に集合した組織体を形成させることが記載されている。この特許文献2には、互いに隣接して形成される複数の組織体同士の接着を防止するために、複数の小領域の間隔を所定値以上にすべきことが記載されている。
特許第3270286号公報 国際公開第03/010302号パンフレット
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、例えば、形成された三次元組織体が増殖性の細胞を含む場合には、当該細胞が増殖することにより、培養時間の経過に伴って当該三次元組織体のサイズが増加し続けるため、当該三次元組織体のサイズを一定に制御することは困難であった。また、上記特許文献2に記載の技術において、増殖性の細胞を含む三次元組織体のサイズの増加を抑制する方法については記載されていない。
したがって、従来、例えば、三次元組織体が増殖性の細胞を含む場合には、培養時間の経過に伴う当該三次元組織体の肥大化によって、その深部の細胞への栄養や酸素が次第に枯渇するようになるため、当該三次元組織体に含まれる一部又は全部の細胞が死滅し、又はその機能を失うこととなっていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、増殖性の細胞を含む三次元組織体のサイズを制御できる組織体形成方法及び組織体形成キットを提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る組織体形成方法は、増殖性の細胞を含む三次元組織体を形成する組織体形成方法であって、所定面積をもち、前記細胞を保持できる特定表面領域、及び前記特定表面領域に隣接して配置され、前記所定面積をもち、前記細胞を保持できる複数の隣接表面領域であって、その各々の重心点から、前記特定表面領域の重心点までの距離が互いに等しくなるよう配置された複数の隣接表面領域、が形成された基材を少なくとも一つ準備する準備工程と、前記基材のうち、前記特定表面領域及び前記各隣接表面領域のそれぞれで前記細胞を培養することによって、前記特定表面領域及び前記各隣接表面領域のそれぞれで前記細胞を含む三次元組織体を形成させる培養工程と、を含み、前記準備工程で準備する前記基材の前記距離を変化させることによって、前記培養工程で前記特定表面領域に形成される前記三次元組織体のサイズを、前記距離に応じて制御することを特徴とする。
また、前記特定表面領域及び前記隣接表面領域は、細胞接着性であることとしてもよい。また、この場合、前記基材の表面のうち、前記特定表面領域を囲む部分は、細胞非接着性であることとしてもよい。また、前記特定表面領域及び前記隣接表面領域は、前記基材に形成された有底孔の底面であって、細胞非接着性であることとしてもよい。
また、前記準備工程において、前記距離が互いに異なる複数の前記基材を準備し、前記培養工程において、前記複数の基材の前記特定表面領域に、前記距離に応じて、前記複数の基材間で互いに異なるサイズの前記三次元組織体を形成させることとしてもよい。また、この場合、前記準備工程において、前記距離が前記複数の基材間で規則的に変化するよう、前記複数の基材を準備し、前記培養工程において、前記複数の基材の前記特定表面領域に、前記複数の基材間で前記距離に応じてサイズが規則的に変化した三次元組織体を形成させることとしてもよい。
また、前記培養工程において、前記特定表面領域に、前記距離に応じた径の略球形状の三次元組織体を形成させることとしてもよい。また、前記特定表面領域と前記複数の隣接表面領域とは、前記特定表面領域の重心点が、前記複数の隣接表面領域の各々の重心点を結んで形成される多角形の中に位置するよう配置されることとしてもよい。また、前記準備工程で準備する前記基材の前記距離と、前記培養工程で形成される前記三次元組織体のサイズと、の相関関係を示す検量データを取得する工程をさらに含むこととしてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る組織体形成方法は、基材表面に互いに離間して配置された所定面積をもつ複数の表面領域のうち、第一の表面領域と、前記第一の表面領域に隣接して配置された複数の第二の表面領域であって、その各々の重心点から、前記第一の表面領域の重心点までの距離が互いに等しくなるよう配置された複数の第二の表面領域と、のそれぞれで増殖性の細胞を含む三次元組織体を形成させる場合における、前記第一の表面領域で形成される三次元組織体のサイズと、前記距離と、の相関関係を示す検量データに基づいて、所望のサイズの三次元組織体を形成させるための前記距離を決定する決定工程と、前記所定面積をもち、前記細胞を保持できる特定表面領域、及び前記特定表面領域に隣接して配置され、前記所定面積をもち、前記細胞を保持できる複数の隣接表面領域であって、その各々の重心点から、前記特定表面領域の重心点までの距離が、前記決定工程で決定された距離となるよう配置された複数の隣接表面領域、が形成された基材を準備する工程と、前記特定表面領域及び前記各隣接表面領域のそれぞれで前記細胞を培養することにより、前記特定表面領域に、前記細胞を含む、前記所望のサイズの三次元組織体を形成させる工程と、を含むことを特徴とする。また、前記検量データは、前記検量データ取得工程を含む組織体形成方法を用いて取得された検量データであることとしてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る組織体形成キットは、増殖性の細胞を含む三次元組織体を形成するための組織体形成キットであって、所定面積をもち、前記細胞を保持できる第一特定表面領域、及び前記第一特定表面領域に隣接して配置された、前記所定面積をもち、前記細胞を保持できる複数の第一隣接表面領域であって、その各々の重心点から、前記第一特定表面領域の重心点までの距離が互いに等しい第一距離となるよう配置された複数の第一隣接表面領域、が形成された第一基材と、前記所定面積をもち、前記細胞を保持できる第二特定表面領域、及び前記第二特定表面領域に隣接して配置された、前記所定面積をもち、前記細胞を保持できる複数の第二隣接表面領域であって、その各々の重心点から、前記第二特定表面領域の重心点までの距離が互いに等しく、且つ前記第一距離と異なる第二距離となるよう配置された複数の第二隣接表面領域、が形成された第二基材と、を含むことを特徴とする。また、前記第一基材と前記第二基材とは、一つの基材のうち互いに異なる部分であることとしてもよい。
本発明によれば、増殖性の細胞を含む三次元組織体のサイズを制御できる組織体形成方法及び組織体形成キットを提供することができる。
本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる基材表面の一例についての説明図である。 本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる基材表面の他の例についての説明図である。 本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる領域セットの一例についての説明図である。 本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる、重心間隔が互いに異なる複数の領域セットの一例についての説明図である。 本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる、複数の領域セットが形成された基材表面の一例についての説明図である。 本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる領域セットの他の例についての説明図である。 本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる領域セットのさらに他の例についての説明図である。 本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる領域セットのさらに他の例についての説明図である。 本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる領域セットのさらに他の例についての説明図である。 本実施形態に係る組織体形成方法において用いられる基材表面のさらに他の例についての説明図である。 実施例1において、中心間隔が互いに異なる表面領域で形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。 実施例1において、中心間隔が互いに異なる表面領域で形成された組織体の直径と培養時間との関係の一例を示すグラフである。 実施例1において形成される組織体の直径と中心間隔との直線関係を示す検量データの一例である。 実施例1において、隣接領域との位置関係が互いに異なる特定領域で形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。 実施例1において、隣接領域との位置関係が互いに異なる特定領域で形成された組織体の直径と培養時間との関係の一例を示すグラフである。 実施例2において、中心間隔が互いに等しく、直径が互いに異なる表面領域で形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。 実施例2において、中心間隔が互いに等しく、直径が互いに異なる表面領域で形成された組織体の直径と培養時間との関係の一例を示すグラフである。 実施例3において、中心間隔が互いに異なる表面領域で形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。 実施例3において形成される組織体の直径と中心間隔との直線関係を示す検量データの一例である。 実施例4において、中心間隔が互いに異なる表面領域で形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。 実施例4において形成される組織体の直径と中心間隔との直線関係を示す検量データの一例である。 実施例5において、中心間隔が互いに異なる表面領域で形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。 実施例5において形成される組織体の直径と中心間隔との直線関係を示す検量データの一例である。 実施例6において、中心間隔が互いに異なる表面領域で形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。 実施例6において形成される組織体の直径と中心間隔との直線関係を示す検量データの一例である。 実施例7において、中心間隔が互いに異なる表面領域で形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。 実施例7において形成される組織体の直径と中心間隔との直線関係を示す検量データの一例である。
以下に、本発明の一実施形態に係る組織体形成方法及び組織体形成キットについて、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る組織体形成方法(以下、「本方法」という)は、所定の面積をもつ複数の表面領域が互いに離間して配置された基材表面を少なくとも一つ準備する工程(以下、「準備工程」という)と、当該基材表面のうち、当該各表面領域で増殖性の細胞を培養することにより、当該各表面領域に当該細胞を含む三次元組織体(以下、「組織体」という)を形成させる工程(以下、「培養工程」という)と、を含む。
まず、準備工程について説明する。図1は、この準備工程で準備する基材の一例についての説明図である。また、図2は、この準備工程で準備する基材の他の例についての説明図である。図1及び図2に示すように、準備工程では、直径が互いに等しい円形状の複数の表面領域3a,3bが規則的に配置された平板状の基材1の表面2を準備する。この基材1の材質は特に限られず、例えば、ガラス、合成樹脂、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)等の合成ゴム、天然ゴム、セラミック、ステンレス鋼等から成形される。合成樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル、シリコン等を好ましく用いることができる。
図1に示す基材1に形成された各表面領域3aは細胞接着性の表面である。ここで、細胞接着性の表面とは、例えば、培養液等の溶液中において、細胞が接着可能な特性を示す表面である。したがって、例えば、培養液中において、表面領域3aに沈降した細胞は、その形状を、培養時間の経過に伴って、球形から比較的扁平な形状に変化させつつ、当該表面領域3aに接着する。
具体的に、この表面領域3aは、例えば、基材1そのものの表面が、培養液等の溶液中において、細胞が接着可能な荷電状態や親水性・疎水性を示す場合には、当該基材1そのものの表面を露出させた領域として形成できる。また、この表面領域3aは、例えば、基材表面2の一部に、生体から取得され若しくは合成された細胞接着性物質又はこれらの誘導体が固定された領域として形成できる。
この細胞接着性物質としては、例えば、表面領域3aで培養する細胞の細胞膜に存する細胞表面分子(例えば、インテグリンや糖鎖受容体等)のうち特定のものに対して結合し得る物質を用いることができる。具体的に、生体から取得された細胞接着性物質としては、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等の細胞外マトリックスを好ましく用いることができる。また、合成された細胞接着性物質としては、例えば、細胞接着性を示す特定のアミノ酸配列(例えば、アルギニン・グリシン・アスパラギン酸配列(いわゆるRGD配列)等)や特定の糖鎖配列(例えば、ガラクトース側鎖等)を有する化合物等を好ましく用いることができる。また、これら細胞接着性物質の誘導体としては、例えば、当該細胞接着性物質に任意の官能基や高分子鎖等を、所定の化学反応(例えば、カルボキシル基やアミノ基等の間の縮合反応)等によって結合させたものを好ましく用いることができる。
これら細胞接着性物質又はその誘導体は、例えば、当該細胞接着性物質又はその誘導体を含む水溶液を、基材表面2のうち各表面領域3aを形成させる部分で乾燥させることにより、当該各部分に固定できる。また、これらの細胞接着性物質又はその誘導体は、例えば、当該細胞接着性物質又はその誘導体を含む水溶液中において、当該細胞接着性物質又はその誘導体が有する官能基と、基材表面2のうち各表面領域3aを形成させる部分に露出している官能基と、を所定の化学反応(例えば、チオール基と金表面等との化学吸着反応や、カルボキシル基やアミノ基等の間の縮合反応)等によって結合させることにより、当該部分に固定できる。
また、図1に示す基材表面2のうち、複数の表面領域3a以外の部分は、細胞非接着性の周辺表面4である。すなわち、各表面領域3aは、細胞非接着性の周辺表面4によって囲まれている。また、図2に示す基材1には所定の深さをもつ複数の有底孔(以下、「キャビティ100」という)が規則的に配置するよう形成されており、各表面領域3bは、各キャビティ100の底面として形成されている。そして、この図2に示す基材表面2は、その全体が細胞非接着性である。すなわち、基材表面2のうち、キャビティ100が形成されている部分以外の部分である周辺表面4と、当該キャビティ100内の表面領域3bと、はいずれも細胞非接着性の表面である。ここで、細胞非接着性の表面とは、例えば、培養液等の水溶液中において、細胞の接着に不適切な特性を示す表面である。したがって、例えば、培養液中において周辺表面4又は表面領域3bに沈降した細胞は、その形状を球状からほとんど変化させず、当該周辺表面4又は表面領域3bに実質的に接着できない。すなわち、周辺表面4又は表面領域3bに沈降した細胞は、当該周辺表面4又は表面領域3bに全く接着できずに培養液中で浮遊し、又はいったん接着したとしても、所定の培養時間経過後には培養液の流れ等によって容易に脱着する。
具体的に、この周辺表面4及び表面領域3bは、例えば、基材1そのものの表面が、培養液等の水溶液中において、細胞の接着に不適切な荷電状態や親水性・疎水性を示す場合には、当該基材1そのものの表面を露出させた領域として形成できる。また、この周辺表面4及び表面領域3bは、例えば、基材表面2の一部に、生体から取得され若しくは合成された細胞非接着性物質又はこれらの誘導体が固定された領域として形成することができる。
この細胞非接着性物質としては、例えば、表面領域3a,3bで培養する細胞の細胞膜に存する細胞表面分子に対して結合しない物質を用いることができる。具体的に、生体から取得された細胞非接着性物質としては、例えば、アルブミン等の高い親水性を示すたんぱく質等を好ましく用いることができる。また、合成された細胞非接着性物質としては、例えば、ポリエチレングリコール等の極めて高い親水性を示す高分子鎖を含む化合物や、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、poly―HEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)、SPC(セグメント化ポリウレタン)等を好ましく用いることができる。また、これら細胞非接着性物質の誘導体としては、例えば、当該細胞非接着性物質に任意の官能基や高分子鎖等を、所定の化学反応等によって結合させたものを好ましく用いることができる。
これら細胞非接着性物質又はその誘導体は、例えば、当該細胞非接着性物質又はその誘導体を含む水溶液を、図1に示す基材表面2のうち各表面領域3aを囲む部分、又は図2に示す各表面領域3b及び周辺表面4で乾燥させることにより、当該各表面領域3aを囲む部分、又は当該各表面領域3b及び周辺表面4に固定できる。また、これら細胞非接着性物質又はその誘導体は、例えば、当該細胞非接着性物質又はその誘導体を含む水溶液中において、当該細胞非接着性物質又はその誘導体が有する官能基と、基材表面2のうち各表面領域3aを囲む部分、又は図2に示す各表面領域3b及び周辺表面4に露出している官能基と、を所定の化学反応等によって結合させることにより、当該各表面領域3aを囲む部分、又は当該各表面領域3b及び周辺表面4に固定できる。
また、図2に示す基材1のキャビティ100は、当該基材1の材質等に応じて選択される任意の加工方法を用いて、基材表面2の一部に形成することができる。具体的に、例えば、このキャビティ100は、マシニングセンタ等を用いた穿孔加工、レーザー等を用いた光微細加工、エッチング加工、エンボス加工等により基材表面2に形成し、又は射出成形、プレス成形、ステレオリソグラフィー等による基材1の成形時に形成することができる。
このような加工方法により、キャビティ100は、例えば、所定厚さの基材1の表面2に、当該基材1の厚さより小さい深さをもつ有底孔として形成することができる。また、このキャビティ100は、例えば、基材1を貫通する穴を形成した後に、当該基材1の片面に他の部材を貼り合わせて底面とすることにより有底孔として形成することができる。このキャビティ100の底面を形成するための部材としては、例えば、当該貫通孔を形成した基材1と同じ又は異なる材質の基板やフィルム等を用いることができる。
また、複数のキャビティ100は、例えば、CAD(Computer Aided Design)プログラムにより加工位置を精密に制御するマシニングセンタ等を用いることにより、図2に示すように、基材1上に、円形の底面の中心間の距離が一定の間隔となるよう規則的に形成することができる。
また、図1に示す基材表面2は、各表面領域3aと周辺表面4とを含むその全体が実質的に平坦な表面となっている。すなわち、各表面領域3a及び周辺表面4はそれぞれ実質的に平坦な表面であるとともに、基材表面2の全体が実質的に平坦な表面を構成するよう互いに連なっている。ここで、実質的に平坦な表面とは、例えば、当該表面の凹凸(例えば、各表面領域3aと周辺表面4との段差)が細胞1個分の厚みより小さい程度に小さい表面をいう。また、図2に示す基材表面2のうち、各表面領域3b及び周辺領域4もまたそれぞれ実質的に平坦な表面として形成されている。
また、各表面領域3a及び各表面領域3bの面積は、当該各表面領域3a及び各表面領域3bで培養する細胞のサイズがその種類や状態等によって異なるため一概には言えないが、例えば、300〜1×10μmの範囲であることが好ましく、特に5000〜2×10μmの範囲であることが好ましい。すなわち、図1及び図2に示す各表面領域3a及び各表面領域3bの直径は、当該各表面領域3a及び各表面領域3bで培養する細胞の直径の2〜50倍程度の範囲であることが好ましく、特に5倍〜30倍程度の範囲であることが好ましい。これは、細胞は各表面領域3a及び各表面領域3b上で三次元的に集合して組織体を形成することから、当該各表面領域3a及び各表面領域3bの面積は、当該組織体に含まれる細胞の数を規定するためである。すなわち、各表面領域3a及び各表面領域3bの面積が300μm又は細胞の直径の2倍より小さい場合には、例えば、組織体を形成するために必要な数の細胞が当該各表面領域3aに接着できず、また、当該必要な数の細胞を各表面領域3b上に保持できない。また、各表面領域3a及び各表面領域3bの面積が1×10μm又は細胞の直径の50倍より大きい場合には、当該各表面領域3a及び各表面領域3bで形成される組織体が大きくなりすぎるため、例えば、当該組織体の深部に含まれる細胞が、当該組織体外の培養液等から栄養や酸素を十分に受けることができずに死滅し、又はその機能を失ってしまうことがあるためである。
また、図2に示す基材1のキャビティ100の深さは、用いる細胞の径の1〜100倍程度の範囲であることが好ましく、特に2倍〜50倍程度の範囲であることが好適である。これは、キャビティ100の深さが上記下限値より小さい場合には、当該キャビティ100内から細胞がこぼれることにより、細胞を表面領域3b上に確実に保持することが困難となるためである。また、キャビティ100の深さが上記上限値より大きい場合には、当該キャビティ100内の表面領域3b上で保持されている細胞に対する酸素や栄養分の供給が不十分となることがあるためである。
また、基材表面2は、本方法において組織体のサイズを制御するために必要な最低限の数の表面領域3a又は表面領域3bを有する領域セットを少なくとも1つ含んでいる。すなわち、この領域セットは、複数の表面領域3a又は表面領域3bの一部分である、1つの特定の表面領域(以下、「特定領域」という)と、当該特定領域の周辺に、当該特定領域に隣接して配置される複数の表面領域(以下、「隣接領域」という)と、を有する。領域セットに含まれる複数の隣接領域は、その各々の重心点(円形の隣接領域における円の中心点、四角形の隣接領域における対角線の交点等)から、当該領域セットに含まれる特定領域の重心点までの距離(以下、「重心間隔」という)が互いに等しくなるよう配置されている。
ここで、本方法に特徴的なことの一つは、準備工程で準備する基材表面2に含まれる領域セットの重心間隔を変化させることによって、培養工程で特定領域に形成される、増殖性の細胞を含む三次元組織体のサイズを、当該重心間隔に応じて制御できる点である。すなわち、例えば、準備工程において所定の重心間隔の領域セットを含む基材表面2を準備することによって、培養工程において、少なくとも当該領域セットの特定領域に、当該重心間隔によって規定される所定のサイズの組織体を形成できる。
具体的に、例えば、準備工程において特定領域と各隣接領域とが第一の重心間隔で互いに離間して配置された領域セットを含む第一の基材表面を準備した場合には、培養工程において当該第一の重心間隔に応じた第一のサイズの組織体を形成でき、準備工程において特定領域と各隣接領域とが当該第一の重心間隔より小さい第二の重心間隔で互いに離間して配置された領域セットを含む第二の基材表面を準備した場合には、培養工程において、当該第二の重心間隔と当該第一の重心間隔との比率に応じた、当該第一のサイズより小さい第二のサイズの組織体を形成できる。したがって、例えば、準備工程において互いに重心間隔が一定の規則に従って段階的に変化する複数の基材表面を準備した場合には、培養工程において、当該複数の基材表面の複数の特定領域に、当該一定の規則に従って当該複数の基材表面間で段階的に変化するサイズの組織体を形成できる。ここで、重心間隔が一定の規則に従って変化する場合としては、例えば、1つの基材表面の重心間隔に対して、他の1又は複数の基材表面の重心間隔が、所定の長さずつ変化し、所定の倍率で変化し、又は所定の関数に従って変化する場合等を挙げることができる。
このように、本方法によれば、例えば、重心間隔によって規定される所望サイズの複数の組織体が規則的且つ高密度に配置された組織体アレイチップを得ることができる。また、本方法によれば、例えば、培養する細胞の種類ごとに、所望のサイズの組織体を形成するために設定すべき重心間隔をスクリーニングすることができる。
なお、特定領域の辺縁部と各隣接領域の辺縁部との最短距離(すなわち、例えば、円形状の表面領域3a及び表面領域3bについては、特定領域の円周部と各隣接領域の円周部との最短距離)は、当該特定領域及び各隣接領域で培養する細胞のサイズがその種類や状態等によって異なるため一概には言えないが、50〜1000μmの範囲であることが好ましく、特に100〜700μmの範囲であることが好ましい。これは、この最短距離が50μmより小さい場合には、例えば、特定領域に形成される組織体と隣接領域に形成される組織体との間で融合や架橋が起こり、当該複数の組織体が互いに接着した組織体が形成されることにより、組織体のサイズを厳密に制御できない場合があるためである。また、最短距離が1000μmより大きい場合には、特定領域に形成される組織体と隣接領域に形成される組織体との距離が大きいために、例えば、複数の組織体を高密度に配置した組織体アレイを得ることができない。
図3は、図1及び図2に示す基材表面2に形成された領域セット10についての説明図である。この領域セット10は、基材表面2に形成された複数の表面領域3a又は表面領域3b(図1及び図2参照)のうちの1つである特定領域11(図3においてハッチングを施して示す領域)と、当該複数の表面領域3a又は表面領域3bのうちの他の一部であって、当該特定領域11を囲むように配置された6つの隣接領域12と、を有している。特定領域11及び各隣接領域12は、互いに等しい直径D1の円形状である。そして、特定領域11の中心点11cと、各隣接領域12の中心点12cと、の距離(以下、「中心間隔」という)は、互いに等しい一定値L1となっている。また、特定領域11は、その中心点11cが、6つの隣接領域12の各々の中心点12cを結んで形成される正六角形P1の重心点と一致するよう、その全体が当該正六角形P1の中に位置するよう配置されている。また、この領域セット10においては、正六角形P1の6つの辺の各々の長さM1は、中心間隔L1と同一になっている。
図4は、重心間隔が互いに異なる複数の領域セットの一例についての説明図である。図4Aに示す第一領域セット20は、互いに等しい一定の直径D2の円形状領域として形成された1つの特定領域21及び6つの隣接領域22を有している。特定領域21と各隣接領域22との中心間隔L2は、互いに等しくなっている。また、図4Bに示す第二領域セット30は、第一領域セット20に含まれる特定領域21及び各隣接領域22と同一の直径D2の円形状領域として形成された1つの特定領域31及び6つの隣接領域32を有し、当該特定領域31と各隣接領域32との中心間隔L3は、当該第一領域セット20の中心間隔L2より大きくなっている。また、図4Cに示す第三領域セット40は、第一領域セット20に含まれる特定領域21及び各隣接領域22と同一の直径D2の円形状領域として形成された1つの特定領域41及び6つの隣接領域42を有し、当該特定領域41と各隣接領域42との中心間隔L4は、第二領域セット30の中心間隔L3よりさらに大きくなっている。
準備工程においては、例えば、図4に示すような、互いに等しい直径D2の特定領域21,31,41及び隣接領域22,32,42を有し、各隣接領域22,32,42の中心点22c,32c,42cを結んで形成される正六角形P2,P3,P4が互いに相似となる第一領域セット20、第二領域セット30、又は第三領域セット40のうち、互いに異なるいずれか1つの領域セットが形成された複数の基材表面を準備する。すなわち、この準備工程においては、例えば、第一領域セット20が少なくとも1つ形成された第一基材表面と、第二領域セット30が少なくとも一つ形成された第二基材表面と、第三領域セット40が少なくとも一つ形成された第三基材表面と、を準備する。なお、この場合の第一基材表面、第二基材表面、及び第三基材表面は、例えば、互いに別体に成形された3つの基材の各々の表面として準備されてもよいし、1つの基材の1つの表面のうち互いに異なる3つの部分として準備されてもよい。
なお、領域セットは、複数の表面領域のうちの1つを特定領域として着目することによって便宜的に特定される。したがって、ある領域セットの特定領域が、他の領域セットの複数の隣接領域のうちの1つである場合もある。図5は、基材表面2に形成された複数の表面領域3cのうち、複数の領域セットを含む一部分についての説明図である。図5Aに示す領域セット50は、複数の表面領域3cのうち、ハッチングを施して示す1つの表面領域51を特定領域として着目するとともに、当該表面領域51に隣接する6つの表面領域52a,52b,52c,52d,52e,52fを隣接領域として着目することにより特定される。一方、図5Bに示すように、複数の表面領域3cのうち、図5Aに示す領域セット50に含まれる6つの隣接領域52a,52b,52c,52d,52e,52fのうち、黒塗りで示す1つの表面領域52aを特定領域として着目した場合には、図5Aに示す領域セットの特定領域51を6つの隣接領域のうちの1つとして含む他の領域セット55が特定される。
また、領域セットに含まれる隣接領域の数や特定領域と隣接領域との位置関係は図1〜図5に示すものに限られない。図6は、領域セットの他の例についての説明図である。図6に示す領域セット60は、互いに等しい直径D6の円形状に形成された1つの特定領域61(図6においてハッチングを施して示す領域)と、当該特定領域61の周辺に配置された3つの隣接領域62と、を有し、当該特定領域61と当該各隣接領域62との中心間隔L6は互いに等しくなっている。そして、特定領域61は、その中心点61cが、3つの隣接領域62の各々の中心点62cを結んで形成される正三角形P6の重心に一致するよう当該正三角形P6の中に配置されている。また、この領域セット60において、正三角形P6の3つの辺の各々の長さM6は、中心間隔L6より大きくなっている。
また、図7は、領域セットのさらに他の例についての説明図である。図7Aに示す領域セット70は、互いに等しい直径D7の円形状に形成された1つの特定領域71(図7A及び図7Bにおいてハッチングを施して示す領域)と、当該特定領域71の周辺に配置された4つの隣接領域72と、を有し、当該特定領域71と当該各隣接領域72との中心間隔L7は互いに等しくなっている。そして、特定領域71は、その中心点71cが、4つの隣接領域72の各々の中心点72cを結んで形成される正方形P7の中に位置するよう当該四角形P7の中に配置されている。また、この領域セット70において、正方形P7の4つの辺の各々の長さM7は、中心間隔L7より大きくなっている。また、この場合、準備工程においては、例えば、図7Bに示すように、その一部に図7Aに示す領域セット70を含むよう、縦横に一定の中心間隔L7で規則的に配置される複数の表面領域3dが形成された基材表面を準備する。
また、図8は、領域セットのさらに他の例についての説明図である。図8Aに示す領域セット80は、互いに等しい直径D8の円形状に形成された1つの特定領域81(図8A及び図8Bにおいてハッチングを施して示す領域)と、当該特定領域81を挟むように配置された2つの隣接領域82と、を有し、当該特定領域81と当該各隣接領域82との中心間隔L8は互いに等しくなっている。そして、特定領域81は、その中心点81cが、2つの隣接領域82の各々の中心点82cを結ぶ直線N8の上に位置するよう配置されている。すなわち、特定領域81の中心点81cは、直線N8の中点に位置している。また、この場合、準備工程においては、例えば、図8Bに示すように、その一部に図8Aに示す領域セット80を含むよう、複数の表面領域3eが一定の中心間隔L8で直列に配置されるとともに、当該複数の表面領域3eを含む列が、互いに平行に複数配置された基材表面を準備する。なお、図8Bにおいて、隣接する2つの列に含まれる表面領域3eの中心点8c間の最短距離Q8は、領域セット80の中心間隔L8より大きくなっている。
また、図9は、領域セットのさらに他の例についての説明図である。図9Aに示す領域セット90は、互いに等しい直径D9の円形状に形成された1つの特定領域91(図9A及び図9Bにおいてハッチングを施して示す領域)と、当該特定領域91の周辺に配置された3つの隣接領域92と、を有し、当該特定領域91と当該各隣接領域92との中心間隔L9は互いに等しくなっている。そして、特定領域91は、その中心点91cが、3つの隣接領域92の各々の中心点92cを結んで形成される二等辺三角形P9の3つの辺のうち最も長い辺の中点と一致するよう、その半分が当該二等辺三角形P9の中に配置されている。また、この場合、準備工程においては、例えば、図9Bに示すように、その一部に図9Aに示す領域セット90を含むよう、複数の表面領域3fが縦横に一定の中心間隔L9で2列に配置されるとともに、当該2列の単位が、互いに平行に複数配置された基材表面を準備する。なお、図9Bにおいて、隣接する2つの2列単位に含まれる表面領域3fの中心点9c間の最短距離Q9は、領域セット90の中心間隔L9より大きくなっている。
なお、各表面領域の形状は、上述のような円形状に限られず、例えば、楕円形状や多角形であってもよい。また、隣接領域の重心点を結んで形成される多角形は、正多角形に限られず、例えば、その他の多角形であってもよい。また、各表面領域が形成される基材は、平板に限られず、例えば、可撓性の高いフィルムや膜等であってもよい。また、細胞非接着性の周辺表面に囲まれた細胞接着性の表面領域は、図2に示すようなキャビティの底面の一部として形成されてもよい。すなわち、例えば、キャビティの円形底面の一部であって、その中央部分に細胞接着性の表面領域を形成するとともに、当該表面領域を囲む当該円形底面の他の一部又は残りの部分全体を細胞非接着性の周辺表面として形成することもできる。
また、細胞接着性の表面領域を含む基材表面は、図1に示すようにその全体が平坦なものに限られない。図10は、細胞接着性の表面領域が形成された基材表面の他の例についての説明図である。図10に示す基材1の表面2には、当該表面2に所定の高さをもって凸設された複数の円柱体101が規則的に配置され、当該複数の円柱体101の各々の上端面として各表面領域3gが形成されている。また、基材表面2のうち、各表面領域3gが形成された円柱体101以外の部分である周辺表面4は細胞非接着性としてもよい。なお、図10に示す各表面領域3g及び当該各表面領域3gを囲む周辺表面4はそれぞれ実質的に平坦な表面となっている。
次に、培養工程について説明する。この培養工程においては、基材表面のうち、各領域セットに含まれる特定領域及び各隣接領域で増殖性の細胞を培養する。ここで、培養する細胞としては、所定の培養条件下で、増殖性を有し、且つ細胞同士が三次元的に集合して立体的な組織体を形成できるものであれば、由来する動物種や臓器・組織の種類等を問わず任意の細胞を用いることができる。具体的に、この細胞としては、例えば、ヒト又はヒト以外の動物(例えば、サル、ブタ、イヌ、ラット、マウス等)由来の肝臓、膵臓、腎臓、神経、皮膚等から採取される初代細胞、未分化な幹細胞、胚由来のES細胞(Embryonic Stem cell)、樹立されている株化細胞、又はこれらに遺伝子操作等を施した細胞等であって、増殖可能な細胞を好ましく用いることができる。また、一種類の細胞を単独で用いることもできるし、二種類以上の細胞を任意の比率で混在させて用いることもできる。
また、細胞を培養する際に用いる培養液としては、当該細胞の生存状態や機能等を維持することができるよう、必要な塩類や栄養成分等を適切な濃度で含む水溶液であれば任意の組成のものを用いることができる。具体的に、例えば、この培養液としては、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium:DMEM)等の基礎培地に、増殖因子や抗生物質等を添加した培養培地や、いわゆる生理食塩水等を好ましく用いることができる。
この培養工程において、図1に示す表面領域3aとして形成された特定領域及び各隣接領域に接着することにより保持された細胞、及び図2に示す表面領域3bとして形成された特定領域及び各隣接領域に接着することなく保持された細胞は、培養時間の経過に伴って、当該特定領域及び各隣接領域で次第に重なり合い、三次元的に集合して、立体的な組織体を形成する。すなわち、細胞接着性の表面領域3aに係る特定領域及び各隣接領域に接着した細胞は、例えば、まず当該特定領域及び当該各隣接領域で二次元的に増殖し、その後、さらに互いに積み重なるように三次元的に増殖することにより、所定の厚みをもった組織体を形成する。また、細胞非接着性の表面領域3bに係る特定領域及び各隣接領域上に保持された細胞は、キャビティ100内の溶液中で互いに三次元的に集合しつつ、当該溶液中で浮遊状態を維持したまま増殖することにより、所定の厚みをもった三次元組織体を形成する。
この特定領域及び各隣接領域で形成される組織体のサイズは、当該組織体に含まれる細胞が増殖することによって、培養時間の経過に伴い増加し得る。しかしながら、本方法においては、少なくとも特定領域に形成された組織体のサイズは、当該特定領域と各隣接領域との重心間隔に応じた一定値に維持される。すなわち、例えば、培養工程において特定領域で形成される組織体のサイズは、培養開始後、所定の期間内は次第に増加するが、当該特定領域と各隣接領域との重心間隔によって規定される所定値に到達した後は、その増加が制限されて、その後の培養期間を通じて当該所定値に維持される。
したがって、例えば、準備工程において、重心間隔が第一の値である領域セットが形成された第一の基材表面と、重心間隔が当該第一の値の所定倍である第二の基材表面と、を準備した場合には、培養工程において、第二の基材表面の特定領域には、第一の基材表面の特定領域に形成される組織体のサイズの当該所定倍のサイズの組織体を形成できる。具体的に、例えば、準備工程において、図4Aに示す第一の領域セット20が形成された第一の基材表面と、図4Bに示す第二の領域セット30が形成された第二の基材表面と、を準備した場合には、培養工程において、当該第二の領域セット30に含まれる第二の特定領域31に形成される組織体のサイズの、当該第一の領域セット20に含まれる第一の特定領域21に形成される組織体のサイズに対する比率は、当該第二の領域セット30の重心間隔L3の、当該第一の領域セット20の重心間隔L2に対する比率に略等しくなる。
なお、組織体のサイズとは、例えば、当該組織体の外形を基材表面に投影した場合の形状の代表長さや、基材表面における組織体の厚みである。すなわち、例えば、組織体が略球形状である場合(組織体が細胞接着性の表面領域3aに接着したドーム状又は略球形状である場合、組織体が細胞非接着性の表面領域3bで培養液中に浮遊した略球形状である場合を含む)には、当該組織体のサイズは、当該組織体の外形を基材表面に投影した円形状の直径である。このような略球形状の組織体は、表面領域3a,3bの形状に関わらず形成できるが、円形状又は多角形状の表面領域3a,3bで好ましく形成でき、特に円形状の表面領域3a,3bで好ましく形成できる。また、例えば、組織体の外形を基材表面に投影した形状が楕円形である場合には、当該組織体のサイズは、当該楕円形の長軸又は短軸である。また、例えば、組織体が基材表面に沿ってひも状に延びる場合には、当該ひも状の組織体のサイズは、その長軸方向の長さである。また、例えば、組織体が半球形状等のドーム状である場合には、当該組織体のサイズは、当該組織体の外形を基材表面に投影した円形状の直径又は当該基材表面に盛り上がったドーム形状の厚みである。
また、本方法は、準備工程で準備する基材表面の重心間隔と、培養工程で形成される組織体のサイズと、の相関関係を示す検量データを取得する工程(以下、「データ取得工程」という)を含むこととしてもよい。このデータ取得工程においては、まず培養工程で形成された組織体のサイズを測定する。すなわち、例えば、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡等を用いて、基材表面で形成された組織体を撮影した画像を取得し、当該画像を所定の画像解析ソフトウェアを備えたコンピュータ上で解析することにより、当該組織体のサイズを定量的に測定する。
そして、このデータ取得工程においては、測定された組織体のサイズと、当該組織体が形成された特定領域と各隣接領域との重心間隔と、を関連付けた検量データを生成する。すなわち、例えば、図4Aに示す第一の特定領域21で第一の直径の球状組織体が形成され、図4Bに示す第二の特定領域31では当該第一の直径より大きい第二の直径の球状組織体が形成された場合には、当該第一の直径と、当該第一の特定領域21に係る第一の重心間隔L2と、を関連付けるとともに、当該第二の直径と、当該第二の特定領域31に係る第二の重心間隔L3と、を関連付ける。
この検量データは、例えば、所定のサイズの組織体を形成するために設定すべき重心間隔を規定するデータである。すなわち、この検量データは、例えば、組織体のサイズと、当該サイズの組織体を形成するための重心間隔と、を互いに対応付けたデータテーブルや関数等である。
また、本方法は、検量データ取得工程において取得された検量データに基づいて、所望のサイズの組織体を形成させるための重心間隔を決定する工程(以下、「決定工程」という)を含むこととしてもよい。この決定工程においては、例えば、既に取得されている検量データによって規定される組織体のサイズと重心間隔との相関関係から、所望のサイズに関連付けられている重心間隔を決定する。すなわち、例えば、検量データにおいて、図4Aに示す第一の特定領域21に係る第一の重心間隔L2と、当該第一の特定領域21で形成される組織体のサイズである第一のサイズと、が関連付けられている場合であって、当該第一のサイズの組織体を形成したい場合には、当該検量データに基づいて、準備工程において準備する基材表面の重心間隔を当該第一の重心間隔L2に決定する。この場合、準備工程において、各隣接領域との重心間隔が決定工程で決定された第一の重心間隔L2である特定領域を含む領域セットが複数形成された基材表面を準備する。そして、培養工程において、特定領域及び各隣接領域のそれぞれで増殖性の細胞を培養することによって、当該特定領域に、そのサイズが第一のサイズに制御された複数の組織体を形成できる。
また、例えば、組織体のサイズと重心間隔との比例関係を規定する検量データが取得されている場合には、決定工程において、当該比例関係を規定する関係式に基づいて、所望のサイズに対応する重心間隔を決定できる。また、所望のサイズの組織体を形成するための重心間隔が、既に取得されている検量データに基づいて決定できない場合には、例えば、上述のように、重心間隔が互いに異なる複数の領域セットの各特定領域で組織体を形成させることにより、当該所望のサイズの組織体を形成するための重心間隔をスクリーニングする。そして、決定工程では、このスクリーニングにおけるデータ取得工程において取得された検量データに基づいて、所望のサイズの組織体が形成された領域セットの重心間隔を当該所望のサイズに対応する重心間隔として決定する。
なお、本方法においては、例えば、重心間隔が互いに異なる複数の基材表面について一度に各工程を実施してもよいし、又は、重心間隔が互いに異なる複数の基材表面のうち、各重心間隔の基材表面について各工程を繰り返してもよい。すなわち、例えば、第一の重心間隔の第一の基材表面を準備して、当該第一の基材表面で組織体を形成させる第一のサイクルを実施した後、当該第一の重心間隔とは異なる第二の重心間隔の第二の基材表面を準備して、当該第二の基材表面で組織体を形成させる第二のサイクルをさらに実施することとしてもよい。
また、本実施形態に係る組織体形成キット(以下、「本キット」という)は、重心間隔が第一の距離となるよう特定領域及び複数の隣接領域が形成された第一の基材と、重心間隔が当該第一の距離と異なる第二の距離となるよう特定領域及び複数の隣接領域が形成された第二の基材と、を含む。すなわち、本キットは、重心間隔が互いに異なる複数の領域セットのうち、互いに異なるいずれか1つの領域セットが形成された複数の基材表面を含む。具体的に、例えば、本キットは、図4Aに示す第一の領域セット20が形成された第一の基材表面と、図4Bに示す第二の領域セット30が形成された第二の基材表面と、図4Cに示す第三の領域セット40が形成された第三の基材表面と、を含む。
本キットは、領域セットの重心間隔が互いに異なる複数の基材を、一つの基材のうち互いに異なる部分として含むこととしてもよい。すなわち、本キットに含まれる、領域セットの重心間隔が互いに異なる複数の基材表面の各々は、一つの基材の表面のうち、互いに異なる部分であってもよい。具体的に、例えば、本キットに含まれる基材の表面の一部には、図4Aに示す第一の領域セット20が少なくとも一つ形成され、当該表面の他の一部には、図4Bに示す第二の領域セット30が少なくとも一つ形成され、当該表面のさらに他の一部には、図4Cに示す第三の領域セット40が少なくとも一つ形成される。なお、本キットは、このように重心間隔の互いに異なる複数の領域セットが互いに異なる表面部分に形成された基材を、複数含むこととしてもよい。
また、本キットに含まれる、形成されている領域セットの重心間隔が互いに異なる複数の基材表面の各々は、互いに別体に成形された複数の基材の各々の表面であってもよい。すなわち、この場合、例えば、本キットは、図4Aに示す第一の領域セット20が少なくとも一つ形成された表面を有する第一の基材と、当該第一の基材とは別体に成形され、図4Bに示す第二の領域セット30が少なくとも一つ形成された表面を有する第二の基材と、当該第一の基材及び当該第二の基材とは別体に成形され、図4Cに示す第三の領域セット40が少なくとも一つ形成された表面を有する第三の基材と、を含むこととなる。
そして、本キットに含まれる複数の基材表面に形成された特定領域及び各隣接領域において増殖性の細胞を培養することによって、当該各基材表面の特定領域に、当該各基材表面の重心間隔によって規定されるサイズの組織体を形成させることができる。すなわち、上述のように、例えば、本キットが、重心間隔が複数の基材表面間で規則的に変化するよう、当該複数の基材表面を含む場合には、当該複数の基材表面の各々の特定領域に形成される組織体のサイズは、当該複数の基材表面間で、当該重心間隔に応じて規則的に変化することとなる。具体的に、例えば、本キットが、図4Aに示す第一の領域セット20が形成された第一の基材表面と、図4Bに示す第二の領域セット30が形成された第二の基材表面と、図4Cに示す第三の領域セット40が形成された第三の基材表面と、を含み、当該第一の領域セット20の中心間隔L2、当該第二の領域セット30の中心間隔L3、当該第三の領域セット40の中心間隔L4、が一定の割合で順次増加する場合には、当該第一の領域セット20に形成される第一の組織体、当該第二の領域セット30で形成される第二の組織体、当該第三の領域セット40で形成される第三の組織体、のサイズもまた、当該一定の割合で順次増加するものとすることができる。したがって、本キットによれば、例えば、各基材表面に、その重心間隔に応じて制御されたサイズの組織体が規則的且つ高密度に配置された組織体アレイチップを得ることができる。そして、このような組織体アレイチップを用いることにより、例えば、細胞の薬剤に対する応答性(感受性、毒性等)と、当該細胞から形成された組織体のサイズと、の相関関係を簡便且つ正確に検討することができる。具体的に、例えば、本キットの基材上に、癌由来細胞からなり、重心間隔に応じてサイズが一定の割合で変化する複数の組織を形成させ、抗癌剤を含む培養液中における当該組織の応答性(各組織に含まれる細胞の増殖速度、生存率、形態の変化等)を測定することにより、生体における腫瘍塊のサイズと、当該抗癌剤の薬効と、の相関関係を予測評価することができる。また、本キットによれば、所望のサイズの組織体を形成するための重心間隔を簡便且つ正確にスクリーニングできる。また、本キットに含まれる基材が細胞接着性の表面領域を有する場合には、各表面領域で形成された組織体を当該各表面領域に接着させた状態で保持することができる。また、本キットに含まれる基材が細胞非接着性の表面領域を有する場合には、各表面領域で形成された組織体は溶液中に浮遊するため、容易に回収することができる。
[実施例1]
次に、本方法を用いて組織体を形成した第一の実施例について説明する。この実施例1では、ガラス製の平板(24mm×24mm、厚さ200μm)を基材として用い、図1に示すような基材表面2を作製した。すなわち、図3に示すような、特定領域の中心点の位置が、6つの隣接領域の中心点を結んで形成される正六角形の重心点の位置と一致する領域セット(以下、「六角セット」という)が複数形成された基材表面と、図7に示すような、特定領域の中心点の位置が、4つの隣接領域の中心点を結んで形成される正方形の重心点の位置と一致する領域セット(以下、「四角セット」という)が複数形成された基材表面と、を作製した。
具体的に、まず、この基材の表面に、スパッタリング装置(E―1030、日立株式会社)を用いて、厚さ9nmのプラチナ(Pt)の薄膜を形成した。一方、直径が100μmであって、長さが200μmの円筒状突起を複数有するポリジメチルシロキサン(Poly(Dimethyl Siloxane):PDMS)製のスタンプをモールド成形により作製した。すなわち、10mm×10mmの矩形範囲に、六角セットの各表面領域の位置に対応して、その先端の直径100μmの円形断面の中心点間の距離が、それぞれ150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、500μm、又は600μmのいずれかとなるよう、複数の円筒状突起が形成された8種類のスタンプと、四角セットの各表面領域の位置に対応して、その先端の直径100μmの円形断面の中心点間の距離が400μmとなるよう、複数の円筒状突起が形成されたスタンプと、を作製した。
そして、各スタンプを用いたマイクロコンタクトプリンティングにより、次のようにして、複数種類の基材表面を作製した。すなわち、各表面領域に固定する細胞接着性物質として準備したコラーゲン(Cellmatrix、新田ゼラチン株式会社)を1.5mg/mLの濃度で含むコラーゲン溶液を調製し、上記作製した各スタンプの各円筒状突起の先端を当該コラーゲン溶液に浸すことにより、当該各円筒状突起の円形先端面に当該コラーゲン溶液を塗布した。そして、各スタンプの各円筒状突起の先端を、上記プラチナが蒸着された基材表面に押し当てることにより、当該各円筒状突起の先端に塗布されていたコラーゲン溶液を、当該基材表面に塗布した。さらに、この基材表面に塗布したコラーゲン溶液を窒素雰囲気下において乾燥させることにより、スタンプの各円筒状突起の先端に対応した位置に、コラーゲンが固定された表面領域を形成した。
また、基材表面のうち、表面領域以外の部分には、次のようにして細胞非接着性物質を固定した。すなわち、各表面領域を囲む表面に固定する細胞非接着性物質として、分子量30000のポリエチレングリコール(PEG)鎖とチオール基とを有する合成高分子(化学式:CHO(CHCHO)-CHCHSH、日本油脂株式会社)を準備した。そして、上述のように表面領域を形成した基材表面を、この細胞非接着性物質を5mMの濃度で含むエタノール溶液中に浸漬し、窒素雰囲気下において当該細胞非接着性物質のチオール基と、基材表面に形成したプラチナ薄膜のうち露出している部分(すなわち、基材表面のうち表面領域以外の部分)と、の間に特異的な化学結合を形成させることにより、当該プラチナ薄膜表面に当該細胞非接着性物質を固定した。その後、窒素雰囲気下において、この細胞非接着性物質を固定した基材表面を十分に乾燥させ、次いで、当該基材表面を、70%エタノール中に浸漬することにより、余剰の細胞非接着性物質を当該基材表面から除去するとともに、当該基材表面を滅菌した。
このようにして、基材表面のうち10mm×10mmの矩形範囲内で、細胞非接着性表面の中に直径100μmの複数の表面領域が、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、500μm又は600μmのいずれかの中心間隔で規則的に配置された六角セットを複数含む8種類の基材表面と、細胞非接着性表面の中に直径100μmの表面領域が中心間隔400μmで配置された四角セットを複数含む基材表面と、を作製した。
次に、上述のように作製した8種類の基材表面のうち各表面領域で、増殖性の細胞を培養した。この実施例1においては、増殖性の細胞として、ヒト肝臓癌由来の細胞株であるHepG2細胞(RCB1648、理化学研究所セルバンク)を用いた。また、培養液としては、ウィリアムズE培地(Williams‘s Medium E、シグマ社)10.8g/Lに、58.8mg/Lのペニシリン(明治製菓株式会社)、100mg/Lのストレプトマイシン(明治製菓株式会社)、2.2g/Lの炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社)、10%のウシ胎児血清(FBS、インビトロジェン株式会社)、を加えた血清添加培養液を調製して用いた。
そして、ポリスチレン製の培養容器(直径35mm、日本ベクトンディッキンソン株式会社)の底部に上記滅菌処理後の各基材を載置し、当該培養容器内の当該各基材の表面に、HepG2細胞を2.5×10個/mLの密度となるように分散した培養液を2.0mL加えた。この培養容器内の各基材表面で、5%炭酸ガス、95%空気の雰囲気下、37℃にて、静置状態でHepG2細胞の培養を行った。培養開始から4時間経過後、各基材を新鮮培養液2.0mLを含む新しい培養容器に移すことによって、基材表面に接着しなかった細胞を取り除いた。その後、培養容器内の培養液は、2日毎に新鮮な培養液に交換した。そして、培養開始後1、3、5、7、10、14、21及び28日目に、各基材表面の各表面領域に形成された組織体を位相差顕微鏡下で観察し、当該組織体の写真を撮影するとともに、当該顕微鏡写真に基づいて、各組織体の直径を測定することにより検量データを取得した。
図11は、培養14日目において、8種類の基材表面の各々の表面領域に形成された組織体の一部についての位相差顕微鏡写真である。図11A、図11B、図11C、図11D、図11E、図11F、図11G、及び図11Hには、それぞれ、中心間隔が150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、500μm及び600μmの基材表面において、直径100μmの特定領域で形成された組織体T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7及びT8を示す。図11A〜Hに示すように、各基材表面の各表面領域において、ドーム状又は略球形状の組織体が1つずつ形成された。各基材表面に形成された複数の組織体の直径は、互いに略等しかった。また、表面領域の直径が互いに等しく、中心間隔が互いに異なる8種類の基材表面では、当該中心間隔の減少に伴って、当該表面領域で形成される組織体の直径も減少した。すなわち、中心間隔を低減させることにより、組織体の直径の増加を抑制できた。このように、各中心間隔によって規定される均一な直径の複数の組織体が高密度且つ規則的に配置された8種類の組織体アレイが得られた。
図12は、中心間隔が互いに異なる8種類の基材表面の各々の特定領域で形成された組織体の直径と、培養時間と、の関係を示すグラフである。図12において、横軸は培養日数(日)、縦軸は組織体の直径(μm)をそれぞれ示す。また、黒塗り三角、白抜き三角、黒塗り四角、白抜き四角、黒塗り丸、白抜き丸、黒塗り菱形、及び白抜き菱形のシンボルは、それぞれ、中心間隔が150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、500μm及び600μmの基材表面で形成された組織体についての実測値の平均値を示す。この図12に示すように、8種類の中心間隔のいずれについても、組織体の直径は、培養7日目までは、培養日数の経過に伴って増加したが、培養10日目にはそれぞれ中心間隔に応じた互いに異なる一定値に到達し、その後は増加が抑制されて、少なくとも培養28日目まで当該一定値に維持できた。
図13は、この実施例1のデータ取得工程において取得された、8種類の基材表面の各々の特定領域で形成された組織体の直径と中心間隔との相関関係を示す検量データの一例である。図13において、横軸は組織体が形成された特定領域と各隣接領域との中心間隔(μm)、縦軸は組織体の直径(μm)をそれぞれ示す。また、各シンボルは実測値の平均値を示す。図13に示すように、特定領域で形成される組織体の直径は、当該特定領域と各隣接領域との中心間隔に略比例していた。すなわち、中心間隔が少なくとも150μmから600μmまでの範囲においては、特定領域で形成される組織体の直径は、108±10μmから267±25μmの範囲で当該中心間隔の増加に伴って直線的に増加した。このように、本方法によれば、中心間隔を変化させることによって、当該中心間隔の変化に比例して組織体の直径を増加させ又は減少させるよう、当該直径を制御することができた。
また、図13に示す検量データにおける、中心間隔X(μm)と、組織体の直径Y(μm)と、の相関関係を定式化すると、Y=0.355X+64.898(相関係数R=0.983)と表された。したがって、例えば、決定工程において、この関係式のY値に、所望の組織体の直径を代入することにより、当該所望の直径の組織体を形成させるための中心間隔をX値として決定できる。すなわち、この場合、検量データの直線関係を内挿又は外挿することにより、任意の組織体の直径に関連付けられた中心間隔を決定できる。そして、この検量データに基づいて、所望の直径Yに対応して決定された中心間隔Xで配置された直径100μmの特定領域でHepG2細胞を培養することにより、当該特定領域に当該直径Yの球状組織体を形成できる。
図14は、表面領域の直径が100μmであって中心間隔が400μmの六角セット又は四角セットが形成された基材表面で培養14日目に形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。図14A及び図14Bは、それぞれ六角セットの表面領域で形成された複数の組織体T9及び四角セットの表面領域で形成された複数の組織体T10を示す。図14A及び図14Bに示すように、六角セット及び四角セットのいずれの領域セットにおいても、互いに略等しい直径の略球状であって、規則的に配置された複数の組織体が形成された。
図15は、表面領域の直径が100μmであって中心間隔が400μmの六角セット又は四角セットの特定領域で形成された組織体の直径と、培養時間と、の関係を示すグラフである。図15において、横軸は培養日数(日)、縦軸は組織体の直径(μm)をそれぞれ示す。また、黒塗り丸及び白抜き丸のシンボルは、それぞれ、六角セットの特定領域で形成された組織体及び四角セットの特定領域で形成された組織体についての実測値の平均値を示す。この図15に示すように、四角セットで形成された組織体の直径と、六角セットで形成された組織体の直径と、はいずれも培養7日目まで、培養日数の経過に伴って増加したが、培養10日目には互いに略等しい一定値に収束し、その後は増加が抑制されて、少なくとも培養28日目まで当該一定値に維持できた。すなわち、表面領域の中心間隔が互いに等しい六角セット及び四角セットにおいては、各領域セットに含まれる隣接領域の数及び特定領域と各隣接領域との位置関係の違いに関わらず、当該中心間隔によって規定される互いに略等しい直径の球状組織体を形成できた。
[実施例2]
次に、本方法において、中心間隔を一定とした場合には、各表面領域の面積を変化させても、形成される組織体のサイズを略一定に制御できることを確認した第二の実施例を示す。この実施例2においては、中心間隔が600μmであって、表面領域の直径が100μm、200μm、又は300μmのいずれかである3種類の基材表面を作製した。そして、これら3種類の基材表面の各々の表面領域でHepG2細胞を培養し、特定領域で形成された組織体の直径を測定した。なお、各基材表面の作製及び当該各基材表面の表面領域でのHepG2細胞の培養は、上述の第一の実施例の場合と同様に行った。
図16は、3種類の基材表面の各々の表面領域において形成された組織体の一例についての位相差顕微鏡写真である。図16A及び図16Bには直径100μmの表面領域で培養5日目及び10日目に形成された略球形状の組織体S1,S2を示し、図16C及び図16Dには直径200μmの表面領域で培養5日目及び10日目に形成された略球形状の組織体S3,S4を示し、図16E及び図16Fには直径300μmの表面領域で培養5日目及び10日目に形成された略球形状の組織体S5,S6を示す。図16A,図16C及び図16Eに示すように、培養5日目においては、表面領域の直径の増加に伴って、形成される組織体S1,S3,S5の直径も増加した。これに対し、図16B,図16D及び図16Fに示すように、培養10日目においては、直径100μmの表面領域で形成された組織体S2、直径200μmの表面領域で形成された組織体S4、及び直径300μmの表面領域で形成された組織体S6、の直径は互いに略等しく制御された。
図17は、直径が100μm、200μm、又は300μmの特定領域で形成された組織体の直径と、培養時間と、の関係を示すグラフである。図17において、横軸は培養日数(日)、縦軸は組織体の直径(μm)をそれぞれ示す。また、丸形、菱形、及び四角形のシンボルは、それぞれ、直径が100μm、200μm、及び300μmの特定領域で形成された組織体についての実測値の平均値を示す。この図17に示すように、直径が100μm及び200μmの特定領域で形成された組織体の直径は、培養7日目までは培養時間の経過に伴って次第に増加し、培養10日目には250μm〜300μmの範囲で略一定値に到達したが、その後は増加が抑制されて、少なくとも培養28日目まで当該略一定値に維持された。これに対し、直径が300μmの特定領域で形成された組織体の直径は、28日間の培養期間を通じてほとんど変化せず、略300μmに維持された。このように、中心間隔を互いに等しい600μmとした場合には、当該表面領域の直径が少なくとも100μmから300μmの範囲では、当該表面領域の直径の違いに関わらず、特定領域に形成される組織体の直径は培養10日目以降、少なくとも培養28日目まで互いに略等しい一定値に制御された。
[実施例3]
実施例3においては、上述の実施例1と同様に、細胞非接着性表面の中に直径100μmの複数の表面領域が、200μm、300μm、400μm、又は500μmのいずれかの中心間隔で規則的に配置された六角セットを複数含む4種類の基材表面を作製し、各基材表面の各表面領域で、増殖性の細胞として、ヒト子宮頚部癌由来の細胞株であるHeLa細胞(RCB0007、理化学研究所セルバンク)を培養した。すなわち、上述の実施例1と同様、底部に1つの基材(24mm×24mm)を載置した直径35mmの培養皿内に、HeLa細胞を2.5×10個/mLの密度となるように分散した培養液を2.0mL加えることにより、培養を開始した。培養液としては、DMEM(インビトロジェン株式会社)13.5g/Lに、58.8mg/Lのペニシリン(明治製菓株式会社)、100mg/Lのストレプトマイシン(明治製菓株式会社)、2.2g/Lの炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社)、10%のウシ胎児血清(インビトロジェン株式会社)を加えた血清添加培養液を用いた。
図18は、培養7日目において、4種類の基材表面の各々の表面領域に形成された組織体の一部についての位相差顕微鏡写真である。図18A、図18B、図18C、及び図18Dには、それぞれ、中心間隔が200μm、300μm、400μm、及び500μmの基材表面において、直径100μmの特定領域で形成された組織体T20、T21、T22、及びT23を示す。図18A〜Dに示すように、各基材表面の各表面領域において、ドーム状又は略球形状の組織体が1つずつ形成された。そして、表面領域の中心間隔が互いに異なる4種類の基材表面のうち、中心間隔が小さい基材表面では、中心間隔が大きい基材表面に比べて、より小さい直径の組織体が形成された。
図19は、この実施例3で取得された、4種類の基材表面の各々の特定領域で形成された組織体の直径と中心間隔との相関関係を示す検量データの一例である。図19において、横軸は組織体が形成された特定領域と各隣接領域との中心間隔(μm)、縦軸は組織体の直径(μm)をそれぞれ示す。また、各シンボルは実測値の平均値を示す。図19に示すように、特定領域で形成される組織体の直径は、当該特定領域と各隣接領域との中心間隔に略比例していた。すなわち、中心間隔が少なくとも200μmから500μmまでの範囲においては、特定領域で形成される組織体の直径は、100±9μmから154±15μmの範囲で当該中心間隔の増加に伴って直線的に増加した。また、図19に示す検量データにおける、中心間隔X(μm)と、組織体の直径Y(μm)と、の相関関係を定式化すると、Y=0.178X+67.914(相関係数R=0.970)と表された。
[実施例4]
実施例4においては、上述の実施例3と同様に、表面領域の中心間隔が互いに異なる4種類の基材表面を作製し、各基材表面の各表面領域で、増殖性の細胞として、マウス胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell:ES細胞)(129SV系統、大日本住友製薬株式会社)を培養した。すなわち、上述の実施例1と同様、底部に1つの基材を載置した直径35mmの培養皿内に、ES細胞を2.5×10個/mLの密度となるように分散した培養液を2.0mL加えることにより、培養を開始した。培養液としては、ノックアウトDMEM培地(Knock Out−DMEM medium、インビトロジェン株式会社)500mLに、250U/mLの白血病抑制因子(Leukemia Inhibitory Factor:LIF)(ESGRO(登録商標)、インビトロジェン株式会社)、1%の非必須アミノ酸(Non−Essential Amino Acids:NEAA、大日本住友製薬株式会社)、2mMのL−グルタミン(インビトロジェン株式会社)、100U/mLのペニシリン(インビトロジェン株式会社)、100μg/mLのストレプトマイシン(インビトロジェン株式会社)、300μMのモノチオグリセロール(Monothioglycerol、株式会社シグマ)、25mMのHEPES(同仁化学研究所)、15%のウシ胎児血清(FBS、大日本住友製薬株式会社)を加えた血清添加培養液を用いた。
図20は、培養7日目において、4種類の基材表面の各々の表面領域に形成された組織体の一部についての位相差顕微鏡写真である。図20A、図20B、図20C、及び図20Dには、それぞれ、中心間隔が200μm、300μm、400μm、及び500μmの基材表面において、直径100μmの特定領域で形成された組織体T30、T31、T32、及びT33を示す。図20A〜Dに示すように、各基材表面の各表面領域において、ドーム状又は略球形状の組織体が1つずつ形成された。そして、表面領域の中心間隔が互いに異なる4種類の基材表面のうち、中心間隔が小さい基材表面では、中心間隔が大きい基材表面に比べて、より小さい直径の組織体が形成された。
図21は、この実施例4で取得された、4種類の基材表面の各々の特定領域で形成された組織体の直径と中心間隔との相関関係を示す検量データの一例である。図21において、横軸は組織体が形成された特定領域と各隣接領域との中心間隔(μm)、縦軸は組織体の直径(μm)をそれぞれ示す。また、各シンボルは実測値の平均値を示す。図21に示すように、特定領域で形成される組織体の直径は、当該特定領域と各隣接領域との中心間隔に略比例していた。すなわち、中心間隔が少なくとも200μmから500μmまでの範囲においては、特定領域で形成される組織体の直径は、135±10μmから228±15μmの範囲で当該中心間隔の増加に伴って直線的に増加した。また、図21に示す検量データにおける、中心間隔X(μm)と、組織体の直径Y(μm)と、の相関関係を定式化すると、Y=0.311X+75.544(相関係数R=0.992)と表された。
[実施例5]
この実施例5では、ポリメチルメタクリレート(PolyMethyl MethAcrylate:PMMA)製の平板(24mm×24mm、厚さ400μm)を基材として用い、図2に示すような基材表面を作製した。すなわち、キャビティ100の底面である表面領域3bからなる六角セットが複数形成された基材表面を作製した。
具体的に、このポリメチルメタクリレート平板の表面の一部に、10mm角の矩形範囲にわたって、マシニングセンタ(卓上型NC微細加工機、株式会社ピーエムティー製)を用いた穿孔加工処理を施すことにより、直径300μmの円形状からなる底面が330μm、440μm、又は550μmのいずれかの中心間隔で規則的に配置されるよう、深さ200μmのキャビティ100を複数形成した。
次に、このキャビティ100が形成された平板の全体(すなわち、図2に示す表面領域3b及び周辺表面4を含む基材表面2の全体)に、上述の実施例1と同様にして、厚さ9nmのプラチナ(Pt)の薄膜を形成した。そして、細胞非接着性物質として、上述の実施例1で用いた分子量30000のポリエチレングリコール(PEG)鎖とチオール基とを有する合成高分子を5mMの濃度で含むエタノール溶液中に、プラチナ薄膜が形成された平板の全体を浸漬した。そして、窒素雰囲気下において細胞非接着性物質のチオール基と、基材表面に形成したプラチナ薄膜表面(すなわち図2に示す表面領域3b及び周辺表面4を含む基材表面2)と、の間に特異的な化学結合を形成させることにより、当該プラチナ薄膜表面に当該細胞非接着性物質を固定した。その後、窒素雰囲気下において、この細胞非接着性物質を固定した基材表面を十分に乾燥させ、次いで、当該基材表面を、70%エタノール中に浸漬することにより、余剰の細胞非接着性物質を当該基材表面から除去するとともに、当該基材表面を滅菌した。
このようにして、基材表面のうち10mm×10mmの矩形範囲内で、細胞非接着性表面の中に形成されたキャビティの底面として、直径300μmの複数の表面領域が、330μm、440μm、又は550μmのいずれかの中心間隔で規則的に配置された六角セットを複数含む3種類の基材表面を作製し、上述の実施例1と同様に、各基材表面のうち各表面領域で、増殖性の細胞としてHepG2細胞を培養した。すなわち、基材表面のうち、キャビティが形成されている10mm×10mmの矩形範囲あたり、1.0×10個のHepG2細胞を播種することにより、培養を開始した。培養液は、上述の実施例1と同様のものを用いた。
図22は、培養10日目において、3種類の基材表面の各々の表面領域に形成された組織体の一部についての位相差顕微鏡写真である。図22A、図22B、及び図22Cには、それぞれ、中心間隔が330μm、440μm、及び550μmの基材表面において、直径300μmの特定領域で形成された組織体T40、T41、及びT42を示す。図22A〜Cに示すように、各基材表面の各キャビティ100内において、略球形状の組織体が浮遊状態で1つずつ形成された。各基材表面に形成された複数の組織体の直径は、互いに略等しかった。また、表面領域の直径が互いに等しく、中心間隔が互いに異なる3種類の基材表面では、当該中心間隔の減少に伴って、当該表面領域で形成される組織体の直径も減少した。すなわち、中心間隔を低減させることにより、組織体の直径の増加を抑制できた。このように、各中心間隔によって規定される均一な直径の複数の組織体が高密度且つ規則的に配置された3種類の組織体アレイが得られた。
図23は、この実施例5のデータ取得工程において取得された、3種類の基材表面の各々の特定領域で形成された組織体の直径と中心間隔との相関関係を示す検量データの一例である。図23において、横軸は組織体が形成された特定領域と各隣接領域との中心間隔(μm)、縦軸は組織体の直径(μm)をそれぞれ示す。また、各シンボルは実測値の平均値を示す。図23に示すように、特定領域で形成される組織体の直径は、当該特定領域と各隣接領域との中心間隔に略比例していた。すなわち、中心間隔が少なくとも330μmから550μmまでの範囲においては、特定領域で形成される組織体の直径は、183±6μmから236±8μmの範囲で当該中心間隔の増加に伴って直線的に増加した。このように、本方法によれば、中心間隔を変化させることによって、当該中心間隔の変化に比例して組織体の直径を増加させ又は減少させるよう、当該直径を制御することができた。
また、図23に示す検量データにおける、中心間隔X(μm)と、組織体の直径Y(μm)と、の相関関係を定式化すると、Y=0.243X+105.07(相関係数R=0.980)と表された。したがって、例えば、決定工程において、この関係式のY値に、所望の組織体の直径を代入することにより、当該所望の直径の組織体を形成させるための中心間隔をX値として決定できる。すなわち、この場合、検量データの直線関係を内挿又は外挿することにより、任意の組織体の直径に関連付けられた中心間隔を決定できる。そして、この検量データに基づいて、所望の直径Yに対応して決定された中心間隔Xで配置された直径300μmの特定領域でHepG2細胞を培養することにより、当該特定領域に当該直径Yの球状組織体を形成できる。
[実施例6]
実施例6においては、上述の実施例5と同様に、キャビティの底面として直径300μmの複数の表面領域が、330μm、440μm、又は550μmのいずれかの中心間隔で規則的に配置された六角セットを複数含む3種類の基材表面を作製し、各基材表面の各表面領域で、増殖性の細胞として、ラットランゲルハンス島腫瘍由来の細胞株であるRIN−5F細胞(ATCC CRL−2058、大日本住友製薬株式会社)を培養した。すなわち、上述の実施例5と同様に、基材表面のうち、キャビティが形成されている10mm×10mmの矩形範囲あたり、1.0×10個のRIN−5F細胞を播種することにより、培養を開始した。培養液としては、RIMI1640培地(インビトロジェン株式会社)500mLに、2mMのL−グルタミン(インビトロジェン株式会社)、100U/mLのペニシリン(インビトロジェン株式会社)、100μg/mLのストレプトマイシン(インビトロジェン株式会社)、10%のウシ胎児血清(インビトロジェン株式会社)を加えた血清添加培養液を用いた。
図24は、培養10日目において、3種類の基材表面の各々の表面領域に形成された組織体の一部についての位相差顕微鏡写真である。図24A、図24B、及び図24Cには、それぞれ、中心間隔が330μm、440μm、及び550μmの基材表面において、直径300μmの特定領域で形成された組織体T50、T51、及びT52を示す。図24A〜Cに示すように、各基材表面の各キャビティ100内において、略球形状の組織体が浮遊状態で1つずつ形成された。そして、上述の実施例5と同様に、表面領域の中心間隔が小さい基材表面では、中心間隔が大きい基材表面に比べて、より小さい直径の組織体が形成された。
図25は、この実施例6で取得された、3種類の基材表面の各々の特定領域で形成された組織体の直径と中心間隔との相関関係を示す検量データの一例である。図25において、横軸は組織体が形成された特定領域と各隣接領域との中心間隔(μm)、縦軸は組織体の直径(μm)をそれぞれ示す。また、各シンボルは実測値の平均値を示す。図25に示すように、特定領域で形成される組織体の直径は、当該特定領域と各隣接領域との中心間隔に略比例していた。すなわち、中心間隔が少なくとも330μmから550μmまでの範囲においては、特定領域で形成される組織体の直径は、152±9μmから192±7μmの範囲で当該中心間隔の増加に伴って直線的に増加した。また、図25に示す検量データにおける、中心間隔X(μm)と、組織体の直径Y(μm)と、の相関関係を定式化すると、Y=0.183X+92.966(相関係数R=0.981)と表された。
[実施例7]
実施例7においては、上述の実施例5と同様に、キャビティの底面として直径300μmの複数の表面領域が、330μm、440μm、又は550μmのいずれかの中心間隔で規則的に配置された六角セットを複数含む3種類の基材表面を作製し、各基材表面の各表面領域で、増殖性の細胞として、上述の実施例4で用いたものと同様のマウスES細胞(129SV系統、大日本住友製薬株式会社)を培養した。すなわち、上述の実施例5と同様に、基材表面のうち、キャビティが形成されている10mm×10mmの矩形範囲あたり、1.0×10個のマウスES細胞を播種することにより、培養を開始した。培養液は、上述の実施例4と同様のものを用いた。
図26は、培養10日目において、3種類の基材表面の各々の表面領域に形成された組織体の一部についての位相差顕微鏡写真である。図26A、図26B、及び図26Cには、それぞれ、中心間隔が330μm、440μm、及び550μmの基材表面において、直径300μmの特定領域で形成された組織体T60、T61、及びT62を示す。図26A〜Cに示すように、各基材表面の各キャビティ100内において、略球形状の組織体が浮遊状態で1つずつ形成された。そして、上述の実施例5と同様に、表面領域の中心間隔が小さい基材表面では、中心間隔が大きい基材表面に比べて、より小さい直径の組織体が形成された。
図27は、この実施例7で取得された、3種類の基材表面の各々の特定領域で形成された組織体の直径と中心間隔との相関関係を示す検量データの一例である。図27において、横軸は組織体が形成された特定領域と各隣接領域との中心間隔(μm)、縦軸は組織体の直径(μm)をそれぞれ示す。また、各シンボルは実測値の平均値を示す。図27に示すように、特定領域で形成される組織体の直径は、当該特定領域と各隣接領域との中心間隔に略比例していた。すなわち、中心間隔が少なくとも330μmから550μmまでの範囲においては、特定領域で形成される組織体の直径は、182±12μmから215±11μmの範囲で当該中心間隔の増加に伴って直線的に増加した。また、図25に示す検量データにおける、中心間隔X(μm)と、組織体の直径Y(μm)と、の相関関係を定式化すると、Y=0.151X+133.7(相関係数R=0.986)と表された。

Claims (6)

  1. 次の(a)〜(d):
    (a)第一の表面領域と、各々の重心点から前記第一の表面領域の重心点までの距離が互いに等しくなるよう前記第一の表面領域に隣接して配置された複数の第二の表面領域と、が形成されている;
    (b)前記第一の表面領域及び前記第二の表面領域は300〜1×10 μm の範囲内の同一の所定面積をもつ;
    (c)前記第一の表面領域及び前記第二の表面領域は細胞接着性である;
    (d)前記第一の表面領域を囲む部分及び前記第二の表面領域を囲む部分は細胞非接着性である;
    を備えた基材を用いて増殖性の細胞を含む三次元組織体を形成する組織体形成方法であって、
    前記第一の表面領域と前記第二の表面領域との重心点間距離が互いに異なり表面積が同一の複数の前記基材を用い前記基材あたり同数の前記細胞を播種し培養して前記第一の表面領域及び前記第二の表面領域で前記細胞を含む三次元組織体を形成させる予備培養により得られた、前記第一の表面領域と前記第二の表面領域との重心点間距離と、前記第一の表面領域で形成された前記三次元組織体の収束したサイズと、の直線関係を示す検量データに基づいて、所望の収束したサイズの三次元組織体を形成させるための特定距離を決定する距離決定工程と、
    前記距離が前記特定距離である前記基材を少なくとも一つ準備する準備工程と、
    準備された前記基材の前記第一の表面領域及び前記第二の表面領域で前記細胞を培養して前記細胞を含む三次元組織体を形成させるとともに、前記第一の表面領域に前記特定距離に応じた収束したサイズの三次元組織体を形成させる培養工程と、
    を含
    ことを特徴とする組織体形成方法。
  2. 次の(a)〜(d):
    (a)第一の表面領域と、各々の重心点から前記第一の表面領域の重心点までの距離が互いに等しくなるよう前記第一の表面領域に隣接して配置された複数の第二の表面領域と、が形成されている;
    (b)前記第一の表面領域及び前記第二の表面領域は300〜1×10 μm の範囲内の同一の所定面積をもつ;
    (c)前記第一の表面領域及び前記第二の表面領域は有底孔の底面であって細胞非接着性である;
    (d)前記第一の表面領域を囲む部分及び前記第二の表面領域を囲む部分は細胞非接着性である;
    を備えた基材を用いて増殖性の細胞を含む三次元組織体を形成する組織体形成方法であって、
    前記第一の表面領域と前記第二の表面領域との重心点間距離が互いに異なり表面積が同一の複数の前記基材を用い前記基材あたり同数の前記細胞を播種し培養して前記第一の表面領域及び前記第二の表面領域で前記細胞を含む三次元組織体を形成させる予備培養により得られた、前記第一の表面領域と前記第二の表面領域との重心点間距離と、前記第一の表面領域で形成された前記三次元組織体の収束したサイズと、の直線関係を示す検量データに基づいて、所望の収束したサイズの三次元組織体を形成させるための特定距離を決定する距離決定工程と、
    前記距離が前記特定距離である前記基材を少なくとも一つ準備する準備工程と、
    準備された前記基材の前記第一の表面領域及び前記第二の表面領域で前記細胞を培養して前記細胞を含む三次元組織体を形成させるとともに、前記第一の表面領域に前記特定距離に応じた収束したサイズの三次元組織体を形成させる培養工程と、
    を含
    ことを特徴とする組織体形成方法。
  3. 前記予備培養を、前記距離が互いに異なり表面積が同一の複数の前記基材を用い前記基材あたり同数の前記細胞を播種して実施して、前記検量データを生成する予備工程をさらに含み、
    前記距離決定工程では、前記予備工程で生成された前記検量データに基づいて、前記特定距離を決定する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組織体形成方法。
  4. 前記予備工程において、前記距離が前記複数の基材間で規則的に変化する前記複数の基材を用いて前記予備培養を実施し、前記複数の基材の前記第一の表面領域に、前記複数の基材間で前記距離に応じて収束したサイズが規則的に変化した三次元組織体を形成させる
    ことを特徴とする請求項3に記載の組織体形成方法。
  5. 前記培養工程において、前記第一の表面領域に、前記特定距離に応じた収束した径の略球形状の三次元組織体を形成させる
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の組織体形成方法。
  6. 前記第一の表面領域と前記複数の第二の表面領域とは、前記第一の表面領域の重心点が、前記複数の第二の表面領域の各々の重心点を結んで形成される多角形の中に位置するよう配置され
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の組織体形成方法。
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