JP4332372B2 - 超音波診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波診断装置、特に、表示する超音波画像の視認性を向上すると共に、操作性を向上した新規の超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、被検体である生体に超音波を照射し、反射してくるエコーデータに基づいて超音波画像を形成する超音波診断装置が普及している。一般的な超音波診断装置は、大別して2つの筐体で構成されている。1つは、超音波の送受信制御部、取得したエコーデータの処理を行い所望の超音波画像を形成する画像形成部、形成した超音波画像をユーザに提示する表示部等を含む装置本体部であり、他方は、実際に生体組織に対し超音波を照射し、生体から反射してきた反射エコーを受信する超音波振動子を含むプローブである。プローブは端部から延出された信号線や電力線等を束ねたケーブルを介して装置本体部に接続されている。その結果、特性の異なるプローブを適宜選択し装置本体部に接続することが可能になり、生体の診断部位や診断用途に応じた周波数特性や形状を有するプローブを任意に選択し接続することが可能になり、低周波から高周波まで広範囲の診断を行うことができる。つまり、超音波診断装置としての汎用性の向上を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−225881号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現実に超音波診断装置を利用する場合、操作者は、被検体(被診断者)が横たわるベッドの横におかれた装置本体部の正面または斜め位置に着座し、片手で装置本体部上の操作パネルを操作し、他方の手で支持したプローブを被検体の所望の位置に当接するように動かしていた。この場合、操作者は、装置本体部に配置された表示部を目視しながら、プローブを移動させ、かつ操作パネルの操作を行う必要があった。この時に操作者は、両腕を左右に大きく広げ、かつ顔は表示部の方向を向くという不自然な姿勢を取っている場合が多かった。このような不自然な姿勢を取ることにより、装置本体部の表示部の視認性が低下していた。また、表示部を目視しつつ両腕を大きく広げた状態での操作は両手共に手探り状態での操作になり操作性の低下の原因にもなっていた。また、手探りを回避するためには、表示部と手元の間で頻繁に視線を移動させる必要があった。さらに、不自然な姿勢のままで、視線を表示部と操作パネルとプローブとの間で頻繁に移動させながらの操作が長時間に及ぶ場合、疲労感を加速させてしまうという問題があった。そのため、超音波診断装置の操作に当たり、疲労感の低減を行うと共に、視線の頻繁な移動や手探り操作の点に関し、改善したいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、不自然な姿勢を取ることなく操作可能であり、また、表示する超音波画像の視認性を向上すると共に、操作性の向上が可能な新規の超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明に係る超音波診断装置は、生体が含まれる3次元空間に対し超音波の送受信を行いエコーデータを取得し超音波画像を得る超音波診断装置であって、超音波の送受信を行う超音波振動子と、記超音波振動子が取得したエコーデータに基づいて形成した超音波画像を表示する表示部と、送受信面であるケース下面と、前記ケース下面とは反対側の表面であるケース上面と、を有し、少なくとも前記超音波振動子を収納し、前記ケース下面が前記生体に直接接触する可搬型のケースと、を含み、前記ケース内におけるケース下面側に前記超音波振動子が収容され、前記ケース上面に前記表示部が配置され、前記超音波振動子により深さ方向に形成される超音波ビームを第1スキャン方向及び第2スキャン方向にスキャンすることにより前記3次元空間が構成され、前記超音波画像は、前記超音波振動子から深さ方向に生体を見た時の透視画像であり、当該透視画像により生体が実寸法で表示される、ことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、実際に超音波の送受信を行う超音波振動子を収納したケース上表面(ケース上面)に表示部を配置しているので、超音波振動子の移動操作位置と表示部とを同時に目視することができる。その結果、視線移動が軽減され疲労感の抑制や操作性の向上を行うことができる。
【0008】
記構成において、前記表示部は、超音波の送受信方向(すなわち超音波振動子)から深さ方向に生体を見た時の透視画像を実寸法で表示するものである。
【0009】
この構成によれば、実生体と超音波画像とが1:1で対応するため、形成された超音波画像の把握を容易に行うと共に、所望の超音波画像を得るためにケースの移動量を容易に把握することが可能になり使い勝手が向上する。
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記ケースは、超音波振動子と表示部に加え、少なくとも超音波振動子の制御部、取得したエコーデータの処理部、電源供給部、ユーザ操作部を含んだ、オールインワンケースであることを特徴とする。
【0011】
実際の医療の現場で超音波診断装置を使用する場合、医療部門毎にその診断部位はある程度限定され、使用する周波数帯やケースの形状も限定される。そこで、使用する超音波振動子を限定しても実用上差し支えない。その結果、機能の簡略化や回路の簡略化が可能となり、各制御部及び操作部、電源供給部等をオールインワンケースに収納し、超音波の送受信や超音波画像の形成、表示等を全て行うようにすることが可能になる。その結果、操作者はオールインワンケースを支持し、被検体と対面した自然姿勢で、表示部を目視しながら超音波診断装置の操作及び移動を行うことが可能になり、必要な超音波画像の取得を疲労を伴うことなく容易に行うことができる。
【0012】
なお、使用する超音波振動子を限定することにより、機能削減や取得したエコーデータの処理回路の簡略化が可能で、超音波診断装置全体の小型化が可能であり、オールインワンケースを可搬型とすることも容易にできる。
【0013】
望ましくは、上記構成において、前記超音波振動子が取得したエコーデータと所定閾値との比較に基づき画像形成に採用するエコーデータの反射深さ情報を検出する深さ検出部と、前記深さ検出部で検出した深さに基づき画像形成時の画像の輝度値を算出する輝度算出部と、前記輝度算出部で算出した輝度値を超音波の送信位置にマッピングして超音波画像を形成する画像形成部と、を含む。
【0014】
この構成によれば、取得したエコーデータに基づき、超音波の送受方向から生体を見た時の実寸大の透視画像を容易に形成することができる。
【0015】
望ましくは、上記構成において、前記超音波振動子が取得したエコー強度を輝度情報として表示したBモード断層画像上の所望の観察対象位置に少なくとも1つの表示基準点を設定する基準点設定部と、順次取得されるエコーデータ毎に、前記表示基準点との3次元的な連結性(つまり連続性)の有無を判定し連続領域を抽出する連結領域抽出部と、連結領域として抽出されたエコーデータの反射深さ毎に、画像形成時の画像の輝度値を算出する輝度算出部と、前記輝度算出部で算出した輝度値を超音波の送信位置にマッピングして超音波画像を形成する画像形成部と、を含む。
【0016】
この構成によれば、取得したエコーデータに基づき、超音波の送受方向から生体を見た時の実寸大の透視画像を容易に形成することができると共に、表示基準点を付した生体部分のみを選択的に表示することが可能になり、視認性をさらに向上することができる。
【0017】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記基準点設定部は、複数の表示基準点を設定可能であり、複数設定された表示基準点に基づき抽出された連続領域は、異なる表示色で表示されることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、表示された超音波画像の識別を容易に行うことができる。なお、例えば、別々に走行する血管等を異なる表示色で表示していた場合に、表示位置の移動(診断位置の移動)に伴って、血管が合流した場合、いずれか一方の表示色に統一するように変化させることもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)を図面に基づき説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の超音波診断装置10の外観及び使用状態を説明する説明図である。本実施形態において、超音波診断装置10は、超音波の送受を行う超音波振動子を含むケース12に、超音波送受信部(振動子の制御部)の他、取得したエコーデータを処理して超音波画像を形成する画像処理部、形成した超音波画像を表示する表示部14、各構成部品に電力を供給する充電式電源ユニット、各種スイッチ等のユーザ操作部等全てを収納したオールインワンタイプである。また、超音波診断装置10は、ケース(オールインワンケース)12の大きさが、例えば、幅約7〜10cm、長さ約18〜25cm、厚み6〜7cm程度であり、容易に持ち運び可能な可搬型タイプになっている。
【0021】
本実施形態の特徴的事項は、ケース12の下面側に超音波振動子を配置し、上表面にLCD等で構成される表示部14を図1に示す如く上方向きで配置し、腕16等の生体の所望位置に超音波の送受信面(ケース12の下面)を当接させるために向けた視線を変更すること無く表示部14に表示される超音波画像を目視できるようにしているところである。
【0022】
図1に示すように、表示部14の両サイドには、超音波診断装置10を持ち運んだり、実際の超音波診断を行う場合に腕16に対し超音波の送受信面(ケース12の下面)を当接する時に支持する支持アーム18が設けられている。なお、ケース12の下面と生体は、その間に空気層を介在させないように密着させることが望ましい。そのため、必要に応じて、空気層を排除するための水袋やゼリー状の密着部材を介在させることが好ましい。
【0023】
ケース12の任意の位置、例えば、側面には、超音波診断装置10の電源スイッチ20が設けられている。また、前記支持アーム18の近傍には、エコーデータの取得、すなわちスキャン開始を指示するスキャンスイッチ22が配置されている。支持アーム18の近傍にスキャンスイッチ22を配置することにより、操作者が超音波診断装置10を支持した状態でも、親指等を用いて容易にスキャンスイッチ22を操作することができる。また、ケース12の表面には、後述するが、超音波画像の処理中に用いる閾値を変更する閾値調整ダイヤルを設けてもよい。なお、スキャンスイッチ22を回転押下型のスイッチで構成してスキャンスイッチ22に閾値調整機能を持たせてもよい。
【0024】
本実施形態においては、実際の医療の現場で、超音波診断を行う部位は、各医療部門毎にそれぞれ特定されることが多く、使用する超音波振動子の特性も限れることに着目し、オールインワンタイプを採用している。従って、利用する機能も必要最小限のものを準備すれば十分である。なお、表示画像の選択操作や、被検者のプロフィールデータの入力操作等各種不随操作を行うために、例えば、表示部14をタッチパネル機能を有するLCDで構成して適宜必要操作ができるように構成することが望ましい。
【0025】
図2には、超音波診断装置10の内部構造を説明する概略図が示されている。図2(a)は、超音波診断装置10の側面図が示されている。硬質樹脂等で形成されたケース12の内部には、超音波振動子(例えば、2Dアレイ)24を制御するために送信回路や受信回路を含む超音波送受信部(基板)26、超音波送受信部26を介して得られたエコーデータの処理を行う整相加算回路や画像形成回路等を含む画像処理部(基板)28、超音波診断装置10全体の制御を行うCPU(基板)30、各構成部に電力を供給する充電式電源ユニット32等が含まれている。なお、超音波送受信部(基板)26、画像処理部(基板)28、CPU(基板)30は、コネクタ基板34によって接続されている。また、画像処理部(基板)28、CPU(基板)30は、電源供給基板36を介して電力供給を受けている。
【0026】
本実施形態の場合、超音波振動子24は振動素子をマトリックス状に配列した2Dアレイを用い、図2(b)に矢印Aで示す方向にプレーンスキャン(電子スキャン)を行うと共に、図2(a)に矢印Bで示す方向に順次移動しながらスキャンを行い3次元空間のエコーデータを取得している。矢印B方向に順次移動しながらスキャン(メカニカルスキャン)する場合、各素子毎にスイッチを設け順次超音波の送受信を行うこともできるが、構成を簡略化するため、本実施形態においては、モータ38により回転駆動するシャフト40によって機械的に移動する移動電極42を用いて選択的に振動素子の駆動(信号の送受)を行っている。
【0027】
図2(b)に示すように、モータ38は減速ギア44により減速され駆動軸40aを回転させ、超音波振動子24の両側に配置されたシャフト(例えば、ボールネジ)40を等速で回転させる。従って、シャフト40に移動電極42の支持台42aを螺合させることにより、移動電極42がシャフト40の軸方向に移動することになる。図2(b)には、超音波振動子(2Dアレイ)24の各振動素子に対応した個別電極(固定電極)46が簡略的に図示されている。そして、矢印A方向に延びる支持台42aには矢印A方向に配列された個別電極46に対応する移動接点が複数配置されている。移動接点の詳細を図3に示す。前述したように、2本のシャフト40に支持された支持台42aは、各個別電極46(個別の振動素子)に駆動信号を供給すると共に、振動素子が受信したエコー信号を取得できるように上下一対の移動接点48a,48bを矢印A方向(図2(b)参照)に複数対有している。移動接点48a,48bは電気的に接続されており、移動接点48aは超音波送受信部26側の電極基板50に配置された電極帯50aに接触し、移動接点48bは、超音波振動子24側の電極基板52に配置された個別電極46に接触している。なお、電極帯50aは、矢印B方向に延び、矢印A方向に複数配列されている。また、移動接点48a,48bは、例えばバネ性を有する金属で形成され、支持台42aがモータ38の駆動によって移動する際、電極帯50aと、対応する個別電極46との接触を良好に行えるようになっている。
【0028】
従って、超音波送受信部26の送信回路からあるタイミングで、各電極帯50aに駆動信号が供給されると、矢印A方向に配列された個別電極46のそれぞれに駆動信号が伝達され、対応する振動素子が超音波を生体に向けて送信する。また、生体から反射してきた超音波は各振動素子で受信され、移動接点48a,48bを介し各電極帯50aに戻り、超音波送受信部26の受信回路に個別電極46毎のエコーデータとして供給される。そして、支持台42aがモータ38によって矢印B方向に移動することによって順次3次元空間のエコーデータを取得することが可能となる。
【0029】
図4には、図2に示す超音波診断装置10の構成ブロック図が示されている。前述したように超音波診断装置10は、表示部14、超音波振動子24、超音波送受信部26、画像処理部28、CPU30、モータ38や減速ギア44等を含む振動子移動部54等を含んでいる。超音波送受信部26は、送信回路26a、受信回路26bを含み、CPU30の指示に従い超音波の送受信を行う。また、CPU30には、電源スイッチ20及びスキャンスイッチ(閾値調整兼用)22が接続されている。さらに、表示部14が有するタッチパネル14aからの操作信号も入力できるようになっている。
【0030】
このように構成される超音波診断装置10の超音波画像形成動作について以下に説明する。
【0031】
超音波診断装置10は、電源スイッチ20がオンされ、スキャンスイッチ22がオンされると、超音波の送受信を行い、画像処理部28に超音波送受信部26を介して順次、図2(b)の矢印A方向1枚分のエコーデータが供給される。図5に示すように、超音波送受信部26から供給されるエコーデータは、まず、画像処理部28内の深さ検出部56に供給される。この深さ検出部56は、スキャンスイッチ22を回転操作することにより超音波画像を形成する時に用いる閾値をCPU30を介して取得し、この閾値に基づいて順次エコーデータの二値化処理を実行し、超音波ビーム方向で閾値に基づいて判別される反射した超音波の深さ情報(超音波受信ビーム1本分毎)を順次輝度算出部58に提供する。この閾値は、図6(a),(b)に示すように、一定の閾値を設定してもよいし、形成したい超音波画像に応じて一定値、K倍斜線、K2倍曲線等を選択的に設定できるようにしてもよい。例えば、血管に関する超音波画像を取得する場合には、図6(a)に示すようにエコー強度値が閾値より低いエコーデータを深さ情報として輝度算出部58に送る。また、骨等のようにエコー強度値が高いものに関しては、図6(b)に示すように、閾値以上になったエコーデータを深さ情報として輝度算出部58に供給する。なお、この閾値に基づき、ある範囲のエコーデータに対して積算処理等を施すことも可能である。
【0032】
そして、画像形成の対象が血管等エコー強度が低いエコーデータの場合には閾値以下のデータが得られた時点、骨等のようにエコー強度が高いエコーデータの場合には閾値以上のデータが得られた時点で、画像形成処理に移行する。すなわち、輝度算出部58は深さ検出部56から送られてくる深さ情報に基づいて、2次元画像の1画素の輝度情報を算出する。この場合、画像処理部28は、予め超音波の深さ情報とその深さを示す輝度値との対応付けを行った深さ−輝度テーブルを有し、順次輝度値の確定を行っていく。本実施形態の場合、超音波の反射深さが深くなるにつれて輝度値が低くなるように、線形の深さ−輝度テーブルを準備している。このような深さ−輝度テーブルを用いることにより、奥行きを容易に認識することのできる超音波画像を形成することができる。そして、輝度算出部58で算出された輝度値は順次画像形成部60に送られ、超音波受信ビームの位置にマッピングされる。つまり、超音波受信ビーム1本が超音波画像の1画素となる。このようなマッピングを図2(b)の矢印A方向に順次行うと共に、振動子移動部54の動作により矢印B方向に順次行うことにより、画像形成対象領域の3次元画像を形成することができる。形成される超音波画像を模式的に図7(a),(b)に示す。図7(a)は、血管を主体に表示した超音波画像であり、図7(b)は、骨を主体に表示した超音波画像である。
【0033】
この場合、表示される超音波画像に対し、縮小や拡大を行うこともできるが、縮小や拡大を行わず、超音波の送受方向から生体を見た時の透視画像として実寸法で表示することにより、現実の血管の走行状態や骨の状態、例えば骨折後の再生状況等を容易に認識することが可能となる。また、縮小拡大処理を省略することは回路構成の簡略化にも寄与し装置の小型化を促進することが可能となる。
【0034】
このように、本実施形態の超音波診断装置10によれば、実際に超音波の送受信を行う超音波振動子24を収納したケース12の上表面に上方を向いた表示部14を配置することにより、超音波振動子24の移動操作位置と表示部14とを同時に目視することができるので、超音波診断画像を用いた診断時において、視線移動が軽減され疲労感の抑制や操作性の向上を行うことができる。また、容易にオールインワン型とすることができるので、操作時に従来のように両手を広げた状態で体をひねる等不自然な姿勢で操作する必要がなくなる。
【0035】
ところで、上述したように取得したエコー強度を閾値と比較することにより得られる二値化情報によって順次深さ情報を取得し、輝度値を決めていく場合、図7(a),(b)に示すように、実際には、観察対象以外の不要な部分も画像上に表示されてしまう。そこで、所望の生体のみ、すなわち観察したい組織のみを表示部14上に表示する手法を図8〜図11を用いて示す。エコーデータに基づいて深さ情報を取得し輝度値を算出して画像を形成する手順は、前述した方法と同じであるが、図8〜図11の手法においては、表示したい注目組織の連結性を検出することにより、指定した組織に連結した部分のみを選択的に表示するようにしている。そのため、画像処理部28は、図8(a)に示すように、深さ検出部56の代わりに表示したい注目組織を指定する基準点設定部62、及び基準点設定部62によって指定された表示基準点(基準座標)に基づいて、組織の連結性を抽出する連結領域抽出部64を有している。基準点設定部62は、図9に示すように、血管等の3次元画像を表示するのに先立ち表示部14上に表示されたBモード断層画像の任意の組織を「表示基準点1」や「表示基準点2」のように任意に指定することができる。図9の場合、2点を指定している例を示している。図11には、連結領域抽出部64における連結性検出のためのフローチャートが示されている。連結領域の抽出は例えばテクスチャー解析やモルフォロジーフィルタ等を用いた手法が知られているが、本実施形態では、二値化処理を用いて抽出する方法を示す。
【0036】
Bモード断層画像は、例えば、表示部14の中央部分(図2(a)の超音波振動子24の矢印B方向の中央)で超音波振動子24のメカニカルスキャンに先立って行われる(S100)。また、表示基準点の設定は、例えば、表示部14のタッチパネル14aを用いて所望の画素位置を指定することにより行う(S101)。
【0037】
図8(b)には、連結領域抽出部64の構成例が示されている。連結領域抽出部64は、CPU30から入力される閾値(スキャンスイッチ22を回線操作する等により設定した閾値)に基づいて、超音波送受信部26から得られるエコーデータの二値化処理を行う二値化処理部66、二値化処理の結果に基づいて処理対象の画素の周囲との連結性を判定する近傍探索部68、連結結果(二値化データ)を記憶しておく3次元メモリ70及びメモリアクセス部72等を含んでいる。
【0038】
3次元メモリ70は、基準点設定部62により表示基準点が指定されると、一度全ての二値化データが「0」でクリアされ(S102)、表示基準点として設定された画素に対応する位置の3次元メモリ70の座標に「1」が設定される(S103)。
【0039】
この状態で現実の超音波画像の形成のためのスキャンを開始する(S104)。この時のスキャン開始位置は、任意の位置でよいが、例えば先にBモード断層画像を表示するためにスキャンを行った中央位置から行うことができる。
【0040】
超音波送受信部26から順次エコーデータが二値化処理部66に入力されると、CPU30から提供される閾値(図6(a),(b)参照)に基づき順次注目ボクセルの二値化が行われる(S105)。二値化の結果「0」である場合、例えば血管の場合、閾値よりもエコー強度が大きい場合、注目ボクセル座標に対応する3次元メモリ70に「0」を設定する(S106)。一方、二値化の結果「1」である場合、例えば血管の場合、閾値よりもエコー強度が小さき場合、図10に示すような3画素×3画素×3画素のマスク74を用いて、注目ボクセルが周囲と連結しているか否かを調べる。つまり、注目ボクセルの座標をマスク74の中心部74aとして、3次元メモリ上でその近傍ボクセルに「1」が存在するか否かを判別する(S107)。
【0041】
そして、注目ボクセルの隣接位置に「1」が存在する場合のみ、注目ボクセル座標に対応する3次元メモリ70の座標に「1」を設定する(S108)。また、ステップ(S105)の二値化の結果は「1」であるが、近傍位置に「1」が存在しない場合、つまり、表示基準点から離れた位置に存在する血管に関する二値化データの場合、ステップ(S106)に移行し、注目ボクセル座標に対応する3次元メモリ70に「0」を設定する。前述したように、始めは表示基準点のみが「1」であるため、表示基準点で指定した画素に隣接する画素、つまり表示基準点に連結している二値化結果「1」のみの画素が3次元メモリ70上で二値化結果「1」と決定され、それ以外の非連結画素は、二値化結果「0」と修正判定される。3次元メモリ70は、二値化結果「1」と判定された座標データを順次輝度算出部58に供給し、図5に示した場合と同様に2次元画像の1画素の輝度情報を算出し、画像形成部60において順次超音波画像を形成する。
【0042】
このような連続性判定を電子スキャン方向(図2(b)の矢印A方向)及びメカニカルスキャン方向(図2(b)の矢印B方向)に行い、スキャンが全て終了したか否かの判断をCPU30において行う(S109)。もし、電子スキャン方向の判定が終わっていない場合、注目ボクセルを電子スキャン方向に1つ移動し(S110)、ステップ(S105)に戻り、上述した処理を繰り返す。同様に、メカニカルスキャン方向の判定が終わっていない場合、判定対象を次のプレーンに移すと共に、注目ボクセルを移動し(S110)、ステップ(S105)に戻り、上述した処理を繰り返す。
【0043】
このような表示基準点との連結性の判定を少なくとも3次元空間内の各エコーデータに対し1回行うことにより、図12に示すような「表示基準点1に連結した画像」、「表示基準点2に連結した画像」のみを表示することができる。すなわち、観察対象以外の組織を表示から排除した画像表示を行うことができる。なお、図11のフローチャートに基づく処理では、リアルタイムでの画像形成が可能であるが、初期の段階では、表示基準点を頂点として、ピラミット状に順次表示画像(血管部分)が成長するように表示が行われ、ある程度まで処理が進むと血管幅で成長が進むようになる。また、超音波振動子24の往復のメカニカルスキャンを繰り返し行う場合、図12のように、超音波画像が形成された後、超音波診断装置10を生体に対して移動させると、移動後の位置における超音波画像に更新された状態が表示される。従って、例えば、超音波診断装置10を順次移動させることにより血管等の走行状態の確認を広範囲に行うことが可能となる。
【0044】
また、表示基準点を設定する場合、各表示基準点毎に表示色の設定ができるように構成することにより、表示基準点を複数設定する場合でも、観察対象の組織の識別を容易に行うことが可能となる。なお、図12に示すように、表示基準点1による画像と、表示基準点2により画像が交差する場合には、各座標位置に基づいて、表示色に優劣を付けることで、深さ方向の位置関係も容易に認識することが可能となる。また、超音波診断装置10を血管走行方向等に沿って移動させた結果、それまで、別々に走行し、別々の色で表示されていた血管が、合流し1本になった場合には、一色の表示色に統一することが好適である。
【0045】
ところで、上述した例においては、超音波の深さ情報(座標位置)とその深さを示す輝度値との対応付けを行った深さ−輝度テーブルは予め準備したものを用いたが、スキャンにより取得したエコーデータに基づいて、順次生成することもできる。
【0046】
例えば、図13(a)に示すように、電子スキャン(図2(b)の矢印A方向のスキャン)を行う毎に表示対象組織の深さの最小値、最大値を求めると共に、メカニカルスキャン(図2(b)の矢印B方向のスキャン)を行う毎に最小値、最大値の更新があるか否かの判定を行い、更新がある場合には更新を行うようにする。そして、得られた最小値及び最大値に基づいて、図13(b)に示すような深さ−輝度テーブルを生成する。本実施形態の場合、前述したように超音波の反射深さが深くなるにつれて輝度値が低くなるようにテーブルを生成する。この時、最大値で輝度値「0」としてしまうと、抽出組織の最深部が見にくくなるため、例えば、最大値に係数K(例えば、約1.5等マニュアルにて設定変更可能)を乗算した値が輝度値「0」、最小値が輝度値「100」になるようにテーブルを作成することにより、観察したい組織の深さに応じて最適な輝度表現を行うことが可能になり、表示する超音波画像の視認性の向上を行うことができる。
【0047】
図14〜図16には、本実施形態の超音波診断装置の変形構成例が示されている。図2に示す超音波診断装置10はオールインワンタイプとして示したが、図14の超音波診断装置76は、診断操作部(少なくとも超音波振動子と表示部を含む部分)78と電源ユニット80を別構成としている。電源ユニット80をケース78aから分離し、ケーブル80aで接続とすることにより超音波診断装置76の診断操作部78の小型化及び軽量化を行うことが可能になり、操作性の向上に寄与することができる。なお、超音波診断装置76の構成及び機能は、電源ユニット80をケース78aの外部に出した以外、図2に示す超音波診断装置10と同様であるためその説明は省略する。
【0048】
図15に示す超音波診断装置82は、さらに、小型化及び軽量化を目的としたものであり、診断操作部84のケース84aから電源ユニット80に加え、CPU30や画像処理部28、超音波送受信部26等を分離し、制御本体部86として別構成とした例である。この場合、超音波診断装置76よりさらに診断操作部84の小型化及び軽量化を行うことが可能となる。また、必要に応じて、振動子特性の異なる診断操作部84を複数準備すれば、超音波診断装置76に対する選択的なつなぎ換えも可能となる。なお、この場合、診断操作部84はケーブル86aにより制御本体部86と接続されるため、制御本体部86内部にはその接続のための接続基板88等が追加される。
【0049】
図2、図14、図15等で示した超音波診断装置10,76,82等は、超音波振動子24として、2Dアレイを用いた例を示したが、図16(a),(b)においては、超音波振動子として1Dアレイを用いた例を示している。一例として図2に対応する構成において、1Dアレイを適用した構造を示す。超音波診断装置10の場合、2Dアレイの超音波振動子24に対しシャフト40に係合した移動電極42を用いて順次駆動信号の供給及び受信信号の取得を行ったが、図16(a)の超音波診断装置90の場合、シャフト40に1Dアレイの超音波振動子92を支持台92aを介して直接接続している。
【0050】
1Dアレイの超音波振動子92がケース90a内を移動するため、超音波振動子92の送受信面とケース90aの内面との間には空間が必要になるが、空気層が存在すると超音波の減衰が極端に大きくなる。そこで、超音波振動子92をオイルで満たされたオイル袋94内部に移動自在に配置し、超音波振動子92の送受信面とケース90aの内面との間に空気層が存在しないようにする。超音波振動子92を支持する支持台92aの移動機構に関しては、図2で説明した移動電極42の移動機構と同じである。なお、オイル袋94の収納スペースの確保及び、ケース90a内にオイルと各基板等の電子部品との完全分離を行うため、及び超音波振動子92の移動に伴って移送する超音波振動子92と超音波送受信部26との接続を行うフレキシブルケーブル92bの移動スペースを確保するため、仕切板96を設けることが好ましい。この場合、ケース90aの大きさは超音波診断装置10のケース12に比べ大きくなるが、1Dアレイの超音波振動子92を用いることにより、超音波診断装置10に比べ大幅なコストダウンを行うことが可能となる。もちろん2Dアレイに代えて1Dアレイを用いる点以外は、基本的に超音波診断装置90と超音波診断装置10構成は同じであり、各構成の詳細説明は省略する。
【0051】
また、図14,15の構成においても1Dアレイに適用は可能であり、各構成における効果をそれぞれ得ることができる。
【0052】
なお、本実施形態において、各図で説明した構成や処理手順は一例であり、実際に超音波の送受信を行う超音波振動子を収納したケース上表面に表示部を配置して、表示部に生体の超音波画像を表示する構成であれば、本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、実際に超音波の送受信を行う超音波振動子を収納したケース上表面に表示部を配置しているので、超音波振動子の移動操作位置と表示部とを同時に目視することができるので、視線移動が軽減され疲労感の抑制や操作性の向上を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の外観及び使用状態を説明する説明図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の内部構造を説明する説明図である。
【図3】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置に用いる移動接点の詳細構造を説明する説明図である。
【図4】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成ブロック図である。
【図5】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の画像処理部の詳細を説明する説明図である。
【図6】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の画像形成時に用いる閾値とエコー強度との関係を説明する説明図である。
【図7】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置で形成される超音波画像の表示例を説明する説明図である。
【図8】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の他の画像処理部の詳細を説明する説明図である。
【図9】 図8の構成で連結性の判定に使用する表示基準点の設定を説明する説明図である。
【図10】 図8の構成で連結性の判定に使用するマスクを説明する説明図である。
【図11】 図8の構成の連結性の判定の定順を説明するフローチャートである。
【図12】 図8の構成の連結性の判定を用いた場合に超音波診断装置で形成される超音波画像の表示例を説明する説明図である。
【図13】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置で使用する深さ−輝度テーブルの生成例を説明する説明図である。
【図14】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の他の構成を説明する説明図である。
【図15】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の他の構成を説明する説明図である。
【図16】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置に1Dアレイの超音波振動子を用いる場合の構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
10 超音波診断装置、12 ケース、14 表示部、14a タッチパネル、16 腕、18 支持アーム、20 電源スイッチ、22 スキャンスイッチ、24 超音波振動子、26 超音波送受信部、26a 送信回路、26b 受信回路、28 画像処理部、30 CPU、32 充電式電源ユニット、34 コネクタ基板、36 電源供給基板、38 モータ、40 シャフト、42 移動電極、42a 支持台、44 減速ギア、46 個別電極、48a,48b 移動接点。

Claims (3)

  1. 生体が含まれる3次元空間に対し超音波の送受信を行いエコーデータを取得し超音波画像を得る超音波診断装置であって、
    超音波の送受信を行う超音波振動子と、
    前記超音波振動子が取得したエコーデータに基づいて形成した超音波画像を表示する表示部と、
    送受信面であるケース下面と、前記ケース下面とは反対側の表面であるケース上面と、を有し、少なくとも前記超音波振動子を収納し、前記ケース下面が前記生体に直接接触する可搬型のケースと、
    を含み、
    前記ケース内におけるケース下面側に前記超音波振動子が収容され、
    前記ケース上面に前記表示部が上方向きで配置され、
    前記超音波振動子により深さ方向に形成される超音波ビームを第1スキャン方向及び第2スキャン方向にスキャンすることにより前記3次元空間が構成され、
    前記超音波画像は、前記超音波振動子から深さ方向に生体を見た時の透視画像であり、当該透視画像により生体が実寸法で表示される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  2. 請求項1記載の装置において、
    前記透視画像は、前記三次元空間内において抽出された連続性をもった1又は複数の連続領域を表す画像である、ことを特徴とする超音波診断装置。
  3. 請求項2記載の装置において、
    前記透視画像は、前記複数の連続領域をそれぞれ異なる表示色で表す画像である、ことを特徴とする超音波診断装置。
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