JP4331354B2 - 木材矯正用具とそれを使用した木材乾燥方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分を含んだ生の木材を加熱乾燥する際、木材が変形しないように、木材を矯正しておく木材矯正用具とそれを使用した木材乾燥方法に関し、建築用資材として使用できる乾燥木材を歩留まり良く製造することができるようにした木材矯正用具とそれを使用した木材乾燥方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来において、板材その他の木材を遠赤外線乾燥室などで乾燥する際、例えば、特許第2828625号公報に示されたように、乾燥すべき木材の間に適宜の桟を挟んで積み上げる、いわゆる桟積みが行われる。このように桟積みした木材を乾燥する場合、従来はこれを遠赤外線乾燥室内へ装入し、室内の空気を遠赤外線ヒータで放射すると共に、室内の空気を循環しながら乾燥することが行われている。
【0003】
木材は乾燥の過程で曲がりや捻れを生じることが多いが、前述した特許発明による乾燥方法では、木材の乾燥工程における木材の捻れを大幅に防止できるようになった。
しかしながら、従来の方法では、木材の乾燥過程で起こる木材の変形を確実に防ぐことができず、多くの木材が乾燥後に曲がり等の変形を有することになる。乾燥時に曲がった木材は、これを修正することは不可能であり、通常は廃棄処分にするか、仕上げ加工できる程度の変形を有するものは、より小さな木材として加工し、一部使用するということが行われている。
【0004】
乾燥工程で乾燥前の歪みを矯正し、真っ直ぐな角材や反りのない板材が得られれば好都合であるが、そのような乾燥方法は提案されていない。従来の乾燥方法では、木材は伐採後、ある期間自然乾燥させた後、乾燥室で乾燥させていた。しかし、この方法であると、伐採後、製品を得る迄に相当の期間を要するばかりでなく、乾燥に伴う木材の変形が大きく、そのため乾燥後の仕上加工が不可避であり、実際に使用できる木材は相当少なくなってしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の木材乾燥工程における課題に鑑み、これを解決するためなされたものであり、その目的とするところは、伐採後、製材した生の木材を変形させることなく乾燥させ、小さな許容誤差範囲内で所望の形状、寸法の木材を歩留まりよく得ることができる木材矯正用具とそれを使用した木材乾燥方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、製材され、水分を多く含む生の木材12を放射伝導熱で、乾燥する際に、少なくとも木材12の両端部と中間部を幅方向及び厚み方向に互いに拘束し、乾燥時の反り、曲がり、捻れ等の変形を防止するようにしたものである。これにより、反り、曲がり、捻れ等の変形の無い乾燥木材を歩留まりよく製造することができるようにしたものである。
【0007】
本発明による第一の木材矯正用具は、長尺な横桟2と、この横桟2から木材12の幅と同じかごく僅かに広い間隔で立設され、木材12の厚さとほぼ同じ高さの支持柱3、4とを有することを特徴とするものである。
このような木材矯正用具である矯正桟1を用意し、乾燥する木材12の少なくとも両端と中間部とを、前記矯正桟1の支持柱3、4の間に嵌め込み、矯正桟1の支持柱3、4の間に嵌め込んだ木材12を多重に積層し、この状態で木材12を乾燥する。
【0008】
このような本発明による木材矯正用具とそれを使用した木材乾燥方法では、複数の木材12の少なくとも両端部と中間部が矯正桟1により互いに拘束された状態で乾燥されるため、乾燥過程で生じる木材12の幅方向の曲がりが完全に矯正され、幅方向の曲がりの無い木材が得られる。さらに、このような矯正桟1により少なくとも両端部と中間部を拘束した木材を段積みすることにより、上の段の木材12の重量によって下の段の木材12の厚み方向も拘束され、木材12の乾燥過程で生じる厚み方向の木材12の変形である反りが完全に抑えられる。前記木材12の幅方向の拘束と共に、乾燥時に証実木材12に捻れも完全に抑えられる。
【0009】
さらに、本発明による第二の木材矯正用具は、長尺な横桟2から、木材12の厚さとほぼ同じ高さであって、上端を開口した中空体からなる支持柱3、4を木材12の幅と同じかごく僅かに広い間隔で立設してなる矯正桟1と、長尺な横桟8から、前記矯正桟1の支持柱3、4に嵌合可能な突起9、10を前記矯正桟1の支持柱3、4と同じ間隔で立設してなる押え桟7と、矯正桟1の支持柱3、4に押え桟7の突起9、10嵌合した状態で、矯正桟1と押え桟7の少なくとも両端で、嵌合した支持柱3、4と突起9、10とを連結する連結手段とを有することを特徴とするものである。
【0010】
前記のような矯正桟1と押え桟7とを用意し、乾燥する木材12の少なくとも両端と中間部とを、前記矯正桟1の支持柱3、4の間に嵌め込み、この矯正桟1の支持柱3、4に押え桟7の突起9、10を嵌合し、矯正桟1と押え桟7の少なくとも両端で、嵌合した支持柱3、4と突起9、10とを連結手段により連結し、この状態で木材12を乾燥する。
【0011】
このような木材矯正用具とそれを使用した木材乾燥方法において、乾燥過程で生じる木材12の幅方向の曲がりが完全に矯正され、幅方向の曲がりの無い木材が得られるのは、前記と同様である。さらに、この木材矯正用具とそれを使用した木材乾燥方法では、矯正桟1の支持柱3、4に押え桟7の突起9、10が嵌合し、矯正桟1と押え桟7の少なくとも両端で、嵌合した支持柱3、4と突起9、10とを連結手段により連結しているため、木材12を段積みした場合に、最上段側の木材12でその厚み方向の矯正のための圧力が不足するときでも、押え桟7が木材の両端部と中間部でその厚み方向の変形を完全に拘束する。従って、段積み上端側の木材12の厚み方向の変形、すなわち反りや捻れが完全に防止される。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
図1は、本発明による木材矯正用具を示す。矯正桟1は、スチールの角材等からなる長尺な横桟2と、その横桟2の両端にわたって、乾燥する木材12の幅と同じかごく僅かに広い間隔で支持柱3、4を溶接等の手段で立設したものである。これらの支持柱3、4の横桟8からの高さは、何れも同じであり、木材12の厚さと同じかごく僅かに高い。この支持端3、4は、上端が開いた角形の中空柱であり、横桟2の両端にある支持柱3、3には、ピン6を嵌合するためのピン穴5、5がそれぞれ穿孔されている。図示の矯正桟1では、横桟2の両端にわたって一定の間隔で9つの支持柱3、4が立設されており、その間の部分は8区画ある。
【0013】
押え桟7は、前記矯正桟1と同様のスチールの角材等からなる長尺な横桟8を有し、この横桟7の両端にわたって前記矯正桟1の支持柱3、4と同じ間隔で突起9、10が立設されている。これらの突起9、10の高さは、何れも同じであり、前記矯正桟1の支持柱3、4より僅かに低い。この突起9、10は、角形の中空柱であり、その一辺の幅は、前記矯正桟1の支持柱3、4の一辺の内側幅より僅かに小さく、同支持柱3、4の上端から嵌合できるようになっている。さらに、横桟8の両端にある突起9、9には、前記矯正桟1の両端の支持柱3、3のピン穴5、5に対応して、ピン6を嵌合できるピン穴11、11がそれぞれ穿孔されている。
【0014】
この矯正桟1と押え桟7を使用して木材を乾燥する方法について以下に説明する。
まず、図1に示すように、乾燥しようとする生の木材12の両端部と中央部に当たる位置に矯正桟1、1…を3本平行に配置する。もちろん、矯正桟1、1…は、3本以上配置してもよいが、必ず木材12の両端部とその中間部に配置する。
【0015】
次に、図1に示すような状態から、矯正桟1の横桟2の支持柱3、4の間に、乾燥しようとする木材12の両端部及び中間部を嵌め込む。図1に示す矯正桟1の場合、支持柱3、4の間の部分は、8つずつあるため、8本の木材12を3本の矯正桟1の支持柱3、4の間に嵌め込むことができる。このようにして、両端部及び中間部を矯正桟1の横桟2の支持柱3、4の間に嵌め込んだ8本の木材12は、その両端部及び中間部が矯正桟1を介して互いに拘束される。
【0016】
前記のように、両端部及び中間部を矯正桟1の横桟2の支持柱3、4の間に嵌め込んだ8本の木材12の束を、図3に示すようにして、乾燥室の内部に設置した架台13の上に順次段積みする。これにより、下の木材12は上の木材12の重力により加圧され、それらの厚み方向が完全に拘束される。
【0017】
さらに、最上段または最上段から下へ数段目までの木材12については、図1、図2及び図5に示す押え桟7を使用する。すなわち、矯正桟1の支持柱3、4に押え桟7の対応する突起9、10を嵌め込む。そして、矯正桟1の両端の支持柱3と押え桟7の両端の突起9とのピン穴5、11を貫通するようにピン6を嵌め込み、このピンを抜け止めして矯正桟1の両端の支持柱3と押え桟7の両端の突起9とを連結する。
【0018】
この矯正桟1の両端の支持柱3と押え桟7の両端の突起9及びピン6を分解した状態を図5に示す。また、3本ずつの矯正桟1と押え桟7とを連結した状態を図2に示す。この図2に示したように組み立てた8本の木材の束は、最上段または最上段から下へ数段目まで積み重ねる。これにより、上の木材12の重力による拘束が無い最上段や、或いは上の木材12の重力による拘束に乏しい最上段に近い木材12は、前記押え桟7により、それらの厚み方向が完全に拘束される。
【0019】
最上段の木材12の束の矯正桟1にのみ押え桟7を装着し、木材12を架台13上に積み上げた状態を図3と図4に示す。
このようにして、木材12を段積みした状態で乾燥室を閉じ、乾燥室内に備えた遠赤外線ヒータ等の放射手段により、木材12を乾燥する。木材12の乾燥工程では、木材12の放射熱による脱水に伴い繊維の収縮にむらが生じ、曲がり、反り、捻れ等の変形を起こすことが多い。しかし、前記のようにして乾燥することで、木材12は、その両端部と中央部とにおいて、その幅方向に互いに拘束されており、また上積みされた木材12の重力によって木材12の厚み方向にも拘束されている。さらに最上段またはそれから下に数段の木材は、押え桟7によって木材12の厚み方向に拘束されている。従って、木材12は、水分がほぼ飽和状態の100%の生材の状態から水分10%以下に乾燥した後、前記の矯正桟1や押え桟7を取り外すと、ほぼ真っ直ぐな状態を維持する。
【0020】
【実施例】
次に、本発明の実施例について、具体的な数値をあげて説明する。
長さ1820mm、幅132mm、厚さ33mmを標準とする茨城八溝産の杉の水分約100%の生材を、前記のように矯正桟1及び押え桟7を用いて拘束した状態で、特許第2828625号に記載された方法に従い、乾燥室をほぼ非換気状態とし、且つ室内の空気を循環させながら、遠赤外線ヒータで木材を放射し、水分10%以下まで乾燥した。また比較のため、矯正桟1を使用せずに、単に段積みした状態で同様にして木材を乾燥した。
その結果を表1に示す。表1のサンプル1〜5が前述のようにして矯正桟1で拘束して乾燥した木材サンプルである。また、表2のサンプル6〜10が矯正桟1で拘束せず、単に段積みして乾燥した木材サンプルである。
【0021】
表1における各サンプルの含水量は、2カ所で測定した。また図6に示すように、予め乾燥前の生の木材12の両端の幅方向の中心間に直線で墨出しておき、木材12を乾燥した後、その墨出しした直線の両端から再度直線で墨出しをし、乾燥前と乾燥後の墨出しした線のずれの最大値δをその木材の乾燥後の長さLで割った値を曲がりとした。すなわち、曲がり=δ/L(%)とした。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の結果から明らかな通り、乾燥によるサンプル木材全体の平均収縮率は、幅が1.865%、厚さが1.490%であった。また、木材の曲がりは、乾燥後のサンプル木材1〜5が何れも0.100以下であったのに対し、比較例であるサンプル木材6〜10の乾燥後の曲がりは、何れも0.150を越え、最大0.250であった。また、後者の乾燥後のサンプル木材には、若干の反り(Crook)や捻れが目視観察された。
【0024】
建築用木材の曲がりに関して、JAS規格では、「針葉樹の造作用製材(壁板類)の上級品質材(無節)の曲がりは、0.5%以下であること」と定められている。前記の乾燥後のサンプル木材は、全てこの規格に適合しているが、特にサンプル木材1〜5の乾燥木材は曲がりが極度に抑えられている。これにより、本発明による方法で乾燥した木材12は、針葉樹の造作用製材(壁板類)の上級品質材として問題なく使用することができる。
【0025】
木材を単に段積みして乾燥した場合、上の段の木材の重力により、下の段の木材の曲がり、反り、捻れ等を或る程度防止できるが、やはり曲がり、反り、捻れの発生が避けられない。実際には、乾燥後の大半の木材のが曲がりが0.2%を越えていた。このような木材は一応はJAS規格に適合するものの、建築材として使用できる箇所が制限されるか、或いは廃棄せざるを得ず、多くの木材が無駄になっていた。前記のような乾燥方法を適用することにより、多くの木材を針葉樹の造作用製材(壁板類)の上級品質材として使用することが可能となり、高い歩留まりを得ることができる。
【0026】
なお、以上の説明では、木材12の両端と中央部を前記の矯正桟1と押え桟7で拘束するようにしたが、乾燥する木材12が長い場合には、中間部を2カ所以上で拘束してもよい。また、最上段またはそれより数段下までの木材を押え桟7で拘束するようにしたが、この押え桟7を使用するのに代えて、錘を使用してもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、伐採後、製材した生の木材を変形させることなく乾燥させ、小さな許容誤差範囲内で所望の形状、寸法の木材を歩留まりよく得ることができる。これにより、多くの木材を針葉樹の造作用製材(壁板類)の上級品質材として使用することが可能となり、高い歩留まりを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による矯正桟と押え桟との例を示す木材を含めた分解斜視図である。
【図2】前記矯正桟、押え桟及び木材を組み立てた状態の斜視図である。
【図3】前記矯正桟で木材を拘束した状態で乾燥室の架台に段積みし、最上段の木材に押え桟を取り付けた状態の正面図である。
【図4】前記矯正桟で木材を拘束した状態で乾燥室の架台に段積みし、最上段の木材に押え桟を取り付けた状態の平面図である。
【図5】前記矯正桟と押え桟との端部を連結する構造を示す分解斜視図である。
【図6】木材の反りの測定法を示す斜視図である。
【符号の説明】
7 押え桟
3 支持柱
4 支持柱
1 矯正桟
2 横桟
8 横桟
9 突起
10 突起
12 木材
Claims (4)
- 長尺板状の木材(12)の乾燥処理時の木材(12)の変形を防止する木材矯正用具であって、長尺な横桟(2)と、この横桟(2)から木材(12)の幅と同じかごく僅かに広い間隔で立設され、木材(12)の厚さとほぼ同じ高さの支持柱(3)、(4)とを有することを特徴とする木材矯正用具。
- 長尺板状の木材(12)の乾燥処理時の木材(12)の変形を防止する木材矯正用具であって、長尺な横桟(2)から、木材(12)の厚さとほぼ同じ高さであって、上端を開口した中空体からなる支持柱(3)、(4)を木材(12)の幅と同じかごく僅かに広い間隔で立設してなる矯正桟(1)と、長尺な横桟(8)から、前記矯正桟(1)の支持柱(3)、(4)に嵌合可能な突起(9)、(10)を前記矯正桟(1)の支持柱(3)、(4)と同じ間隔で立設してなる押え桟(7)と、矯正桟(1)の支持柱(3)、(4)に押え桟(7)の突起(9)、(10)嵌合した状態で、矯正桟(1)と押え桟(7)の少なくとも両端で支持柱(3)、(4)と突起(9)、(10)を連結する連結手段とを有することを特徴とする木材矯正用具。
- 長尺板状の木材(12)の乾燥処理時の木材(12)の変形を防止する木材矯正用具を使用した木材乾燥方法であって、長尺な横桟(2)と、この横桟(2)から木材(12)の幅と同じかごく僅かに広い間隔で立設され、木材(12)の厚さとほぼ同じ高さの支持柱(3)、(4)とを有する矯正桟(1)を用意し、乾燥する木材(12)の少なくとも両端と中間部とを、前記矯正桟(1)の支持柱(3)、(4)の間に嵌め込み、矯正桟(1)の支持柱(3)、(4)の間に嵌め込んだ木材(12)を多重に積層し、この状態で木材(12)を乾燥することを特徴とする木材乾燥方法。
- 長尺板状の木材(12)の乾燥処理時の木材(12)の変形を防止する木材矯正用具を使用した木材乾燥方法であって、長尺な横桟(2)から、木材(12)の厚さとほぼ同じ高さであって、上端を開口した中空体からなる支持柱(3)、(4)を木材(12)の幅と同じかごく僅かに広い間隔で立設してなる矯正桟(1)と、長尺な横桟(8)から、前記矯正桟(1)の支持柱(3)、(4)に嵌合可能な突起(9)、(10)を前記矯正桟(1)の支持柱(3)、(4)と同じ間隔で立設してなる押え桟(7)とを用意し、乾燥する木材(12)の少なくとも両端と中間部とを、前記矯正桟(1)の支持柱(3)、(4)の間に嵌め込み、この矯正桟(1)の支持柱(3)、(4)に押え桟(7)の突起(9)、(10)を嵌合し、矯正桟(1)と押え桟(7)の少なくとも両端で支持柱(3)、(4)と突起(9)、(10)を連結手段により連結し、この状態で木材(12)を加熱乾燥することを特徴とする木材乾燥方法。
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