JP4330306B2 - 疲労強度に優れた硬引きばね - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強い冷間引き抜き加工を施して使用されるばね(加工ばね)に関するものであり、殊に伸線ままで焼入れ焼戻し処理せずとも優れた疲労強度を発揮する硬引きばねに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の軽量化や高出力化に伴い、エンジンやサスペンション等に使用される弁ばねや懸架ばねにおいても高応力化が指向されている。また、ばねへの負荷応力の増大に伴い、疲労強度に優れたばねが要求されている。
【0003】
近年、弁ばねや懸架ばね等の大部分は、オイルテンパー線と呼ばれる焼入れ・焼戻しの施された鋼線を、常温でばね巻き加工して製造されているのが一般的である。
【0004】
上記の様なオイルテンパー線では、焼戻しマルテンサイト組織であるので、高強度を得るのに都合が良く、また疲労強度や耐へたり性に優れるという利点があるものの、焼入れ・焼戻し等の熱処理に大掛かりな設備と処理コストを要するという欠点がある。
【0005】
一方、負荷応力が比較的低く設計された一部のばねには、(フェライト+パーライト)組織またはパーライト組織の炭素鋼を伸線加工して強度を高めた線材(「硬引き線」と呼ばれている)を、常温でばね巻き加工したものが使用されている。こうしたばねとして、JIS規格にはピアノ線(JIS G3522)の中で、特に「弁ばねまたはこれに準ずるばね用」として、「ピアノ線SWP−V種」を定めている。
【0006】
上記の様な硬引き線によって製造されるばね(以下では、このばねを「硬引きばね」と呼ぶ)は、熱処理を必要としないので低コストになるという利点がある。しかしながら、こうした硬引き線で製造されたばねでは、疲労強度が低いという欠点があり、近年要望の高まっている様な高応力ばねは実現できない。
【0007】
低コストに製造できるという利点のある硬引きばねにおいて、より高応力化を図る技術も様々検討されており、こうした技術として例えば特開平11−199981号には、「オイルテンパー線と同等の特性を備えたピアノ線」として、共析〜過共析鋼パーライトの伸線加工方法を工夫することによって、特定のセメンタイト形状を得る方法が提案されている。しかしながらこうした方法においても、伸線方向を入れ替えるなど、工程の複雑化による製造コストの上昇は避けられない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした状況の下になされたものであって、その目的は、オイルテンパー線を用いたばねと同等以上の疲労強度を発揮する硬引きばねを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成し得た本発明の硬引きばねとは、C:0.5〜0.7%、Si:1.0〜2.0%、Mn:0.5〜1.5%、Cr:0.5〜1.5%を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼線をばね成形したものであり、ばね内側における表面残留応力(R+)と、ばね外側における表面残留応力(R-)の差[(R+)−(R-)]が500MPa以下である点に要旨を有するものである。本発明で用いる鋼線においては、更に(a)Ni:0.05〜0.5%、(b)Mo:0.3%以下(0%を含まない)等を含有することも有効である。
【0010】
また、本発明のばねにおいては、下記(1)〜(5)の要件を満足するものであることが好ましい。
(1)表面に2回以上のショットピーニングが施されたものである。
(2)上記ショットピーニング後のばね内側における表面残留応力(Rs+)と、ばね外側における表面残留応力(Rs-)の差[(Rs+)−(Rs-)]が300MPa以下である。
(3)表面粗さが最大高さRyで10μm以下である。
(4)表面に窒化処理が施されたものである。
(5)ばね径Dと線径dの比(D/d)が9.0以下である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成することのできる硬引きばねの実現を目指して様々な角度から検討した。その結果、化学成分組成を適切に調整すると共に、ばね成形後(コイリング後)におけるばね内側とばね外側の残留応力の差(以下、単に「残留応力差」と呼ぶことがある)を500MPa以下に制御することによって、優れた疲労強度が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の硬引きばねにおいては、用いる鋼線(伸線材)の化学成分組成も適切に調整する必要があるが、その範囲限定理由は下記の通りである。
【0013】
C:0.5〜0.7%
Cは、伸線材の引張強度を高め、疲労強度や耐へたり性を確保するために有用な元素であり、通常のピアノ線では0.8%前後含有されているが、本発明で目的としている様な高強度の伸線材においては、Cの含有量が0.7%を超えると欠陥感受性を増大させ、また表面疵や介在物からの亀裂を発生して疲労寿命が劣化するので、0.7%以下とした。しかしながら、C含有量が少なくなり過ぎると、高応力ばねとして必要な引張強さが確保できないばかりか、疲労強度および耐へたり性を劣化させるので、C含有量は0.5%以上とする必要がある。尚、C含有量の好ましい下限は0.63%であり、好ましい上限は0.68%である。
【0014】
Si:1.0〜2.0%
Siは、製鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、またフェライト中に固溶して焼戻し軟化抵抗を上げ、耐へたり性を向上させる上で重要な元素である。こうした効果を発揮させるためには、1.0%以上含有させる必要がある。しかしながら、Siの含有量が2.0%を超えて過剰になると、靭性や延性が悪くなるばかりでなく、表面の脱炭や疵等が増加して耐疲労性が悪くなる。尚、Si含有量の好ましい下限は1.2%程度であり、好ましい上限は1.6%程度である。
【0015】
Mn:0.5〜1.5%
Mnは製鋼時の脱酸に有効な元素であり、またパーライト組織を緻密且つ整然化させ、疲労特性の改善に貢献する元素である。こうした効果を発揮させる為には、Mnは少なくとも0.5%含有させる必要がある。しかし、過剰に含有させると、熱間圧延時やパテンティング処理時にベイナイト等の過冷組織が生成し易くなり、伸線性を著しく悪化するので、1.5%以下とすべきである。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.6%程度であり、好ましい上限は1.0%程度である。
【0016】
Cr:0.5〜1.5%
Crは、パーライトラメラ間隔を小さくして、圧延後または熱処理後の強度を上昇させ、耐へたり性を向上させるのに有用な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Cr含有量は0.5%以上とする必要がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になると、パテンティング中にベイナイト組織が生成し易くなり、また粗大な炭化物を析出し易くなり、疲労強度および耐へたり性が劣化するので、1.5%以下とする必要がある。尚、Cr含有量の好ましい下限は0.7%程度であり、好ましい上限は1.0%程度である。
【0017】
本発明で用いる鋼線における基本的な化学成分組成は上記の通りであり、残部は実質的にFeからなるものであるが、必要により所定量のNiやMoを含有させることも有効である。これらを含有させるときの範囲限定理由は、下記の通りである。
【0018】
Ni:0.05〜0.5%
Niは焼入れ性を高めると共に靭性を高め、ばね加工時の折損トラブルを抑制すると共に疲労強度を向上させるのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Ni含有量は0.05%以上とするのが好ましい。しかしながら、過剰に含有させると熱間圧延時やパテンティング時にベイナイト組織が生成し、伸線加工性を著しく悪化させるのでその上限は0.5%とするのが好ましい。
【0019】
Mo:0.3%以下(0%を含まない)
Moは焼入れ性を確保すると共に軟化抵抗を向上させることによって耐へたり性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果は、その含有量が多くなるにつれて大きくなるが、過剰に含有させるとパテンティングの処理時間が長くなり過ぎ、また延性も劣化するのでその上限は0.3%とするのが好ましい。
【0020】
本発明で用いる鋼線には、上記の各種成分以外にも硬引きばねの特性を阻害しない程度の微量成分を含み得るものであり、こうした鋼線も本発明の範囲に含まれものである。上記微量成分としては不純物、特にP,S,As,Sb,Sn等の不可避不純物が挙げられる。
【0021】
本発明の硬引きばねにおいては、前述の如く残留応力差を500MPa以下に制御することも重要な要件であるが、この要件を規定した理由は次の通りである。ばね成形(コイリング)により付与される残留応力は、ばねの内側と外側でバランスしているので、コイリング後の上記残留応力差が大きいと、それだけ内側の引張残留応力が高くなる。引張りの残留応力(引張り残留応力)高いと疲労亀裂の発生および進展を助長し、疲労強度が低下してしまうことになる。また、ショットピーニングにより付与される圧縮残留が小さくなってしまう。
【0022】
上記知見に基づき、本発明者は、ばね内側と外側の残留応力差[(R+)−(R-)]と疲労強度の関係を調査したところ、その差が500MPa以下となるようにすれば、疲労強度が著しく改善されることが判明したのである。
【0023】
ところで、ばねを成形したときには、ばね内側には引張方向の残留応力(引張り残留応力)生じており、ばね外側にはその製造条件によっては引張り残留応力が生じている場合と圧縮方向の残留応力(圧縮残留応力)が生じている場合がある。従って、本発明における残留応力差を測定するときには、こうした点をも考慮する必要がある。即ち、両側の表面残留応力が引張り残留応力の場合には、単純にその差を測定すればよいが、ばね外側の残留応力(R-)が圧縮残留応力の場合には、その残留応力をマイナスとして差し引いた値となる。例えば、ばね内側の引張り残留応力が150MPa、外側の圧縮残留応力が50MPaである場合には、その残留応力の差[(R+)−(R-)]は、(150)−(−50)=200MPaということになる。
【0024】
上記のように本発明では、コイリング後のばね内側とばね外側の残留応力差を500MPa以下とすることによって、硬引きばねの疲労強度が向上できたものであるが、疲労強度を評価する指標として前記残留応力差を規定した理由は次の通りである。ばねに架かる応力(せん断応力)は、内側と外側で同じという訳ではなく、ばね内側の応力が外側とりも高くなる。例えば、ばね径Dと線径dの比(D/d:以下、「ばね指数」と呼ぶ)が2.0〜9.0であれば、下記(1)式で示されるワールの修正係数A1は1.16〜2.06となって、その1.16〜2.06倍だけ高い応力が架かることになる(例えば、「ばね」、ばね技術研究会編、丸善発行)。
1=〔(4c−1)/(4c−4)〕+〔0.615/c〕‥(1)
但し、c:ばね指数(D/d)
一方、ばね外側に関するばね修正係数A2は、下記(2)式で示されることになり、この式によればばね外側に架かる応力は、ばね指数が2.0のときに0.443倍になる。
2=〔(4c+1)/(4c+4)〕+〔0.615/c〕‥(2)
但し、c:ばね指数(D/d)
【0025】
このように、ばね内側には大きなせん断応力が架かり、また引張残留応力が高ければ、更にばね特性は悪化する。こうした観点からすれば、ばね内側の残留応力を規定すれば良いことになるのであるが、伸線した状態でも表面は引張り残留応力を有しており、その値は伸線加工条件や材質によっても変化するので、ばねコイリング後でもその加算効果によって、表面の引張り残留応力は変わることになって、残留応力として規定するのは困難になる。そこで、本発明では、ばね内側とばね外側の残留応力の差を規定することによって、疲労強度の指標としたものである。
【0026】
上記残留応力の差を500MPa以下とするための条件としては、例えばコイリング後の歪取り焼鈍温度を400℃以上となるように制御すれば良い。従来のピアノ線では、歪取り焼鈍温度を400℃以上で行うと強度が低下し、疲労強度や耐へたり性が低下してしまっていたのであるが、本発明の硬引きばねにおいては、耐熱性に良好な結果を与えるSiを多量に含有する鋼線を素材とするものであるので、400℃以上で歪取り焼鈍を行っても強度の低下が殆どなく、コイリング歪を除去できるのである。
【0027】
本発明の硬引きばねにおいては、化学成分組成と残留応力差を規定することによって、優れた疲労強度を達成し得たものであるが、こうした効果をより有効に発揮させるためには、その表面に2回以上のショットピーニングを施すことが有効である。弁ばねやそれに準ずる高応力ばねは、ショットピーニングによって表層に圧縮残留応力が付与された状態で使用されるのが通常である。このショットピーニングは、高硬度の硬球(ショット粒)を高速で被処理材表面に投射して圧縮の残留応力を付与し、表面亀裂の発生を抑え、疲労強度を向上させるのに有効な手段である。特に、高応力で使用されるような部品においては、2回以上のショットピーニングを行うことが効果的である。
【0028】
また、上記のようなショットピーニングは、ばね表面に圧縮残留応力を付与して、疲労亀裂の進展を抑制するのに効果がある。ショットピーニングを行うようなばねは、特に高応力で使用されるので、より高い圧縮残留応力が必要となり、上記残留応力差をより厳密に管理しなければならない。そのためには、上記残留応力差材は300MPa以下であることが好ましい。
【0029】
ところで、ばねの表面粗度が大きいと、これを起点として疲労破壊が発生し易くなり、疲労強度が低下することになる。そこで、疲労強度を向上させるという観点からすれば、ばねの表面粗さRy(最大高さ:JIS B 0601)を10μm以下にすることが好ましい。例えば、上記のような2回以上の高強度のショットピーニングを行うと、表面が変形して表面粗さが大きくなる場合がある。特に、硬引き線のような材料においては、最弱部のフェライトがより大きく変形し、表面粗度が大きくなることがある。表面粗度を上記のように調整する手段については、限定されるものではないが、例えばショットピーニング条件を適切に制御することによってそれを達成することができる。
【0030】
こうした表面粗さRyの制御も考慮した、好ましいショットピーニング条件は、次の通りである。1回目のショットピーニングにおいては、粒径:1.0〜0.3mmのショット粒を用い、粒速:30〜100m/sec、投射時間:20〜200分にて行う。このとき用いるのショット粒の硬さは、ビッカース硬度(Hv)で500以上であることが好ましい。
【0031】
次いで、2回目以降のショットピーニングでは、1回目よりも小さいショット粒を用いて実施する。このとき用いるショット粒の大きさは、1回目のショット粒径の1/10以下であることが好ましい。また時間は、10〜200分程度とする。こうした2回目以降のショットピーニングによって、表面粗さを小さくできるとともに、表面の圧縮残留応力を大きくするしことができ、疲労強度を更に向上させることができる。尚、本発明者によれば、硬引きばねでは、焼入れ・焼戻ししたオイルテンパー線よりも、2回目以降のショットピーニングの効果が大きいことを確認している。
【0032】
本発明の硬引きばねにおいては、特に過酷な応力条件で使用されることが予想される場合には、その表面に窒化処理を施すことも有効である。こうした窒化処理を施すことによって、疲労強度を更に改善することができる。こうした窒化処理に関しては、オイルテンパー線で製造された弁ばねについては従来からその処理が行なわれているが、硬引きばねについては、全く行われていなかった。これは、通常の硬引き線の化学成分では窒化処理を施しても効果があまり期待できないと考えられていたことや、窒化の際に伸線時に導入された歪が開放されて強度が極端に低下すると考えられていたこと等が原因である。
【0033】
これに対して、本発明で規定する化学成分組成を有する鋼線を硬引きした後、窒化処理を施すと、ばねの疲労寿命が更に改善されることになる。こうした効果が発揮される理由は、次の様に考えることができた。即ち、本発明で用いる鋼線では、フェライトをSi,Cr等の合金元素で強化することによって線材の強度がフェライト自身の強度に依存する状態になっているので、窒化によってフェライトの強度を高めることが疲労強度の直接的な改善に繋がるものと考えられる。尚、窒化処理によって製造されたばね表面の硬度は、0.02mm深さの位置で、ビッカース硬さ(HV)が600以上、好ましくは700以上であることが好ましいが、要求される疲労強度によってはHv500〜600程度であっても良い。
【0034】
上記窒化処理を行う方法については、特に限定するものではなく、ガス窒化、液体(塩浴)窒化の他、イオン窒化等が採用できるが、例えばガス窒化するときの好ましい条件は次の通りである。即ち、アンモニアガス100%雰囲気、或はアンモニアガスを主体として窒素ガス50%以下および二酸化炭素ガス10%以下の雰囲気にて、350〜470℃×1〜6時間の条件で窒化処理を行えば良い。
【0035】
本発明の効果は、前記ばね指数(D/d)が9.0以下の小径ばねに適用したときに、一層発揮される。ばねにおいては、上記D/dはばね指数を示すものであるが、こうした比(D/d)となるばねでは、所望の荷重応答を得るときのばね内側と外側の応力差が大きく、ばね内側に高い応力が架かる。こうした高応力の使用環境下でも、本発明のばねではその機能を維持することができる。また、その効果は、(D/d)が小さくなればなるほど大きくなるが、2.0よりも小さくなるとショットピーニング等の表面加工の効果が得られにくくなるので、その下限は2.0であることが好ましい。
【0036】
本発明の硬引きばねは、上記のような化学成分組成を有する鋼線をコイリングして上記の要件を満足させることによって、その目的を達成するものであるが、本発明で素材として用いる鋼線は、下記(a)および/または(b)の要件を満足するものも用いることができる。こうした要件を満足させることによって、ばねの疲労強度や耐へたり性を更に改善することができて好ましい。
(a)鋼線中に存在する大きさ0.1μm以上(円相当直径)の炭化物が、観察
視野100μm2当たり5個以下である
(b)鋼線中に存在する酸化物系介在物の融点A(℃)が下記(3)式を満足す

A≦2×(TS/100)2−1.2×TS+3200‥(3)
【0037】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0038】
【実施例】
実施例1
下記表1に示す化学成分組成の鋼(A〜J)を溶製し、熱間圧延して直径(線径):8.0mmの線材を作製した。その後、皮削り、パテンティング処理および伸線処理を行って線径:3.1mmの鋼線とした。このときのパテンティングは、オーステナイト化温度を910℃とし、各鋼種に応じて550〜650℃の鉛浴中で恒温変態させた。
【0039】
【表1】
Figure 0004330306
【0040】
その後、上記鋼種A,B,Cの伸線材について、ばね成形し(ばね指数:6.81)、歪取り焼鈍(350,380、410℃×20分)、座研磨および冷間セッチングを行った。
【0041】
得られた各ばねに588±441MPaの負荷応力下で疲労試験を行い、破断寿命を測定するとともに、ばね内側の残留応力(R+)とばね外側の残留応力(R-)をX線回折によって測定して残留応力差[(R+)−(R-)]を求めた。また、伸線材の引張強度(伸線後および歪取り焼鈍後)についても測定すると共に、その表面粗さRyについても測定した。その結果を、歪取り焼鈍温度と共に下記表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0004330306
【0043】
この結果から、明らかなように、残留応力差が500MPa以下のものでは(No.3〜5)、優れた疲労強度が達成されていることが分かる。これに対して、残留応力差が500MPaを超えるものでは(No.1,2)、疲労強度が著しく劣化していることが分かる。
【0044】
実施例2
実施例1と同様にして得られた各伸線材(鋼種A〜H)について、様々なばね指数のばねを成形し、歪取り焼鈍(350,380、410℃×20分)、座研磨、二段ショットピーニング、低温焼鈍(230℃×20分)および冷間セッチングを行った。このとき、鋼種Cについては、座研磨後、窒化処理をNH380%+N220%の雰囲気下、420℃×2時間の条件で行い、二段ショットピーニング、低温焼鈍(230℃×20分)および冷間セッチングを行ったもの(後記表3のNo.11)も準備した。
【0045】
得られた各ばねに588±441MPaの負荷応力下で疲労試験を行い、破断寿命を測定するとともに、ばね成形後(ショットピーニング前)におけるばね内側の残留応力(R+)とばね外側の残留応力(R-)、およびショットピーニング後におけるばね内側の残留応力(Rs+)とばね外側の残留応力(Rs-)をX線回折によって測定し、夫々の残留応力差[(R+)−(R-)]および[(Rs+)−(Rs-)]を求めた。また、実施例1と同様にして、伸線材の引張強度(伸線後および歪取り焼鈍後)についても測定すると共に、その表面粗さRyについても測定した。その結果を、ばね指数および歪取り焼鈍温度と共に下記表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 0004330306
【0047】
この結果から、次の様に考察できる。まず、No.8〜13のものは、本発明で規定する要件のいずれも満足するものであり、疲労強度が優れたものとなっていることが分かる。
【0048】
これに対してNo.6,7,14〜16のものでは、本発明で規定する要件のいずれかを欠くものであり、いずれかの特性が劣化したものとなっている。即ち、No.6,7のものでは、ばね内側とばね外側の残留応力の差(ばね成形後およびショットピーニング後)が大きくなっているので、疲労強度が著しく劣化している。
【0049】
またNo.14のものは、C含有量が多くなっているので、欠陥感受性が高くなっており、またSi含有量が低くなっているので、歪取り焼鈍後に十分な強度が得られず、疲労寿命が短くなっている。
【0050】
No.15のものは、C含有量が少ないものであり、パテンティング後の強度が低くなっており、伸線後に十分な強度が得られず、疲労寿命が短くなっている。
【0051】
No.16のものは、Cr含有量が多くなっているので、パテンティング時にベイナイトが生成し、伸線中に断線が生じていた。
【0052】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、伸線ままでオイルテンパー線を用いたばねと同等以上の疲労強度を発揮する硬引きばねが実現できた。

Claims (8)

  1. C:0.5〜0.7%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.0〜2.0%、Mn:0.5〜1.5%、Cr:0.5〜1.5%を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼線をばね成形したものであり、ばね内側における表面残留応力(R+)と、ばね外側における表面残留応力(R-)の差[(R+)−(R-)]が500MPa以下であることを特徴とする疲労強度に優れた硬引きばね。
  2. 前記鋼線は、更に、Ni:0.05〜0.5%を含有するものである請求項1に記載の硬引きばね用鋼線。
  3. 前記鋼線は、更に、Mo:0.3%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の硬引きばね用鋼線。
  4. 表面に2回以上のショットピーニングが施されたものである請求1〜3のいずれかに記載の硬引きばね。
  5. ショットピーニング後におけるばね内側における表面残留応力(Rs+)と、ばね外側における表面残留応力(Rs-)の差[(Rs+)−(Rs-)]が300MPa以下である請求項4に記載の硬引きばね。
  6. 表面粗さが最大高さRyで10μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の硬引きばね。
  7. 表面に窒化処理が施されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の硬引きばね。
  8. ばね径Dと線径dとの比(D/d)が9.0以下である請求項1〜7のいずれかに記載の硬引きばね。
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