JP4328734B2 - 可変ベーン式ターボチャージャの制御装置 - Google Patents
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Description
すなわち、特許請求の範囲の請求項1にかかる可変ベーン式ターボチャージャの制御装置によると、過渡状態判定手段により内燃機関が過渡状態にあると判定されたときには、排気流量を表わす吸入空気量と燃料噴射量とから求められる排気エネルギに基づいて設定された過渡時VN開度指令値に基づいて可変ベーンが制御される。したがって、内燃機関の過渡時には、定常時に比べて、可変ベーンのVN開度を閉め側に速やかに制御し、最適VN開度をとることができるので、過給レスポンスを向上することができる。
また、過渡時VN開度指令値を、排気流量を表わす吸入空気量と燃料噴射量とから求められる排気エネルギに基づいて設定するため、前記特許文献1の吸入空気量に基づいて過渡時VN開度指令値を設定するものに比べて、制御精度を向上することができる。
まず、ディーゼルエンジンの構成等について説明する。図1はディーゼルエンジンの要部構成図である。
図1に示すように、内燃機関としてのディーゼルエンジンのエンジン本体10には、排気ポートに連通する排気通路20、吸気ポートに連通する吸気通路22が接続されている。また、エンジン本体10の燃焼室12には燃料噴射ノズル14が設置されている。車両のアクセルペタル(図示省略)の踏込量に対応した量の燃料が、燃料噴射ノズル14から燃焼室12へ向けて噴射される。
そして、可変ベーン式ターボチャージャ30は、エンジン本体10より排気通路20に排出された排気ガスがタービン32を回転させることでコンプレッサ34が回転して、エンジン本体10の燃焼室12に送り込む空気の量を増加させて、吸気通路22への過給を行なうことで、エンジンの出力を高める。すなわち、エンジン本体10から排気通路20に排気ガスが排出されると、その排気ガスのエネルギに応じた回転トルクがタービン32を介してコンプレッサ34に付与され、そのコンプレッサ34の駆動により所定圧力(過給圧)の空気がエンジン本体10の吸気系であるコンプレッサ34の下流側の吸気通路22に送り込まれる。
図2に示すように、まず、ステップS10において、ECU70は、各種のデータを読み込み、エンジン回転数N、燃料噴射量Q、エンジン水温Tw、過給圧Pb、大気圧Pa、大気温度Ta、EGRバルブ開度係数Ecの検出を行なう。なお、燃料噴射量Qは、アクセルペタルの踏み込み量に対応する燃料噴射量であり、ECU70から噴射ノズルの制御量データとして読み込まれる。また、EGRバルブ開度係数Ecは、ECU70からEGRバルブ50のアクチュエータの制御量データとして読み込まれる。このEGRバルブ開度係数Ecは、EGRバルブ50の開度に応じて例えば0〜1(全閉時が0で、全開時が1)に設定することができる。
図4に示すように、エンジン負荷(エンジン回転数N、燃料噴射量Q)と目標過給圧との相関によって、図4中の線L1で示す基本目標過給圧Pb1が設定される。また、この基本目標過給圧Pb1においてエンジン負荷が100%より大きい領域は、タービン32の回転数制限、エンジンの筒内圧制限の観点から、基本目標過給圧Pb1の最大ガードとなる基本最大目標過給圧Pb2が設定される。そして、この基本目標過給圧Pb1および基本最大目標過給圧Pb2に基づいて、大気圧Pa、エンジン水温Tw、大気温度Taに応じた補正がなされ、その結果として補正後の目標過給圧Ptが設定される。
(1)ディーゼルエンジンの運転状態に基づいて求められた基本目標過給圧に対する実際の過給圧に所定の偏差があること。
(2)ドライバーのアクセル操作による要求燃料噴射量Qが最大燃料噴射量Qmより大きいこと。この条件は、アクセル操作量(踏み込み量)に対応する燃料噴射量のマップから要求燃料噴射量を検出し、予め設定の最大燃料噴射量との比較で判定する。
(3)車両が走行中であること。なお、車両走行中であるか否かは、例えば車速センサからの検出信号により判定する。
(4)EGRバルブ50が閉じており、排気循環がオフ(EGR OFF)であること。なお、EGRがOFFか否かは、EGRバルブ50のアクチェエータ(図示省略)の状態から判定する。
図2中のステップS12において、通常状態と判定された場合は、ステップS22に進み、開き側のVN最小開度Viの算出を行なう。このVN最小開度Viは、図3中の(5)式にしたがって、エンジン回転数Nから定められたマップによって設定される(図9参照。)。図9に示すように、本実施例ではエンジン回転数N(rpm)とVN最小開度Vi(%)との相関において、図中の実線で示す制限値を設け、この制限値の図中上側を使用領域に設定している。なお、この図において、VN最小開度Viの0(%)が可変ベーン36の全開時であり、100(%)が可変ベーン36の全閉時である。
このように、可変ベーン36の開き側のVN最小開度Viに制限値を設けることで、アクセルペタルのオフ時には、過給残りがあるため目標過給圧より実際の過給圧(実過給圧)が高くなり、従ってVN開度は開き側に制御されるが、可変ベーン36の開き側の制限値を設けることで、再加速時の過給立ち上がりを促進し再加速性を確保することができる。
ここで、VN最大開度Va1およびVa2は、いずれもエンジン回転数Nおよび燃料噴射量Qから定められたマップによって設定される(図5および図6参照。)。
エンジン回転数N(rpm)と燃料噴射量Q(mm3/st)とに応じてVN最大開度Va1(%)およびVa2(%)が設定され、100(%)の線が可変ベーン36の全閉時である。
また、過給圧補正係数Pfは、エンジン回転数Nおよび目標過給圧Ptと実際の過給圧Pbとの偏差である過給圧偏差Pd(図3中の(8)式参照。)から定められたマップによって設定される(図3中の(9)式参照。)。
このように、可変ベーン36の閉じ側のVN最大開度Vaに制限値を設けることで、実際の過給圧(実過給圧)を目標過給圧に近づけるべく可変ベーン36を制御する過渡時において、過剰な排気ガスが排気還流通路24を流れるのを抑制し、排気系からの黒煙の放出を極力抑えることができる。また、可変ベーン36の閉じ側の制限値を設けることで、例えばEGRバルブ50が全閉状態の場合に、過給圧の過剰な上昇を抑制し、タービン32の回転数のオーバーシュートを防止することができる。
次に、ステップS47において、前記目標VN開度Vtとなるように、VRV42を制御する。
図2中のステップS12において、過渡状態と判定された場合は、ステップS32に進み、過渡時のVN最小開度viの算出を行なう。このVN最小開度viは、図10中の(15)式にしたがって、エンジン回転数Nから定められた過渡用マップによって設定される。
次に、図2中のステップS33によって、過渡時VN最大開度vaの算出を行なう。このVN最大開度vaは、図10中の(16)式にしたがって、吸入空気量Qaと燃料噴射量Qから定められた過渡用マップによって設定される。このVN最大開度vaを求める過渡用マップのパラメータとして燃料噴射量Qと吸入空気量Qaとしているのは、定常状態に比べ過給遅れがあり、背圧・排気温の低い過渡時において排気エネルギを正確に推定し、排気エネルギに応じた最適VN開度を指令するためである。ちなみに、VN最大開度vaを求める過渡用マップのパラメータとして燃料噴射量Qとエンジン回転数としたのでは、ハード信頼性を確保する為の上限背圧やターボ回転数に対して最も厳しい加速条件やシフト条件でマップ値を構成する必要があり、過渡時の最適VN開度とすることはできない。これに対し、パラメータを燃料噴射量Qと吸入空気量Qaとすることで、アクセルペタルを踏み込んで急加速するにあたっての最適VN開度で制御することにより、過給レスポンスを向上し、これにより加速レスポンスを向上することができる。
また、このVN最大開度マップは、EGRを使用しないときであるので、図3に示す(6)式及び(7)式は無関係である。また、吸入空気量Qaは、吸気通路22の熱線式流量計(図示省略)を介して検出し、燃料噴射量Qはアクセルペタルの踏み量を検出するアクセルポジションセンサの出力値から算出することができる。また、前記吸入空気量Qaは排気通路20の排気ガス量に代えることもできる。なお、ステップS34のVN開度フィードバック量vcの算出は、ここでは省略する場合を説明する。このステップS34については後で述べる。
次に、図2中のステップS36によって、過渡用の目標VN開度vtの算出を行なう。この目標VN開度vtは、ステップS32〜ステップS34において算出された、VN最小開度vi、過渡時VN最大開度va、基本VN開度vbに基づいて設定される(図3中の(18)式参照。)。すなわち、VN最小開度viと、基本VN開度vbとを比較して大きい方の開度を選択し、この開度と過渡時VN最大開度vaと比較して小さい方の開度を目標VN開度vtとする。なお、目標VN開度vtは、本明細書でいう「過渡時VN開度指令値」に相当し、過渡時用のフィードバックゲインの調整により、過渡時における最適VN開度である過渡時VN最大開度vaをとる。
次に、ステップS47において、前記目標VN開度vtとなるように、VRV42を制御する。
また、過渡時目標VN開度vtを、排気流量を表わす吸入空気量と燃料噴射量とから求められる排気エネルギに基づいて設定するため、前記特許文献1の吸入空気量に基づいて過渡時目標VN開度を設定するものに比べて、過給レスポンスおよび制御精度を向上することができる。
20…排気通路
22…吸気通路
24…排気還流通路
30…可変ベーン式ターボチャージャ
32…タービン
34…コンプレッサ
36…可変ベーン
50…EGRバルブ(排気循環量調節バルブ)
60…エンジン回転数センサ
62…エンジン水温センサ
64…過給圧・大気圧センサ
68…大気温度センサ
70…ECU(制御手段、電子制御ユニット)
Claims (4)
- 車両用内燃機関において該機関の排気通路に設けられたタービンと、
前記内燃機関の吸気通路に設けられかつ前記タービンの駆動トルクに応じて内燃機関へ空気を供給するコンプレッサと、
前記タービンを駆動する排気ガスの流速を可変とする可変ベーンと
を備える可変ベーン式ターボチャージャの制御装置であって、
内燃機関が過渡状態にあるか否かを判定する過渡状態判定手段と、
前記過渡状態判定手段により過渡状態と判定されたときに、排気流量を表わす吸入空気量と燃料噴射量とから求められる排気エネルギに基づいて過渡時VN開度指令値を設定する過渡時VN開度設定手段と
を備え、
前記過渡時VN開度設定手段により設定された過渡時VN開度指令値に基づいて前記可変ベーンを制御する構成とした
ことを特徴とする可変ベーン式ターボチャージャの制御装置。 - 請求項1に記載の可変ベーン式ターボチャージャの制御装置であって、
前記過度状態判定手段は、前記内燃機関の運転状態に基づいて求められた基本目標過給圧に対する実際の過給圧に所定の偏差があるときでかつアクセル操作による要求燃料噴射量が最大燃料噴射量より大きいときに、過渡時を判定することを特徴とする可変ベーン式ターボチャージャの制御装置。 - 請求項2に記載の可変ベーン式ターボチャージャの制御装置であって、
前記過度状態判定手段は、車両が走行中であるときを含めて、前記過渡時を判定することを特徴とする可変ベーン式ターボチャージャの制御装置。 - 請求項2又は3に記載の可変ベーン式ターボチャージャの制御装置であって、
前記排気通路を流れる排気ガスを前記吸気通路へ循環させる排気還流通路と、
前記排気還流通路における排気ガスの循環量を調節する排気循環量調節バルブと
を備え、
前記過度状態判定手段は、前記排気循環量調節バルブを閉じているときを含めて、前記過渡時を判定する
ことを特徴とする可変ベーン式ターボチャージャの制御装置。
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