JP2015074989A - 可変容量型ターボチャージャの制御装置 - Google Patents

可変容量型ターボチャージャの制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】EGRガスの導入態様に応じてターボチャージャの回転速度の過上昇を的確に抑えることのできる可変容量型ターボチャージャの制御装置を提供する。
【解決手段】この装置は、EGR装置を備えた内燃機関に設けられて、複数のノズルベーンを有する可変ノズル機構が取り付けられた可変容量型ターボチャージャに適用される。上限ガード値Lrlによって、ノズルベーンの開度の閉じ側への変更を制限する。上限ガード値Lrlを、EGR率が低いときほどノズルベーン開度の制限の度合いが大きくなる態様で設定する。
【選択図】図7

Description

本発明は、可変容量型ターボチャージャの制御装置に関するものである。
内燃機関の吸排気系に設けられるターボチャージャとして可変容量型のものが知られている(特許文献1参照)。こうしたターボチャージャには例えば、タービンホイールに吹き付けられる直前の排気が通過する排気経路に、複数のノズルベーンを有する可変ノズル機構が取り付けられている。そして、ノズルベーンの開度を変更することにより、タービンホイールに吹き付けられる排気の流速が調節され、ターボチャージャ(詳しくはタービンホイール)の回転速度、ひいては内燃機関の吸気圧(いわゆる過給圧)が調整される。
特許文献1には、ノズルベーン開度の閉じ側の限界開度(制限値)を定め、同制限値によってノズルベーン開度の変更を制限することが提案されている。この装置によれば、機ターボチャージャの回転速度の過上昇が抑えられる。
また、内燃機関に排気再循環(EGR)装置を設けることが多用されている。EGR装置は、内燃機関の排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路を備え、同EGR通路を介して排気通路内の排気の一部を吸気通路に戻して再循環させる。これにより、排気中の窒素酸化物(NOx)の低減が図られる。
特開2006−16975号公報
ここで、EGR装置を備えた内燃機関では、吸気通路に再循環される排気(いわゆるEGRガス)の量を減少させると、その分だけタービンホイールに吹き付けられる排気の量が増加するため、ターボチャージャの回転速度や過給圧が高くなる。特許文献1の装置では、ノズルベーン開度の制限値が設定されてターボチャージャの回転速度の上昇が抑えられるとはいえ、同制限値が、そうしたEGR量の減少による影響を十分に考慮して設定されているとは云えない。そのため、例えば排気の再循環が停止されるときなど、EGRガスの量がごく少ない量に変更されるときに、タービンホイールに吹き付けられる排気の量が急増してターボチャージャの回転速度の過上昇を招くおそれがある。こうしたターボチャージャの回転速度の過上昇は、同ターボチャージャの耐久性能の低下を招く一因になるため好ましくない。
なお、こうしたターボチャージャの回転速度が過上昇する現象は、上述した可変ノズル機構が取り付けられたターボチャージャに限らず、上記現象の発生を抑えるべく開弁されるウェイストゲートバルブが設けられるターボチャージャにおいても同様に生じる。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、EGRガスの導入態様に応じてターボチャージャの回転速度の過上昇を的確に抑えることのできる可変容量型ターボチャージャの制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するための可変容量型ターボチャージャの制御装置は、排気通路内の排気を吸気通路に再循環させる排気再循環装置を備えた内燃機関に設けられて、過給量を変更可能な変更装置を備えた可変容量型ターボチャージャに適用され、前記過給量の最大量が所定量以下になる態様で前記変更装置の作動範囲を制限する制限値の範囲内にて前記変更装置を制御する。この制御装置は、前記排気再循環装置による排気の再循環量が少ないときほど前記過給量の最大量が少なくなる態様で前記制限値を設定する。
上記制御装置では、排気再循環(EGR)装置による排気の再循環量(EGR量)が少ないときには、ターボチャージャを通過する排気の量が多いため、同ターボチャージャの回転速度の過上昇を抑えるためには、過給量増大の制限の度合いが大きくなるように変更装置の作動を制御することが望ましい。これに対して、EGR装置によるEGR量が多いときには、ターボチャージャを通過する排気の量が少ないために、過給量増大の制限の度合いを小さくしても、ターボチャージャの回転速度の過上昇を抑えることが可能である。
上記制御装置によれば、ターボチャージャの過給量の増大を制限するための制限値がEGR量に基づき設定されるため、そうしたEGR量と同EGR量に適した過給量増大の制限の度合いとの関係を満たすように上記制限値を設定することができる。したがって、EGRガスの導入態様に応じてターボチャージャの回転速度の過上昇を的確に抑えることができる。
上記制御装置において、前記変更装置を、タービンホイールに吹き付けられる排気が通過する排気経路に複数のノズルベーンを有する可変ノズル機構とすることができる。また、前記制限値によって前記ノズルベーンの開度の閉じ側への変更を制限することができる。さらに、前記排気の再循環量が少ないときほど前記開度の制限の度合いが大きくなる態様で前記制限値を設定することができる。
上記制御装置では、EGR量が少ないときには、タービンホイールに吹き付けられる排気の量が多いため、ターボチャージャの回転速度の過上昇を抑えるためには、ノズルベーン開度の制限度合いが大きくなるように同開度を開き側の開度で制限することが望ましい。これに対して、EGR量が多いときには、タービンホイールに吹き付けられる排気の量が少ないために、ノズルベーン開度の制限度合いを小さくして同開度を閉じ側の開度で制限しても、ターボチャージャの回転速度の過上昇を抑えることが可能である。
上記制御装置によれば、ノズルベーン開度を制限するための制限値がEGR量に基づき設定されるため、そうしたEGR量と同EGR量に適したノズルベーン開度の制限度合いとの関係を満たすように上記制限値を設定することができる。したがって、EGRガスの導入態様に応じてターボチャージャの回転速度の過上昇を的確に抑えることができる。
上記制御装置において、前記制限値の設定に用いる設定パラメータとして、EGR量そのものの他、EGR量を内燃機関の気筒内に吸入される全ガス量(EGR量に吸入空気量を加算した量)で除算した値である排気再循環率(EGR率)を用いることができる。
上記制御装置において、前記内燃機関の運転状態に基づき排気再循環率の制御目標値を算出するとともに同制御目標値に基づき前記排気再循環装置の作動制御を実行し、前記排気再循環率の制御目標値に基づき前記制限値を設定することができる。
上記制御装置によれば、EGR率の制御目標値に応じて、言い換えればEGR装置の作動制御の実行を通じて実現が見込まれるEGR率に応じてノズルベーンの開度を制限することができる。そのため、ターボチャージャの回転速度の過上昇を抑えるための制限値を、予め見込んだ設定態様で適正に設定することができる。
上記装置では、前記EGR率の制御目標値を、機関負荷および機関回転速度に基づき算出することができる。
上記制御装置において、前記排気再循環率の実値を検出するとともに、同実値に基づき前記制限値を設定することができる。
上記制御装置によれば、実際のEGR率に応じてノズルベーンの開度を制限することができる。そのため、EGR装置の経時的な変化などによって実際のEGR率が変化した場合に、その変化したEGR率に適した設定態様で前記制限値を設定することができる。
上記制御装置において、前記内燃機関の運転状態に基づき排気再循環率の制御目標値を算出するとともに同制御目標値に基づき前記排気再循環装置の作動制御を実行して、前記排気再循環率の実値を検出し、前記制御目標値および前記実値の小さいほうの値に基づいて前記制限値を設定することができる。
上記制御装置によれば、EGR率の制御目標値が実値より小さいときには、制御目標値が実値と比較して上記タービンホイールに吹き付けられる排気の量が多くなる状況を示す値になっているとして、同制御目標値に応じて予め見込んだ設定態様で前記制限値を設定することができる。しかも、EGR率の実値が制御目標値より小さいときには、実値が制御目標値と比較してタービンホイールに吹き付けられる排気の量が多くなる状況を示す値になっているとして、実際のEGR率に適した設定態様で前記制限値を設定することができる。このように上記制御装置によれば、EGR率の制御目標値および実値のうちの上記タービンホイールに吹き付けられる排気の量が多くなる状況を示す値を選択するとともに、その選択した値に基づき前記制限値を設定することができるため、この制限値に基づいてターボチャージャの回転速度の過上昇を適正に抑えることができる。
上記制御装置において、前記内燃機関の気筒内に吸入される空気の圧力を検出する吸気圧センサと前記吸気通路を通過する空気の量を検出する流量センサとを設けて、前記吸気圧センサおよび流量センサの検出値によって前記実値を検出することができる。
上記制御装置では、吸気圧センサによって内燃機関の気筒内に吸入される全ガス量(EGR量と吸入空気量とを加算した量)を検出することができ、流量センサによって内燃機関の気筒内に吸入される空気量を検出することができる。そして、この空気量を全ガス量から減算した量を同全ガス量で除算した値(=[全ガス量−空気量]/全ガス量)が実際のEGR率になる。このように上記制御装置によれば、吸気圧センサの検出値と流量センサの検出値とに基づいて排気再循環率の実値を検出することができる。
可変容量型ターボチャージャの制御装置の一実施形態の概略構成を示す略図。 ターボチャージャのタービンの断面構造を示す断面図。 タービンホイールと各ノズルベーンとの位置関係を示す略図。 EGR制御処理の実行手順を示すフローチャート。 VN制御処理の実行手順を示すフローチャート。 機関回転速度、燃料噴射量および過給圧が一定に保たれる状況でのEGR率とノズル開度との関係を示すグラフ。 上限ガード値設定処理の実行手順を示すフローチャート。 補間係数と選択EGR比との関係の一例を示すグラフ。 上限ガード値と各設定パラメータとの関係を示すグラフ。 他の実施形態の上限ガード値と各設定パラメータとの関係を示すグラフ。 他の実施形態の上限ガード値の設定態様を示すグラフ。
以下、可変容量型ターボチャージャの制御装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、内燃機関10の吸気通路11には、吸気流れ方向上流側から順に、ターボチャージャ20のコンプレッサ21、インタークーラ12、吸気絞り弁13が取り付けられている。内燃機関10の排気通路14には、排気流れ方向上流側から順に、ターボチャージャ20のタービン22、排気浄化装置15が取り付けられている。
上記ターボチャージャ20は、コンプレッサ21の内部に設けられたコンプレッサホイール21Aとタービン22の内部に設けられたタービンホイール22Aとが連結された排気駆動型のものであり、且つ同ターボチャージャ20によって回収する排気エネルギー量を変更可能なタイプのものである。詳しくは、ターボチャージャ20はタービンホイール22Aに吹き付けられる排気の流速を調整するための可変ノズル機構23を備えている。この可変ノズル機構23の作動制御を通じて内燃機関10の気筒(図示略)内に強制的に送り込まれるガス(吸入空気と排気再循環[EGR]ガスとの混合ガス)の量(ガス圧送量)と機関運転状態との関係が変更される。以下、そうした関係の変更態様について説明する。
図2に示すように、タービン22の内部には渦巻き形状をなすスクロール通路24が設けられている。このスクロール通路24は内燃機関10の排気通路14(図1参照)の一部を構成しており、同スクロール通路24の内部には内燃機関10の排気が送り込まれる。また、タービン22の内部にはスクロール通路24内に送り込まれた排気をタービンホイール22Aへ向けて吹き付けるための環状通路25が、同スクロール通路24に沿って設けられている。そして、内燃機関10の排気は、環状通路25の通過に際してその流速を高められつつタービンホイール22Aに吹き付けられる。この環状通路25には、互いに同期した状態で開閉動作する複数のノズルベーン26が設けられている。このノズルベーン26は可変ノズル機構23の一部を構成している。
図3に示すように、各ノズルベーン26はタービンホイール22Aの回転軸L1周りにおいて所定間隔おきに配設されている。そして、可変ノズル機構23の作動制御を通じて各ノズルベーン26を一斉に開閉駆動して隣り合うノズルベーン26同士の間隔を変更することにより、スクロール通路24からタービンホイール22Aに吹き付けられる排気の流速が変更される。これにより、タービンホイール22Aの回転速度が調整され、ひいてはガス圧送量が調節される。
図1に示すように、内燃機関10には、排気通路14内の排気の一部をEGRガスとして吸気通路11に戻すためのEGR装置30が取り付けられている。このEGR装置30は、排気通路14におけるタービンホイール22Aより排気流れ方向上流側の部分と吸気通路11における吸気絞り弁13より吸気流れ方向下流側の部分とを連通するEGR通路31を介して、EGRガスを再循環させる。EGR通路31には、その通路断面積を変更するためのEGR弁32が取り付けられている。このEGR弁32の作動制御を通じて、EGR通路31を通過するEGRガスの量、すなわちEGR装置30によって吸気通路11に戻されるEGRガスの量(EGR量)が調節される。
内燃機関10には、その周辺機器として、例えばマイクロコンピュータを備えて構成される電子制御装置40が設けられている。この電子制御装置40は各種センサの出力信号を取り込むとともにそれら出力信号をもとに各種の演算を行い、その演算結果に応じて燃料噴射弁(図示略)や、吸気絞り弁13、可変ノズル機構23、EGR弁32の作動制御など、内燃機関10の運転にかかる各種制御を実行する。
各種センサとしては、例えば内燃機関10の出力軸17の回転速度(機関回転速度NE)を検出するための速度センサ41や、吸気通路11に設けられて同吸気通路11を通過する空気の量(通路吸気量GA)を検出するための流量センサ42、吸気絞り弁13の開度(絞り弁開度)を検出するための絞り弁開度センサ43を備える。その他、EGR弁32の開度(EGR開度VR)を検出するためのEGR開度センサ44や、ノズルベーン26の開度(ノズル開度VN)を検出するためのノズル開度センサ45、吸気通路11における吸気絞り弁13より吸気流れ方向下流側に設けられて吸入空気の圧力(過給圧P)を検出するための吸気圧センサ46を備える。
本実施形態では、EGR量を調節するためのEGR制御において、吸気絞り弁13の作動制御とEGR弁32の作動制御とが実行される。
以下、EGR制御にかかる処理(EGR制御処理)について説明する。
図4は上記EGR制御処理の実行手順を示すフローチャートであり、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として、電子制御装置40により実行される。
図4に示すように、この処理では先ず、機関回転速度NE、通路吸気量GAおよび過給圧Pに基づいて、実吸入空気量Rgnと実EGR率Regrとがそれぞれ算出される(ステップS101)。実吸入空気量Rgnは、内燃機関10の気筒内に吸入される空気の量(吸入空気量)についての検出値である。実EGR率Regrは、内燃機関10の気筒内に吸入される全ガス(吸入空気とEGRガスとを含むガス)の量のうちのEGR量が占める割合(EGR率)についての検出値である。
なお、EGR率の実値や吸入空気量は、次のような考えのもとに検出することが可能である。先ず、吸入空気量は通路吸気量GAと機関回転速度NEとに基づいて検出することができる。また、過給圧Pおよび機関回転速度NEに基づいて内燃機関10の気筒内に吸入される全ガス量(EGR量と吸入空気量とを加算した量)を検出することができる。そして、上記全ガス量から吸入空気量を減じた量(=全ガス量−吸入空気量)を実際のEGR量に相当する量として検出することができ、同量と全ガス量とから実際のEGR率(=「全ガス量−吸入空気量」/全ガス量)を検出することができる。
本実施形態では、機関回転速度NE、通路吸気量GAおよび過給圧Pにより定まる機関運転状態と同機関運転状態に見合う実EGR率Regrとの関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御装置40に記憶されている。また、上記機関運転状態と同機関運転状態に見合う実吸入空気量Rgnとの関係についても同様に実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御装置40に記憶されている。そして、ステップS101の処理では、それら関係に基づいて実EGR率Regrと実吸入空気量Rgnとがそれぞれ算出される。
その後、内燃機関10の運転状態(具体的には、機関回転速度NEおよび燃料噴射量)に基づいて、EGR率の制御目標値(目標EGR率Tegr)と吸入空気量の制御目標値(目標吸入空気量Tgn)とがそれぞれ設定される(ステップS102)。
なお本実施形態では、内燃機関10の運転状態と目標EGR率Tegrとの関係や同運転状態と目標吸入空気量Tgnとの関係が演算用のマップとして電子制御装置40に予め記憶されており、それらマップをもとに目標EGR率Tegrと目標吸入空気量Tgnがそれぞれ設定される。それら演算用のマップには、標準的な作動特性を有する装置において燃料消費量の低減や排気性状の悪化抑制を図ることが可能になる関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて設定されている。
その後、上記目標EGR率Tegrに基づいてEGR開度VRの制御目標値(目標EGR開度Tvr)と吸気絞り弁13の開度の制御目標値(目標絞り弁開度Tsl)とが設定される(ステップS103)。本実施形態では、標準的な作動特性を有する装置において目標EGR率Tegrと実際のEGR率とを一致させることが可能になる目標EGR率Tegrと目標EGR開度Tvrとの関係や、同目標EGR率Tegrと目標絞り弁開度Tslとの関係が、実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御装置40に記憶されている。ステップS103の処理では、そうした関係に基づいて目標EGR開度Tvrおよび目標絞り弁開度Tslが設定される。
そして、上記目標絞り弁開度Tsl、前記目標吸入空気量Tgn、および実吸入空気量Rgnに基づいて吸気絞り弁13の作動制御が実行される(ステップS104)。詳しくは、吸気絞り弁13の作動制御として、目標絞り弁開度Tslを見込み制御量とする見込み制御と、目標吸入空気量Tgnおよび実吸入空気量Rgnの偏差に基づくフィードバック制御とが実行される。
その後、目標EGR開度Tvr、目標EGR率Tegr、および実EGR率Regrに基づいてEGR弁32の作動制御が実行される(ステップS105)。詳しくはEGR弁32の作動制御として、目標EGR開度Tvrを見込み制御量とする見込み制御と、目標EGR率Tegrおよび実EGR率Regrの偏差に基づくフィードバック制御とが実行される。
本実施形態の装置では、排気通路14から吸気通路11へのEGRガスの再循環が、吸気通路11内の圧力と排気通路14内の圧力との差を利用して行われる。そして、EGR量の調節は、吸気絞り弁13の作動制御を通じて吸気通路11の通路断面積を変更することによって吸気通路11と排気通路14との圧力差(具体的には、過給圧P)を調節しつつ、EGR弁32の作動制御を通じてEGR通路31の通路断面積を変更するといったように行われる。
本実施形態では、基本的に、可変ノズル機構23の作動制御にかかる処理(VN制御処理)が以下のように実行される。
図5は上記VN制御処理の実行手順を示すフローチャートであり、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として、電子制御装置40により実行される。
図5に示すように、この処理では先ず、機関回転速度NEおよび燃料噴射量に基づいて過給圧Pの制御目標値(目標過給圧TP)が算出されるとともに(ステップS201)、同目標過給圧TPと過給圧Pとの偏差に基づいてフィードバック補正項KVNが算出される(ステップS202)。このフィードバック補正項KVNとしては、周知のPID制御の補正項を想定しており、上記偏差に基づいて各別に算出した比例項、積分項、および微分項を加算した値が算出される。
また、機関回転速度NEおよび燃料噴射量に基づいて可変ノズル機構23のノズルベーン26の開度の制御目標値(ベース開度VNb)が算出される(ステップS203)。なお本実施形態では、機関回転速度NEおよび燃料噴射量により定まる内燃機関10の運転状態と同運転状態に適したベース開度VNbとの関係が演算用のマップとして電子制御装置40に予め記憶されており、同マップをもとにベース開度VNbが設定される。このマップには、標準的な作動特性を有する装置において燃料消費量の低減や排気性状の悪化抑制を図ることが可能になる関係が各種の実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて設定されている。なお本実施形態の装置では、ノズル開度VNが小さい値であるときほど隣り合うノズルベーン26の間隔が大きく同ノズルベーン26が開き側の開度である状態を示し、目標開度TVNが小さい値であるほどノズルベーン26の開度を開き側の開度に調節する値になる。
そして、上記ベース開度VNbにフィードバック補正項KVNを加算した値(VNb+KVN)が最終的な制御目標値(目標開度TVN)として算出される(ステップS204)。さらに、下限ガード値による目標開度TVNの下限ガード処理(ステップS205,ステップS206)と、制限値としての上限ガード値Lrlによる目標開度TVNの上限ガード処理(ステップS207〜ステップS209)とが実行された後、本処理は一旦終了される。
下限ガード処理は、目標開度TVNが下限ガード値未満である場合には(ステップS205:YES)同下限ガード値を目標開度TVNに設定する一方(ステップS206)、目標開度TVNが下限ガード値以上である場合には(ステップS205:NO)ステップS206の処理をジャンプするといったように実行される。なお本実施形態の装置では、下限ガード値が機関回転速度NEに基づき設定される。具体的には、機関回転速度NEが比較的高い中回転領域や高回転領域では、可変ノズル機構23の構造により定まるノズルベーン26の開き側の限界開度を規定する一定値が下限ガード値として設定される。また、機関回転速度NEが低い低回転領域では、上記一定値よりも閉じ側の開度に相当する値が設定される。
上限ガード処理では、先ず上限ガード値Lrlを設定する処理(上限ガード値設定処理)が実行される(ステップS207)。この上限ガード値設定処理の実行手順については後に詳述する。そして、目標開度TVNが上限ガード値Lrlより大きい場合には(ステップS208:YES)同上限ガード値Lrlを目標開度TVNに設定する一方(ステップS209)、目標開度TVNが上限ガード値Lrl以下である場合には(ステップS208:NO)ステップS209の処理をジャンプするといったように実行される。この上限ガード処理を通じて、ターボチャージャ20の過給量の最大量が所定量以下になる態様で、可変ノズル機構23の作動範囲を制限する上限ガード値Lrlの範囲内にて同可変ノズル機構23の作動が制御される。なお、上記所定量は、ターボチャージャ20(詳しくは、タービンホイール22A)の回転速度(ターボ回転速度)の過上昇が的確に抑えられるようになる過給量の設定範囲における上限値に相当する量である。この上限ガード処理は、ターボ回転速度や過給圧Pが過度に高くなることを抑えるために実行される。
そして、この目標開度TVNと実際のノズルベーン26の開度(ノズル開度VN)とが一致するように可変ノズル機構23の作動制御が実行される。このように本実施形態では、可変ノズル機構23の作動制御において、ベース開度VNbを見込み制御量とする見込み制御と目標過給圧TPおよび過給圧Pの偏差に基づくフィードバック制御とが実行される。
ここで、内燃機関10の吸気通路11に再循環されるEGRガスの量を減少させると、その分だけタービンホイール22Aに吹き付けられる排気の量が増加するため、ターボ回転速度や過給圧Pが高くなる。本実施形態の可変ノズル機構23の作動制御では、ターボ回転速度や過給圧Pの過上昇を抑えるために、上限ガード値Lrlによってノズル開度VNの閉じ側への変更を制限するようにしている。そのため、上限ガード値Lrlを上述したEGR量の減少による影響を十分に考慮して設定しないと、ターボ回転速度や過給圧Pの上昇を適正に抑えることができなくなるおそれがある。具体的には、例えば吸気通路11への排気再循環が停止されるときなど、EGR量がごく少ない量に変更されるときに、タービンホイール22Aに吹き付けられる排気の量が急増してターボ回転速度の過上昇を招くおそれがある。こうしたターボ回転速度の過上昇は、ターボチャージャ20の耐久性能の低下を招く一因になるため好ましくない。
この点をふまえて本実施形態では、上限ガード処理における上限ガード値Lrlを、EGR率が低いときほどノズル開度VNの制限の度合いが大きくなる態様で設定するようにしている。これにより、EGR率が低いときほどターボチャージャ20の過給量の最大量が少なくなる態様で上限ガード値Lrlが設定される。以下、このようにして上限ガード値Lrlを設定することによる作用について説明する。
図6に、発明者が行った各種の実験やシミュレーションの結果得られた関係であって、機関回転速度NE、燃料噴射量、および過給圧Pがそれぞれ一定に保たれる状況でのEGR率とノズル開度VNとの関係を示す。なお図6中の各線は、それぞれ異なる条件下において得られた関係を示している。
図6の各線に示すように、機関回転速度NE、燃料噴射量、および過給圧Pが一定に保たれる状況では、EGR率が低くなるに連れてノズル開度VNが小さくなって開き側の開度になる。これは、次のような理由による。機関回転速度NEおよび燃料噴射量が一定の条件の下では、EGR率が低くEGR量が少ないときほどタービンホイール22Aに吹き付けられる排気の量が多くなるため、ノズル開度VNを閉じ側への変更の制限度合いが大きくなるように小さい開度(開き側の開度)で制限することにより、ターボ回転速度や過給圧Pの過上昇が抑えられるようになる。
このことから、EGR率が低くEGR量が少ないときにターボ回転速度の過上昇を抑えるためには、ノズル開度VNの閉じ側への変更の制限度合いが大きくなるように上限ガード値Lrlによって同ノズル開度VNを小さい開度で制限することが望ましい。その一方で、EGR率が高くEGR量が多いときには、上限ガード値Lrlによるノズル開度VNの制限度合いを小さくして同ノズル開度VNを大きい開度で制限しても、ターボ回転速度の過上昇を抑えることが可能になると云える。
本実施形態では、上限ガード値Lrlが、EGR率が低いときほどノズル開度VNの閉じ側への変更の制限度合いが大きくなる態様で同EGR率に基づき設定される。そのため、上述したEGR率と同EGR率に適したノズル開度VNの制限度合いとの関係を満たすように上限ガード値Lrlを設定することができる。したがって、そうした上限ガード値Lrlによってノズル開度VNの閉じ側への変更を制限することにより、EGRガスの導入態様に応じたかたちでターボ回転速度の過上昇が的確に抑えられるようになる。
なお、上限ガード値Lrlを、EGR率に基づき設定することに限らず、EGR弁32の開度に基づき設定することも考えられる。EGR量やEGR率は、EGR弁32の開度が一定であっても、排気通路14の内部圧力(排気圧力)と吸気通路11の内部圧力(過給圧P)との差に応じて異なる。そのため、EGR弁32が開弁されていても、過給圧Pと排気圧力との差が生じていなければ、排気通路14から吸気通路11への排気の再循環はなされない。こうしたことから、EGR弁32の開度に基づき上限ガード値を設定して、同上限ガード値に応じてノズル開度VNの閉じ側への変更を制限しても、EGR量やEGR率に応じたかたちでノズル開度VNの変更を制限することはできず、ターボ回転速度の過上昇を的確に抑えることはできない。この点、本実施形態の装置では、EGR率に応じて上限ガード値が設定されるために、同EGR率に応じたかたちでノズル開度VNの変更を適正に制限することができ、ターボ回転速度の過上昇を的確に抑えることができる。
また本実施形態の装置では、上限ガード値LrlがEGR率に基づき設定されるために、EGR率の変化に合わせてノズル開度VNの閉じ側への変更を制限することができる。そのため、過給圧Pや排気圧力が変化する内燃機関10の過渡運転時においても、そのときどきのEGR率に応じたかたちで上限ガード値Lrlを設定してノズル開度VNを制限することができ、ターボ回転速度の過上昇を的確に抑えることができる。
ここで、そうした上限ガード値Lrlの設定に際して、設定パラメータとして目標EGR率Tegrを用いると、同目標EGR率Tegrに応じて、言い換えればEGR制御の実行を通じて実現が見込まれるEGR率に応じてノズル開度VNを制限することが可能になる。そのため、この場合にはターボ回転速度の過上昇を抑えるための上限ガード値Lrlを、予め見込んだ設定態様で適正に設定することができるようになる。
一方、設定パラメータとして実EGR率Regrを用いて上限ガード値Lrlを設定することにより、実際のEGR率に応じてノズル開度VNを制限することが可能になる。そのため、EGR通路31の内壁に煤が付着してEGR量が減少するなど、EGR装置30の経時的な変化によって実際のEGR率が変化した場合に、その変化したEGR率に適した態様で上限ガード値Lrlを設定することができる。
これらをふまえて本実施形態の装置では、上限ガード値Lrlの設定に際して、目標EGR率Tegr(詳しくは、後述する目標EGR比)および実EGR率Regr(詳しくは、後述する実EGR比)の小さいほうの値が選択され、その選択した値(選択EGR比)に基づいて上限ガード値Lrlが設定される。
目標EGR率Tegrが実EGR率Regrより小さいときには、目標EGR率Tegrが実EGR率Regrと比較して上記タービンホイール22Aに吹き付けられる排気の量が多くなる状況を示す値になっていると判断される。そして、そうした判断のもと、目標EGR率Tegrおよび実EGR率Regrのうちノズル開度VNの制限度合いが大きくなるほうの値である目標EGR率Tegrに応じて上限ガード値Lrlが設定され、同上限ガード値Lrlに基づきノズル開度VNの閉じ側への変更が制限される。これにより、ターボ回転速度の過上昇を好適に抑えることができる。しかも、この場合にはターボ回転速度の過上昇を抑えるための上限ガード値Lrlを、目標EGR率Tegrに基づいて、予め見込んだ設定態様で適正に設定することができる。
一方、実EGR率Regrが目標EGR率Tegrより小さいときには、実EGR率Regrが目標EGR率Tegrと比較してタービンホイール22Aに吹き付けられる排気の量が多くなる状況を示す値になっていると判断される。そして、そうした判断のもと、目標EGR率Tegrおよび実EGR率Regrのうちノズル開度VNの制限度合いが大きくなるほうの値である実EGR率Regrに応じて上限ガード値Lrlが設定され、同上限ガード値Lrlに基づきノズル開度VNの閉じ側への変更が制限される。これにより、ターボ回転速度の過上昇を好適に抑えることができる。しかも、EGR装置30の経時的な変化によって実際のEGR率が変化した場合であっても、その変化したEGR率に適した設定態様で上限ガード値Lrlを設定することができる。
このように本実施形態によれば、目標EGR率Tegrおよび実EGR率Regrのうちタービンホイール22Aに吹き付けられる排気の量が多くなる状況を示す値を選択するとともに、その選択した値に基づき上限ガード値Lrlを設定することができるため、同上限ガード値Lrlに基づいてターボ回転速度の過上昇を適正に抑えることができる。
以下、上限ガード値Lrlを設定する処理(上限ガード値設定処理)の具体的な実行手順について図7を参照しつつ説明する。なお、図7のフローチャートに示す一連の処理は、前記VN制御処理(図5)のステップS207の処理である。
図7に示すように、上限ガード値設定処理では、機関回転速度NEおよび燃料噴射量に基づいて演算用のマップから補正開始目標EGR率Ttbが算出される(ステップS301)。ここでは、補正開始目標EGR率Ttbとして、機関回転速度NEおよび燃料噴射量により定まる機関運転状態において設定される目標EGR率Tegrのうちの最大値(図6の各線における右端に対応する値)が算出される。その後、このときの目標EGR率Tegrが読み込まれるとともに、同目標EGR率Tegrを上記補正開始目標EGR率Ttbで除算した値(Tegr/Ttb)が目標EGR比として算出される(ステップS302)。
また、機関回転速度NEおよび燃料噴射量に基づいて演算用のマップから補正開始実EGR率Trbが算出される(ステップS303)。ここでは、補正開始実EGR率Trbとして、機関回転速度NEおよび燃料噴射量により定まる機関運転状態において実現が見込まれる実EGR率Regrのうちの最大値(図6の各線における右端に対応する値)が算出される。その後、実EGR率Regrが読み込まれるとともに、同実EGR率Regrを上記補正開始実EGR率Trbで除算した値(Regr/Trb)が実EGR比として算出される(ステップS304)。
その後、目標EGR比および実EGR比のうちの小さいほうが選択され、その選択された値(選択EGR比)に基づき演算用のAマップから補間係数Klimが算出される(ステップS305)。なお本実施形態では、上記選択EGR比(目標EGR比または実EGR比)と同選択EGR比に適した補間係数Klimとの関係が、各種の実験やシミュレーションの結果得られた関係(図6に示す関係)をもとに予め求められ、Aマップとして電子制御装置40に記憶されている。
図8に、Aマップに定められた補間係数Klimと選択EGR比との関係を示す。同図8に示すように、Aマップには、以下の(条件1)〜(条件3)を満たす関係が定められている。
(条件1)選択EGR比が「0」のときは補間係数Klimとして「0」が算出される。
(条件2)補間係数Klimとして、「0」以上の値であり、「1.0」以下の値が算出される。
(条件3)選択EGR比が高くなるに連れて補間係数Klimが大きくなる。
その後、機関回転速度NEおよび燃料噴射量に基づいて、演算用のBマップから、EGR率が最大になる状況に適した上限ガード値(開時上限ガード値Lop)が算出される(ステップS306)。ここでは、機関回転速度NEおよび燃料噴射量により定まる機関運転状態においてEGR率が最大になったときに、ターボ回転速度が所定速度になる場合のノズル開度VNに相当する値が、開時上限ガード値Lopとして算出される。なお本実施形態では、上記所定速度として、ターボチャージャ20の耐久性能の低下を抑えるべく定められた同ターボチャージャ20の回転速度の上限、あるいは同上限より若干低い速度が採用される。また本実施形態では、機関回転速度NEおよび燃料噴射量により定まる機関運転状態と同運転状態に適した開時上限ガード値Lopとの関係が、発明者による各種の実験やシミュレーションの結果得られた関係(図6に示す関係)をもとに予め求められて、Bマップとして電子制御装置40に記憶されている。
また、機関回転速度NEおよび燃料噴射量に基づいて、演算用のCマップから、EGR弁32が閉弁される状況に適した上限ガード値(閉時上限ガード値Lcl)が算出される(ステップS307)。ここでは、機関回転速度NEおよび燃料噴射量により定まる機関運転状態においてEGR弁32が閉じられたときに(EGR率=0)、ターボ回転速度が上記所定速度になる場合のノズル開度VNに相当する値が、閉時上限ガード値Lclとして算出される。本実施形態では、機関回転速度NEおよび燃料噴射量により定まる機関運転状態と同運転状態に適した閉時上限ガード値Lclとの関係が、発明者による各種の実験やシミュレーションの結果得られた関係(図6に示す関係)をもとに予め求められて、Cマップとして電子制御装置40に記憶されている。
そして、このようにして開時上限ガード値Lopと閉時上限ガード値Lclとが算出された後、以下の関係式を満たすように、開時上限ガード値Lopと閉時上限ガード値Lclとを補間係数Klimによって補間する態様で上限ガード値Lrlが算出される(ステップS308)。

Lrl=Lcl+(Lop−Lcl)Klim

なお、上述したように演算用のAマップ、BマップおよびCマップはいずれも、発明者による各種の実験やシミュレーションの結果得られた関係(図6に示す関係)をもとに定められる。具体的には、図6に示す線のうちの一つ(特定線)を前記所定速度が定まる関係と仮定した場合、特定線におけるEGR率が「0」のときのノズル開度VNが閉時上限ガード値Lclになり、特定線の右端におけるノズル開度VNが開時上限ガード値Lopになり、それらガード値Lcl,Lopを補間係数Klimによって補間することにより算出された上限ガード値Lrlが特定線上の値(あるいは、同値にごく近い値)になるように、Aマップ、BマップおよびCマップは定められている。
図9に、上限ガード値設定処理によって算出される上限ガード値Lrlと設定パラメータとの関係を示す。
図9に示すように、目標EGR率Tegrまたは実EGR率Regrが「0」であるために、選択EGR比が「0」になるときには、上限ガード値Lrlとして、EGR率が「0」になるときに適した値(閉時上限ガード値Lcl)が算出される。また、目標EGR率Tegrが最大値(補正開始目標EGR率Ttb)であり、且つ実EGR率Regrが最大値(補正開始実EGR率Trb)であるため、選択EGR比が「1.0」になるときには、上限ガード値Lrlとして、EGR率が最大になる状況に適した値(開時上限ガード値Lop)が算出される。さらに、図9中に一点鎖線で示すように、選択EGR比が「0」および「1.0」のいずれでもないときには、同選択EGR比に基づき算出される補間係数Klimによって閉時上限ガード値Lclと開時上限ガード値Lopとを補間した値が上限ガード値Lrlとして算出される。
このように本実施形態によれば、発明者による各種の実験やシミュレーションの結果得られた関係(図6に示す関係)に即したかたちで上限ガード値Lrlを算出することができる。そして、この上限ガード値Lrlによってノズル開度VNの閉じ側への変更を制限することにより、ターボ回転速度が前記所定速度を超えて過度に高くなることを的確に抑えることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)上限ガード処理における上限ガード値Lrlを、EGR率が低いときほどノズル開度VNの制限の度合いが大きくなる態様で設定した。そのため、EGRガスの導入態様に応じたかたちでターボ回転速度の過上昇を的確に抑えることができる。
(2)目標EGR率Tegrに基づいて上限ガード値Lrlを設定するようにした。そのため、ターボ回転速度の過上昇を抑えるための上限ガード値Lrlを、予め見込んだ設定態様で適正に設定することができる。
(3)実EGR率Regrに基づいて上限ガード値Lrlを設定するようにした。そのため、EGR装置30の経時的な変化によって実際のEGR率が変化した場合に、その変化したEGR率に適した設定態様で上限ガード値Lrlを設定することができる。
(4)目標EGR率Tegrおよび実EGR率Regrの小さいほうの値に基づいて上限ガード値Lrlを設定した。これにより、目標EGR率Tegrおよび実EGR率Regrのうちの上記タービンホイール22Aに吹き付けられる排気の量が多くなる状況を示す値を選択するとともに、その選択した値に基づき上限ガード値Lrlを設定することができるため、この上限ガード値Lrlに基づいてターボ回転速度の過上昇を適正に抑えることができる。
(5)吸気圧センサ46により検出される過給圧Pと流量センサ42により検出される通路吸気量GAとに基づいて実際のEGR率を検出することができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・各処理における各種制御値の算出や設定に用いるパラメータとして、燃料噴射量を採用することに限らず、燃料噴射量を機関回転速度NEで除算した値や、実吸入空気量Rgn、同実吸入空気量Rgnを機関回転速度NEで除算した値などを用いることができる。要は、機関負荷に相当する値であれば、燃料噴射量に代えて、任意の値を上記パラメータとして用いることができる。
・補間係数Klimを、マップ演算により算出することに代えて、演算式を用いた演算によって算出するようにしてもよい。
・補間係数Klimを、目標EGR比と実EGR比との大小関係によることなく、目標EGR比に基づき設定するようにしてもよい。
・補間係数Klimを、目標EGR比と実EGR比との大小関係によることなく、実EGR比に基づき設定するようにしてもよい。
・目標EGR比および実EGR比のうちの小さい値(選択EGR比)に基づき補間係数Klimを算出することに限らず、目標EGR率Tegrおよび実EGR率Regrのうちの小さい値(選択EGR率)に基づき補間係数Klim1を算出するようにしてもよい。この場合、補正開始目標EGR率Ttbを算出する処理や補正開始実EGR率Trbを算出する処理を省略することができる。また、この場合には以下のようにして上限ガード値Lrlを設定することができる。
図10に上記装置における上限ガード値Lrlと設定パラメータとの関係を示す。図10に示すように、開時上限ガード値Lopに代えて、EGR率が前記最大値より大きい所定比率(例えば40%)になったと仮定した状況に適した上限ガード値Lmaxを、機関回転速度NEおよび燃料噴射量に基づき算出する。また、選択EGR率に基づいて補間係数Klim1を算出する。そして、関係式(Lrl=Lcl+[Lmax−Lcl]×Klim1)を満たすように、上限ガード値Lmaxと閉時上限ガード値Lclとを補間係数Klim1によって補間する態様で上限ガード値Lrlを設定する。
・閉時上限ガード値Lclや開時上限ガード値Lopを算出することなく、機関回転速度NE、燃料噴射量、およびEGR率(目標EGR率Tegrや実EGR率Regr)に基づいて、上限ガード値Lrlを算出することもできる。こうした装置は、機関回転速度NEと燃料噴射量とEGR率と上限ガード値Lrlとの関係を定めた演算マップや演算式を予め電子制御装置40に記憶させておくことによって実現することができる。
・上限ガード値Lrlの設定に用いる設定パラメータとして、目標EGR率Tegrや実EGR率Regrを採用することに代えて、EGR量を採用してもよい。このEGR量は、内燃機関10の気筒内に吸入される全ガス量から吸入空気量を減算することにより精度良く検出することができる。その他、内燃機関10の気筒内に吸入される全ガス量からEGR量を減算した量である吸入空気量や、同吸入空気量を全ガス量で除算した値(吸入空気量/全ガス量)である吸入空気率を、上記設定パラメータとして用いることもできる。
・上限ガード値Lrlの設定に用いる設定パラメータとして、EGR量の指標となる値(EGR量そのものや、目標EGR率Tegr、実EGR率Regr、吸入空気量、吸入空気率など)に加えて、機関回転速度NEの指標となる値(機関回転速度NEそのものや、単位時間当りの内燃機関の各行程の総数など)を採用することができる。こうした装置では、上限ガード値Lrlを、EGR量の指標値Aを機関回転速度NEの指標値Bによって除算した値(A/B)に基づき設定したり、EGR量の指標値Aに機関回転速度NEの指標値Bを乗算した値(A×B)に基づき設定したりすることができる。こうした装置によれば、機関回転速度NEに応じて異なる過給圧の変化速度に応じたかたちで上限ガード値を設定することが可能になるため、ターボ回転速度の過上昇をより的確に抑えることができる。
図11に、上記装置の一例として、EGR量を機関回転速度NEで除算した値(=EGR量/NE)に基づき上限ガード値Lを設定する装置における同値(EGR量/NE)と上限ガード値Lとの関係を示す。図11に示す装置では、上記値(EGR量/NE)が「0」であるときには、上限ガード値Lとして、EGR量が「0」になるときに適した値(閉時上限ガード値Lcl)が算出される。また、上記値(EGR量/NE)がその最大値であるときには、上限ガード値Lとして、EGR量および機関回転速度NEが共に最大になる状況に適した値(最大時上限ガード値Lm)が算出される。さらに、図11中に一点鎖線で示すように、上記値(EGR量/NE)が「0」および「最大値」のいずれでもないときには、同値(EGR量/NE)に基づき補間係数Klim2が算出されるとともに、同補間係数Klim2によって閉時上限ガード値Lclと最大時上限ガード値Lmとを補間した値が上限ガード値Lとして算出される。
・上記実施形態の制御装置は、タービンホイールを迂回して延びる迂回通路と同迂回通路に設けられたウェイストゲートバルブとを備えるタイプのターボチャージャにも、その構成を適宜変更したうえで適用することができる。この装置では、ウェイストゲートバルブが変更装置として機能する。ここで、EGR量が少ないときには、ターボチャージャを通過する排気の量が多いため、ターボ回転速度の過上昇を抑えるためには、EGR量が多いときと比較して過給圧が低い状態でウェイストゲートバルブが開弁されることが望ましい。これに対して、EGR量が多いときには、ターボチャージャを通過する排気の量が少ないために、比較的過給圧が高い状態でウェイストゲートバルブを開弁しても、ターボ回転速度の過上昇を抑えることが可能である。ウェイストゲートバルブが設けられるタイプのターボチャージャでは、過給圧が制限値以上になったときにウェイストゲートバルブが開弁される。こうしたターボチャージャにおいて、ターボ回転速度の過上昇を抑えるためには、上記制限値を、EGR量が少ないときほど過給圧が低い状態でウェイストゲートバルブが開弁されるように、EGR量に基づき設定すればよい。これにより、上述したEGR量と同EGR量に適したウェイストゲートバルブの開弁条件との関係を満たすように制限値を設定することができるため、この制限値をもとにウェイストゲートバルブの作動制御を実行することにより、EGRガスの導入態様に応じたかたちでターボ回転速度の過上昇を的確に抑えることができる。
10…内燃機関、11…吸気通路、12…インタークーラ、13…吸気絞り弁、14…排気通路、15…排気浄化装置、17…出力軸、20…ターボチャージャ、21…コンプレッサ、21A…コンプレッサホイール、22…タービン、22A…タービンホイール、23…可変ノズル機構(変更装置)、24…スクロール通路、25…環状通路(排気経路)、26…ノズルベーン、30…EGR装置(排気再循環装置)、31…EGR通路、32…EGR弁、40…電子制御装置、41…速度センサ、42…流量センサ、43…絞り弁開度センサ、44…EGR開度センサ、45…ノズル開度センサ、46…吸気圧センサ。

Claims (8)

  1. 排気通路内の排気を吸気通路に再循環させる排気再循環装置を備えた内燃機関に設けられて、過給量を変更可能な変更装置を備えた可変容量型ターボチャージャに適用され、前記過給量の最大量が所定量以下になる態様で前記変更装置の作動範囲を制限する制限値の範囲内にて前記変更装置を制御する可変容量型ターボチャージャの制御装置において、
    当該制御装置は、前記排気再循環装置による排気の再循環量が少ないときほど前記過給量の最大量が少なくなる態様で前記制限値を設定する
    ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャの制御装置。
  2. 請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャの制御装置において、
    前記変更装置は、タービンホイールに吹き付けられる排気が通過する排気経路に複数のノズルベーンを有する可変ノズル機構であり、
    前記制御装置は、
    前記制限値によって前記ノズルベーンの開度の閉じ側への変更を制限し、
    前記排気の再循環量が少ないときほど前記開度の制限の度合いが大きくなる態様で前記制限値を設定する
    ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャの制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の可変容量型ターボチャージャの制御装置において、
    当該制御装置は、前記排気の再循環量を前記内燃機関の気筒内に吸入される全ガス量で除算した値である排気再循環率に基づいて前記制限値を設定する
    ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャの制御装置。
  4. 請求項3に記載の可変容量型ターボチャージャの制御装置において、
    当該制御装置は、
    前記内燃機関の運転状態に基づき排気再循環率の制御目標値を算出するとともに同制御目標値に基づき前記排気再循環装置の作動制御を実行し、
    前記排気再循環率の制御目標値に基づき前記制限値を設定する
    ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャの制御装置。
  5. 請求項4に記載の可変容量型ターボチャージャの制御装置において、
    当該制御装置は、機関負荷および機関回転速度に基づき前記制御目標値を算出する
    ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャの制御装置。
  6. 請求項3に記載の可変容量型ターボチャージャの制御装置において、
    当該制御装置は、前記排気再循環率の実値を検出するとともに、同実値に基づき前記制限値を設定する
    ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャの制御装置。
  7. 請求項3に記載の可変容量型ターボチャージャの制御装置において、
    当該制御装置は、
    前記内燃機関の運転状態に基づき排気再循環率の制御目標値を算出するとともに同制御目標値に基づき前記排気再循環装置の作動制御を実行し、
    前記排気再循環率の実値を検出し、
    前記制御目標値および前記実値の小さいほうの値に基づいて前記制限値を設定する
    ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャの制御装置。
  8. 請求項6または7に記載の可変容量型ターボチャージャの制御装置において、
    当該制御装置は、前記内燃機関の気筒内に吸入される空気の圧力を検出する吸気圧センサと前記吸気通路を通過する空気の量を検出する流量センサとを備え、前記吸気圧センサおよび流量センサの検出値によって前記実値を検出する
    ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャの制御装置。
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