JP4325283B2 - 記録・再生媒体、並びに記録媒体の信号記録装置および信号記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の突起列からなるアドレス領域および信号記録領域を有する記録・再生媒体、並びにこのような記録・再生媒体の信号記録領域への書き込みを行うための信号記録装置および信号記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータの利用形態が、PC(パーソナルコンピュータ)を用いて大容量の映像や音声信号処理を頻繁に行うようになってきている。これに伴い、小型の高密度の不揮発性(電源を切っても記録情報が消失しない性質をいう。)のデータストレイジの記録密度の向上に対する要望が更に強くなってきている。従来のこの分野におけるデータストレイジとしては、ハードディスクが中心的な存在である。ハードディスクの現状と将来については、非特許文献1に段落番号0003に示すように以下のように記載されている。
【0003】
現在市販されているハードディスクは、横方向の磁化を利用した面内磁気記録方式であるが、将来、記録密度を向上させ得るとしても、熱エネルギーにより媒体に記録された磁化情報が徐々に消失する熱揺らぎ効果により、1平方インチ当たり150ギガビットの面記録密度が限界とされている。これを解決すべく、磁化が媒体の面内にある、面内磁化(ハードディスクならディスク面内、磁気テープならテープ面内)ではなく、磁化される方向が媒体の面の厚さ方向、つまり媒体面に垂直な、垂直磁化の方式の開発が進められている。しかしながら、現在、垂直磁化材料として研究されているものは、実用化へ最も近いと見られているCo Cr(コバルトクロム)合金を始めとした、限られた物質のみであり、磁気性能や安定性、コスト等、実用化へ向けての多様な要求には応えきれていない。
【0004】
一方、ハードディスクのようなメカニカルな構成を用いない記録媒体として、MRAM (Magnetic Random Access Memory ) が最近注目を集めている。MRAMでは:磁気コアの替わりにわずか数原子分という極めて薄い絶縁物の層を磁性体ではさんだTMR(Tunneling Magneto Resistive) 素子を使用する。TMR素子は、トンネル効果によって磁性体の層の磁化方向に依存する薄い絶縁物の層における電気抵抗の変化を利用するものである。MRAMも現在は、特許文献3等に記載されているようにその実用化が検討されている。
【0005】
ハードディスク、MRAM,RAM(Random Access Memory:この用語の本来の意味は、記憶場所や順序に関係なく同一時間でデータにアクセスできる記憶装置であるが、別の意味として書き込み可能メモリの意味にも伝統的に用いられている。以下においては、書き込み可能メモリの意味でRAMの用語を用いる。)媒体として、PCの内部で使用する場合には機能的な問題はそれほどない。しかし、データの長期保存を行う、いわゆるアーカイブ・メディア(保存専用の媒体)として多量のデータを保存するには不適当である。その理由としては、一度書き込んだら、データの消失が許されないというアーカイブ・メディアに要求される特質に対しては、ハードディスクやMRAMの有する機能の一つである容易に書き込み消去できることは、却って負の要因となるからである。
【0006】
アーカイブ・メディアの分野では、情報を記録媒体の物理構造の変化として記録する光ディスクが適しており、大容量のRAMまたはWORM(Write Once Read Many Media :一度書き込み可能媒体) が好適である。
【0007】
WORMは、媒体にユーザが信号を記録する前の未記録媒体においては、再生しても何らの意味ある情報が得られず、媒体は信号を記録する機能のみを有する記録媒体であり、記録後の記録済み媒体においては、既に信号が記録された領域においては、更に異なる信号の上書きをすることができず、その記録された信号を再生する機能のみを有する再生媒体であり、このWORMは、書き換えができない点において、証拠物件としての立証能力が高いこともアーカイブ・メディアに用いる場合の優位性がある。RAM光ディスクとしては、DVD−RAM(再書き込み可能のデジタル・バーサタイル・ディスク) が現在多用されている。また、WORM光ディスクとしては、CD−R( 一度書き込み可能のコンパクト・ディスク),DVD−R(一度書き込み可能のデジタル・バーサタイル・ディスク) が現在広く使われている。CD−Rでは、最短ピット長(3T長)が833nmで、トラックピッチは1.6μmであり、その容量は640MB(Mega Byte:10の6 乗バイト)である。記録密度は1平方インチ当たり0.5ギガビットである。DVD−RAM,DVD−Rでは、最短ピット長(3T長)が400nmで、トラックピッチは0.74μmであり、容量4.7GB(Giga Byte:10の9乗バイト)である。記録密度は1平方インチ当たり3.8ギガビットである。非特許文献2に光ディスクにおける主要な技術が網羅されており、本出願に記載の発明に関連するサーボ方式、信号変調方式について体系的に記載がなされている。
【0008】
これらのRAM光ディスク,WORM光ディスクの製造においては、原盤(スタンパ盤)を製造し、この原盤を用いてポリカーボネイトを射出成型して、アドレス領域をプリピットで設け、記録領域の光磁気膜あるいは層変化膜に信号を書き込む技術が一般的である。基板の製造においては、記録すべきアドレスや、記録時に案内溝となるグルーブを形成できるように変調を施したレーザビームを0.9以上のNA(Numerical Aperture)のレンズで収束して、ガラス基板上のフォトレジスト膜に照射してピットを露光して形成し、このピットを電鋳により金属表面に転写して製造するのが、一般的であり特許文献1に従来の技術の一例が開示されている。
【0009】
フォトレジストにレーザ光を照射するに際して、AOD(Acoustic Optical Deflector)を用いて案内溝を蛇行させる方法が特許文献6に記載されている。また、このようにして形成されるウォブルピットからトラックに追従するために必要とされるトラッキングエラーを検出する技術であるトラック・ウォブリング法が、非特許文献2に開示されている。
【0010】
従来の光ディスクのマスタリング技術でどの定度の微細加工ができるかについては、電子ビームを用いる方法が非特許文献4 に記載されており、トラックピッチ(信号が記録されたトラックとトラック間の距離)を0.29μmとすることができた旨が開示されている。
【0011】
更に、これらの記録再生原理とは異なる記録再生原理に基づく高密度データ記録再生方式が従来、種々開示されており、特許文献2には、突起を記録マークとして、この突起に流れるトンネル電流を検出することにより針状構造の有無を記録情報として利用する記録・再生方式と突起の作成をトンネル電流の作用により行うことが記載されている。特許文献4には、原子オーダの凹凸によって信号を記録する円盤状のディスク基板を回転させ、ディスク基板との距離をサーボ機構の作用により所定の距離に保ち、原子オーダーの凹凸の形状をトンネル電流により検出する再生装置が記載されている。
【0012】
一方、ナノ材料の分野では、1991年の非特許文献6に記載のカーボンナノチューブの発見以来、電子産業においてカーボンナノチューブの応用をしようとする学会、産業界の研究が活発となり、非特許文献3および非特許文献5にカーボンナノチューブの電子産業への応用例がまとめて紹介されている。特許文献5にはカーボンナノチューブの先端から電界放射を生じさせ、SPM(走査型プローブ顕微鏡)の探針として用いる技術が開示されている。
【0013】
特に、ナノチューブを規則正しく配向する技術としては、特許文献7乃至特許文献16に種々の技術が開示されており、規則正しく配向されるナノチューブの応用例として、FED(Field Emission Device )、例えば、画像表示装置に用いる例が開示されている。また、非特許文献7には、炭素構造体を二次元の壁状に形成するカーボンナノウォールが開示されている。
【0014】
【特許文献1】
特開2002−251795
【特許文献2】
特開平9−282724
【特許文献3】
特開2002−314164
【特許文献4】
特開平5−274725
【特許文献5】
特開2002−122529
【特許文献6】
特開2002−195106
【特許文献7】
特開2001−162600
【特許文献8】
特開2002−293523
【特許文献9】
特開2003−12312
【特許文献10】
特開2002−220300
【特許文献11】
特開2001−195972
【特許文献12】
特開平11−139815
【特許文献13】
特開2002−100280
【特許文献14】
特開2001−23506
【特許文献15】
米国特許6339281
【特許文献16】
米国特許6440761
【非特許文献1】
日経エレクトロニクス 平成14年9月23日号 PP67〜72
【非特許文献2】
光ディスク技術 ラジオ技術社 平成元年2月10日発行 ISBN4−8443−0198−5
【非特許文献3】
別冊日経サイエンス 「ここまで来たナノテク」 発行日2002年10月9日 発行 日経サイエンス社 発売 日本経済新聞社
【非特許文献4 】
Japanese Journal Of Applied Physics/1998年4 月/Vol.37 No.4B/P. 2137-2143「High Density Mastering Using Electron Beam」 Yoshiaki Kojima et al
【非特許文献5】
カーボンナノチューブ 株式会社情報機構 2002年4月26日 発行 ISBN4−901677−01−2
【非特許文献6】
S.Iijima Nature 354,56(1991)
【非特許文献7】
Yihong Wu NANO LETTERS 2002 Vol.2.No.4 355-359
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
将来、画像処理がPCにおいて、現在よりもさらに頻繁に行われるのは必至である。例えば、急速に普及するブロードバンド・インターネット時代においては、ネットワークの中に巨大な記録容量を有するデータストレイジが要求される。ここにおいて、このデータストレイジの容量は一台でその機能を果そうとすれば、巨大な記録容量を要求することとなり現実的ではない。そこで、記録データを長期に保存できる小型の記録媒体に一旦記録しておき、必要に応じて使用をすることが望ましい。この点、例えば、1枚当たり1TB(Tera Byte 10の12乗バイト)程度の記録容量を有する媒体に必要なデータを順次記録して、保存しておき、必要に応じて取り出し、再生専用の装置で必要なデータを読み出す使用方法が現実的なものとなる。
【0016】
より具体的には、小型の高速なデータストレイジを複数台用いてこれらの1TB程度に区切られた情報を編集して、ネットワークにアップロードする方式が非常に有効なものとなる。ここにおいて、1TB程度の容量の媒体が適しているのは、映像データとしてこれぐらいの単位で処理すれば、超高細精度の非圧縮の映像を数時間分記録するのに十分な容量だからである。しかしながら、従来の技術で1TB程度の記録容量を確保しようとするとDVDと同じ記録フォーマットを採用する場合においては、記録面の面積が200倍以上必要となる。そのため、記録媒体自体が大型化して、その取り扱いが困難となり、同時に、その媒体に対して記録・再生を行う装置も巨大化して現実的ではない。しかしながら、DVD程度のサイズで1TBの記録容量を確保する媒体は、未だ社会に提供されておらず、その出現が待ち望まれているものである。
【0017】
光ディスクの分野において、そのような媒体が存在しない理由は、記録密度はレーザ波長λとレンズのNAとにより原理的に定まるので、現在の400nm付近であるレーザの波長が1/10以下とならない限りそのような高密度を記録する記録方法自体が存在しないこと、また、電子ビームを使用してもトラックピッチが0.29μm程度しか実現できないことが挙げられる。更に、RAM光ディスクで採用されるスタンパーの凹凸に応じてポリカーボネイト等の樹脂を流し込み、樹脂を硬化させることにより複製基板を製作する大量生産の方法を用いる手法は、樹脂を流しこむ空間のサイズを従来よりも一桁以上微細な寸法にした場合においては、樹脂がうまく流れず、適用が困難となるからである。
【0018】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、従来にない、高密度な記録・再生媒体、並びに、そのような記録・再生媒体への信号記録を行う信号記録装置および信号記録方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の記録・再生媒体は、空間的に一列に、所定の幅を有し、かつ、所定の長さを有して配列された筒状炭素分子または壁状炭素分子からなる複数の突起を一または二以上の数の列について有し、複数の突起により、信号を記録するための信号記録領域と、前記信号記録領域の特定の位置を表すためのアドレス領域とを構成しているものであり、信号記録領域へは信号が未記録の状態であり、記録媒体として機能する。ここで、突起には、針状や壁状のものが含まれる。
【0020】
本発明の第2の記録・再生媒体は、空間的に一列に、所定の幅を有し、かつ、記録信号に応じて所定の長さを有して配列された筒状炭素分子または壁状炭素分子からなる複数の突起を一または二以上の数の列について有し、複数の突起により、信号を記録するための信号記録領域と、信号記録領域の特定の位置を表すためのアドレス領域とを構成し、前記信号記録領域においては、前記突起の一部または全部が記録信号に応じて消失しているものである。第2の記録・再生媒体は、信号記録領域に対して信号が記録の状態であり、再生媒体として機能する。
【0021】
また、本発明の信号記録装置は、本発明の第1の記録・再生媒体(記録媒体)の信号記録領域に信号を記録するためのものであって、記録・再生媒体のアドレス領域から信号を再生するための再生針および記録・再生媒体の信号記録領域に信号を記録するための記録針を含む複数の記録・再生針と、再生針からの再生信号に基づき記録・再生媒体のアドレスを検出するアドレス検出手段と、検出されたアドレスに基づき記録・再生針を記録・再生媒体の所定の位置に配置する記録・再生針配置手段と、記録・再生針と前記記録・再生媒体の表面との間の距離を所定の距離に維持する距離維持手段と、データ信号に応じて記録・再生針から記録・再生媒体の信号記録領域に電気特性の変化を生じる大きさの電流を流す電流印加手段とを備えた構成を有するものである。
【0022】
更に、本発明の信号記録方法は、本発明の第1の記録・再生媒体(記録媒体)の信号記録領域に信号を記録するための方法であって、記録・再生媒体のアドレスを検出するアドレス検出ステップと、検出されたアドレスに基づき記録・再生針を前記記録・再生媒体の所定の位置に配置する記録・再生針配置ステップと、記録・再生針と前記記録・再生媒体の表面との間の距離を所定の距離に維持する距離維持ステップと、データ信号に応じて記録・再生媒体の信号記録領域に前記記録・再生針から電流を流して信号記録を行う信号記録ステップとを含むものである。
【0023】
本発明の第1の記録・再生媒体では、複数の突起をカーボンナノチューブ等の筒状分子により構成することによって、従来にない高密度のデータ記録が可能になる。本発明の第2の記録・再生媒体は、第1の記録・再生媒体の信号記録領域にデータが高密度に記録されたものであり、高密度データの再生が可能となる。
【0024】
本発明の信号記録装置または信号記録方法では、再生針からの再生信号に基づき記録・再生媒体のアドレスが検出され、その検出されたアドレスに基づき記録・再生針が記録・再生媒体の所定の位置に配置されると共に、記録・再生針と記録・再生媒体の表面との間の距離が所定の距離に維持される。この状態で、データ信号に応じて、記録・再生針から記録・再生媒体の信号記録領域に電流が流される。従って、記録・再生媒体として本発明の第1の記録・再生媒体を適用することにより、信号記録領域を構成する突起等の一部または全部が消失され、これにより記録が行われて本発明の第2の記録・再生媒体を得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、具体的な実施の形態の説明に先立ち、本発明の概要を説明する。先ず、記録・再生媒体およびその製造方法について説明し、続いて、この記録・再生媒体に信号を記録するための信号記録装置および信号記録方法について説明する。
【0026】
〔記録・再生媒体〕
本発明に係る媒体の特徴は、ユーザが信号を記録する前の未記録媒体においては、再生しても何らの意味ある情報が得られず、信号を記録する機能のみを有する記録媒体であり、記録後の記録済み媒体においては、既に信号が記録された領域においては、更に異なる信号の上書きをすることができず、その記録された信号を再生する機能のみを有する再生媒体(すなわちWORM)である。なお、本明細書において、「記録・再生媒体」とは、記録機能および再生機能を有する媒体(記録媒体)と、再生機能のみを有する媒体(再生媒体)のいずれをも含むものである。
【0027】
(記録媒体)
本発明の記録・再生媒体は、少なくともアドレス領域と信号記録領域とを有するものであり、これら領域にさらにサーボ領域を付加することもできる。媒体の形状は、方形、円盤状を代表例とするが、その他の如何なる形状であってもよい。アドレス領域,信号記録領域およびサーボ領域は、針状の突起または壁状の突起(以下,両者を含めて突起と総称をする。)により形成されている。
【0028】
アドレス領域は、媒体上の位置を特定するための領域であり、予め定める所定のフォーマットで記録される。ここで、フォーマットとは、所定の変調方式、および所定のアドレスの指示方式により特定される信号記録の形式をいう。
【0029】
信号記録領域には、信号を記録する前の未記録媒体においては、その全面に渡って微細な突起が一様の構造で形成されている。突起は導体特性または半導体特性を有し、導電性特性を有する基板に形成される。基板は、突起と一体の部材として単一の材料で構成されるもののみならず、導体または半導体特性を有する突起の部材とは異なる材料であってもよく、突起が形成される導体または半導体の膜を保持するに十分な剛性を有する導体、半導体または絶縁体に積層する構造であってもよい。突起は、例えば、筒状炭素分子や壁状炭素分子により構成することができる。筒状炭素分子は、例えば、カーボンナノチューブであり、壁状炭素分子は、例えば、カーボンナノウォールである。
【0030】
サーボ領域は、上述のアドレス領域および信号記録領域を、後述する記録・再生針(記録および/または再生に用いる針を表す。以下,同じ。)で精確にトレースするという機能を発揮できるようにするための領域である。後述するウォブリング法、複数の再生針を用いる方法等を採用する場合においては、このサーボ領域は、信号の記録・再生において必須の領域ではないが、サーボ領域を設けることにより、記録・再生針を簡易な構造とすることができ、あるいは、サーボ系の構成を容易にすることができる。
【0031】
このような各領域を備えた記録媒体において、突起はトラックを形成する。ここで、トラックとは、突起が空間的に列状に配置された構造を言い、基板の表面に略垂直に形成される。隣接するトラックとの間隔をトラックピッチと定義する。突起で形成されるトラックとトラックの間には、空間が形成されるか、または、トラックを構成する材料とは電気的特性が異なる材料が配置される。トラックピッチが微小であればあるほど記録媒体に記録できる信号の記録容量は増加する。
【0032】
トラックの一形態は、アドレス領域、信号記録領域およびサーボ領域の各領域が一のトラック中に混在するものである。
【0033】
このトラックの別の形態としては、複数のトラックが組となって機能し、その中の一のトラック中に、アドレス領域およびサーボ領域が混在し、信号記録領域は、アドレス領域およびサーボ領域が設けられるトラックとは異なるトラックに設けられるものであってもよい。また、一のトラック中に、サーボ領域が設けられ、サーボ領域が設けられるトラックとは異なるトラックにアドレス領域と信号記録領域とが混在するものであってもよい。
【0034】
(再生媒体)
上述の記録媒体において、信号の記録は、記録する信号に応じて突起の一部の構造を変化させることにより行われる。記録方法については後述するが、記録済み媒体は、未記録の記録媒体とはその構造が異なるために、例えば、信号記録領域の構造の変化を電気信号として検出することにより、再生媒体として機能するようになる。構造変化は、例えば、信号記録領域の突起を信号に応じて、すべて蒸発消失させるものであっても良く、突起の一部を切断するものであってもよい。このような媒体は再び信号を記録する前の状態に戻すことができないために、再生専用の媒体となる。
【0035】
〔記録・再生媒体の製造方法〕
上述の微細な突起を有する記録媒体は次のようにして製造される。記録媒体を多量に生産するためには、一枚の記録媒体製造用原盤からの転写により、同一の構造を有する記録媒体を製造することが望ましい。従って、上記記録媒体の製造方法は、少なくとも先端に触媒を有する複数の突起を配置することにより、記録媒体製造用原盤を製造する記録媒体製造用原盤製造工程と、記録媒体製造用原盤を導体または半導体の特性を示す記録媒体原盤に密接または圧接させることにより、前記突起から触媒を前記記録媒体原盤に転写する触媒転写工程と、記録媒体原盤における触媒の転写面より複数の針状または壁状の構造体を成長させる構造体成長工程と、針状または壁状の構造体を後処理して媒体に信号を記録するのに好適な機能を生じさせるための後処理工程とを含むものである。
【0036】
〔信号記録装置および記録方法〕
【0037】
(信号記録装置)
本発明の信号記録装置では、記録媒体に信号を記録する際に、記録・再生針配置手段を用いて、記録・再生針を記録媒体の所定の位置に配置し、電流印加手段により記録・再生針と媒体の電極膜との間に突起を経由して電流を流し、そのジュ―ル熱により突起を焼き切ることにより行う。この場合において、突起の全部を蒸発消失させてもよいし、突起の一部を切断してもよい。突起の切断部がどのように配置されるかは、突起の切断が生じる位置を信号に対応させる方式(ポジション方式記録)であっても、切断のない突起の連続する長さを信号に対応させる方式(マーク長方式記録)のいずれであってもよい。よって、本発明の信号記録装置は、電流を所定の突起に流すための記録針を有する。
【0038】
信号記録においては、媒体のどの領域に信号を記録するかを定めないと、記録信号を正しく再生することができない。よって、記録・再生媒体では、信号を記録する場所を特定するためにアドレス領域が設けられており、本発明の信号記録装置では、このアドレス領域の信号を検出するために、再生針を含むアドレス検出手段を有している。
【0039】
記録・再生針配置手段は、複数の座標軸についての複数の位置制御手段から成る。トラックに沿って信号を所定の位置に記録するためには、トラックの上に正しく、記録・再生針を位置させることができなければならず、針配置手段、より具体的には、記録・再生針をトラックに沿って配置するためのトラッキング手段を有する。
【0040】
更に、記録・再生針と突起との間の距離が一定でないと、媒体の場所、時間に応じて、記録時においては記録条件が異なり、再生時においては再生信号の大きさが異なるという不具合がある。よって、記録媒体と記録・再生針との距離を所定の距離に維持する距離維持手段を有する。距離維持手段は、所定の圧力で記録・再生針を媒体に押し付ける押し付け手段であっても、または、記録・再生針と媒体表面との距離を所定の距離に維持するためのサーボ手段であってもよい。
【0041】
本発明の信号記録装置では、更に、記録・再生針の傾き角度制御手段を備えることができ、この傾き角度制御手段により、複数の記録・再生針を用いて複数のトラックへ同時に記録する場合において記録に用いられる針の相互の位置を適性なものとすることができる。
【0042】
(信号記録方法)
本発明の信号記録方法は、記録・再生媒体の所定の位置に記録・再生針を配置する記録・再生針の記録・再生針配置ステップと、記録・再生針から検出されるアドレス信号を読み取って所定のアドレスを特定するアドレス検出ステップと、読み取ったアドレスに対応する信号記録領域に対して記録するデータに応じた電流を流す信号記録ステップとを備えている。ここにおいて、記録・再生針配置ステップは、記録・再生針と記録・再生媒体との距離を所定の距離に維持する距離維持ステップと、記録・再生針を記録・再生媒体の所定の位置に配置する記録・再生針移動ステップとを備えるものである。更に、記録・再生針を所定の傾き角度に維持するための傾き角度制御ステップを備えることにより、複数の記録・再生針により複数のトラックに同時に信号を記録することができる。
【0043】
以下、具体的な実施の形態について説明する。
【0044】
〔第1の実施の形態〕(記録媒体)
以下、第1の実施の形態として、図1(A),(B)および図2を参照して本発明の記録・再生媒体の信号未記録状態における記録媒体について説明する。
【0045】
図1(A)はこの記録媒体10の構成を表すものである。記録媒体10は、石英基板11上にアルミニウム(Al)膜12を形成してなる複合基板の上にトラック0,1,2,…n,n+1,…(以下,総称してトラックTという)を有するものである。図1(B)はこのトラックTの断面構成を拡大したものであり、アルミニウム膜12に針状の多数の突起13が形成されている。突起13は、例えば円筒炭素分子の1種であるカーボンナノチューブ(CNT)により構成されている。突起13と突起13との間の空間には絶縁材料である酸化珪素(SiO2 )膜14が充填されている。突起13および酸化珪素膜14のアルミニウム膜12に接しない側の表面15は略平坦な面である。ここで、アルミニウム膜12を用いるのは導電性を有しながら、かつ、突起13としてのCNTを後述するCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長 )法により形成するに際して、触媒として作用することがないからである。
【0046】
図2は、多数の突起13がどのように配置されてトラックTを形成するのかを示したものである。この図は記録媒体10の表面15側から見た透視図であり、丸印はCNT(突起13)が配置された箇所を表している。複数のトラックTは、所定の距離(トラックピッチTp)だけ離間して互いに並行に設けられている。ここでは、サーボ領域SV、アドレス領域ADRおよび信号記録領域DATAの各領域が、一のトラックT中に所定の間隔で繰り返し形成されている。
【0047】
サーボ領域SVには、トラックTの中心を通過するトラックT中心線に対して、内週側および外周側にずれたウォブル状のピットが形成されている。なお、ここでは、ピットとは、CNTの1個で形成される針状突起の断面により形成される領域のことをいう。カーボンナノウォールの場合には連続するために物理的ピットは存在しないが、1ピット単位の長さは観念できるために、所定の1単位の長さをピットと称する。
【0048】
ウォブルピットのトラック中心からのずれ量は、CNTの直径またはトラックTに垂直方向への長さをDcとすると、例えばDc/2ずれている。このずれ量は、後述する記録・再生針の先端の形状に依存して定められる量である。記録密度向上およびCNTを基板上の所定の位置に成型する成形特性の面では、Dcの値は、0.4nm乃至100nm程度の範囲に選択することが望ましい。サーボ領域SVにおけるウォブルピット列SLのトラックT方向への長さは、長いほどトラックTからの離間に応じた電気信号(トラッキング誤差信号)のS/N(Signal to Noise Ratio )は良好となり、アドレス領域ADRについてもトラックT方向に長いほど信号読み取り時における読取誤り確率が低くなるが、データ領域DATAの領域が減少することにより、記録密度が低減する。従って、設計事項としては、これらの領域を妥当な長さに配分する必要がある。
【0049】
なお、このようなウォブルピットを用いてトラッキングサーボを行う手法は、光ディスクの領域では従来から用いられている。本実施の形態においても、原理的に同様な手法で媒体に対するトラッキングサーボを行うことができる。この点についての詳細な説明は省略するが、一の再生針でトラックセンター(トラックTの中心)から左側にずれたウォブルピットからの信号とトラックセンターから右側にずれたウォブルピットからの信号とを各々検出し、両方の信号の大きさが等しくなる場合、すなわち、トラッキング誤差信号が零となる場合に再生針がトラックセンターを通過していると判断をし、両方の信号の差に応じて再生針が移動するようアクチュエータを駆動することによって、常に再生針がトラックセンターを通過するようにすることができる。
【0050】
アドレス領域ADRは、トラック番号Tn , セクタ番号Sn により構成される。トラック番号Tn はトラックを特定するために順次トラックに付する番号を言い、セクタ番号Sn は、トラック中におけるデータの区切り(セクタ)に順次付される番号をいう。アドレスは、これらトラック番号Tnおよびセクタ番号Snを総称したものである。このアドレスは、所定の変調を施し所定のビット数のディジタル情報にした後にCNTの有り無しとして記録されている。アドレスの変調方式は、マーク長変調方式としては、例えば、EFM(Eight to Fourteen Modulation) 方式、ピットポジション方式としては、例えば、2−7方式が用いられる。図2は、マーク長方式の例を表したものである。マーク長(連続するピットの長さをいう。)の最短長は、CNTの直径に選ぶことができるが、例えば、EFM方式を用いる場合には、最小のマーク長は3ピットの長さ、すなわち、CNTの直径の3倍の長さとなり、最長のマーク長は11ピットの長さ、すなわち、CNTの直径の11倍の長さとなる。なお、複数のCNTの集合としてピットを定義することも、カーボンナノウォールの所定の長さを1ピットと定義することもできる。
【0051】
信号記録領域DATAには、信号記録前においては、CNTが列状に密集して配置されている。上述したサーボ領域SV、アドレス領域ADRおよび信号記録領域DATAのいずれについても、図2に示したようにCNTが1本ずつ並んでいることが必ずしも要求されず、複数本の束として、トラックに直交する方向にも複数本形成されていてもよい。しかしながら、記録容量を向上させる点からは、トラックピッチ(Tp)方向への記録密度を最も向上させることができるので、CNTを正しく一列に整列させることが望ましい。ここで、隣接するCNTとCNTとはファンデルワールス力によって、密着することなく最小の間隔であっても略0.35nm離間して配置される。そのため、電流はCNTの長手方向には流れるが、他のCNTを横断する方向、すなわち、CNTの長手方向と直交する方向へは流れない。このことは、後述するCNTを電流の熱で消失させる場合に、CNTを単位として消失が行われることを意味するものである。
【0052】
〔第2の実施の形態〕(他の記録媒体)
図3は、本発明の第2の実施の形態を表すものである。なお、以下の実施の形態においては、先に述べた実施の形態と同一構成部分については同一符号を付してその説明は省略する。
【0053】
本実施の形態に係る記録媒体20Aは、信号記録前の記録媒体の他の例であり、複数の信号領域のみのトラックに対して1個のアドレス領域が構成されている。図4はこの記録媒体20Aの一部分を拡大したトラック構成図であり、ここでは、例えば8個の信号領域トラック(トラック1〜8,n〜n+7,・・・)に対して1個のアドレス領域トラック(トラック0,9,n−1,n+8,・・・)が付加されている。信号領域トラックでは、多数のCNTが密接して連続的に形成されている。
【0054】
図4はアドレス領域トラックのフォーマットをも表している。本実施の形態では、アドレス領域トラックはセクタマークSMとアドレス領域ADRとからなる。セクタマークSMはセクタの先頭を示すマークでありセクタ毎に設けられる。セクタマークSMは検出が容易となるように、アドレス領域ADRの記録信号には存在しないアウトオブルール(Out of Rule)の信号が記録されており、セクタの先頭を容易に検出することが可能である。アドレス領域ADRには所定のトラック番号および当該トラック中におけるセクタ番号が記録されている。なお、ピットは、図5に示したように、複数本のCNTから成る群として形成してもよい。
【0055】
本実施の形態では、アドレス領域トラックにサーボ領域SVは設けられていないが、第1の実施の形態と同様にサーボ領域SVを設けることも可能である。しかし、本実施の形態ではウォブルピットを形成していないので、記録媒体の製造が、第1の実施の形態に比較してより容易となる。本実施の形態において、ウォブルピットを設けることなくどのようにサーボを行うかは後述する。セクタマークSMは、トラックに直交する線上に所定の間隔毎に配置されるが、各トラックにおけるセクタマークSMの先頭位置は、このトラックに直交する線上に一致して、その始点および終点のいずれか一方、または、両方が配置される。
【0056】
記録媒体の形状は方形のみではなく、図6に示したように円盤状であってもよい。この場合において、トラックの形状は、同心円状(Concentric)であっても、螺旋状(Spiral)であってもよい。記録媒体が円盤状である場合には、複数(M)本の信号記録領域トラックに対して1本のアドレス領域トラックが付加された状態で、1組の(M+1)本のトラックとして媒体の最内周より最外周または最外周より最内周へとトラックが形成される。
【0057】
〔第3の実施の形態〕(再生媒体)
次に、図7および図8を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第2の実施の形態に示した未記録状態の記録媒体20Aに信号を記録した後の再生媒体20Bに係るものである。信号記録領域DATAにおけるCNT(突起13)は記録信号に応じてその一部が切断部16において切断されている。図8において、白抜きの丸で示した部分が信号の記録が行われた領域、すなわち、CNTに切断箇所を有する領域である。
【0058】
〔第4の実施の形態〕(記録媒体の製造方法)
次に、第4の実施の形態として、前述の記録・再生媒体の製造方法について説明する。この方法は、記録媒体製造用原盤製造工程(図9乃至図13)、触媒転写工程(図14および図15)、構造体成長工程(図23(A),図23(B))、後処理工程(図23(C)乃至図24(A),(B),(C))を順に経て実現されるものである。
【0059】
(記録媒体製造用原盤製造工程−1)
本工程は、未記録原盤の表面に対して、記録する信号に応じて時系列でエネルギー強度が変化するエネルギービームを相対的に移動させながら照射する照射工程と、記録材料の表面を溶融して固体から液体に変化させる溶融工程と、溶融工程において溶融した部分から放熱をさせることにより突起を形成する突起形成工程とを有するものである。
【0060】
(照射工程)
まず、図9に沿って、照射工程に用いられる照射装置100について説明する。
【0061】
この照射装置100は、Y軸移動台101およびX軸移動台104を備えており、Y軸移動台101の上に方形形状の基板102が配置される。この基板102は、0.6mmの厚さの石英板の上に触媒金属,例えばFe膜が1μmの厚さに配置されたものである。触媒金属としては、その他、Ta(タンタル),W(タングステン),Pt(白金),V(バナジウム),Mn(マンガン),Co(コバルト),Ni(ニッケル)およびMo(モリブデン)からなる遷移金属の群のうちの1種や、さらにはその合金を用いることができる。
【0062】
X軸移動台104は転がり軸104a,104bを有し、略水平面である基準面Sの上をX軸方向に移動可能となっている。X軸移動力発生装置107は、移動台104をX軸方向に移動可能な力を発生させるものである。X軸移動力発生装置107は、X軸移動量検出・駆動部106が発生するX軸移動装置駆動信号106aにより駆動されるようになっている。X軸移動量検出・駆動部106はバスライン108に接続されている。X軸方向の移動量は、X軸移動台104に固着されたX軸位置検出装置105により検出され、そのX軸移動量信号105aがX軸移動量検出・駆動部106に入力されるようになっている。
【0063】
Y軸移動台101は転がり軸101a,101bを有し、Y軸移動台101に固着されたY軸移動力発生装置103によってY軸方向に移動可能となっている。Y軸移動力発生装置103はY軸移動量検出・駆動部116が発生するY軸移動装置駆動信号116aにより駆動されるようになっている。Y軸移動量検出・駆動部116はバスライン108に接続されている。Y軸移動台101のY軸方向の移動量は、Y軸移動台101に固着されたY軸位置検出機構(図示せず)により検出され、そのY軸移動量116aがY軸移動量検出・駆動部116に入力されるようになっている。
【0064】
バスライン108には制御部110が接続されており、この制御部110により装置全体を制御するようになっている。制御部110からはデータ信号110aが出力され、このデータ信号110aは変調部111によって変調がなされ記録信号111aとなる。変調方式は、例えばEFM(Eight to Fourteen Modulation)である。レーザ光発生部112は記録信号111aに応じて発光するレーザを備えており、このレーザは、波長と位相の揃った平行ビーム(以下,レーザビーム,エネルギービームともいう)112aを発生する。平行ビーム112aはAOD(Acoustic Optical Deflector)115を通過してレンズ(集光レンズ)113により集光され、そのビームスポットBSが基板102上に形成される。レーザ光発生部112は、基準面Sに対して固着されており平行ビーム112aと基準面Sとの位置関係は一定に保たれる。
【0065】
AOD変調器114は、制御部110から出力されるデータ信号110aを受けてAOD変調信号114aを発生する。AOD変調信号114aは、AOD115に入力され、レーザ光発生部112から出力された平行ビーム112aのレンズに対する入射角を変更する。すなわち、データ信号110aがウォブルピットを示す場合には、平行ビーム112aは、図10(A)または図10(B)に示したように、レンズ113に対して垂直に入射せず、斜め方向から入射するようにされるので、ビームスポットBSはレンズ113の中心を通過する線113aの直下に集光することとはならず、ずれたものとなる。ビームスポットBSを、図10(A)に示したように図面の面内で左方向へずらすか、図10(B)に示したように図面の面内で右方向へずらすかは、AOD変調器114に与えるAOD変調信号114aの極性による。これによりサーボ領域SVにおいて、トラック中心よりずらしたウォブルピットを形成することができる。ウォブルピットを形成しない場合には、AOD変調器114においてAOD変調信号114aを零として変調をしなければ、ビームスポットBSは変位されることがなく、トラック中心を通過する。
【0066】
レンズ113は図示しないフォーカス・アクチュエータによりZ軸方向に移動可能となっている。平行ビーム112aの基板102からの反射光の一部は、レーザ光発生部112に設けられたフォーカスエラー検出機構(図示せず)によりフォーカスエラー信号となり、Z軸方向のレンズ113と基板102との間の距離を検出する。フォーカスエラー信号をフォーカス・アクチュエータにフィードバックすることにより、ビームスポットBSは絞られる。フォーカスサーボは、アスティグマ法などの光ディスク製造における慣用技術により行われる。レーザ光を完全にオフとするとフォーカスサーボに影響を及ぼすような変調方式を採用する場合には、変調信号がオフを示すときにも完全にオフとはせずに、媒体の表面の温度上昇により表面の溶融が生じない程度の微量のレーザ光を発光させてフォーカスサーボを行うことが望ましい。
【0067】
次に、この照射装置100を用いたエネルギービームの照射工程について説明する。この照射装置100では、制御部110が装置全体を制御する。
【0068】
まず、X軸移動量検出装置105が、基板102におけるビームスポットBSのX方向の位置を検出しX軸移動信号105aを出力すると、このX軸移動信号105aはX軸移動量検出・駆動部106において電気信号に変換されたのち、バスライン108を通じて制御部110に送られる。X軸移動信号105aを受けた制御部110は、X軸移動量検出・駆動部106を介して、X軸移動装置駆動信号106aをX軸移動力発生装置107に対して出力する。X軸移動力発生装置107では、このX軸移動装置駆動信号106aを受けてX軸移動信号105aの値が所定の等速度運動を示すようにX軸移動台104をX軸方向に移動させる。
【0069】
このX軸方向へ移動するX軸移動台104上の基板102に対して、制御部110の制御によりレーザ光発生部112から記録信号111aに応じたビームスポットBSが照射される。そして、制御部110は、ビームスポットBSがX軸方向に所定の位置(記録領域の終点)まで移動すると、レーザ光の光量を弱くして、X軸移動力発生装置107を駆動させることにより、ビームスポットBSをX軸方向の記録始点まで再び移動させる。その後、Y軸移動力発生装置103によって、ビームスポットBSを、Y軸方向にトラックピッチに対応する所定の距離だけ移動して停止させる。このときのY軸方向の移動距離は、Y軸移動力発生装置103から出力されるY軸移動量信号103aにより検知される。上述の工程を繰り返すことにより、基板102上の所定の位置に、データ信号110aに応じて変調されたビームスポットBSを照射することができる。
【0070】
(溶融工程)
次に、上述のように照射されるレーザビームの作用(溶融工程)について説明する。均一な分布で位相と波長が揃った平行光であるレーザビーム112aを円状のレンズ113で集光すると、基板102の表面におけるビームスポットBSは、図11(A)に示したように円形となる。ここで、D1 はスポット直径である。ビームスポットBS内のエネルギー強度は、同図に示したように中心部ほど大きく、周辺部ほど小さくなり、裾野は大きく広がっている。
【0071】
一般的に、スポット径を表わす場合には、全ビームエネルギーの略84%が含まれる半径(Airy)ディスク半径を用いる。Airyディスク半径は0.61×λ(レーザ波長)÷NA(Numerical Aperture)で表される。例えば、Krレーザ(λ=351nm)とNA=0.9のレンズを用いれば、Airyディスク半径は略240nmである。なお、従来の基板製造方法においては、フォトリソグラフィを用いており、略Airyディスク半径の内側では感光反応が生じ、Airyディスク半径D0 は2倍(略480nm)以下にはトラックピッチを狭めることは困難であった。
【0072】
しかしながら、本実施の形態においては、上述のような溶融工程を有しているので、事情が異なり、更にトラックピッチを小さくすることができる。以下、この点につき説明する。
【0073】
図11(B)に示したD1 は、短パルスのレーザ発光を行ったときの、Airyディスク半径の2倍の値であるAiryディスク直径を示す。ここで、レーザ光が照射された部分では温度上昇が生じるが、Airyディスク半径内のすべての領域でFeの溶融が生じということではない。Feの溶融が起こる領域は直径D2 となる領域である。D2 の大きさは、記録材料ごとにレーザの出力を制御することにより決定される。ここで、レーザがオン状態を維持すれば、基板102とビームスポットBSが相対的に移動し、略D2 の幅を有しながら線状に溶融が進行する。
【0074】
(突起形成工程)
上述のように基板102上でFeが溶融し、その後、冷却過程を経て突起が形成される。図11および図12は基板102に突起が形成された後の斜断面構造を表すものである。以下にこのような構造が形成される過程を説明する。
【0075】
基板102とビームスポットBSが相対的に移動する場合、基板102の表面であってビームスポットBSの中心付近のFeはレーザのエネルギーにより溶融する。Feが溶融するとその体積は増加する。ビームスポットBSは基板102に対して移動するので、既照射部(ビームスポットが通過して現在は照射を受けていない部分、あるいは、照射のエネルギーの裾がかかっている部分をいう。)についての熱の移動を考えると、現在照射されている部分から拡散により熱の供給を受けるものの、既照射部からの拡散により放熱する熱の量が多くなる。そうすると、表面温度は下がり再び固体状態に戻る。このとき、周囲の体積が増加する部分に押され最後に固まる部分、すなわち、既照射部であってビームスポットの中心付近が通過した部分に突起が形成される。
【0076】
ここに、突起が形成される部分、すなわち、突起部とは、その先端(最も高さが高い部分を先端と定義する。)の高さHの1/10の高さの部分を含む領域をいうものとする。突起部の形状は、レーザ光がパルスである場合あるいは媒体とレーザとの相対運動が生じていないときは略円錐の形状となり、その先端ほど先細りとなる。図11(B)に示したD3 は、この突起部の断面の直径を表すものである。レーザ光が連続光である場合であって、基板102とレーザとの相対運動が生じている場合には、略D3 の幅を有する連続する突起部となる。突起部の先端の高さHの9/10の高さとなる部分の領域を先端部と定義すると、図11(B)に示したD4 は、このときの直径(レーザ光がパルスである場合)または幅(レーザ光が連続光である場合)を表すものである。本実施の形態では、D1 は480nm,D2 は100nm,D3 は20nm,D4 は3nmとなるように選択した。これらの値は、レーザビーム強度、媒体の各部の厚み等の構造、材料の種類に応じて任意に選択可能な量である。
【0077】
媒体が方形状である場合にはトラックの始点から終点まで、媒体が円盤状である場合には一回転するまで、照射を行うことによって、突起部を一列に形成することができる。二以上の列は、ビームスポットBSを既に形成された突起部の横を再び通過させることによって形成することができ、何列であっても1列に並ぶ複数の列を形成することができる。このとき、突起部が形成されている位置と現在溶融が生じている位置とが接するまでビームスポットBSが寄っても、このビームスポットBSが既に形成された突起部を破壊することはない。よって、形成可能な最小のトラックピッチの値は、図11(B)に示したように、D4 とD3 の和の半分の値となる。この値は、従来、光ディスクが達成している290μmより小さいものである。この方法によれば、トラックピッチは、従来の290μmより狭い250μmも可能であるのみならず、例えば、D2 を100nm、D3 を20nmとすると、トラックピッチは、60nmまで狭めることが可能となる。この60nmという値は、現在の最新の半導体のシリコンプロセスが65nmであることに照らせば驚異的な値である。
【0078】
D1 は、レーザ波長λとNAにより定めることができ、D2 ,D3 ,D4 は、パルス発光においてはレーザの照射時間とレーザのビーム強度、連続発光においてはレーザのビーム強度により、記録材料の特性を加味して定めうるものであり、例えば、D2 を13nm〜16μmの範囲、D3 を2nm〜3μmの範囲、D4 を0.4nm〜500nmの範囲に選ぶこともできる。この場合には、トラックピッチは、最小8nmまで微細化することができる。
【0079】
突起部の幅は、レーザビームの強度を弱くすれば、それに応じて小さくできるので、原理的な微細化の限界は原子1個の寸法であり、トラックピッチも原子1個の寸法まで微細化することが可能である。最微細化技術である電子線ビームを用いても、トラックピッチとしては従来は290nmが限界であったが、本実施の形態では、290nm以下も実現できる。後述する記録・再生針の製造の容易さの観点からは、トラックピッチは150nm程度が望ましいが、記録密度向上の面からは、100nm以下とすることが望ましく、より好適には60nm以下、最適には、20nm以下とすることが望ましい。
【0080】
上述のように、ビームスポットBSと基板102とを相対的に移動させながら、記録信号111aに応じてレーザ光発生部112におけるレーザ光のオン(照射)とオフ(停止)を行いつつ、基板102にビームスポットBSを照射する照射工程、基板102の表面(Fe膜)を溶融させる溶融工程、および冷却により突起部を生じさせる突起形成工程を繰り返すことにより、図12に示した記録媒体製造用原盤200Aを製造することができる。
【0081】
この記録媒体製造用原盤200Aの突起部203は、マーク長記録方式を用いた場合の構造であり、d1 ,d2 ,d3 …が記録情報に対応している。これに対して図13は、ポジション記録方式を用いた場合の突起部204の構造を示しており、同じくd1 ,d2 ,d3 …が記録情報に対応している。マーク長記録方式あるいはポジション記録方式のいずれの記録方式とするかは変調部111において選択することができる。
【0082】
本実施の形態では、突起部203の具体的な値は、例えば、高さHが略50nmで、突起部の遷移金属と接する根元部の幅Wwは略20nm(高さHが5nm以上の領域の幅)であり、先端部の幅Wnは略3nm(高さHが45nm以上の領域の幅)である。突起部の長さLは、EFM変調の場合、1Tの長さ(1チャンネルビットの長さ)を3nmに選択すると、最短の長さは9nm、最長の長さは33nmであり、突起部の長さは9nmから33nmの範囲で変化する。
【0083】
3nm長程度の1Tの突起部を精密に形成する場合には、連続発光ではなくパルス発光を用いることが望ましい。記録媒体上のビームスポットBSの移動速度によって定まる照射領域の移動時間が、レーザのパルス発光時間に比べて長ければ長いほど理想的なパルス発光に近似する。理想的なパルス発光に近づけることにより、3nmの直径の円状の突起部を形成できる。1T以上の長さの突起を形成する場合においては、レーザパルスを複数回に分けてオンするパルス発光を用いても、形成する突起部の長さに応じて連続してレーザをオンする連続発光を用いてもよい。
【0084】
1Tの長さをどの程度とするかは、記録信号111aの転送レート(時間当たりの記録信号の送出量)と記録媒体上のビームスポットBSの移動速度とにより定め得る値である。レーザの発光時間を短くすれば1Tの長さは、原理的には原子1個の寸法まで小さくすることができる。
【0085】
この突起部の先端が情報を媒介すれば、EFMの場合で、トラック方向の密度は従来のCD−ROMと比較すると、トラック方向への記録密度は833nm(3チャンネルビット)÷9nm(3チャンネルビット)≒92(倍)、トラックピッチは1.6μm÷60nm≒27(倍)であるので、記録密度は2468倍となる。容量は1平方インチ当たり980Gビットとなり、CD−ROMと同サイズの媒体を用いる場合の容量は1.57Tバイトとなる。
【0086】
ところで、上述の記録媒体製造用原盤200Aにおいては、突起部の先端の形状にばらつきが生じる場合もあり、先端の形状にばらつきがあると、均一な特性の媒体を製造することができない。次に、これを改善するために、先端の形状のばらつきを軽減する方法について説明する。
【0087】
この方法は、上述の照射工程、溶融工程および突起形成工程に加えて、更にコーティング工程と研磨工程とを有するものである。まず、コーティング工程は、突起部の間を触媒としての機能を有さない材料で埋めつくすものである。図14,図15を参照してコーティング工程を説明する。すなわち、SOG(Spin On Glass)法で、例えばSiO2 を原料とするコーティング材料を記録・再生媒体の表面に塗布してコーティング層205を形成する。このとき突起部203の先端は、コーティング層205より露出していても(図14)、コーティング層205に埋没していてもよい(図15)。このような工程を経ることにより記録媒体製造用原盤200B,200Cを得ることができる。
【0088】
研磨工程は、図14に示した記録媒体製造用原盤200Bの表面を研磨して、図16に示したような記録媒体製造用原盤200Dを得るものである。これにより、突起部203の先端およびコーティング層205の表面を平坦化することができる。この結果、突起部203の先端部の突起毎に生じる露出面の断面積の微妙なばらつきが除かれ、均一な先端寸法Wnを有する突起部203を備えた記録媒体製造用原盤200Dを得ることができる。なお、研磨工程としてはCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いることができる。
【0089】
(記録媒体製造用原盤製造工程−2)
図9乃至図13に示した上述の照射工程においては、レーザビーム112aをレンズ113によって収束させ、基板102の表面に単一のビームスポットBSを照射するものである。このため、溶融工程、突起形成工程を経て突起が形成された後に、横を通過するビームスポットBSにより突起部が破壊されないように、隣接するトラックを所定の距離だけ離間して形成する必要があり、そのためトラックピッチに制限が加わっている。このようなトラックピッチの制限を取り除く他の照射工程、溶融工程および突起形成工程の例を図17,図18を参照して説明する。
【0090】
本実施の形態においては、基板102上に複数のビームスポットBSを同時に集光し、複数の突起を同時に形成するものである。このために隣を通過する単一のビームスポットBSにより既に形成された突起が破壊されるようなことはなく、トラックピッチを更に小さくできる。
【0091】
図17はそのための記録媒体製造用原盤製造装置の要部構成を表すものである。なお、図9に示したものと同じ構成および作用を奏する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。レーザビーム112aは透過型の回折格子400を透過してレンズ401に至る。回折格子400とレンズ401との間に図9に示したAOD115を介してもよい。回折格子400により、0次光、+−m次光が発生する(mは整数)。発生するm次光の振幅Imは、次式1で表される。ここで、Dはデューティ(duty)比(=W2/(W1+W2)、φは位相深さ(=2 π*(n-1) *d/λ)、λはレーザ光の波長、nは回折格子材質の屈折率をそれぞれ示す。
【0092】
【数1】
Im=Sinc(π・m)+D(exp(i φ)-1 )・Sinc(D・m・π)
【0093】
m個のビームスポットBSの強度を等しくすることは、式1により、Dとφが満たす条件を求めることにより可能である。
【0094】
例えば、0 次、+−1 次光の振幅を等しくし、他の次数の光強度を零とする場合には、D=0.5,φ=2/3πに選べば、集光面における3つのビームスポットBSの強度を等しくすることができる。一方、集光面におけるビームスポットBS間の距離Lは、次式2で求められる。ここで、θは回折光のレンズ401に対する入射角度、NAは開口数、DLはレンズ401の直径である。
【0095】
【数2】
L=DL・(tan θ)/NA
【0096】
このように本実施の形態では、複数のビームスポットBSで一度に隣り合うトラックの突起を形成することができ、既に形成された突起の横を光スポットが通過することがないので、トラックピッチを10nmにすることも可能である。
【0097】
ビームスポットBSの集光面の移動方向と回折格子400の溝の方向とに角度φを設けることにより、図18に示したように、TnとTn−1 またはTnとTn+1 の距離であるトラックピッチTpをビームスポットBS間の距離Lより更に小さくすることができる。例えば、図18に示す角度φが30度である場合にあっては、トラックピッチTpはLの長さの半分となるので、Lが10nmであれば、Tpは5nmとすることが可能となる。
【0098】
図19は、このようにして形成される突起部の形状を表すものである。突起部の形状がトラック毎にトラック方向にずれているのは、ビームスポットBSの集光面の移動方向と回折格子400の溝の方向とに角度を設けたためである。9個のビームスポットBSで突起部を形成する場合においては、アドレス領域において9個のトラックに同一のアドレスが記録され、トラックピッチTp は各トラック間で同一となる。一方、他の9個のトラックとの間の距離は、Dt >Tp となる距離に設定され、Dt は隣接するトラックを通過するビームスポットBSが他の9個の突起部を破壊しない距離に設定される。
【0099】
(触媒転写工程−1)
続いて、図20および図21を参照して、上述のようにして得られた記録媒体製造用原盤を用いた触媒転写工程について説明する。以下では、記録媒体製造用原盤の例として、記録媒体製造用原盤200D(図16)により説明する。
【0100】
図20において、上述の記録媒体製造用原盤200Dには突起部203が設けられており、突起部203のコーティング層205と同一平面形成部分はFeの露出面である。完成された記録・再生媒体となる前の基板を「記録媒体原盤」と定義すると、記録媒体原盤300は、導電性を有する導電体または半導体の電極膜302と、これを保持する保持基板301とからなる複合基板である。電極膜302の選択においては、突起が成長するための触媒とならない材料である必要がある。ここで、記録媒体原盤300は、複合材料に限らず、全体が均一な導電性材料であって自ら形状を保てるようなものであってもよい。本実施の形態では、電極膜302として20μmの厚みのAl(アルミニウム)膜を用いるが、その他、例えばSi(シリコン)膜を用いることもできる。保持基板301としては例えば0.6mmの厚みの石英基板を用いることができる。なお、記録媒体製造用原盤としては、コーティング層205が塗布・形成される前の突起部203を有する記録媒体製造用原盤200A(図11)を用いてもよい。
【0101】
図20に示したように、記録媒体製造用原盤200A、または、記録媒体製造用原盤200D(以下、記録媒体製造用原盤200で代表する。)と、記録媒体原盤300とを所定の位置となるように対向させる。所定の位置とは、記録媒体製造用原盤200および記録媒体原盤300が方形状である場合には、記録媒体製造用原盤200および記録媒体原盤300の各々に設けられた2以上の基準点が一致するように対向する位置であり、また、記録媒体製造用原盤200および記録媒体原盤300が円形状である場合においては、両者の中心の位置が合うように対向する位置である。
【0102】
その位置関係を保ちつつ、図に破線で示したように記録媒体製造用原盤200と記録媒体原盤300とを密着あるいは圧着させる。そうすると、記録媒体製造用原盤200に設けられた突起部203の先端を構成する触媒となるFeは記録媒体原盤300側に移動する。この工程を雰囲気温度100℃乃至600℃の範囲で行うと、触媒はより容易に記録媒体原盤300側に移動する。突起部203は記録媒体製造用原盤200の全面に均一に配置されているのではなく記録信号に応じて選択的に配置されているので、記録媒体原盤300においても触媒は選択的に配置される。
【0103】
図21に沿って記録媒体原盤300が方形状である場合の触媒の配置について説明する。記録媒体製造用原盤200と記録媒体原盤300との密着あるいは圧着により、基板301の表面の電極膜302の上には、触媒303が転写されて配置されるものとなる。触媒303は突起部203の先端部と略同じ形状、すなわち略同じ幅、略同じ長さを有して、電極膜302の上に配置される。
【0104】
(触媒転写工程−2)
次に、図22を参照して触媒転写工程の他の実施の形態について説明する。本実施の形態では、記録媒体製造用原盤200の突起部203から記録媒体原盤300に対して、スパッタリングにより触媒(Fe)を転写し、配置するものである。すなわち、密閉容器410を導出口410aを介して真空ポンプ(図示せず)により真空にした後、導入口410aから真空中に不活性ガス(主にArガス)を導入しながら記録媒体原盤300と記録媒体製造用原盤200との間に直流電源411により直流高電圧を印加し、イオン化したArを記録媒体製造用原盤200に衝突させて、はじき飛ばされたターゲット物質(Fe)を記録媒体原盤300に成膜させるものである。このときFeは記録媒体製造用原盤200の突起部203のみから放射され、かつ最短の距離で記録媒体原盤300に到達するので、記録媒体製造用原盤200の突起部203の形状がそのまま記録媒体原盤300上にFeの配置として転写されることとなる。
【0105】
(突起成長工程)
続いて、図23および図24に沿って突起成長工程について説明する。突起成長工程は、触媒303の配置された位置より突起を成長させるものである。本実施の形態では、カーボンナノチューブ(CNT)を突起として用いる。触媒303の上にカーボンナノチューブを成長させるためには、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の従来知られている方法を用いることができるが、本実施の形態では、CH4 (メタン)を原料ガスとするCVD法を用いる。触媒303の領域の大きさ、すなわち、突起部203の先端の断面積の大きさにより、触媒303の表面に形成されるカーボンナノチューブの本数が定まる。触媒303の幅方向の長さ(トラックと垂直方向の長さ)を大きくすれば、複数本のカーボンナノチューブがトラックと垂直方向に並ぶので、ピットの幅を広くすることができる。触媒303の長手方向の長さ(トラック方向の長さ)を大きくすれば、複数本のカーボンナノチューブがトラック方向に並ぶので、ピットの長さを長くすることができる。
【0106】
本実施の形態では、記録密度を上げる目的で、触媒の幅は例えば3nmとする。この寸法であれば、直径が略3nmのカーボンナノチューブを一列に形成することが可能となり、トラック方向の記録密度を最大にすることができるからである。また、触媒303の長手方向の長さ(トラック方向の長さ)も突起部203の長さを選択することにより任意に定め得るものであるが、カーボンナノチューブの直径である3nmを1T(チャンネルピット)に選択すれば、トラック方向の記録密度を最も高いものとすることができる。カーボンナノチューブの直径は略0.4nmから略300nmの範囲で区々であるので、触媒の幅と原料ガスを選択することにより、他の寸法のカーボンナノチューブを成長させる選択も可能である。
【0107】
このような条件の下、CVD法を用いれば、図23(A)に示した状態から図23(B)に示したように、電極膜302から離れる方向にカーボンナノチューブ304が成長する。電極膜302と対向する図示しない電極との間に電圧を印加しながらこの工程を行うことにより、カーボンナノチューブ304の電極膜302に対する垂直度が向上することが知られている。ここで、通常、カーボンナノチューブ304の成長の長さは、図23(B)に示したように区々であるので、この長さを揃えるために以下の後処理(コーティング工程,平坦化工程)を施すことが望ましい。
【0108】
(後処理工程―コーティング工程)
本工程では、図23(C)に示したようにSOG(Spin On Glass )法を用いて、SiO2 等のコーティング材料でカーボンナノチューブ304を覆いコーティング層305を形成する。なお、ここではコーティング層305はカーボンナノチューブ304の全体を覆っているが、カーボンナノチューブ304の一部を覆うものであってもよい。
【0109】
(後処理工程―平坦化工程1)
CMP法により、コーティング層305およびカーボンナノチューブ304の表面を研磨すれば、図24(A)に示したように、表面が平坦で、カーボンナノチューブ304の長さが揃った記録・再生媒体600Aを得ることができる。このような再生媒体600Aではカーボンナノチューブ304の先端が露出している。このときのカーボンナノチューブ304の成長方向の長さは、設計的事項であり、突起成長工程の時間的長さ、平坦化工程1を行う時間的長さを管理するなどして、ある程度は任意に定め得るものである。なお、その長さは、記録部であることが明確に再生装置で認識されるためには、20nm以上であることが望ましく、成長したカーボンナノチューブ304の整列特性面よりは、200nm以下であることが望ましい。この記録・再生媒体600Aでは、カーボンナノチューブ304の表面が露出しているので、変位電流を検出する方式、トンネル電流を検出する方式のみならず、接触電流を検出する方式でも信号を再生することができる。
【0110】
(後処理工程―表面塗布工程)
更に、図24(B)に示したように、上述の再生媒体600Aの表面に例えばSiO2 からなる表面塗布膜(誘電体膜)306を塗布形成して記録・再生媒体600Bを得ることができる。このような記録・再生媒体600Bでは、変位電流検出方式あるいはトンネル電流検出方式により信号を好適に再生することができる。
【0111】
(後処理工程―平坦化工程2)
トンネル電流検出方式においては、表面塗布剤306の厚さを0.5nm〜1nmの範囲とする必要があるので、表面の凹凸は極力なくさなければならない。CMP法で再び研磨すると、図24(C)に示したように表面が平坦な記録・再生媒体600Cを得ることができる。このような記録・再生媒体600Cでは、変位電流検出方式あるいはトンネル電流検出方式により信号を好適に再生することができる。
【0112】
〔第5の実施の形態〕(信号記録装置)
(信号記録装置の構成)
図25は信号記録装置700全体の構成を表す概念図である。ここでは、見易いように一部の要素については拡大して示している。この信号記録装置700は、記録媒体のX軸方向への粗い移動を行うために用いるX軸粗移動手段と、Y軸方向への粗い移動を行うために用いるY軸粗移動手段とを備えると共に、記録・再生針715を備えた記録・再生針駆動部701、記録・再生針制御部702、装着確認装置703を主要な要素として構成されている。
【0113】
X軸粗移動手段は、X軸案内軸704、X軸移動軸705、X軸回転装置706、X軸回転軸支持板707およびX軸結合部708により構成されている。一方、Y軸粗移動手段は、X軸移動板709、Y軸案内軸710、Y軸移動軸711、Y軸回転装置712、Y軸回転軸支持板713およびY軸結合部714により構成されている。図中に示したX軸、Y軸、Z軸のうちX軸が媒体のトラッキング方向である。
【0114】
Y軸案内軸710は丸棒または角棒である。記録・再生針駆動部701には図25には図示しないが嵌合孔が設けられている。Y軸案内軸710はこの嵌合孔に対してY軸方向に滑動可能となるように嵌め合わされている。Y軸移動軸711はY軸結合部714を介してY軸回転装置712の回転軸に結合されている。Y軸回転装置712は回転軸を中心に正負の両方向に回転可能である。Y軸移動軸711は、表面に螺旋状のねじが形成された丸棒である。記録・再生針駆動部701は、Y軸案内軸710およびY軸移動軸711により保持されている。Y軸回転軸支持板713にはY軸案内軸710が固着されている。Y軸案内軸710の長手方向はY軸方向に伸びるようになっている。Y軸移動軸711は、Y軸回転軸支持板713に設けられた保持器(図示せず)により回転可能に保持されており、その長手方向(Y軸方向)に伸びるようになっている。このY軸移動軸711の回転に伴い、記録・再生針駆動部701がY軸方向に移動する。Y軸回転軸支持板713およびY軸回転装置712は、X軸移動板709の上に固着されており、X軸移動板709の移動に伴い移動する。
【0115】
X軸案内軸704は丸棒または角棒である。記録・再生針駆動部701には図示しないが上述する嵌合孔とは別の嵌合孔が設けられている。X軸案内軸704はX軸方向に滑動可能となるようにこの嵌合孔に嵌め合わされている。X軸移動軸705はX軸結合部714を介してX軸回転装置706の回転軸に結合されている。X軸回転装置706は回転軸を中心に正負の両方向に回転可能となっている。X軸移動軸705は、表面に螺旋状のねじが形成された丸棒である。X軸移動板709は、X軸案内軸704およびX軸移動軸705により保持されている。X軸案内軸704はX軸回転軸支持板707に固着されており、X軸案内軸704はその長手方向(X軸方向)に伸びるようになっている。X軸移動軸705は、X軸回転軸支持板707に設けられた保持器(図示せず)により回転可能に保持されており、X軸移動軸705の長手方向はX軸方向に伸びるようになっている。X軸移動軸705の回転に伴ない、X軸移動板709はX軸方向に移動する。X軸回転軸支持板707およびX軸回転装置706は、基準面となる装置筐体716に固着されている。
【0116】
装着確認装置703は、上述の図24(A)に示した記録・再生媒体600Aまたは図24(C)に示した記録・再生媒体600C(以下、記録・再生媒体600Aを代表例として説明する。)の装着状態を確認するためのものである。この装着確認装置703は、例えば光を記録・再生媒体600Aに照射して、その光の反射により記録・再生媒体600Aが、装置筐体716の上の所定の位置に装着されていることを検出する。
【0117】
記録・再生針制御部702は、各要素と以下の信号または電力のやり取りを行う。図25では、矢印の向く方向に信号または電力が伝達されることを示す。Y軸回転装置712は、例えば、Y軸移動軸711の回転角度を積算することにより、記録・再生針駆動部701すなわち記録・再生針715のY軸方向への粗い移動量を検出して、Y軸粗移動量検出信号712aを記録・再生針制御部702へ出力する。記録・再生針制御部702は、このY軸粗移動量検出信号712aを基にY軸移動制御信号702aを出力することにより、記録・再生針715をY軸方向へ粗く移動制御する。
【0118】
X軸回転装置706は、例えば、X軸移動軸705の回転角度を積算することにより、記録・再生針駆動部701すなわち記録・再生針715のX軸方向への粗い移動量を検出して、X軸粗移動量検出信号706aを記録・再生針制御部702へ出力する。記録・再生針制御部702は、このX軸粗移動量検出信号706aを基にX軸移動制御信号702fを出力することにより、記録・再生針715をX軸方向へ粗く移動制御する。
【0119】
記録・再生針制御部702から記録・再生針駆動部701へ出力されるY軸微量制御信号702cは、記録・再生針715のY軸方向への位置を微量制御するための信号、Z軸制御信号702dは、記録・再生針715のZ軸方向への位置を制御するための信号、X軸傾き制御信号702eは、X軸と記録・再生針715との傾き角を制御するための信号である。これらの信号を用いてどのように制御を行うかについては後述する。
【0120】
本実施の形態では、X軸方向への微量移動手段はY軸とは異なり設けられていない。装置の構成を工夫することにより省略が可能であるだからである。すなわち、X軸方向の記録・再生針駆動部701の移動は記録・再生信号の時間変化として現われるので、記録・再生針制御部702において、アドレス領域での再生信号からクロックを再生して、再生時においては、そのクロックに基づき記録・再生媒体600Aからの再生を行い、その結果をバッファメモリに一旦蓄え、その後、バッファメモリから基準となるクロックで読み出し、記録時においては、記録すべき信号を一旦バッファメモリに蓄え、アドレス領域からの再生信号からのクロックによりバッファメモリからの信号を記録・再生媒体600Aに記録するTBC(Time Base Correction)動作を行うことにより、X軸方向への微量移動の動作は省くことができる。ここにおいて再生信号からクロックを検出するための周知慣用の手段としてはPLL(Phase Locked loop)方式が用いられる。
【0121】
記録・再生針駆動部701から出力される再生信号701aは、記録・再生媒体600Aに予め記録されたサーボ領域またはアドレス領域における構造的な変化を電気信号に変換した後の信号である。記録・再生針715が複数の針の集合からなる場合には複数の再生信号が並列的に出力される。装着検出信号703aは装着確認装置703により出力され、記録・再生媒体600Aが正しく装着されたことを示す。記録データ信号702bは、記録・再生媒体600Aに記録すべき信号であり、記録・再生針制御部702から記録・再生針駆動部701に設けられた後述の記録・再生回路720(図27)に送られ、記録のための電流を発生する。複数の記録・再生針で同時に書き込む場合には、複数の記録データ信号702bが並列に複数本の信号線で記録・再生針制御部702から記録・再生回路720に伝送される。
【0122】
次に、図26(A)乃至図26(C)に沿って記録・再生針715の具体的な構造について説明する。なお、図中の記録・再生針715は、再生針715a、再生針715jおよび記録・再生針715b乃至715i の総称である。ここでの記録・再生は、記録および再生の両方を行うこと、または記録若しくは再生のいずれかを行うことを意味する。記録・再生針715における針の配置は記録・再生媒体の構造に応じて設けられるものであるが、以下の説明においては、記録・再生針715の構造は、図3および図4に示したような記録フォーマットを有する記録・再生媒体20に対応するものとして説明する。
【0123】
記録・再生針715には、複数の針715a乃至715jが所定の距離だけトラックと垂直の方向に離間して設けられている。すなわち、記録・再生針715b乃至715i については、トラックピッチ(Tp)の距離だけ離間されて設けられており、アドレス領域再生専用の再生針715aは、隣接する針715bより(Tp+Δ)の距離だけ離間されて配置されており、同様にアドレス領域再生専用の再生針715j は、隣接する715i より(Tp+Δ)の距離だけ離間されて配置されている。すべての針715a乃至715jは再生針保持板716に配置されており、複数の針715a乃至715jの各々からは電気的に結合される引き出し線1715a乃至1715j が設けられている。
【0124】
ここで、Δは突起の幅、および再生針の断面積により定められる値である。針715b乃至715iが、各々該当するトラックの中心を通過する場合において、針715aおよび針715j は、Δの量だけ各々該当するトラックの中心より離間して通過することとなる。Δの量は正であっても負であってもよい。記録・再生針715を構成する材料は、突起よりも融点温度が高い材料、例えば突起をカーボンナノチューブで構成する場合にあっては、カーボンナノチューブの融点温度の600℃に対して融点温度が例えば2622℃と高いモリブデン(Mo)が用いられる。
【0125】
引き出し線1715a乃至1715j もMoにより形成することができる。記録・再生針715a乃至715jを形成するに際しては、上述した記録媒体製造用原盤製造工程における、照射工程、溶融工程および突起形成工程を経て、微細な針を製造することができる。すなわち、Moで形成される引き出し線1715a乃至1715jの所定の位置にレーザ光を照射し、溶融して突起を形成することにより、この突起を記録・再生針とすることができる。また、この突起を例えばSiO2 からなる絶縁層716aで覆ったのち、CMP法で表面を研磨すれば、図26(B)に示したように針715a乃至715jの高さを均一なものとできる。
【0126】
更に、図26(C)に示したように、更に同じくSiO2 等の絶縁層716bで覆ったのちに表面をCMP法で研磨すれば、この絶縁層716bを介して媒体表面と記録・再生針715とが接するために、両者を安定して所定の間隔に保つことができる記録・再生針とすることもできる。
【0127】
次に、図27(A),図27(B)および図28を参照して、記録・再生針駆動部701の構成、並びに記録・再生針715が記録・再生針駆動部701にどのように設けられるかを説明する。
【0128】
図27(A)はZ軸とX軸を含む平面(以下,ZX面という。)における断面図であり、図27(B)はZ軸とY軸を含む平面(以下,ZY面という。)における断面図であり、図28はX軸とY軸を含む平面(以下,XY面という。)における、記録・再生針駆動部701を上面から見た図である。
【0129】
記録・再生針駆動部701において、Y軸案内ブロック717は剛性が高く熱膨脹率が小さい材料、例えば、アルミニウム(Al)のブロックである。Y軸案内ブロック717には2つの貫通する嵌合孔(Y軸案内軸孔718およびY軸移動軸孔719)が設けられている。Y軸案内軸孔718の内面は滑動可能となるように、例えば、無限習動ボールベアリングが設けられており、このY軸案内軸孔718にはY軸案内軸710が貫いて嵌着されている。Y軸移動軸孔719の内面には螺旋状の溝が設けられており、Y軸移動軸711が螺着されている。
【0130】
記録・再生回路720は、微小な信号を増幅するための増幅回路や、記録時に突起に電流を流すための回路等により構成されている。Z軸アクチュエータ721は記録・再生針715をZ軸方向に移動させるものであり、例えば、印加する電圧に応じて素子の厚みが変化する特性を有する圧電素子が用いられる。記録・再生回路720およびZ軸アクチュエータ721はY軸案内ブロック717に固着されている。
【0131】
Z軸アクチュエータ721には、Y軸微動アクチュエータ722が固着されている。Y軸微動アクチュエータ722は、Y軸方向に微小量、例えば、1μm程度の範囲で記録・再生針715をY軸方向に移動させるためのものであり、例えば、圧電素子が用いられる。Y軸微動アクチュエータ722には、X軸傾き制御第1アクチュエータ723およびX軸傾き制御第2アクチュエータ724が設けられている。X軸傾き制御第1アクチュエータ723およびX軸傾き制御第2アクチュエータ724はY軸方向に伸び縮みするものであり、X軸傾き制御第1アクチュエータ723とX軸傾き制御第2アクチュエータ724の伸び縮みの量を独立に制御してX軸に対する記録・再生針715の傾き角度を図28に破線で示したように変化させることができる。
【0132】
(記録装置の作用)
次に、上記構成の信号記録装置700の作用について説明をする。
【0133】
記録対象となる媒体は、前述のように、図24(A)に示した媒体600Aまたは図24(C)に示した記録・再生媒体600Cのいずれでもよいが、ここでは、記録・再生媒体600Aを代表例として説明する。まず、この記録・再生媒体600Aが装置筺体716の所定の位置に装着されると、装着確認装置703が装着検出信号703aを記録・再生針制御部702に送出する。記録・再生針制御部702は、その信号が所定の範囲にある場合には、記録・再生媒体600Aが正しく装着されていると判断する。
【0134】
記録動作は、記録・再生針715と記録・再生媒体600AとのZ軸方向の距離を所定距離に維持する距離維持ステップ、再生専用針715aおよび再生専用針715jをアドレストラックに配置するようにし、かつ記録・再生針715b乃至715i が記録トラックを正しくトレースするように維持するトラックキングステップ、記録・再生針715のトラックに対する傾き角度を適正に保つ傾き角度制御ステップ、アドレス領域からアドレス信号を検出するアドレス検出ステップ、および、所定のアドレス信号を得た後に記録領域に信号を書き込む信号書き込みステップからなっている。以下、これらの各ステップにおける動作を説明する。
【0135】
(アドレス検出ステップ)
アドレス信号の検出方法について以下に説明する。このアドレス信号の検出法は、記録領域に信号を記録した後において、アドレス信号のみならず、記録された信号を再生する場合にも用いることができるので、信号再生方法として各種の方法を説明する。
【0136】
記録・再生媒体600Aにおいては、以下に述べる変位電流検出法、パラメータ変化電流検出法、トンネル電流検出法および接触電流検出法のいずれの信号再生方法も採用することができる。一方、記録・再生媒体600Cにおいては、変位電流検出法、パラメータ変化電流検出法およびトンネル電流検出法を用いるのに好適であるが、接触電流検出法は採用することができない。
【0137】
〔変位電流検出法〕
図27(A)に示したように、記録・再生針715と対向する面の表面に誘電体膜(表面塗布膜)306を備えた記録・再生媒体600Cの場合、アドレス領域はカーボンナノチューブの有り無しとして予め記録される。誘電体膜306の厚さが、略1nm以上である場合には、後述するトンネル電流検出法を有効に用いることができる。しかし、誘電体膜306の厚さが、略1nm以上である場合、または、カーボンナノチューブ304の表面における電界強度が小さい場合には、後述するトンネル効果は生じないのでトンネル電流検出法は使用することができないが、パラメータ変化電流検出法を使用することはできるので有効な検出方法である。この場合においては、再生専用針715aおよび再生専用針715jの各々とカーボンナノチューブ304と誘電体膜306とはコンデンサとして作用する。また、カーボンナノチューブ304は導電体あるいは半導体として導電性を有する電極として働くものである。
【0138】
記録・再生媒体600Cの電極膜302と引出線1715a、または、電極膜302と引出線1715jの間の静電容量を検出すれば、カーボンナノチューブ304の存在部分の近くに再生専用針715aまたは再生専用針715jがある場合と、コーティング層305の存在部分の近くに再生専用針715aまたは再生専用針715jがある場合とでは、その静電容量が大きく異なることとなる。従って、この静電容量の変化を検出することによりアドレスの再生信号を検出することが可能となる。静電容量の変化を検出する方法の一つとして、電極膜302と引出線1715aまたは引出線1715jとの間に高周波の電力を印加して変位電流を検出する方法を用いることができる。この場合には、記録・再生回路720に高周波の電力を発生し、変位電流を検出する回路を設けることができる。ここで、高周波の電力の周波数は、記録信号の最短ピットに対応する周波数の数十倍となるように選択することが望ましい。その理由は、平均的に高周波信号の周期の1/2の時間のジッター(時間揺らぎ)として、記録信号検出誤差を生じ、解像度の低下をもたらすからである。
【0139】
変位電流の大きさは、次式3で表される。ここで、I d:変位電流、V:再生針保持板716と引出線1715aまたは引出線1715jとの間の電圧、Rn:再生専用針の抵抗、Rr:電流が流れるカーボンナノチューブの抵抗、Rc:接触抵抗、C:再生専用針715aまたは再生専用針715jとカーボンナノチューブ304と誘電体膜306とで形成される静電容量の大きさ、J:虚数単位、Ω:角周波数とする。
【0140】
【数3】
Id∝V/{(Rn+Rr+Rc)+1/jΩC}
【0141】
1/ΩC>Rn+Rr+Rcである場合には、変位電流Idは、略静電容量の大きさに比例することとなる。
【0142】
ここで、d:再生針と媒体との間の距離、ε:誘電体の誘電率、S:再生針と媒体との対向面積とすると、Cの大きさは次式4で表される。
【0143】
【数4】
C∝εS/d
【0144】
突起が存在する部分での上述の対向面積Sの値は、突起が存在しない部分での対向面積Sの値に比べて大きく、その結果、静電容量Cは大きくなる。従って、突起が存在する部分の変位電流は、突起が存在しない部分のそれに比べて大きなものとなるので、変位電流の変化により突起の有無を検出することができる。図29(A)に示した色々な再生針の位置に対応して、図29(B)に再生針715aの位置と、変位電流の関係および再生針715jの位置と変位電流の関係とを示す。
【0145】
(パラメータ変化電流検出法)
変位電流検出法は、高周波の電源を必要とするので、ノイズを回路系に対して与えるという好ましくない点がある。直流電源を用いて静電容量の変化を検出できればこの問題は解決する。次に、直流電源を用いて静電容量の変化を検出できる別の方法を説明する。Q:静電容量に保存される電荷、V:静電容量を構成する電極間の電圧(再生専用針715a または再生専用針715jと電極膜302との間の電圧である。)、C:静電容量とすると、次式5が成立する。
【0146】
【数5】
Q=C・V
【0147】
式5より静電容量Cに所定の電荷Qを保存し、静電容量Cの値が変化すると、次式6が成立する。
【0148】
【数6】
dV∝Q/dC
【0149】
ここで、Cはカーボンナノチューブ領域に再生針が突入する場合には時間とともに増加し、長いカーボンナノチューブの領域を通過中は略一定の値を取り、カーボンナノチューブ領域から抜け出す場合には時間とともに減少する時間関数である(以下,C(t)と記す。)。
【0150】
従って、カーボンナノチューブ領域に再生針が突入する場合には、静電容量に蓄えられる電荷は次式7で表される。
【0151】
【数7】
Q=∫Ip dt
【0152】
ここで、絶縁領域からカーボンナノチューブ領域に突入する場合には、初期の静電容量C(t)および初期の電荷Qも零と考えてよいので、式7に式5を代入すると次式8を得る。
【0153】
【数8】
C(t)・V(t)=∫Ip dt
【0154】
ここで、V(t)は最大Vまで増加する。また、1/{(Rn+Rc)・C}で表される時定数がC(t)の増加の割合に比べて十分小さいと考えられる範囲では、ほとんどV(t)=Vと考えてもよい。そうすると、式8は次式9で近似できる。
【0155】
【数9】
dC(t)/dt・V=Ip
【0156】
式9は、静電容量C(t)の時間変化に電流Ipが比例することを示している。従って、再生針がカーボンナノチューブ領域に突入する場合には、突起が存在する部分の上述の対向面積Sの値は段々大きくなり、C(t)の値も増加するので、式9に示すところにより電流Ipは正方向へ流れることになる。やがて、再生針がカーボンナノチューブ領域の真上にくると、突起の長さが再生針の断面積との比較で十分長い場合にはC(t)の値は一定に保たれ、式9に示すところにより電流Ipは流れなくなる。一方、再生針がカーボンナノチューブ領域から離れるにしたがってC(t)の値は減少するので、式9に示すところにより電流Ipは負の方向へ流れるようになる。従って、電流Ipを検出することにより突起の端を検出することができる。このような検出方法は、突起の端に情報を有するEFMのようなマーク長変調方式に好適である。
【0157】
ここで、電流Ipから突起の端を検出するための具体的な方法としては、電流Ipの値が所定の正のスライスレベルを横切るとき、および、電流Ipの値が所定の負のスライスレベルを横切るときを突起の端とする方法を用いることができる。突起の端を検出するための別の方法として、電流Ipの値が所定の正のスライスレベル以上、若しくは電流Ipの値が所定の負のスライスレベル以下であって、かつ、電流Ipを微分した信号が零をクロスする点を検出する方法を用いてもよい。
【0158】
〔トンネル電流検出法〕
別の信号再生方法として、記録・再生媒体と記録・再生針715との間隔が略1nm以下である場合には、トンネル効果を生じさせることができる。1nm以下の距離を維持するにはZ軸方向の距離をサーボにより行うことができるが、もっとも簡単には、記録・再生媒体と対向する面の表面に誘電体膜を備えることにより実現できる。記録・再生媒体600Cは誘電体膜306を備えているので、その誘電体膜の厚さを略1nm以下とすることにより、トンネル効果を生じさせることができる。
【0159】
従って、記録・再生針715とカーボンナノチューブ304との間に直流電圧を印加して10の7乗ボルト/m程度の電界を生じさせれば、記録・再生針715がカーボンナノチューブ304の存在部分の近くにある場合には、トンネル電流が流れ、記録・再生針715が誘電体膜306の存在部分の近くにある場合にはトンネル電流は流れない。このようなトンネル電流を検出する方法は、高周波の電力が不要であるという利点がある。また、再生信号もエンベロープ検波ではなく、直接に得ることができる。
【0160】
トンネル電流の大きさは、It:トンネル電流、V:引出線1715aまたは引出線1715jと電極膜302との間の電圧、φ:トンネル障壁、d:再生針と媒体との間の距離とすると、次式10で表される。
【0161】
【数10】
It∝Vexp(- φ1/2 d)
【0162】
なお、距離(d) が変化すると、トンネル電流Itは指数関数的に大きく変わるので、安定に信号を再生するためには、Z軸方向のサーボが効果的である。突起が再生針の近くにある場合には、距離(d)は小さいためトンネル電流Itは大きく、突起が再生針の近くに存在しない場合には、距離(d)は大きいためトンネル電流Itは小さくなり、トンネル電流Itの大小に基づき突起の有無を検出することができることとなる。
【0163】
〔接触電流検出法〕
記録・再生媒体600Aのようにカーボンナノチューブの表面を露出させると、記録・再生針715とカーボンナノチューブ304の先端とが接触するので、接触により流れる電流を検出することができる。この接触電流を検出する方式においては、高電界を発生させる電源や、高周波を発生させる電源が不要であるという利点がある。再生信号もエンベロープ検波ではなく、直接に得ることができる。ここで、接触電流の大きさは、カーボンナノチューブ304と記録・再生針715の先端との接触面積に比例する。
【0164】
接触電流の大きさIcは、V:再生針保持板716と電極膜302との間の電圧、Rn:再生針の抵抗、Rn:電流が流れる突起の抵抗、Rc:接触抵抗とすると、次式11で表される。
【0165】
【数11】
Ic=V/(Rn+Rr+Rc)
【0166】
Rc>Rn+Rrである場合には、接触電流Icは略接触抵抗に反比例することとなる。従って、突起と再生針が接触している部分では接触電流Icは大きくなり、突起がない部分では接触電流Icは小さくなるので、突起の有無を検出できることとなる。
【0167】
〔距離維持ステップ〕
上述の信号検出方式、すなわち、変位電流を検出する方式、トンネル電流を検出する方式、接触電流を検出する方式のいずれの方式においても、記録・再生針715と誘電体膜306あるいはカーボンナノチューブ304との距離を所定の値に維持しないと良質のアドレス信号を得ることができないので、装置としての性能向上が図れない。この目的のために、Z軸方向のサーボを用いることが望ましく、以下、距離維持ステップ、すなわち、Z軸サーボについて説明する。
【0168】
図30に沿って、記録・再生針715のZ軸方向への制御について説明する。記録・再生針715とカーボンナノチューブ304とは誘電体膜306を介してその両方の先端が対峙しており、カーボンナノチューブ304は導電性を有するので、記録・再生針715とカーボンナノチューブ304と誘電体膜306とは、静電容量を形成する。再生針保持板716と電極膜302との間に高周波電力を印加すると、上述のように変位電流が流れる。
【0169】
ここで、ここで、記録・再生針715の先端と記録・再生媒体との位置関係をZ軸アクチュエータ721の制御により、図30(A)乃至図30(C)に示したように変化させると、変位電流の大きさは図31(A)乃至図31(C)に示したように変化する。すなわち、図30(A)に示したように、記録・再生針715が誘電体膜306から離れている場合には、信号は図31(A)で示したように小さく、図30(B)に示したように記録・再生針715が誘電体膜306に接すると、信号は図31(B)で示したように大きくなる。また、図30(C)に示したように記録・再生針715が誘電体膜306に押し付けられると図31(B)で示したように更に大きくなるが、記録・再生針715の先端部が変形して却って再生信号の品質は劣化する。品質劣化の原因は、静電容量として関与する記録・再生針715とカーボンナノチューブ304との射影面積が記録・再生針715の先端部の変形により増加し、トンネル電流が記録・再生針715の先端部以外から流れ出すことによる。このような信号劣化は、接触電流検出方式、トンネル電流検出方式およびパラメータ変化電流検出法においても同様に発生する。この品質劣化の性質は、解像度の低下を生じさせるものであり、符号間干渉を発生させるものである。よって、図30(B)に示した位置関係で常に再生するのが望ましい。
【0170】
予め定めた所定の変位電流が流れるようにZ軸アクチュエータ721を制御して、記録・再生針715と誘電体膜306との位置関係を常に一定にすることができる。ここで、図30(A)乃至図30(C)に示したようにカーボンナノチューブ304が形成されている領域と、コーティング層305の領域とでは、変位電流の大きさが異なる。すなわち、カーボンナノチューブ304が形成されている領域では、大きな変位電流が流れ、コーティング層305の領域では変位電流はほとんど流れない。
【0171】
従って、Z軸アクチュエータ721を安定して動作させるためには、変調信号がDCフリーである場合においては、変位電流のエンベロープの大きさの平均値を検出し、変調信号がDCフリーでない場合においては、変位電流のピーク、すなわち、カーボンナノチューブ304が形成されている領域における変位電流をピークホールドして、そのピークホールド値を検出し、これらの値と予め定めるZ軸基準値との差を誤差信号としてZ軸アクチュエータ721にフィードバックすればよい。これによりピークホールド値が所定の基準値に一致するように制御することができる。
【0172】
このフィードバック制御の演算は、記録・再生針制御部702において行う。必要であれば、所定のゲインを掛けたZ軸制御信号702dをZ軸アクチュエータ721に印加することにより位相補償も行うことができる。ここで、予める定めるZ軸基準値は、図30(B)の位置における変位電流のエンベロープの大きさの平均値若しくは変位電流のピーク値である。他の電流検出方式、例えば、トンネル電流または接触電流を検出する方式においては、図31(E)に示したようにエンベロープ検波をせずに直接に電流の大きさを求めて、同様な発明の趣旨に基づき制御が可能である。パラメータ変化電流検出法においては、図31(F)に示した電流が流れるので同様に制御が可能である。
【0173】
また、図30(B)の状態を維持する他の簡易な方法としては、記録・再生針715のばね力を用いることもできる。記録・再生針715の先端を誘電体膜306に僅かに押し付けた状態で再生すれば、記録・再生媒体600Aの表面があまり変形を受けない場合には、記録・再生針715のばね力により、サーボを不要として、カーボンナノチューブ304の有するばね力により再生信号の振幅の変化を許容される範囲に留めながら再生信号を読み取ることもできる。この場合においては、図30(C)のような状態、すなわち、記録・再生針715が大きな変形を受けるに至ることがないようにすることが重要となる。
【0174】
(相対移動ステップ)
上述した距離維持ステップにより記録・再生針715と記録・再生媒体600Aとの距離がZ軸方向に関して所定の値に維持されたとしても、記録・再生針715と媒体との相対的位置関係の変化がなければ、アドレス領域の信号を読み出したり、信号記録領域に信号を記録することができない。以下、媒体をY軸方向(トラック方向)に移動変化するトラッキングステップについて説明する。
【0175】
記録・再生媒体600Aと記録・再生針715との相対位置関係を制御することにより、図32(A)または図32(B)のように走査して信号をトラック方向に順次読み取ることができる。以下、このような制御を行う方法について説明する。
【0176】
まず、図25において、記録・再生針制御部702は、X軸移動制御信号702fをX軸回転装置706へと送出する。このとき、記録・再生針制御部702では、X軸回転装置706からX軸回転位置検出信号706aを受け取ると、記録・再生針制御部702で発生する基準のクロックとX軸回転位置検出信号706aとの位相差に応じた信号をX軸移動制御信号702fとしてX軸回転装置706に送出し、位相制御が行なわれる。すなわち、基準のクロックとX軸回転位置検出信号706aとの位相差が一定に保たれるようにX軸回転装置706の回転制御が行なわれる。これにより記録・再生針715はX軸方向に所定の速度で移動することとなる。
【0177】
記録・再生針制御部702は、基準のクロックとX軸回転位置検出信号706aとの位相差を検出するだけではなく、制御系の最適化のための演算、例えば、位相補償をも行うものである。ここで、基準のクロックが時間的に一定の周期波である場合においては、X軸回転装置706と記録・再生媒体600Aとは一定の相対速度で移動する。
【0178】
(微トラッキングステップ)
更に、記録・再生針が正しくトラック上を通過しなければ、記録信号が所定の位置に書き込まれず、再生時において、信号の読み出しが不能となる。記録・再生媒体のトラックセンターと記録・再生針がずれている場合や、振動等の外乱により記録・再生針または記録・再生媒体との位置関係がずれる場合には、記録・再生針がトラックセンター上に設けられた突起を精確にトレースすることができないので、サーボを用いる必要がある。これを可能とするためには、記録・再生針と突起との離間距離を検出し、この離間距離に応じた信号をアクチュエータにフィードバックして自動的に記録・再生針が突起を追従するサーボ方式を採用すればよい。
【0179】
次に、図29(A),(B)乃至図33を参照してY軸方向へのサーボ制御の例を説明する。図29(A)は、再生針715aおよび再生針715jの記録・再生媒体600A上における先端の位置を表すものである。記録・再生針715において再生針715aおよび再生針715jはトラックピッチの距離よりも大きな値(Tp+Δ)の距離だけ隣接する記録・再生針715bおよび記録・再生針715iより各々離間して設けられる。再生針715aの位置をa−a(aの位置),b−a(bの位置),c−a(cの位置)で示し、再生針715jの位置をa−j(aの位置),b−j(bの位置),c−j(cの位置)で示した。再生針715aの位置と再生針715jの位置関係は一定に保たれるので、再生針715aがa−aの位置にあるときには、再生針715jの位置はa−jであり、再生針715aがb−aの位置にあるときには、再生針715jの位置はb−jであり、再生針715aがc−aの位置にあるときには、再生針715jの位置はc−jである。
【0180】
図29(B)に各位置に再生針715aおよび再生針715jが位置するときの変位電流の大きさを示した。ここで、各位置a,b,cにおける変位信号の大きさは、再生針715aまたは再生針715jと記録・再生媒体600Aの突起との重なり面積により異なる。
【0181】
図33はトラックからの離間距離に応じた信号(トラッキング誤差信号800)を検出するための手段を表すものである。記録・再生針715b乃至715i がトラックの真上に来る場合における再生針715aおよび再生針715jの位置はb−aおよびb−jである。この位置を検出するためには、再生信号エンベロープ検波器801および再生信号エンベロープ検波器802並びに低域濾波部803および低域濾波部804を用いる。再生針715aおよび再生針715jの検出信号のエンベロープを検波した後、高域成分を除去し、双方の再生針からの信号の差分を減算部805で検出することによりトラッキング誤差信号800を得る。ここにおいて、アドレス部の変調信号がDCフリーではない場合には低域濾波部803,804に代えてピークホールド部を設け、ピークホールド作用により信号のピーク値を保持するのが効果的である。
【0182】
図35に、図34に示したトラッキング誤差信号800と再生針715a および再生針715jの位置との関係を示した。この信号は、記録・再生針制御部702において位相補償等の演算を施された後にY軸微アクチュエータ722に入力されるサーボループを構成することにより再生針715aおよび再生針715jは常にbの位置を保つことができる。また、記録・再生針715b乃至記録・再生針715i からの信号は各々の記録・再生針毎に設けられる再生エンベロープ回路802において再生される。記録の場合においては、各々の記録・再生針に対して記録信号に応じた記録電流が記録・再生針715b乃至記録・再生針715iに流される。
【0183】
このようにして検出されたトラッキング誤差信号800に、記録・再生針制御部702に設けられる図示しない位相補償部やゲイン設定部において所定の位相補償を施し、かつ所定のゲイン係数を掛け合わせた信号をY軸アクチュエータ駆動信号702c(図25)としてY軸微動アクチュエータ722に印加することによって、記録・再生針715でトラック上を正しくトレースすることができる。このようなトラッキングサーボは、他の電流検出方式、例えばトンネル電流を検出する方式または接触電流を検出する方式またはパラメータ変化電流検出法においても同様な制御が可能である。
【0184】
(粗トラッキングステップ)
上述の微トラッキングステップのみでは媒体の全面におけるトラッキングを行うことができない。Y軸微動アクチュエータ722は狭い範囲しかトラッキングできないからである。そのため、所定の数のトラック数以上をY軸微動アクチュエータ722のみで追従すると定常偏差が大きくなり、また、可動範囲を逸脱して、トラックのセンターを追従することが不可能となってしまう。このような問題が生じるのを防止するために、本実施の形態では、Y軸方向への大きな変位を生じさせるY軸粗移動手段が採用される。
【0185】
Y軸粗移動手段は、前述のように、Y軸案内軸710、Y軸移動軸711、Y軸回転装置712、Y軸回転軸支持板713およびY軸結合部714により構成されている。Y軸回転装置712はY軸移動制御信号702aにより駆動される。Y軸移動制御信号702aは、Y軸制御信号702cを低域フィルタにより濾波して、低域信号のみを検出し、この低域信号に所定の位相補償を施し、所定のゲイン係数を掛け合わせたものである。低域フィルタの演算、位相補償の演算、ゲイン係数の掛け算は、記録・再生針制御部702で行なわれる。Y軸移動制御信号702aによりY軸回転装置712は回転する。Y軸回転装置712の回転は、Y軸結合部714を介してY軸移動軸711に伝わる。これにより記録・再生針駆動部701はY軸案内軸710にガイドされてY軸方向に動き、記録・再生針715の位置を外周方向あるいは内周方向へと移動させる。この移動機構は、サーボループを構成するので、Y軸移動制御信号702aが零となるように記録・再生針715の位置を制御する。
【0186】
(トラックジャンプステップ)
上述の微トラッキングステップおよび粗トラッキングステップにより記録・再生針715は正しくトラックを再生することができる。しかしながら、方形の記録媒体においては、媒体の記録部の端まで記録・再生針715が到達すると、図32(A)のような記録をされた媒体においては、Y軸方向に9トラック記録・再生針715をジャンプさせるとともにX方向については、トラックの他の端であるトラック始点まで記録・再生針715を移動させなければならない。また、図32(B)のような記録をされた媒体においては、Y軸方向に9トラック記録・再生針715をジャンプさせなければならない。
【0187】
トラックジャンプについては、トラッキング誤差信号800が一つトラックを横切る毎に零クロス点が2回発生するので、零クロスの回数を計測することにより、正しく所定の距離だけX軸方向に記録・再生針715をジャンプさせることができる。Y軸方向への移動については、X軸回転位置検出信号706aからの信号を検出することにより記録・再生針715をY軸上の所定の位置に移動させることができる。
【0188】
(X軸傾き制御ステップ)
記録・再生針715は複数の針715a 乃至715jを備えているので、記録・再生針715の全体がX軸方向に対して傾きが生じることがあり得る。このような場合においては、記録・再生針715a乃至記録・再生針715jの記録・再生する位置が空間的に正しい位置とすることはできない。しかし、8本の記録・再生針の位置を空間的に正しく位置させないと、8本の針に1ビットずつ記録を受け持たせ、同時に8ビットの記録・再生を行う動作をさせることが困難となる。そこで、X軸方向の傾きの制御が必要となる。
【0189】
続いて、図35(A)乃至図35(C)を参照してこのX軸方向の傾き制御について説明する。X軸方向の傾き制御にはX軸制御領域XSAを用いる。XSA領域は、他の領域から区別できる変調規則から外れた信号である。このような信号としては、例えば、EFM変調方式においては、規則からはずれた14Tの信号の繰り返し等が用いられる。図35(A)乃至図35(C)は、再生針715aおよび再生針715j からの信号を表している。図35(A)は、記録・再生針715のX軸に対する傾きが予定する適性なものである場合、図35(B)は、記録・再生針715のX軸に対する傾きが適性ではなく、図35において上側の針715aが時間的にτ1だけ先行している場合の信号をそれぞれ表している。図35(C)は、記録・再生針715のX軸に対する傾きが適性ではなく、図35において下側の針715jが時間的にτ2だけ先行している場合の信号を表している。
【0190】
τ1に対応する値の電気信号を、X軸傾き制御第1アクチュエータ723およびX軸傾き制御第2アクチュエータ724に逆極性で与えるフィードバック制御を行えば、X軸の傾き角が補正され、図35(A)の状態を維持することができる。τ2に対応する値の電気信号が発生する場合にも、同様に、X軸の傾き角が補正され、図35(A)の状態を維持することができる。なお、この場合、τ1とτ2とは極性が異なるので、傾き角度の補正は逆方向に行われる。
【0191】
図36は、このような制御を行う制御系のブロック図を表すものである。なお、図36は変位電流検出法を用いる場合について示したものであるが、他の信号検出方法においても同様な原理により略同様な構成を採用することができる。また、図36に示した構成は、図35に示した媒体の構成例に対応したものであり、再生針、記録針の数やその配置は、媒体の記録構造に応じて適宜代え得るものである。
【0192】
再生針715aは、図35に示したトラックn−1の略上をトレースする。再生針715jはトラックn+8の略上をトレースする。再生針715aと再生針715jとの間にトラックと直交方向に所定の距離だけ離間して設けられる記録針は、各々トラックn乃至トラックn+7の略上に配置される。再生信号エンベロープ検波部801Aは再生針715aからの信号のエンベロープを検出し、再生信号エンベロープ検波部801Bは、再生針715jからの信号のエンベロープを検出する。時間差検出回路806は、エンベロープ信号に基づき図35においてτ1、τ2で示す時間差の大きさを検出する。記録・再生針制御部702はX軸傾き制御第1アクチュエータ723およびX軸傾き制御第2アクチュエータ724を制御するための信号を発生する。具体的には、時間差検出回路806からの信号にゲイン係数を掛けたり、位相補償を行ったりする。極性器807は正極性で信号を印加するための極性器であり、極性器808は負極性で信号を印加するための極性器である。
【0193】
次に、この制御系の作用について説明する。ここで、図36に示した再生針715aと再生針715jがトラックと直交する線上に予め配置されているとする。再生針と記録針とを備えた記録・再生針のユニットがトラックに対して適切な傾きを有する場合には、図35(A)に示したようにXSA領域におけるエンベロープ信号の時間差はない。一方、再生針のユニットがトラックに対して不適切な傾きを有する場合には、τ1あるいはτ2のように時間差が生じる。この時間差に応じた信号をX軸傾き制御第1アクチュエータ723およびX軸傾き制御第2アクチュエータ724にフィードバックすることにより、時間差を零とすることができる。ここで、極性器807および極性器808を用いるのは、図28に示したようにX軸傾き制御第1アクチュエータ723およびX軸傾き制御第2アクチュエータ724を配置した場合には、記録・再生針を回転させる力が発生するからである。もし、再生針715aと再生針715jとが初期状態においてトラックと直交する線上からずれていたとすると、ずれに応じたオフセット信号を記録・再生針制御部702において印加すれば、すべての記録・再生針が正しくトラック上をトレースするようになる。
【0194】
(信号書き込みステップ)
次に、信号書き込みステップについて説明をする。信号書き込みステップは、記録・再生針715b乃至記録・再生針715i と突起の電気的特性および/または化学的な性質の違いを利用して行う。例えば、記録・再生針715b乃至記録・再生針715i を構成するMo(モリブデン)の特性は、融点2622℃であり、比抵抗は5.2(μΩ/ cm)である。一方、突起を構成するカーボンナノチューブの特性は、600℃付近で炭素が酸素と結合してCO2 またはCOとなり蒸発し、比抵抗は5.2(mΩ/ cm)である。
【0195】
このように特性が異なる材料に同じ単位面積当たりの電流を流すと、単位体積当たりに発生するジュール熱は、比抵抗の大きさに比例して大きなものとなる。従って、カーボンナノチューブ304の部分が、Moの部分に対して略1000倍発熱が大きくなる。この結果、カーボンナノチューブ304の部分はMo部分に対して非常に高温となる。ー方、融点に関して見れば、Moの融点は2622℃と高く、カーボンナノチューブ304が蒸発する温度では、未だ融点に達することはない。従って、Moとカーボンナノチューブ304が直列に接続されている場合においては、カーボンナノチューブ304が蒸発して切断され、その段階で電流の経路が断たれもはや電流が流れることがないので、Mo部の温度上昇はそれ以上生じることがなく、記録・再生針715b乃至記録・再生針715i は、損傷を受けることがない。この場合において、カーボンナノチューブ304は相互に少なくとも0.35nm以上離間しているので、切断部から隣のカーボンナノチューブ304に電流がバイパスして流れる事態は生じない。
【0196】
カーボンナノチューブ304を発熱させて、その電流路の一部または全部を蒸発させるための電流は、変位電流であっても、導電電流であっても、トンネル電流のいずれであってもよい。記録データ信号702bは、記録・再生回路720に送られ、記録信号信号702bに応じた変位電流または導電電流またはトンネル電流を発生させる。これにより、図7に示したようにカーボンナノチューブ304が一部切断され、または全部蒸発することにより、所定の信号が記録される。
【0197】
このように本実施の形態の信号記録装置および信号記録方法では、再生針から検出されるアドレス信号を読み取って所定のアドレスを特定すると共に、読み取ったアドレスに対応する信号記録領域に対して記録するデータに応じた電流を流すようにしたので、第1または第2の実施の形態に示した記録媒体に対して信号の記録を容易に行うことができる。また、記録・再生針を所定の傾き角度に維持することができるので、複数の記録・再生針により複数のトラックに同時に信号を記録することが可能になる。
【0198】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の記録・再生媒体によれば、筒状炭素分子または壁状炭素分子からなる複数の突起を一または二以上の数の列について有し、これら複数の突起により信号記録領域とアドレス領域とを構成するようにしたので、従来達成が困難であった大容量の記録媒体の提供が可能となる。
【0199】
また、本発明の信号記録装置または信号記録方法によれば、再生針からの再生信号に基づき記録・再生媒体のアドレスを検出し、その検出されたアドレスに基づき記録・再生針を記録・再生媒体の所定の位置に配置すると共に、記録・再生針と記録・再生媒体の表面との間の距離を所定の距離に維持し、この状態で、データ信号に応じて、記録・再生針から記録・再生媒体の信号記録領域に電流を流すようにしたので、本発明の記録・再生媒体に高密度で信号記録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る信号未記録状態の記録媒体の構成を表す斜視図(A)およびその一部の断面構成を拡大して表す図(B)である。
【図2】図1の記録媒体における突起のトラック上の配置状態を表す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る信号未記録状態の記録媒体の構成を表す斜視図である。
【図4】図3の記録媒体におけるトラックの構成図である。
【図5】図3の記録媒体におけるトラックの他の構成図である。
【図6】記録・再生媒体の形状およびトラック構成を説明するための図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る信号記録後の再生媒体の全体構成を表す斜視図(A)およびその一部の断面構成を拡大して表す図(B)である。
【図8】図7の再生媒体の信号記録状態を表す図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る記録媒体の製造工程に用いる記録媒体製造用原盤製造装置(照射装置)の構成図である。
【図10】データ信号がウォブルピットを示す場合のビームスポットBSの集光状態を説明するための図である。
【図11】図9に示した記録・再生媒体製造装置を用いた製造方法を説明するための図であり、(A)は溶融工程、(B)は突起形成工程を表すものである。
【図12】記録・再生媒体の一例を表す斜視図である。
【図13】記録・再生媒体の他の例を表す斜視図である。
【図14】記録・再生媒体の更に他の例を表す斜視図である。
【図15】記録・再生媒体の更に他の例を表す斜視図である。
【図16】記録・再生媒体の更に他の例を表す斜視図である。
【図17】記録媒体製造用原盤製造装置の他の構成例の要部を表す図である。
【図18】図17の製造装置により形成されるトラックの形成状態を説明するための図である。
【図19】図17の製造装置により形成される突起の形成状態を説明するための図である。
【図20】触媒転写工程を説明するための図である。
【図21】記録媒体原盤が方形状の場合の触媒配置状態を説明するための図である。
【図22】他の触媒転写工程を説明するための図である。
【図23】突起成長工程を説明するための図である。
【図24】突起成長の後のコーティング工程を説明するための図である。
【図25】第5の実施の形態に係る信号記録装置の構成を表す図である。
【図26】記録・再生針の構造を表す斜視図である。
【図27】記録・再生針駆動部の構成および作用を説明するための断面図である。
【図28】記録・再生針駆動部の構成および作用を説明するための平面図である。
【図29】記録・再生針の種々の位置と変位電流の関係を説明するための図である。
【図30】記録・再生針のZ軸方向の制御を説明するための図である。
【図31】記録・再生針のZ軸方向の制御を説明するための図である。
【図32】記録・再生針によるトラッキングについて説明するための図である。
【図33】トラッキング誤差信号を検出するための回路構成を表すブロック図である。
【図34】再生針の位置とトラッキング誤差信号との関係を表す図である。
【図35】傾き制御を説明するための図である。
【図36】傾き制御のための回路構成を表すブロック図である。
【符号の説明】
10…記録媒体、11…石英基板、12…アルミニウム(Al)膜、13…突起、20…記録・再生媒体、20A…記録媒体、20B…再生媒体、100…照射装置、101…Y軸移動台、101a,101b…転がり軸、102…基板、103…Y軸移動力発生装置、103a…Y軸移動量信号、104…X軸移動台、104a,104b…転がり軸、105…X軸位置検出装置、105a…X軸移動量信号、106…X軸移動量検出・駆動部、106a…X軸移動装置駆動信号、107…X軸移動力発生装置、108…バスライン、110…制御部、110a…データ信号、111…変調部、111a…記録信号、112…レーザ光発生部、112a…平行ビーム、113…レンズ、114…AOD変調器、114a…AOD変調信号、115…AOD(Acoustic Optical Deflector)、116…Y軸移動量検出・駆動部、116a…Y軸移動装置駆動信号、200…記録媒体製造用原盤、200A,200B,200C,200D…記録媒体製造用原盤、203…突起部、204…突起部、205…コーティング層、300…記録媒体原盤、301…保持基板、302…レンズ、302…回折格子、302…電極膜、303…触媒、304…カーボンナノチューブ、305…コーティング層、306…表面塗布膜(誘電体膜)、400…回折格子、401…レンズ、410…密閉容器、410a…導出口、411…電源、600A…記録・再生媒体、600B…記録・再生媒体、600C…記録・再生媒体、700…信号記録装置、701…記録・再生針駆動部、701a…再生信号、702…記録・再生制御部、702a…Y軸移動制御信号、702b…記録データ信号、702c…Y軸微量制御信号、702c…Y軸制御信号、702c…Y軸アクチュエータ駆動信号、702d…Z軸制御信号、702e…X軸傾き制御信号、702f…X軸移動制御信号、703…装着確認装置、703a…装着検出信号、704…X軸案内軸、705…X軸移動軸、706…X軸回転装置、706a…X軸回転位置検出信号、707…X軸回転軸支持板、708…X軸結合部、709…X軸移動板、710…Y軸案内軸、711…Y軸移動軸、712…Y軸回転装置、712a…Y軸粗移動量検出信号、713…Y軸回転軸支持板、714…Y軸結合部、715…記録・再生針、715a,715j…再生針、715b乃至715i …記録・再生針、716…装置筐体、716a…絶縁層、716b…絶縁層、717…Y軸案内ブロック、718…Y軸案内軸孔、719…Y軸移動軸孔、720…記録・再生回路、721…Z軸アクチュエータ、722…Y軸微動アクチュエータ、723…X軸傾き制御第1アクチュエータ、724…X軸傾き制御第2アクチュエータ、800…トラッキング誤差信号、801…再生信号エンベロープ検波器、802…再生信号エンベロープ検波器、803…低域濾波部、804…低域濾波部、805…減算部、806…時間差検出回路、807,808…極性器
Claims (15)
- 空間的に一列に、所定の幅を有し、かつ、所定の長さを有して配列された筒状炭素分子または壁状炭素分子からなる複数の突起を一または二以上の数の列について有し、
前記複数の突起により、信号を記録するための信号記録領域と、前記信号記録領域の特定の位置を表すためのアドレス領域とを構成している
記録・再生媒体。 - 空間的に一列に、所定の幅を有し、かつ、記録信号に応じて所定の長さを有して配列された筒状炭素分子または壁状炭素分子からなる複数の突起を一または二以上の数の列について有し、
前記複数の突起により、信号を記録するための信号記録領域と、前記信号記録領域の特定の位置を表すためのアドレス領域とを構成し、前記信号記録領域においては、前記突起の一部または全部が記録信号に応じて消失している
記録・再生媒体。 - 前記複数の突起は、保持基板と電極膜とからなる複合基板の前記電極膜に接して形成されている、請求項1または2に記載の記録・再生媒体。
- 前記複数の突起は、前記複合基板の前記電極膜に転写された触媒金属を用いて成長したものである、請求項3に記載の記録・再生媒体。
- 前記触媒金属は、Ta(タンタル),W(タングステン),Pt(白金),V(バナジウム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル)およびMo(モリブデン)からなる遷移金属の群のうちの少なくとも1種、またはその合金である、請求項4に記載の記録・再生媒体。
- 前記突起からなる複数の列の間の距離(トラックピッチ)が原子1個の直径以上であり、かつ290nm以下である、請求項1または2に記載の記録・再生媒体。
- 前記複数の突起は、絶縁材料からなるコーティング層により埋め込まれている、請求項3に記載の記録・再生媒体。
- 前記複数の突起の先端と前記コーティング層の表面が同一面となるよう平坦化されており、その平坦化面の上に誘電体膜を備えた、請求項7に記載の記録・再生媒体。
- 前記信号記録領域の突起は、電流を流すことにより発熱して少なくとも一部が蒸発消失する、請求項1に記載の記録・再生媒体。
- 少なくとも信号記録領域およびアドレス領域を有する記録・再生媒体の、前記信号記録領域に信号を記録するための信号記録装置であって、
前記記録・再生媒体のアドレス領域から信号を再生するための再生針および前記記録・再生媒体の信号記録領域に信号を記録するための記録針を含む複数の記録・再生針と、
前記再生針からの再生信号に基づき前記記録・再生媒体のアドレスを検出するアドレス検出手段と、
前記検出されたアドレスに基づき前記記録・再生針を前記記録・再生媒体の所定の位置に配置する記録・再生針配置手段と、
前記記録・再生針と前記記録・再生媒体の表面との間の距離を所定の距離に維持する距離維持手段と、
データ信号に応じて前記記録・再生針から前記記録・再生媒体の信号記録領域に電気特性の変化を生じる大きさの電流を流す電流印加手段とを備え、
前記記録・再生媒体は、空間的に一列に、所定の幅を有し、かつ、所定の長さを有して配列された筒状炭素分子または壁状炭素分子からなる複数の突起を一または二以上の数の列について有し、前記複数の突起により、信号を記録するための信号記録領域と、前記信号記録領域の特定の位置を表すためのアドレス領域とを構成している
信号記録装置。 - 前記距離維持手段は、前記記録・再生針がばね力を有するものであり、前記記録・再生媒体に所定の圧力で押し付けるものである、請求項10記載の信号記録装置。
- 前記記録・再生針を複数個有すると共に、前記複数の記録・再生針を所定の傾き角度に維持する傾き角度制御手段を備え、前記複数の記録・再生針を用いて同時に前記信号記録領域への記録を行う、請求項11記載の信号記録装置。
- 少なくとも信号記録領域およびアドレス領域を有する記録・再生媒体の、前記信号記録領域に信号を記録するための信号記録方法であって、
前記記録・再生媒体のアドレスを検出するアドレス検出ステップと、
前記検出されたアドレスに基づき記録・再生針を前記記録・再生媒体の所定の位置に配置する記録・再生針配置ステップと、
前記記録・再生針と前記記録・再生媒体の表面との間の距離を所定の距離に維持する距離維持ステップと、
データ信号に応じて前記記録・再生媒体の信号記録領域に前記記録・再生針から電流を流して信号記録を行う信号記録ステップとを含み、
前記記録・再生媒体は、空間的に一列に、所定の幅を有し、かつ、所定の長さを有して配列された筒状炭素分子または壁状炭素分子からなる複数の突起を一または二以上の数の列について有し、前記複数の突起により、信号を記録するための信号記録領域と、前記信号記録領域の特定の位置を表すためのアドレス領域とを構成している
信号記録方法。 - 前記複数の記録・再生針を所定の傾き角度に維持する傾き角度制御ステップを更に備える、請求項13記載の信号記録方法。
- 前記信号記録ステップにおいては、複数の記録・再生針によって複数のトラックの前記信号記録領域への記録を同時に行う、請求項13記載の信号記録方法。
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