JP4325054B2 - ガス濃度検出装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、被検出ガス中の特定成分の濃度を検出するためのガス濃度センサを備えるガス濃度検出装置に係り、例えば排ガス中のNOx濃度に対応する微弱な電流信号等を出力するガス濃度センサを用いたガス濃度検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば車両用エンジンからの排ガスを原因とする大気汚染は現代社会に深刻な問題を引き起こしており、排ガス中の公害物質に対する浄化基準法規が年々厳しくなってきている。そのため、ガソリン若しくはディーゼルエンジンに対する燃焼制御や触媒コンバータを利用し、排ガス中の公害物質を低減するための検討が進められている。米国においては、OBD−II(On Board Diagnostic −II)規制にて排ガス浄化用の触媒が適切であるかどうか判定する機能を要求している。
【0003】
これに対し、触媒の上流側及び下流側に2つのO2 センサを設けてこの2つのO2 センサの検出結果を取り込む、いわゆる2O2 センサモニタシステムが導入されているが、この方法は公害物質の直接的な検出方法ではない。そのため、排ガス中の成分から公害物質が事実低減されたか否かといった、その正確な検出・判定が困難であった。
【0004】
仮に排ガス中のNOx濃度を直接検出することで燃焼制御モニタ、触媒モニタ等が可能となれば、排ガス中の公害物質の低減がより正確で効果的なものとなる。すなわち、排ガス中のNOx濃度の知見により燃料噴射やEGR率などがフィードバック制御できれば、エンジンから排出される公害成分を低減することができる。また、NOx濃度を検出するためのNOxセンサを排ガス浄化用の触媒コンバータよりも下流側に設けることにより、当該コンバータに担持された触媒の劣化を容易に判定することも可能となる。
【0005】
このような背景から、排ガス中のNOx濃度を精度良く検出することのできるNOxセンサを提供すると共に、同NOxセンサを車両用エンジンに搭載する技術が望まれている。
【0006】
また、NOx濃度の検出と同時に排ガス中の酸素濃度が検出できれば、空燃比フィードバック制御システムにも効果を発揮することができる。つまり、近年の車両用エンジンの空燃比制御においては、例えば制御精度を高める要望やリーンバーン化への要望があり、これらの要望に対応すべくエンジンに吸入される混合気の空燃比(排ガス中の酸素濃度)を広域に且つリニアに検出するセンサ及び装置も望まれている。
【0007】
こうしたガス濃度センサにおいて、その検出精度を維持するには同センサを活性状態に保つことが不可欠である。一般にはセンサに付設したヒータを通電制御することにより、当該センサの素子部を加熱してセンサ活性状態を維持するようにしている。
【0008】
例えば排ガス中の酸素濃度とNOx濃度とを同時に検出できるガス濃度センサとしては、2セル構造又は3セル構造等の、いわゆる複合型ガスセンサが知られている。一例として2セル構造のガス濃度センサは、酸素濃度を検出するためのポンプセルと、NOx濃度を検出するためのセンサセルとを有し、これら各セルがヒータの加熱により所定の活性状態で保持されるようになっている。
【0009】
図26は、マイコンを使用したガス濃度センサ(NOxセンサ)の回路構成を示す。図26において、ガス濃度センサ100は、ポンプセル110とセンサセル120とヒータ103とを備える。センサ制御回路710は、マイコン700からの指令信号に従いポンプセル110及びセンサセル120への印加電圧を制御しつつ、その電圧印加に伴って各セル110,120に流れる電流信号を検出する。そして、当該電流信号を電圧値に変換してA/F出力又はNOx出力として外部装置に出力する。
【0010】
ヒータ103にはバッテリ電源(+B)が接続され、トランジスタ720のON/OFFによりバッテリ電源(+B)からヒータ103への電力供給が制御される。つまり、マイコン700は、ガス濃度センサ100の温度情報(素子温やヒータ温等)に基づいて、パルス幅変調(PWM)によるデューティ比信号でトランジスタ720の駆動を制御して素子温(セル110,120の温度)を所望の温度に保持する。このとき、素子温の変化速度を考慮して、数Hz〜数10Hz程度の周期でPWM制御を行うこととしていた。
【0011】
因みに、ヒータ103の端子間電圧はヒータ電圧検出回路730により検出され、A/Dコンバータ740を通してマイコン700に取り込まれる。また、ヒータ電流はヒータ電流検出回路750により検出され、A/Dコンバータ760を通してマイコン700に取り込まれる。そして、ヒータ電圧及びヒータ電流の検出結果に基づいて、ヒータ断線等を診断するフェイル制御やヒータの電力制御が実施される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来装置では、ヒータ通電がPWM制御される際、ヒータON(通電)時とヒータOFF(非通電)時とでNOx出力が不用意に変動してしまい、安定したNOx出力が得られないという問題が発生する。
【0013】
かかる問題を図27を用いて説明する。図27では、NOx濃度が一定であるにも拘わらず、本来一定であるはずのNOx出力電圧がヒータのON/OFFに伴い変動してしまう。その結果、NOx出力電圧に基づいてNOx濃度を検出する際、その検出精度が低下する。
【0014】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、ヒータ制御時におけるガス濃度検出精度の低下を抑制し、ガス濃度を適正に検出することができるガス濃度検出装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のガス濃度検出装置はその前提として、被検出ガス中の特定成分の濃度に応じたガス濃度信号を出力するセンサ素子と、センサ素子付近の絶縁層に埋設され、当該センサ素子を加熱するヒータとを備えたガス濃度センサを用いる。
【0016】
上記構成のガス濃度検出装置では既述の通り、ガス濃度が一定であるにも拘わらずヒータのON/OFFに伴い出力電圧が変動してしまい、ガス濃度の検出精度が低下する。この問題は、センサ素子とヒータとが比較的近い位置に配設される、例えば積層型センサにて多く見られ、それは以下の理由によるものと考えられる。
【0017】
すなわち、図20のようにガス濃度センサを等価的に示す場合、センサ素子10とヒータ20との間には抵抗30とコンデンサ40とが存在すると考えられる。抵抗30は絶縁層(アルミナ等)の絶縁抵抗である。この場合、センサ素子10が高温になると絶縁抵抗が低下し、絶縁抵抗の低下に伴い、ヒータ20のON/OFF時に微弱な電流がセンサ素子10にリークする。リーク電流が発生すると、ヒータ20のON/OFF各々においてNOx出力が変動する。特にNOx濃度の検出信号等、微弱な電流信号をセンサ出力とする場合にはその影響度が大きいと言える。
【0018】
また、絶縁抵抗(図20の抵抗30の抵抗値)が一定ならば、電圧が大きいほどリーク電流が増加する。そのため、図21に示されるように、ヒータのON/OFFに伴う電圧変化が大きいとNOx出力変動が大きく、ヒータのON/OFFに伴う電圧変化が小さいとNOx出力変動が小さくなる。
【0023】
ところで、電圧変化量を約2V以下に制限する場合について説明する。なお、純粋なアルミナの800〜1000℃において、絶縁抵抗は20〜100MΩ程度であるが、ヒータとセンサ素子との間の絶縁抵抗は多少の不純物があるため、実際にはもう少し低く1〜20MΩ程度である。以下には、絶縁抵抗6MΩ時のリーク電流がセンサ出力に及ぼす影響について説明する。
【0024】
図22(a),(b)に示すヒータ制御回路の簡易構成において、ヒータ20は一端がバッテリ電源+Bに接続され(+B=14V)、他端がトランジスタ等のスイッチ素子50でON/OFFされる。センサ素子10には電圧印加に伴いセンサ電流が流れると共に、絶縁層を介してヒータ20よりリーク電流が流れる。図22(a)のようにトランジスタOFF時には、ヒータ20に加わる電圧はヒータ両端とも14V固定であり、ヒータ端子間電圧は0Vなのでヒータ20は発熱しない。このとき、センサ面とヒータ面とが構造的に平行であればセンサ素子全面が14Vの影響を受け、その相当分だけヒータOFF時にリーク電流が流れると考えられる。
【0025】
一方、図22(b)のようにトランジスタON時には、ヒータ20に加わる電圧は一端が14V、他端が0Vであり、ヒータ端子間電圧は14Vなのでヒータ20が発熱する。ヒータ電圧は場所によって0〜14Vに直線的に変化するが、例えばヒータの幅、厚さ、抵抗率が一定の場合、ヒータ両端子間の中央部分は7Vとなる。このとき、センサ素子10が7Vの影響を受け、その相当分だけヒータON時にリーク電流が流れると考えられる。よって、ヒータON時とOFF時とを比較すれば、その電圧差は7Vとなり、「リーク電流=電圧/絶縁抵抗」であるから、
リーク電流=7V/6MΩ
≒1.2μA
となる。
【0026】
例えばNOx濃度1000ppmの時のセンサ出力電流が4μAであるセンサの場合、ダイナミックレンジ1000ppmに対して30%(=1.2μA/4μA)の誤差が発生し、センサ出力は約300ppm分の影響をリーク電流にて受ける。従って、センサ出力の誤差を例えば5%未満にする場合、ヒータの電圧変化を約2V以下とすればよいこととなる。なお、要求精度が厳しいならばヒータの電圧変化を一層小さくし、要求精度が緩ければヒータの電圧変化を大きくしても良い。
【0027】
また、ヒータ制御手段として一般的な定電圧回路であるドロッパ方式の電源を用いると、トランジスタの発熱の問題が生じ、回路の小型化が困難となる。これは、ヒータの抵抗値が数Ωと低いために大きい電流を制御しなければならないことに起因する。なお、ドロッパ方式の電源とは、制御したい電圧を得るのに電源電圧と制御電圧との差を抵抗によって制御する電源であり、一般的にトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電流を制御することにより実現している。+14Vを5Vに制御する電源で負荷電流2Aの場合、(14−5)×2A=18Wがトランジスタの消費電力となり熱として捨てられる。
【0033】
一方、既存の装置では、例えばガス濃度変化の周波数と同じ領域の周波数(排ガス温の変動を考慮に入れて数Hz〜数10Hz程度の周波数)でヒータ通電がON/OFF制御される。またこの場合、既述の通りヒータのON/OFFに応じてセンサ出力が変動する。
【0041】
ところで、ガス濃度検出装置として例えば図23の回路構成を考える。この回路では、ヒータ20の一端にバッテリ電源(+B)が接続され、他端にスイッチ素子50が接続されている。すなわち、スイッチ素子50がGND側に配置されている。また、例えば車載用のガス濃度検出装置では片電源(+B=14V)であり、センサ素子10の基準電圧を2V、印加電圧をVrefとしている。この場合、センサ出力はマイコンのA/D等を介してマイクロコンピュータに取り込まれるため、0〜5V程度の信号であると考えられる。
【0042】
この図23の構成では、(a)に示すようにスイッチ素子50のOFF時(ヒータOFF時)には、ヒータ電圧はどこでも同じ14Vとなる。一方、(b)に示すようにスイッチ素子50のON時(ヒータON時)には、ヒータ電圧は0〜14Vの範囲で分布する。つまり、センサ素子10側の回路では電圧が0〜5V程度で変化するのに対し、ヒータ20側の回路では電圧が0〜+B(14V)の範囲で変化する。以上のことから、特にヒータOFF時には、センサ素子10側の回路とヒータ10側の回路との電圧差が大きく、リーク電流の影響も大きいと考えられる。
【0043】
そこで、こうしたリーク電流の影響を抑えるべく、ヒータ20側での電圧の変化範囲とセンサ素子10側での電圧の変化範囲との差を少なくする。つまり、センサとの電位差ができるだけ少なくすれば、リークの影響を小さくすることができる。
【0045】
請求項1に記載に発明では、ヒータは、パルス幅変調信号により通電が制御され、ヒータの一端を電源電圧に接続し、他端を接地するヒータの通電回路を備え、ヒータと電源電圧との間、ヒータと接地側との間、の両方にスイッチ手段を配置して、両スイッチ手段を同時に操作してヒータの通電をオン/オフ制御する。実際には、図25に示すように、スイッチ素子52,53を+B側及びGND側に配置し、各スイッチ素子52,53を同時にON/OFFさせる。この場合、スイッチ素子52,53のOFF時にヒータ両端がオープン状態となるため、やはりリーク電流の影響が低減できる。
【0050】
センサ出力は、ヒータの通電時又は非通電時のデータをサンプルホールド回路等の保持手段で一旦保持した後、外部に出力されると良い。本請求項2の発明は、外部に出力されるタイミングが通電時又は非通電時の何れか一方の時に限られるため、ガス濃度センサの細かい挙動には対応しにくくなるが、構成は簡単となる利点がある。但し、ヒータ制御の周波数を大きくするなどして、サンプリング数を増やせば細かい挙動にも対応できる。
【0051】
また、請求項2に記載の発明では、パルス幅変調信号によりヒータの通電を制御する際、センサ素子の温度による絶縁層の抵抗変化に基づいて算出されるリーク電流の大きさを推定し、該推定したリーク電流の相当分だけガス濃度信号を補正する。
【0052】
絶縁層の抵抗変化に伴うリーク電流は、例えばヒータの電源電圧やセンサ素子の温度によって大小変化する。そのため、上記の通りリーク電流の影響度合を推定し、該推定したリーク電流の相当分だけガス濃度信号を補正することで、正確なガス濃度信号が得られる。その結果、ヒータ制御時におけるガス濃度検出精度の低下を抑制し、ガス濃度を適正に検出することができる。
【0054】
請求項3に記載の通り、ガス濃度センサが第1セル及び第2セル等の複数のセルとヒータとから構成される場合、第2セルにて計測されるガス濃度信号が微弱電流となり、リーク電流の影響を受け易くなるが、上記請求項1または請求項2に記載の発明を適宜用いることで、こうした微弱なガス濃度信号であっても精度良く検出できる。なお、例えばエンジンによる排ガス中の酸素濃度とNOx濃度とを検出するガス濃度センサでは、第1セルにて酸素濃度が検出され、第2セルにてNOx濃度が検出される。
【0055】
また、請求項4に記載の通り、ガス濃度センサが特定のガス濃度に応じた起電力を発生するセルを有する場合であっても、上記請求項1〜3に記載の発明を適宜用いることで、センサ出力におけるリーク電流の影響を抑制することができ、ガス濃度の検出精度が向上する。
【0057】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態におけるガス濃度検出装置は、自動車用ガソリンエンジンに適用されるものであって、同エンジンの空燃比制御システムにおいてはガス濃度検出装置による検出結果に基づいてエンジンへの燃料噴射量を所望の空燃比(A/F)でフィードバック制御する。特に本実施の形態では、排ガス中の酸素(O2 )濃度とNOx濃度とを同時に検出可能な、いわゆる複合型ガスセンサを用い、同センサからガス濃度情報を取得することとしている。
【0058】
つまり本実施の形態の装置では、検出した酸素濃度により空燃比がフィードバック制御される一方、検出したNOx濃度によりエンジン排気管に取り付けられたNOx触媒(例えばNOx吸蔵還元型触媒)の制御が実施される。NOx触媒の制御について略述すれば、NOx触媒にて浄化されずに排出されるNOx量をガス濃度センサの検出結果から判定し、NOx未浄化量が増大した時に、NOx浄化能力を回復させるための再生処理を実行する。再生処理としては、NOx触媒に対して一時的にリッチガスを供給し、同触媒に吸着したイオンを除去するようにすればよい。
【0059】
本実施の形態におけるガス濃度検出装置の概要を図1のブロック図を用いて説明する。ガス濃度センサ100は、2セル構造を有するいわゆる複合型ガスセンサとして構成され、酸素濃度を検出するためのポンプセル110と、NOx濃度を検出するためのセンサセル120と、バッテリ電源からの給電により発熱するヒータ103とを備える。
【0060】
ここで、図2を用いてガス濃度センサ100の構成を詳細に説明する。ガス濃度センサ100は、ポンプセル110、多孔質拡散層101、センサセル120、大気ダクト102及びヒータ103を要件とし、これら各部材が積層されて成る。なお、同センサ100は図の右端部にてエンジン排気管に取り付けられ、その上下面及び左面が排ガスに晒されるようになっている。
【0061】
より詳細には、ポンプセル110は多孔質拡散層101と排ガス空間との間に設置される。ポンプセル110の排ガス側(図の上側)にはポンプ第1電極111が設置され、多孔質拡散層101側(図の下側)にはポンプ第2電極112が設置される。また、センサセル120は多孔質拡散層101と大気ダクト102との間に設置される。センサセル120の多孔質拡散層101側(図の上側)にはセンサ第1電極121が設置され、大気ダクト102側(図の下側)にはセンサ第2電極122が設置される。そして、多孔質拡散層101には図の左側から排ガスが導入されて図の右方へと流通する。
【0062】
ポンプセル110及びセンサセル120は積層して形成された固体電解質を有し、これら固体電解質はZrO2 、HfO2 、ThO2 、Bi2 O3 等にCaO、MgO、Y2 O3 、Yb2 O3 等を安定剤として固溶させた酸素イオン伝導性酸化物焼成体からなる。また、多孔質拡散層101は、アルミナ、マグネシャ、ケイ石質、スピネル、ムライト等の耐熱性無機物質からなる。
【0063】
ポンプセル110の排ガス側のポンプ第1電極111と、センサセル120のセンサ第1,第2電極121,122とは、白金Pt等の触媒活性の高い貴金属からなる。一方、ポンプセル110の多孔質拡散層101側のポンプ第2電極112は、NOxガスに不活性な(NOxガスを分解し難い)Au−Pt等の貴金属からなる。
【0064】
ヒータ103は絶縁層104に埋設され、この絶縁層104とセンサセル120との間に大気ダクト102が構成される。基準ガス室を構成する大気ダクト102には外部から大気が導入され、その大気は酸素濃度の基準となる基準ガスとして用いられる。絶縁層104はアルミナ等にて形成され、ヒータ103は白金とアルミナ等のサーメットにて形成される。ヒータ103はポンプセル110やセンサセル120を含めセンサ全体(電極含む)を活性状態にすべく、外部からの給電により熱エネルギを発生させる。
【0065】
上記構成のガス濃度センサ100についてその動作を図3を用いて説明する。図3(a)に示されるように、多孔質拡散層101には図の左側から排ガス成分が導入され、その排ガスがポンプセル近傍を通過する際、ポンプセル110に電圧を印加することで分解反応が起こる。なお、排ガス中には酸素(O2 )、窒素酸化物(NOx)、二酸化炭素(CO2 )、水(H2 O)等のガス成分が含まれる。
【0066】
既述の通りポンプセル110のポンプ第2電極112はNOx不活性電極(NOxガスを分解し難い電極)で形成されている。従って、図3(b)に示されるように、排ガス中の酸素(O2 )のみがポンプセル110で分解され、ポンプ第1電極111から排ガス中に排出される。このとき、ポンプセル110に流れた電流が排ガス中に含まれる酸素濃度として検出される。
【0067】
また、排ガス中の酸素(O2 )はポンプセル110で完全に分解されず、その一部はそのままセンサセル近傍まで流通する。そして、図3(c)に示されるように、センサセル120に電圧を印加することにより、残留酸素(O2 )とNOxとが分解される。つまり、残留酸素(O2 )とNOxとがそれぞれセンサセル120のセンサ第1電極121で分解され、センサセル120を介してセンサ第2電極122から大気ダクト102の大気中に排出される。このとき、センサセル120に流れた電流が排ガス中に含まれるNOx濃度として検出される。
【0068】
次に、酸素濃度を検出するためのポンプセル110の特性と、NOx濃度を検出するためのセンサセル120の特性とについて、図4及び図5を用いて説明する。先ずは、ポンプセル特性を図4を用いて説明する。
【0069】
図4のV−I特性図に示されるように、ポンプセルは酸素濃度に対して限界電流特性を有する。同図において、限界電流検出域はV軸に対して平行な直線部分からなり、その領域は酸素濃度が濃いほど正電圧側にシフトする。因みに、ポンプセル110のポンプ第2電極112(多孔質拡散層101側の電極)がNOx不活性電極であるために同ポンプセル110ではNOxガスが分解されにくくなっているが、図4に示した通り一定の電圧以上になると、NOxが分解され、酸素濃度に応じたポンプセル電流に加えてNOx濃度に応じたポンプセル電流が流れる(図4の破線部分)。
【0070】
次に、センサセル特性を図5を用いて説明する。図5のV−I特性図に示されるように、センサセルはNOx濃度に対して限界電流特性を有する。同図において、A1部分では多孔質拡散層101を通じてセンサセル120に流れ込む残留酸素によりオフセット分の電流(オフセット電流)が流れ、A2部分ではNOxの分解電流が流れる(図では1000ppmの場合を示す)。また、「A1+A2」以上の電流、すなわち図の右端の電流が大きくなる部分(NOx濃度が1000rpmの時、A3部分)ではH2 Oの分解電流が流れる。このとき、排ガス中のNOx濃度に対応する限界電流は「A1+A2」の電流値で検出される。NOx分解電流を規定する限界電流検出域はV軸に対して平行な直線部分からなり、その領域はNOx濃度が濃いほど僅かながら正電圧側にシフトする。
【0071】
一方、前記図1のセンサ制御回路210は、酸素濃度検出部211とNOx濃度検出部212とインピーダンス検出部213とヒータ制御部214とを有する。酸素濃度検出部211は、ガス濃度センサ100のポンプセル電極に接続され、ポンプセル110に電圧を印加すると共に酸素濃度(A/F)に応じた電流信号を検出して外部に出力する。NOx濃度検出部212は、ガス濃度センサ100のセンサセル電極に接続され、センサセル120に電圧を印加すると共にNOx濃度に応じた電流信号を検出して外部に出力する。
【0072】
インピーダンス検出部213は、例えば掃引法を用いてセンサセル120の素子インピーダンスを検出する。具体的には、センサセル120のインピーダンス検出時において、センサセル印加電圧を一定量だけ瞬間的に変化させ、その時のセンサセル電流の変化量を計測する。そして、その時の電圧変化量と電流変化量とからセンサセル120の交流素子インピーダンスを算出する。因みに、インピーダンス検出の周期は、エンジン始動時には128ms、定常運転時には256msというように可変に設定される。
【0073】
ヒータ制御部214は、前記検出したセンサセル120の素子インピーダンスを素子温に変換する。ここで、素子インピーダンスは素子温に対して図7に示す関係を有する。すなわち、素子温が低いほど、素子インピーダンスが飛躍的に大きくなる。そして、ヒータ制御部214は、素子温(センサセル120の温度)を所定の目標値にF/B制御するための電圧制御信号を求め、その電圧制御信号を電圧制御回路220に対して出力する。
【0074】
電圧制御回路220は、センサ制御回路210(ヒータ制御部214)から送信される電圧制御信号に従い、ヒータ103の通電を制御する。一例として電圧制御回路220は図6に示すスイッチング電源にて構成され、同制御回路220から直流電圧が出力されてヒータ通電状態が制御される。なお本実施の形態では、ヒータ制御部214及び電圧制御回路220が本発明の「ヒータ制御手段」に相当し、これによりヒータ通電時におけるリーク電流のセンサ出力への影響が排除される。
【0075】
図6において、スイッチング電源からなる電圧制御回路220は電源(+B)221、スイッチ素子(トランジスタ)222、ダイオード223、コイル224及びコンデンサ225を有する。そして、電圧制御信号に従い高速でスイッチ素子222がON/OFFされることにより、電圧制御回路220の出力電圧が調整され、ひいてはヒータ103に加わる電圧が制御される。このとき、コイル224及びコンデンサ225は、スイッチ素子222のON/OFF時に電源電圧を平滑化する。ダイオード223は、スイッチOFF時にコイル224に蓄えられたエネルギを放出する。
【0076】
スイッチ素子222のスイッチング周波数は、NOx濃度が変化する周波数(10Hz程度)以上で規定される。より具体的には、スイッチング周波数を1kHz以上とするのが望ましく、本実施の形態では、小型化や電力効率の向上や電圧変動の抑制を図るべく、数10kHzでスイッチ素子222をスイッチングさせるようにしている。
【0077】
実際には、例えばセンサ活性時のヒータ抵抗が4.5Ω程度のヒータ制御において、スイッチング周波数を16kHz、コンデンサ容量を820μF、コイルインダクタンスを36μH程度とした。これら各数値の設定により、センサ活性時においてヒータ103に加わる電圧の変化量が所定値(例えば2V以下)で制限される。すなわち、リーク電流が1.2μA(絶縁抵抗6MΩ、電圧7V)、NOx濃度1000ppmの時のセンサ出力電流が4μAである場合、ダイナミックレンジ1000ppmに対して30%(=1.2μA/4μA)の誤差が発生し、センサ出力は約300ppm分の影響をリーク電流にて受けることとなる。従って、センサ出力の誤差を例えば5%未満にするのであれば、ヒータ103の電圧変化を約2V以下とする。
【0078】
なお、ヒータ抵抗に応じてコンデンサ容量やコイルインダクタンスを変えることにより精度確保が可能である。但し、センサ素子とヒータとの位置関係やセンサ構造(材質、寸法)など様々な要因によってセンサ出力への影響度合が変わるため、それを考慮して電圧変化量を制限するための所定値を決めるとよい。
【0079】
また、センサ制御回路210内の酸素濃度検出部211、NOx濃度検出部212の出力側には各々、LPF(ローパスフィルタ)215,216が設けられている。LPF215,216のカットオフ周波数は、電圧制御回路220(スイッチング電源)のスイッチング周波数以下とし、特に本実施の形態では、数10Hz〜100Hz程度で規定する。本構成によれば、仮に、ヒータ制御の影響を受けてセンサ出力が比較的高周波で変動しても、その影響が排除でき、より一層高精度なガス濃度検出が実現できる。
【0080】
図8は、エンジン始動直後からのヒータ電圧(端子間電圧)と素子温との変化を示すタイムチャートである。同図において、始動直後の冷間時には、センサの活性時間を短縮するために前記図6の電源電圧+Bがそのままヒータ103に印加される。すなわち、前記図6のスイッチ素子222がON状態で保持される。これにより、ガス濃度センサ100の早期活性化が図られる。
【0081】
時刻t1以降、センサ活性化の進行に従い、電圧制御信号が調整されてヒータ103の印加電圧が徐々に下げられる。そのため、活性状態に至るまでの時刻t1〜t2の期間では電圧変化が大きくなる。但しこの時は絶縁層104(アルミナ)の絶縁抵抗が高くリーク電流の影響が小さいため、NOx出力が不用意に変動するといった不都合は生じない。
【0082】
時刻t2でセンサ活性化が完了した後は、絶縁層104の絶縁抵抗が低くなり、NOx出力がリーク電流の影響を受け易くなる。しかしながら、電圧制御信号により調整されるヒータ印加電圧の変化幅が比較的小さいため(2V以下)、NOx出力に対して多大な影響が及ぶことはない。従って、安定したNOx出力が継続的に得られることとなる。
【0083】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(a)ガス濃度センサ100の素子温を所定の目標値にF/B制御するための電圧制御信号に基づいて、ヒータ通電を制御するようにした。本構成によれば、数Hz〜数10Hz程度の周波数でヒータ通電をON/OFF制御していた従来装置とは異なり、ヒータ制御の影響による出力変動を最小限に抑えることができる。つまり、ヒータ電圧の変化が少なくなることで、絶縁層104を介して流れるリーク電流の影響が小さくなる。このとき、仮にヒータ103に印加されるバッテリ電圧+Bが変動しても、その影響を受けることもなく、適正なヒータ制御が継続できる。その結果、ヒータ制御時におけるガス濃度検出精度の低下を抑制し、ガス濃度を適正に検出することができる。
【0084】
(b)特にガス濃度センサ100では、センサセル120にて計測されるNOx濃度信号が微弱電流となり、リーク電流の影響による出力変動が大きくなるが、上記構成によれば、こうした微弱なNOx濃度信号であっても精度良く検出できる。また、ポンプセル110、センサセル120及びヒータ103が各々積層されてなる積層構造のセンサの場合、リーク電流の影響度合が大きいと言えるが、こうしたセンサにあっても好ましいガス濃度検出装置が提供できる。
【0085】
(c)センサ活性時においてヒータ103に加わる電圧の変化量が所定値(例えば2V以下)で制限されるので、センサ出力への影響がより確実に抑制される。
【0086】
(d)スイッチ素子222、コイル224及びコンデンサ225を備えるスイッチング電源にて電圧制御回路220が構成されるので、ヒータ103の電圧変化が少なくなり、センサ出力への影響がより一層低減できる。また、一般的な定電圧回路(ドロッパ方式の電源)を用いる場合に比べ、トランジスタの発熱が抑えられ、小型化並びに効率化が実現できる。また、スイッチング電源にダイオード223を設けることで、スイッチOFF時にコイル224に蓄えられたエネルギがダイオード223にて放出され、電圧変化がより一層低減される。
【0087】
(e)電圧制御回路220(スイッチング電源)のスイッチング周波数を1kHz以上としたので、回路の大型化やコスト上昇といった問題を解消しつつ、リップルの影響を抑えることができる。その結果、車載に適した装置が提供できる。つまり、スイッチング周波数が低すぎると、スイッチング電源のリップルが大きくなりすぎてしまい、その問題を解消すべくコンデンサ容量を大きくすると回路の大型化やコスト上昇を招くが、上記構成によればこれらの問題が何れも解消される。
【0088】
(f)信号出力部にLPF215,216を設け、LPF215,216のカットオフ周波数を数10Hz〜100Hz程度としたので、ヒータ電圧の変化による影響を抑え、必要なガス濃度信号を取り出すことが可能となる。但し、LPF215,216を設けない構成としても良く、何れにしても上記(a)〜(e)の効果が変わらず得られ、従来既存の装置と比べてガス濃度の検出精度が向上する。
【0089】
次に、本発明における第2〜第5の実施の形態を説明する。但し、以下の各実施の形態の構成において、上述した第1の実施の形態と同等であるものについては図面に同一の記号を付すと共にその説明を簡略化する。そして、以下には第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0090】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態を以下に説明する。パルス幅変調(PWM)信号によりヒータの通電がON/OFF制御される装置では、一般にPWM周波数が数Hz〜数10Hz(例えば8Hz程度)で設定される。この数Hz〜数10Hzの周波数はNOx濃度変化の周波数に略一致する。
【0091】
これに対し本実施の形態では、ヒータ制御のPWM周波数を、NOx濃度が変化する周波数以上で規定すべく、数100Hz〜数kHz(例えば1kHz程度)まで上げる。かかる場合、例えばセンサセルで検出されるNOx濃度信号には、前記の如く数100Hz〜数kHzでON/OFFされるヒータ制御の影響が及ぶが、その状態でNOx濃度信号をLPF(ローパスフィルタ)に通し、実際のNOx濃度成分と高周波成分(ヒータのON/OFF成分)とを分離させる。
【0092】
本実施の形態におけるガス濃度検出装置の構成を図9に示す。図9において、ガス濃度センサ100のヒータ103は、例えばマイコンを使ったヒータ制御回路350により1kHzでPWM制御される。ガス濃度センサ100において、ポンプセル110には排ガス中の酸素濃度に応じたポンプセル電流が流れ、そのポンプセル電流が酸素濃度検出回路310にて計測される。また、センサセル120には排ガス中のNOx濃度に応じたセンサセル電流が流れ、そのセンサセル電流がNOx濃度検出回路320にて計測される。上記の各検出回路310,320はポンプセル電流、センサセル電流を各々電圧値に変換して出力する。
【0093】
酸素濃度検出回路310にはLPF330が接続され、同LPF330を通過した信号がA/F出力として取り出される。また、NOx濃度検出回路320にはLPF340が接続され、同LPF340を通過した信号がNOx出力として取り出される。LPF330,340は、ヒータ制御のPWM周波数以下でそのカットオフ周波数が規定され、実際にはカットオフ周波数が数10Hz程度で設定される。
【0094】
ここで、ヒータ制御回路350についてより詳細な構成を図10に示す。図10の構成はハイサイドスイッチ仕様となっており、バッテリ電源(+B)とヒータ103との間にスイッチ351が設けられている。ヒータ103の端子間電圧はヒータ電圧検出回路352にて検出され、ヒータ103に流れる電流はヒータ電流検出回路353にて検出される。これら各検出回路352,353の検出結果はA/Dコンバータ354,355を介してマイコン356に取り込まれる。
【0095】
マイコン356は、D/Aコンバータ357の出力を調整することによりアナログの電圧変化を作る。マイコン356による電圧信号が比較器358の反転入力端子に入力される。また、比較器358の非反転入力端子には発振回路359から1kHzのノコギリ波が入力される。比較器358は、各入力端子の信号を比較することによりPWM波形を生成し、該生成した信号をスイッチ351に対して出力する。その結果、スイッチ351が周波数1kHzのヒータ制御信号でON/OFF制御されることとなる。
【0096】
或いは、ヒータ制御回路350を図11のように構成する。但し、図11の構成はローサイドスイッチ仕様となっており、ヒータ103と接地(GND)側との間にスイッチ351が設けられている。
【0097】
図11において、マイコン356は、PWM専用回路(IC)360に対して制御信号を出力する。PWM専用回路360は、PWM周波数を例えば1kHzとしてスイッチ351のON/OFFを制御する。なおその他、ヒータ電圧検出回路352,ヒータ電流検出回路353,A/Dコンバータ354,355等の構成は前記図10と同じである。
【0098】
本実施の形態の装置により得られる特有の作用を、図12の波形図を参照しながら説明する。同図12において、(a)の如くNOx濃度が変化する場合、NOx濃度検出回路320の出力は(b)の如くヒータ103のON/OFFの影響(リーク電流の影響)を受ける。つまり、NOx濃度信号にヒータ制御信号が重畳した波形となる。
【0099】
かかる場合、NOx濃度信号の変化は数Hz〜数10Hzであるのに対し、ヒータ103のON/OFFの周波数は1kHz程度である。従って、NOx濃度検出回路320から出力されるNOx濃度信号がLPF340を通過する際、低周波のNOx濃度信号と高周波のヒータ制御信号とが分離されて低周波成分(NOx濃度信号)だけ通過が許容される。これにより、ヒータ103のON/OFFに伴ってNOx濃度信号がリーク電流の影響を受けても、最終的には当該リーク電流の影響のないNOx出力が得られる(図の(c))。
【0100】
なお、A/F出力についても同様に、LPF330を介して取り出すことで、リーク電流の影響のない信号として抽出できる。但し、A/F出力とNOx出力とを比較すると、後者の方が微弱な電流信号であるため、NOx出力の方がリーク電流の影響を受け易い。そのため、センサセル120側についてだけLPFを設ける構成としてもよい。
【0101】
以上第2の実施の形態によれば、PWM制御の際に、PWM信号の周波数を従来一般の数Hz〜数10Hzから1kHz程度にまで上げると共に、ガス濃度センサ100にて検出されるガス濃度信号(酸素濃度信号、NOx濃度信号)をLPF330,340に入力することとした。かかる場合、LPF通過後のガス濃度信号は、ヒータ103のON/OFFの影響が排除されたものとなり、ヒータ制御時におけるガス濃度検出精度の低下を抑制し、ガス濃度を適正に検出することができる。
【0102】
本実施の形態では、LPF330,340のカットオフ周波数が数10Hzであるに対し、PWM周波数を1kHz程度としたので、ガス濃度信号とヒータ制御用のPWM信号とをより確実に分離させることができる。なお、PWM周波数は、LPF330,340のカットオフ周波数に対し10倍以上であれば任意に設定でき、要はガス濃度信号とヒータ制御用のPWM信号とが分離できる周波数であればよい。さらに、LPF330,340のカットオフ周波数は100Hz程度以下とするのが望ましい。この場合、エンジンの気筒別空燃比制御で使われる周波数成分を阻害しない周波数としつつ、ガス濃度信号とヒータ制御用のPWM信号とを確実に分離させることができる。
【0103】
本実施の形態では特に、図10に示すヒータ制御回路350において、ヒータ103をハイサイドスイッチ仕様とし、バッテリ電源+Bとヒータ103との間に配置したスイッチ351をON/OFFしてヒータ103の通電を制御するので、ヒータOFF時にはヒータ全体が0V(GND側の電圧)となる。よって、ヒータOFF時のヒータ電圧が必ずしも0Vとならないローサイドスイッチ仕様と比べ、リーク電流の影響を少なくすることができる。すなわち、ヒータ103側での電圧の変化範囲とセンサ素子側での電圧の変化範囲との差が少なくなり、その分、リークの影響が小さくなる。
【0104】
なお、リーク電流の影響を低減するためのヒータ制御回路350の他の構成として、ヒータ103のハイサイド及びローサイドの両方にスイッチを配置し、両スイッチを同時に操作してヒータ103の通電をON/OFF制御しても良い。
【0105】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態を以下に説明する。上記第2の実施の形態の如くヒータのPWM周波数を1kHz程度まで上げる場合、ヒータ電圧及びヒータ電流の検出が困難になり、それに起因してフェイル制御やヒータの電力制御が実施できなくなるという新たな問題が生ずる。因みに、フェイル制御では、ヒータON時又はOFF時の電圧値及び電流値をモニタしてヒータ断線のチェックを行い、ヒータに適切な電力が加わっているかどうかを確認する。また、ヒータの電力制御では、ヒータ電圧及びヒータ電流をチェックすることでヒータに加わる電力を制御する。
【0106】
例えば前記図10の構成において、ヒータ電圧及びヒータ電流の測定値をA/Dコンバータ354,355を介してマイコン356に取り込む際に、ヒータON時間又はOFF時間が短すぎると、A/D変換時間が不足し、ヒータ電圧及びヒータ電流が測定できなくなる。
【0107】
つまり、図13(a)に示されるように、PWM周波数1kHzの時に、PWM信号のディーティ比が5%であると、ヒータON時間が50μsecしかない。又は、図13(b)に示されるように、PWM信号のディーティ比が95%であると、ヒータOFF時間が50μsecしかない。上記図13(a),(b)の場合、A/D変換が完了する前に入力電圧が変化すると正確な変換処理を行うことができない。それ故に、例えば変換時間が35μsec未満であるような高速のA/Dコンバータを使わなければ、ヒータON時又はOFF時のヒータ電圧及びヒータ電流が測定できない。
【0108】
但し、例え高速のA/Dコンバータを使用したとしても、いつA/Dコンバータを測定開始の状態にするかが課題となる。特にPWM専用ICを使用する場合などではON/OFFのタイミングが把握しにくい。つまり、適切な時にA/D変換が開始できないため、ヒータ電圧及びヒータ電流が検出できない可能性がある。また、A/D変換のタイミングの管理が難しいためにソフトの負荷が増大し、システム全体の制御が困難になる、或いはコスト高となる等の問題が生ずる。
【0109】
なお、既存の装置ではPWM周波数が数Hz〜数10Hzであり、同周波数が例えば7.8Hzであるとすると、ON/OFFの周期は128msecとなる。そのため、デューティ比が1%であっても1.28msec(1280μsec)のON時間が確保でき、A/D変換時間を100μsecとする汎用のA/Dコンバータでも十分使用できる。
【0110】
そこで本実施の形態では、比較的高速(1kHz程度)でのPWM制御に際し、ヒータON時及びOFF時のそれぞれについて検出したヒータ電圧及びヒータ電流をサンプルホールド(S/H)回路に取り込み、同S/H回路にて一時的に記憶保持する。
【0111】
図14は、本実施の形態におけるヒータ制御回路350の構成を示す電気回路図である。但し図14は、前記図10の一部を変更したものであり、以下には図10との相違点のみを説明する。
【0112】
図14において、ヒータ電圧検出回路352及びヒータ電流検出回路353にはそれぞれ、S/H回路371,372が接続される。S/H回路371,372は、タイミング調整回路373からの指令信号に従い、ヒータON時及びOFF時のそれぞれについてヒータ電圧及びヒータ電流を一時的に記憶保持する。このとき、ヒータ電圧及びヒータ電流の検出値(検出回路352,353の出力)は、ヒータ信号が変化しても直ぐには現れないため、ヒータ信号のON/OFF変化から所定の遅延時間が経過した後、ヒータ電圧及びヒータ電流がホールドされる。
【0113】
S/H回路371,372の出力はA/Dコンバータ354,355を介してマイコン356に取り込まれる。このとき、A/D変換途中に入力電圧が変化してしまい、適正なA/D変換が実施できなくなるといった不都合が回避される。従って、A/Dコンバータ354,355では常に安定したA/D変換が実施でき、ヒータ電圧及びヒータ電流が検出できないという不都合が解消される。
【0114】
以上第3の実施の形態によれば、ヒータ電圧検出回路352及びヒータ電流検出回路353の出力側にS/H回路371,372を接続したので、上記第2の実施の形態の如くヒータ103のPWM周波数を上げたとしても、ヒータ電圧及びヒータ電流が確実に検出できる。
【0115】
かかる場合、比較的低速のA/Dコンバータを使用する装置であっても、ヒータ電圧及びヒータ電流の読み取りが可能となる。また、ヒータのON/OFF切り換えの直後にA/D値を読まなくてよいため、A/D変換のタイミングを正確に合わせる必要がなく、PWM信号との同期を取らなくてもよい。その結果、回路の低コスト化、制御性やソフトの簡略化が実現できる。
【0116】
なお、S/H回路とA/Dコンバータとを一体化してS/H処理とA/D変換処理とを共に実施する、トラックホールド(T/H)型A/Dコンバータを用いればヒータ電圧及びヒータ電流の測定は可能であるが、ソフト負荷やコストが上がってしまう。
【0117】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態を以下に説明する。本実施の形態では、ヒータ制御のON/OFF(通電/非通電)時のNOx出力電圧値を平均化してガス濃度信号を出力する。つまり、NOx出力電圧は、ヒータのON/OFF時にそれぞれ影響を受けることから、ON時の出力とOFF時の出力との平均をとってセンサ出力とする。
【0118】
本実施の形態におけるガス濃度検出装置の概要を図15に示す。図15において、NOx濃度検出回路410は、排ガス中のNOx濃度に応じたNOx濃度信号(電圧信号)を生成し出力する。同検出回路410によるNOx濃度信号はA/Dコンバータ420を介してマイコン400に入力される。
【0119】
マイコン400は、数Hz〜数10Hz程度の周波数(例えば7.8Hz)のPWM信号をヒータ制御回路430に出力し、ヒータ制御回路430はPWM信号に従ってヒータ通電をON/OFF制御(PWM制御)する。また、マイコン400は、ヒータON時におけるNOx濃度信号とヒータOFF時におけるNOx濃度信号とからこれら各信号の平均値を算出し、この平均値から補正信号を求めてD/Aコンバータ440を介して補正回路450に出力する。補正回路450は、NOx濃度検出回路410から取り込まれるNOx濃度信号を、マイコン400から取り込まれる補正信号により補正し、該補正した信号をNOx出力とする。
【0120】
図16は、本実施の形態における作用を説明するためのタイムチャートである。図16において、NOx濃度検出回路410によるNOx濃度信号(A/Dコンバータ420の入力信号)は、ヒータ103のON/OFFの影響を受ける。マイコン400では、ヒータON時のNOx濃度信号a1,b1とヒータOFF時のNOx濃度信号a2,b2とがそれぞれ平均化され、平均値a3,b3が算出される。すなわち、
a3=(a1+a2)/2
b3=(b1+b2)/2
といった演算が行われる。このとき、PWM信号のディーティ比が変化しても、平均値a3,b3は同じ値となり、ディーティ比の変化による影響を受けないことが分かる。
【0121】
そして、前記平均値a3,b3に応じた補正信号が補正回路450に対して出力され、同補正回路450では、NOx濃度信号(検出回路410の出力)と補正信号(平均値a3,b3)との差分に応じた補正が行われる。これにより、図示の如くヒータON/OFFに拘わらず、安定したNOx出力が得られる。つまり、補正前のNOx濃度信号が、ヒータON/OFF(PWM信号)の影響を受けて変動するのに対し、補正後のNOx出力はNOx濃度(実値)が一定であれば変化しない。
【0122】
また本装置では、マイコン400から出力される補正信号(平均値a3,b3)に基づいて経時的な信号のずれ量(ヒータのON/OFFによるずれ)が求められ、そのずれ量だけ補正回路450による補正が行われる。そして、補正後のNOx出力と本来のNOx出力との差に応じて、NOx濃度検出回路410でゲイン調整が行われる。
【0123】
以上第4の実施の形態によれば、PWM信号によりヒータ通電を制御する際、ヒータON時とヒータOFF時とでNOx濃度信号を各々取り込み、該取り込んだヒータON/OFF時の両方のNOx濃度信号に基づいて当該NOx濃度信号を補正するようにした。これにより、PWM信号による影響を排除したNOx濃度信号が得られる。その結果、ヒータ制御時におけるガス濃度検出精度の低下を抑制し、ガス濃度(NOx濃度)を適正に検出することができる。
【0124】
また、従来装置と同様に比較的低い周波数(数Hz〜数10Hz程度)でヒータをON/OFF制御するため、例えば前記図14の装置のようにS/H回路等を使う構成としなくても、ヒータ電圧及びヒータ電流が検出できる。勿論、高価なA/Dコンバータを使用する必要もない。
【0125】
補正信号の算出に際し、ヒータON/OFF時のNOx濃度信号を平均化してその平均値を使うようにした。本構成によれば、簡易に且つ正確にNOx濃度が検出できるようになる。
【0126】
また、マイコン400から出力される補正信号(平均値a3,b3)に基づいてNOx濃度検出回路410のゲイン調整が行われる。このとき、PWM制御時のNOx濃度信号をそのまま使ってゲイン調整すると、デューティ比の大小に応じてゲインのバラツキが生じるが、本構成によれば、こうした不都合が解消される。
【0127】
上記第4の実施の形態では、ヒータON時のNOx濃度信号とヒータOFF時のNOx濃度信号との両方を用い、それらを平均化して当該NOx濃度信号を出力したが、以下のように変更して具体化することも可能である。すなわち、前述したように、NOx出力電圧は、ヒータのON/OFF時にそれぞれ影響を受け、その影響がセンサ出力に現れる。そこで、ヒータON時又はヒータOFF時のうち、何れか一方のNOx濃度信号のみを出力する。これにより、ヒータ103のON/OFFによるバラツキの影響が抑えられ、ガス濃度センサ100の検出精度が向上する。
【0128】
この実施の形態を実現するには、前記図15の装置を用い、補正回路450から出力されるNOx出力として、ヒータON時のNOx濃度信号とヒータOFF時のNOx濃度信号とのうち何れかを用いる。因みに、ヒータON時のNOx濃度信号とヒータOFF時のNOx濃度信号との何れをNOx出力として用いるかは、予め決めておいても良いし、その都度決定する用にしても良い。また、センサ出力は、ヒータON時又はOFF時のデータをサンプルホールド回路等の保持手段で一旦保持した後、外部に出力されると良い。
【0129】
かかる実施の形態は、外部に出力されるタイミングがヒータON時又はOFF時の何れか一方の時に限られるため、ガス濃度センサ100の細かい挙動には対応しにくくなるが、構成は簡単となる利点がある。但し、ヒータ制御の周波数を大きくするなどして、サンプリング数を増やせば細かい挙動にも対応できる。
【0130】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態を以下に説明する。ガス濃度センサにおいて、絶縁層の抵抗変化に伴うリーク電流は、例えばヒータの電源電圧(バッテリ電圧)や各セルの温度によって大小変化する。
つまり、バッテリ電圧は+BからGNDの間で大きく変化し(10〜16V程度)、その都度リーク電流による影響度合が相違する。また、セル温度はその時々の排ガス温度等に応じて変化し、やはりその都度リーク電流による影響度合が相違する。そのため本実施の形態では、PWM信号によるヒータの通電制御時において、リーク電流の影響度合を推定し、該推定したリーク電流の相当分だけガス濃度信号を補正する。
【0131】
本実施の形態におけるガス濃度検出装置の構成を図17に示す。図17において、マイコン500は、数Hz〜数10Hz程度の周波数(例えば7.8Hz)のPWM信号をヒータ制御回路580に出力し、ヒータ制御回路580はPWM信号に従いヒータ通電をON/OFF制御(PWM制御)する。NOx濃度検出回路510は、排ガス中のNOx濃度に応じたNOx濃度信号(電圧信号)を生成し出力する。同検出回路510によるNOx濃度信号はA/Dコンバータ520を介してマイコン500に入力される。
【0132】
インピーダンス検出回路530は、例えば掃引法を用いてセンサセル120の素子インピーダンスを検出し、その検出結果がA/Dコンバータ540を介してマイコン500に入力される。その他に、マイコン500にはA/Dコンバータ550を介してバッテリ電圧+Bが入力される。
【0133】
マイコン500は、前記第4の実施の形態で説明した図15及び図16と同様に、ヒータON時におけるNOx濃度信号とヒータOFF時におけるNOx濃度信号とからこれら各信号の平均値を算出し、この平均値から第1補正信号を求めてD/Aコンバータ560を介して補正回路570に出力する。
【0134】
また、マイコン500は、センサセル120の素子インピーダンスを素子温(センサセルの温度)に変換してその素子温に応じた補正値f1を算出すると共に、バッテリ電圧+Bに応じた補正値f2を算出する。このとき、例えば図18(a),(b)の関係を用いて補正値f1,f2を算出する。そして、マイコン500は、補正値f1,f2から第2補正信号を生成してその第2補正信号をD/Aコンバータ560を介して補正回路570に対して出力する。
【0135】
図18(a),(b)による補正値f1,f2は、ヒータ103のPWM制御時におけるガス濃度信号のリーク電流分を補正するものであって、図18(a)によれば、素子温が高いほどリーク電流の影響が大きいため、補正値f1が大きな値に設定される。また、図18(b)によれば、バッテリ電圧+Bが高いほどリーク電流の影響が大きいため、補正値f2が大きな値に設定される。なお、図18(b)の関係においては、横軸のバッテリ電圧+Bをヒータ103の端子間電圧に置き換えてもよい。また、上記図18(a),(b)による補正のうち、何れか一方の補正のみを実施するように構成してもよい。
【0136】
補正回路570は、NOx濃度検出回路510から取り込まれるNOx濃度信号を、マイコン500から取り込まれる第1,第2補正信号により補正し、該補正した信号をNOx出力とする。
【0137】
図19は、ヒータ制御の概要をより具体的に説明するためのタイムチャートである。図19では時刻t11以前と以降とでバッテリ電圧+Bが相違し、時刻t11以降、バッテリ電圧+Bが上昇している。但し、NOx濃度は不変であるとする。
【0138】
図19のタイムチャートにおいて、NOx濃度検出回路510によるNOx濃度信号(A/Dコンバータ520の入力信号)は、ヒータ103のON/OFFの影響を受けるが、ヒータON時のNOx濃度信号とヒータOFF時のNOx濃度信号との平均値を第1補正信号として、この第1補正信号によりNOx濃度信号が補正される。
【0139】
このとき、同図において時刻t11以前と以降とでバッテリ電圧+Bが相違するため、バッテリ電圧+Bの差分だけ平均化後のNOx濃度信号が変動するが、その時々のバッテリ電圧+Bに応じた第2補正信号により、平均化後のNOx濃度信号が適宜補正される。例えば第2補正信号の相当量だけNOx濃度信号が差し引かれる。これにより、ヒータON時の電圧レベルの変化に拘わらず、安定したNOx出力が得られる。
【0140】
但し厳密には、ヒータ制御系の構成(バッテリ電源、ヒータ及びスイッチ素子の接続)がローサイドスイッチ仕様であるか、若しくはハイサイドスイッチ仕様であるかによって、リーク電流の影響度合が相違する。そのため、リーク電流の影響度合に応じた補正はヒータON時及びOFF時のそれぞれについて行うとよい。
【0141】
すなわち、ヒータ制御系がローサイドスイッチ構成である場合、ヒータOFF時には、−側端子は開放されるものの+側端子はバッテリ電源(+B)に接続されたままとなる。また、ヒータ制御系がハイサイドスイッチ構成である場合、ヒータOFF時には、+側端子は開放されるものの−側端子はGNDに接続されたままとなる。この場合、ヒータOFF時に+B接続か、GND接続かによってリーク電流の影響度合が相違するためそれを考慮するとよい。なお、ヒータの両側の端子(ハイサイド側、ローサイド側)を同時に開放すれば、ヒータOFF時の影響は非常に少ないと考えられ、この場合にはGND側の影響は受け難くなるので+Bのみを考慮すればよい。
【0142】
以上第5の実施の形態によれば、PWM信号によりヒータ通電を制御する際、絶縁層104の抵抗変化に伴うリーク電流の相当分だけNOx濃度信号を補正することで、正確なNOx濃度信号が得られる。その結果、ヒータ制御時におけるガス濃度検出精度の低下を抑制し、ガス濃度を適正に検出することができる。
【0143】
なお本発明は、上記以外に次の形態にて具体化できる。
上記第1の実施の形態では、電圧制御回路220の一形態として、図6に示すスイッチング電源を用いたが、他の形態としてシリーズ電源を用いてもよい。また、ヒータ103に加わる電圧変化が少ない構成であればよいため、シリーズ電源とスイッチング電源とを組み合わせたようなものでもよい。
【0144】
上記第2の実施の形態(図9の構成)では、ガス濃度信号(酸素濃度信号、NOx濃度信号)とPWM信号とをハードウエアにより分離する構成を説明したが、これを変更する。例えばガス濃度信号(検出回路310,320の出力)をA/Dコンバータを介してマイコンに取り込み、該取り込んだ信号をDSP処理などによって信号成分毎に分離してもよい。また、検出回路310,320の後段にLPFを入れたが、このLPFを各検出回路310,320に内蔵する構成であってもよい。つまり、ガス濃度に応じた微弱電流を増幅する段階でLPF(例えばカットオフ周波数=数10Hz)を入れる。
【0145】
上記第4の実施の形態(図15の構成)では、ヒータON時とヒータOFF時との各々のガス濃度信号の平均値から補正信号を算出したが、この構成を変更する。例えば補正信号の算出に際し、ヒータON時及びヒータOFF時のガス濃度信号a1,a2について、α,βの重み付けを行って補正値faを算出する。すなわち、
fa=(α×a1+β×a2)/(α+β)
の演算から補正値faを算出する。
【0146】
そして、この補正値faに応じた補正信号によりNOx濃度信号を補正する。かかる構成においても、既述の通り安定したNOx出力が得られる等の優れた効果が得られる。因みに、前記α,βの値は、ヒータON時におけるリーク電流の影響度合と、ヒータOFF時におけるリーク電流の影響度合とを反映するものであって、前者の方が大きいと想定される場合にはα>βとし、各影響度合が等しいと想定される場合にはα=βとすればよい。
【0147】
同じく第4の実施の形態において、マイコン400内で補正量(補正信号)を算出し、外部の補正回路450で補正をする例を示したが、これを変更する。例えば、補正回路450の機能をマイコン400に盛り込む。この場合、マイコン400では、A/Dコンバータ420からの入力信号(NOx濃度信号)に基づいて補正値が算出されると共に、この補正値を使ってNOx濃度信号が補正される。そして、補正後のNOx信号が外部に出力される。
【0148】
上記第4,第5の実施の形態では、NOx濃度信号についてのみ、当該信号を補正するための構成及び手法を記載したが、酸素濃度信号についても同様に信号を補正してもよい。これにより、酸素濃度信号の検出が向上する。
【0149】
本発明のガス濃度センサとしては、上記図2に示す2セル構造のガス濃度センサ100の他に、3個以上のセルを有する構造のガス濃度センサや、単一のセルを有し酸素濃度のみを検出する酸素センサ(A/Fセンサ)が適用できる。また、各セル及びヒータが各々積層されてなる積層構造のセンサ以外にも適用できる。要は、各セル(センサ素子)付近の絶縁層にヒータが埋設される構成であればよく、仮に積層構造でなくともとリーク電流等による影響は受ける可能性は十分にある。
【0150】
ガス濃度センサが特定のガス濃度に応じた起電力を発生するセルを有するものであっても良い。起電力を発生するセルを有したガス濃度センサとしては、例えば、特開平11−108888号公報に記載のガスセンサの構成を用いる。かかる場合にも、上記各実施の形態の構成を適宜用いることで、センサ出力におけるリーク電流の影響を抑制することができ、ガス濃度の検出精度が向上する。
【0151】
さらに、酸素(O2 )濃度とNOx濃度とを検出可能なガス濃度センサの他、酸素濃度とHC濃度又はCO濃度とを検出可能なガス濃度センサにも適用できる。HC濃度又はCO濃度を検出する場合、ポンプセルにて排ガス(被検出ガス)中の余剰酸素を排出し、センサセルにて余剰酸素排出後のガス成分からHC又はCOを分解する。これにより、酸素濃度に加え、HC濃度又はCO濃度が検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態においてガス濃度検出装置の概要を示す構成図。
【図2】ガス濃度センサの構成を示す要部断面図。
【図3】ガス濃度センサの動作原理を説明するための図。
【図4】ガス濃度センサのポンプセル特性を説明するためのV−I特性図。
【図5】ガス濃度センサのセンサセル特性を説明するためのV−I特性図。
【図6】スイッチング電源の構成を示す電気回路図。
【図7】素子インピーダンスと素子温との関係を示す図。
【図8】ヒータ電圧と素子温との推移を示すタイムチャート。
【図9】第2の実施の形態においてガス濃度検出装置の概要を示す構成図。
【図10】ヒータ制御回路の構成を示すブロック図。
【図11】ヒータ制御回路の構成を示すブロック図。
【図12】第2の実施の形態における作用を説明するためのタイムチャート。
【図13】デューティ比=5%,95%のPWM信号を示す波形図。
【図14】第3の実施の形態においてヒータ制御回路の構成を示すブロック図。
【図15】第4の実施の形態においてガス濃度検出装置の概要を示す構成図。
【図16】第4の実施の形態における作用を説明するためのタイムチャート。
【図17】第5の実施の形態においてガス濃度検出装置の概要を示す構成図。
【図18】第5の実施の形態において補正値f1,f2を設定するための図。
【図19】第5の実施の形態における作用を説明するためのタイムチャート。
【図20】ガス濃度センサを等価的に示す構成図。
【図21】信号波形を示すタイムチャート。
【図22】ガス濃度検出装置の簡易構成を示す回路図。
【図23】ガス濃度検出装置の簡易構成を示す回路図。
【図24】ガス濃度検出装置の簡易構成を示す回路図。
【図25】ガス濃度検出装置の簡易構成を示す回路図。
【図26】従来技術においてガス濃度検出装置の概要を示す構成図。
【図27】ヒータのON/OFFに伴いNOx出力が変動する様子を示すタイムチャート。
【符号の説明】
100…ガス濃度センサ、103…ヒータ、104…絶縁層、110…センサ素子(第1セル)としてのポンプセル、120…センサ素子(第2セル)としてのセンサセル、210…センサ制御回路、214…ヒータ制御部、215,216…LPF(ローパスフィルタ)、220…電圧制御回路、330,340…LPF(ローパスフィルタ)、350…ヒータ制御回路、351…スイッチ、352…ヒータ電圧検出回路、353…ヒータ電流検出回路、371,372…S/H回路(サンプルホールド回路)、400,500…マイコン、450,570…補正回路。
Claims (4)
- 被検出ガス中の特定成分であるNOxの濃度に応じたガス濃度信号を出力するセンサ素子と、センサ素子付近の絶縁層に埋設され、当該センサ素子を加熱するヒータとを備えたガス濃度センサを用いるガス濃度検出装置において、
前記ヒータは、パルス幅変調信号により通電が制御され、
ヒータの一端を電源電圧に接続し、他端を接地するヒータの通電回路を備え、ヒータと電源電圧との間、ヒータと接地側との間、の両方にスイッチ手段を配置して、両スイッチ手段を同時に操作してヒータの通電をオン/オフ制御するガス濃度検出装置。 - 被検出ガス中の特定成分であるNOxの濃度に応じたガス濃度信号を出力するセンサ素子と、センサ素子付近の絶縁層に埋設され、当該センサ素子を加熱するヒータとを備えたガス濃度センサを用いるガス濃度検出装置において、
パルス幅変調信号によりヒータの通電を制御する際、前記センサ素子の温度による前記絶縁層の抵抗変化に基づいて算出されるリーク電流の大きさを推定し、該推定したリーク電流の相当分だけガス濃度信号を補正するガス濃度検出装置。 - 前記ガス濃度センサは、電圧印加に伴い被検出ガス中の余剰酸素を排出しつつその酸素濃度に応じた電流を流す第1セルと、同じく電圧印加に伴い余剰酸素排出後のガス成分から特定成分の濃度に応じた電流を流す第2セルとを含む複数のセルを有するセンサ素子と、前記複数のセルを加熱するヒータとを備えてなる請求項1または2の何れかに記載のガス濃度検出装置。
- 前記ガス濃度センサは、特定のガス濃度に応じた起電力を発生するセルを有するセンサ素子と、センサ素子付近の絶縁層に埋設され、当該センサ素子を加熱するヒータとを備えてなる請求項1〜3の何れかに記載のガス濃度検出装置。
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