JP4324346B2 - 有機酸製剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難溶性有機酸を瞬時に溶解できる速溶性の有機酸製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、食品添加物の酸味料として認められているフマル酸、アジピン酸、コハク酸等の難溶性有機酸は、溶解度が小さいために殆ど使用されていないのが現状である。特に、フマル酸は酸性度も高く、その酸味もクエン酸やリンゴ酸よりかなり強く、少量の使用量で有効であり、かつ安価でもある。
【0003】
しかしながら、このフマル酸は、吸湿性が殆どなく、溶解速度が小さく比重も小さいため、水に添加されたとき、水面に浮上し溶解させるのに長時間を要する欠点がある。そのため、高価なクエン酸やリンゴ酸に代替されているのが現状である。
また、フマル酸は、有機酸の中でも殺菌力が非常に強いために、食品(野菜等)の洗浄や食品工場等のタンク・ラインの洗浄や一般的な殺菌洗浄剤としての利用価値が高いものである(特許第2967481号掲載公報、特開平11−246312号公報)。
【0004】
一方、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸は、海藻や農作物等の植物の病害菌を駆除する農薬の代替としても注目されている(特開昭60−244245号公報、特開平8−109105号公報)。
例えば、海苔養殖においては、養殖中に発生する赤腐れ病、白腐れ病、壷状菌病等の病害や珪藻、アオノリ等の雑藻類を駆除する殺藻殺菌剤として有機酸が使用されている。使用方法は、クエン酸、乳酸等の有機酸溶液(0.05〜1%)に海苔養殖網を浸漬したり、有機酸液を直接散布する方法で行われている。
【0005】
しかしながら、フマル酸等の難溶性有機酸は、上述と同様に、海苔の病害等に対して高い殺菌力を示すことがわかっているが、溶解性が低く溶解するのに時間がかかりすぎる欠点があるため使用されていないのが現状である。
また、安息香酸、ソルビン酸等も保存料として有用であるが、難溶性のため、ナトリウム塩やカリウム塩で使用されることが多く、安息香酸、ソルビン酸としての使用が殆どなされていないものである。
これらのフマル酸等の難溶性有機酸は、下記表1に示すようにクエン酸・リンゴ酸と較べて溶解度が極端に低いことがわかる。
【0006】
【表1】
Figure 0004324346
【0007】
これらのフマル酸等の難溶性有機酸は、吸湿性がほとんどなく、比重も小さく水に添加されたとき、水面に浮上しなかなか溶解しないため、短時間で溶解するには加熱溶解する方法しかなく、しかも、室温にて溶解するのは困難である。
従って、フマル酸等の難溶性有機酸を簡単に溶解する方法若しくは製剤が開発されれば、安価で効果の高い酸味料、保存料、殺菌洗浄剤等を提供することが可能となるものである。
【0008】
他方、フマル酸等の難溶性有機酸の溶解性を向上させる技術としては、例えば、特公昭62−19146号公報には、疎水性粉末の食品添加物にポリグリセリン脂肪酸エステルを混合維持させることを特徴とする速溶性食品製剤の製法が開示され、また、特公昭57−54110号公報には、冷水中において高められた溶解速度を有する顆粒状フマル酸生成物において、その生成物がフマル酸及び少なくとも75重量%の三種顆以上の多糖類を含む低デニストロース、当量のマルトースデキストリン湿潤剤2.5と10重量%を含み、そして50と400の間の米国標準節寸法を有すること及び上述組成の多数の凝集した粒子から本質的になり、その粒子は10および40ミクロンの間の寸法であって、マルトースデキストリン湿潤剤で塗被されていることを特徴とする顆粒子フマル酸生成物が開示されている。
【0009】
しかしながら、これらの各公報に記載される技術でも、明細書に記載されるように、0.17%のフマル酸を溶解するのに3〜6分という時間を要している。また、即溶しないため現実的な疎水性の改善はなされていないものである。更に、疎水性を改善するために、ポリグリセリン脂肪酸エステルやマルトースデキストリンを均一に塗被しなければならず、製法が困難であると共に、界面活性剤の発泡や大量に使用するマルトースデキストリンのために味覚を損なうという課題を生じている。
【0010】
また、本出願人は、特開2001−57864号公報、特開2001−122707号公報において、フマル酸等の難溶性有機酸を水又は酸性溶液中にて200μm以下、実施例では10〜200μm以下で湿式粉砕することにより、瞬時に高濃度溶解することのできる製剤を開示している。
しかしながら、これらの公報に記載される方法は、今までにない優れたものであるが、長期保存した場合に、有機酸が固まり分散できなくなったり、溶解性が低下し使用できなくなる欠点などが生じることがわかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、長期保存した場合にも、分散性、溶解性に優れ、難溶性の有機酸を瞬時に高濃度で即溶できると共に、食品用の酸味料、殺菌剤、保存料、または植物の病害等を駆除する殺菌剤などに好適に利用することができる有機酸製剤を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために、更に、長期保管しても分散安定な製剤等とすることについて鋭意検討した結果、難溶性有機酸を特定粒径以下に粉砕した後、水又は酸性溶液中にて混合分散させた製剤とすることにより、上記目的の瞬時に高濃度溶解できる有機酸製剤を得ることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 乾式粉砕より得られる平均粒子径0.01〜5μmの下記A群から選ばれる少なくとも1種の難溶性有機酸5〜40重量%と、水又は下記B群から選ばれる酸性溶液の1種以上と、下記C群から選ばれる少なくとも1種の分散安定剤0.1〜10重量%とを含有することを特徴とする有機酸製剤。
A群:フマル酸、アジピン酸、コハク酸及び安息香酸
B群:リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、フィチン酸、イタコン酸、α−ケトグルタル酸、リン酸、塩酸
C群:ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル
(2) 更に、アルコール類、界面活性剤、抗菌類の1種以上を含有することを特徴とする上記(1)記載の有機酸製剤。
(3) 食品の酸味料、保存料、殺菌洗浄剤として使用することを特徴とする上記(1(1)又は(2)記載の有機酸製剤。
(4) 植物の病害駆除剤として使用することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の有機酸製剤。
(5) 海苔養殖用の殺藻殺菌剤として使用することを特徴とする上記(4)記載の海苔養殖用処理剤。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の有機酸製剤は、平均粒子径5μm以下の難溶性有機酸と、水又は酸性溶液の1種以上とを含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明に用いる難溶性有機酸としては、例えば、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、安息香酸、ソルビン酸などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上混合して使用することができる。これらの難溶性有機酸の中でも、酸性度も高く、その酸味もクエン酸やリンゴ酸よりかなり強く、また、殺菌力が強く、少量の使用量で有効であり、かつ安価でもある点などからフマル酸の利用価値が高いものである。
これらの難溶性有機酸は、平均粒子径5μm以下とすることが必要であり、好ましくは、0.01〜3μmとすることが望ましい。
この難溶性有機酸の平均粒子径が5μmを越えるものでは、長期保存した場合に、有機酸が固まり分散できなくなったり、溶解性が低下し使用できなくなる点が生じたりして好ましくない。
この特性を有する難溶性有機酸は、一般的には原料として市販されているフマル酸、アジピン酸、コハク酸、安息香酸、ソルビン酸などを乾式、湿式の方法で粉砕して平均粒子径5μm以下とすることにより、使用に供される。また、原料製造時に5μm以下になるよう結晶化させて取り出したものを使用しても良い。
【0015】
本発明に用いる水としては、精製水、イオン交換水、純水、水道水、海洋深層水などを挙げることができる。
本発明に用いる酸性溶液に使われる酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、フィチン酸、イタコン酸、α−ケトグルタル酸、リン酸、塩酸といった食品添加物として認められたものが挙げられ、これらは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
特に、乳酸、フィチン酸、リン酸は、常温で液体、無臭という点で作業性や使用時の用途が幅広く、フマル酸を分散させる酸性溶液としては最適である。
また、酸性溶液における酸濃度は、用いる酸種、有機酸製剤の用途により、変動するものであるが、酸性溶液中に20〜95重量%、好ましくは、60〜95重量%になることが望ましい。
これらの水又は酸性液に混合する難溶性有機酸の含有量は、特に限定されるものではないが、有機酸製剤全量に対して、5重量%(以下、単に「%」という)未満であると分散状態が悪く、難溶性有機酸の溶解性も悪くなるため、5%以上とすることが好ましい。また、難溶性有機酸の含有量は、有機酸製剤全量に対して、40%を越えると、粘度が高くなり過ぎ、製剤化が難しくなる。好ましくは、難溶性有機酸の含有量を5〜40%の範囲とすることが望ましい。
【0016】
本発明では、平均粒子径5μm以下の難溶性有機酸の分散性を更に向上させて更に分散性能、保存安定性に優れる有機酸製剤とするために、分散安定剤を含有せしめることが望ましい。
用いることができる分散安定剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルが挙げられ、これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。特に好ましくは、更なる分散安定性の点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが望ましい。
これらの分散安定剤の含有量は、有機酸製剤全量に対して、好ましくは、0.1〜20%、更に好ましくは、0.5〜10%とすることが望ましい。
【0017】
本発明の有機酸製剤は、難溶性有機酸の含有量が増えるほど粘性が高くなるものであるが、上記分散安定剤を使用することにより、粘度を低下させることができるため、分散安定剤を用いた場合は、難溶性有機酸の含有量が5〜80%の範囲での製剤化を簡単に行うことができる。
なお、本発明の有機酸製剤を希釈溶解して使用する場合は、難溶性有機酸の飽和溶解度未満にて使用することが望ましい。例えば、フマル酸の場合、水温30℃にて使用する時は、0.8%以下で使用することとなる。
【0018】
本発明の速溶性を有する有機酸製剤の使用用途としては、何ら限定されるものではないが、食品の酸味料、保存料、殺菌剤として、または、食品や食品工場等のタンク・ラインの洗浄剤として使用することができ、更に、一般的な殺菌洗浄剤としても使用することができる。
食品の酸味料としては、本発明の有機酸製剤をそのまま、または、希釈して使用することができ、保存料、殺菌剤としては、本発明の有機酸製剤をそのまま、または、希釈して使用、更に、エタノールなどのアルコール類、抗菌剤などを適宜含有せしめて使用することができる。
また、洗浄剤としては、本発明の有機酸製剤にノニオン界面活性剤などの界面活性剤、アルコール類、抗菌剤などを含有せしめて使用することができる。
更に、海藻や農作物等の植物の病害菌を駆除する製剤としても使用できる。例えば、海苔養殖中に発生する、珪藻・アオノリ等の雑藻の駆除や赤腐れ病等の病害菌の駆除剤としても使用することができる。海苔養殖用の病害菌駆除剤等としては、本発明の有機酸製剤をそのまま、または、海水などで希釈して使用、更に、他の有機酸(酢酸、リンゴ酸、クエン酸、)を組合わせて使用することができる。
なお、本発明の有機酸製剤の使用方法としては、平均粒子径5μm以下の難溶性有機酸を予め用意しておき、上述の水又は酸性溶液の1種以上に分散させて、これを希釈等して使用してもよいものである。
【0019】
このように構成される本発明の有機酸製剤では、平均粒子径5μm以下の難溶性有機酸と、水又は酸性溶液の1種以上とを含有することにより、初めて、長期保存した場合にも、分散性、溶解性に優れ、難溶性の有機酸を瞬時に高濃度で即溶できると共に、食品用の酸味料、殺菌剤、保存料、または植物(海苔養殖用を含む)の病害等を駆除する殺菌剤などに好適に利用することができるものとなる。
【0020】
【実施例】
次に、試験例による実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、下記実施例等に限定されるものではない。
【0021】
〔試験例1、実施例1〜3及び比較例1〜5〕
下記表2に示す各平均粒径となる難有機酸(フマル酸)を含有等した有機酸製剤を調製した。
得られた有機酸製剤について、製造時と1ケ月、6ケ月後の分散状態とフマル酸0.3%濃度になるように希釈溶解した時のフマル酸の溶解性を官能評価した。
なお、希釈溶解性は、20℃の水(精製水、以下同様)で希釈した後、軽く撹拌した直後の状態を観察した。各粒度のフマル酸は、乾式粉砕機を用いて製造した。
比較例3〜5は、粉体のままなので、溶解性の評価のみ行った。
これらの試験結果を下記表3及び表4に示す。
【0022】
【表2】
Figure 0004324346
【0023】
【表3】
Figure 0004324346
【0024】
【表4】
Figure 0004324346
【0025】
上記表2〜表4の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜3の5μm以下のフマル酸を水に混合分散したものは、0.3%のフマル酸濃度に希釈しても即溶解させることができることが判明した。
これに対して、本発明の範囲外となる比較例1及び2のフマル酸を5μmを越えて粉砕したものを水に混合分散した場合は、6ケ月以上の長期間保存したときに、フマル酸が分離してしまうことが判った。この分離したものはフマル酸の溶解性も低下してしまうことが判った。また、比較例3〜5の5μm以下に粉砕したフマル酸をそのまま溶解した場合、全く溶解しないことが判った。
特に、本発明の範囲となる実施例1〜3の5μm以下のフマル酸を水に混合分散させた場合は、6ケ月以上の長期保管後でも製品中の難溶性有機酸の分散状態は良好で、かつフマル酸の溶解性も良好であることが判った。
なお、実施例1〜3の有機酸製剤は、水に分散したときに増粘するが、実際の使用には問題ない位の粘度であった。この時のフマル酸は、溶解しているのではなく液中に分散した状態となっているものである。
【0026】
〔試験例2、実施例4〜6〕
下記表5に示すように、平均粒径0.5μmのフマル酸を5%、10%、40%になるように水を添加混合して有機酸製剤を調製した。
得られた有機酸製剤の状態と、0.2w/v%になるように20℃の水で希釈した時の溶解性を官能評価した。溶解状態は、希釈後軽く撹拌した直後の状態を観察した。
これらの結果を下記表5に示す。
【0027】
【表5】
Figure 0004324346
【0028】
上記表5の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例4〜6は、溶解性が良好であり、製剤の状態も分散が良好となるものであった。
【0029】
〔試験例3、実施例7〜10及び比較例6〜9〕
下記表6に示すように、水700gに平均粒径1μmのアジピン酸、ソルビン酸、コハク酸、安息香酸をそれぞれ300g添加混合し有機酸製剤を調製した。
得られた有機酸製剤の状態と、0.1w/v%になるように20℃の水で希釈した時の溶解性を官能評価した。溶解状態は、希釈後軽く撹拌した直後の状態を観察した。
比較例6〜9として平均粒径1μmのアジピン酸粉体、ソルビン酸粉体、コハク酸粉体、安息香酸粉体をそれぞれ0.1w/v%になるよう添加溶解した。
これらの結果を下記表6に示す。
【0030】
【表6】
Figure 0004324346
【0031】
上記表6の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例7〜10は、本発明の範囲外となる比較例6〜9に較べて、溶解性が良好であり、製剤の状態も分散が良好となるものであった。
【0032】
〔試験例4、実施例2、11〜14及び比較例10〜11〕
水699gに平均粒径1μmのフマル酸を300g添加混合した後、下記表7に示す分散安定剤等を1g(1%)添加し製剤化を行った。
得られた有機酸製剤の製造時と、6ケ月後、1年後の製品安定性と希釈時の溶解性を官能評価した。
これらの結果を下記表8及び表9に示す。
【0033】
【表7】
Figure 0004324346
【0034】
【表8】
Figure 0004324346
【0035】
【表9】
Figure 0004324346
【0036】
上記表7〜表9の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例2、11〜14は、本発明の範囲外となる比較例10及び11に較べて、溶解性が良好であり、製剤の状態も分散が良好となるものであった。
特に、分散安定剤を含有せしめた実施例11〜14は、溶解性が更に良好であり、製剤の状態も分散が良好となるものであった。
また、分散安定剤を含有せしめた実施例11〜14は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の分散安定剤を使用することによって、実施例2の分散性安定剤を含有しない場合よりも、フマル酸の溶解性を更に向上できると共に、製造時の粘性を低下させることもでき、使用しやすい製剤になることが判った。
なお、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の分散安定剤では、増粘は抑えることができるがフマル酸などの難溶性有機酸の溶解性がなくなってしまうものとなる。すなわち、本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の分散安定剤を使用することにより、長期保管後の難溶性有機酸の溶解性を向上させ、かつ製品の増粘を防止できるのである。
【0037】
〔試験例5、実施例15〜19〕
下記表10に配合組成、すなわち、乳酸に水を添加した後、各分散安定剤を添加して溶解せしめた。その後1μmの各フマル酸が30%になるように添加し分散混合した。上記試験例3と同様に、6ケ月後、1年後の製品安定性と希釈時の溶解性を官能評価した。
これらの結果を下記表11に示す。
【0038】
【表10】
Figure 0004324346
【0039】
【表11】
Figure 0004324346
【0040】
上記表10及び表11の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例15〜19は、6ケ月以上の長期間保存したときにも、溶解性が良好であり、製剤の状態も分散が良好となるものであった。
【0041】
〔試験例6、実施例20〜24〕
下記表12に示すように、水に分散安定剤(ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル)を添加し溶解した後、平均粒径0.5μmのフマル酸を添加し混合して有機酸製剤を調製した。
分散安定剤は3%、平均粒径0.5μmのフマル酸をそれぞれ5、10、40、50、80%となるように投入した。
液の分散状態と、0.2w/v%になるように20℃の水で希釈した時の溶解性を評価した。溶解状態は、希釈後軽く撹拌した直後の状態を観察した。
これらの結果を下記表12に示す。
【0042】
【表12】
Figure 0004324346
【0043】
上記表12の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例20〜24は、分散安定剤を含有せしめた場合には、難溶性有機酸の含有量を5〜80%においても、溶解性が良好であり、製剤の状態も分散が良好となり、粘性が低く取り扱いやすいものとなることが判明した。
【0044】
上記試験例1〜6(表2〜12)の結果を総合すると、平均粒子径5μm以下の難溶性有機酸と、水又は酸性溶液の1種以上とを含有する有機酸製剤とすることにより、初めて、長期保存した場合にも、分散性、溶解性に優れ、難溶性の有機酸を瞬時に高濃度で即溶できるものとなる。
この優れた本発明の有機酸製剤の用途としての一例、植物の病害等を駆除する海苔養殖用の殺菌・殺藻剤の配合組成を以下に示す。
【0045】
〔実施例25〜29、本発明の有機酸製剤の海苔養殖用殺菌・殺藻剤への用途〕海苔養殖用の殺菌・殺藻剤として上記実施例15〜19の有機酸製剤(10℃、暗所6ケ月瓶での保存後)を海水で希釈して用いた。すなわち、上記で得た実施例15〜19の6ケ月保存後の有機酸製剤を下記表13に示す濃度の希釈液(海水希釈)にして各海苔養殖用の殺菌・殺藻剤とした。この各濃度の希釈液(殺菌・殺藻剤)200mlに赤腐れ菌感染海苔葉体を10℃にて下記表13に示す各時間で浸漬処理した後、海水で洗浄し、一昼夜静置し赤腐れ菌の駆除効果を評価した。これらの結果を下記表13に示す。
上記同様に6ケ月保存後の有機酸製剤を下記表14に示す各濃度の希釈液(殺菌・殺藻剤)に珪藻(リクモフォラ)付着海苔葉体を10℃にて下記表14に示す各時間で浸漬処理した後、海水で洗浄し、一昼夜静置し珪藻駆除効果を評価した。これらの結果を下記表14に示す。
【0046】
【表13】
Figure 0004324346
【0047】
【表14】
Figure 0004324346
【0048】
上記表13及び表14の結果から明らかなように、実施例25〜29の有機酸製剤は、長期保存後にも優れた溶解性を有すると共に、海苔養殖用殺菌・殺藻剤として優れた赤腐れ菌、珪藻駆除効果を有するものであった。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、長期保存した場合にも、分散性、溶解性に優れ、難溶性の有機酸を瞬時に高濃度で即溶できると共に、食品用の酸味料、殺菌剤、保存料、または植物の病害等を駆除する殺菌剤などに好適に利用することができる有機酸製剤が提供される。

Claims (5)

  1. 乾式粉砕より得られる平均粒子径0.01〜5μmの下記A群から選ばれる少なくとも1種の難溶性有機酸5〜40重量%と、水又は下記B群から選ばれる酸性溶液の1種以上と、下記C群から選ばれる少なくとも1種の分散安定剤0.1〜10重量%とを含有することを特徴とする有機酸製剤。
    A群:フマル酸、アジピン酸、コハク酸及び安息香酸
    B群:リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、フィチン酸、イタコン酸、α−ケトグルタル酸、リン酸、塩酸
    C群:ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル
  2. 更に、アルコール類、界面活性剤、抗菌類の1種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の有機酸製剤。
  3. 食品の酸味料、保存料、殺菌洗浄剤として使用することを特徴とする請求項1又は2記載の有機酸製剤。
  4. 植物の病害駆除剤として使用することを特徴とする請求項1又は2記載の有機酸製剤。
  5. 海苔養殖用の殺藻殺菌剤として使用することを特徴とする請求項記載の海苔養殖用処理剤。
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