JP4324317B2 - 既存建築物の制振補強用間柱 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地震等に対する補強を行うための既存建築物の制振補強用間柱に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、既存不適格RC構造物の制振補強が盛んに行われており、特開2000−1999号公報及び特開2000−45538号公報に示すように、間柱を用いたダンパーの取付方法が数多く提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
間柱を用いる方法は、ブレースを利用する補強方法と比較すると、開口部が確保しやすいという利点があるが、間柱部材が大きくなるという欠点がある。
間柱部材が大きくなると、以下の問題点が出てくる。
▲1▼小規模な建築物は、エレベーターや階段、または通路等の動線も小規模である。このような建築物に大きな間柱部材を搬入する場合、動線内を間柱部材を通過させるのが難しく、また、既存建築物の内装を傷つける恐れが有るなど、既存建築物内への間柱部材の搬入は難しい。
▲2▼大きな間柱部材は、クレーン等の機材を用いなければ所定の場所に設置できない。これらの機材を既存建築物内に搬入するには手間がかかる。
▲3▼利用する部材が大きくなるほど、作業に要する空間(作業空間)も広くなってしまい、建築物によっては、充分な作業空間を確保できない。
以上のような問題点から、人が建築物を利用している状態で補強作業(居ながら補強)を行うことが難しい。
【0004】
本発明の課題は、搬入や作業にスペースや機材を要さず、人が建築物を利用している状態で作業を行うことができる、既存建築物の制振補強用間柱を提案することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決すべく本発明は、例えば図1及び図3に示すように、既存の建築物の柱(10)と梁(11)とに囲まれた開口部(12)に、間柱(1)を設置することによって制振補強を行う既存建築物の制振補強用間柱であって、複数の鋼部材(2a、2b)を組み立てて構成されていることを特徴としている。
即ち、本発明の既存建築物の制振補強用間柱は、
運搬できる大きさの鋼部材によって形成される上部及び下部と、上部及び下部の間に設けられるダンパーとを備え、
前記上部及び下部のうち下部は、複数本のH形鋼がフランジ部分で重なるように積み上げられてそれぞれが高力ボルトで接合され、
前記上部は、積み上げられる2本のCT形鋼と1本以上のH形鋼とを有し、
前記2本のCT形鋼は、ウエブの先端同士を当接した状態で、スチフナー同士が対向して当接するように上下に対向配置され、
前記対向するスチフナー同士は複数枚の鋼板で挟み、高力ボルトで締結することによって接合され、
前記CT形鋼の対向するウエブ同士は、両ウエブに跨るように複数枚の鋼板で挟み、高力ボルトで締結することによって接合され、
前記各鋼板には、高力ボルトが貫通するボルト穴がそれぞれ設けられ、かつ、一方のCT形鋼側のボルト穴を長穴として、高さ調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、複数の鋼部材を組み立てて間柱を形成することにより、運搬する際に間柱を分割することができる。従って、通路等の動線が小さい既存建築物内部への間柱の搬入や所定の階への移動を容易に行うことができ、既存建築物の内装等を傷つけてしまうことも防止できる。
【0008】
また、本発明によれば、鋼部材を既存建物内で運搬できる大きさとすることにより、間柱を設置するための大型機材等が不要となるので、機材搬入等にかかる手間を省くことができる。また、鋼部材が小さく形成されるので、作業の安全性が向上すると共に、作業空間が小さくても良くなるため、既存建築物を使用しながら制振補強作業を行うことができる。
【0010】
また、本発明によれば、鋼部材は、高力ボルト接合によって組み立てられるので、組み立て作業を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明によれば、鋼部材の間にダンパーを介在することにより、地震等により間柱に生じる振動を減衰することができ、これにより既存建築物を制振することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明の既存建築物の制振補強用間柱1は図1に示すように、鋼部材2によって形成される上部1a及び下部1bと、上部1a及び下部1bの間に介在するダンパー3とから概略構成されている。
間柱1を構成する鋼部材2は、流通されている鋼部材、例えば、H形鋼、I形鋼、CT形鋼、溝形鋼等を用いることが可能であるが、容易に積み重ねることができるH形鋼が最適である。また、鋼板を溶接して形成したビルドH形鋼を用いても良い。間柱1の上部1a及び下部1bは、図6〜図8に示すようにH形鋼のみで構成しても良いし、図1〜図5に示すように、H形鋼及びCT形鋼を用いて構成してもよい。
ここでは主に、図1〜3に示される間柱1を用いて説明を行う。
【0017】
間柱1の上部1a及び下部1bは、図2(a)および(b)に示すように、4本のH形鋼2aと2本のCT形鋼2bから構成されている。H形鋼2a及びCT形鋼2bは、それぞれ、2〜4人の作業者が手で運搬できる大きさに形成し、ウェブには必要に応じてスチフナー4が添え付けられている。
【0018】
間柱1の下部1bは、上述のように形成したH形鋼2aをフランジ部分で重ね合わせて、3本積み上げ、それぞれを高力ボルト5で接合する。
一方、間柱1の上部1aは、2本のCT形鋼2bと1本のH形鋼2aとを積み上げて形成する。2本のCT形鋼2bは、ウェブの先端同士を当接した状態で、スチフナー4同士が対向して当接するように形成されており、この対向するスチフナー4を2枚の鋼板6で挟み、高力ボルト5で締結することによって接合する。同時に、ウェブ側面でも、2本のCT形鋼2bのウェブに跨るように鋼板7を取付けて2本のCT形鋼2bを接合する。このCT形鋼2bの一方のフランジにH形鋼2aのフランジを重ね、高力ボルト5で締結して間柱1の上部1aが構成される。
【0019】
鋼板6及び鋼板7には、高力ボルト5が貫通するボルト穴8が設けられているが、一方のCT形鋼2b側のボルト穴8を長穴とし、これにより高さの微調整が可能とする。なお、上部1a及び下部1bの構造は図4及び図5に示すようにな構造として高さ調節可能としても良い。
また、高さの微調整が必要ない場合は、図6〜図8に示すように、H形鋼2aのみで構成しても良い。この場合、H形鋼2aのフランジ部分で接合を行うことができるので、鋼板6及び鋼板7は不要となる。
【0020】
以上のように構成した間柱1の上部1aと下部1bの間に、ダンパー3を介在させ、高力ボルト5によって間柱1の上部1a及び下部1bと接合し、間柱1が形成される。なお、このダンパー3は、間柱1の振動を減衰できるもので、鋼部材2の間に介在できるものであればどのようなものでも良い。
【0021】
構成された間柱1は、図3に示すように、建築物の柱10及び梁11に囲まれた開口部12に取付けられる。開口部12へは、各鋼部材2を結合しない状態で作業者の手や小型台車等を用いて搬入し、開口部12内で上述したように組み立てる。間柱1は、上端及び下端にて、接合部材9を介して既存建築物の梁11に接合される。接合部材9としては、あと施工アンカー、またはエポキシ樹脂を用いる。間柱1を設置することによって梁11にせん断力が生じる可能性が予想される場合は、梁11に補強を行っても良い。
なお、あと施工アンカーで接合する場合、アンカーの設置数が少ないと地震等の作用外力に対してアンカーが破損してしまうことが考えられるので、図5、図7及び図8に示すように、間柱1の上部1a及び下部1bをピラミッド状として梁11に対向する側を長くし、アンカー打設本数を多くしても良い。
【0022】
このように、上記実施の形態の既存建築物の制振補強用間柱によれば、2〜4人の作業者で搬入できる大きさの複数の鋼部材2(H形鋼2aあるいはCT形鋼2b)を組み立てて間柱1を形成することにより、運搬や設置の際に大型機材等が不要となり機材搬入等にかかる手間を省くことができると共に、通路等の動線が小さい既存建築物内部への間柱1の搬入や所定の階への移動を容易に行うことができ、既存建築物の内装等を傷つけてしまうことを防止できる。また、鋼部材2が小さく形成されることにより、作業上の安全性が向上すると共に、作業空間が小さくても良くなるため、既存建築物を通常通りに使用しながら制振補強作業を行うことができる。
【0023】
流通している鋼部材2を用いたことにより低コストで間柱1を形成することができる。特にH形鋼2aを用いると、低コストでできるだけでなく、積み重ねやすいため、間柱1の形成を容易に行うことができる。また、H形鋼2aのフランジがスチフナーとして作用するため、間柱1の座屈防止となるので、H形鋼2aのウェブを薄くすることが可能となり、間柱1の重量を軽くすることも可能である。また、CT形鋼2bを用いることにより、高さ調節可能な間柱1を形成することもできる。
さらに、鋼部材2の結合を高力ボルト5を用いて行うことにより、結合を迅速かつ容易に行うことができ、作業工程を更に短縮することができる。
【0024】
なお、以上の実施の形態例の図3においては、1つの開口部に間柱を1本のみ設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、必要に応じて複数の間柱を設置しても良い。
また、鋼部材としてはH形鋼、CT形鋼だけでなく、I形鋼、溝形鋼などのその他の流通している鋼材やビルドH形鋼等を用いても良い。
間柱の形状、大きさ等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、間柱を複数の鋼部材を組み立てて形成するようにしたことにより、間柱の既存建築物への搬入や所定階への移動等の際に分割することができる。従って、通路等の動線が小さい既存建築物へ設置する際の間柱の搬入や移動を容易に行うことができる。また、搬入時に既存建築物の内装等に損傷を与えるのを防止できる。
【0026】
また、本発明によれば、鋼部材を既存建築物内で運搬できる大きさにすることにより、鋼部材が小さく形成される。従って、間柱設置作業に要する空間が小さくても良くなるため、既存建築物を使用しながら制振補強作業を行うことができると共に、作業の安全性も向上する。また、間柱を設置するためのクレーン等の大型機材等が不要となるので、機材搬入等にかかる手間を省くことができる。
【0027】
また、本発明によれば、各鋼部材は、高力ボルトによって接合されるので、組み立て作業を容易に行うことができる。
【0028】
また、本発明によれば、鋼部材として流通している鋼部材を用いることにより、低コストで間柱を形成することができる。特に、H形鋼を用いることにより、積み重ねが行いやすいため、間柱の形成を容易に行うことができる。
【0029】
また、本発明によれば、鋼部材に介在したダンパーが、地震等により間柱に生じた振動を減衰するので、既存建築物を制振することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一例としてのCT形鋼及びH形鋼を用いた間柱の組立状態を示す側面図である。
【図2】図1における間柱の構造を示す側面図であり、
(a)は組立て前の各鋼部材の構造を示す図であり、
(b)は組立後の間柱の構造を示す図である。
【図3】図1における間柱の既存建築物への取付状態を示す概略側面図である。
【図4】CT形鋼及びH形鋼を用いた他の間柱の構造を示す側面図である。
【図5】CT形鋼及びH形鋼を用い、梁に対向する側を長くした間柱の構造を示す側面図である。
【図6】H形鋼のみを用いて形成した間柱の一例を示す側面図である。
【図7】H形鋼のみを用い、梁に対向する側を長くした間柱の一例を示す側面図である。
【図8】H形鋼のみを用い、梁に対向する側を長くした間柱のその他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 間柱
2 鋼部材
2a H形鋼
2b CT形鋼
3 ダンパー
5 高力ボルト
10 柱
11 梁
12 開口部
Claims (1)
- 既存の建築物の柱と梁とに囲まれた開口部に、間柱を設置することによって制振補強を行う既存建築物の制振補強用間柱であって、
運搬できる大きさの鋼部材によって形成される上部及び下部と、上部及び下部の間に設けられるダンパーとを備え、
前記上部及び下部のうち下部は、複数本のH形鋼がフランジ部分で重なるように積み上げられてそれぞれが高力ボルトで接合され、
前記上部は、積み上げられる2本のCT形鋼と1本以上のH形鋼とを有し、
前記2本のCT形鋼は、ウエブの先端同士を当接した状態で、スチフナー同士が対向して当接するように上下に対向配置され、
前記対向するスチフナーは複数枚の鋼板で挟み、高力ボルトで締結することによって接合され、
前記CT形鋼の対向するウエブ同士は、両ウエブに跨るように複数枚の鋼板で挟み、高力ボルトで締結することによって接合され、
前記各鋼板には、高力ボルトが貫通するボルト穴がそれぞれ設けられ、かつ、一方のCT形鋼側のボルト穴を長穴として、高さ調整可能に構成されていることを特徴とする既存建築物の制振補強用間柱。
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