JP4324252B2 - 繊維害虫用防虫剤および防虫方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維害虫防虫剤およびこれを用いる防虫方法に関し、さらに詳細には、例えば、イガ、コイガ、ヒメマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシ等の繊維害虫の成虫が繊維製品に近づいて産卵することを防ぐとともに、すでに産卵されていた場合でも、卵の孵化を抑制することにより、より十分に繊維製品の食害を防ぐ繊維害虫防虫剤および防虫方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、衣料等の繊維製品は繊維害虫の幼虫により食害を受けることが多く、これを防ぐ方法として、パラジクロルベンゼン、ナフタリン、しょうのう、ピレスロイド系化合物等が防虫剤として使用されている。この防虫剤は、繊維害虫の幼虫に対して作用し、摂食阻害、忌避、殺虫等の効果を有するとされている。
【0003】
これに対して、本発明者らはさきに、繊維製品を食害するのは幼虫であるが、繊維害虫の成虫が繊維の保管場所に侵入して産卵し、それが孵化して幼虫となり、食害を与えるのであるから、繊維製品を繊維害虫の侵入しない状況下におけば、産卵も幼虫の発生も生じず、十分に食害防止効果が期待できるとの考えに基づき、繊維害虫成虫が忌避し、しかも人体に悪影響を与えない化合物を探索した結果、いくつかのテルペン系化合物がこのような性質を有することを見い出し、これらの化合物によって成虫の侵入を防ぐ新規な防虫剤及び防虫方法を提案した(特開平7−112907号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法により、大半の繊維害虫の食害は防止できるが、例えばクリーニングをしないで繊維製品を保管した場合などには、微小な繊維害虫の卵が付着していないとは限らず、完全に食害が防げるとは限らない。したがって、より十分な防虫効果を期すためには、このような場合にも、付着した卵が孵化して幼虫となり食害を与えるのを防止できることが望ましい。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、より十分に繊維害虫の食害を防ぐためには、卵の孵化も防止する必要があると考え、卵の孵化を抑制する化合物を探索した結果、従来幼虫に対して有効とされてきたパラジクロルベンゼン、ナフタリンおよびピレスロイド系化合物は、幼虫に対する防虫作用を目的として用いる量よりも有意に少ない量で卵の孵化を抑制しうること、並びに、テルペン系化合物には卵の孵化を防ぐ作用もあり、パラジクロルベンゼンおよびナフタリンには成虫の侵入を防ぐ作用もあるとの知見を得た。したがって、テルペン系化合物と、パラジクロルベンゼン、ナフタリンまたはピレスロイド系化合物を併せて用い、それぞれの化合物の成虫および卵への作用を考慮して適当な使用量を選べば、従来防虫剤として用いられた量より少ない量で、しかも成虫と卵のふたつのステージでより効果的に繊維害虫を防除しうることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、次の二成分、
a.テルペン系化合物;および
b.パラジクロルベンゼン、ナフタリンまたはピレスロイド化合物から選ばれた1または2以上の化合物;
を有効成分として含有する繊維害虫防虫剤を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、上記防虫剤を繊維製品に適用することを特徴とする防虫方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において卵の孵化を抑制するというのは、卵および/または孵化した直後の若齢幼虫を死滅させることにより、食害を与えるような幼虫に成長するのを抑制することをいう。
【0009】
本発明防虫剤において用いられるテルペン系化合物(本明細書において、「a成分」ということがある)は、主として繊維害虫の成虫を忌避するために用いられるが、卵の孵化を抑制する作用も奏するものである。a成分としては、例えばリナロール、ゲラニオール、ボルネオール、ネロリドール、ネロール、α−テルピネオール、ペリラアルデヒド、シトラール、しょうのう、α−ヨノン、1,8−シネオール、リナロールオキサイド、シトラールジエチルアセタール等が挙げられる。これらのテルペン系化合物は、精油または香料成分として知られているものである。したがって本発明においては、上記のテルペン系化合物に替え、これを含む精油、例えばラベンダー油、芳油、ローズマリー油、パルマローザ油、セージ油、イリス油、しょうのう油等をa成分として有効に使用することができる。
【0010】
上記a成分のうち、好ましいものとしては、リナロール、ゲラニオール、ボルネオール、ペリラアルデヒド、リナロールオキサイド、シトラールジエチルアセタール、ラベンダー油および芳油が挙げられる。その中でも特に、リナロール、ペリラアルデヒド、シトラールジエチルアセタール、ラベンダー油および芳油が好ましい。
なお、a成分は、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
また、本発明防虫剤において、パラジクロルベンゼン、ナフタリンおよびピレスロイド系化合物(本明細書において、これらを「b成分」ということがある)は、主として繊維害虫の卵の孵化を抑制するために用いられるものであるが、このうちパラジクロルベンゼンおよびナフタリンについては成虫に対する忌避作用も有する。従って、パラジクロルベンゼンおよびナフタリンについてはa成分による成虫忌避作用を補完する役割も果たす。また、b成分のピレスロイド系化合物としては、揮散性のあるもの、例えばエムペントリン、ノックスリン等が適当であり、特にエムペントリンが好ましい。なお、上記b成分は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
本発明の所期の目的を達成するために必要なa、b成分の量は、それぞれの成分が有する成虫忌避効果および卵孵化抑制効果を勘案して定めることができる。本発明の基本的な技術思想は、a成分により繊維害虫を忌避し、b成分により繊維害虫の卵の孵化を抑制することにより、全体として繊維製品の繊維害虫による食害を防ぐというものである。
しかしながら、a成分やb成分として挙げられた化合物がそれぞれ繊維害虫成虫忌避作用や、繊維害虫卵孵化抑制作用のみを有するとは限らず、強弱はあるものの双方の作用を有することもある。このような場合に、a成分の有する繊維害虫卵孵化抑制作用やb成分の有する繊維害虫成虫忌避作用をも考慮して、繊維害虫用防虫剤を設計することができることはいうまでもない。
【0013】
例えば、本発明のb成分のうち、パラジクロルベンゼンおよびナフタリンは、卵の孵化を抑制する量を使用したとき、完全に成虫の侵入を忌避することはできないが、かなり強い忌避効果も示す。したがって、b成分としてパラジクロルベンゼンまたはナフタリンを用いる場合は、成虫の忌避効果の不足分を補うために、少量のa成分を加えるだけでよい。
【0014】
具体的には、パラジクロルベンゼンを有効成分とし、幼虫に作用させる現在の防虫剤の標準的な使用量は、収納容器容量50lにつき80gであり、これによって4ないし6ケ月持続する。これに対して、卵の孵化抑制を目的とする場合は、上記標準使用量の約四分の一すなわち約20gで有効である。通常、この条件では幼虫の食害を十分に抑えることはできない。また、収納容器への成虫の侵入を完全に忌避することもできない。
これに対して、標準使用量の約四分の一のパラジクロルベンゼンと、その重量の0.2%ないし2%のテルペン系化合物を併せて用いれば、成虫の侵入も完全に忌避することができる。より効果の完全を期すために、標準使用量の四分の一以上の量を用いてもよいことは、いうまでもない。
【0015】
すなわち、本発明における好適なひとつの実施態様は、パラジクロルベンゼンと、その重量の0.2%ないし2%のテルペン系化合物を有効成分として含有する繊維害虫用防虫剤である。また、繊維製品に、収納容器容量50lにつき、20g以上50g以下の該防虫剤を適用し、4ないし6ケ月間持続させることを特徴とする防虫方法である。
【0016】
同様に、ナフタリンを有効成分とし、幼虫に作用させる防虫剤の標準的な使用量は、収納容器容量50lにつき100gであり、これによって5ないし6ケ月持続する。これに対して、卵の孵化抑制を目的とする場合は、上記標準使用量の約六分の一すなわち約15gで有効である。通常この条件では、幼虫の食害を十分に抑えることはできない。また、収納容器への成虫の侵入を完全に忌避することもできない。
これに対して、標準使用量の約六分の一のナフタリンと、その重量の0.2%ないし2%のテルペン系化合物を併せて用いれば、成虫の侵入も完全に忌避することができる。より効果の完全を期すために、標準使用量の六分の一以上の量を用いてもよいことは、いうまでもない。
【0017】
すなわち、本発明における好適な他の実施態様は、ナフタリンと、その重量の0.2%ないし2%のテルペン系化合物を、有効成分として含有する繊維害虫用防虫剤である。また、繊維製品に、収納容器容量50lにつき、15g以上50g以下の該防虫剤を適用し、5ないし6ケ月間持続させることを特徴とする防虫方法である。
【0018】
b成分のうちピレスロイド系化合物は、卵の孵化を抑制する量を使用したとき、成虫の忌避効果をほとんど示さない。したがって、b成分としてピレスロイド系化合物を用いる場合には、a成分であるテルペン系化合物は、成虫を忌避するために十分な量(それ単独で成虫を忌避するときと同じ量)を用いる必要がある。その量は、防虫剤の製品形態および使用場所に応じて決められる。一方、テルペン系化合物は、卵の孵化抑制効果も有するので、ピレスロイド系化合物の量は、その効果を勘案し、それ単独で卵の孵化を抑制するときより、少なくすることができる。
【0019】
また、ピレスロイド系化合物は一般に揮散性が小さい。エムペントリンはその中では比較的揮散性が大きいが、それでも他のa、b成分と比べれば揮散性が小さい。そのためピレスロイド系化合物が収納容器内に十分に揮散し効力を発揮するまでにはある程度の期間を要する。a成分とピレスロイド系化合物を併用する場合は、ピレスロイド系化合物が十分に揮散する前にa成分が揮散して忌避効果を発揮するため、結果的にピレスロイド系化合物の初期の性能を補完増強する効果が得られる。
【0020】
本発明における好適な別の実施態様は、この時間的な補完効果を目的とし、ピレスロイド系化合物が十分にその性能を発揮するまでの初期の期間のみ成虫を忌避するのに有効な量のa成分を含有し、かつ、そのような量のa成分を揮散させるように調節した繊維害虫用防虫剤である。この場合、例えばa成分が1週間から2、3ヶ月程度の期間で揮散するように設計することができる。この防虫剤は、最初に主として忌避成分が揮散してテルペン系化合物の芳香を発し、次いで主として卵の孵化抑制成分が揮散する。このため、使用開始時には香りで防虫効果を知覚することができ、使用終了時には無臭となって繊維製品ににおいを残さない特徴を持つものである。
【0021】
このように、本発明に必要なa、b成分の量は、ともに繊維害虫の幼虫に適用する場合よりも少なくてよいのみならず、a、b成分間の相互補完作用により、それぞれを単独で成虫忌避および卵孵化抑制に用いる場合よりも少なくすることができる。
なお、効果の完全を期すため、もちろんこれより多い量を用いてもよい。例えば、繊維害虫の成虫を忌避するために有効な量のa成分と、繊維害虫の卵の孵化を抑制するために有効な量のb成分を組み合わせて配合することも可能である。
また、a,b成分の量をさらに多くして、成虫の忌避効果と、幼虫の食害抑制効果を持つ防虫剤とすることもできる。
【0022】
本発明の防虫剤は、上記のa成分およびb成分を、成虫忌避および卵孵化抑制のために十分な量になるよう組み合わせ、これに必要に応じて香料、酸化防止剤等の任意成分を加え、製剤化することによって調製される。
【0023】
本発明の防虫剤の剤形としては、a成分ならびにb成分のうちのピレスロイド系化合物については、多孔質担体や昇華性担体等に担持させた固形製剤や、成分をそのまま、あるいは適当な溶剤に溶解もしくは可溶化させた液体製剤等が、b成分のうちのパラジクロルベンゼン及びナフタリンについては、粉末、顆粒あるいは錠剤等の固形製剤や、適当な溶剤に溶解させた液体製剤等が挙げられる。
【0024】
このうち固形製剤は、さらに気体透過性の包装材、例えばプラスチックフィルム、有孔プラスチックフィルム、不織布をラミネートしたプラスチックフィルム等で被った包装袋製剤とすることができる。
【0025】
一方、液体製剤はさらに、液体不透過・気体透過性フィルムで被った包装袋製剤、液体をゲル化させたゲル状製剤、スプレー状製剤、あるいは液芯型製剤等として用いることができる。
【0026】
これらの製剤を調製するとき、多孔質担体としては、紙、不織布、布、木材、パルプ、木炭、ケイ酸塩、ゼオライト、ベントナイト、素焼などを、昇華性担体としては、トリシクロデカン、シクロドデカン、2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサンなどのほか、b成分であるパラジクロルベンゼン、ナフタリンを用いることができる。これらは、マット状、シート状、フィルム状、粉状、粒状、チップ状、打錠形など適当な材形で用いることができる。
【0027】
一方、溶剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類などのほか、a成分を含む香料類なども用いることもできる。
【0028】
本発明の防虫剤を有効に使用するためには、衣類を保管する環境(以下、「保管場所」という)において有効成分aおよびbの濃度が、成虫を忌避し、かつ卵の孵化を抑制するように、それぞれの成分の揮散量を調節しなければならない。しかし、一般にa、b成分の蒸気圧は異なるため、両成分を直接揮散させたり、同一の気体透過性フィルムで被った場合には、蒸気圧の大きい成分の揮散が大きくなり過ぎ、目的とする濃度を得ることができない。そのため、揮散性の大きい成分に揮散抑制剤を加えたり、マイクロカプセル内に揮散性の大きい成分を内包することによって、揮散性を調節するのが適当である。
【0029】
また、b成分としてパラジクロルベンゼンまたはナフタリンを用い、これに少量のa成分を加える場合には、パラジクロルベンゼンまたはナフタリンを昇華性担体とし、その中にa成分を均一に担持させることができる。また、a成分を多孔質担体に担持させたものをパラジクロルベンゼンまたはナフタリンの中に均一に分散させることもできる。これらの方法によって、粉末、顆粒あるいは錠剤等の固形製剤とすれば、固形製剤の表面に露出するa、b両成分の比率をほぼ一定に保ち、両成分の濃度を一定の範囲に維持することができる。
【0030】
さらに、a成分とb成分を分離し、それぞれを透過性の異なるフィルムで被うこともできる。分離の仕方としては、二つの包装袋としてもよいし、一方の成分を内袋に収納し他方の成分とともに外袋に収納してもよい。さらに、一つの包装袋を中間で仕切って2室を設ける形でもよいし、3枚のフィルムを重ねその周囲をシールして2室を設ける形でもよい。このとき、包装袋の1面は同一のフィルムを用いてもよいし、またこの面を気体不透過性とし、他方の面のみから揮散させることもできる。
【0031】
本発明の防虫剤の具体的な使用方法としては、タンス、衣裳函等の密閉容器内で用いる他、繊維製品のそばに置く方法、クローゼット等の入り口に置く方法、防虫剤を含浸したカーテンやカバーでクローゼット等の入り口や繊維製品を被う方法、繊維製品や収納容器の壁面に液状またはスプレー状の防虫剤を散布する方法等が挙げられる。
【0032】
【作用】
従来、繊維害虫の防虫・防除が、繊維害虫の幼虫に対する摂食阻害作用、忌避作用、殺虫作用を中心に考えられてきたのに対し、本発明は、卵の孵化抑制という新しい視点から防除を図るものである。
すなわち、b成分の化合物は、幼虫に対する有効性が知られている薬剤であるが、本発明では幼虫の防除に必要な量より有意に少ない量で、卵の孵化を有効に抑制することができる。
【0033】
さらに、a成分には卵孵化抑制効果もあり、b成分のうち、パラジクロルベンゼンおよびナフタリンには成虫忌避効果もある。そのため、これらを併用する本発明では、a,b成分の量は、ともに幼虫に適用する場合よりも少なくてよいのみならず、それぞれを単独で成虫忌避および卵孵化抑制に用いる場合よりも少なくすることができる。
【0034】
なお、幼虫と卵に対するこのような作用の違いは、ピレスロイド系化合物については既に報告されているが、この作用の違いがこれらの化合物全般に当てはまることであり、パラジクロルベンゼンおよびナフタリンについて顕著であることは、本発明者らにより初めて見出されたことである。
【0035】
【発明の効果】
本発明の防虫剤は、従来の防虫剤のように繊維害虫の幼虫に対する薬理効果が出るまで使用する必要がないので、より少ない量を使用すればよく、このような量でも繊維害虫成虫を繊維製品に近づけることがないのみならず、たとえ繊維害虫の卵が付着した繊維製品を保管した場合にも卵の孵化を抑制できるため幼虫による食害を未然に防ぐことができ、結果としてより十分な繊維製品の食害防止効果を得ることができるものである。
【0036】
【実施例】
次に、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例になんら制約されるものでない。なお、実施例における成虫忌避試験、卵孵化試験および幼虫食害試験は、次の方法によって行った。
【0037】
成虫忌避実用試験:
図1に示すように、各稜の長さが1mの立方体の囲いの中に、市販のプラスチック製引き出しタイプの衣裳ケースを設置した。囲いは、鉄製パイプで枠を組み、それにプラスチックフィルムを張って作った。衣裳ケースの外寸は、巾43cm、奥行き64cm、高さ23cmであり、正面引き出し上部と外枠の間に5mmの隙間がある。衣裳ケースの中に、黒色のフェルトで覆った羊毛製の衣類を入れ、その上に防虫剤を置いた。25℃の恒温室にて、1日間保った後、囲いの中に、羽化後1日のイガ成虫の雄雌各50匹を入れた。さらに7日間同温度に保持した後、衣裳ケースを開け、成虫の侵入および産卵の状況を観察した。
【0038】
卵孵化抑制実用試験:
成虫忌避実用試験と同様の試験において、イガ成虫を入れるのに変えて、産卵後1日のイガの卵50個を衣裳ケース内のフェルトの上に置き、12日後に衣裳ケースを開けて、孵化した卵の数を数えた。
【0039】
成虫忌避基礎試験:
図2に示すように、直径300mm、高さ100mmのガラス製シャーレの中に、間口95mm、奥行き145mm、高さ45mmの紙製ケースを設置した。紙製ケースの正面上部には長さ95mm、幅5mmの隙間を設け、成虫の侵入口とした。紙製ケースの内部中央に縦130mm、横90mmの長方形のフェルトを敷き、その中央に防虫剤を置いた。試験装置全体は25℃の恒温槽内に設置した。1時間後にガラス製シャーレの中に、羽化後1日のイガ成虫の雄雌各15匹を入れ、24時間後に紙製ケースを開け、成虫の侵入による産卵の有無を観察した。
【0040】
卵孵化基礎試験:
成虫忌避試験と同様の試験において、イガ成虫を入れるのに変えて、産卵後1日のイガの卵50個を紙製ケース内のフェルトの上に置き、14日後に紙製ケースを開けて、孵化した卵の数を数えた。
【0041】
幼虫食害基礎試験:
成虫忌避基礎試験と同様の試験において、イガ成虫を入れるのに変えて、55日令のイガ幼虫10匹と羊毛を入れたステンレス篭を、紙製ケース内のフェルトの上の防虫剤の両側に1個ずつ置き、7日後に羊毛の重量を測定し食害量を算出した。一方、防虫剤を入れずに同様の試験を行って食害量を求め、両者の比より、防虫剤を入れない時の食害を100%として食害率を算出した。
【0042】
実施例1
ラベンダー油40mgを含浸させた微粒セルロースと、パラジクロルベンゼン4gを混合後打錠して錠剤を得た。同様の錠剤を2錠ずつ、有孔ポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムの積層フィルムで包み、防虫剤とした。本防虫剤3包を衣裳ケースに入れ、成虫忌避実用試験および卵孵化抑制実用試験を行った。その結果、成虫の侵入およびそれによる産卵は観察されず、孵化した卵も皆無であった。
【0043】
実施例2
ラベンダー油に替えて芳油を用い、他は実施例1と同様にして、成虫忌避実用試験および卵孵化抑制実用試験を行った。その結果、成虫の侵入およびそれによる産卵は観察されず、孵化した卵も皆無であった。
【0044】
実施例3
ラベンダー油に替えて、芳油とラベンダー油の7:3混合物を用い、他は実施例1と同様にして、成虫忌避実用試験および卵孵化抑制実用試験を行った。その結果、成虫の侵入およびそれによる産卵は観察されず、孵化した卵も皆無であった。
【0045】
実施例4
ラベンダー油に替えてリナロールを用い、他は実施例1と同様にして、成虫忌避実用試験および卵孵化抑制実用試験を行った。その結果、成虫の侵入およびそれによる産卵は観察されず、孵化した卵も皆無であった。
【0046】
実施例5
しょうのう40mgと、パラジクロルベンゼン4gを混合後打錠して錠剤を得た。他は実施例1と同様にして、成虫忌避実用試験および卵孵化抑制実用試験を行った。その結果、成虫の侵入およびそれによる産卵は観察されず、孵化した卵も皆無であった。
【0047】
比較例1
パラジクロルベンゼン4gのみを打錠して錠剤を得た。他は実施例1と同様にして、成虫忌避実用試験および卵孵化抑制実用試験を行った。その結果孵化した卵は皆無であったが、2匹の成虫の侵入およびそれによる産卵が観察された。
【0048】
実施例6
ラベンダー油20mgを含浸させた微粒セルロースと、ナフタリン2gを混合後打錠して錠剤を得た。同様の錠剤を2錠ずつ、ポリエチレンフィルムで包み、防虫剤とした。本防虫剤6包を衣裳ケースに入れ、成虫忌避実用試験および卵孵化抑制実用試験を行った。その結果、成虫の侵入およびそれによる産卵は観察されず、孵化した卵も皆無であった。
【0049】
比較例2
ナフタリン2gのみを打錠して錠剤を得た。他は実施例6と同様にして、成虫忌避実用試験および卵孵化抑制実用試験を行った。その結果孵化した卵は皆無であったが、5匹の成虫の侵入およびそれによる産卵が観察された。
【0050】
実施例7
リナロール2gを含浸させた粒状パルプをポリエチレンフィルムで被った包装袋と、ナフタリン錠剤1gをポリエチレンフィルムで被った包装袋を併せて防虫剤とし、成虫忌避基礎試験および卵孵化基礎試験を行った。その結果、成虫の侵入による産卵は観察されず、孵化した卵も皆無であった。
一方、同じ防虫剤について幼虫食害基礎試験を行った結果、食害率は59.7%であった。
【0051】
実施例8
リナロール2gを含浸させた粒状パルプをポリエチレンフィルムで被った包装袋と、エムペントリン30mgを含浸させたシート状パルプを片面ポリエチレンフィルム、片面ポリエステルフィルムで被った包装袋を併せて防虫剤とし、実施例7と同様の基礎試験を行った。その結果、成虫の侵入による産卵は観察されず、孵化した卵も皆無であった。
一方、同じ防虫剤について幼虫食害基礎試験を行った結果、食害率は51.7%であった。
【0052】
比較例3
リナロール2gを含浸させた粒状パルプをポリエチレンフィルムで被った包装袋を防虫剤とし、実施例7と同様の基礎試験を行った。その結果、成虫の侵入による産卵は観察されなかったが、卵孵化基礎試験において24個の卵が孵化していた。
【0053】
比較例4
ナフタリン錠剤1gをポリエチレンフィルムで被った包装袋を防虫剤とし、実施例7と同様の基礎試験を行った。その結果、成虫の侵入による産卵が観察された。しかしながら孵化した卵は皆無であった。
一方、同じ防虫剤について幼虫食害基礎試験を行った結果、食害率は64.6%であった。
【0054】
比較例5
エンペントリン30mgを含浸させたシート状パルプを片面ポリエチレンフィルム、片面ポリエステルフィルムで被った包装袋を防虫剤とし、実施例7と同様の基礎試験を行った。その結果、成虫の侵入による産卵が観察された。しかしながら孵化した卵は皆無であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】成虫忌避実用試験および卵孵化実用試験に用いた装置の模式図。
【図2】成虫忌避基礎試験、卵孵化基礎試験および幼虫食害基礎試験に用いた装置の模式図。
【符号の説明】
1 ・・・ 鉄製パイプ
2 ・・・ プラスチックフィルム
3 ・・・ 衣裳ケース
4 ・・・ シャーレ
5 ・・・ 紙製ケース
6 ・・・ 開口部
以 上
Claims (6)
- 次の二成分、
a.リナロール、ゲラニオール、ボルネオール、ネロリドール、ネロール、α−テルピネオール、ペリラアルデヒド、シトラール、しょうのう、α−ヨノン、1,8−シネオール、リナロールオキサイド、シトラールジエチルアセタール、ラベンダー油、芳油、ローズマリー油、パルマローザ油、セージ油、イリス油およびしょうのう油よりなる群から選ばれた1種または2種以上のテルペン系化合物;および
b.パラジクロルベンゼンおよびナフタリンよりなる群から選ばれた1種または2種の化合物;
を有効成分として含有する繊維害虫防虫剤であって、a成分をb成分の重量の1ないし2%含有し、a成分を多孔質担体に担持させたものをb成分の中に均一に分散させた固形製剤である繊維害虫防虫剤。 - b成分がパラジクロルベンゼンである請求項1記載の繊維害虫防虫剤。
- b成分がナフタリンである請求項1記載の繊維害虫防虫剤。
- 繊維製品に請求項1ないし3のいずれかの項記載の防虫剤を適用することを特徴とする繊維害虫防虫方法。
- 繊維製品に、収納容器容量50lにつき、20g以上50g以下の請求項2記載の防虫剤を適用し、4ないし6ケ月間持続させることを特徴とする防虫方法。
- 繊維製品に、収納容器容量50lにつき、15g以上50g以下の請求項3記載の防虫剤を適用し、5ないし6ケ月間持続させることを特徴とする防虫方法。
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