発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例に係る除雪機の全体的な構成を示した側面図、図2は除雪機の駆動力伝達経路を示す模式図、図3はトランスミッションの側面図である。図4はトランスミッションの正面図、図5はトランスミッションの平面図、図6はトランスミッションの内部構造を示す背面一部断面図、図7はトランスミッションの内部構造を示す側面一部断面図、図8はトランスミッションの内部構造を示す平面一部断面図、図9はトランスミッションの内部構造を示す平面一部断面図である。まず、本発明に係る作業車両の一実施の形態としての歩行型除雪機(以下、「除雪機」)1の全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。なお、本発明に係る作業車両としては除雪機に限定されるものではなく、例えば、トラクタや管理機やモア等の作業車両でもよい。
除雪機1は、除雪作業を行う作業部2と、除雪機1の各駆動部に動力供給を行う駆動部3と、除雪機1を走行させる左右一対の走行装置4と、除雪機1の運転操作が行われる運転操作部5とを備えており、これらが機体フレーム6に支持されている。そして、機体フレーム6内の後部には、駆動部3からの駆動力を前記走行装置4に伝達するトランスミッション30が収容されている。
作業部2は、機体フレーム6の前側に配設され、除雪機1の走行経路上に存在する雪を除去するものである。作業部2は、雪を掻き込むための掻込オーガ10、掻き込まれた雪を排出するためのブロア11、掻込オーガ10を包囲するとともにブロア11を収容するハウジング12、雪の排出管であるシュータ13等から構成されている。すなわち、除雪機1の機体前端に掻込オーガ10が配置され、ハウジング12内の後部にブロア11が配置されており、このハウジング12の上部にシュータ13が立設されている。
そして、作業部2においては、掻込オーガ10により除雪機1前方の雪が掻き込まれ、この雪がハウジング12内に搬送されるとともにブロア11によりシュータ13を通して跳ね飛ばされる。こうして除雪機1の走行経路上の雪が除去される。ここで、シュータ13は、ハウジング12に対して水平面上で旋回可能に構成され、その先端部は、上下回動可能に構成される。これにより、ブロア11よりシュータ13を介して跳ね飛ばされる雪の地面への落下位置を調節することができる構成となっている。なお、図示は省略するが、除雪機1においては、機体フレーム6に油圧シリンダ等の昇降装置が設けられており、この昇降装置が操作されることにより作業部2が昇降するように構成されている。
駆動部3は、機体フレーム6上に配設され防振装置などの支持装置14を介して載置されるエンジン15を有している。また、駆動部3においては、エンジン15の出力を利用して発電する発電機16と、この発電機16により発電される電力を充電するバッテリ17とが備えられる。なお、図2に示す発電機16及びバッテリ17は、機体フレーム6に固定される等して設けられる。
エンジン15は、除雪機1の駆動源であり、該エンジン15からの駆動力が、作業部2の掻込オーガ10及びブロア11に伝達されるとともに、走行装置4へと伝達される。また、エンジン15は発電機16を回転駆動して電力を発生させる。この発電機16で発電される電力は、トランスミッション30に備えられる駆動源(本実施形態においては左右の電動モータ35L・35R)に供給されるか、またはバッテリ17に充電される。すなわち、発電機16またはバッテリ17からの電力が、電動モータ35L・35Rのそれぞれの駆動回路(インバータ)36L・36Rに供給され、各電動モータ35L・35Rが回転数などを制御されながら駆動する。この電動モータ35L・35Rの制御は、前記駆動回路36L・36Rが接続される制御回路37が用いられることにより行われる。
エンジン15は、機体前方に突出する出力軸15aを有しており、この出力軸15aには、二連のエンジンプーリ43a・43bが前後に配置され設けられており、後側のエンジンプーリ43aが走行装置4への駆動力伝達に用いられ、前側のエンジンプーリ43bが作業部2への駆動力伝達に用いられる。
具体的には、機体フレーム6内においては、エンジン15からの駆動力をトランスミッション30へ伝達するための駆動力伝達軸28aが機体前後方向に架設されており、この駆動力伝達軸28aの前端に入力プーリ47aが設けられ、この入力プーリ47a及び前記エンジンプーリ43aにベルト48aが巻回される。一方、機体フレーム6内から作業部2のハウジング12内にかけては、エンジン15からの駆動力を作業部2のブロア11及び掻込オーガ10へ伝達するための駆動力伝達軸28bが機体前後方向に架設されており、この駆動力伝達軸28bの後端に入力プーリ47bが設けられ、この入力プーリ47b及び前記エンジンプーリ43bにベルト48bが巻回される。つまり、駆動力伝達軸28bは、その中途部に配置されるブロア11に駆動力を伝達するとともに、先端部にギヤボックス29が構成されており、このギヤボックス29において駆動力伝達軸28bの回転軸方向がベベルギヤ等により機体左右方向に変換され、掻込オーガ10が駆動される。
走行装置4は、左右一対のクローラ式走行装置4L・4Rにより構成されている。クローラ式走行装置4L・4Rは、それぞれ、後側に配置される駆動スプロケット18、前側に配置される従動スプロケット19及びこれらに巻回される無端ベルトであるクローラベルト20等から構成される。駆動スプロケット18は、トランスミッション30から機体左右側方に突出する、クローラ式走行装置4L・4Rの駆動軸である車軸21L・21Rの先端部(外側端部)にそれぞれ外嵌固定される。左右の車軸21L・21Rは、その軸線方向が機体左右方向となるように同一軸線上に配置される。また、従動スプロケット19は、機体フレーム6の前部にて回転可能に軸支される従動軸22に左右両側にて外嵌固定される。このような構成において、左側の車軸21Lの回転により左側のクローラ式走行装置4Lが駆動され、右側の車軸21Rの回転により右側のクローラ式走行装置4Rが駆動される。なお、本実施形態においては、左右一対の走行装置4をクローラ式の走行装置としているが、これに限定されずホイル式のものであってもよい。
運転操作部5は、機体フレーム6上の左右両側から上後方に延設される左右のハンドル23、該ハンドル23にそれぞれ設けられる旋回レバー24、機体フレーム6の後部において立設される操作部フレーム25に設けられる主変速レバー26、作業部2への駆動力の伝達の断接を行う作業部クラッチレバー27(図2参照)、前記昇降装置を操作し作業部2を昇降するための作業部昇降レバー(図示略)等を備えている。
作業者は、左右のハンドル23の先端部に設けられる把持部23aを持って除雪機1を操作する。ここで、作業者が左右のハンドル23に設けられる旋回レバー24を操作する(把持部23aとともに旋回レバー24を握る)ことにより、操作された旋回レバー24の側の駆動スプロケット18が減速して、その側に除雪機1が旋回する構成となっている。つまり、作業者は、左右のハンドル23の把持部23aを持って除雪機1を操作する際、左右の旋回レバー24を操作することによって除雪機1の旋回を行い、主変速レバー26を操作することによって除雪機1の走行速度を調節する。
具体的には、旋回レバー24は、前記制御回路37と接続されており、この制御回路37により旋回レバー24の操作量(回動角度)が検出され、これに基づき前記駆動回路36L・36Rを介して電動モータ35L・35Rが制御される。つまり、左右の電動モータ35L・35Rが差動されることにより除雪機1の旋回が行われる。また、主変速レバー26は、該主変速レバー26のレバー位置を検出するポテンショメータ26aを介して制御回路37に接続されている。つまり、主変速レバー26が操作されると、そのレバー位置がポテンショメータ26aにより検出され、制御回路37を介して、エンジン15から走行装置4に伝達される駆動力の変速が行われる。なお、左右の電動モータ35L・35Rは、この主変速操作にともなって(両旋回レバー24が操作されていない場合には同一速度(回転数)で)、走行装置4の駆動をアシストするものとしてもよい。一方、作業部クラッチレバー27は、エンジン15から作業部2への駆動力の入切を行う作業部クラッチ38と接続されており、作業部クラッチレバー27が操作されることにより、作業部2の駆動が操作される。なお、運転操作部5における各種レバーの構成や配置などは本実施形態に限定されるものではない。
続いて、トランスミッション30について、図3〜図9を加えて説明する。トランスミッション30は、駆動源であるエンジン15及び電動モータ35L・35Rからの駆動力を左右のクローラ式走行装置4L・4Rに伝達し、除雪機1を直進(前進・後進)または左右旋回させるものである。このとき、トランスミッション30は、左右の走行装置4の回転速度をそれぞれ調節し、除雪機1の直進及び滑らかな旋回を可能としている。
トランスミッション30は、ミッションケース31、油圧式無段変速装置(以下、「HST」(Hydro Static Transmission)という。)32、左右一対の遊星歯車機構33L・33Rを有する差動機構34、左右一対の電動モータ35L・35Rを具備している。すなわち、トランスミッション30は、ミッションケース31内に、左右一対の遊星歯車機構33L・33Rを有する差動機構34を具備し、エンジン15及び電動モータ35L・35Rからの駆動力を、差動機構34を経て、ミッションケース31に複数の軸受39L・39Rを介して回動可能に支持された、左右一対のクローラ式走行装置4L・4Rの駆動軸である各車軸21L・21Rへ伝達する。
ミッションケース31は、トランスミッション30の構成要素を収容してその内部への塵挨などの侵入を防止する筐体としての機能と、同じくその内部において構成要素を支持(軸支)する構造体としての機能を有する。前記ミッションケース31は、車軸21L・21Rの回転軸線に対して直角な分割面を有し、2つのケース要素31L・31Rに分離接合自在に構成されている。そして、これらのケース要素31L・31Rの前面には、電動モータ35L・35Rを設置して支持するための取付面が形成され、また、該ケース要素31L、31Rのいずれか一方の後面には、HST32を設置して支持するための取付面が形成され、本実施例においては、ケース要素31Rの後面上部にHST32の取付面が形成されている。
次に、HST32は、エンジン15から伝達される駆動力を変速し、差動機構34へ伝達する無段変速装置であり、ミッションケース31のケース要素31Rの後面上部に形成された前記取付面に取り付けられている。このHST32は、センタセクション、油圧ポンプ41、油圧モータ42等により構成されている。センタセクションには、油圧ポンプ41及び油圧モータ42が付設される付設面がそれぞれ形成されており、これら付設面に油圧ポンプ41及び油圧モータ42がそれぞれ付設されて構成され、本実施例においては、センタセクションを介して、右側に油圧ポンプ41、左側に油圧モータ42を配置する構成としている。そして、センタセクションには油路が形成されており、この油路を介して油圧ポンプ41と油圧モータ42とが流体的に接続されている。
油圧ポンプ41は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンポンプであり、入力軸(ポンプ軸)41aと、この入力軸41aに相対回転不能に嵌設されるシリンダブロックと、このシリンダブロックに穿設される複数のシリンダ孔に気密的に付勢バネを介して摺接可能に収容される複数のピストンと、これらピストンを往復駆動させる斜板カムとして作用する可動斜板とを備えている。すなわち、前記センタセクションに形成される付設面にシリンダブロックが付設され、このシリンダブロック内の複数のピストンが可動斜板に当接しながら回転することにより、センタセクション内に形成される油路を介して圧油が油圧モータ42へ搬送される。可動斜板は、その板面の、入力軸41aの軸線方向に対する角度を変更可能に構成されており、可動斜板の板面が入力軸41aの軸線方向に対して垂直であるときは、入力軸41aが回転駆動されても油圧モータ42に圧油が搬送されることがない中立状態であり、同じく可動斜板の板面が入力軸41aの軸線方向に対して垂直の状態から傾動することにより、入力軸41aの回転駆動に連動して油圧モータ42に圧油が搬送される。ここで、可動斜板の傾動角度が調節されることにより、入力軸41aが一回転する間に搬送される圧油の量が調節され、後述する油圧モータ42の出力軸42aの回転数及び回転方向が調節される。
また、前記油圧ポンプ41においては、可動斜板が傾動操作されるためのコントロール軸41eが、その上端部を突出した状態で上下方向に軸支されている。このコントロール軸41eは、ミッションケース31内にある下端部が揺動アーム等を介して可動傾斜板と連結されており、その上方突出部分がHST32を操作するための電動モータ82と連結されている(図1参照)。電動モータ82は、HST32を操作するためのものであって、トランスミッション30の後方上面に取り付けられている。すなわち、電動モータ82は、HST32の上面に取り付けられている。そして、発電機16またはバッテリ17からの電力が、電動モータ82の駆動回路(インバータ)88に供給され、電動モータ82が回転数などを制御されながら駆動する。この電動モータ82の制御は、前記駆動回路88が接続される制御回路37が用いられることにより行われる。
また、油圧モータ42は、いわゆる固定斜板式のアキシャルピストンモータであり、出力軸(モータ軸)42aと、この出力軸42aに相対回転不能に嵌設されるシリンダブロックと、このシリンダブロックに穿設される複数のシリンダ孔に気密的に付勢バネを介して摺接可能に収容される複数のピストンと、油圧ポンプ41から搬送される圧油によるピストンの往復駆動力を出力軸42aの回転駆動力に変換する斜板カムとして作用する固定斜板42dとを備えている。すなわち、前記センタセクションに形成される付設面にシリンダブロックが付設され、このシリンダブロック内の複数のピストンが固定斜板42dに当接しながら回転することにより、出力軸42aが回転する。
前記油圧ポンプ41の入力軸41aが、エンジン15からの駆動力をトランスミッション30に入力するための入力軸となり、この入力軸41aは機体前後方向を軸線方向とし、機体前方に向けて突出されている。また、油圧モータ42の出力軸42aは、ミッションケース31内において機体前後方向を軸線方向とし、この出力軸42aの前端にはベベルギヤ49が固設されている。
差動機構34は、図6等に示すように、走行装置4における左右の車軸21L・21Rを差動的に連結し、これら車軸21L・21Rに、HST32を介して伝達されるエンジン15からの駆動力及び電動モータ35L・35Rからの駆動力を合成して伝達するものであり、前述したように左右一対の遊星歯車機構33L・33Rを有しており、ミッションケース31内の下部において配置構成される。なお、車軸21L・21R上の軸線方向内側とは、各車軸21L・21R上におけるミッションケース31内部側(左側の車軸21Lの右側、右側の車軸21Rの左側)を指し、車軸21L・21R上の軸線方向外側とは、各車軸21L・21R上における駆動スプロケット18側(左側の車軸21Lの左側、右側の車軸21Rの右側)を指すものとする。
各遊星歯車機構33L・33Rは、左右の車軸21L・21R間にて該車軸21L・21Rと同一軸線上に配置されるサンギヤ軸50に設けられるサンギヤ51と、各車軸21L・21Rに対して相対回転不能に軸支されるキャリア52L・52Rと、該キャリア52L・52Rからは独立して車軸21L・21R上に相対回転自在に軸支されるインターナルギヤ53L・53Rと、各キャリア52L・52Rに回動自在に軸支される複数のプラネタリギヤ54L・54Rとを有しており、これらプラネタリギヤ54L・54Rはそれぞれ、各車軸21L・21R上にてサンギヤ51に噛合し、かつインターナルギヤ53L・53Rに噛合する。
すなわち、サンギヤ軸50は、左右の遊星歯車機構33L・33Rの回転中心となるサンギヤ51を構成するものであり、各遊星歯車機構33L・33R間に架設されるとともに、左右の車軸21L・21Rと同一軸線上に配置され回動自在に支持される。そして、サンギヤ51は、サンギヤ軸50に一体的に刻設される。ただし、サンギヤ51は、サンギヤ軸50に一体的に刻設される構成ではなく、各遊星歯車機構33L・33Rにおいてプラネタリギヤ54L・54Rと噛合するようにサンギヤ軸50の両端部に固設される別体の構成であってもよい。また、サンギヤ軸50の中間部には、該サンギヤ軸50の入力ギヤであるセンタースプロケット44が、スプライン嵌合されること等により相対回転不能に軸支される。なお、サンギヤ軸50の支持構成及びセンタースプロケット44の配置構成については後述する。
また、キャリア52L・52Rは、略円環状に形成される部材であり、左右の車軸21L・21R上のそれぞれの軸線方向における内側端部40、即ち左側の車軸21Lの右側端部、右側の車軸21Rの左側端部にそれぞれスプライン嵌合されることにより車軸21L・21Rに対して相対回転不能に軸支され、車軸21L・21Rと一体的に回転する。
また、インターナルギヤ53L・53Rは、車軸21L・21R上の軸線方向における前記キャリア52L・52Rの外側、即ち左側の車軸21Lにおいてはキャリア52Lの左側、右側の車軸21Rにおいてはキャリア52Rの右側にそれぞれ設けられ、キャリア52L・52Rと同軸上に相対回転自在に軸支される。インターナルギヤ53L・53Rは、その内周側にギヤ部53aを有しており、外周側には後述するアウターギヤ75L・75Rが形成されている。すなわち、インターナルギヤ53L・53Rは、略円環状に形成され、外周面にアウターギヤ75L・75Rが形成される。また、内周部は、前記キャリア52L・52Rが収納されており、該キャリアにより、軸方向への移動を制限し、回動可能に固定されている。該内周部の軸方向内側、即ち、左側の車軸21Lにおいてはキャリア52Lの右側、右側の車軸21Rにおいてはキャリア52Rの左側にインターナルギヤ53L・53Rのギヤ部53aが形成される。
また、プラネタリギヤ54L・54Rは、各遊星歯車機構33L・33Rにおいて車軸21L・21Rの軸線に対して放射状に等間隔に複数(図6等においては一つのみ図示)配置され、略円環状のキャリア52L・52Rから、軸線方向を車軸21L・21Rと同じくし該軸線方向において内側(左側の遊星歯車機構33Lにおいては右側、右側の遊星歯車機構33Rにおいては左側)に向けて突出する回転軸59L・59Rを介してキャリア52L・52Rに対して回転自在に軸支される。そして、プラネタリギヤ54L・54Rは、前記サンギヤ51及びインターナルギヤ53L・53Rのギヤ部53aにそれぞれ噛合する。すなわち、インターナルギヤ53L・53Rの内周部は、その先端部が、車軸21L・21Rと同一軸線上に配置されるサンギヤ軸50の端部と該軸線方向において一部重なる位置まで延設されてこの重なる位置にギヤ部53aが形成され、このギヤ部53a及びサンギヤ軸50両端部におけるサンギヤ51それぞれに、プラネタリギヤ54L・54Rが噛合する。また、プラネタリギヤ54L・54Rの車軸21L・21R上の内側には、該車軸21L・21Rに固定される円盤状の留め板54aがそれぞれ設けられており、この留め板54aによりプラネタリギヤ54L・54Rが位置決めされている。
そして、各遊星歯車機構33L・33Rにおいてインターナルギヤ53L・53Rの外周側に形成されるアウターギヤ75L・75Rには、電動モータ35L・35Rからの駆動力が伝達されるウォームギヤ60L・60Rがそれぞれ噛合している。つまり、各遊星歯車機構33L・33Rを構成するインターナルギヤ53L・53Rに設けられるアウターギヤ75L・75Rは、それぞれウォーム軸64L・64Rを回動軸として回動するウォームギヤ60L・60Rに対応するウォームホイルとなり、ウォームギヤ60L・60Rの回転軸線方向を略直角方向に変換して出力する。前記ウォーム軸64L・64Rは、機体前後方向を軸線方向とし、ミッションケース31内において前後方向に架設され、その両端部が軸受などを介して回動自在に支持される(図8参照)。なお、電動モータ35L・35Rからの駆動力の伝達については後述する。
このように構成される遊星歯車機構33L・33Rにおいては、インターナルギヤの直下方で車軸を支持することとなるため、インターナルギヤ53L・53Rからのラジアル荷重(車軸21L・21Rの軸線方向に対して垂直方向にかかる荷重)が、キャリア52L・52Rとスプライン嵌合している車軸21L・21Rの内側端部40にかかることとなり、キャリア52L・52Rが車軸21L・21R上で傾くことによるインターナルギヤ53L・53Rの傾きが発生しなくなる。これにより、遊星歯車機構33L・33Rにおけるギヤ同士の良好な噛合状態を保つことができ、ギヤ摩耗やギヤ鳴りの発生が抑制されギヤの寿命を向上することができる。
また、キャリア52L・52Rについては、車軸21L・21Rにスプライン嵌合により相対回転不能に軸支されるので、該キャリア52L・52Rに回転自在に軸支されるプラネタリギヤ54L・54Rによる調心作用(軸心を調整する作用)がはたらくこととなる。このことからも、遊星歯車機構33L・33Rにおけるギヤ同士の良好な噛合状態を保つことができる。
次に、サンギヤ軸50の支持構成及びセンタースプロケット44の配置構成について図6を用いて説明する。サンギヤ軸50は、軸受を介してキャリア52L・52Rに回動自在に軸支されている。
このような構成のトランスミッション30において、エンジン15からの駆動力の伝達について説明する。前述したように、エンジン15からの駆動力は、出力軸15aに設けられるエンジンプーリ43a等を介して駆動力伝達軸28aに伝達される。この駆動力伝達軸28aは後方に向けて延設され、ジョイントを介してミッションケース31から前方に向けて突出するHST32の油圧ポンプ41の入力軸41aと連結されており、駆動力伝達軸28aの駆動力が、この入力軸41aに伝達される。
前記入力軸41aを介してHST32に入力される駆動力は、該HST32により変速され、出力軸42aに伝達される。この出力軸42aの先端部には、ベベルギヤ49が固設されており、動力伝達軸61の正面視右側に配置されたベベルギヤ62と噛合している。そして、伝達軸61の中途部には伝達スプロケット63が固設されており、また、サンギヤ軸50にはセンタースプロケット44がスプライン嵌合により回転不能に支持されており、このセンタースプロケット44と伝達スプロケット63には、無端チェーンであるチェーン80が巻回されている。また、伝達軸61の左端には伝達軸61の回転を制動するための駐車ブレーキ81が取り付けられている。
このような構成において、エンジン15からの駆動力は、入力軸41aを経てHST32に伝達される。このHST32に伝達された駆動力は、HST32にて変速された後、出力軸42a→ベベルギヤ49、62→動力伝達軸61→伝達スプロケット63→チェーン80→センタースプロケット44→サンギヤ軸50を経て差動機構34の左右の遊星歯車機構33L・33Rのサンギヤ51に伝達される。
左側の遊星歯車機構33Lに伝達された駆動力は、サンギヤ軸50→サンギヤ51→プラネタリギヤ54L→回転軸59L→キャリア52L→車軸21Lを経て、クローラ式走行装置4Lの駆動スプロケット18に伝達される。一方、右側の遊星歯車機構33Rに伝達された駆動力は、サンギヤ軸50→サンギヤ51→プラネタリギヤ54R→回転軸59R→キャリア52R→車軸21Rを経て、クローラ式走行装置4Rの駆動スプロケット18に伝達される。このようにして、エンジン15からの駆動力は、左右一対の車軸21L・21Rに伝達され、左右のクローラ式走行装置4L・4Rが回転駆動される。
続いて、トランスミッション30に具備される駆動源について説明する。前述したように、本実施形態においてはトランスミッション30に具備される駆動源を左右一対の電動モータ35L・35Rとしており、これら電動モータ35L・35Rは、トランスミッション30に駆動力を伝達するものであり、ミッションケース31のケース要素31L・31Rの前面に形成された前記取付面に、モータ軸の回転軸線が車軸21L・21Rの回転軸線と直角となるように付設されている。
なお、駆動源としては、本実施例に示す電動モータ35L・35Rの他、油圧モータでも構わない。この場合、該油圧モータへ圧油を供給する油圧ポンプを単一としてエンジンに連動連結させるとともに、該油圧ポンプから吐出される圧油量を二分する可変式流量調整弁を設け、前記旋回レバー24の操作量に応じて夫々の油圧モータに供給する油量を変更するように構成する。あるいは、夫々の油圧モータに対応する一対の可変容積式油圧ポンプを設け、前記旋回レバー24の操作量に応じて夫々の油圧ポンプの吐出量を変更するように構成するものであってもよい。
すなわち、一対の電動モータ35L・35Rからの駆動力は、遊星歯車機構33L・33Rに設けられるウォームホイルとしてのアウターギヤ75L・75Rに噛合するウォームギヤ60L・60Rを介することにより、電動モータ35Lまたは35Rに対応する側の遊星歯車機構33Lまたは33Rを経て、この遊星歯車機構33Lまたは33Rに対応する側のクローラ式走行装置4Lまたは4Rの車軸21Lまたは21Rに伝達される。
以下、前記電動モータ35L・35Rからの駆動力の伝達について図3乃至図6等により説明する。電動モータ35L・35Rからの駆動力は、前述の如く、ウォームホイルとしてのアウターギヤ75L・75Rに噛合するウォームギヤ60L・60Rを介して差動機構34の左右の遊星歯車機構33L・33Rに伝達されるのであるが、この際、各電動モータ35L・35Rのモータ軸45L・45Rとウォームギヤ60L・60Rのウォーム軸64L・64Rとの間にそれぞれ減速ギヤ連65L・65Rが介在しており、電動モータ35L・35Rの駆動力は、この減速ギヤ連65L・65Rを介してウォームギヤ60L・60Rへ伝達される。なお、遊星歯車機構33L、33Rに対してモータ軸45L、45Rを作動的に連結せしめる手段としては、本実施例に示すウォームギヤの他、ベベルギヤやフェースギヤ、ハイポイドギヤ等を用いてもよい。
具体的には、図8に示すように、ミッションケース31の、モータ35L・35Rの出力軸を収容するモータケース66と接する部分に凹部90L・90Rを形成し、前記減速ギヤ連65L・65Rをミッションケース31に収容可能な構成としている。
すなわち、モータ35L・35Rの出力軸を収納するモータケース66の一面を該ギヤケースの蓋部分と兼用することにより、ギヤケースをミッションケースと一体に設けることが可能となる。また、この場合、減速ギヤ連65L・65Rはモータの外形寸法以下に構成する。このように、従来は個別に設けていた減速ギヤ連65L・65Rを収容するギヤケースを、ミッションケース31の一部として構成した。
このように構成することにより、別途にギヤケースを設ける際の部品点数の増加を抑えることで、コストを抑えることが可能となる。また作業車両全体の重量も軽減することが可能となる。
また、図9に示すように、旋回モータケース66L・66Rに減速ギヤ連65L・65Rを収容する構成とすることも可能である。すなわち、モータケース66L・66Rのモータ軸45L・45Rを収容する筒状部分を延長することにより、減速ギヤ連65L・65Rをモータケース66L・66R内に収容可能に構成している。この場合、上に示す構成と同じく部品点数の増加を抑えることにより、コストを抑えることが可能となる。また車両全体の重量も軽減することが可能となる。
減速ギヤ連65L・65Rは、モータ軸45L・45Rにそれぞれ固設される出力ギヤ67L・67Rと、該出力ギヤ67L・67Rそれぞれに噛合する、前記ウォーム軸64L・64Rに固設される入力ギヤ(68L・68R)とにより構成される。すなわち、図8に示すように、電動モータ35L・35Rのモータ軸45L・45Rはミッションケース31の凹部90L・90Rに後方に向けて挿入され、ウォームギヤ60L・60Rのウォーム軸64L・64Rはミッションケース31内から前方に向けて延設されミッションケース31の凹部90L・90Rに挿入される。そして、これらモータ軸45L・45R及びウォーム軸64L・64Rにそれぞれ固設される出力ギヤ67L・67Rと入力ギヤ68L・68Rとがミッションケース31の凹部90L・90Rにて噛合し、減速ギヤ連65L・65Rが構成される。なお、本実施形態においては、減速ギヤ連65L・65Rはモータ軸45L・45Rの出力ギヤ67L・67Rと、ウォーム軸64L・64Rの入力ギヤ68L・68Rとによる一段減速構成となっているが、出力ギヤ67L・67Rと入力ギヤ68L・68Rとの間に、ミッションケース31の凹部90L・90Rに軸支される他のギヤを介装して複数段に減速させる構成とすることもできる。
このような構成において、左側に配置される電動モータ35Lからの駆動力は、モータ軸45L→出力ギヤ67L→入力ギヤ68L→ウォーム軸64L→ウォームギヤ60L→アウターギヤ75L→インターナルギヤ53L→プラネタリギヤ54L→回転軸59L→キャリア52L→車軸21Lを経て、左側のクローラ式走行装置4Lの駆動スプロケット18に伝達される。一方、右側に配置される電動モータ35Rからの駆動力は、モータ軸45R→出力ギヤ67R→入力ギヤ68R→ウォーム軸64R→ウォームギヤ60R→アウターギヤ75R→インターナルギヤ53R→プラネタリギヤ54R→回転軸59R→キャリア52R→車軸21Rを経て、右側のクローラ式走行装置4Rの駆動スプロケット18に伝達される。
このようにして、左右の電動モータ35L・35Rからの駆動力は、対応する車軸21L・21Rに伝達され、左右のクローラ式走行装置4L・4Rが回転駆動する。そして、左側の電動モータ35L及び右側の電動モータ35Rの回転速度に応じて対応するクローラ式走行装置4L・4Rの走行速度が滑らかに変化し、左右のクローラ式走行装置4L・4R間で走行速度差が生じることにより、除雪機1が滑らかに旋回することができる。
このように、電動モータ35L・35Rのモータ軸45L・45Rとウォーム軸64L・64Rとの間に減速ギヤ連65L・65Rを介在させることにより、モータ軸45L・45Rとウォーム軸64L・64Rとの間に減速比が得られるので、モータ軸45L・45Rからウォーム軸64L・64Rに伝達されるトルクが増大する。つまり、電動モータ35L・35Rを小型のモータにしても必要なトルクを得ることができる。このように電動モータ35L・35Rの小型化が図れることにより、除雪機1における軽量化や省スペース化を図ることができる。