JP4323825B2 - 有機発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機発光素子に関し、詳しくは有機化合物からなる薄膜に電界を印加することにより光を放出する素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機発光素子は、陽極と陰極間に蛍光性有機化合物を含む薄膜を挟持させて、各電極から電子およびホール(正孔)を注入することにより、蛍光性化合物の励起子を生成させ、この励起子が基底状態にもどる際に放射される光を利用する素子である。
【0003】
有機発光素子は、ガラス基板/陽極/有機層/陰極の構成が一般的であり、陽極としてITOなどの透明導電膜を、また陰極を反射電極として用いて、基板側から発光を取り出している。
【0004】
しかし、最近は陽極を反射電極として用い、陰極を透明にして発光を陰極側から取り出す検討も行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1には、反射電極となる陽極材料として、Au、Pt、Ni、Pdの代わりに、周期律表の5族または6族に属する金属を用いることが示されている。しかしながら、5族または6族に属する金属は反射率がそれほど高くなく、効率的に発光を取り出すことができない。
【0006】
また、特許文献2では反射電極上に可視光に対して透明な陽極を構成することが示されている。しかしながら、電極のパターニングを行う場合、異なる材料をエッチングする必要があるため、工程が複雑になるなどの問題ある。
【0007】
本発明者はこのような先行技術に対して、陰極側から発光を取り出す構成の発光素子において、効率的に発光を取り出すために陽極材料に求められる条件として、可視域での反射率が高いことだけでなく、有機層へのホール注入性がよいことにも注目をした。というのも、陽極として用いられてきた材料は有機層へのホール注入性をあげるため、仕事関数の高い材料が用いられてきたが、反射率が70%以上のものはこれまでほとんどなかった。一方、反射率が高いAl、Agなどは仕事関数が低く、有機層へのホール注入性が悪いため、陽極には適さない。つまり、反射率及びホール注入性の両方を満足できる陽極材料を用いた有機発光素子の開発が行われていなかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、極めて高効率で高輝度の光出力を有する有機発光素子を提供することにある。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−43980号公報(第4頁)
【特許文献2】
特開2001−291595号公報(第3頁)
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は陽極及び陰極とを有し、前記陽極と前記陰極間に挟持された一または複数の有機化合物からなる層を少なくとも有する有機発光素子において、前記陽極は、主成分金属と少なくとも一種類の副成分化合物とからなる単一の層であり、かつ反射率が70%以上である反射電極であることを特徴とする有機発光素子を提供する。本発明における反射率とは、波長が450〜650nmの光に対する反射率のことをいう。
【0011】
また本発明において、主成分金属がAgあるいはAlであることを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0012】
また本発明において、副成分化合物は金属酸化物であることを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0013】
また本発明において、金属酸化物がSn、In、Znのいずれかの酸化物であることを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0014】
また本発明において、発光素子は発光が前記陰極側から放出されることを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0015】
また本発明は、有機発光素子の製造方法であって、基材上に主成分金属と副成分化合物とからなる陽極を形成する工程と前記陽極上に有機層を形成する工程と前記有機層を形成する工程後に陰極を形成する工程を有し、前記陽極は反射率が70%以上であることを特徴とする有機発光素子の製造方法も提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
【0017】
図1に本発明における有機発光素子の構成の一例を示す。
【0018】
基材1上に陽極2、有機層3、陰極4が形成されている。基材1は本実施形態においては、ガラス等の非フレキシブルな基板である。有機層3はホール輸送層31、発光層32、電子輸送層33から構成されている。有機層の構成はこれに限られるものではなく、発光層を兼ねた輸送層を用いることで有機層を2層構成にしたり、あるいはホール注入層や電子注入層を設けることで、有機層の構成を4層、5層構成にするなど目的に応じて層構成を決める必要がある。
【0019】
陽極2は、反射率が70%以上ある材料を用いる。具体的には、AgあるいはAl等が主成分金属となっており、これに少なくとも副成分化合物が含まれている。ここでいう化合物とは、例えば金属酸化物である。好ましくは、Sn、In、Znなどから選択される材料の酸化物である。AgあるいはAlがベースになっているため、反射率が高くなっている。陽極の組成比に関しては、反射率、ホール注入性および膜安定性を考慮して決定することが望ましいが、AgあるいはAlの含有率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
【0020】
ここで、反射率の測定方法について説明する。60×25のガラス基板上に陽極材料の成膜を行い、日立製の分光光度計U−3010を用いて反射率の測定を行う。
【0021】
本実施形態において陽極の反射率は良好な発光効率を維持するため70%以上であることが好ましい。さらに、80%以上では発光効率の向上ができ、より好ましくは90%以上であり、陽極側への発光のほとんどを反射できるようになるため発光効率の大幅な向上が可能となる。
【0022】
ホール輸送層に関しては、表1と5に表される有機材料を用いることができる。
【0023】
また、有機材料だけではなく、無機材料を用いてもよい。用いられる無機材料としては、a−Si、a−SiCなどがあげられる。
【0024】
電子輸送層、発光層としては、表2に表される材料を用いることができる。
【0025】
また、表3に示されているようなドーパント色素を電子輸送層やホール輸送層にドーピングすることもできる。あるいは発光層として、これらの材料を例えば表4に示されるような電子輸送性材料、あるいはホール輸送性材料にドーピングした層を電子輸送層とホール輸送層の間に設けても良い。また、表6で示されているようなポリマー系材料を用いることもできる。
【0026】
以上に挙げた、ホール輸送材料、電子輸送材料、発光性材料はあくまで代表的なものであり、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0027】
また、有機層の厚みは10μmより薄く、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.01〜0.5μmの厚みに薄膜化することが好ましい。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
【表6】
【0034】
陰極4は薄膜の電子注入金属層41と透明導電層42の積層構造である。あるいは、電子注入性に優れた有機層上に設ける場合には透明導電層のみでもよい。
【0035】
この発光素子にDC電圧を印加することにより、陰極を通して有機発光素子からの良好な発光を確認することができる。
【0036】
このように、本発明は陽極を反射電極として用いることで、陰極側から発光を取り出す素子において、陽極をAgあるいはAlを主成分金属とし、これに少なくとも副成分化合物を含む電極を用いることにより、70%以上の反射率が得られるようになるため、発光を効率よく取り出せると同時に有機層へのホール注入性も向上し、有機発光素子の素子特性を飛躍的に向上させることが可能となった。
【0037】
更に、本実施形態の有機発光素子を表示装置(例えばディスプレイ)として用いる場合、光取出し側に例えば円偏光板等の視認性向上部材を設けるとしても、陽極の反射率が非常に高いために、明るさを損なわないという効果もある。
【0038】
なお、上述基材とは非フレキシブルな部材の他に、フレキシブルな基材例えばPET等を用いてもよい。
【0039】
(実施例1)
以下に、図面に沿って本発明を更に詳細に説明する。
【0040】
図2は本発明の有機発光素子の一例を示す断面図である。図2は基材上にAg−SnO2を陽極2として、DCスパッタリングにより成膜する。組成比(重量比)はAg:SnO2=97:3である。陽極の膜厚は150nmである。また、この膜の反射率を測定したところ波長450nmにおいて86%であった。次に、フォトリソグラフィー技術により、陽極をパターニングする。今回はウェットエッチングにより所望の形状に加工した。陽極のパターニングにはドライエッチングを用いてもよい。
【0041】
次に、図2に示すように、陽極と陰極のショートを防止するための絶縁層を設ける。本実施例では、絶縁層の材料としてSiO2を用いた。陽極上にスパッタリング法により150nm成膜する。絶縁層の材料、膜厚および成膜方法はこれらに限定されるものではない。陽極上の発光領域に相当する部分のSiO2をフォトリソグラフィー法により加工する。今回はフッ酸系のエッチャントによりウェットエッチングを行った。SiO2の加工はこの他ドライエッチングやリフトオフ法などを用いてもよい。本実施例では絶縁層を設けたが必ずしも必要な層というわけではない。
【0042】
次に、ホール輸送層31としてN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4−4’−ジアミン(以下TPD)を、発光層を兼ねる電子輸送層33としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下Alq3)を順次真空蒸着法により先程加工し陽極が露出した部分を完全に覆うように蒸着マスクを介して基材に蒸着する。ここで、TPD、Alq3の膜厚はそれぞれ50nmである。なお、蒸着時の真空度は2×10−6Torrであり、成膜速度は0.2〜0.3nm/sとした。
【0043】
次に、陰極の構成要素である電子注入金属層41としてまずAlLiを真空蒸着法により5nm成膜する。Alに対するLiの含有率は1.5wt%である。陰極蒸着時の真空度は1×10−5Torrであり、成膜速度は0.5nm/sとした。
【0044】
最後に、透明導電層42である透明導電膜としてITOをDCスパッタリングにより150nm成膜する。透明導電膜の材料、膜厚および成膜方法はこれに限るものではない。ここで、陰極の透過率を測定したところ、波長450nmにおいて56%であった。
【0045】
ここで、比較例1として陽極にAg単体を用いた素子を作成した。陽極にAgを用いた以外は実施例1と同じプロセス条件で素子を作成した。ここで、今回用いたAgの反射率は波長450nmで96%であった。
【0046】
実施例1及び比較例1の素子の特性を表7に示す。
【0047】
【表7】
【0048】
実施例1の素子は比較例1の素子と比べると明からに素子特性が向上していることが確認できた。
【0049】
このように、陽極を反射電極として用いて、陰極側から発光を取り出す素子において、反射率の高いAgと金属酸化物の混合物を陽極として用いることにより、85%以上の反射率を持つと同時に有機層へのホール注入性の飛躍的な向上が可能となった。
【0050】
(実施例2−6)
陽極材料のみ以下の材料に変えて、同様に有機発光素子を作成し評価したところ表8のような結果となった。
【0051】
【表8】
【0052】
このように、陽極材料としてAg、Alベースの材料にIn、Sn、Zn等の酸化物を含有することで、可視域における反射率が70%以上を維持しつつホールの注入性が良い陽極を提供することが可能となったため、発光の取り出し効率が向上すると同時に有機層への発光効率の高い素子を作成することが可能となった。
【0053】
【発明の効果】
このように、本発明により、反射率が高くかつホール注入性の高い陽極が開発でき、有機発光素子の素子特性を飛躍的に向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における有機発光素子の一例を示す断面図である。
【図2】実施例1における有機発光素子の断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 陽極
3 有機層
4 陰極
5 絶縁層
31 ホール輸送層
32 発光層
33 電子輸送層
Claims (5)
- 陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に狭持され、かつ、前記陽極と接する一または複数の有機化合物からなる層とを少なくとも有し、前記陰極側から光を放出する有機発光素子において、前記陽極は、主成分金属としてAgまたはAl、および、副成分化合物として少なくともSn、In、Znのいずれかの金属酸化物を含む単一の層であって、前記主成分金属の組成比率が70%以上であり、かつ反射率が70%以上である反射電極であることを特徴とする有機発光素子。
- 前記主成分金属の組成比率が80%以上98%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
- 前記主成分金属がAgであり、副成分化合物がZnの酸化物であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の有機発光素子。
- 有機発光素子の製造方法であって、基板上に主成分金属と副成分化合物とからなる陽極を形成する工程と、前記陽極に接して一または複数の有機化合物からなる層を形成する工程と、前記一または複数の有機化合物からなる層を形成する工程後に陰極を形成する工程と、を有し、前記陽極は、主成分金属としてAgまたはAl、および、副成分化合物として少なくともSn、In、Znのいずれかの金属酸化物を含む単一の層であって、前記主成分金属の組成比率が70%以上であり、かつ反射率が70%以上であることを特徴とする有機発光素子の製造方法。
- 前記主成分金属の組成比率が80%以上98%以下であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子の製造方法。
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