JP4323231B2 - 高周波伝送線路基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波対応の伝送線路基板に関し、特に、誘電体基板を貫通して基板の表面と裏面に形成された伝送線路を接続するビアホールの高周波伝送特性を改善した高周波伝送線路の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体、あるいは誘電体(セラミックスや、ポリイミドなどの絶縁樹脂)の基板を貫通して、基板の表側と裏側の面に形成された伝送線路を接続する導電性の孔をビアホールと呼んでいる。基板の両面の伝送線路をビアホールで接続することで高密度の伝送線路を形成することができる。
【0003】
近年では、超高速の光通信システムやワイヤレス通信の分野において、伝送レートを上げるためにより高い周波数を使ったシステムが開発され、高い周波数帯域にも十分に対応できる高周波伝送線路基板が望まれている。
【0004】
図1(a)〜1(c)は、ビアホールを用いた一般的な伝送線路基板の構造を示す。誘電体基板101の表側に、表側伝送線路103が延び、誘電体基板101の裏面側には裏側伝送線路106が延びる。表側伝送線路103と裏側伝送線路106は、それぞれ表側パッド104と裏側パッド107により、誘電体基板101を貫通するビアホール102を介して相互に接続される。誘電体基板101の表面は、表側グランド面105として金属のベタ膜で被覆され、裏面は裏側グランド面108として、金属のベタ膜で被覆されている。
【0005】
誘電体基板101として、絶縁特性、柔軟性、耐熱性に優れたポリイミドが広く使用されている。しかし、ポリイミド基板を用いた場合、ビアホール102をエッチングで形成すると、図1(b)に示すように、その形状がテーパ状になってしまう。ポリイミド以外の材料でも、材料によってはビアホールのテーパ角がかなりの角度になる。
【0006】
あらかじめビアホールのテーパ形状を見越して伝送線路のパッドを設計すると、テーパ開口が広いほうのパッドの直径が非常に大きくなる。たとえば、厚さ50μmのポリイミド基板を用いた場合、幅50μmの伝送線路に対して、広いほうのパッドの直径が400μmといった具合である。
【0007】
配線幅に比べて直径の大きなパッドは、高周波信号が通過する際に、ビアホール部分の特性インピーダンスを変えてしまう。特性インピーダンスが異なる部分では反射が生じるので、進行方向への波と戻り波が打ち消しあって、伝送特性が劣化する。また、高周波信号はパッドの外周に最も流れやすいので、パッドサイズが大きくなると、高周波信号がビアホール102に流れ込む前に特定の周波数で共振が起き、図2に示すように、特定の帯域で伝送特性が劣化する。伝送特性が劣化する帯域はパッドサイズによっても異なるが、たとえば上述した直径400μmのパッドでは、50GHz〜60GHzでビアホールの伝送特性が落ち込み始め、80〜90GHzで最も伝送特性が悪くなる。
【0008】
特に、誘電体基板101の表と裏に形成される表面側伝送線路103と裏面側伝送線路106が同じ方向に(一直線に)延びるように配置された場合に、これらの伝送線路103、106を接続するビアホールの形状がテーパ状になっていると、10GHz以上の高周波信号は、図3に示すように、表側パッド104のa点から、パッド104の外周に沿って反対側のb点を経て、テーパ状の斜面に沿って裏面側パッド107のc点に到る経路をたどる。この現象は、パッドとビアホール部分の特性インピーダンスによるものである。このような経路をたどると、経路の長さに応じた周波数で共振が起きるため、パッドの直径が大きくなるほど、低い周波数側に高周波伝送特性の限界が現れてしまう。
【0009】
一方、誘電体の片面側のみを用いて信号伝送するコプレナ線路型の多層配線構造において、同一の絶縁層上で伝送線路を電源配線とグランド配線で挟み、垂直方向では2層にまたがる伝送線路を直交して配置する構成が知られている(たとえば、特許文献1参照)。伝送線路を挟んで位置する電源配線とグランド配線の上層には、電源配線とグランド配線に重なるようにして平行に走るグランド配線と電源配線が配置され、電源−グランド間のキャパシタンスを増大させている。この構成では、伝送線路の上下にグランド面がないので、干渉を避けるために必然的に伝送線路を直交させる必要があるが、伝送線路の直交部分に高周波信号を通す構成とはなっていない。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−54921号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
テーパ状になったビアホールにおいて、高周波信号が流れやすいパッド外周に沿った経路長を短くすることにより、より高い周波数までビアホールを使用することが可能になる。しかし、テーパのサイズやパッドのサイズは、使用する基板の材質と、ビアホール形成技術によって決まり、100GHz以上の高い周波数帯域に対応できる程度までパッドサイズを小さくするには限界がある。
【0012】
レーザ加工では、テーパのない状態でホール径100μm以下のビアホールの形成が可能であるが、コストが高くなる。高周波対応の伝送線路基板の適用分野は多岐にわたるので、汎用性や低コストが重視されるので、汎用的で安価なエッチングによるビアホールの形成が望ましい。
【0013】
そこで、本発明では、従来のビアホール形成技術をそのまま利用し、誘電体基板を貫通するビアホールで100GHz以上の高い周波数帯域まで高周波伝送特性を良好に維持することのできる高周波伝送線路基板を提供することを目的とする。
【0014】
特に、安価で容易なエッチング工程で作製されたテーパ状のビアホールでも、高周波伝送特性を高い周波数帯域まで良好に維持することのできる高周波伝送線路基板を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、高周波信号を通すために誘電体基板を貫通して形成されたビアホールで接続される基板表面側の伝送線路と、基板裏面側の伝送線路とを、ビアホールを挟んで互いに直交するように配置する。
【0016】
すなわち、図4に示すように、開口直径の大きなパッド14に接続される上部伝送線路13と、開口の小さなパッド17に接続される下部伝送線路16とが、互いに直交する位置関係となるように伝送線路を配置する。
【0017】
このような直交配置とすることで、高周波信号はa点から、上側パッド14の外周の約4分の1のb点に到達したところで、ビアホール12内壁に沿って伝播し、下側パッド17のc点から下部伝送線路16に流れる。
【0018】
図3に示した従来の平行配置の伝送線路基板と比較して、パッド外周に沿ったa点からb点までの距離が約半分になる。ビアホールを通過する高周波信号の経路を短くできるので、共振周波数を従来よりも高い帯域にシフトすることができる。この結果、より高い周波数帯域での高周波信号を、ビアホールでの伝送特性を良好に維持したまま通すことが可能になる。
【0019】
具体的には、本発明の高周波伝送線路基板は、基板と、基板を貫通するテーパ状のビアホールと、基板の表面でビアホールに接続される高周波伝送用の第1伝送線路と、基板の裏面で前記ビアホールから前記第1伝送線路と直交する方向に延びる高周波伝送用の第2伝送線路とを備える。
【0020】
このように、ビアホールを介して接続される基板表面の第1伝送線路と、基板裏面の第2伝送線路が、ビアホールを挟んで互いに直交する配置構成とすることで、ビアホールを通過する高周波信号の経路を短縮することができる。この結果、従来の伝送線路構成と比較して、より高い周波数帯域まで高周波信号を使用することが可能になる。
【0021】
高周波伝送線路基板は、基板表面でビアホールの第1開口に沿って設けられる第1パッドと、基板裏面でビアホールの第2開口に沿って設けられる第2パッドをさらに有し、第1パッドの直径は、第2パッドの直径の2倍以上である。
【0022】
第1伝送線路と第2伝送線路は、第1パッドおよび第2パッドにそれぞれ接続され、第1伝送線路と第2伝送線路の少なくとも一方は、対応するパッドから両方向に向かって延びる。
【0023】
あるいは、第1伝送線路は、前記ビアホールの第1開口上にまたがるブリッジ線路を含む。この場合は、第2伝送線路は、ブリッジ線路に対して直交する方向に延びる。
【0024】
伝送線路が対応するパッドから両方向に延びる場合、この両方向に延びた伝送線路が合流して1本になる構成とするのが望ましい。
【0025】
本発明は特に、第1パッドと第2パッドとの直径比が2倍以上となるようなテーパ状のビアホールでの高周波伝送特性が効果的に改善される。
【0026】
上述した伝送線路基板は、80ギガビット毎秒以上となる次々世代通信システムに好適に利用できる。また、超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)通信システムや超高速・大容量データ光通信システムにも好適に利用できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下で、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0028】
図5(a)〜5(c)は、伝送線路構成の参考例1を示す図である。伝送線路基板10は、たとえばポリイミド等の誘電体基板11の表面(第1面)に形成された表側伝送線路(第1伝送線路)13と、誘電体基板11の裏面(第2面)に形成された裏面側伝送線路(第2伝送線路)16と、誘電体基板11を貫通して表側および裏側の伝送線路13、16を接続する導電性のビアホール12を有する。
【0029】
ビアホール12の表側開口12Aに沿って、リング状の表側パッド14が形成され、表側伝送線路13は、パッド14に接続される。一方、ビアホール12の裏側開口12Bに沿って、リング状の裏側パッド17が形成され、裏側伝送線路16は、パッド17に接続される。表側伝送線路13と、裏側伝送線路16は、図5(b)に示すように、ビアホール17を挟んで、互いに直交する方向に伸びる。
【0030】
誘電体基板11の表面は、グランドインピーダンスによる配線損失を低減するために、ベタ状のグランド面15となっている。表側グランド面15、表側パッド14、および表側伝送線路13は、好ましくは同じ金属で形成される。表側伝送線路13および表側パッド14と表側グランド面15との間は、所定のギャップ幅Wで絶縁されている。ギャップ幅Wは、伝送線路のキャパシタンスが所定の値にあるように、すなわち特性インピーダンスが所定の値になるように、適宜設定される。
【0031】
同様に、誘電体基板の裏面も、ベタ状の裏側グランド面18となっている。裏側グランド面18、裏側パッド17、裏側伝送線路16は、たとえば同一の金属膜で形成される。裏側伝送線路16と裏側グランド面18との間の絶縁ギャップ幅も、裏側伝送線路16が所定の特性インピーダンスとなるように設定されている。
【0032】
図5に示す例では、表側伝送線路13は、表側パッド14から一方の側(図5の例では紙面の左側)に向かって延びる。裏側伝送線路16は、図5(b)に示すように、表側伝送線路13と90度の角度を成すように、裏側パッド17から一方の側(図5の例では紙面の下側)に向かって延びる。
【0033】
このように、表側伝送線路13と裏側伝送線路16を、ビアホールを挟んで直交するように配置することによって、伝送線路を伝播する高周波信号がビアホール12を通過する際の経路を短くすることができる。すなわち、図4に示すように、たとえば、表側伝送線路13から裏側伝送線路16に高周波信号が伝わる場合、信号は表側パッド14の外周に沿って円周の約4分の1を伝播すると、テーパ状のビアホールに流れ込む。パッド14の外周の2分の1を伝播してからビアホール12内に流れ込む従来の配置構成と比較して、共振周波数が高い側にシフトするので、より高い高周波帯域においても、ビアホールで高周波信号の伝播特性を良好に維持できる。したがって、使用可能な周波数帯域が広範囲にわたり、適用範囲を拡張することができる。
【0034】
表側伝送線路13と裏側伝送線路16は、ビアホール12を挟んで互いに直交する方向に延びる構成であれば、図5に示す参考例に限定されない。以下に他の参考例として様々な構成例を示す。
【0035】
図6(a)〜6(c)は、伝送線路構成の参考例2を示す。参考例2では、表側伝送線路13は、図5に示す例と同様に、表側パッド14の一方の側(図6の例では紙面の左側)にだけ延びる。一方、裏側伝送線路26は、図6(c)に示すように、表側伝送線路13と直交するように、裏側パッド17から両方向に向かって延びる第1領域26aを有する。裏側伝送線路26の第1領域26aは、最終的には合流して1本の伝送線路(第2領域)26bとなる。第1領域26aは、第2領域26bの長手方向の中心線に対して左右対称であるのが望ましい。
【0036】
ビアホール12を介して表側伝送線路13に接続される裏側伝送線路26の第1領域26aが、表側伝送線路13と直交する方向に延びるので、図5に示す配置構成例と関連して述べたのと同様の効果を得ることができる。すなわち、高周波信号は、表側パッド14の外周に沿って4分の1程度伝播した後、ビアホール12の導電面を伝って裏側伝送線路16に到達する。ビアホール12での高周波伝播経路を短縮できるので、共振周波数をより高周波側にシフトさせることができる。結果として、より高い周波数まで良好な高周波伝送特性で使用することが可能になる。
【0037】
また、裏側パッド17から両方向に延びる裏側伝送線路26の第1領域26aを最終的に接続して1本にすることによって、いずれかの端部での反射を防止する。
【0038】
図7(a)〜7(c)は、伝送線路構成の参考例3を示す。参考例3では、参考例2とは逆に、表側伝送線路33が表側パッド14から両方向に延びる。裏側伝送線路16は、図5に示す例と同様に、ビアホール12を挟んで表側伝送線路33と直交するように、表側パッド14の一方の側(図7の例では紙面の右側)にだけ延びる。
【0039】
表側伝送線路33は、図7(c)に示すように、裏側伝送線路16と直交するように表側パッド14から両方向に向かって延びる第1領域33aを有する。表側伝送線路33の第1領域33aは、最終的には合流して1本の伝送線路(第2領域)33bとなる。第1領域33aは、第2領域33bの長手方向の中心線に対して左右対称であるのが望ましい。
【0040】
たとえば、表側伝送線路33から裏側伝送線路16に高周波信号が伝播する場合、表側伝送線路33の第1領域33において、両側から表側パッド14に到達した信号は、表側パッド14の外周に沿って4分の1周伝播した後、ビアホール12を介して裏側伝送線路16に到達する。参考例2と同様に、ビアホール12での高周波伝播経路長を短縮できるので、共振周波数をより高周波側にシフトさせることができる。結果として、より高い周波数まで高周波伝送特性を良好に維持して使用することが可能になる。
【0041】
図8(a)〜8(c)は、伝送線路構成の参考例4を示す。参考例4では、表側伝送線路43と、裏側伝送線路46の双方が、互いにビアホール12を挟んで互いに直交するように、表側パッド14と裏側パッド17からそれぞれ両方向に延びる。すなわち、表側伝送線路43は、表側パッド14から両方向に延びる第1領域43aと、両方向に延びた第1領域が合流して一本の伝送線路になる第2領域43bとを有する。同様に、裏側伝送線路46は、図6(c)に示すように、表側伝送線路13と直交するように、裏側パッド17から両方向に向かって延びる第1領域46aと、両方向に延びた第1領域46aが合流して1本の伝送線路になる第2領域46bとを有する。
【0042】
図8の構成例においても、高周波信号は、表側パッド14の外周に沿って4分の1程度伝播したあと、ビアホール12の導電面を伝って裏側伝送線路46に到達するので、ビアホール12での高周波伝播経路長を短縮できる。結果として、共振周波数をより高周波側にシフトさせ、ビアホールの高周波伝送特性を、より高周波帯域にわたって良好に維持することができる。
【0043】
また、表側パッド14から両方向に延びる表側伝送線路43の第1領域43aと、裏側パッド17から両方向に延びる裏側伝送線路46の第1領域46aを、最終的に1本の伝送線路とすることによって、高周波信号の反射を防止する。
【0044】
図9(a)〜図9(c)は、本発明の実施形態に係る高周波伝送線路構造を有する伝送線路基板の図である。図9に示す例では、表側伝送線路53は、ビアホールの表側の開口12Aにまたがるブリッジ線路53Bを含む。ブリッジ線路53Bは、表側パッド14の対向する2点間を接続する。図9に示す例では、ブリッジ線路59は、空気層を介して表側パッド14上に位置するエアブリッジであるが、ポリイミドなどの絶縁層を介して表側パッド14上に位置してもよい。
【0045】
一方、裏側伝送線路16は、裏側パッド17から、表側伝送線路53のブリッジ線路53Bと直交するように、一方向に向かって延びる。したがって、ブリッジ線路53Bから表側パッド14に入力された高周波信号は、表側パッド14の外周に沿って4分の1周程度伝播してからビアホール12を通って裏側伝送線路16に到達する。これにより、図5〜図8に示す配置構成と同様の効果を得ることができ、より高い周波数帯域まで伝送特性を良好に維持できる。
【0046】
図10は、上述した本発明の伝送配線基板の製造工程図である。図10では、図7に示す参考例3の伝送配線基板30を例にとって説明する。
【0047】
まず、図10(a)に示すように、厚さ50μmのポリイミドから成る誘電体基板11を準備する。
【0048】
次に、図10(b)に示すように、誘電体基板11の表面にフォトレジスト膜(不図示)を形成し、フォトエッチング法により所望のマスクパターンを形成する。このマスクパターン上に、金(Au)を真空蒸着し、さらに、厚さ10μm〜30μm程度の金メッキを施して、裏側伝送線路16、裏側パッド17、および裏側グランド面18を形成する。不要な部分の金(Au)層は、フォトレジスト膜(不図示)を有機溶剤で除去する際に、同時に除去する。
【0049】
次に、図10(c)に示すように、裏側に伝送線路パターンを形成した誘電体基板11を反対側に返して、表向きにする。
【0050】
次に、図10(d)に示すように、誘電体基板11の表面にフォトレジスト膜(不図示)を形成し、フォトエッチング法によりビアホール用のマスクパターンを形成する。ビアホール部分のフォトレジストを除去した開口パターンを有する誘電体基板11をウェットエッチングあるいはドライエッチングして、誘電体基板11を貫通するビアホール12を形成する。
【0051】
このとき、誘電体基板11の材料、エッチング条件等の要因により、ビアホール12の側面は垂直にならず、テーパ状になる場合が多い。しかし、フォトリソグラフィとエッチングを組み合わせる工程は、半導体製造工程で広く一般に用いられ、レーザ加工よりも安価な手法である。図10(d)の例では、エッチング条件を最適化して、ビアホールの裏側開口の直径が50μm〜100μm、表側の開口の直径が200μm〜300μmのビアホール12を形成する。
【0052】
次に、図10(e)に示すように、ビアホールを形成した誘電体基板11からいったんフォトレジスト膜を除去し、新たに、フォトレジスト膜を形成する。フォトエッチング法により、表側伝送線路のためのレジストマスクパターンを形成する。フォトレジストの露光を行う際、ビアホール12のテーパ部分に露光、非露光の境界があると、誘電体基板11表面と、テーパ部分とで焦点が一致しない。このため、精度の高いパターン形成ができなくなるので、露光、非露光の境界はテーパ部分を避ける必要がある。このような理由から、ビアホールがテーパ状になっている場合、ビアホール全体をパッドとする必要があり、必然的にパッドのサイズはテーパ状ビアホールの開口よりも大きくなる。
【0053】
露光により所望のマスクパターンを形成した後は、金(Au)の蒸着、金メッキ工程を経て表側パッド14、表側グランド15、および表側伝送線路33を形成する。このとき、ビアホール12内壁にも金メッキが施される。表側伝送線路33は、ビアホール12を挟んで裏側伝送線路16と直交するように、表側パッド14から両方向に延びる。不要な金属部分は、フォトレジスト膜を有機溶剤で除去する際に同時に除去される。
【0054】
以上の工程により、誘電体基板11を貫通するビアホールで接続表面と裏面に形成された互いに直交する伝送線路間を接続する伝送線路基板が完成する。
【0055】
図11は、本発明の伝送線路構造を用いた場合の高周波伝送特性の改善効果を示すグラフである。横軸は周波数、縦軸はビアホールの伝送特性を表わす。
【0056】
点線は、表側伝送線路と裏側伝送線路を一直線上に配置してテーパ型のビアホールで接続した従来構造の周波数特性を示す。実線は、参考例3の直交配置構造を有する伝送線路基板のビアホール周波数特性を示す。
【0057】
従来の構成では、高周波信号はパッドの外周に沿って反対側までたどってからビアホールを経て裏側伝送線路に至るので、経路長に応じた共振周波数で伝送特性が大きく落ち込む。図2の従来技術と関連して述べたように、たとえば直径が400μmのパッドでは、50GHz〜60GHzから伝送特性の劣化が始まり、90GHz近傍でもっとも特性が劣る。
【0058】
これに比べ、本発明のように直交配置とした場合、同じサイズのパッドを用いたとしても、パッド外周に沿って伝播する距離を半分にできるので、ビアホール部分での経路長を大幅に低減し、共振による伝送特性の劣化をより高い側にシフトさせることができる。具体的には、実線で示すように、伝送特性を入力に対する出力の比であるS21で表わした場合、伝送特性の劣化を120GHz〜130GHzの帯域にシフトすることができ、100GHz近傍までS21の値をほぼ1に近い状態に維持することができる。
【0059】
エッチング条件を最適化して、広いほうのパッド径を200μm程度に低減すると、ビアホールの高周波伝送特性はさらに改善される。
【0060】
このように、本発明によれば、すでに確立された汎用的なフォトリソグラフィとエッチング技術をそのまま利用して、ビアホールでの高周波伝送特性を効果的に改善することが可能になる。
【0061】
最後に、上記説明に関して、以下の付記を開示する。
(付記1) 基板と、
前記基板を貫通するテーパ状のビアホールと、
前記基板の表面に位置し、前記ビアホールに接続される高周波伝送用の第1伝送線路と、
前記基板の裏面に位置し、前記ビアホールから前記第1伝送線路と直交する方向に延びる高周波伝送用の第2伝送線路と
を備える高周波伝送線路基板。
(付記2) 基板表面で、ビアホールの第1開口に沿って設けられる第1パッドと、基板裏面で、ビアホールの第2開口に沿って設けられる第2パッドをさらに有し、第1パッドの直径は、第2パッドの直径の2倍以上であることを特徴とする付記1に記載の高周波伝送線路基板。
(付記3) 第1伝送線路と第2伝送線路は、第1パッドおよび第2パッドにそれぞれ接続され、第1伝送線路と第2伝送線路の少なくとも一方は、対応するパッドから両方向に向かって延びることを特徴とする付記2に記載の高周波伝送線路基板。
(付記4) 第1伝送線路は、ビアホールの第1開口上にまたがるブリッジ線路を含むことを特徴とする付記2に記載の高周波伝送線路基板。
(付記5) 第2伝送線路は、前記ブリッジ線路と直交する方向に延びることを特徴とする付記4に記載の高周波伝送線路基板。
(付記6) 第1伝送線路と第2伝送線路の少なくとも一方は、対応するパッドから両方向に延びる第1領域と、両方向に延びた伝送線路が合流して1本になる第2領域とを有することを特徴とする付記2に記載の高周波伝送線路基板。
(付記7) 前記基板の表面および裏面に、それぞれ表側グランド面と裏側クランド面を有することを特徴とする付記1に記載の高周波伝送線路基板。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ビアホールを介して接続される基板表面の伝送線路と裏面の伝送線路を互いに直交する配置とすることで、基板を貫通するテーパ状のビアホールでの高周波伝送特性を大幅に改善することができる。
【0063】
本発明は特に、ビアホール開口に設けられる広いほうのパッドの直系が、狭いほうのパッドの直系の2倍以上であるビアホールに効果的に適用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な高周波伝送基板における伝送線路構造を示す図である。
【図2】従来の伝送線路基板においてパッドサイズにより生じるビアホールの高周波伝送特性の劣化を示すグラフである。
【図3】従来の伝送線路構造におけるテーパ状ビアホールでの問題点を説明するための図である。
【図4】本発明の高周波伝送線構造の作用を説明するための図である。
【図5】高周波伝送線路構造の参考例1を示す図である。
【図6】高周波伝送線路構造の参考例2を示す図である。
【図7】高周波伝送線路構造の参考例3を示す図である。
【図8】高周波伝送線路構造の参考例4を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る高周波伝送線路構造を有する伝送線路基板の図である。
【図10】本発明の実施形態に係る伝送線路基板の作成工程図である。
【図11】本発明の高周波伝送線路構造の高周波伝送特性の改善効果を示す図である。
Claims (2)
- 基板と、
前記基板を貫通するテーパ状のビアホールと、
前記基板の表面に位置し、前記ビアホールに接続される高周波伝送用の第1伝送線路と、
前記基板の裏面に位置し、前記ビアホールから前記第1伝送線路と直交する方向に延びる高周波伝送用の第2伝送線路と、
前記基板表面で、前記ビアホールの第1開口に沿って設けられる第1パッドと、基板裏面で、ビアホールの第2開口に沿って設けられる第2パッドと
を有し、第1パッドの直径は、第2パッドの直径の2倍以上であり、
前記第1伝送線路は、前記ビアホールの第1開口上にまたがるブリッジ線路を含み、
前記第2伝送線路は、前記ブリッジ線路と直交する方向に延びる
ことを特徴とする高周波伝送線路基板。 - 前記基板の表面および裏面に、それぞれ表側グランド面と裏側クランド面を有することを特徴とする請求項1に記載の高周波伝送線路基板。
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