JP4322419B2 - 3次元粒子線照射装置とその作動方法 - Google Patents

3次元粒子線照射装置とその作動方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、3次元粒子線照射装置とその作動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、日本における死亡原因の約3分の1を占めるがんの治療方法として、陽子や重粒子を用いた粒子線治療法が注目されている。この方法は、加速器から出射された陽子ビーム、あるいは重粒子ビームをがん細胞に照射することにより、正常細胞にほとんど影響を与えることなく、がん細胞のみを死滅させることができるものである。
【0003】
現在使用されている粒子線治療の方法は、2次元ワブラ法や2次元二重散乱体法などと呼ばれる方法である。これらの2次元的照射方法では、ワブラ法あるいは二重散乱体法と呼ばれる方法により粒子線ビームのビーム径を拡大し、コリメータにより照射領域を制限することにより、患部形状に合致させる。しかし、この合致させられたビーム形状は、ビーム軸から射影された患部の外郭に一致しているので、3次元的には精密に照射領域を患部に合わせることができないという問題がある。そこで、粒子線治療のさらに進んだ治療法として、体内患部を3次元的に照射することにより、より高精度にがん細胞の狙い撃ちを行う方法が提案されている。
【0004】
3次元照射法の一つに、スポットスキャニング法と呼ばれる方法がある。この方法は、治療部位を仮想的に3次元格子点に切り分け照射を行うものである。この3次元スポットスキャニング法のような3次元照射方法を行うことにより、ビーム軸方向についても精度よく患部に合わせることが可能になり、従来の2次元的照射方法と比較して正常患部への被曝を抑制することができる。
【0005】
以下には、この3次元スポットスキャニング法によりがん治療を行うための3次元照射装置について図面を用いて説明する。
【0006】
図10は、治療室に配置された3次元スポットスキャニング法による3次元照射装置を示す概略構成図である。図中において、1は治療ベッドであり、2は治療ベッド1上の患者に粒子線ビームを照射するように配置された3次元照射装置である。3次元照射装置2は、スキャニング磁石3、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ6、およびレンジシフタ7から構成されている。
【0007】
次に、図10に示す3次元照射装置を構成する各機器の機能を説明する。
スキャニング磁石3は、図示していない加速器本体からこのスキャニング磁石3に入射したスポットビームを体内患部内のビーム軸に対して垂直面上の点(X、Y)に走査する。より詳細には、スキャニング磁石3a,3bはそれぞれ、ビームをX方向に走査するX方向スキャニング磁石、およびY方向に走査するY方向スキャニング磁石である。
【0008】
レンジシフタ7は、体内患部内のビーム軸方向の位置(Z)を制御する。レンジシフタ7は、複数の厚さのアクリル板から構成されており、これらアクリル板の組み合わせにより、このレンジシフタ7を通過するビームエネルギーすなわち体内飛程を段階的に変化させるようになっている。レンジシフタ7における体内飛程の制御は、一般的には一定間隔で切り替えられる。
【0009】
単エネルギー粒子線ビームにおける体内深さ方向の照射線量分布は、図11に示すように体内飛程近傍に非常にシャープなピーク(以下、ブラッグピークと呼ぶ)分布を持つため、リッジフィルタ6を用いて、レンジシフタ7によって切り替えられる体内飛程の間隔に対応するよう、単エネルギーの粒子線ビームの飛程分布を拡大する。
【0010】
3次元照射用のリッジフィルタ6の形状を図12に示す。この図12に示すリッジフィルタは、アルミニウムからなる棒片が複数並べられて構成されている。各棒片はほぼ二等辺三角形の形状を持ち、ビーム軸方向の厚みがビームの垂直方向に対して変化するようになっている。
【0011】
線量モニタ4は、体内に照射する線量を測定するために設けられ、位置モニタ5は、スキャニング磁石3により走査されたビーム位置が正しい位置にあるかどうかを識別するために設けられる。
【0012】
図10に示す3次元照射装置においては、上述した機能を有する各機器を用いて、以下の方法により3次元照射が行われる。
まず、患部をビーム軸に対して複数のスライスに仮想的に分割し、最深スライスの位置に応じて粒子線ビームの入射エネルギーとレンジシフタ6におけるアクリル板厚が選ばれる。
【0013】
次に、最深スライスにおける患部形状に応じてスポットビームを照射する点数nと位置(Xi、Yi)[i=1〜n]が選ばれ、スキャニング磁石3により各位置(Xi、Yi)に粒子線ビームが照射される。この場合、スキャニング磁石3において単エネルギーであった粒子線ビームは、リッジフィルタ6によって、体内飛程分布がスライス幅に対応するようエネルギー分布が拡大されている。このスライス上の位置(Xi、Yi)の照射線量は線量モニタ4により監視され、予定線量の照射を検出するとビームが停止され、スキャニング磁石3によって照射位置が同じスライス上の次の位置(Xi+1、Yi+1)に変更される。
【0014】
このスライス内の点の照射がすべて終了すると、レンジシフタ6におけるアクリル板厚が変更され、次のスライス照射が行われる。
このようなスライス内の点の照射をスライス毎に順次繰り返すことにより、3次元的な照射を実現する。
以上のように、体内患部に対して3次元的に照射を行うことにより、従来の2次元的照射方法と比較して、精度よく患部に合致させて照射を行うことが可能になる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、3次元スポットスキャニング法のような従来の3次元照射方法には、以下のような問題があった。
【0016】
まず、図12に示したリッジフィルタでは、照射線量を全スライスにわたって積算した場合に、図13に示すように深さ方向の照射線量分布が大きな凹凸を有するギザギザの分布となってしまう。これは、ブラッグピークに対して体内深さの浅い側の線量はなだらかになっており、より深い側のスライス照射の影響を受けるためである。
なお、このような問題は、3次元スポットスキャニング法による照射に限らず、リッジフィルタを用いて3次元的に照射を行う方法、例えば、3次元ワブラ法や3次元二重散乱体法においても同様に生じる問題である。
【0017】
このような問題を避ける方法として、バーバラ・シャフナーらによりブラッグピークをガウス分布形状にて重み付けするリッジフィルタが提案されている(Med. Phys., Vol.27(2000),pp.716-724)。このリッジフィルタを使用した場合の深さ方向照射線量分布を図14に示す。この図14に示すように、この方法は、重み付けによってブラッグピークがなだらかなガウス分布形状に拡大されるために、ギザギザの照射線量分布が平坦化され、またスライス間隔に誤差が生じても一様性に影響が少ないというメリットを有する。
【0018】
しかしながら、このリッジフィルタによる重み付け方法には重大な短所がある。すなわち、ギザギザの分布をなだらかにしたために、照射領域終端部の照射線量分布のきれが悪くなり、本来の3次元照射の目的であるところの、患部形状に一致させた精度よい照射ができなくなるという問題がある。
【0019】
以上のように、従来のリッジフィルタを用いた3次元照射方法には、全照射領域にわたって積算した体内深さ方向の照射線量分布の一様性が得られない、あるいは、照射線量分布のきれが悪くなる、という問題があった。
【0020】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、全照射領域にわたって積算した体内深さ方向の照射線量分布の一様性を確保しながら、照射領域終端部の線量分布の峻度制御性をよくすることで、患部最深部の峻度制御性がよく、患部形状に一致させた安定で高精度の照射を実現可能な優れた3次元粒子線照射装置とその作動方法を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような特徴を有するものである。請求項1に記載の発明は、粒子線ビームのエネルギー制御を行う機構と、前記エネルギー制御に対応させてエネルギー分布を拡大するためのビーム調整機構と、を有する3次元粒子線照射装置において、あらかじめ作成された照射パターンデータにしたがって、前記ビーム調整機構を粒子線ビームの照射軸上に駆動するための制御機構を有し、前記ビーム調整機構が、材質および形状の少なくとも一方が異なる複数種類のリッジフィルタであり、前記複数種類のリッジフィルタが、粒子線ビームの照射を受ける被照射体の深さ方向の照射線量分布に関して、積算した照射線量分布が均一化されるように形状が最適化された均一化用のリッジフィルタと、体内飛程近傍のピークを深さ方向のガウス分布形状に重み付けする形状を有する重み付け用のリッジフィルタとを含み、前記照射パターンデータが、照射領域を深さ方向に仮想的に複数のスライスに分割した場合におけるこのスライスの識別情報を含むことを特徴としている。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明を3次元粒子線照射装置の作動方法の観点から把握したものであり、粒子線ビームのエネルギー制御を行う機構と、材質および形状の少なくとも一方が異なる複数種類のリッジフィルタから成る前記エネルギー制御に対応させてエネルギー分布を拡大するためのビーム調整機構と、あらかじめ作成された照射パターンデータにしたがって、前記ビーム調整機構を粒子線ビームの照射軸上に駆動するための制御機構を有する3次元粒子線照射装置の作動方法において、前記複数のリッジフィルタを、粒子線ビームの照射領域における深さ方向の照射線量分布に関して積算した照射線量分布が均一化されるように形状が最適化された均一化用のリッジフィルタと、粒子線ビームの飛程分布を深さ方向のガウス分布形状に重み付けする形状を有する重み付け用のリッジフィルタとから構成し、あらかじめ作成された照射パターンデータにしたがって、前記複数のリッジフィルタをビーム軸上に出し入れすることにより、前記飛程分布の調整方法の切り替えを行い、この切り替えられた粒子線ビームの飛程分布にしたがって前記粒子線ビームを出射するにあたり、前記粒子線ビームの照射領域を仮想的に複数のスライスに分割し、粒子線ビームのエネルギー出射を制御しながらスライスを順次切り替えて、粒子線ビームを照射領域に対して出射することを特徴とする。
【0023】
以上のような発明によれば、あらかじめ作成された照射パターンデータにしたがい、照射位置に応じて粒子線ビームの飛程分布の調整方法を適切に切り替え、粒子線ビームの飛程分布を適切に調整することにより、照射位置に応じた望ましい照射が可能となる。
これにより、全照射領域にわたって積算した体内深さ方向の照射線量分布の一様性を確保しながら、照射領域終端部の線量分布の峻度制御性をよくすることが可能となるため、患部最深部の峻度制御性がよく、患部形状に一致させた安定で高精度の照射を実現することができる。
また、スライス毎に照射パターンを選択することにより、スライス毎に最適な照射を行うことが可能になる。すなわち、体内飛程の最も大きいスライスに対しては、照射領域終端部の線量分布の峻度制御性が良くなるように粒子線ビームの飛程分布を調整し、これ以外のスライスに対しては粒子線ビームの飛程分布をなだらかに調整するように、照射を行うことが可能になる。
【0025】
また、リッジフィルタの材質や形状を選択することにより、粒子線ビームの飛程分布を高精度に調整することができ、構成も比較的簡略である。リッジフィルタを使用した場合、リッジフィルタをビーム軸と直交する平面上で直線的または平面的に移動させればよいため、リッジフィルタの駆動制御は既存の技術を利用して容易かつ高精度に実現できる。
【0027】
また、体内飛程の最も大きいスライスに対しては、照射領域終端部の線量分布のきれが良くなるように最適化された均一化用のリッジフィルタを用いて粒子線ビームの飛程分布を調整し、これ以外のスライスに対しては重み付け用のリッジフィルタを用いて粒子線ビームの飛程分布をなだらかに調整するように、照射を行うことが可能になる。これによって、照射領域終端部の線量分布の峻度制御性を良くすることができる。さらに、線量分布の平坦化およびスライス間隔の誤差に対する均一性は、飛程の最も大きいスライス以外のなだらかな飛程調整により保証することが可能になる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下には、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、従来例で示したものと同じ機器については同一記号を用いて提示する。
【0036】
[第1の実施形態]
[構成]
図1は、第1の実施形態として、治療室に配置された3次元スポットスキャニング法による3次元照射装置を示す概略構成図である。図中において、治療ベッド1上の患者に粒子線ビームを照射するように配置された3次元照射装置10は、スキャニング磁石3、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ11、およびレンジシフタ7、から構成されている。
【0037】
図1に示す3次元照射装置10のうち、リッジフィルタ11は、単エネルギーの粒子線ビームの体内飛程の調整を行い、飛程分布の拡大・変形を行うビーム調整機構である。なお、他の機器、すなわち、スキャニング磁石3、線量モニタ4、位置モニタ5、およびレンジシフタ7の機能については、前述した従来例について説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
図2は、リッジフィルタ11の構成を示す構成図である。リッジフィルタ11は、リッジフィルタ収納器12、互いに形状の異なる複数枚のリッジフィルタリーフ13(13a,13b,13c, ...)と、これらに取り付けられたリッジフィルタ駆動機構14(14a,14b,14c, ...)、および、これらのリッジフィルタ駆動機構14を制御するリッジフィルタ制御器15を有している。ここで、リッジフィルタ駆動機構14は、エアシリンダにより構成されており、リッジフィルタ制御器15により制御されて、リッジフィルタリーフ13をビーム軸上へ出し入れするようになっている。
【0039】
なお、図中においては、簡略化の観点から、3枚のリッジフィルタリーフ13が示されているが、実際には、4枚以上のリッジフィルタリーフ13を使用することが可能であり、また逆に、2枚のリッジフィルタリーフ13のみを使用することも可能である。いずれの場合においても、リッジフィルタリーフ13の数と等しい数のリッジフィルタ駆動機構14が設けられ、各リッジフィルタリーフ13に取り付けられる。
【0040】
ここで用いられる3次元照射用のリッジフィルタリーフ13の形状を図3に示す。図3に示すリッジフィルタリーフ13は、アルミニウムからなる棒片が複数並べられて構成されている。図3の(a)に示すリッジフィルタリーフ13aは、積算した線量分布が均一化されるよう、形状が最適化されている。図3の(b)や(c)に示すそれ以外のリッジフィルタリーフ13b,13cは、ブラッグピークをガウス形状に重み付けするような形状を有している。
【0041】
ここで、リッジフィルタを通過したビームは飛程分布だけでなく、飛程そのものが変化をすることは避けられず、また、製作上この飛程の変化にはばらつきが生じる。これを避けるため、リッジフィルタリーフ13(13a,13b,13c)には異なる厚さのアクリルシート16(16a,16b,16c)が取り付けられ、リッジフィルタ11を通過したビームが常に一定の飛程変化となるよう調整されている。
【0042】
また、本実施形態においては、患部を照射する場合の照射パターンデータがあらかじめ作成されており、この照射パターンデータにしたがって、リッジフィルタ11のリッジフィルタリーフ13を選択し、選択したリッジフィルタリーフ13をビーム軸上に駆動するようになっている。図4は、そのような、照射パターンデータの一例を示すデータ構造図である。
【0043】
この図4に示すように、照射パターンデータは、照射番号、スライスID、リッジフィルタID、位置(X、Y)、照射線量、を含んでいる。その他、ビームのスポット径などを照射パラメータとして含める場合があるが、説明の簡略化の観点からここでは省略する。以下には、これらのデータ項目について簡単に説明する。
【0044】
照射番号は、照射点の通し番号であり、照射の順序を示している。
スライスIDは、患部をビーム軸に対して複数のスライスに仮想的に分割した場合の、スライスの識別を示すものであり、最深スライスから順番に、昇順の通し番号で表現されている。
リッジフィルタIDは、リッジフィルタによる飛程調整のパターンを識別するものであり、個々のリッジフィルタリーフに対応する昇順の通し番号で表現されている。
位置(X,Y)は、スライスIDで示されたスライス上の照射点の位置をX,Y座標で示している。
照射線量は、スライスIDと位置(X,Y)で指定された3次元格子点に照射すべき線量を示している。
【0045】
この図4の例では、上述したように、最深スライスから順番に、1、2, ...とスライスIDが定義されているため、この照射パターンデータによる照射は、最深スライスから順に行われることになる。
【0046】
また、同じスライスIDの中では、同じリッジフィルタIDが連続して指定されている。この場合、最深スライス(スライスID:1)では、1種類のリッジフィルタリーフ13a(リッジフィルタID:1)のみが使用されているのに対し、次のスライス(スライスID:2)では、まず最深スライスと同じリッジフィルタリーフ13a(リッジフィルタID:1)を用いて照射され、続いて別のリッジフィルタリーフ13b(リッジフィルタID:2)に変更され、同じスライス(スライスID:2)上の点が照射されることを示している。
【0047】
[作用]
以上のような第1の実施形態に係る3次元照射装置によれば、上述したような各機器を用いて、以下の方法により3次元照射が行われる。
まず、スライスIDに応じてレンジシフタ7におけるアクリル板厚が選ばれる。
続いて、リッジフィルタIDで指定されたリッジフィルタリーフ13が、対応するリッジフィルタ駆動機構14によりビーム軸上に駆動される。
【0048】
次に、スライスIDと位置(X,Y)で指定された3次元格子点であるスライス上の位置(Xi、Yi)にビームが照射されるように、スキャニング磁石3の電流値が変更され、スライス上の位置(Xi、Yi)に粒子線ビームが照射される。この場合、スキャニング磁石3において単エネルギーであった粒子線ビームは、リッジフィルタ11によって、体内飛程分布が拡大されている。
このスライス上の位置(Xi、Yi)の照射線量は線量モニタ4により監視され、その位置における予定線量の照射を検出するとビームが停止され、スキャニング磁石3によって照射位置が同じスライス上の次の位置(Xi+1、Yi+1)に変更される。
【0049】
この照射において、次の照射位置における照射パターンデータ中のリッジフィルタIDが現在のIDと異なるとき、リッジフィルタ制御器15によりリッジフィルタリーフ13の交換が行われる。
さらに、次の照射位置における照射パターンデータ中のスライスIDが現在のIDと異なるとき、レンジシフタ7におけるアクリル板厚が変更される。
以上のような照射パターンデータにしたがう照射を順次繰り返すことにより、3次元的に照射を行う。
【0050】
続いて、本実施形態に係る3次元照射装置によって得られる線量分布について説明する。本実施形態においては、前述したように、最深スライスの照射に使用されるリッジフィルタリーフ13aが、積算した線量分布が均一化されるように形状が最適化され、また、それ以外のスライスの照射に使用されるリッジフィルタリーフ13b,13cについては、ブラッグピークをガウス形状に重み付けするような形状を有している。そのため、最深スライスは、均一化用のリッジフィルタリーフ13aによって、積算した照射線量分布が均一になるように飛程分布が調整され、それ以外のスライスは、重み付け用のリッジフィルタリーフ13b,13cによって、飛程分布がガウス形状に重み付けするように調整される。
【0051】
図5は、このときのある位置(X,Y)に対して、各スライス当たりの深さ方向照射線量分布、およびこれらを積算して得られる拡大された深さ方向照射線量分布を示す分布波形図である。
この図5から明らかなように、従来の3次元照射装置に比べ、照射領域終端部の線量分布の峻度制御性が改善されている。さらに、線量分布の平坦化および、スライス間隔の誤差に対する均一性は、最深スライス以外のガウス形状に重み付けされた線量分布により保証される。
【0052】
[効果]
以上のように、第1の実施形態に係る3次元照射装置によれば、あらかじめ作成された照射パターンデータにしたがい、照射位置に応じて粒子線ビームの飛程分布の調整方法を適切に切り替え、粒子線ビームの飛程分布を適切に拡大または変形することにより、照射位置に応じた望ましい照射が可能となる。
【0053】
特に、スライス毎に照射パターンを設定しているため、スライス毎に最適な照射を行うことができる。すなわち、体内飛程の最も大きいスライスに対しては、照射領域終端部の線量分布のきれが良くなるように粒子線ビームの飛程分布を調整し、これ以外のスライスに対しては粒子線ビームの飛程分布をなだらかに調整するように、照射を行うことが可能になる。
【0054】
その結果、全照射領域にわたって積算した体内深さ方向の照射線量分布の一様性を確保しながら、照射領域終端部の線量分布の峻度制御性をよくすることが可能となるため、患部最深部の峻度制御性がよく、患部形状に一致させた安定で高精度の照射を実現することができる。したがって、患部に対して高精度の有効な照射を実現できるとともに、正常組織に対する被曝をできる限り少なくすることができる。
【0055】
また、リッジフィルタの形状を適切に選択することにより、粒子線ビームの飛程分布を高精度に拡大または変形することができ、構成も比較的簡略である。リッジフィルタのビーム軸と直交する平面上での直線的な駆動制御は、シリンダなどの既存の技術を利用して容易かつ高精度に実現できる。
さらに、リッジフィルタを通過した粒子線ビームの飛程そのものの変化や、製作上生じる飛程変化のばらつきを、リッジフィルタリーフ13に取り付けたアクリルシート(飛程補正層)16により補正できるため、リッジフィルタ11を通過した粒子線ビームが常に一定の飛程変化となるように調整することができる。また、飛程補正用の手段を独立に設けた場合に比べて、構成も簡略である。
【0056】
また、複数の照射位置を粒子線ビームの飛程分布の調整方法が同じ、すなわち、同じリッジフィルタリーフ13を用いる照射位置のグループに分け、グループ毎に同じリッジフィルタリーフ13を通過させて照射を行うことから、調整方法の切り替え回数を少なくすることができるため、調整方法の切り替えに要する時間を削減して、治療時間の短縮化に貢献できる。以下には、この利点について説明する。
【0057】
まず、機構上の問題として、リッジフィルタの駆動には、電磁石による照射位置の走査と比較して長い時間を必要とする。例えば、エアシリンダによりリッジフィルタをビーム軸上に出し入れした場合には、1秒程度の駆動時間を必要とする。このため、調整方法の切り替え回数を行うために、リッジフィルタを頻繁に駆動した場合には、照射にかかわるデッドタイムが増加し、治療時間が長引き、患者に肉体的負担をかけてしまう。
【0058】
これに対して、本実施形態においては、同じ調整方法を用いる照射位置をグループ分けして、各グループ内ではリッジフィルタを駆動不要としたことにより、デッドタイムを最小限にとどめ、治療時間を極力短縮することができるため、患者に余分な肉体的負担をかけずに済むという大きな利点が得られるものである。
【0059】
[変形例]
なお、第1の実施形態では、一例として、均一化用のリッジフィルタリーフ13aと重み付け用のリッジフィルタリーフ13b,13cという複数種類のリッジフィルタリーフを用いた照射例を示したが、使用するリッジフィルタリーフの種類が多くなるほど、飛程分布の調整方法として、より多くの調整方法を選択することができる。そしてまた、より多くのリッジフィルタリーフを用いることにより、拡大された照射線量分布の一様性をさらに高めることが可能になる。
【0060】
ところで、第1の実施形態では、複数枚のリッジフィルタリーフ13を個別のエアシリンダ(リッジフィルタ駆動機構14)により駆動する例を示したが、リッジフィルタを駆動するための具体的な構成は、本発明の有効性を損なわない限り、適宜選択可能である。例えば、電磁モータによりリッジフィルタリーフを駆動することが考えられる。また、複数のリッジフィルタリーフやリッジフィルタ素子を円盤上やXY駆動ステージ上に固定し、円盤を回転したりXY駆動ステージを平面上で動作させたりすることによってビーム軸上に挿入されるリッジフィルタリーフやリッジフィルタ素子を変更することも可能である。
【0061】
図6は、このようなリッジフィルタの駆動構成の変形例を示す構成図である。この図6に示す変形例では、複数枚のリッジフィルタリーフ13(13a,13b,13c, ...)を個別に駆動する代わりに、一つのリッジフィルタ21を、形状の異なる複数のリッジフィルタ素子23(23a,23b,23c, ...)、を一体化して構成し、これらのリッジフィルタ素子23をXY駆動ステージ24で一体的に駆動するようになっている。XY駆動ステージ24は、リッジフィルタ制御器25によって制御されるようになっている。
【0062】
また、複数のリッジフィルタ素子23(23a,23b,23c, ...)には、各素子毎に調整された厚さのアクリルシート26(26a,26b,26c, ...)が取り付けられ、各素子を通過したビームの飛程のばらつきが調整されるようになっている。
そしてまた、複数のリッジフィルタ素子23はある程度の大きさ、同一形状を持つように製作されており、照射パターンデータは、照射位置のうち同じリッジフィルタ素子を通過する照射位置をグループ化して、リッジフィルタを駆動する回数が少なくなるように作成されている。
【0063】
以上のような図6のリッジフィルタ21を用いて、粒子線ビームの飛程を調整する際には、リッジフィルタ制御器25によりXY駆動ステージ24を制御して、リッジフィルタ21を動作させ、リッジフィルタ素子23の切り替えを行う。すなわち、照射パターンデータで指定された照射位置(X,Y)とリッジフィルタIDをリッジフィルタ制御器25が受け取ると、リッジフィルタ制御器25は、指定された照射位置(X,Y)上にリッジフィルタIDに対応するリッジフィルタ素子(例えば23c)がくるようにXY駆動ステージ24を駆動する。切り替え後に、粒子線ビームをリッジフィルタ素子23cに入射することにより、リッジフィルタ素子23cを通過した粒子線ビームの飛程は、リッジフィルタIDにて指定された形状に調整される。
このリッジフィルタ21を使用した場合においても、図2に示すリッジフィルタ11を使用した場合と同様の効果が得られる。
【0064】
[第2の実施形態]
[構成]
図7は、第2の実施形態として、治療室に配置された3次元拡大ビーム法、特に、3次元ワブラ法による3次元照射装置を示す概略構成図である。なお、ここでは3次元ワブラ法に適用した場合の例を示しているが、3次元散乱体法においても、基本的にはビーム拡大の方法が異なるのみでその他の部分の構成は同様である。
【0065】
図中において、治療ベッド1上の患者に粒子線ビームを照射するように配置された3次元照射装置30は、散乱体37、ワブラ磁石38、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ11、レンジシフタ7、および多葉コリメータ39から構成されている。このような構成を有する本実施形態の3次元照射装置30は、前述した第1の実施形態の3次元照射装置10において、スキャニング磁石3の代わりにワブラ磁石38が配置され、ワブラ磁石38の入射側に散乱体37が配置されるとともに、レンジシフタ7の出射側に多葉コリメータ39が配置されたものである。なお、他の部分については、第1の実施形態と全く同様に構成されており、リッジフィルタ11は、図2で示した構成を有し、リッジフィルタリーフ13は、図3で示した形状を有する。
【0066】
図7に示す3次元照射装置30のうち、散乱体37、ワブラ磁石38、および多葉コリメータ39の機能について以下に説明する。
散乱体37は、散乱体に入射するスポットビームのビーム幅を、散乱体内部における散乱現象により拡大する働きをする。
【0067】
ワブラ磁石38は、散乱体37により拡大されたビームを体内患部内のビーム軸に対して垂直面上の点(X、Y)に走査する。より詳細には、ワブラ磁石38a,38bはそれぞれ、ビームをX方向に走査するX方向ワブラ磁石、およびY方向に走査するY方向ワブラ磁石である。
【0068】
X方向ワブラ磁石38aとY方向ワブラ磁石38bは、これらを流れる電流値が同じ周波数でサイン関数にしたがい変動するが、X方向ワブラ磁石38aとY方向ワブラ磁石38bの電流の位相は90度ずれた状態で保持される。例えば、これらの周波数がともに31Hzである場合には、電流の位相が90度ずれているために、ワブラ磁石から出射されるビームは、31Hzで円形に回転するビームとなる。これを例えば1秒間にわたり積分したビーム形状は、ビーム軸中心に対して円板状に拡大した形状となる。
【0069】
なお、ここでは散乱体37により拡大されたビームをワブラ磁石38により走査しているが、これらの順番を入れ替え、ワブラ磁石38で走査したスポットビームを散乱体37にて拡大しても同様の形状のビームが得られる。
【0070】
多葉コリメータ39は、複数の鉄製板から構成され、ビーム軸を挟んで両側からこれらの鉄板を入れた位置により、円板状に拡大されたビームを任意の形状になるよう制限するものである。多葉コリメータ39を通過するビーム形状が患者の患部の形状に合うように、多葉コリメータは変形させられる。この多葉コリメータの変形は、レンジシフタ7のアクリル板厚、つまり体内レンジ毎に行われ、照射領域が患部形状に合わせられる。
【0071】
なお、他の機器、すなわち、スキャニング磁石3、線量モニタ4、位置モニタ5、リッジフィルタ11、およびレンジシフタ7の機能については、前述した従来例または第1の実施形態について説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0072】
また、図8は、本実施形態において使用される照射パターンデータの一例を示すデータ構造図である。この図8に示すように、照射パターンデータは、照射番号、スライスID、リッジフィルタID、多葉コリメータ形状ID(MLCID)、照射線量、を含んでいる。すなわち、前記第1の実施形態における「位置(X、Y)」の代わりに、「多葉コリメータ形状ID(MLCID)」を含んでいる。
【0073】
この多葉コリメータ形状ID(MLCID)はスライスIDで示されたスライスの照射に対して、患部形状に合わせてビームを整形する仕方を示すものであり、昇順の通し番号で表現されている。その他、散乱体材質や厚さ、ワブラ電磁石電流値などを照射パラメータとして含める場合があるが、説明の簡略化の観点からここでは省略する。
【0074】
[作用]
以上のような第2の実施形態に係る3次元照射装置によれば、上述したような各機器を用いて、以下の方法により3次元照射が行われる。
まず、スライスIDに応じてレンジシフタ7におけるアクリル板厚が選ばれる点、および、リッジフィルタIDで指定されたリッジフィルタリーフ13が、対応するリッジフィルタ駆動機構14によりビーム軸上に駆動される点は、第1の実施形態と同様である。
【0075】
本実施形態においては、次に、多葉コリメータ形状IDに応じて多葉コリメータ39の各リーフが駆動され、この後、粒子線ビームの照射が行われる。
この場合、入射時にスポットビームであった粒子線ビームは、散乱体37とワブラ磁石38により拡大されて拡大ビームとなり、多葉コリメータ39によりビーム形状が整形される。また、入射時に単エネルギーであった粒子線ビームは、リッジフィルタ31によって、体内飛程分布が拡大されている。
【0076】
このスライス上の照射線量は線量モニタ4により監視され、このスライスにおける予定線量の照射を検出するとビームが停止され、照射パターンデータにしたがって、レンジシフタ7、リッジフィルタ11、多葉コリメータ39が変更され、照射対象が次のスライスに変更される。
以上のような照射パターンデータにしたがう照射を順次繰り返すことにより、3次元的に照射を行う。
【0077】
[効果]
以上のような第2の実施形態に係る3次元照射装置によって得られる線量分布は、第1の実施形態で示した線量分布と同様になる。すなわち、第1の実施形態と同様のリッジフィルタ11を使用している本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
[変形例]
なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、図2に示すリッジフィルタ11を使用した場合について説明したが、第2の実施形態におけるリッジフィルタやその駆動構成は、第1の実施形態におけるリッジフィルタと同様に、図6に示すようなリッジフィルタの駆動構成を含め、各種の変形が可能であり、同様に優れた効果が得られるものである。リッジフィルタの各種の変形例については、第1の実施形態について説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0079】
[第3の実施形態]
[構成]
図9は、第3の実施形態として、3次元スポットスキャニング法用の3次元照射装置を示す概略構成図である。本実施形態に係る3次元照射装置40は、加速器本体がエネルギーを制御する機構を有する場合に、レンジシフタ47によってより細かい制御間隔でエネルギー制御を行うように構成されている。
【0080】
この場合、3次元照射装置40の基本的な構成は、前述した第1の実施形態と同様であるが、本実施形態においては、レンジシフタ47のアクリル板の厚さが限定されている。すなわち、本実施形態で用いるレンジシフタ47は、厚さが最大でも2cm以下のアクリル板で構成されている。また、レンジシフタ47の素子の一つとして0.25mmの厚さのアクリル板が用いられている。
【0081】
[作用・効果]
本実施形態によれば、以上のような構成を有する3次元照射装置40を使用して、大まかなエネルギー設定は加速器本体で行い、レンジシフタ47で細かい調整を行うことができる。そのため、ビーム径にほとんど影響を与えることなしに、粒子線ビームの体内飛程をより短時間でより高精度に制御することができる。この点について以下に説明する。
【0082】
まず、一般的に、加速器本体のエネルギーを切り替えることの利点は、収束電磁石の設定を調整することによりエネルギー毎にビーム径を任意の大きさに変更できることにある。さらに、加速器本体のエネルギーを切り替えることにより、エネルギー切り替え用のレンジシフタを用いる必要がなく、レンジシフタそのものによる散乱によってビーム径が大きくなることを防ぐことができるという点も利点であると考えられている。
【0083】
しかしながら、加速器本体でエネルギーを変更するためには、レンジシフタでエネルギーを変更する場合に比べて長時間を要する。すなわち、加速器本体でエネルギーを制御する場合に、加速器の制御装置には、加速器を構成する複数の電磁石などを設定するためのパラメータがテーブルとして保持されるが、エネルギー値を変更するためにこのパラメータを差し替える場合には、パラメータ差し替え命令を出してから実際にエネルギーが変更するために有意な時間が必要である。この有意な時間は、レンジシフタでエネルギーを変更する場合に要する時間より格段に長い。
【0084】
これに対して、本実施形態においては、加速器本体では大まかなエネルギー設定のみを行い、細かい調整はレンジシフタ47で行うため、加速器本体だけでエネルギーを切り替える場合に比べて、粒子線ビームの体内飛程をより短時間で制御することができる。
【0085】
また、本実施形態で用いるレンジシフタ47は、厚さが最大でも2cm以下のアクリル板で構成されているため、ビーム径に与える影響を小さくすることができる。特に、レンジシフタ47の素子の一つとして0.25mmの厚さのアクリル板を用いることにより、一般に加速器本体のエネルギーを制御する場合に比べて高精度に飛程を制御することができる。
【0086】
以上のような第3の実施形態に係る3次元照射装置によって得られる線量分布は、第1の実施形態で示した線量分布と同様になる。すなわち、第1の実施形態と同様のリッジフィルタ11を使用している本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
[変形例]
なお、第3の実施形態のようにエネルギー制御機能を有する加速器本体に適用される照射装置における照射パターンデータの記述手法としては、パターンデータそのものに加速器出射エネルギーとレンジシフタIDの双方を記述する手法と、パターンデータにエネルギーのみを記述し、制御機構で加速器出射エネルギーとレンジシフタIDを演算する手法が考えられる。いずれの手法を用いた場合でも、得られる効果は同様である。
また、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、図2に示すリッジフィルタ11を使用した場合について説明したが、第3の実施形態におけるリッジフィルタやその駆動構成は、第1の実施形態におけるリッジフィルタと同様に、図6に示すようなリッジフィルタの駆動構成を含め、各種の変形が可能であり、同様に優れた効果が得られるものである。
【0088】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な変形例が実施可能である。
【0089】
例えば、第1、第3の実施形態では3次元スポットスキャニング法による3次元照射装置、第2の実施形態ではワブラ法による3次元照射装置について示したが、本発明に係る粒子線ビームの飛程分布の調整に関する特徴は、二重散乱法による3次元照射装置、その他の方法による3次元照射装置にも同様に適用可能であり、同様に優れた効果が得られるものである。
【0090】
また、第3の実施形態では、加速器本体がエネルギー制御機能を有するタイプの3次元スポットスキャニング法による3次元照射装置について示したが、本発明に係る加速器本体とレンジシフタの両方による2段階エネルギー制御に関する特徴は、3次元ワブラ法や二重散乱法による3次元照射装置にも同様に適用可能であり、同様の効果が得られるものである。
【0091】
さらに、第1〜第3の実施形態においては、いずれも、照射位置の変更をビーム軸の移動によって行った場合について説明したが、本発明は、ビーム軸に対して患者を固定する治療ベッドあるいは治療いすを駆動する場合にも同様に適用可能である。この場合であっても、全く同様にして、複数種類のリッジフィルタリーフを使用することによって、患部最深部の峻度制御性がよく、患部形状に一致させた安定で高精度の照射を実現することができる。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の照射装置やその作動方法によれば、全照射領域にわたって積算した体内深さ方向の照射線量分布に関して、その一様性を高め、かつ照射線量分布のきれをよくすることで、患部最深部の峻度制御性がよく、患部形状に一致させた安定で高精度の照射を実現することができる。
【0093】
したがって、本発明の照射装置やその作動方法を用いることにより、患部に対して高精度の有効な照射を実現できるとともに、正常組織に対する被爆をできる限り少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施形態に係る3次元スポットスキャニング法による3次元照射装置を示す概略構成図。
【図2】図1の3次元照射装置に使用されるリッジフィルタの構成を示す構成図。
【図3】図2のリッジフィルタにおける複数枚のリッジフィルタリーフの各形状を示す断面図。
【図4】図1の3次元照射装置において使用される照射パターンデータの一例を示すデータ構造図。
【図5】図1の3次元照射装置による各スライス照射における深さ方向の照射線量分布と、全スライス照射について積算した深さ方向の照射線量分布を示す分布波形図。
【図6】図1の3次元照射装置に使用されるリッジフィルタの変形例を示す図であり、(a)はリッジフィルタとその駆動構成を示す構成図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図7】本発明による第2の実施形態に係る3次元ワブラ法による3次元照射装置を示す概略構成図。
【図8】図7の3次元照射装置において使用される照射パターンデータの一例を示すデータ構造図。
【図9】本発明による第3の実施形態に係る3次元スポットスキャニング法による3次元照射装置を示す概略構成図。
【図10】従来例における3次元スポットスキャニング法による3次元照射装置を示す概略構成図。
【図11】単エネルギー粒子線ビームにおける深さ方向の照射線量分布を示す分布波形図。
【図12】図10の3次元照射装置におけるリッジフィルタの形状を示す断面図。
【図13】図10の3次元照射装置による全スライス照射について積算した深さ方向の照射線量分布を示す分布波形図。
【図14】単エネルギー粒子線ビームをガウス形状で整形した場合の、全スライス照射を積算した深さ方向線量分布を示す分布波形図。
【符号の説明】
1…治療ベッド
2,10,30,40…3次元照射装置
3…スキャニング磁石
4…線量モニタ
5…位置モニタ
6,11,21…リッジフィルタ
7,47…レンジシフタ
12…リッジフィルタ収納器
13…リッジフィルタリーフ
14…リッジフィルタ駆動装置
15…リッジフィルタ制御器
16…飛程調整板
23…リッジフィルタ素子
24…XY駆動ステージ
25…リッジフィルタ制御器
26…飛程調整板
37…散乱体
38…ワブラ磁石
39…多葉コリメータ

Claims (2)

  1. 粒子線ビームのエネルギー制御を行う機構と、前記エネルギー制御に対応させてエネルギー分布を拡大するためのビーム調整機構と、を有する3次元粒子線照射装置において、
    あらかじめ作成された照射パターンデータにしたがって、前記ビーム調整機構を粒子線ビームの照射軸上に駆動するための制御機構を有し、
    前記ビーム調整機構が、材質および形状の少なくとも一方が異なる複数種類のリッジフィルタであり、
    前記複数種類のリッジフィルタが、粒子線ビームの照射を受ける被照射体の深さ方向の照射線量分布に関して、積算した照射線量分布が均一化されるように形状が最適化された均一化用のリッジフィルタと、体内飛程近傍のピークを深さ方向のガウス分布形状に重み付けする形状を有する重み付け用のリッジフィルタとを含み、
    前記照射パターンデータが、照射領域を深さ方向に仮想的に複数のスライスに分割した場合におけるこのスライスの識別情報を含むことを特徴とする3次元粒子線照射装置。
  2. 粒子線ビームのエネルギー制御を行う機構と、材質および形状の少なくとも一方が異なる複数種類のリッジフィルタから成る前記エネルギー制御に対応させてエネルギー分布を拡大するためのビーム調整機構と、あらかじめ作成された照射パターンデータにしたがって、前記ビーム調整機構を粒子線ビームの照射軸上に駆動するための制御機構を有する3次元粒子線照射装置の作動方法において、
    前記複数のリッジフィルタを、粒子線ビームの照射領域における深さ方向の照射線量分布に関して積算した照射線量分布が均一化されるように形状が最適化された均一化用のリッジフィルタと、粒子線ビームの飛程分布を深さ方向のガウス分布形状に重み付けする形状を有する重み付け用のリッジフィルタとから構成し、
    あらかじめ作成された照射パターンデータにしたがって、前記複数のリッジフィルタをビーム軸上に出し入れすることにより、前記飛程分布の調整方法の切り替えを行い、
    この切り替えられた粒子線ビームの飛程分布にしたがって前記粒子線ビームを出射するにあたり、前記粒子線ビームの照射領域を仮想的に複数のスライスに分割し、粒子線ビームのエネルギー出射を制御しながらスライスを順次切り替えて、粒子線ビームを照射領域に対して出射することを特徴とする3次元粒子線照射装置の作動方法。
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