JP4321573B2 - 平版インキ印刷方法 - Google Patents

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JP4321573B2 JP2006271190A JP2006271190A JP4321573B2 JP 4321573 B2 JP4321573 B2 JP 4321573B2 JP 2006271190 A JP2006271190 A JP 2006271190A JP 2006271190 A JP2006271190 A JP 2006271190A JP 4321573 B2 JP4321573 B2 JP 4321573B2
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Description

本発明は、黄、紅、藍、墨のプロセス4色からなる平版印刷方法であって、ISO規格のジャパンカラー準拠インキよりも再現可能な演色領域(ガモット)に優れ、更に、濃度を上げることにより、より広い演色領域を再現可能にする印刷方法に関する。
90年代より始まったIT革命は、印刷現場を取り巻く環境を著しくデジタル化の方向へと導いてきており、このデジタル化によって、従来の印刷方式のワークフロー(撮影・ポジ・スキャン・データ・デザイン・EPS・面付け・フィルム・刷版・印刷)が多段階式過程であったのに対し、デジタルカメラによる撮影・DTP・CTP・印刷とその過程を飛躍的に短縮することに成功した。それによって、入稿データの「RGB」化が標準化しつつあり、取り扱われるデータがより色再現領域の広いものへとシフトしつつあるのが現状である。
しかし、現在主流となっている黄、紅、藍、墨のプロセス4色(CMYK)からなる平版オフセット印刷では、「RGB」として入稿されたデータを、より狭い色再現領域のCMYKに色分解せざるを得ず、撮影段階の色空間の設定や,最終的な「RGB」から「CMYK」への色変換が適切に行われないと色再現がうまくいかない等の問題も発生している。その様な環境の中で、「標準化」ということが重要なポイントとなっており、「ジャパンカラー」も標準化の1つの手段として注目されている。
一方、黄、紅、藍、墨のプロセス4色からなる平版オフセット印刷では、減色混合による色相となるため、色を重ねるごとに色相に濁りが生じ、必然的に色再現領域がRGBのそれよりも狭いものとなり、デジタルデータと印刷物との間の色再現性の差異が問題となっていった。各インキの印刷濃度を上げることで多少の色再現領域の拡大は可能であったが、減色混合の限界である色相の濁りが再現できる演色領域を狭めていた。
これを解決する手段として、特許文献1では高彩度の印刷システムとして5〜7色のインキセットを使用する印刷方法が確立され、それぞれの特定した色相を持つインキセットを用いる印刷方法として、プロセス4色に橙、緑を加えた6色(ヘキサクロム印刷)やプロセス4色に橙、緑、紫を加えた7色(ハイファイ印刷)等が確立されている。また、ヘキサクロムインキに代表されるように、一次色のみならず、二次色、三次色の濁りを抑え、色再現領域を広げる手段として一部の色に蛍光顔料を含有させる等の手法もとられるが、印刷適性の劣化(転移不良、光沢低下等)や耐光性不足による印刷物の褪色等のデメリットもある。更に、使用するインキの色数が6色、7色となり、印刷機の胴数が6胴以上の高価な多色印刷機を必要とする事に加え、それと同数の多色分解した版数が必須条件となり、新たに始めるには巨額な設備投資と、色調管理の複雑化などで本システムを用いるには限られた範囲に止まっている。
特開2001-260516号公報
本発明は、このような従来の技術における問題点を解決する為になされたものであり、その課題とするところは、従来多く普及している4色印刷機を用いて、ISO規格のジャパンカラー準拠インキよりも再現可能な演色領域(ガモット)に優れる黄、紅、藍、墨のプロセス4色からなる平版インキであって、更に印刷濃度を上げることによって、より広い演色領域を再現可能にする印刷方法を提供することである。
一般的に、色再現領域を広げるためには、各色の理想的な分光反射率曲線に近づける必要がある。
すなわち、人が色を認識する波長領域は400nm〜700nmの光(この波長を可視光線という)において、黄インキでは、500nm〜700nmの波長領域での反射率が100%、400nm〜500nmの波長領域での反射率が0%であり、紅インキでは、400nm〜500nm、600nm〜700nmの波長領域での反射率が100%、500nm〜600nmの波長領域での反射率が0%であり、藍インキでは、400nm〜600nmの波長領域での反射率が100%、600nm〜700nmの波長領域での反射率が0%であることが理想であると言われている(理想のプロセスインキの分光反射率曲線を表6に示す)。
しかし、現状使用されているプロセス4色からなる、黄、紅、藍、墨のオフセット印刷用インキ組成物の反射スペクトルは理想の反射スペクトルとはかけ離れている。完全反射しなければならない部分での不必要吸収があるためにインキの濁り成分が存在し、色再現性を狭めている。
即ち、本発明は、黄インキ、紅インキ、及び藍インキのうちいずれか2つ又は3つ、ならびに墨インキを使用する平版印刷において、黄、紅、藍の各濃度値を、黄が1.40〜1.44、紅が1.52〜1.56、藍が1.63〜1.67の範囲内(基準濃度値とする)で各色インキを単独及び重ね合わせにより印刷したとき、L*a*b*表色系(JIS Z
8729)における色空間を、横軸a*を−120〜+120、縦軸b*を−120〜+120の範囲内の10ステップずつ、高さL*を0〜100の10ステップずつの区切りでスラ
イスして表現した色再現領域によって定義される表現可能色数がISO規格のジャパンカラー準拠インキの1.1倍以上である各色インキを用いて、濃度を基準濃度値の1.0〜1.5倍として印刷することを特徴とする平版印刷方法に関する。
さらに、本発明は、基準濃度値の各L*a*b*値が、
黄インキで、L*:87〜95、a*:−4〜−12、b*:90〜100
紅インキで、L*:50〜55、a*:75〜83、b*:−14〜−20
藍インキで、L*:52〜58、a*:−40〜−45、b*:−45〜−53
の範囲内にあり、上記インキの2色の刷り重ねの各L*a*b*値が、紅インキ×黄インキ
の刷り重ねで、L*:51〜56、a*:65〜70、b*:56〜61、藍インキ×黄イン
キの刷り重ねで、L*:47〜53、a*:−77〜−83、b*:25〜32、藍インキ×
紅インキの刷り重ねで、L*:23〜29、a*:28〜33、b*:−63〜−68
の範囲内になるインキを使用することを特徴とする上記印刷方法に関する。
さらに、これら(a)黄、(b)紅、(c)藍が、下記の反射率を有する上記印刷方法
に関する。
(a)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたときに、400nm〜480nmの波長領域が1〜20%、530nm〜700nmの波長領域での反射率が90〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする黄色相化合物をインキの全重量に対して5〜15重量%含有する黄インキ。
(b)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたときに、400nm〜500nmの波長領域での最大反射率が50%〜100%、500nm〜560nmの波長領域での反射率が1〜20%、630nm〜700nmの反射率が90%〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする紅色相化合物をインキの全重量に対して15〜30重量%含有する紅インキ。
(c)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたときに、400nm〜530nmの波長領域の反射率が50〜100%、600nm〜700nmの反射率が1〜30%の反射スペクトルを有することを特徴とする藍色相化合物をインキの全重量に対して10〜25重量%含有する藍インキ。
本発明が提供する平版インキ印刷方法を用いることにより、従来の黄、紅、藍、墨プロセス4色に加えて、橙、緑、紫等を加えた6色、7色印刷で表現していたRGBの色再現領域を、黄、紅、藍、墨の4色で再現することが可能になる。更に、印刷物の濃度を上げることで、従来のプロセス4色インキよりも、より広い色再現領域を再現することが可能になる。また、本発明では、印刷物の色再現領域を向上させる手段として蛍光顔料を使用していないため、印刷適性、印刷物の経時での褪色等を劣化させることなく、高彩度の印刷物を得ることができる。
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
本発明は、顔料と、合成樹脂、植物油、石油系溶剤とを必要に応じてステアリン酸アルミニウム、アルミキレート等のゲル化剤と共に加熱溶解したビヒクル成分と、耐摩擦剤等の補助剤とからなる黄、紅、藍、墨の4色からなる平版インキである。
本発明において、「濃度値」とは、ISO規格のジャパンカラー標準用紙、例えば三菱製紙(株)製「特菱アート両面四六版/110kg」に印刷し、黄、紅、藍の各色をグレタグマクベスD196濃度計にて測定した際の濃度値をいう。
色再現領域の表現方法としては、XYZ表色系(CIE1931表色系)、X1010Z10表色系(CIE1964表色系)、L*a*b*表色系(CIE1976)、ハンターLab表色系、マンセル表色系、L*u*v*表色系(CIE1976)等が挙げられる。L*a*b*表色系では、色相に関係なく比較できる明るさの度合いとして「明度」をL*で表現
し、L*が大きくなるほど色が明るく、小さくなるほど暗くなることを示している。また
、各色によって異なる「色相」をa*、b*の値で示し、a*は赤(+)から緑(−)方向
、そしてb*は黄(+)から青(−)方向を示し、各方向とも絶対値が大きくなるに従っ
て色鮮やかになり、0に近づくに従ってくすんだ色になることを示している。これによって一つの色を、L*、a*、b*を用いて数値化することが可能となる。
また「明度」「色相」とは別に、鮮やかさの度合いを数値化する方法として「彩度(C)」があり、以下の計算式にて求めることができる。
Cに関しても同様に、絶対値が大きくなるに従って色鮮やかになり、値が小さくなるにつれてくすんだ色になることを示している。
一つの印刷物(印刷物以外のカラースペースも含む)で表現できる全ての色再現領域を演色領域(ガモット)と呼ぶが、ガモットを表す最も簡便な方法として、a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(黄、紅、藍)、及び、単色ベタ刷り重ね部(黄×
紅、紅×藍、藍×黄)計6色のa*対b*の値を、プロットした六角形の面積で表現するこ
とが可能である。ガモットの面積が広い程、色再現領域が広いことを示している。
本発明では、a*、b*の2次元だけではなく、明度「L*」も考慮した演色領域として、L*a*b*表色系における色空間(カラースペース)を、横軸a*を−120〜+120、縦軸b*を−120〜+120の範囲内の10ステップずつの区切りで表現し、高さL*を0〜100の10ステップずつの区切りでスライスして表現した最大6875色数を示す色再現領域を模式的に表現し、その再現色数が多い程インキが再現できる演色領域が広いことを数値で表現した。
ジャパンカラーとは、ISO/TC130国内委員会が策定した印刷に関する標準色の
ことで、オフセット枚葉ジャパンカラー2001では、ISO12642パターン(928色、IT8とも言う)の測色値(L*a*b*値)をデータで示している。印刷条件は、商業オフセット印刷に関する国際規格ISO12647−2の標準条件をもとに、日本国内で普通に使われているインキ、印刷用紙(ジャパンカラー2001では4種類の用紙について決められている)を使用することで定義されている。一般的なジャパンカラー準拠のインキを、ジャパンカラー標準用紙、例えば三菱製紙(株)製「特菱アート両面四六版/110kg」に印刷した場合の黄、紅、藍、単色ベタ部のL*a*b*値、及びそれより計算したC値は、黄インキで、L*:86、a*:−7、b*:92、C:92、紅インキで、L*:45、a*:72、b*:−5、C:72、藍インキで、L*:54、a*:−36、b*:−49、C:61程度になるといわれている。
本発明のインキは、黄が1.40〜1.44、紅が1.52〜1.56、藍が1.63〜1.67の濃度範囲内(以下、「基準濃度値」とする。)であるときに単色及び各単色の刷り重ねのL*a*b*表色系による色度、及びC値が、黄インキで、L*:87〜95、
好ましくは88〜93、a*:−4〜−12、好ましくは−5〜−10、b*:90〜10
0、好ましくは92〜98、C:92〜99、紅インキで、L*:50〜55、好ましくは51〜54、a*:75〜83、好ましくは76〜81、b*:−14〜−20、好ましく
は−15〜−18、C:77〜83、藍インキで、L*:52〜58、好ましくは52〜57、a*:−40〜−45、好ましくは−41〜−44、b*:−45〜−53、好ましくは−46〜−51、C:62〜67、更には、紅インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:51〜56、a*:65〜70、b*:56〜61、C:86〜93、藍インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:47〜53、a*:−77〜−83、b*:25〜32、C:81〜87、藍インキ×紅インキの刷り重ねで、L*:23〜29、a*:28〜33、b*:−63〜−68、C:69〜75の範囲の表現可能色数を誇る。
つまり、本発明のインキの組み合わせにより、ジャパンカラー準拠インキよりC値が大きく、高彩度の色再現性を誇る。
さらに、本発明の特徴として、濃度を1.0〜1.5倍程度まで上げた際、従来インキと比較して高い色再現性を有する。具体的には、基準濃度値の1.45倍まで上げた時、基準濃度値での表現可能数の1.5倍以上もの高再現性を誇る。
また、本発明では、従来のインキでは再現が困難であったRGBの「B(ブルーバイオレット)」の領域の再現可能色数が多くなるのも大きな特徴の一つとなる。つまり、L*
a*b*表色系における色空間を、横軸a*を−120〜+120、縦軸b*を−120〜+120の範囲内の10ステップずつ、高さL*を0〜100の10ステップずつの区切りでスライスして表現した色再現領域において、L*:10〜40、a*:40〜60、b*:−40〜−70の範囲の表現可能色数が従来インキよりも多くなる。
本発明に用いられる黄顔料としては、ジスアゾイエロー系化合物、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、等であって、濃度値1.85〜1.90の範囲内で印刷した墨インキ上に、黄インキの濃度を1.40〜2.10の範囲で刷り重ねした場合のL*値が17を超えない透明性を有していれば、二次色、三次色の重ね刷
りをした際の下刷りインキへの影響が少なく、良好な色再現領域を得ることができる。更には、補色としてC.I.ピグメントイエロー83を上記黄顔料の全重量に対して0.5〜10重量%、好ましくは2〜5重量%加えて使用することも可能である。
紅顔料としては、ローダミンB、ローダミン3G、ローダミン6Gなどのローダミン系染料のモリブデン、タングステン金属レーキ化合物、例えばC.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントバイオレット1等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
藍顔料としては、フタロシアニン系化合物、例えばC.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4等が挙げられる。更には、補色としてC.I.ピグメントグリーン7を上記藍顔料の全重量に対して5〜15重量%、好ましくは8〜11重量%加えて使用することも可能である。
本発明で使用する藍顔料である銅フタロシアニン系化合物は、結晶多型(同質異晶)を示す物質であり、その結晶構造の違いによってα、β、γ、ε、π、τ、ρ、χ、R型などに分類されるが、結晶安定性、分散性が優れているβ型を使用することが好ましく、更には比表面積が74m2/g以上の微細なβ型銅フタロシアニンであることが好ましい。
墨顔料としては、カーボンブラック、例えばC.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
本発明に用いられる合成樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂変性アルキッド樹脂、ロジンエステル等が考えられる。好ましくは、ロジン変性フェノール樹脂を使用する。ロジン変性フェノール樹脂は、特に限定されないが、重量平均分子量1万〜30万のものを使用するのが好ましい。分子量1万以下ではインキの粘弾性が低下し、40万以上ではインキとしての流動性が不十分となる。

植物油としては、たとえばパーム核油、ヤシ油、綿実油、落花生油、パーム油、コーン油、オリーブ油、亜麻仁油、コーン油、大豆油、サフラワー油、桐油等の植物油由来のものが例示できるとともに、それらの熱重合油および酸素吹き込み重合油なども使用できる。また、本発明ではこれら植物油を単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いることもできる。

また、インキに用いられる石油系溶剤は、芳香族炭化水素の含有率が1%以下でアニリン点が75〜95℃好ましくは80〜95℃及び、沸点が260℃〜350℃好ましくは280〜350℃の範囲にある石油系溶剤である。アニリン点が75%未満の場合には、樹脂を溶解させる能力が高すぎる為、インキのセット性が遅くなり好ましくなく、また95℃を超える場合には樹脂の溶解性が乏しい為、光沢、着肉等が悪くなり好ましくない。沸点が260℃未満の場合には、印刷機上でのインキ溶剤の蒸発が多くなり、インキの流動性の劣化により、インキがローラー、ブランケット、版等への転移性が悪くなり好ましくない。また、350℃を超える場合には、ヒートセット型のインキの乾燥が劣る為、好ましくない。
更に、本発明の平版インキ組成物には、必要に応じてゲル化剤、顔料分散剤、金属ドライヤー、乾燥抑制剤、酸化防止剤、耐摩擦向上剤、裏移り防止剤、非イオン系界面活性剤、多価アルコールなどの添加剤を適宜使用することができる。

[実施例]
次に具体例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら記載実施例に限定されるものではない。なお、以下の記述の部は重量部、%は重量%を表す。

ロジン変性フェノール樹脂の製造例
撹拌機、冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコにP−オクチルフェノール1000部、35%ホルマリン850部、93%水酸化ナトリウム60部、トルエン1000部を加えて、90℃で6時間反応させた。その後6N塩酸125部、水道水1000部の塩酸溶
液を添加し、撹拌、静置し、上層部を取り出し、不揮発分49%のレゾールタイプフェノール樹脂のトルエン溶液2000部を得て、これをレゾール液とした。
撹拌機、水分分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン1000部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、上記で製造したレゾール液1800部を添加し、トルエンを除去しながら230℃で4時間反応させた後、グリセリン110部を仕込み、260℃で10時間反応させ、酸価20以下として、重量平均分子量50000、新日本石油化学(株)AFソルベント6号での白濁温度90℃のロジン変性フェノール樹脂を得た。

ワニス製造例
ロジン変性フェノール樹脂40部、桐油15部、大豆油30部、AFソルベント6号(新日本石油化学(株)製溶剤)14部、ALCH(川研ファインケミカル(株)製ゲル化剤)1.0部を190℃で1時間加熱撹拌して、ワニスを得た。

インキ実施例1(黄インキ)
表1のような配合にてC.I.ピグメントイエロー12(東洋インキ製造(株)製LIONOL YELLOW 1235−P)をニーダー中で温度75℃の条件下、ワニスを徐々に添加して混練して一次脱水を行った。次にニーダー温度100℃〜120℃、減圧度76mmHgの条件下で1時間バキュームし、ベースインキ中の水分を0.5%以下になるように二次脱水を行った。脱水後、残りのワニス、石油系溶剤を添加して混練して希釈し、ニーダーより未分散ベースインキを取り出した。取り出したベースインキをロール温度60℃の3本ロールを用いて、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで練肉し、黄のベースインキ1を得た。次いで、ベースインキ1に対して、表2の配合でワニス、大豆油、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し黄インキ1を得た。

インキ実施例2(紅インキ)
黄インキと同様に、表1の配合にてC.I.ピグメントレッド81(不二化成(株)製ファナルローズRNN−P)を用い、紅のベースインキ2を得た。次いで、ベースインキ2に対して、表2の配合で大豆油、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し紅インキ2を得た。

インキ実施例3(藍インキ)
表2の配合にて、C.I.ピグメントブルー15:3(東洋インキ製造(株)製LIONOL BLUE GLA−SD)、C.I.ピグメントグリーン7(東洋インキ製造(株)製LIONOL GREEN YS−2A)をワニスと混合し、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで練肉後、更に大豆油、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し藍インキ3を得た。

尚、比較例となるインキは、ジャパンカラー準拠の酸化重合型平版印刷インキすべてが対象となりうる。ここでは、TKハイユニティ各色を使用した。

印刷評価試験
上記実施例及び比較例のインキについて、印刷物にISO12642チャート(IT8チャート)を入れて、下記印刷条件の下、黄、紅、藍の各ベタ濃度値を、黄:1.40〜1.44、紅:1.52〜1.56、藍:1.63〜1.67の範囲内で印刷し、印刷物の評価を実施した。尚、墨インキは、一般的な酸化重合型平版印刷インキを使用し、濃度値1.88〜1.92の範囲内で印刷した。
印刷条件
印刷機 :ハイデルベルグスピードマスター 菊全4色機(ハイデルベルグジャパン(株))
用紙 :特菱アート両面 110Kg(三菱製紙(株))
湿し水 :アストロマーク3((株)日研化学研究所)2.0%水道水溶液
印刷速度:10000枚/時
濃度 :グレタグマクベス社製D196にて印刷物の単色(黄、紅、藍、墨)ベタ部の濃度値を測定。
測色 :グレタグマクベス社製SpectroEye(D50、2度視野、StatusT)にて印刷
物の単色ベタ部(黄、紅、藍)、及び、単色ベタ刷り重ね部(黄×紅、紅×藍、藍×黄)のL*、a*、b*値を測定。
C値はa*及びb*から下記の計算式にて求めた。
結果を表3に示す。比較例と比べて実施例のC値が大きく、印刷物の彩度が高い。

印刷物測定条件
ISO12642チャートの測定結果からICCプロファイルを作成。
作成したICCプロファイルを用いて、Adobe社のPhotoshopを用いL*a*b*画像へ変換し、L*a*b*表色系における色空間(カラースペース)を、横軸a*を−
120〜+120、縦軸b*を−120〜+120の範囲内の10ステップずつの区切り
で表現し、高さL*を0〜100の10ステップずつの区切りでスライスして表現した色
再現領域(最大6875の色数)として表現した(表4)。図の色が付いている部分は再現可能な色を示し、グレーの部分は再現できない色を示している。

また、得られた分光反射率曲線を表7に示す。比較例の従来インキに比べ、実施例のインキの方が理想の分光反射率曲線に近くなっており、完全反射しなければならない部分の不必要吸収が少なくなっている。そのため、インキの濁り成分が減少し、色再現領域が広がっている(表4)。
更に、同印刷条件の下、印刷物の濃度を基準濃度の1.45倍まで上げて印刷し、同様の印刷物評価を実施した結果を表5に示す。
この表現方法を用いると、ISO規格のジャパンカラー標準用紙、例えば三菱製紙(株)製「特菱アート両面四六版/110kg」に、黄、紅、藍の各濃度値を、黄が1.40〜1.44、紅が1.52〜1.56、藍が1.63〜1.67の範囲内で印刷した場合に、一般的なISO規格のジャパンカラー準拠インキでは741色しか再現できないのに対して、本発明のインキでは約1.17倍の871色が再現可能であり、更に濃度を上記範囲の1.45倍まで上げたときにジャパンカラー準拠インキが1050色であるのに対して、本発明のインキでは基準濃度値の約1.52倍である1323色(ジャパンカラー準拠インキ比1.26倍)まで再現可能となる。







したがって、本発明では、従来のインキでは再現できなかった色再現領域をインキ自身が有するとともに、更に濃度を上げるという印刷方法を用いることで、より広範囲の演色領域を表現することが可能な印刷方法を見出した。

Claims (1)

  1. 黄インキ、紅インキ、及び藍インキのうちいずれか2つ又は3つ、ならびに墨インキを使用する平版印刷において、黄、紅、藍の各濃度値を、黄が1.40〜1.44、紅が1.52〜1.56、藍が1.63〜1.67の範囲内(基準濃度値とする)で各色インキを単独及び重ね合わせにより印刷したとき、L*a*b*表色系(JIS Z 8729)における色空間を、横軸a*を−120〜+120、縦軸b*を−120〜+120の範囲内の10ステップずつ、高さL*を0〜100の10ステップずつの区切りでスライスして表現した色再現領域によって定義される表現可能色数がISO規格のジャパンカラー準拠インキの1.1倍以上である各色インキを用いて、濃度を基準濃度値の1.0〜1.5倍として印刷する平版印刷方法であって、
    各色インキのうち、黄インキは、黄顔料として、C.I.ピグメントイエロー12またはC.I.ピグメントイエロー13を用い、濃度値1.85〜1.90の範囲内で印刷した墨インキ上に、黄インキの濃度を1.40〜2.10の範囲で刷り重ねした場合のL*値が17を超えないインキであり、
    紅インキは、紅顔料として、C.I.ピグメントレッド81またはC.I.ピグメントバイオレット1を用いたインキであり、
    藍インキは、藍顔料として、比表面積が74m/g以上のβ型銅フタロシアニン系化合物であるC.I.ピグメントブルー15:3またはC.I.ピグメントブルー15:4を用いたインキであり、
    墨インキは、顔料として、C.I.ピグメントブラック7を用いたインクであり、
    各色インキが高濃度印刷が可能なインキであり、
    そして、基準濃度値の各L*a*b*値が、
    黄インキで、L*:87〜95、a*:−4〜−12、b*:90〜100
    紅インキで、L*:50〜55、a*:75〜83、b*:−14〜−20
    藍インキで、L*:52〜58、a*:−40〜−45、b*:−45〜−53
    の範囲内にあり、上記インキの2色の刷り重ねの各L*a*b*値が、
    紅インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:51〜56、a*:65〜70、b*:56〜61
    藍インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:47〜53、a*:−77〜−83、b*:25〜32
    藍インキ×紅インキの刷り重ねで、L*:23〜29、a*:28〜33、b*:−63〜−68
    の範囲内になるインキを使用することを特徴とする平版印刷方法。
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