以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式記録装置の外装構成の全体を斜め前方から見た斜視図である。このインクジェット式記録装置100は、全体が幅方向に長く延びる略直方体状のハウジング101を備えている。このハウジング101の上部から前面にかけて形成されている窓部は、透明もしくは半透明な湾曲したカバー110によって覆われている。
そして、ハウジング101の上部右側には、操作部120等が配設され、ハウジング101の前部右側には、カードスロット部130等が配設されている。さらに、ハウジング101の後方側には、給紙口140等が配設され、ハウジング101の前方側には、排紙口150、排紙スタッカ160、排紙サポート170及び排紙ステイ180等が配設されている。
カバー110は、その上部の回動軸を中心に図1の矢印a方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、カバー110を持ち上げて窓部を開放することにより、窓部を通して後述するキャリッジ上に収納されるインクカートリッジの交換作業や内部機構のメンテナンス作業等を行うことができる。
操作部120は、パワーをオン・オフするパワー系のスイッチ121と、用紙の頭出し等を操作したり、インクのフラッシング等を操作する操作系のスイッチ122と、画像処理等を行う処理系のスイッチ123と、状態を表示する液晶パネル124等を備えている。
カードスロット部130は、PCMCIA ATA規格に準拠したメモリカードや、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、メモリーステイック、マイクロドライブ、SDカード等を必要であればPCカード用アダプタを介して読み書きするメモリカードドライブを備えている。
給紙口140には、その後縁と両端縁を囲むようにガイド壁141、142、143が形成されている。ガイド壁141は、用紙の面をガイドし、ガイド壁142は、用紙の一方のサイドエッジをガイドする機能を有する。そして、用紙のサイズが異なっても確実に用紙をガイドすることができるように、用紙の他方のサイドエッジをガイドするエッジガイドが、給紙口140の両端縁に形成されているガイド壁142、143間を、後縁に形成されているガイド壁141に沿って移動可能なように装着されている。
そして、このインクジェット式記録装置100は、不連続の用紙、すなわちカット紙の印刷と、連続した用紙、すなわちロール紙の印刷が可能である。ここで、図2及び図3は、インクジェット式記録装置100の内部構成例を示す断面側面図である。図2に示すように、カット紙Pを印刷する場合は給紙口140の背部にカット紙Pを保持するペーパーサポート144が取り付けられ、また、図3に示すように、ロール紙Rを印刷する場合は給紙口140の背部にロール紙Rを保持したロール紙ホルダ10が取り付けられる。なお、ペーパーサポート144とロール紙ホルダ10は、着脱可能に構成されており、何れか一方が取り付けられるようになっている。
ペーパーサポート144は、カット紙Pの面を保持する機能を有し、給紙口140のガイド壁141に近接して斜め後方に突き出るように配設される。ロール紙ホルダ10は、ロール紙Rの中心軸穴に貫入される軸芯11及びこの軸芯11の両端を回転自在に支持してロール紙Rの両端部をそれぞれ覆う一対のカバー12を備えている。カバー12は、給紙口140の後方に着脱自在に取り付けられる。
そして、図2に示すように、給紙口140から差し込まれ、ホッパー191に積載された複数枚のカット紙Pは、給紙ローラ192の回転に伴うホッパー191の上昇により、分離パッド193で給紙ローラ192に押付けられて最上位のカット紙Pから1枚づつ分離され、ぺーパーガイド194に沿って紙送りローラ195に給送される。一方、図3に示すように、ロール紙ホルダ10から引き出され、給紙口140から紙送りローラ195に差し込まれたロール紙Rは、紙送りローラ195とその従動ローラ195aとで挟持される。
そして、図2に示すカット紙Pあるいは図3に示すロール紙Rは、紙送りローラ195とその従動ローラ195aによりキャリッジ196の底部に搭載された記録ヘッド197側へ送り出されて印刷される。このとき、インクジェット式記録装置100の制御部は、例えばイエロー、ライトイエロー、マゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、ブラックの計7色のインクカートリッジ198から記録ヘッド197へ各色インクを供給し、各色インクの吐出タイミング及びキャリッジ196や紙送りローラ195の駆動を制御して、高精度なインクドット制御、ハーフトーン処理等を実行する。最後に、カット紙Pは、排紙ローラ199とその従動ローラ199aにより排紙口150から排紙され、またロール紙Rは、カッタ20により所定長さに切断された後、排紙ローラ199とその従動ローラ199aにより排紙口150から排紙される。
排紙口150の近傍には、図4に示すように、ロール紙Rを所定の長さに切断するカッタ20と、用紙を排出する排紙ローラ199が用紙搬送方向に順に配設されている。カッタ20は、長尺の固定刃21とこの固定刃21に沿って移動可能な移動刃22とこの移動刃22を移動させる無端駆動ベルト23を備えている。
そして、このカッタ20及び排紙ローラ199は、用紙搬送方向と直交する方向に配設されたフレーム102に取り付けられている。すなわち、カッタ20の固定刃21と無端駆動ベルト23及び排紙ローラ199は、フレーム102の長手方向に延びるように配設され、カッタ20の移動刃22は、フレーム102の長手方向に往復動するように配設されている。
移動刃22は、ロータリ刃24とロータリ刃24から見て用紙搬送方向後方側に隣接して位置する押し付けローラ25とが、ホルダ本体26内に回転軸27により回転自在に軸支されている。ホルダ本体26の上面であってロール紙Rを切断する際に移動刃21が進行する方向の後方側には、ロータリ刃24から見て用紙搬送方向前方側に突出した支持面26aが形成されている。この支持面26aは、移動刃21がロール紙Rの幅方向に移動して切断が終了した時点でロール紙Rの右側端部を支持し、次の切断準備のために移動刃21が元の位置に戻る際にロール紙Rの右側辺に衝突して右側端部を曲げてしまうことを防止するために形成されている。
また、ホルダ本体26の上面であってロール紙Rを切断する際に移動刃21が進行する方向の前方側には、傾斜した案内面26bが形成されている。そして、この案内面26bの上方にロータリ刃24の一部が突出している。このロータリ刃24の突出した部分は、ロール紙Rの非印刷面側に臨むように配置されている。この案内面26bにより、ロータリ刃24によるロール紙Rの切断と、この切断に続く支持面26b上への切断用紙の載行を円滑に実現することができる。
ロータリ刃24は、周囲に刃が形成された円形状に形成されており、回転軸27に設けられたコイルバネ28によって押し付けローラ25に常時付勢されている。押し付けローラ25は、ロータリ刃24より小さな直径に形成されており、ロータリ刃24と同心状であってロール紙Rの下面側に圧接するように位置決めされている。これにより、移動刃22がロール紙Rの幅方向に進行すると、押し付けローラ25は周面とロール紙Rの下面との間の摩擦により回転し、ロータリ刃24も回転駆動するようになっている。
ホルダ本体26の上方には、ロール紙Rの進行路を挟んで反対側に連結部29が形成されている。連結部29は、無端駆動ベルト23に接続するために形成された部分であり、具体的には連結部29に形成された連結孔29aにネジやリベットを通して無端駆動ベルト23側と接続できるようになっている。ホルダ本体26の支持面26bが形成された部分によって、ホルダ本体26と連結部29とが接続されており、これにより移動刃22の全体を一体的に射出成形することができる。そして、ホルダ本体26の上方に無端駆動ベルト23と接続できる連結部29を形成することにより、ロータリ刃24により切断されたロール紙Rの紙片(ゴミ)が落下したときに、ゴミが無端駆動ベルト23に引っ掛かることを回避することができる。
ロール紙Rが切断位置に位置決めされると、無端駆動ベルト23が駆動して移動刃22がロール紙の幅方向に移動開始する。このとき、押し付けローラ25の周面はロール紙Rの非印刷面(下面)に圧接されるため、移動刃22の移動に伴って押し付けローラ25が回転し、これによって押し付けローラ25に付勢されているロータリ刃24も回転して固定刃21と協働しながらロール紙Rを剪断する。
このように、押し付けローラ25の周面がロール紙Rの非印刷面側からロール紙Rを圧接するため、印刷面側に圧接跡が残ったり、印刷面のインクを擦ってしまうことはない。また、ロータリ刃24の作用する面がロール紙Rの非印刷面であるから、ロータリ刃24と固定刃21とによる剪断作用で粗状態になった部分がロール紙Rの非印刷面側となり、印刷面側から印刷物を見たときの外観が良好となる。
排紙スタッカ160は、基端側の回動軸を中心にハウジング101の前面に図1の矢印b方向に回動可能に取り付けられた1段目のスタッカ部材161と、この1段目のスタッカ部材161に対し格納・引出自在に設けられた先端側の2段目のスタッカ部材162と、この2段目のスタッカ部材162に対し格納・引出自在に設けられた先端側の3段目のスタッカ部材163の3段で構成されている。
この排紙スタッカ160は、不使用時は2断目と3段目のスタッカ部材162、163が1断目と2段目のスタッカ部材161、162に押し込まれて格納されるとともに、起立方向に回動されて排紙口150を閉鎖するようになっている。また、使用時は図5に示すように倒伏方向に回動されて排紙口150を開放するとともに、2断目と3段目のスタッカ部材162、163が1断目と2段目のスタッカ部材161、162から引き出されて、排出される用紙を受けて載置するようになっている。なお、2断目と3段目のスタッカ部材162、163は、用紙の大きさにより格納された状態で、あるいは引き出された状態で使用可能となっている。
さらに、排紙スタッカ160の1段目のスタッカ部材161には、排出される複数枚の用紙を順に整理された状態で積載させる際に補助する排紙サポート170が配設されている。この排紙サポート170は、詳細は後述するが、第1ストッパ171、ガイド172、第2ストッパ173、カバー174、ガード175等を備えている。また、排紙サポート170の上方であって排紙ローラ199の右側のハウジング101には、排出される用紙を支持する排紙ステイ180が配設されている。この排紙ステイ180も、詳細は後述するが、ステイ181、ステイリンク182等を備えている。
ここで、ロール紙のサイズは、幅が89mm、100mm、127mm、210mmの4種類がある。89mm幅は127mm間隔で切断されてL判に仕上げられ、100mm幅は148mm間隔で切断されてはがきに仕上げられ、127mm幅は178mm間隔で切断されて2L判または89mm間隔で切断されてL判(ランドスケープ(横方向))に仕上げられ、210mm幅は297mm間隔で切断されてA4判または所定長の垂れ幕に仕上げられる。また、用紙種類としては、光沢が強く、表面が滑る専用紙1と、光沢が有り、表面が滑る専用紙2と、光沢が無く、表面が滑らない専用紙3がある。すなわち、専用紙1はインクが最も染み込み難く、専用紙2はインクがやや染み込み難く、専用紙3はインクが最も染み込み易い。
図6(A)は、印刷濃度を変化させたときのロール紙の用紙種類毎のカール状態を示す。カール大は曲率半径が最も小さい状態を表し、カール中からカール小になるにしたがって曲率半径が次第に大きくなり、カール極小はほぼ平坦な状態を表す。文字程度の印刷、すなわち最大で3%〜7%の極低濃度印刷では、各専用紙1、2、3ともにカール大となる。白基調の写真の印刷、すなわち30%〜50%の低濃度印刷では、専用紙1、2、3の順でカール大、カール中、カール小となる。通常の写真の印刷、すなわち80%〜120%の高濃度印刷では、専用紙1、2の順でカール大、カール中となり、専用紙3ではカール極小となる。このように、インクの染み込み量が多くなるにつれてカールは小さくなる。
図6(B)は、高濃度印刷したロール紙の切断長を変化させたときのロール紙の用紙種類毎のカール高さを示す。カール高さは、最も低くなるカット紙を1、最も高くなる専用紙1の2L判を10としたときの相対量である。L判では、専用紙1、2、3の順でカール高さは6、5、2となり、はがきでは、専用紙1、2、3の順でカール高さは8、6、2となり、2L判では、専用紙1、2、3の順でカール高さは10、8、3となる。このように、サイズが大きくなるにつれてカール高さは大きくなる。
このようにカール高さが高い用紙や低い用紙に対し複数枚順に整理された状態で排紙スタッカ160上に積載させるために、本実施形態の排紙スタッカ160のスタッカ高さ及びスタッカ角度は以下のように構成されている。すなわち、図7に示すように、スタッカ高さhsは、カール高さhcより僅かに大きくなるように設定する。この僅かな大きさは、ロール紙を積載するときの枚数分の紙厚とする。
具体的には、スタッカ高さhsを例えば5〜6のカール高さhcと例えば30枚分〜40枚分の紙厚を加算した値に設定する。このようなスタッカ高さhsとすることにより、後から排出されるロール紙R2の先端は、先に排出され排紙スタッカ160上に載置されているロール紙R1の最頂部tを越えるので、ロール紙R2がロール紙R1を排紙スタッカ160から押し出してしまうようなことは無くなり、ロール紙R2はロール紙R1上に積載されることになる。なお、スタッカ高さhsは、最もカールしているロール紙のカール高さhc、具体的には10のカール高さhcに丁度合わせて設定するようにしてもよい。
また、図8に示すように、スタッカ高さhsは、最短の切断間隔のロール紙R0が反転しない高さに設定するようにしてもよい。すなわち、最初に排出されるロール紙R0の後端が排紙ローラ199から離れるとき、先端が排紙スタッカ160上に既に達している高さのうち最大高さとなるように設定する。具体的には、スタッカ高さhsを例えばL判のロール紙が反転しない高さに設定する。このようなスタッカ高さhsとすることにより、最初に排出されるロール紙R0は、後端が排紙ローラ199から離れるとき、先端は排紙スタッカ160上に達しているので、落下して反転してしまうようなことは無くなり、ロール紙R0は排紙スタッカ160上に盛り上がった状態で載置されることになる。
一方、図9に示すように、スタッカ角度θsは、カット紙Pの後端が排紙ローラ199から離れる前にカット紙Pの先端が排紙スタッカ160に到達し、カット紙Pの後端が排紙ローラ199から離れて落下する際の先端方向への押力より、カット紙Pの先端が排紙スタッカ160上を摺って上る際の後端方向への抵抗力の方が大きくなるように設定する。
具体的には、スタッカ角度θsを例えばA4サイズのカット紙が上記条件を満たすように設定する。このようなスタッカ角度θsとすることにより、カット紙Pの後端が排紙ローラ199から離れてもカット紙Pの先端が排紙スタッカ160に既に接触しているのでそれ以上の進行は阻止され、さらにカット紙Pの先端と排紙スタッカ160との摩擦が大きいため排紙スタッカ160上での進行も阻止される。したがって、カット紙Pは滑空や滑走して排紙スタッカ160の先端から外部へ滑り落ちてしまうようなことは無くなり、カット紙Pは排紙スタッカ160上に載置されることになる。
以上のようにして設定されたスタッカ高さhs及びスタッカ角度θsは、一般的なスタッカ高さが約25mm〜30mm、スタッカ角度が6度〜8度であるのに対し55mm、10度となる。
さらに、カール高さが高い用紙や低い用紙に対し複数枚順に整理された状態で排紙スタッカ160上に積載させるために、本実施形態の排紙スタッカ160には排紙サポート170を構成する第1ストッパ171が配設されている。すなわち、図10、図11及び図12に示すように、第1ストッパ171が、排紙ローラ199のほぼ真下の1段目のスタッカ部材161の後端近傍に幅方向に延びる溝状に形成されている。この第1ストッパ171は、奥行きが5mm〜15mm、幅が127mm幅のロール紙より10mm〜15mm大きめの137mm〜142mm、深さが5mm〜10mm程度に形成されている。
このような溝状の第1ストッパ171を形成することにより、図12に示すように、先に排出されたロール紙R1の後端は第1ストッパ171内に落ち込んで引っ掛かるので、後から排出されるロール紙R2の先端が例えロール紙R1の中腹部を押すことになっても、ロール紙R2がロール紙R1を排紙スタッカ160から押し出してしまうようなことを防止することができ、ロール紙R2はロール紙R1上に積載されることになる。
さらに、先に排出されたロール紙R1の後端は第1ストッパ171内に落ち込み、ロール紙R1の最頂部tは第1ストッパ171が形成されていないときの最頂部t´に比べ、d1だけ低くなるとともにd2だけ排紙ローラ199側に移動するので、後から排出されるロール紙R2の先端はロール紙R1の最頂部を越え易くなり、ロール紙R2が先のロール紙R1を排紙スタッカ160から押し出してしまうようなことは無くなり、ロール紙R2はロール紙R1上に積載されることになる。
一方、排紙スタッカ160を上述したスタッカ高さhs及びスタッカ角度θsに設定することにより、図13に示すように、排紙ローラ199から送り出されるロール紙Rは、カールにより下方向に向きを変えて排紙スタッカ160にほぼ直角に近い角度で突入して送られることになる。そして、このときの衝撃と送り抵抗がロール紙Rの全体に伝わり、紙送りが詰まった状態になり、印刷の乱れになる。
そこで、本実施形態の排紙スタッカ160には排紙サポート170を構成するガイド172が配設されている。すなわち、図10、図11及び図14に示すように、ガイド172が、第1ストッパ171の手前の1段目のスタッカ部材161上に幅方向に延びる山脈状に形成されている。このガイド172は、頂上部から奥側、すなわち第1ストッパ171側に至る斜面172aは約45度の急斜面として形成され、頂上部から手前側に至る斜面のうち頂上部から中腹部に至る斜面172bは比較的急斜面として形成され、中腹部から裾野部に至る斜面172cは緩斜面として形成されている。さらに、上記中腹部は、図14の断面図に示すように、幅方向に延びる尾根172dが山状に形成されている。
このような山脈状のガイド172を形成することにより、図14に示すように、排出されたロール紙Rの先端は、先ずその一部が尾根172dの頂部に当たり、次に他部が斜面172b及び斜面172cに導かれて滑り落ちるので、上述したような排紙スタッカ160にほぼ直角に近い角度で突入して送られることを防止することができ、紙送り精度及び印刷精度を向上させることができる。
さらに、図15に示すように、排出されたロール紙Rの後端は、急な斜面172aに乗って第1ストッパ171内に滑り落ちることになるので、第1ストッパ171の持つロール紙Rの係止効果を確実に発揮させることができる。また、ガイド172が隆起しているので第1ストッパ171の深さが見掛け深くなっており、さらに第1ストッパ171の持つロール紙Rの係止効果を確実に発揮させることができる。
一方、排紙スタッカ160に形成した第1ストッパ171は、カール高さが5〜6のロール紙に対しては有効であるが、カール高さが4以下のロール紙またはカット紙に対しては有効でない。すなわち、図16に示すように、カール高さが4以下のロール紙R1またはカット紙P1は、後端が第1ストッパ171に十分引っ掛からず、さらにガイド172により持ち上げられた状態になるので、後から排出されるロール紙R2またはカット紙P2の先端がロール紙R1またはカット紙P1を押すことにより、ロール紙R2またはカット紙P2がロール紙R1またはカット紙P1を排紙スタッカ160から押し出してしまう場合がある。
このことは、特に表面の平滑が無く、艶消しになっている専用紙3は用紙間の摩擦力が強く作用するため、後から排出されるロール紙R2またはカット紙P2の先端が先に排出されたロール紙R1またはカット紙P1の表面に擦れるだけで、ロール紙R2またはカット紙P2がロール紙R1またはカット紙P1を排紙スタッカ160から押し出してしまう場合がある。
そこで、本実施形態の排紙スタッカ160には排紙サポート170を構成する第2ストッパ173が配設されている。すなわち、図10、図11及び図17に示すように、第2ストッパ173が、ガイド172の頂上部付近、すなわち最高点付近から斜面172b側に配設されている。この第2ストッパ173は、用紙間の摩擦力よりも大きな摩擦力を有する材料、例えばスポンジやゴム等の発泡性材料で例えば板状に形成されて貼付されている。
このような第2ストッパ173を配設することにより、図17に示すように、後から排出されるロール紙R2またはカット紙P2の先端が先に排出されたロール紙R1またはカット紙P1の表面で擦れても、第2ストッパ173とロール紙R1またはカット紙P1との摩擦力が用紙間の摩擦力に打ち勝つため、第2ストッパ173はロール紙R1またはカット紙P1の滑り止め作用を発揮する。したがって、ロール紙R2またはカット紙P2がロール紙R1またはカット紙P1を排紙スタッカ160から押し出してしまうようなことを防止することができ、ロール紙R2はロール紙R1上に積載されることになる。
一方、排紙スタッカ160に形成した第1ストッパ171は、カール高さが5〜6のロール紙に対しては有効であるが、カール高さが7以上のロール紙に対しては有効でない。すなわち、図18に示すように、カール高さが7以上のロール紙R1は、後端が第1ストッパ171に十分引っ掛かるので、後から排出されるロール紙R2の先端がロール紙R1を押してもロール紙R2がロール紙R1を排紙スタッカ160から押し出してしまうことはないが、その反面、ロール紙R2はロール紙R1に紙送りの進行を阻害され、排紙ローラ199とロール紙R1の間の空中で丸まって積載不能になる場合がある。
そこで、本実施形態には排紙ステイ180が配設されている。すなわち、図19に示すように、排出されるロール紙を支持する排紙ステイ180が、排紙サポート170の上方であって排紙ローラ199の右側のハウジング101において排紙ローラ199の高さと同一か僅かに低い位置に、リンク機構により未使用時にはハウジング101内に格納可能(図19(A))に、使用時には展開可能(図19(B))に配設されている。
排紙ステイ180を排紙ローラ199の高さより高い位置に配設すると、排出されるロール紙を反り返してしまうおそれがあるからである。排紙ローラ199の高さより僅かに低い分とは、ロール紙に発生しているカールで負荷が増大しない程度であり、またロール紙に発生しているカールで逃げる分の遊び分程度である。
この排紙ステイ180は、図19に示すように、排出されるロール紙の先端の片側を直接支持する棒状のステイ181と、このステイ181の中央部を下方から斜めに支持する棒状のステイリンク182を備えている。ステイ181は、水平のときに排紙スタッカ160上に載置されたロール紙の最頂部付近まで延びる長さに形成されているとともに、排紙ローラ199側の側面が傾斜面に形成されている。
このような排紙ステイ180を配設することにより、図20に示すように、後から排出されるロール紙R2の先端は、ステイ181に支持されていない側が若干垂れ下がった状態で先に排出され排紙スタッカ160上に載置されているロール紙R1の最頂部t付近まで導かれるので、ロール紙R1の最頂部tを越え易く、またロール紙R1の最頂部tを例え越えなくてもロール紙R2の先端は幅方向に斜めになった状態でロール紙R1の中腹部に当たるので、ロール紙R1の最頂部tを越え易くなる。
したがって、ロール紙R2がロール紙R1に紙送りの進行を阻害されて排紙ローラ199とロール紙R1の間の空中で丸まってしまうようなことは無くなり、ロール紙R2はロール紙R1上に積載されることになる。さらに、後から排出されるロール紙R2の後端は、排紙ローラ199から送り出されると、ステイ181の傾斜した側面に沿って滑り落ちるので、排紙スタッカ160上に確実に載置されることになる。
この排紙ステイ180は、排紙スタッカ160を起立方向に回動させて排紙口150を閉鎖するときに、排紙スタッカ160に押されて上方向に折り畳まれ、カッタ20の前面側のハウジング101に形成されている格納部に垂直に収納され、排紙スタッカ160を倒立方向に回動させて排紙口150を開放するときに、バネ力により自動的に上記収納部から飛び出るようになっている。
これにより、ユーザが排紙スタッカ160を開閉するだけで、それに追従して排紙ステイ180も自動的に開閉するので、排紙ステイ180を収納し忘れて排紙スタッカ160を収納することができなかったり、排紙ステイ180を引き出し忘れてロール紙を積載することができなかったりする事態を防止することができる。
図21は、排紙ステイ180の詳細を示す平面図である。ステイ181は、先端部が斜めにカットされた形状に形成され、中央部がステイリンク182の先端部に回転自在に支持され、後端部に形成されたピン181aがカッタ20の前面側のハウジング101に形成されている略C字状のカム溝181bに挿入されている。
ステイリンク182は、先端部の近傍がステイ181の中央部の近傍と圧縮コイルバネ183に係止されて図示左回りに付勢され、後端部がカッタ20の前面側のハウジング101に回転自在に支持されている。このステイリンク182は、排紙スタッカ160を起立方向に回動させてステイ181の先端部に達したときの傾斜した排紙スタッカ160とほぼ平行となるように配設されている。
このような構成において、排紙ステイ180を図19(A)の状態から図19(B)に示すようにハウジング101の格納部に格納した状態にするときは、排紙スタッカ160を起立方向に回動させてステイ181の先端部を圧縮コイルバネ183の弾性力に反して斜め上方に押し上げる。すると、ステイ181の後端部に形成されたピン181aが、カム溝181b内で後方に移動し、さらにその勢いで下方に移動するので、ステイ181全体はその中央部の回転軸を中心に回転する。さらに、排紙スタッカ160を起立方向に回動させてステイ181全体を斜め上方に押し上げる。すると、ステイ181及びステイリンク182全体がステイリンク182の後端部の回転軸を中心に回転する。これにより、排紙ステイ180を上記格納部に垂直に収納することができる。
一方、排紙ステイ180を図19(B)の状態から図19(A)に示すようにハウジング101の格納部から出した状態にするときは、排紙スタッカ160を倒立方向に回動させると、圧縮コイルバネ183の復元力によりステイ181及びステイリンク182全体がステイリンク182の後端部の回転軸を中心に先程とは逆方向に回転し、さらにステイ181全体はその中央部の回転軸を中心に先程とは逆方向に回転する。これにより、排紙ステイ180を上記格納部から出すことができる。
ここで、カッタ20を使用してロール紙を切断する方法としては、図22(A)に示すように、連続して隙間無く定型サイズの写真Iを印刷し、写真Iと写真Iの間を1箇所切断する方法と、図22(B)に示すように、定型サイズより上下に大きく印刷し、写真Iと写真Iの間に隙間を設けて定型サイズに上下の2箇所切断する方法の2種類がある。これらの切断方法は、ユーザがドライバ上から選択することができる。
前者の切断方法の場合は、写真Iと写真Iの境界と切断位置がずれると、その分隣の写真Iの画像が切断位置付近に残ってしまうが、余分なゴミが発生しない。一方、後者の切断方法の場合は、その写真画像上を切断するので、隣の写真Iの画像が含まれることはないが、余分なゴミ(紙送り方向に例えば約18mm幅の短冊状の紙片)が写真I間に発生する。
上述したように、排紙スタッカ160に溝状の第1ストッパ171を形成すると、上記ゴミは排紙スタッカ160上に載置されたカールしたロール紙上から第1ストッパ171内あるいは第1ストッパ171の奥側へ滑り落ちて溜まることになる。溜まったゴミは速やかに外部に出さないと、ロール紙を排紙スタッカ160上に積載することが困難になったり、装置の動作不良の原因になったりするおそれがある。ところが、ゴミの幅が細いうえに第1ストッパ171の溝幅が狭く、ガイド172の山高さが高いので、ユーザがゴミを指で摘み出すことが非常に困難となっている。
そこで、本実施形態の排紙スタッカ160には排紙サポート170を構成するカバー174及びガード175が配設されている。すなわち、図23及び図24に示すように、カバー174が、第1ストッパ171の溝穴を覆うように1段目のスタッカ部材161に配設され、ガード175が、第1ストッパ171の奥の1段目のスタッカ部材161上に幅方向に延びる壁状に形成されている。
このカバー174は、図25に示すように、後端が第1ストッパ171の手前側の内側壁上部に第1ストッパ171内で回動自在となるように取り付けられている。そして、第1ストッパ171の手前側の内側壁には、1段目のスタッカ部材161に対し格納・引出自在に設けられた2段目のスタッカ部材162が通過可能な穴171aが形成されている。
したがって、ユーザが2段目のスタッカ部材162を1段目のスタッカ部材161に格納すると、自動的にカバー174が2段目のスタッカ部材162の後端に押し上げられて第1ストッパ171の溝穴を覆い、またユーザが2段目のスタッカ部材162を1段目のスタッカ部材161から引き出すと、2段目のスタッカ部材162の後端がカバー174から離れるので、カバー174は自重で垂れ下がって第1ストッパ171の溝穴を開放する。2段目のスタッカ部材162を1段目のスタッカ部材161に格納した状態で使用するのは、はがき程度のサイズのカット紙を印刷する場合であるが、その際にこのカバー174は第1ストッパ171の溝穴を隠す化粧の役目をする。
さらに、図10、図11及び図25に示すように、カバー174の回動軌跡と同心の円形状の切り欠きを有するリブ176が、第1ストッパ171の奥側の内側壁に長手方向にわたって所定間隔をあけて複数形成されている。そして、図11、図23及び図24に示すように、カバー174の先端には、リブ176にオーバーラップする突起174aが所定間隔をあけて複数形成され、図10及び図11に示すように、第1ストッパ171の奥側の内側壁には、回動する上記突起174aと干渉しないように窪み177が形成されている。
これにより、発生したゴミが第1ストッパ171の奥側へ落下してもガード175に阻まれて滑り落ちないので、ほぼ全てのゴミを第1ストッパ171内に溜めることができる。そして、カバー174の回動に伴ってリブ176にオーバーラップする突起174aが第1ストッパ171内に溜まったゴミを全てすくい上げるので、全てのゴミを外部へ効率よく出すことができる。したがって、ロール紙を排紙スタッカ160上に容易に積載することができるとともに、ゴミによる装置の動作不良の発生を防止することができる。なお、窪み177により第1ストッパ171の溝幅が広がったので、窪み177を利用してユーザが指でゴミを第1ストッパ171内から摘み出すことも可能である。
以上説明したように、本発明によれば、後から排出される記録媒体の先端は、先に排出され排出スタッカ上に載置されている記録媒体の最頂部を越えるので、後から排出される記録媒体が先に排出され排出スタッカ上に載置されている記録媒体を排出スタッカから押し出してしまうようなことは無くなり、後から排出される記録媒体を先に排出され排出スタッカ上に載置されている記録媒体上に確実に積載することができる。
10 ロール紙ホルダ、 20 カッタ、 100 インクジェット式記録装置、 101 ハウジング、 110 カバー、 120 操作部、 130 カードスロット部、 140 給紙口、 150 排紙口、 160 排紙スタッカ、 161、162、163 スタッカ部材、 170 排紙サポート、 171 第1ストッパ、 172 ガイド、 173 第2ストッパ、 174 カバー、 175 ガード、 180 排紙ステイ、 181 ステイ、 181a ピン、 181b カム溝、 182 ステイリンク、 199 排紙ローラ。