JP4321215B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
そこで、従来装置には、電動モータの制御系において、上記路面ノイズのうち、不必要な周波数帯域をカットすることにより、操舵機構に対する外乱の悪影響を抑えようとしたものがある(例えば、下記特許文献1参照。)。
また、従来装置には、例えば下記特許文献2に開示されているように、操舵機構側に含まれたラック軸と操向車輪側に連結されたボールジョイントとの間にダンパーとしてのゴム状弾性体からなるブッシュ組立部を設け、このダンパーにて路面ノイズを減衰しようとしたものもある。
前記操舵機構が、前記操向車輪が左右の両端側に連結されたラック軸と、ラックハウジング内に設けられかつ所定の粘性及び弾性を有し当該粘性及び当該弾性が前記ラック軸に対して作用するように当該ラック軸に外嵌している筒形状の粘弾性部材とを具備し、
前記粘弾性部材は、
前記ラック軸の外周面に内周面が軸方向一端部側から他端部側にわたって密接している筒形状の内筒部と、
当該内筒部との間に隙間を有して当該内筒部を包囲している筒形状の外筒部と、
前記内筒部と前記外筒部とを軸方向中央部分で連結しているとともに弾性定数Kを有する弾性体と、
前記内筒部と前記外筒部との間の前記隙間内に前記弾性体を挟んで軸方向一端部側から他端部側にわたって入れられているとともに粘性定数Cを有する筒形状の粘性体とを備えていることを特徴とするものである。
2(KJ) 1/2 ≦ C・・・(1)
を満足していることが好ましい。
この場合、上記粘弾性部材の粘性及び弾性によってラック軸と操向車輪との間に形成される2次振動系での振動(共振)を確実に防ぐことができ、この振動に起因する操舵フィーリングの低下をより効果的に防止することができる。
この場合、高粘着性の潤滑材がラック軸と粘弾性部材との間に存在しているので、上記粘弾性部材の粘性及び弾性による不必要な路面ノイズの遮断性を高めることができ、操舵機構での路面ノイズの悪影響をより効果的に抑えた装置を容易に構成することができる。
図1は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング装置の主要部の構成を示す模式図である。図において、当該装置は、例えば自動車に搭載され、操舵部材(ステアリングホイール)1に加わるドライバーの操舵動作に応じて、操向車輪4の向きを変える操舵軸2を備えている。この操舵軸2には、上記操舵部材1が上端部に取り付けられる筒状の取付軸21と、この取付軸21に一体回転可能に連結された筒状の入力軸22と、トーションバー23を介在させて入力軸22に同軸的に連結された筒状の出力軸24が設けられている。
上記取付軸21は、ステアリングコラム25内に収納された状態で車体側に固定されるものであり、その下端部には、トーションバー23の一端部を内嵌固定した入力軸22の上端部がピン26により連結されている。また、上記トーションバー23の他端部はピン27により出力軸24の下端部に内嵌固定されている。
また、上記出力軸24には、減速歯車81及びこれに噛み合うピニオン軸82を有する減速機構8と、上記ピニオン軸82が出力軸に一体回転可能に取り付けられるとともに、トルクセンサ7の検出結果に応じて制御ユニット(図示せず)により駆動される操舵補助用の電動モータ9とが連結されている。また、上記減速機構8では、その減速歯車81が例えば一段のはすば歯車により構成されており、さらにその歯車歯部とピニオン軸82の歯部との噛み合い部において、バックラッシュをある程度許容することで当該減速機構8でのギヤ効率を向上させた状態でモータ動力を出力軸24に伝達している。これらの減速機構8と電動モータ9とが、操舵部材1から操向車輪4に至る操舵機構Aにモータ動力による操舵補助力を付与する操舵補助部を構成している。
これに対して、電動モータ9のアシスト制御に不必要な上記高周波帯域の外乱によってラック軸32が動くときには、当該ラック軸32は比較的高速で、短い周期で移動する。このような比較的速いラック軸32の動きに対しては、粘弾性部材10からの粘性及び弾性は抵抗として働いてラック軸32の動きを抑えることにより、当該ラック軸32から操舵機構A側に上記外乱が伝えられるのを遮断する。
2(KJ)1/2 ≦ C ―――(1)
但し、(1)式において、Jはラック軸32の操向車輪4側の慣性であり、Kは粘弾性部材10(梁11c)の弾性定数である。このような粘性定数Cを有する粘弾性部材10を用いることにより、ラック軸32に対して適切な値の粘性及び弾性を付与することができ、上記振動系の振動を抑えることができる。
1/(Js2+Cs+K) = (1/J)/(s2+Cs/J+K/J) ――(2)
= (1/J)/(s2+2ζωns+ωn2) ――(3)
ωn = (K/J)1/2 ――(4)
ζ = C/2Jωn =C/2(KJ)1/2 ――(5)
ここで、上記減衰係数ζにおいて、その値が1以上であれば、その2次振動系での振動(共振)が確実に防がれることから、上記(5)式から上述の不等式(1)を得ることができる。
0.4 ≦ ζ ≦ 2 ――(6)
詳細には、上記(6)式にて規定される減衰係数ζでは、0.4以上の値を選ぶことによって0.8(KJ)1/2以上の上記粘性定数Cが選択されて、粘弾性部材10はその粘性及び弾性を最低限必要な負荷(抵抗)としてラック軸32に与えることができ、例えば操向車輪4側から外乱が入力したときでも、上記高粘着性の潤滑材を使用した点とも相まって、そのラック軸32での振動とこれに伴う操舵フィーリングの変化がドライバーに認識されない程度に、粘弾性部材10からの抵抗がラック軸32に付与されて当該振動を抑制することができる。
また、2以下の減衰係数ζを選ぶことにより、粘弾性部材10からラック軸32に与えられる粘性及び弾性を制限して、ラック軸32、ひいては操舵機構Aでの応答性が低下するのを抑えることができる。しかも、粘弾性部材10からラック軸32に加えられる粘性及び弾性(抵抗)を制限しているので、操舵部材1に対するステアリング操作が過剰に重くなるのを防ぐことができる。
また、2よりも大きい減衰係数ζを選んだときには、粘弾性部材10からの粘性及び弾性が不必要に大きくなって、ステアリング操作を比較的行い難くなったりして、操舵フィーリングが比較的低下する。
また、本実施形態では、ラック軸32と粘弾性部材10との間に高粘着性の潤滑材を介在させることにより、粘弾性部材10の粘性及び弾性による不必要な路面ノイズの遮断性を高めているので、操舵機構Aでの路面ノイズの悪影響をより効果的に抑えた装置を容易に構成することができる。
また、上記の説明では、操舵軸2に電動モータ9が連結されるコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置に適用した場合を例示したが、本発明は操舵補助モータがラック軸に連結されて、このラック軸の移動をアシストするラックアシスト式等の他のアシスト形式の装置にも適用することができる。
2 操舵軸
3 ラックピニオン式伝達機構
31 ピニオン軸
32 ラック軸
33 ラックハウジング
4 操向車輪
9 電動モータ
10 粘弾性部材
11 容器
11a 内筒部
11b 外筒部
11c 梁(弾性体)
12 粘性材(粘性体)
Claims (3)
- 操舵部材から操向車輪に至る操舵機構に、電動モータの動力を付与して操舵補助を行う電動パワーステアリング装置であって、
前記操舵機構が、前記操向車輪が左右の両端側に連結されたラック軸と、ラックハウジング内に設けられかつ所定の粘性及び弾性を有し当該粘性及び当該弾性が前記ラック軸に対して作用するように当該ラック軸に外嵌している筒形状の粘弾性部材とを具備し、
前記粘弾性部材は、
前記ラック軸の外周面に内周面が軸方向一端部側から他端部側にわたって密接している筒形状の内筒部と、
当該内筒部との間に隙間を有して当該内筒部を包囲している筒形状の外筒部と、
前記内筒部と前記外筒部とを軸方向中央部分で連結しているとともに弾性定数Kを有する弾性体と、
前記内筒部と前記外筒部との間の前記隙間内に前記弾性体を挟んで軸方向一端部側から他端部側にわたって入れられているとともに粘性定数Cを有する筒形状の粘性体とを備えていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記粘弾性部材の粘性定数Cが、その粘弾性部材の弾性定数をKとし、前記ラック軸の前記操向車輪側の慣性をJとしたときに、下記の不等式(1)
2(KJ)1/2 ≦ C・・・(1)
を満足していることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記ラック軸と前記粘弾性部材との間に、高粘着性の潤滑材を介在させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
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