JP4319819B2 - 結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの製造方法に関し、さら詳しくは、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液(例えば甘草抽出物溶解液)から高純度かつ固液分離性の良い結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムを得るための結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
グリチルリチン酸モノアンモニウムは、漢方薬として古くから使用されている甘草中の主要な有効成分で、様々な薬理活性が確認され、医薬品、食品等の幅広い範囲で使用されている。
甘草抽出物中には、グリチルリチン酸モノアンモニウム以外に様々な成分が含有されているため、使用用途によっては好ましからざる影響を与える場合があり、工業的に最終製品として得るためには、グリチルリチン酸モノアンモニウムの結晶の析出操作が不可欠である。
【0003】
結晶析出(晶析)操作による分離精製の手法としては、例えば、フルキド構造を有する化合物とその製造工程上生成する副生成物からなる混合物から、フルキド構造を有する化合物を分離する方法(特開平11−29502号公報)が知られている。また、ソルビン酸アルカリ塩の製造方法において晶析前に少量添加剤を加えておく方法(特公昭52−27135公報)、光学活性カルボン酸エステルの製造方法において種晶を添加する方法(特公昭63−60735号公報)、2−アミノ−6−クロロプリンの製造方法においてpHを操作する方法(特開平9−188681号公報)が知られている。しかしながら、これらの中にグリチルリチン酸モノアンモニウムに関する記述は見当たらない。
【0004】
従来、目的物質を適当な溶媒に溶解させ、冷却して結晶を析出させる(再結晶)操作においては、単純に冷却を行うか、冷却速度を変化させるか、種晶を添加して核発生を制御するか、冷却と加熱を繰り返すかのいずれかの手法を採用するのが一般的であり、グリチルリチン酸モノアンモニウムに関しても同様であった。
しかしながら、従来の再結晶操作では、様々な原因によって微結晶が生じてしまう。例えば、(i) 冷却の際、過飽和度が非常に大きくなり、何らかの影響で急激に結晶が析出して微結晶が生じたり、(ii) 種晶添加の際、種晶自身に付着した微結晶の剥離によって微結晶が生じたり、(iii) 攪拌により溶解液を流動させる条件の場合には、種晶と攪拌翼又は晶析槽との衝突あるいは種晶同士の衝突によって種晶が破損し、微結晶が生じたりする。その結果、最終製品として得られる結晶中にごく微細な微結晶が含まれることとなり、母液から固液分離する際の濾過性が悪いという問題点があった。また、微結晶同士が凝集することにより、最終製品として得られる結晶内に母液が取り込まれ、十分な純度が得られないという問題点があった。これらの問題点は再結晶操作を繰り返すことによりある程度は解消できるものの、その場合には操作が煩雑となり生産性が低下するという問題点があった。
【0005】
また、従来の再結晶操作において通常得られるグリチルリチン酸モノアンモニウムの結晶形状は葉状がほとんどで、多角形状のものが少量混在するだけであった。葉状の結晶は、濾過速度が遅く、また、結晶同士が凝集して母液を取り込むため、最終製品として得られる結晶中のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量が低いという問題点を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、高純度かつ固液分離性の良い結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウム(特に、柱状、六角形状、八角形状等の多角形状の結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウム)を簡便かつ効率的に得ることができる結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下の結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの製造方法を提供する。
(1)以下の工程(a)〜(d)を含む、柱状、六角形状又は八角形状の結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの製造方法。
(a)グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を冷却する工程
(b)前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度が飽和温度にあるとき又は飽和温度に達する前に、グリチルリチン酸モノアンモニウムの種晶を前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液に添加する工程
(c)前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を加熱して、前記工程(a)及び(b)により生じたグリチルリチン酸モノアンモニウムの微結晶を溶解させる工程
(d)前記工程(c)の後に、前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を冷却して前記工程(b)で添加した種晶を成長させる工程
【0008】
(2)前記工程(a)において、冷却前のグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度が飽和温度〜飽和温度+50℃であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度が飽和温度−35℃〜飽和温度であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度が0.05〜30℃/時間であり、
前記工程(b)において、種晶の添加量がグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量の0.0001〜10重量%であり、種晶を添加するときのグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度が飽和温度〜飽和温度+20℃であり、
前記工程(c)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱温度が飽和温度〜飽和温度+20℃であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱速度が0.05〜30℃/時間であり、
前記工程(d)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度が飽和温度−60℃〜飽和温度であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度が0.05〜30℃/時間であることを特徴とする前記(1)記載の製造方法。
【0009】
(3)前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を流動させた条件下で、前記工程(a)〜(d)を行うことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の製造方法。
(4)前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液が、甘草抽出物溶解液であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記甘草抽出物溶解液の溶媒が、水、メタノール、エタノール又はこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする前記(4)記載の製造方法。
(6)前記甘草抽出物溶解液の甘草抽出物含量が1〜50重量%であることを特徴とする前記(4)又は(5)記載の製造方法。
【0010】
(7)前記甘草抽出物のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量が10〜60重量%であることを特徴とする前記(4)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの製造方法について、工程ごとに詳述する。
工程(a)
工程(a)は、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を冷却する工程である。
グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液は、グリチルリチン酸モノアンモニウムを適当な溶媒に完全に溶解したものであり、グリチルリチン酸モノアンモニウムの未飽和溶液又は飽和溶液である。グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液は、例えば、グリチルリチン酸モノアンモニウムと溶媒との混合物をグリチルリチン酸モノアンモニウムの溶解温度以上に加熱することにより得ることができる。
【0012】
グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液としては、グリチルリチン酸モノアンモニウムを含有する植物抽出物の溶解液を利用できる。グリチルリチン酸モノアンモニウムを含有する植物抽出物としては、例えば、甘草抽出物が挙げられる。甘草の品種は、グリチルリチン酸モノアンモニウムを含有する限り特に限定されるものではなく、また、抽出に利用する甘草の構成部位も、グリチルリチン酸モノアンモニウムを含有する限り特に限定されるものではない。甘草抽出物のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量は特に限定されるものではないが、10〜60重量%であることが好ましい。甘草抽出物の溶解液における甘草抽出物含量は特に限定されるものではないが、好ましくは1〜50重量%である。
【0013】
グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の溶媒の種類は、グリチルリチン酸モノアンモニウムを溶解させ得る限り特に制限されるものではなく、その具体例としては、水、アルコール類等が挙げられる。アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−ブタノール等の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビット、マルチット、キシリット、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられ、これらの1種類を単独で、又は2種以上を組み合せて利用することができる。
【0014】
甘草抽出物を利用する場合には、甘草粗抽出物の溶解度が高く、工業的に大量処理が可能であり、さらに固液分離後の乾燥が簡便であるという点から、その溶媒として水、メタノール、エタノール又はこれらの2種以上の混合物を利用することが好ましい。例えば、水とエタノールとの混合物を利用する場合、その混合比(重量比)は、通常、水:エタノール=10:90〜90:10であり、好ましくは、水:エタノール=10:90〜40:60である。また、溶媒と甘草抽出物の混合比(重量比)は、通常、溶媒:甘草抽出物=40:60〜95:5である。
【0015】
グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却は、当該溶解液の温度が飽和温度以下になって工程(b)で添加する種晶由来のグリチルリチン酸モノアンモニウムの結晶が生じるまで行う。ここで「飽和温度」とは、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液が飽和状態にあるときの当該溶解液の温度であり、飽和温度は、溶媒の種類や量、溶質の量等に応じて適宜決定される。
冷却前のグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液は、通常、飽和温度〜飽和温度+50℃、好ましくは飽和温度〜飽和温度+35℃であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度は、通常、飽和温度−35℃〜飽和温度、好ましくは飽和温度−25℃〜飽和温度であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度は、通常0.05〜30℃/時間、好ましくは0.5〜15℃/時間である。
【0016】
工程(b)
工程(b)は、前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度が飽和温度にあるとき又は飽和温度に達する前に、グリチルリチン酸モノアンモニウムの種晶を前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液に添加する工程である。
グリチルリチン酸モノアンモニウムの種晶を添加する時点は、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度が飽和温度にあるとき又は飽和温度に達する前であれば特に限定されるものではなく、工程(a)において冷却を行う前、工程(a)において冷却を行うのと同時、又は工程(a)において冷却を行っている途中のいずれの時点でもよい。
【0017】
種晶の添加量は特に限定されるものではないが、好ましくは、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量の0.0001〜10重量%である。甘草抽出物溶解液を利用する場合、好ましくは、甘草抽出物の0.0001〜10重量%である。
種晶の添加するときのグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度は、通常、飽和温度〜飽和温度+20℃、好ましくは飽和温度〜飽和温度+15℃である。
【0018】
工程(c)
工程(c)は、前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を加熱して、前記工程(a)及び(b)により生じたグリチルリチン酸モノアンモニウムの微結晶を溶解させる工程である。
工程(a)及び(b)により生じたグリチルリチン酸モノアンモニウムの微結晶を溶解させることにより、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液中には大きくて強度の強い結晶(主として、工程(b)で添加した種晶の一部又は全部)のみが残存することとなる。
グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱温度は、工程(a)における冷却と工程(b)における種晶の添加とにより生じたグリチルリチン酸モノアンモニウムの微結晶を溶解させ得る限り特に限定されるものではないが、通常飽和温度〜飽和温度+20℃である。また、グリチルリチン酸モノアンモニウムの加熱速度は特に限定されるものではないが、通常0.05〜30℃/時間、好ましくは0.5〜15℃/時間である。
【0019】
工程(d)
工程(d)は、前記工程(c)の後に、前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を冷却して前記工程(b)で添加した種晶を成長させる工程である。
グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度及び冷却速度は、結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムを析出し得る限り特に限定されるものではないが、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度は、通常、飽和温度−60℃〜飽和温度、好ましくは飽和温度−40℃〜飽和温度であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度は、通常0.05〜30℃/時間、好ましくは0.5〜15℃/時間である。このような条件下にて晶析を行うことにより、高純度かつ固液分離性の良い結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムを得ることができる。
【0020】
本発明の製造方法により得られる結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの結晶形状は、工程(a)〜(d)における各種条件を調節することにより柱状、六角形状、八角形状等の多角形状とすることができる。
【0021】
柱状の結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムを得る場合には、例えば、工程(a)において、冷却前のグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度を飽和温度〜飽和温度+50℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度を飽和温度−3℃〜飽和温度とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度を0.05〜30℃/時間とし、工程(b)において、種晶の添加量をグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量の0.0001〜10重量%とし、種晶を添加するときのグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度を飽和温度〜飽和温度+20℃とし、工程(c)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱温度を飽和温度〜飽和温度+20℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱速度を0.05〜30℃/時間とし、工程(d)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度を飽和温度−5℃〜飽和温度とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度を0.05〜30℃/時間とする。
【0022】
六角形状の結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムを得る場合には、例えば、工程(a)において、冷却前のグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度を飽和温度〜飽和温度+50℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度を飽和温度−35℃〜飽和温度−10℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度を0.05〜30℃/時間とし、工程(b)において、種晶の添加量をグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量の0.0001〜10重量%とし、種晶を添加するときのグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度を飽和温度〜飽和温度+20℃とし、工程(c)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱温度を飽和温度〜飽和温度+20℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱速度を0.05〜30℃/時間とし、工程(d)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度を飽和温度−60℃〜飽和温度−25℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度を0.05〜30℃/時間とする。
【0023】
八角形状の結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムを得る場合には、例えば、工程(a)において、冷却前のグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度を飽和温度〜飽和温度+50℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度を飽和温度−10℃〜飽和温度−3℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度を0.05〜30℃/時間とし、工程(b)において、種晶の添加量をグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量の0.0001〜10重量%とし、種晶を添加するときのグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度を飽和温度〜飽和温度+20℃とし、工程(c)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱温度を飽和温度〜飽和温度+20℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱速度を0.05〜30℃/時間とし、工程(d)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度を飽和温度−25℃〜飽和温度−5℃とし、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度を0.05〜30℃/時間とする。
【0024】
晶析した結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムを固液分離する際は、収率及び品質の面から、水、メタノール又はエタノールにて洗浄することが好ましい。その後、グリチルリチン酸モノアンモニウムを乾燥させることにより、柱状、六角形状、八角形状等の多角形状の結晶形状を有する粉末のグリチルリチン酸モノアンモニウムを得ることができる。
【0025】
工程(a)〜(d)は、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を流動させた条件下で行うことが好ましい。グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液は、例えば攪拌によって流動させることができる。
工程(a)〜(d)は、例えば、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を流動させることができ、かつグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度を制御することができる晶析槽を利用することができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
〔実施例1〕
甘草粗抽出物(グリチルリチン酸モノアンモニウム含量48.5%)16.5gを、水:エタノール=1:4(重量比)の混合溶媒500mLと混合し(45℃の飽和溶液)、70℃まで加熱して完全に溶解させ、攪拌棒及び温度制御のためのジャケットを備えた晶析槽に移した。
次に、攪拌棒にて溶液の攪拌を開始し、10℃/時間の冷却速度にて冷却し、溶液温度が57℃になった時点で、グリチルリチン酸モノアンモニウムの種晶を0.01g添加した。10℃/時間の冷却速度の冷却を継続し、溶液の温度が43℃になった時点で冷却を中止した。
【0027】
次に、10℃/時間の加熱速度にて57℃まで溶液を加熱し、冷却及び種晶の添加により生じたグリチルリチン酸モノアンモニウムの微結晶を溶解させた。
次に、41℃まで溶液を冷却し、溶液を41℃で3時間保持し、攪拌を終了して柱状の結晶を有するグリチルリチン酸モノアンモニウムの晶析スラリーを得た。スラリーの状態でのグリチルリチン酸モノアンモニウムの結晶の顕微鏡写真(100倍)を図1に示す。
【0028】
次に、このスラリーを5.5cm径のNo.2の濾紙を用いて、250〜300torrにて吸引ろ過した。濾過に要した時間は20〜30秒であった(表1参照)。得られた結晶を10℃のエタノール100mLにて洗浄し、湿潤状態にあるグリチルリチン酸モノアンモニウムを得た。このグリチルリチン酸モノアンモニウムを減圧下(10〜20torr)にて60℃で16時間乾燥した。
【0029】
次に、得られたグリチルリチン酸モノアンモニウムの物性を、液体クロマトグラム分析(HPLC)により調べた。HPLCは、島津製作所(株)製LC−10A(カラム:和光純薬工業(株)製Wakosil−II 5C18 HG、移動相:酢酸:水:アセトニトリル=3:53:44、流量:1.0ml/分、検出波長254nm)を用いて調べた。その結果、約8分の保持時間であり、既知のグリチルリチン酸モノアンモニウムの保持時間と一致した。
また、得られたグリチルリチン酸モノアンモニウムの純度を和光純薬工業(株)製グリチルリチン純品を純度100%としてHPLC分析した。純度は78.8%であった。(表1参照)。
【0030】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして、甘草粗抽出物溶解液を調整した後、攪拌棒及び温度制御のためのジャケットを備えた晶析槽に移した。
次に、攪拌棒にて溶液の攪拌を開始し、10℃/時間の冷却速度にて冷却し、溶液温度が57℃になった時点で、グリチルリチン酸モノアンモニウムの種晶を0.01g添加した。10℃/時間の冷却速度の冷却を継続し、溶液の温度が38℃になった時点で冷却を中止した。
次に、10℃/時間の加熱速度にて57℃まで溶液を加熱し、冷却及び種晶の添加により生じたグリチルリチン酸モノアンモニウムの微結晶を溶解させた。
【0031】
次に、25℃まで溶液を冷却し、溶液を25℃で3時間保持し、攪拌を終了して八角形の結晶形状を有するグリチルリチン酸モノアンモニウムの晶析スラリーを得た。スラリーの状態でのグリチルリチン酸モノアンモニウムの結晶の顕微鏡写真(100倍)を図2に示す。
【0032】
析出した八角形の結晶形状を有するグリチルリチン酸モノアンモニウムを5.5cm径のNo.2の濾紙を用いて、250〜300torrにて吸引ろ過した。濾過に要した時間は30〜40秒であった(表1参照。)得られたグリチルリチン酸モノアンモニウムを10℃のエタノール100mLにて洗浄し、湿潤状態のグリチルリチン酸モノアンモニウムを得た。このグリチルリチン酸モノアンモニウムを減圧下(10〜20torr)にて60℃で16時間乾燥した。
実施例1と同様にして、得られたグリチルリチン酸モノアンモニウムの純度を測定した。純度は69.8%あった(表1参照)。
【0033】
〔実施例3〕
実施例1と同様にして、甘草粗抽出物溶解液を調整した後、攪拌棒及び温度制御のためのジャケットを備えた晶析槽に移した。
次に、攪拌棒にて溶液の攪拌を開始し、10℃/時間の冷却速度にて冷却し、溶液温度が57℃になった時点で、グリチルリチン酸モノアンモニウムの種晶を0.01g添加した。10℃/時間の冷却速度の冷却を継続し、溶液の温度が25℃になった時点で冷却を中止した。
次に、10℃/時間の加熱速度にて57℃まで溶液を加熱し、冷却及び種晶の添加により生じたグリチルリチン酸モノアンモニウムの微結晶を溶解させた。
【0034】
次に、10℃まで溶液を冷却し、溶液を10℃で3時間保持し、攪拌を終了して六角形の結晶形状を有するグリチルリチン酸モノアンモニウムの晶析スラリーを得た。スラリーの状態でのグリチルリチン酸モノアンモニウムの結晶の顕微鏡写真(100倍)を図3に示す。
【0035】
析出した六角形の結晶形状を有するグリチルリチン酸モノアンモニウムを5.5cm径のNo.2の濾紙を用いて、250〜300torrにて吸引ろ過した。濾過に要した時間は40〜50秒であった(表1参照。)得られたグリチルリチン酸モノアンモニウムを10℃のエタノール100mLにて洗浄し、湿潤状態のグリチルリチン酸モノアンモニウムを得た。このグリチルリチン酸モノアンモニウムを減圧下(10〜20torr)にて60℃で16時間乾燥した。
実施例1と同様にして、得られたグリチルリチン酸モノアンモニウムの純度を測定した。純度は61.2%あった(表1参照)
【0036】
〔比較例1〕
実施例1と同様にして、甘草粗抽出物溶解液を調整した後、70〜15℃まで単純に冷却を行い、グリチルリチン酸モノアンモニウムを晶析させた。得られたグリチルリチン酸モノアンモニウムの顕微鏡写真(100倍)を図4に示す。
析出したグリチルリチン酸モノアンモニウムを5.5cm径のNo.2の濾紙を用いて、250〜300torrにて吸引ろ過した。濾過に要した時間は120〜150秒であった(表1参照。)得られたグリチルリチン酸モノアンモニウムを10℃のエタノール100mLにて洗浄し、湿潤状態のグリチルリチン酸モノアンモニウムを得た。このグリチルリチン酸モノアンモニウムを減圧下(10〜20torr)にて60℃で16時間乾燥した。
実施例1と同様にして、得られたグリチルリチン酸モノアンモニウムの純度を測定した。純度は55.3%あった(表1参照)
【0037】
【0038】
表1に示すように、実施例1、2及び3の条件で晶析すれば、従来の再結晶(比較例1)よりも高純度かつ固液分離性の良い結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムを簡便かつ効率的に得られることが判明した。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、高純度かつ固液分離性の良い結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムを簡便かつ効率的に得ることができる結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの製造方法が提供される。本発明の製造方法により得られる結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムは、柱状、六角形状、八角形状等の多角形状の結晶形状を有しており、高純度かつ固液分離性が良いので、工業的にも生産性のよいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた柱状の結晶形を有するグリチルリチン酸モノアンモニウムを示す顕微鏡写真である。
【図2】実施例2で得られた八角形状の結晶形を有するグリチルリチン酸モノアンモニウムを示す顕微鏡写真である。
【図3】実施例3で得られた六角形状の結晶形を有するグリチルリチン酸モノアンモニウムを示す顕微鏡写真である。
【図4】比較例1で得られた葉状の結晶形を有するグリチルリチン酸モノアンモニウムの結晶を示す顕微鏡写真である。
Claims (7)
- 以下の工程(a)〜(d)を含む、柱状、六角形状又は八角形状の結晶形グリチルリチン酸モノアンモニウムの製造方法。
(a)グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を冷却する工程
(b)前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度が飽和温度にあるとき又は飽和温度に達する前に、グリチルリチン酸モノアンモニウムの種晶を前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液に添加する工程
(c)前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を加熱して、前記工程(a)及び(b)により生じたグリチルリチン酸モノアンモニウムの微結晶を溶解させる工程
(d)前記工程(c)の後に、前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を冷却して前記工程(b)で添加した種晶を成長させる工程 - 前記工程(a)において、冷却前のグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度が飽和温度〜飽和温度+50℃であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度が飽和温度−35℃〜飽和温度であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度が0.05〜30℃/時間であり、
前記工程(b)において、種晶の添加量がグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量の0.0001〜10重量%であり、種晶を添加するときのグリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の温度が飽和温度〜飽和温度+20℃であり、
前記工程(c)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱温度が飽和温度〜飽和温度+20℃であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の加熱速度が0.05〜30℃/時間であり、
前記工程(d)において、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却温度が飽和温度−60℃〜飽和温度であり、グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液の冷却速度が0.05〜30℃/時間であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。 - 前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液を流動させた条件下で、前記工程(a)〜(d)を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
- 前記グリチルリチン酸モノアンモニウム溶解液が、甘草抽出物溶解液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記甘草抽出物溶解液の溶媒が、水、メタノール、エタノール又はこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
- 前記甘草抽出物溶解液の甘草抽出物含量が1〜50重量%であることを特徴とする請求項4又は5記載の製造方法。
- 前記甘草抽出物のグリチルリチン酸モノアンモニウム含量が10〜60重量%であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
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