JP4318876B2 - アダプティブアレイ基地局 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はSDMA(Space Division Multiple Access:空間分割多元接続)方式の通信システムに関するものであり、SDMA方式を採用するアダプティブアレイ基地局に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アダプティブアレイ基地局において、自基地局に接続している端末(自基地局接続端末)がハンドオーバを試みる場合は、その端末がハンドオーバに失敗し自基地局に戻される可能性があるため、基地局側では最大15秒間同期バーストの送受信モードに入る。そして、同期バースト送受信モード中に同期バースト以外のバーストを受信したとしても単に破棄するだけである(従来技術1)。
また、他基地局に接続中の端末が移動などをすることによって、当該端末からの干渉が大きくなってしまった場合、基地局のスクランブルシード(8ビットの識別情報)が同じであれば、自基地局接続端末からの希望波と他基地局接続端末からの妨害波との区別がつけられなくなってしまうため、それまで干渉波方向にNULL(ヌル)を形成し、その送信ウェイトでロックできていたのが、ロックできなくなってしまう(従来技術2)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術1のように空間多重化技術を用いず単に他のバーストを破棄するだけでは、他基地局に接続中の端末(例えば、端末Aとする)から通話チャネルのTCHバーストを受信した場合にその方向にNULLが形成されないため、端末Aに干渉を与えてしまうことになる。
また、従来技術2のように送信ウェイトがロックできない場合時分割多重が損なわれるため、他基地局に接続中の端末へ干渉を与えてしまう。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みて、他基地局接続端末及び自基地局接続端末の通話品質を保証することのできるアダプティブアレイ基地局を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、本願第1の発明のアダプティブアレイ基地局は、移動通信端末との同期を確立するための同期バースト送受信モード時に、該同期バースト受信のタイミングで、同期バーストを受信した場合、該同期バーストが送信されてきた方向にアダプティブビーム送信し、該同期バースト受信のタイミングで通話チャネルのバーストを受信した場合、通話チャネルのバーストが送られてきた方向に、同期バースト送信のタイミングでアダプティブヌルスティアリングを実行する手段を具備したことを特徴とする。
【0005】
さらに、本願第2の発明のアダプティブアレイ基地局は、移動通信端末との同期を確立するための同期バースト送受信モード時に、該同期バースト受信のタイミングで受信したバースト上のフレーム同期確立用信号を参照し、当該フレーム同期確立用信号の符号列と、予め保持しておいた第1の符号列とを比較する第1の比較手段と、第1の比較手段による比較の結果、不一致ビット数が所定数未満の場合、受信したバーストを同期バーストであると認識し、当該同期バーストが送られてきた方向に、同期バースト送信のタイミングでアダプティブビーム送信を実行する手段と、第1の比較手段による比較の結果、不一致ビット数が所定数以上の場合、当該フレーム同期確立用信号の符号列と、予め保持しておいた第2の符号列とを比較する第2の比較手段と、第2の比較手段による比較の結果、不一致ビット数が所定数未満の場合、受信したバーストを通話チャネルのバーストであると認識し、当該通話チャネルのバーストが送られてきた方向に、同期バースト送信のタイミングでアダプティブヌルスティアリングを実行する手段とを具備したことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に添付図面を参照して、本発明によるアダプティブアレイ基地局をデジタル無線通信用アダブティブアレイ基地局であるPHS基地局に適用したときの実施の形態について詳細に説明する。なお、ここで使用する用語「PHS基地局」はパーソナルハンディーフォンシステム(ARIB STD-28)で使用する基地局を意味するものである。
【0008】
添付図面は図1〜図13あり、図1はハンドオーバ時のシーケンスチャート、図2はアダプティブアレイ基地局でのビーム送信とNULL送信とを表す図、図3はハンドオーバ後の同期バースト送信を表す図、図4は本発明の実施の形態であるアダプティブアレイ基地局の機能ブロック図、図5はTCHのデータフォーマット、図6はSYNCのデータフォーマット、図7は同期バーストビーム送信及び同期バーストNULL送信のタイムスロット例、図8は ハンドオーバ後の同期バーストNULL送信を表す図、図9はアダプティブアレイ基地局の送信ウェイトロック状態を表す図、図10は希望波と妨害波の推移を表す図、図11はアダプティブアレイ基地局の送信ウェイトアンロック状態を表す図、図12は送信ウェイト情報のバッファリング方法を説明するタイムスロット例、図13はバッファリングされた送信ウェイト情報を使用した状態を表す図である。
【0009】
<第1の実施の形態>
無線区間に設けられるチャネルは、基本的にユーザ情報を転送する通話チャネル(TCH)と、制御信号を転送する制御チャネル(CCH)とから構成される。そして、CCHからTCHへの移行時や、端末のハンドオーバ時には同期バーストを使って基地局と端末との間で同期確立を図り、その後TCHで通話をする。パーソナルハンディーフォンシステムの場合、同期バーストのフォーマットでは上りの同期ワードUWが32ビット用意されており、TCHのフォーマットでは上りのUWが16ビット用意されている。
【0010】
PHS基地局において、自基地局に接続している端末がハンドオーバを試みた場合は、その端末がハンドオーバに失敗して自基地局に切り戻される可能性があるため、基地局側では最大15秒間同期バーストの同期バースト送受信モードに入る。そして、当該モード中に同期バースト以外のバーストを受信したとしても、そのバーストを単に破棄するだけで、次の同期バーストの送信には何ら変更を加えなかった。
【0011】
図1は、従来のハンドオーバ成功時のシーケンスチャートである。ハンドオーバには基地局から指示を出して切り替わる場合と、端末から指示を出して切り替わる場合との二つがあるが、ここでは前者のシーケンスチャートを示している。同図に示すように、ハンドオーバ元基地局103aからハンドオーバ指示105を出してから、端末101とハンドオーバ先基地局103bとの間では呼設定処理(図1のハンドオーバ処理109)を行うが、その間ハンドオーバ元基地局103aでは、端末101がハンドオーバに失敗して切り戻ってくる可能性があるため、15秒間同期バースト(107a〜107d)の送信を行っている。もしハンドオーバに成功すれば、ハンドオーバ元基地局103aでは15秒間の同期バースト送信後、切断処理を行う。図2及び図3は上記従来のシーケンスチャートにしたがって処理を行ったときの状態を表す図である。
【0012】
図2は、従来例でPHS基地局202(以下、基地局202)に端末PS2(以下、PS2)が接続しており、基地局201に端末PS1(以下、PS1)が接続しているときの状態を図で表したものである。基地局202は、自基地局に接続しているPS2に対してはアダプティブビームを送信(アダプティブビームフォーミング)し、基地局201(他基地局)に接続しているPS1に対しては干渉を与えないようにNULL(アダプティブヌルスティアリング)を形成する。また、PS2と通話状態にある基地局202では、TCH受信モードでPS2からのバースト信号(以下、TCHバースト)を受信して、その方向にアダプティブビームを送信する。また、基地局201と通話状態にあるPS1からのTCHバーストを基地局202が受信した場合、基地局202ではそのバーストを干渉波とみなし、その方向にNULLを形成する。
【0013】
図3は、従来例で基地局202に接続していたPS2が、他基地局にハンドオーバするときの状態を図で表したものである。基地局202ではPS2がハンドオーバに失敗して切り戻ってくる可能性があるため、最大15秒間同期バーストの送受信モードに入る。この時、基地局202でPS1からのTCHバーストを受信した場合、基地局202は同期バースト送受信モード中なのでそのTCHバーストを破棄するだけで、次の同期バーストの送信には何の影響も与えない。よって、PS1の方向にNULLを形成せずに同期バーストを送信してしまい、それがPS1にとって妨害波となってしまう。
【0014】
本発明の第1の実施の形態では、端末がハンドオーバした後、ハンドオーバ元基地局での同期バースト送受信モード中にTCHバーストを受信した場合には、それを干渉波とみなし、TCHバーストが送られてきた方向にNULLを形成するように同期バーストの送信を行う。これにより、ハンドオーバに無関係の端末に対する、同期バーストでの妨害波を回避することができる。
【0015】
図4を参照すると、本発明によるアダプティブアレイ基地局をデジタル無線通信用アダブティブアレイ基地局であるPHS基地局に適用したときの実施の形態を示す機能ブロック図が示されている。
図4において、本実施の形態によるアダプティブアレイ基地局202は、4つのアンテナANT1〜ANT4を備え、これらアンテナANTが送受信切り替えスイッチ12に接続されている。送受信切り替えスイッチ12は、これらアンテナANT1〜ANT4を時分割で制御して送信と受信との切り替え制御を行っている。送受信切り替えスイッチ12には受信系モジュール14と送信系モジュール22とが接続されている。
【0016】
受信系モジュール14は、各アンテナANT毎に備えた、4つのローノイズ増幅器(LNA)16、ダウンコンバータ(D/C)18、A/Dコンバータ(A/D)20により構成されている。受信系モジュール14はまた、モデム部30に接続され、ローノイズ増幅器16、ダウンコンバータ18およびA/Dコンバータ(A/D)20は、信号経路である送受信切り替えスイッチ12からモデム部30に向かってこの順番で接続されている。
【0017】
送信系モジュール22は、同様に、各アンテナANT毎に備えた、4つのD/Aコンバータ(D/A)24、アッパコンバータ(U/C)26、乗算回路(MP)28a及びbにより構成されている。送信系モジュール22はまた、モデム部30に接続され、D/Aコンバータ24、アッパコンバータ26および乗算回路28a及びbは、信号経路であるモデム部30から送受信系切り替えスイッチ12に向かってこの順番で接続されている。
そして、2つの呼に空間多重する場合は、乗算回路28aと乗算回路28bとを使って各呼に異なる重みで送信できるようにしている。
【0018】
モデム部30は、複数のCPUから構成されており、送受信データの変復調およびデジタル信号処理による位相制御を行なっている。具体的には以下の5つの制御を行う。
1.受信系モジュール14の最終段で変換されたディジタル信号の例えばD/U(Desire/Undesire: 希望波/妨害波)が最大となるように合成し復調する。
2.アンテナANTでの受信の位相を算出して、送信時にはアンテナ端で同等の位相になるように制御する。それによって、通信を行う端末の方向に送信/受信とも指向性を持たせることができる。
3.干渉波と遅延波の到来方向にヌル点を形成することによって抑圧する。
4.n本のアンテナに供給する信号の位相を制御することによって、任意の方向に指向性を持たせてビームを絞って送信することを可能とする。
5.周囲の基地局や通話中、あるいはデータ(通信)のやりとりをしている当該ユーザ端末以外の端末に対して、下り方向に与える干渉を減少させる。
【0019】
このモデム部30は制御部32に接続されている。
制御部32は複数のCPUから構成され、基地局202全体の制御を行う。具体的には以下の6つの制御を行う。
1.モデム部30に対して必要なパラメータおよびタイミングを指示し、モデム部30が受信したデータを処理する。また、空中に輻射すべきデータを作成してモデム部30に渡す。さらに、キャリブレーションによって計算された重み付けによる送信出力の制御を指示する。
2.ユーザ端末(ユーザの端末、以下単にユーザと称す)からのSpatial Signature(受信応答ベクトル)の変化速度を計算する。
3.ユーザからの上りの受信信号レベルRSSIの統計処理をする。
4.空間多重した呼のGOS(Grade Of Service:通話品質)が空間多重でない通常の呼のGOSとできるだけ同じになるようなロジックで空間多重の物理スロット割当てを行う。
5.複数ユーザに対して空間多重で通話を確立する場合は、夫々のユーザへのC/I(Carrier/Interference)がユーザのGOSを良好に保つ為に必要な値以上になるように、夫々のユーザへの重みを計算する。
6.ISDN回線に接続され、これとのインタフェースの処理を実行する。
【0020】
電源部34は100Vの電源の供給を受け、アダプティブアレイ基地局202に電力を供給する電源部である。なお、モデム部30および制御部32によりデジタル信号処理部が形成される。基地局202では、N(Nは2以上の自然数)本のアンテナから受信した受信情報(振幅と位相)を元にして、各アンテナに対しそれぞれ所定の重み付けで送信するアダプティブアレイ送信を行っている。
【0021】
前述したように、本実施の形態では端末がハンドオーバした後、アダプティブアレイ基地局202での同期バースト送受信モード中に、▲1▼及び▲2▼の処理を行うことができる。
▲1▼同期バーストを受信した場合:同期バーストを受信した方向に、同期バーストビーム送信を行う。
▲2▼TCHバーストを受信した場合:それを干渉波とみなし、TCHバーストが送られてきた方向にNULLを形成するように同期バーストの送信を行う。
【0022】
図5は、TCH(TCHバースト)の信号フォーマットである。過渡応答用ランプタイムR(各スロットの立上り時間の保障を行う)は4ビット、スタートシンボルSS(信号のスタートを示す)は2ビット、プリアンブルPR(ビット同期確立用)は6ビット、チャネル種別CIは4ビット、SA(SACCH)は16ビット、誤り検出符号CRCは16ビットで構成されており、実際に音声が乗る情報ビットIは160ビットで構成されている。TCHの場合、同期ワードUWは16ビットである。
【0023】
図6は、SYNC(同期バースト)の信号フォーマットである。過渡応答用ランプタイムR(各スロットの立上り時間の保障を行う)は4ビット、スタートシンボルSS(信号のスタートを示す)は2ビット、プリアンブルPR(ビット同期確立用)は62ビット、チャネル種別CIは4ビット、着識別符号(接続を行う相手局の呼出符号を含む)は42ビット、発識別符号(自局の呼出符号を含む)は28ビット、アイドルビットは34ビット、誤り検出符号CRCは16ビットで構成されている。SYNCの場合、同期ワードUWは32ビットである。
【0024】
TCH(図5)及びSYNC(図6)の双方にある同期ワードUWは、バースト毎に唯一の符号列を有する信号であり、通常、フレーム同期確立に使用する。他者の信号や雑音の中からこの符号を探し出し、これに選択的なフィルタをかけることにより同期状態を作り出す。本実施の形態では、受信したバーストが同期バーストなのかTCHバーストなのかを区別するためこの同期ワードUWを用いる。このときの処理をステップ1〜4に示す。
【0025】
ステップ1:同期バースト送受信モード中に受信したバーストは、まず同期バーストか否かをUWエラー数のみで確認する。具体的には、本来SYNC(図6)のUW信号に含まれる符号列と、受信したバーストのUW信号の符号列とを比較し、不一致ビット数(UWエラー数)をカウントする。
ステップ2:UWエラー数が許容範囲内(国内では4ビット以下、国外では1ビット以下)であった場合には、そのバーストを同期バーストとして処理する。すなわち、次の送信時に、同期バーストが送られてきた方向にアダプティブビーム送信を行う。
ステップ3:UWエラー数が許容範囲を超えていた場合には、そのバーストは同期バーストではないと判断し、次に、TCHバーストか否かをUWエラー数のみで確認する。具体的には、本来TCH(図5)バーストのUW信号に含まれる符号列と、受信したバーストのUW信号の符号列とを比較し、不一致ビット数(UWエラー数)をカウントする。
ステップ4:UWエラー数が許容範囲内(国内では4ビット以下、国外では1ビット以下)であった場合には、そのバーストをTCHバーストとして処理する。すなわち、次の送信時に、TCHバーストが送られてきた方向に同期バースト送信によるアダプティブヌルスティアリングを行う。
【0026】
図7及び図8はステップ1〜4を用いて、同期バースト/TCHバーストの区別を行った場合の実施の形態を説明した図である。
図7は、アダプティブアレイ基地局202による同期バーストビーム送信及び同期バーストNULL送信のタイムスロット例である。同図において、基地局202は、端末から1フレームの3スロット目(S701)で同期バーストを受信する。アダプティブアレイ基地局202は、端末に対して、1フレームの7スロット目(S703)で同期バーストを受信した方向に同期バーストビーム送信を行う。続いて、アダプティブアレイ基地局202は、端末から2フレームの3スロット目(S705)でTCHバーストを受信する。アダプティブアレイ基地局202は、端末に対して、2フレームの7スロット目(S707)でTCHバーストを受信した方向に同期バーストNULL送信を行う。
【0027】
図8は、基地局202に接続していたPS2が、他基地局にハンドオーバするときの状態を図で表したものである。基地局202と通話状態にあったPS2がハンドオーバした場合、基地局202ではPS2が切り戻ってくる可能性があるため、最大15秒間、同期バースト送受信モードに入る。その時、基地局202において、基地局201と通話状態にあるPS1のTCHバーストを受信した場合は、その方向に対してNULLを形成するようにして次の同期バーストの送信を行う。これにより、基地局202からのPS1に対する同期バーストでの妨害波を回避できる。
【0028】
<第2の実施の形態>
図9は、基地局202(アダプティブアレイ基地局)に接続している端末が3機(PS2、PS3、PS4)あり、それらに対してアダプティブビームを送信し、基地局201に接続している端末PS1に対しては干渉を与えないようにNULLを形成している状態を表す図である。3機(PS2〜PS4)と通話状態にある基地局202では、TCH受信モードで3機(PS2〜PS4)からのTCHバーストを受信して、その方向にアダプティブビームを送信する。また、基地局201と通話状態にあるPS1からのTCHバーストを基地局202が受信した場合には、それを妨害波とみなし、その方向にNULLを形成する。このようにアダプティブビーム及びNULLの方向が決まって、送信ウェイトが確定している状態を「送信ウェイトがロックされている」と呼ぶものとする。
【0029】
基地局202では、既に3機(PS2〜PS4)が通話状態にあるため、PS1は基地局202に対してハンドオーバすることができない。よって、基地局202ではPS1に対してNULLを形成し続けようとする。通常、各基地局では自接続端末を区別できるように、スクランブルシード(8ビットの識別情報)を設けてあり、端末からのバーストに付随してあるスクランブルシードを元に、その端末が自局接続端末か他局接続端末かを見分けている。
【0030】
基地局201と基地局202とのスクランブルシードが異なっていれば、基地局202ではPS1のTCHバーストのスクランブルシードが自分のそれとは異なっているため、PS1が他局接続端末であるということを認識できる。よって、PS1を干渉波とみなし、その方向にNULLを形成することができる。
しかしながら、基地局201と基地局202のスクランブルシードが同じ場合には、以下に示すような状況Aの下において、本来妨害波であるPS1からのTCHバーストと、希望波であるPS2からのTCHバーストとの区別がつかなくなることがある。
【0031】
状況A:図10は、基地局202における希望波と妨害波との推移を示したものである。縦軸は受信レベル、横軸は時間を表している。同図では、時間の経過と共にPS1からの妨害波1003のレベルが上がり、PS2からの希望波1001のレベルが下がっている。このような場合、基地局202では希望波と妨害波との区別がつかなくなってしまう。図11は、基地局202に接続している端末が3機(PS2、PS3、PS4)あり、基地局201に接続中の端末PS1が移動などをすることによって、それからの干渉が大きくなってしまった状態を表す図である。図11のような場合、各端末からの信号の受信レベルが変化して図10のような状態になる。
【0032】
その結果、それまで他基地局接続端末の方向にNULLを形成し、その送信ウェイトでロックできていたのが、ロックできなくなってしまうのでNULLを形成できなくなってしまう。これにより、他基地局接続中の端末に対して干渉を与えてしまうことになる。また、それまで自基地局に接続している端末には十分なレベルでの送信を行っていたのが、送信ウェイトがロックできなくなったために、その端末に対する十分なレベルが確保できなくなってしまう。図11のような状態を「送信ウェイトのアンロック」と呼ぶものとする。
【0033】
送信ウェイトのアンロックは下記の両条件が揃った時に起こる。
条件▲1▼:妨害波RSSI値が希望波RSSI値よりも一定値以上高い。
条件▲2▼:CRCエラー数が一定値以上。
送信ウェイトのアンロックが解除されるのは、下記の両条件を満たす時とする。条件▲1▼:希望波RSSI値が妨害波RSSI値より十分高い値である。
条件▲2▼:CRCエラー数が一定値以下の時、又は、妨害波となっている呼が切れた時。
【0034】
本発明による基地局202は、所定のタイミング(例えば、5msec毎)で送信ウェイトに関する情報(振幅、位相、UWエラー数、CRCエラー数など)をバッファリングする。そして、下記の両期間は、バッファリングしてある送信ウェイトに関する情報(以下、「送信ウェイト情報」とする)の中から最適なものを選択し、送信ウェイトを決定する。
期間▲1▼:送信ウェイトのアンロック〜アンロック解除。
期間▲2▼:送信ウェイトのアンロック〜妨害波となっている呼の切断。
【0035】
送信ウェイト情報の選択は、直前までにバッファリングしていた送信ウェイト情報の中から最適なものを選択し、「最適な送信ウェイト情報の振幅及び位相」から送信ウェイトを算出し、それを用いて自局に接続している端末に送信するものとする。最適な送信ウェイト情報の選択方法の例を以下に示す。
選択方法▲1▼:CRCエラー数が1ビット以下のもの。CRCエラー数が1ビット以下のものが複数ある場合、アンロック発生前でアンロック発生時に最も近い時刻にバッファリングしたもの。
選択方法▲2▼:CRCエラー数が全て2ビット以上の場合、UWエラー数とCRCエラー数との合計値が最も少ないもの。合計値同一のものが複数ある場合、アンロック発生前でアンロック発生時に最も近い時刻にバッファリングしたもの。
【0036】
図12に送信ウェイト情報のバッファリング方法のタイムスロット例を示す。本実施の形態におけるフレーム長は5msecであり、バッファリングのタイミングも5msecとする。本実施の形態では送信ウェイト情報のバッファリングを、3スロット目、11スロット目、19スロット目・・・というように、8スロットおきに行うが(S1201)、これに限定されないことは明らかである。
ここで、バッファリング方法の簡単な例を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
本実施の形態では100msec間、バッファリングを行うものとし、5msecに1回バッファリングをするので、計20個の情報があるものとする。バッファリングする送信ウェイト情報は振幅、位相、CRCエラー、UWエラーとする。この例では妨害波RSSI値が希望波RSSI値より15dB以上高くなり、その時のCRCエラー数が2bit以上になった時に送信ウェイトのアンロックが起こるものとする。また、アンロックの解除は、妨害波RSSI値と希望波RSSI値との差が15dBより小さく、またCRCエラー数が1bit以下の時とする。
【0039】
表1の場合、item8で妨害波RSSI値が希望波RSSI値を16dB上回ってあり、その時のCRCエラー数が9bitなので、この時に送信ウェイトのアンロックが起こる(図12のS1203)。基地局202はitem8の直前までの20個の送信ウェイト情報の中で上記の所定条件を満たすもの、表1の場合、item4の時の位相と振幅とを用いて送信ウェイトを算出し、次の送信を行う(図12のS1205)。
【0040】
item9からitem11までは送信ウェイトアンロック状態が続いているので、item8と同様にして、バッファリングデータから送信ウェイトを算出している。item12では希望波RSSI値と妨害波RSSI値の差が8dB取れていて、その時のCRCエラー数が1bitなので、希望波と妨害波を区別でき、ビーム送信とNULL送信をできるようになる。よってこのとき送信ウェイトのアンロックは解除され、再び送信ウェイトをロックできる。
【0041】
図13は、基地局202に接続している端末が3機(PS2、PS3、PS4)あり、それらに対してアダプティブビームを送信しているときに、端末PS1(基地局201の接続端末)が近づいてきた状態を表した図である。基地局202ではNULLを形成していたPS1が近づいてきて、送信ウェイトがアンロックした場合でも、表1の例のようにバッファリングデータを用いることにより、直前の送信ウェイトがロックしていた状態での最良の送信ウェイトを使用することができる。これにより、基地局202がPS1に与える干渉も最低限におさえることができ、またPS2〜PS4に対する希望波(アダプティブビーム)も最低限は確保できることになり、4機(PS1〜PS4)全ての通話品質が向上する。
【0042】
このように本発明によれば、他基地局接続中の端末に対する干渉を最小限に抑えることができ、また自基地局接続端末に対するレベルも最低限確保することができる。
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、パーソナルハンディーフォンシステム以外の通信システムで使用することも可能である。
【0043】
【発明の効果】
本発明のアダプティブアレイ基地局によれば、他基地局接続端末及び自基地局接続端末の通話品質を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のハンドオーバ時のシーケンスチャート。
【図2】図1のシーケンスにしたがって処理を行ったときのアダプティブアレイ基地局でのビーム送信とNULL送信とを表す図。
【図3】図1のシーケンスにしたがって処理を行ったときのハンドオーバ後の同期バースト送信を表す図。
【図4】本発明の実施の形態であるアダプティブアレイ基地局の機能ブロック図。
【図5】本発明の実施の形態である通話チャネルTCHのデータフォーマット。
【図6】本発明の実施の形態である同期バーストSYNCのデータフォーマット。
【図7】本発明の実施の形態である同期バーストビーム送信及び同期バーストNULL送信のタイムスロット例。
【図8】本発明の実施の形態であるハンドオーバ後の同期バーストNULL送信を表す図。
【図9】本発明の実施の形態であるアダプティブアレイ基地局の送信ウェイトロック状態を表す図。
【図10】本発明の実施の形態である希望波と妨害波の推移を表す図。
【図11】本発明の実施の形態であるアダプティブアレイ基地局の送信ウェイトアンロック状態を表す図。
【図12】本発明の実施の形態である送信ウェイト情報のバッファリング方法を説明するタイムスロット例。
【図13】本発明の実施の形態であるバッファリングされた送信ウェイト情報を使用した状態を表す図。
【符号の説明】
PS1,PS2,PS3,PS4 端末
201 基地局
202 アダプティブアレイ基地局
Claims (2)
- 送信対象となる移動通信端末に対するアダプティブビームフォーミングと、与干渉移動体通信端末に対するアダプティブヌルスティアリングとを使い分けることにより、同一の物理スロットを複数の呼で共有する空間分割多元接続方式を用いて通信を行うアダプティブアレイ基地局において、
移動通信端末との同期を確立するための同期バースト送受信モード時に、
該同期バースト受信のタイミングで、同期バーストを受信した場合、該同期バーストが送信されてきた方向にアダプティブビーム送信し、
該同期バースト受信のタイミングで、通話チャネルのバーストを受信した場合、前記通話チャネルのバーストが送られてきた方向に、同期バースト送信のタイミングでアダプティブヌルスティアリングを実行する手段を具備したことを特徴とするアダプティブアレイ基地局。 - 送信対象となる移動通信端末に対するアダプティブビームフォーミングと、与干渉移動体通信端末に対するアダプティブヌルスティアリングとを使い分けることにより、同一の物理スロットを複数の呼で共有する空間分割多元接続方式を用いて通信を行うアダプティブアレイ基地局において、
移動通信端末との同期を確立するための同期バースト送受信モード時に、該同期バースト受信のタイミングで受信したバースト上のフレーム同期確立用信号を参照し、当該フレーム同期確立用信号の符号列と、予め保持しておいた第1の符号列とを比較する第1の比較手段と、
前記第1の比較手段による比較の結果、不一致ビット数が所定数未満の場合、前記バーストを同期バーストであると認識し、当該同期バーストが送られてきた方向に、同期バースト送信のタイミングでアダプティブビーム送信を実行する手段と、
前記第1の比較手段による比較の結果、不一致ビット数が所定数以上の場合、当該フレーム同期確立用信号の符号列と、予め保持しておいた第2の符号列とを比較する第2の比較手段と、
前記第2の比較手段による比較の結果、不一致ビット数が所定数未満の場合、前記バーストを通話チャネルのバーストであると認識し、当該通話チャネルのバーストが送られてきた方向に、同期バースト送信のタイミングでアダプティブヌルスティアリングを実行する手段と
を具備したことを特徴とするアダプティブアレイ基地局。
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